説明

融着インナーおよびそれを用いた分岐サドル継手

【構成】 融着インナー10は、分岐サドル継手(100)のサドル(102)の裏面に一体的に成形されるものであり、インナー本体12、およびインナー本体12の表面上に装着される電熱線14を備えている。インナー本体12の中央には、貫通孔16が形成され、その貫通孔の周囲には、渦巻き状に並ぶ複数の突起18が設けられる。電熱線14は、突起18に引っ掛けて渦巻き状に巻回されて、インナー本体12の軸方向に長い楕円形のリング状に配置されるとともに、そのリング部分14aの長径方向端部の内側には、電熱線14が葛状に配置し足される。そして、貫通孔16と電熱線14との間には、インナー本体12の周方向に短くインナー本体12の軸方向に長い形状の余白領域Sが形成される。
【効果】 融着インナーの汎用性が高く、しかも融着後に不具合が生じることがない分岐サドル継手を成形できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、融着インナーおよびそれを用いた分岐サドル継手に関し、特にたとえば、電気融着型の分岐サドル継手を成形するために用いられる、融着インナーおよびそれを用いた分岐サドル継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の融着インナーを利用した分岐サドル継手の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1では、電熱マット(融着インナー)の合成樹脂シートに、分岐サドル継手の分岐孔に対応した円形の貫通孔が形成される。貫通孔の周囲には、円形の渦巻き状に渦巻き溝が形成されており、この渦巻き溝内に電熱線が装着される。そして、電熱マットを金型内にセットして溶融樹脂を射出することにより、サドルの上面に枝管が一体的に突出し、サドルの裏面に電熱線が埋設された分岐サドル継手が成形される。
【0003】
また、分岐サドル継手には、サドルの上面に枝管を形成せずに、サドルの分岐孔に分水栓を装着して使用するものもある。たとえば、特許文献2には、分岐サドル継手(サドル)の分岐部に金属製の分水栓を装着した融着サドル付き分水栓が開示されている。特許文献2では、サドルの分岐孔の周縁部から分水栓接続口が立ち上がり、分水栓接続口の上部に、金属インサート部材(金属アダプタ)が埋め込まれる。そして、この金属インサート部材に分水栓が螺合されて固定される。
【特許文献1】特許第3558360号[F16L 47/02]
【特許文献2】特開2000−179777号[F16L 41/06]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分岐サドル継手を成形するために用いられる融着インナーは、サドルの裏面に沿うように湾曲させて、その状態でサドルに一体化させるが、分岐孔の周囲に生じた非融着部分は水圧の影響などを受けやすく、融着後に分岐サドル継手が本管から乖離したり、その非融着部分から水漏れ等の事故が発生する恐れがあるので、特許文献1のように、貫通孔の外形に沿って電熱線を同心円状に配置することが一般的に行われる。
【0005】
しかしながら、特許文献2のような分水栓を装着するタイプの分岐サドル継手に特許文献1の融着インナーを適用する場合には、サドルの管頂部付近などで金属インサート部材と分岐孔とが近づき過ぎてしまうため、分岐サドル継手の本管への取り付け時に電熱線の熱により金属インサート部材が熱膨張・収縮してしまうと、金属インサート部材が寸法変化して、金属インサート部材と周囲の樹脂との間に隙間が生じてしまったり、外形寸法に変化が生じる恐れがある。さらには、樹脂が溶融して電熱線が移動すると、電熱線と金属インサート部材とが接触して、短絡(ショート)が生じる危険性もあり、分水栓を装着するタイプの分岐サドル継手に適用することは困難である。
【0006】
よって、そのような電熱線の金属インサート部材への干渉を避けるために、貫通孔と電熱線との間の距離を離しつつ、同じように電熱マットに同心円状に電熱線を配置することが考えられるが、その場合には、貫通孔と電熱線との間の距離が離れて過ぎてしまうので、分岐孔の周囲に必要以上に非融着部分が生じてしまうことになる。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、融着インナーおよびそれを用いた分岐サドル継手を提供することである。
【0008】
この発明の他の目的は、分水栓を装着するタイプの分岐サドル継手に適用可能で、かつ融着後に不具合が生じない分岐サドル継手を成形できる、融着インナーおよびそれを用いた分岐サドル継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0010】
第1の発明は、分岐部に金属インサート部材が埋設された電気融着型の分岐サドル継手に適用可能な融着インナーにおいて、円形の貫通孔を有するインナー本体、およびインナー本体の表面上に装着され、貫通孔の周囲に配置される電熱線を含み、電熱線と貫通孔との間に、分岐部に金属インサート部材が埋設されるときにその金属インサート部材に電熱線が干渉しないようにインナー本体の周方向に短くインナー本体の軸方向に長い形状の余白領域を形成したことを特徴とする、融着インナーである。
【0011】
