説明

表示パネルの乾燥処理装置及び表示パネルの洗浄・乾燥方法

【課題】基板間の隙間等の乾燥残渣を抑制することができる表示パネルの乾燥処理装置及び表示パネルの洗浄・乾燥方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる表示パネルの乾燥処理装置は、第1基板10と第2基板20とをシール材30を介在させて重ね合わせた液晶表示パネル100の配線群27を乾燥させるものである。そして、液晶表示パネル100の第1基板10側から第2基板20に向けて、吹き出し口から第1基板10と第2基板20との隙間に気体を噴射させる隙間部用エアーナイフ80と、隙間部用エアーナイフ80を保持する保持機構71とを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルの乾燥処理装置及び表示パネルの洗浄・乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルは、ガラスなどからなる一対の基板と、両基板間に挟持された液晶とを備える。ここで、各基板の互いに対向する面には、液晶を駆動するための電極パターンがそれぞれ形成されている。また、一対の基板のうち、一方の基板は、他方の基板よりも平面寸法が大きく形成されおり、突出するように配置される。この突出した突出領域には、両基板上に形成された電極に電気的に接続される複数の端子が形成されている。これらの端子には、FPCあるいはドライバICなどの電子部品を実装される。このドライバICは、外部から入力される表示信号等に基づいて、画像の表示に必要な各種の制御信号、走査電圧及び表示電圧等を出力し、液晶表示パネルを駆動させる。
【0003】
液晶表示パネルの端子に電子部品を実装する際に、液晶表示パネルの端子上に、液晶表示パネルに不要な液晶材料や異物が残っていると、半導体素子等の接続不良や、配線間ショート等を生じて、誤作動を起こす場合がある。このため、液晶表示パネルの端子に電子部品を実装する前に、液晶表示パネルに付着した液晶材料や塵埃等を除去するための洗浄を行う。このような洗浄方法としては、例えば蒸気洗浄等のウェット洗浄を用いることができる。蒸気洗浄では、ノズルから端子に向けて高温の水蒸気を吹き付けて、端子に付着した異物等を除去する。このような洗浄は、偏光板等が貼付された液晶表示パネルの端子に対して行われる。偏光板は、高温・高湿下における耐久性が乏しい。このため、偏光板付近に蒸気洗浄時に発生する高温の水蒸気が存在すると、偏光板の偏光性能が急激に低下する。そこで、蒸気洗浄の際、端子部以外の領域を遮蔽板によって遮蔽し、偏光板への水分の浸入を防いでいる。また、偏光板側に水蒸気が回り込むことを防ぐために、遮蔽板と液晶表示パネルとは、密に接触させることが好ましい。
【0004】
このように、端子を蒸気洗浄した後、端子を自然乾燥させる。蒸気洗浄は、高温の蒸気を吹き付けるため、突出領域が熱くなっている。このため、突出領域の熱によって、蒸気洗浄の際に付着した水滴は、蒸発し、速やかに乾燥される。しかし、液晶表示パネルの突出領域近傍の両基板間の隙間では、水滴が蒸発しきれず、完全に乾燥させることができなかった。
【0005】
一方、他の乾燥方法としては、例えばエアー噴射ノズル(エアーナイフ)を用いる方法が挙げられる(特許文献1参照)。エアーナイフは、被乾燥物に付着している水滴等を噴射気体で吹き飛ばし急速乾燥させるものである。しかし、エアーナイフは、ガラス基板等の平面を有する物に対して効果があったが、液晶表示パネルの突出領域近傍の両基板間の隙間等、複雑形状の部分に対しては、十分に水分を除去することができなかった。例えば、蒸気洗浄を行う場合、設備の構造上、遮蔽板とエアーナイフが接触してしまい、従来から用いられるエアーナイフを両基板間の隙間近傍に設置できない等の問題を有していた。このため、両基板間の隙間にエアーを確実に送ることができず、端子部を完全に乾燥させることができなかった。
