説明

融雪用SiC焼結体

【課題】道路等に敷設する際の手間と時間を低減して設置コスト及び維持コストを低減し、融雪効率の高い融雪材を提供する。
【解決手段】歩道、駐車場、ポーチ、壁面、屋根等の積雪可能な箇所に用いる融雪材を1400〜1500℃で焼成したSiC焼結体で構成し、積雪した雪等を該SiC焼結体から放射される遠赤外線で融雪する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠赤外線を放射して融雪する用途に使用する融雪用SiC焼結体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、道路の舗装内に遠赤外線電熱ヒーター部材を埋設すると共に遠赤外線電熱ヒーター部材の上側の舗装材に遠赤外線放射素子を混入し、路面の上方に配置された遠赤外線照射装置を配置され、遠赤外線照射装置の遠赤外線放射手段から放射される遠赤外線を反射手段により路面に向けて反射して照射して遠赤外線電熱ヒーター部材及び遠赤外線放射素子から放射される遠赤外線により路面の積雪を融雪する凍結防止・融雪システムが提案されている。
【0003】
この種の融雪システムにあっては、先ず敷設する際には道路等を掘り起こして遠赤外線電熱ヒーター部材を埋設した後、遠赤外線放射素子が混入された舗装材で舗装しなければならず、作業に手間と時間がかかり、設備コストが増大する問題を有している。また、上記路面の近傍に設置された遠赤外線照射装置から遠赤外線を路面に向かって照射して遠赤外線放射素子から遠赤外線を励起して放射させて遠赤外線電熱ヒーター部材と共に路面に積もった雪を融雪しているが、路面と遠赤外線照射装置の間には車両や人の通行を可能にするため、ある程度の距離を設ける必要があり、路面に対する遠赤外線の放射効率が悪くなり、積もった雪を効率的に融雪できない問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−188109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、先ず敷設する際には手間と時間がかかり、設備コストが増大する点にある。また、路面と遠赤外線照射装置の間に距離があるため、路面に対する遠赤外線の放射効率が悪くなり、積もった雪を効率的に融雪できない点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1は炭化ケイ素(SiC)含有生地を1400〜1500℃で焼成したSiC焼結体を、表面に付着した雪を融雪する用途に使用することを最も主要な特徴とする。
【0007】
請求項2は請求項1において、SiC焼結体は炭化ケイ素70〜95%(体積比)にガラス材、粘土等のバインダを混合した生地を1400〜1500℃で焼成したことを最も主要な特徴とする。
【0008】
請求項3は請求項1において、融雪用途は歩道、駐車場、ポーチ、壁面、屋根等の積雪可能な個所としたことを最も主要な特徴とする。
【0009】
請求項4は炭化ケイ素(SiC)含有生地を1400〜1500℃で焼成したSiC焼結体をコンクリートブロックの少なくとも上面に一体化し、表面に付着した雪を融雪する融雪用途に使用することを最も主要な特徴とする。
【0010】
請求項5は炭化ケイ素(SiC)含有生地を1400〜1500℃で焼成したSiC焼結体を屋根材の少なくとも上面に一体化し、表面に付着した雪を融雪する融雪用途に使用することを最も主要な特徴とする。
【0011】
請求項6は炭化ケイ素(SiC)含有生地を1400〜1500℃で焼成したSiC焼結体を煉瓦材の少なくとも上面に一体化し、表面に付着した雪を融雪する用途に使用することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、敷設する際の手間と時間を低減して設置コスト及び維持コストを低減することができる。また、積雪に対して遠赤外線を効率的に放射して融雪効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】融雪用SiC焼結体を歩道の融雪材として使用した例を示す説明図である。
【図2】黒体に対する融雪用SiC焼結体の放射輝度を示すチャートである。
【図3】融雪用SiC焼結体の放射率を示すチャートである。
【図4】コンクリートブロックの敷設例を示す説明図である。