第1の発明では、融着インナー(10)は、サドル(102)の裏面に一体化させて分岐サドル継手(100)を成形するものであり、インナー本体(12)、および電熱線(14)を備えている。インナー本体は、合成樹脂の射出成形等により形成される略矩形の板状体であり、その中央には、平面視略真円形の貫通孔(16)が形成されている。電熱線は、たとえばニクロム線等であり、貫通孔の周囲に配置される。そして、貫通孔と電熱線との間には、電熱線が配置されない余白領域(S)が形成される。余白領域は、インナー本体の軸方向における貫通孔と電熱線との距離がインナー本体の周方向における貫通孔と電熱線との距離よりも大きくなるように設定されることにより、インナー本体の周方向に短くインナー本体の軸方向に長い形状に形成される。これにより、分岐サドル継手の本管(200)への電気融着接合時に、サドルの管頂部分などにおいて電熱線が金属インサート部材(108)に干渉しない所定距離を保つことができるようにしつつ、サドルの周方向において、電熱線と分岐孔(104)とが大きく離れないようにして、分岐孔の周囲に必要以上に非融着部分が生じることを防止できるようになる。
【0012】
第1の発明によれば、分岐部に金属インサート部材が埋設されていない分岐サドル継手のみならず、分岐部に金属インサート部材が埋設された分岐サドル継手にも融着インナーを適用することが可能になる。
【0013】
しかも、分岐サドル継手の分岐孔の周囲に必要以上に非融着部分が生じてしまうことがないことにより、融着インナーを用いて成形した分岐サドル継手が融着後に本管から乖離したり、不完全融着による水漏れ事故が発生する等の不具合を防止できる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明に従属し、電熱線は、その外縁がインナー本体の軸方向に長い楕円形または楕円近似形になるように配置される。
【0015】
第2の発明では、電熱線(14)は、たとえば突起(18,22)に引っ掛けられることによって、その外縁がインナー本体(12)の軸方向に長い楕円形または楕円近似形になるように配置される。
【0016】
第3の発明は、第2の発明に従属し、電熱線を渦巻き状に巻回してインナー本体の軸方向に長い楕円形または楕円近似形のリング状に配置することによりリング部分を形成するとともに、リング部分の長軸方向の端部の内側に電熱線を葛状に配置することにより補充部分を形成した。
【0017】
第3の発明では、電熱線(14)が、貫通孔(16)を中心とした渦巻き状に巻回されることによって、インナー本体(12)の軸方向に長い楕円形または楕円近似形のリング状に配置され、そこが電熱線のリング部分(14a)となる。さらに、電熱線は、リング部分の長軸方向の端部の内側に葛状に配置し足され、そこが電熱線の補充部分(14b)となる。
【0018】
第3の発明によれば、融着インナーをサドルの裏面に融着させて分岐サドル継手を成形した際に、たとえばインジケータの下側に電熱線のリング部分を位置させて融着状態を適切に判断できるようにしつつ、分岐孔の周囲の非融着部分を極めて小さい範囲に抑えることができるようになる。したがって、融着後の分岐サドル継手の本管からの乖離や、不完全融着による水漏れ事故等の不具合をより確実に防止できるようになる。
【0019】
第4の発明は、第1ないし3のいずれかの発明に従属し、リング部分の長軸方向の一方端部の内側には、電熱線を葛状に配置した補充部分が形成され、リング部分の長軸方向の他方端部の内側には、電熱線の内周端をリング部分の外側まで引き出す際に起点にされる支持ピンが設けられ、その支持ピンに電熱線が巻き付けられる。
【0020】
第4の発明では、電熱線(14)のリング部分(14a)の長軸方向の一方端部の内側には、電熱線が葛状に配置し足された補充部分(14b)が形成される。また、リング部分(14a)の長軸方向の他方端部の内側には、電熱線の内周端をリング部分の外側まで引き出す際に起点にされる支持ピン(24)が設けられる。そして、支持ピンに電熱線が巻き付けられ、支持ピン周辺の電熱線により補充部分が形成される。
【0021】
第5の発明は、円形の分岐孔を有しかつ分岐部に金属インサート部材が埋設された電気融着型の分岐サドル継手に適用可能な融着インナーにおいて、インナー本体、およびインナー本体の表面上に装着され、分岐孔の形成予定位置の周囲に配置される電熱線を含み、電熱線と分岐孔の形成予定位置との間に、分岐部に金属インサート部材が埋設されるときにその金属インサート部材に電熱線が干渉しないようにインナー本体の周方向に短くインナー本体の軸方向に長い形状の余白領域を形成したことを特徴とする、融着インナーである。
【0022】
第5の発明では、融着インナー(10)は、サドル(102)の裏面に一体化させて分岐サドル継手(100)を成形するものであり、インナー本体(12)、および電熱線(14)を備えている。インナー本体は、合成樹脂の射出成形等により形成される略矩形の板状体である。電熱線は、たとえばニクロム線等であり、分岐サドル継手の分岐孔(104)を形成する予定位置の周囲に配置される。そして、その分岐孔の形成予定位置と電熱線との間には、電熱線が配置されない余白領域(S)が形成される。余白領域は、インナー本体の周方向に短くインナー本体の軸方向に長い形状に形成される。これにより、分岐サドル継手の本管(200)への電気融着接合時に、サドルの管頂部分などにおいて電熱線が金属インサート部材(108)に干渉しない所定距離を保つことができるようにしつつ、サドルの周方向において、電熱線と分岐孔(104)とが大きく離れないようにして、分岐孔の周囲に必要以上に非融着部分が生じることを防止できるようになる。
【0023】
第5の発明によれば、第1の発明と同様の効果を奏する。
【0024】
第6の発明は、第1ないし第5のいずれかの発明の融着インナーがサドルの裏面に一体的に成形された、分岐サドル継手である。
【0025】
第6の発明では、分岐サドル継手(100)は、たとえば本管から枝管を取り出す際に本管の外面に電気融着接合される合成樹脂製の継手である。この分岐サドル継手の成形時には、サドル(102)の裏面に融着インナー(10)が一体的に成形される。
【0026】
第6の発明によれば、本管への融着後に本管から乖離したり、不完全融着による水漏れ事故が発生する等の不具合が生じることがない。
【0027】
この発明によれば、貫通孔と電熱線との間にインナー本体の周方向に短くインナー本体の軸方向に長い形状の余白領域を形成するようにしたため、融着インナーの汎用性が高くなり、しかもその融着インナーを用いて成形した分岐サドル継手を本管に融着させた後に不具合などが生じにくい。
【0028】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施例の融着インナーを示す図解図である。
【図2】図1の融着インナーを用いて成形した分岐サドル継手を示す斜視図である。
【図3】図1の分岐サドル継手の周方向断面を示す断面図である。
【図4】図1の分岐サドル継手の軸方向断面を示す断面図である。
【図5】図1の融着インナーを示す平面図である。
【図6】図1の融着インナーにおいて、電熱線のリング部分の長径方向の一方端部の内側を示す図解図である。
【図7】図1の融着インナーにおいて、電熱線のリング部分の長径方向の他方端部の内側を示す図解図である。
【図8】図1の融着インナーに形成された余白領域を示す平面図である。
【図9】図3の分岐サドル継手の周方向断面の要部を示す図解図である。
【図10】図4の分岐サドル継手の軸方向断面の要部を示す図解図である。
【図11】(a)は、従来の融着インナーを示す平面図であり、(b)は、(a)の融着インナーを用いて成形した分岐サドル継手の軸方向の断面を示す図解図である。
【図12】この発明の別の実施例の融着インナーを示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1を参照して、この発明の一実施例である融着インナー10は、図2に示すような電気融着型の分岐サドル継手100を成形するために用いられるものであり、インナー本体12と、インナー本体12に装着される電熱線14とを備えている。
【0031】
ここで、融着インナー10の具体的な説明に先立って、分岐サドル継手100について説明しておく。
【0032】
図2‐図4を参照して、分岐サドル継手100は、ポリエチレン等の合成樹脂製の本管200から枝管を取り出す際に本管200の外面に電気融着接合されるポリエチレン等の合成樹脂製の継手であり、分岐孔104が形成されたサドル102を備えている。なお、本管200は、ポリエチレン等の合成樹脂からなる水道のための配水管であり、その管径は、たとえば90mmである。
【0033】
図2‐図4に示すように、サドル102は、合成樹脂からなり、この実施例では、ポリエチレンによって形成されている。サドル102は、本管200の外径曲率と同じ内径曲率を有する板状体であり、その軸方向の長さは、たとえば160mmであり、その厚さは、たとえば10mmである。ただし、この実施例における「軸方向」とは、分岐サドル継手100を本管200に取り付けたときの本管200の管軸方向を意味し、「周方向」とは、本管200の周方向を意味する。
【0034】
図3および図4に示すように、サドル102の中央部には、平面視略真円形の分岐孔104が形成される。そして、分岐孔104の周縁部には、分岐孔104からサドル102の径方向外側(つまり、図3,図4でいう上側)に向けて延びる短管状の分水栓接続口(分岐部)106が形成される。
【0035】
分岐部106の上部には、金属インサート部材108が一体的に埋め込まれている。金属インサート部材108は、たとえば砲金等の金属からなり、旋盤等による切削加工によって筒状に形成される。金属インサート部材108は、上下に連続する本体上部108aと本体下部108bとからなり、本体下部108bが、本体上部108aよりも小径な形状になるように形成されている。金属インサート部材108の本体上部108aの内周面には、雌ねじ110が形成されている。そして、この雌ねじ110に、分水栓(図示せず)の雄ねじが螺合されることにより、分水栓が金属インサート部材108を介してサドル102に固定されることとなる。
【0036】
また、サドル102の裏面(つまり、サドル102と本管200との接合面)には、ニクロム線等の電熱線112(14)が設けられている。詳細は後述するように、電熱線112は、分岐孔104を中心にして渦巻き状に巻かれており、その両端部が、サドル102の表面から突出して形成された電源接続端子114に接続されている。そして、この電源接続端子114よりも中央側には、サドル102と本管200とが融着したことを示すためのインジケータ116が形成されている。インジケータ116は、電熱線112によって溶融された樹脂の圧力が自身の根元に作用することによって上昇し、サドル102と本管200とを正しく融着できていることの目安にされる。