【図5】屋根材の敷設例を示す説明図である。
【図6】煉瓦材の敷設例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
歩道やコンクリートブロック、屋根材や煉瓦材に設けられる融雪材をSiC焼結体で構成し、積雪した雪等をSiC焼結体から放射される遠赤外線で融雪することを最良の実施形態とする。
【実施例1】
【0015】
以下、実施例を示す図に従って本発明を説明する。
図1に示すように、歩道の路面には融雪用SiC焼結体としての多数の路面融雪パネル1が敷設されている。路面融雪パネル1が敷設される歩道としては歩行者が通行する歩道の他にポーチ、駐車場等のように比較的低荷重用途で積雪可能な路面を含む。なお、図中の符号3は仕切りブロックである。
【0016】
上記路面融雪パネル1はSiC(炭化ケイ素)を含有する焼結体で構成される。具体的にはSiCを体積比で70〜95%、含有し、ガラス、粘土等のバインダを体積比で5〜30%、混合した生地を1450〜1500℃で焼成したもので、使用用途に応じて適宜の形状に形成する。上記SiCによる遠赤外線の放射原理に付いては公知であるため、その詳細については省略する。
【0017】
上記路面融雪パネル1に含有されるSiCとしては要求される路面融雪パネル1の強度、耐衝撃度等の関係から異なる粒度の複数種類を混合して使用する。具体例としては平均粒度0.05〜3mmの内から5種類の平均粒度のSiCを選択し、均一な分散状態になるように撹拌して使用する。平均粒度が大きいSiCの混合比率が高い場合には高い強度、耐衝撃度を得ることができるが、重量化するため、上記したように要求される強度、耐衝撃度及び重量等の関係から使用するSiCの平均粒度及び割合が決定される。
【0018】
上記路面融雪パネル1は歩道等の路面に敷設される。歩道に対する路面融雪パネル1の敷設態様としては整地された路盤上にコンクリートを打った後に路面融雪パネル1を互いに密着するように配置して敷設する態様又は相互間に適宜の間隔をおいて配置して敷設する態様等のいずれであってもよい。
【0019】
上記路面融雪パネル1は、図2及び図3に示すように測定基準としての黒体と同等の遠赤外線放射輝度で、波長14マイクロメータで遠赤外線放射率が97%の特性を有している。そして該路面融雪パネル1は上面に積もった雪をSiCから放射される遠赤外線により加熱して融雪する。
【0020】
以下に路面融雪パネル1による融氷の実験例を示す。路面融雪パネル1として400×350×10(厚さ)mmを使用し、環境温度3℃、パネル上面温度約0℃において路面融雪パネル1の上面に10mm立方体形状の氷塊を載置してその融氷時間を測定した。上記実験において路面融雪パネル1に載置された氷塊は載置後、約10秒後に融氷が始まり、約3分で完全に融氷した。なお、比較対象として陶磁器製タイル上に同形状の氷塊を載置して融氷時間を測定したが、上記3分後においても融氷に至らず、載置された際の形状を保った。
【0021】
本実施例は歩道上に路面融雪パネル1を敷設することにより該路面融雪パネル1に含有されたSiCから放射される遠赤外線により積雪を融雪することができ、従来のように地中に融雪装置を埋設したりする作業を不要にすることができ、敷設作業性に優れている。また、路面融雪パネル1に含有されたSiCから放射される遠赤外線により積雪を融雪するため、電力消費がなく、維持コストがかからない。
【実施例2】
【0022】
請求項4に係る発明事項を特徴とする実施例2は歩道等に敷設されるインターロッキングブロック等のコンクリートブロックに具体化した例を示す。
図4に示すように、歩道等に敷設されるインターロッキングブロック等のコンクリートブロック11の上面には上記した融雪パネル13が固着される。融雪パネル13の固着態様としてはコンクリートブロック11のコンクリートが未硬化時に上面に融雪パネル13を張り付け、コンクリートの効果により一体化する固着態様、コンクリートが硬化したコンクリートブロック11の上面にセメント、接着剤等を介して融雪パネル13を固着する固着態様のいずれであってもよい。
コンクリートブロック11の上面に積もった雪の融雪作用に付いては、実施例1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【実施例3】
【0023】
請求項5に係る発明事項を特徴とする実施例3は家屋等の建造物の屋根に敷設される瓦等の屋根材に具体化した例を示す。