【0037】
融着インナー10の説明に戻って、図1,5−8を参照して、融着インナー10は、サドル102の裏面に融着(一体化)させて分岐サドル継手100を成形するものであり、上述したように、インナー本体12、およびインナー本体12に装着される電熱線14を備えている。
【0038】
なお、基本的には、サドル102の裏面に沿うように円弧状に湾曲させた状態のインナー本体12に電熱線14が装着されるが、図面では、分かり易く示すために、平板状のインナー本体12に電熱線14を装着した融着インナー10を図示していることに留意されたい。
【0039】
図1および図5に示すように、インナー本体12は、合成樹脂の射出成形等により形成される略矩形の板状体であり、この実施例では、ポリエチレンによって形成されている。インナー本体12の中央には、平面視略真円形の貫通孔16が形成されている。貫通孔16は、分岐サドル継手100の成形時に分岐孔104が形成される位置に対応して形成されている。インナー本体12の長辺方向の長さは、たとえば160mmであり、その短辺方向の長さは、たとえば100mmであり、その厚さは、たとえば1mmである。
【0040】
なお、分岐サドル継手100の成形時には、このインナー本体12の長辺方向がサドル102(本管200)の「軸方向」に対応するとともに、インナー本体12の短辺方向がサドル102(本管200)の「周方向」に対応する。よって、以下の説明では、インナー本体12の長辺方向を「軸方向」とし、インナー本体12の短辺方向を「周方向」とする。
【0041】
インナー本体12の表面(つまり、サドル102の裏面との接合面)上には、複数の突起18が設けられる。突起18は、たとえば略切頭円錐形状を有しており、インナー本体12の表面から垂直方向に突出して形成される。突起18の高さは、たとえば3mmである。突起18は、貫通孔16を中心にした渦巻き状に並べて配置され、全体としてインナー本体12の軸方向に長い楕円形または楕円近似形(たとえば、楕円形に近似した多角形)のリング状に分布した突起群20を構成する。
【0042】
たとえば、この実施例では、突起群20は、貫通孔16から外側に向かう方向に突起18が一定の間隔を隔てて列状に並ぶ10つの突起群20a,20b,20c,20d,20e,20f,20g,20h,20i,20jからなり、突起群20aと突起群20gとが、突起群20bと突起群20fとが、突起群20cと突起群20hとが、突起群20dと突起群20iとが、そして突起群20eと突起群20jとが貫通孔16を挟んで互いに平行になるように配置されている。以下、突起群20を配置位置などに応じて区別する場合には20に添え字a〜jを付した20a〜20jなどを用い、これらを包括して表現する場合には20を用いる。
【0043】
また、電熱線14は、たとえばニクロム線等であり、貫通孔16の周囲に配置される。電熱線14は、突起群20の各突起18に引っ掛けられながら渦巻き状に巻回されて、インナー本体12の軸方向に長い楕円形または楕円近似形(楕円形に近似した形状)のリング状になるように配置され、そこが電熱線14のリング部分14aとなる。
【0044】
さらに、インナー本体12の表面上には、電熱線14のリング部分14aの長径(長軸)方向の一方端部の内側に、複数(この実施例では、5つ)の突起22が設けられる。そして、電熱線14は、突起22に引っ掛けられることによって葛状(つづら折り状)に配置され、そこが電熱線14の補充部分14bとなる。以下、突起22を配置位置などに応じて区別する場合には20に添え字a〜eを付した22a〜22eなどを用い、これらを包括して表現する場合には22を用いる。
【0045】
具体的には、図6に示すように、突起群20の各突起18に引っ掛けられながら渦巻き状に巻回された電熱線14が、突起群20hの中で最内側の突起18から突起22aを経てインナー本体12の周方向に向けて延ばされ、突起群20eの手前で突起22bに引っ掛けられてU字状に戻される。そして、突起22cを経て元の方向に巻回された後、突起群20fの中で最内側の突起18からインナー本体12の周方向に向けて延ばされ、突起22cの手前で突起22dに引っ掛けられてU字状に戻され、突起22eを経て再度元の方向へ巻回される。こうすることにより、リング部分14aの長径方向の一方端部の内側には、電熱線14が葛状に配置された補充部分14bが形成される。
【0046】
さらにまた、図1および図5に戻って、リング部分14aの長径方向の他方端部の内側には、支持ピン24が設けられる。そして、リング部分14aの内周側端から延ばした電熱線14が、支持ピン24に巻き付けられて、電熱線14を突起群20の外側まで引き出すための起点とされる。
【0047】
具体的には、図7に示すように、インナー本体12の表面上には、突起群20の内側および外側に、それぞれ1つずつ支持ピン(突起)24,26が設けられる。たとえば、各支持ピン24,26は、たとえば略切頭円錐形状を有しており、インナー本体12の表面から垂直方向に突出して形成されている。一方の支持ピン(以下、「内側支持ピン」ということがある)24は、突起群20の内側であってかつ電熱線14の内周側の端が引っ掛けられる突起18の近傍に設けられ、もう一方の支持ピン(以下、「外側支持ピン」ということがある)26は、内側支持ピン24から突起群20の外側に延ばした直線上に設けられる。そして、電熱線14のリング部分14aの内周側の端が、内側支持ピン24に複数回巻き付けられて、リング部分14aの上方を横断して突起群20の外側へ引き出され,外側支持ピン26に複数回巻き付けられる。こうすることにより、リング部分14aの長径方向の他方端部の内側には、リング部分14aを横断する横断部分14cの起点が設けられるので、この実施例では、その内側支持ピン24周辺の電熱線14が電熱線14の補充部分14bとして代用される。
【0048】
また、図1および図5に戻って、インナー本体12の軸方向の両端部には、たとえばインナー本体12の対角線上に、それぞれ始端ピン28、および終端ピン30が設けられる。始端ピン28、および終端ピン30は、インナー本体12に電熱線14を装着するときに、電熱線14の始端および終端を巻き付けるための部位であり、インナー本体12の表面から突出して形成されている。
【0049】
上記のようにして貫通孔16の周囲に電熱線14を配置することにより、図6に示すように、貫通孔16と電熱線14との間には、電熱線14が配置されない余白領域Sが形成される。余白領域Sは、インナー本体12の周方向に短くインナー本体12の軸方向に長い形状に形成され、インナー本体12の軸方向における貫通孔16と電熱線14との距離aよりもインナー本体12の周方向における貫通孔16と電熱線14との距離bが小さくなるように(つまり、a>bとなるように)設定されている。
【0050】
ところで、図3および図9に示すように、このような融着インナー10を用いて成形した分岐サドル継手100では、上述したように、融着インナー10をサドル102の裏面に融着(一体化)させる際にインナー本体12をサドル102の裏面に沿うように湾曲させていることにより、サドル102の周方向において、電熱線112(14)と金属インサート部材108とが上下方向に離れることとなる。このため、電熱線112の最も内側の部分と金属インサート部材108(の本体下部108b)とは、分岐サドル継手100の本管200への電気融着接合時に電熱線112の熱が金属インサート部材108の許容値以上の熱伝導を発生させたり、移動した電熱線14に接触したりする恐れのない許容範囲の距離を保つことができるようになる。すなわち、本実施例の融着インナー10を用いて成形した分岐サドル継手100では、サドル102を湾曲させることにより電熱線112と金属インサート部材108とが上下方向に離れるので、サドル102の周方向における電熱線112と金属インサート部材108との最短距離Lが、電熱線112が金属インサート部材108に干渉しない所定距離と等しいかそれよりも大きくなっている。
【0051】
ここで、たとえば、図11(a)および(b)に示すように、インナー本体12の貫通孔16の周囲に電熱線14を円形または円近似形(たとえば、円形に近似した多角形状)に配置している融着インナー10Aを用いて成形した、分水栓を装着するタイプの分岐サドル継手100Aでは、サドル102の軸方向において、特にサドル102の管頂部分などで、電熱線112(14)の最も内側の部分と金属インサート部材108との距離(つまり、電熱線112と金属インサート部材108との最短距離)M1が、上記の所定距離よりも小さくなってしまうし、しかも、電熱線112を貫通孔16側に寄せて配置することで、インジケータ116の下に電熱線112が位置しなくなると、インジケータ116が適切に機能しなくなる可能性も高い。また、それを改善するために、電熱線112を貫通孔16から充分に離して配置するようにすると、サドル102の周方向において分岐孔104の周囲に必要以上に非融着部分が生じてしまうため、それが分岐サドル継手100の融着後の本管200からの乖離や、不完全融着による水漏れ事故等の原因となる。
【0052】
しかしながら、本実施例では、上述したように、貫通孔16と電熱線14との間にインナー本体12の周方向に短くインナー本体12の軸方向に長い余白領域Sを形成するようにしているので、図4および図10に示すように、サドル102の軸方向において、電熱線112の最も内側の部分と金属インサート部材108との距離(つまり、電熱線112と金属インサート部材108との最短距離)Mを上記の所定距離と等しいかそれよりも大きくなるようにして、電熱線14が金属インサート部材108に干渉しないようにしつつ、図3および図9に示すように、サドル102の周方向においても、電熱線112の最も内側の部分が分岐孔104と(つまり、電熱線14の最も内側の部分が貫通孔16と)必要以上に離れないようにして、分岐孔104の周囲に必要以上に非融着部分が生じることを防止できる。たとえば、本実施例では、サドル102の軸方向における電熱線112と金属インサート部材108との最短距離Mと、サドル102を湾曲させたことにより上下方向に離れた上記の最短距離Lとがほぼ等しく(つまり、M≒L)なるように、余白領域Sのサイズ(a,b)が設定されている。
【0053】
特に、本実施例の分岐サドル継手100においては、上述したように、金属インサート部材108の本体下部108bが、本体上部108aよりも小径な形状になるように形成されているので、サドル102の軸方向ならびに周方向において、電熱線112と金属インサート部材108との間に上記の所定距離を保持させつつ、電熱線112をより内側(分岐孔104側)によせて配置することが可能であり、分岐孔104の周囲には、極めて小さい範囲の非融着部分しか生じない。
【0054】