図5に示すように、建造物の屋根に敷設される瓦やスレート等の屋根材21の上面には上記した融雪パネル23が固着される。融雪パネル23の固着態様としては屋根材21が瓦の場合にあっては瓦生地の上面に融雪パネル23の焼結前の生地を一体化した後に焼成して一体化する固着態様、焼成して製造された瓦の上面にセメント、接着剤等を介して融雪パネル23を固着する固着態様のいずれであってもよい。
屋根材21の上面に積もった雪の融雪作用に付いては、実施例1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【実施例4】
【0024】
請求項6に係る発明事項を特徴とする実施例4は各種建造物を構築する際に使用する煉瓦材に具体化した例を示す。
図6に示すように、各種建造物を構築する際に使用する煉瓦材31の上面には上記した融雪パネル33が固着される。融雪パネル33の固着態様としては煉瓦材生地を焼成して煉瓦材31を製造する際に煉瓦生地の上面に融雪パネル33の焼結前の生地を一体化した後に焼成して一体化する固着態様、焼成して製造された煉瓦材31の上面にセメント、接着剤等を介して融雪パネル33を固着する固着態様のいずれであってもよい。
煉瓦材31に積った雪の融雪作用に付いては、実施例1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【実施例5】
【0025】
実施例5は請求項7に係るタイル材に関し、タイル材(図示せず)の上面には上記した融雪パネル(図示せず)が固着される。タイル材に対する融雪パネルの固着態様としてはタイル材を製造する際にタイル生地の上面に融雪パネルの焼結前の生地を一体化した後に焼成して一体化する固着態様、焼成して製造されたタイル材の上面にセメント、接着剤等を介して融雪パネルを固着する固着態様のいずれであってもよい。
タイル材に積った雪の融雪作用に付いては、実施例1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0026】
1 融雪用SiC焼結体としての路面融雪パネル
11 コンクリートブロック
13 融雪用SiC焼結体としての融雪パネル
21 屋根材
23 融雪用SiC焼結体としての融雪パネル
31 煉瓦材
33 融雪用SiC焼結体としての融雪パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素(SiC)含有生地を1400〜1500℃で焼成したSiC焼結体を、表面に付着した雪を融雪する用途に使用する融雪用SiC焼結体。
【請求項2】
請求項1において、SiC焼結体は炭化ケイ素70〜95%(体積比)にガラス材、粘土等のバインダを混合した生地を1400〜1500℃で焼成した融雪用SiC焼結体。
【請求項3】
請求項1において、融雪用途は歩道、駐車場、ポーチ、壁面、屋根等の積雪可能な個所とした融雪用SiC焼結体。
【請求項4】
炭化ケイ素(SiC)含有生地を1400〜1500℃で焼成したSiC焼結体をコンクリートブロックの少なくとも上面に一体化し、表面に付着した雪を融雪する用途に使用する融雪用SiC焼結体。
【請求項5】
炭化ケイ素(SiC)含有生地を1400〜1500℃で焼成したSiC焼結体を屋根材の少なくとも上面に一体化し、表面に付着した雪を融雪する用途に使用する融雪用SiC焼結体。
【請求項6】
炭化ケイ素(SiC)含有生地を1400〜1500℃で焼成したSiC焼結体を煉瓦材の少なくとも上面に一体化し、表面に付着した雪を融雪する用途に使用する融雪用SiC焼結体。
【請求項7】
炭化ケイ素(SiC)含有生地を1400〜1500℃で焼成したSiC焼結体をタイル材の少なくとも上面に一体化し、表面に付着した雪を融雪する用途に使用する融雪用SiC焼結体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−111645(P2012−111645A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259682(P2010−259682)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(505384483)株式会社巧 (9)
【出願人】(508323355)有限会社カネ鉄商会 (5)
【Fターム(参考)】