このようにしたことで、本実施例の融着インナー10を用いて成形した分岐サドル継手100では、本管200への電気融着接合時に電熱線112が金属インサート部材108に干渉することを回避しつつ、分岐孔104の周囲に必要以上に非融着部分が生じてしまうことを防止できる。そして、融着インナー10を、分岐部106に金属インサート部材108が埋設された分岐サドル継手のみならず、分岐部106に金属インサート部材108が埋設されていない分岐サドル継手にも適用することが可能である。
【0055】
また、分岐サドル継手においては、電熱線14がインジケータ116の下側に位置するように配置されなくてはならないが、分岐部106に金属インサート部材108が埋設された分岐サドル継手の場合、分岐部106の外径が大きくなることから、インジケータ116は分岐孔104からその分だけ離れた位置に設けられる。したがって、分岐孔104の周囲の非融着部分を小さくするためには、サドル102の軸方向において広い領域にわたって電熱線14を配置しなくてはならない。その様に電熱線14を配置する手段として、電熱線14のリング部分14aの巻回数を多くする方法や、また、電熱線14を巻回させてリング部分14aを形成しつつ、そのリング部分14aの外側にインジケータ116の下側に電熱線14が位置するように電熱線14を配置し足す方法などを採用し得る。
【0056】
さらに、この発明のより好ましい実施態様としては、電熱線14のリング部分14aの巻回数を多くせずにリング部分14の内側に電熱線14を配置することによって、サドル102の非融着部分を小さい範囲に抑えつつ、インジケータ116の下側に電熱線14の主となる部分であるリング部分14aを位置させることが望ましい。なぜなら、インジケータ116の下側に電熱線14の主となる部分であるリング部分14aを位置させることで、インジケータ116をより正確にサドル102と本管200との融着状態に応答させることができるからである。
【0057】
そこで、本実施例では、図1、図5、図6および図7に示すように、電熱線14のリング部分14aを形成するとともに、分岐サドル継手100の本管200への電気融着接合時に電熱線14が金属インサート部材108に干渉しない範囲において、リング部分14aの長径方向端部の内側にも電熱線14を配置し足して、補充部分14bを形成するようにしている。すなわち、本実施例では、電熱線14を巻回させてリング部分14aを形成するとともに、そのリング部分14aの長径方向端部の内側に補充部分14bを形成することによって、インジケータ116の下側に電熱線14のリング部分14aを位置させて、インジケータ116をより正確にサドル102と本管200との融着状態に応答させるようにするとともに、サドル102の非融着部分を極めて小さい範囲に抑えて、サドル102の軸方向における融着性能を向上させるようにしている。
【0058】
図1、図5、図6および図7を参照して、この実施例の融着インナー10を製造する方法を以下に示す。
【0059】
先ず、インナー本体12を分岐サドル継手100のサドル102の裏面に沿うように湾曲させて、その状態で固定治具(図示せず)を装着して固定することによって、インナー本体12の形状を保持する。
【0060】
そして、自動巻き上げ機を用いて自動でインナー本体12の表面上に電熱線14を装着する。なお、自動巻き上げ機の種類は、特に限定されず、この発明の要旨ではないため、詳細は省略する。
【0061】
インナー本体12の表面上に電熱線14を装着する際には、先ず、電熱線14を始端ピン28に複数回巻き付けて、案内ピン32を介して巻き始めの突起18となる突起群20eの最外側の突起18に引っ掛ける。そして、電熱線14を突起群20の各突起18に引っ掛けて渦巻き状に巻回してリング部分14aを形成するとともに、そのリング部分14aの長径方向の一方端部の内側付近で、上述したように、電熱線14を各突起22に引っ掛けて葛状に配置する。
【0062】
具体的には、渦巻き状に巻回された電熱線14を、突起群20hの中で最内側の突起18から突起22aに引っ掛けて、そこからインナー本体12の周方向に向けて延ばすとともに、突起群20eの手前で突起22bに引っ掛けてU字状に戻す。そして、突起22cに引っ掛けて、そこから元の巻回方向へ再度延ばす。それから、突起群20fの中で最内側の突起18を経て、突起群20fの中で最内側の突起18からインナー本体12の周方向に向けて延ばすとともに、突起22cの手前で突起22dに引っ掛けてU字状に戻す。そして、突起22eに引っ掛けて、そこから元の巻回方向へ再度延ばす。
【0063】
続いて、電熱線14が、巻き終わりの突起18となる突起群20bの最内側の突起18まで到達すると、その電熱線14を内側支持ピン24に向けて延ばし、内側支持ピン24に複数回巻き付けて、そこからリング部分14aを横断して突起群20の外側へ引き出し、外側支持ピン26に複数回巻き付ける。そして、案内ピン32を介して終端ピン30に複数回巻き付ける。
【0064】
このようにして、インナー本体12の表面上に電熱線14が装着されると、ヒータなどの加熱器(図示せず)によって突起18,22の先端を過熱して溶融させて、突起18,22に引っ掛けている電熱線14が外れないように係止し、融着インナー10の製造作業を終了する。
【0065】
次に、このような融着インナー10を用いて、図2に示すような分岐サドル継手100を製造する方法を以下に示す。
【0066】
先ず、融着インナー10を、インナー本体12の表面を上にした状態で下金型の上に載置して、インナー本体12の貫通孔16内に金属製の筒体等を挿入固定し、上金型を型閉めする。このとき、インナー本体12の一方の案内ピン32と始端ピン28との間で電熱線14に電源接続端子114を取り付けるとともに、もう一方の案内ピン32と終端ピン30との間にも電源接続端子114を取り付けておく。
【0067】
それから、金型内にポリエチレン等の溶融樹脂を射出して、金型内に溶融樹脂を充満させ、融着インナー10と溶融樹脂とを一体的に融着接合させる。そして、溶融樹脂が固化するのを待って型開きすると、サドル102の裏面に融着インナー10が一体的に成形された分岐サドル継手100が得られる。
【0068】
以上のように、この実施例では、電熱線14と貫通孔16との間に、インナー本体12の周方向に短くインナー本体12の軸方向に長い形状の余白領域Sを形成するようにしているので、分岐サドル継手100の本管200への電気融着接合時に電熱線14が金属インサート部材108に干渉しやすいサドル102の管頂部分などにおいても、電熱線14が金属インサート部材108に干渉しない所定の距離を保つことができるようにしつつ、サドル102の周方向において、電熱線112と分岐孔104とが大きく離れないようにして、分岐孔104の周囲に必要以上に非融着部分が生じることを防止できるようになる。
【0069】
すなわち、分岐サドル継手100の本管200への電気融着接合時に電熱線14が金属インサート部材108に干渉することを回避しつつ、分岐孔104の周囲に必要以上に非融着部分が生じてしまうことを防止できるので、融着インナー10を、分岐部からサドルと同じ樹脂材料で形成された枝管が立ち上がるタイプなどの、分岐部106に金属インサート部材108が埋設されない分岐サドル継手のみならず、上述した特許文献2のような分岐部106に金属インサート部材108が埋設される分岐サドル継手(つまり、分水栓を装着するタイプの分岐サドル継手)を成形する際にも適用することが可能になる。したがって、融着インナー10が汎用性に優れる。
【0070】
しかも、分岐孔104の周囲に必要以上に非融着部分が生じてしまうことがないことにより、融着後の分岐サドル継手100の本管200からの乖離や、不完全融着による水漏れ事故等の不具合を回避することができるようになる。したがって、融着インナー10を用いて成形した分岐サドル継手100を本管200に融着した後に不具合が生じない。
【0071】
さらに、この実施例では、分岐サドル継手100の本管200への電気融着接合時に電熱線14が金属インサート部材108に干渉しない範囲において、電熱線14のリング部分14aの長径方向の端部の内側にも電熱線14を配置し足して補充部分14bを形成するようにしている。このため、融着インナー10をサドル102の裏面に融着させて分岐サドル継手100を成形した際に、たとえばインジケータ116の下側に電熱線14のリング部分14aを位置させつつ、分岐孔104の周囲の非融着部分を極めて小さい範囲に抑えて、サドル102の軸方向における融着性能を向上させることができるようになる。したがって、融着後の分岐サドル継手100の本管200からの乖離や、不完全融着による水漏れ事故等の不具合をより確実に防止できるようになる。
【0072】
なお、上の説明では、電熱線14のリング部分14aをインナー本体12の軸方向に長い楕円形または楕円近似形のリング状に配置するものとして説明したが、この明細書中における「楕円形または楕円近似形のリング状」とは、発明の本旨を変更しない範囲内において、その外縁が楕円形または楕円近似形に形成されていて、かつその中央部にインナー本体の周方向に短くインナー本体の軸方向に長い形状の空き空間(余白領域S)が形成されているものを示し、リング幅が一定でないものや、外縁が小判形などの扁平長円形状や楕円形に近似した正多角形状になっているものをも包含する意図であることに留意されたい。
【0073】
また、上述の実施例では、電熱線14としてニクロム線を使用したが、これに限定される必要はない。たとえば、電熱線14には、銅、鉄クロム、クロメル、銅ニッケル、銅マンガンニッケル等の一般用抵抗用線材を使用することができる。
【0074】
さらに、上述の実施例では、突起18が貫通孔16を中心にした渦巻き状に並べて配置され、インナー本体12の貫通孔16の周囲には、10つの突起群20a〜20jが全体としてインナー本体12の軸方向に長い楕円形または楕円近似形のリング状に分布したが、これに限定される必要はない。電熱線14のリング部分14aをインナー本体12の軸方向に長い楕円形または楕円近似形なるように配置できるのであれば、必ずしも電熱線14を渦巻き状に巻回させる必要はなく、突起18の分布形状や電熱線14の配置形状は適宜変更され得る。
【0075】
さらにまた、リング部分14aの長径方向端部の内側にも突起22を設け、その突起22に引っ掛けた電熱線14を葛状に配置したが、これに限定される必要もない。リング部分14aの長径方向端部の内側に電熱線14を配置し足すことで非融着部分をなくすまたは極めて小さい範囲に抑えることができるのであれば、必ずしも電熱線14を葛状に配置する必要はなく、リング部分14aの長径方向端部の内側における突起22の分布形状や電熱線14の配置形状は適宜変更され得る。
【0076】
一例を挙げると、図12に示すように、電熱線14をインナー本体12の表面上の突起34に引っ掛けながら葛状に配置することによって、リング部分14aおよび補充部分14bを形成するようにしてもよい。ただし、この場合には、電熱線14を一筆書き可能な形状になるように突起34の分布形状を決める必要がある。
【0077】
また、上述の実施例では、電熱線14のリング部分14aの長径方向の他方端部の内側に内側支持ピン24を設けて、その内側支持ピン24に電熱線14を巻き付けてリング部分14aを横断する横断部分14cの起点を形成し、そこを電熱線14の補充部分14bとして代用したが、これに限定される必要もない。電熱線14のリング部分14aの長径方向の各端部の内側にそれぞれ電熱線14を葛状に配置し、それ以外の部分に内側支持ピン24を設けるようにしてもよい。
【0078】
さらに、上述の実施例では、突起18,22を略切頭円錐形状に形成したが、これに限定される必要はない。たとえば、突起18,22を円柱状に形成するようにしてもよいし、四角柱状に形成するようにしてもよいし、また先端に向かうに従って拡径する形状に形成するようにしてもよい。要は、電熱線14を突起18,22に引っ掛けて配置することができるのであれば、突起18,22の形状は適宜変更され得る。
【0079】
さらにまた、必ずしもインナー本体12の表面上に設けた突起18,22,34に引っ掛けて電熱線14を配置する必要はなく、インナー本体12の表面上に溝を設けておき、その溝に沿って電熱線14を配置するようにしてもよい。
【0080】
さらに、上述の実施例では、インナー本体12には、分岐サドル継手100の分岐孔104に対応する貫通孔16が形成されており、その貫通孔16の周囲に電熱線14をインナー本体12の軸方向に長い楕円形または楕円近似形のリング状に配置したが、これに限定される必要はない。
【0081】
たとえば、図示は省略するが、貫通孔16が形成されていないインナー本体12に対して、サドル102の分岐孔104に対応する位置、つまり、分岐孔104の形成予定位置の周囲に電熱線14をインナー本体12の軸方向に長い楕円形または楕円近似形のリング状配置しておくようにしてもよい。そして、その後で機械加工によってインナー本体12に貫通孔16を形成するようにしてもよいし、融着インナー10をサドル102の裏面に一体的に成形した後で、インナー本体12を含むサドル102に分岐孔104を機械加工によって形成するようにしてもよい。
【0082】
なお、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 …融着インナー
12 …インナー本体
14,112 …電熱線
14a …リング部分
14b …補充部分
16 …貫通孔
18,22,34 …突起
24 …内側支持ピン
26 …外側支持ピン
100 …分岐サドル継手
102 …サドル
104 …分岐孔
106 …分岐部
108 …金属インサート部材
108a …本体上部
108b …本体下部
116 …インジケータ
S …余白領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐部に金属インサート部材が埋設された電気融着型の分岐サドル継手に適用可能な融着インナーにおいて、
円形の貫通孔を有するインナー本体、および
前記インナー本体の表面上に装着され、前記貫通孔の周囲に配置される電熱線を含み、
前記電熱線と前記貫通孔との間に、分岐部に金属インサート部材が埋設されるときにその金属インサート部材に前記電熱線が干渉しないように前記インナー本体の周方向に短く前記インナー本体の軸方向に長い形状の余白領域を形成したことを特徴とする、融着インナー。
【請求項2】
前記電熱線は、その外縁が前記インナー本体の軸方向に長い楕円形または楕円近似形になるように配置される、請求項1記載の融着インナー。
【請求項3】
前記電熱線を渦巻き状に巻回して前記インナー本体の軸方向に長い楕円形または楕円近似形のリング状に配置することによりリング部分を形成するとともに、前記リング部分の長軸方向の端部の内側に前記電熱線を葛状に配置することにより補充部分を形成した、請求項2記載の融着インナー。
【請求項4】
前記リング部分の長軸方向の一方端部の内側には、前記補充部分が形成され、前記リング部分の長軸方向の他方端部の内側には、前記電熱線の内周端を前記リング部分の外側まで引き出す際に起点にされる支持ピンが設けられ、その支持ピンに前記電熱線が巻き付けられる、請求項1ないし3のいずれかに記載の融着インナー。
【請求項5】
円形の分岐孔を有しかつ分岐部に金属インサート部材が埋設された電気融着型の分岐サドル継手に適用可能な融着インナーにおいて、
インナー本体、および
前記インナー本体の表面上に装着され、前記分岐孔の形成予定位置の周囲に配置される電熱線を含み、
前記電熱線と前記分岐孔の形成予定位置との間に、分岐部に金属インサート部材が埋設されるときにその金属インサート部材に前記電熱線が干渉しないように前記インナー本体の周方向に短く前記インナー本体の軸方向に長い形状の余白領域を形成したことを特徴とする、融着インナー。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の融着インナーがサドルの裏面に一体的に成形された、分岐サドル継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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