【特許文献1】特開2000−105078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題を鑑みるためになされたものであり、表示パネルの基板間の隙間等の乾燥残渣を抑制することができる表示パネルの乾燥処理装置及び表示パネルの洗浄・乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる表示パネルの乾燥処理装置は、第2基板上の一辺側に形成された端子部と、前記端子部に形成された配線群と、前記端子部を露出させるように前記第2基板上にシール材を介して接着された第1基板とを有する表示パネルにおける前記配線群を乾燥させる表示パネルの乾燥処理装置であって、前記表示パネルの前記第1基板側から前記第2基板に向けて、吹き出し口から前記第1基板と前記第2基板との隙間に気体を噴射させる隙間部用エアー噴射ノズルと、前記隙間部用エアー噴射ノズルを保持する保持機構とを有するものである。これにより、表示パネルの基板間の隙間等の乾燥残渣を抑制することができる。
【0008】
また、上記の表示パネルの乾燥処理装置であって、前記保持機構は、前記第1基板の前記第2基板とは反対側から見た上面視において、前記隙間部用エアー噴射ノズルの前記吹き出し口を前記第1基板の端面に対し傾斜させ、前記第1基板の端面に向けて、前記隙間部用エアー噴射ノズルから気体を噴射するように前記隙間部用エアー噴射ノズルを保持し、前記隙間部用エアー噴射ノズルの吹き出し口と前記第1基板の端面とのなす角が0度より大きく10度以下となるように前記隙間部用エアー噴射ノズルを保持してもよい。これにより、突出領域の広域に亘って、水滴が飛散することが抑制される。
【0009】
そして、上記の表示パネルの乾燥処理装置であって、前記保持機構は、前記第2基板の表面に対する前記隙間部用エアー噴射ノズルの噴射角度が25〜35度となるように前記隙間部用エアー噴射ノズルを保持してもよい。これにより、第1基板と第2基板との隙間にも気体が届くようになる。
【0010】
さらに、上記の表示パネルの乾燥処理装置であって、前記保持機構は、前記第2基板の表面から前記隙間部用エアー噴射ノズルの先端下辺までの距離が0.1〜0.6mmとなるように前記隙間部用エアー噴射ノズルを保持してもよい。
【0011】
上記の表示パネルの乾燥処理装置であって、前記隙間部用エアー噴射ノズルは、気体の流路となり、前記吹き出し口に向けて幅が狭くなる帯状の溝を内部に有するのが好ましい。これにより、噴射気体の焦点距離を長くすることができる。
【0012】
また、本発明にかかる表示パネルの洗浄・乾燥方法は、第2基板上の一辺側に形成された端子部と、前記端子部に形成された配線群と、前記端子部を露出させるように前記第2基板上にシール材を介して接着された第1基板とを有する表示パネルの洗浄・乾燥方法において、前記配線群に対して、ウェット洗浄を行う工程と、前記第1基板の前記第2基板とは反対側から見た上面視において、隙間部用エアー噴射ノズルの吹き出し口を前記第1基板の端面に対し傾斜させ、前記第1基板の端面に向けて前記隙間部用エアー噴射ノズルから気体を噴射して、ウェット洗浄された前記配線群及び前記第1基板と前記第2基板との隙間部を乾燥させる工程とを有する方法である。これにより、表示パネルの基板間の隙間等の乾燥残渣を抑制することができる。
【0013】
また、上記の表示パネルの洗浄・乾燥方法は、前記乾燥させる工程では、前記第1基板の前記第2基板とは反対側から見た上面視において、前記隙間部用エアー噴射ノズルの吹き出し口と前記第1基板の端面とのなす角を0度より大きく10度以下にして、前記隙間部用エアー噴射ノズルから気体を噴射させてもよい。これにより、突出領域の広域に亘って、水滴が飛散することが抑制される。
【0014】
そして、上記の表示パネルの洗浄・乾燥方法であって、前記乾燥させる工程では、前記第2基板の表面に対する前記隙間部用エアー噴射ノズルの噴射角度を25〜35度にして、前記隙間部用エアー噴射ノズルから気体を噴射させてもよい。これにより、第1基板と第2基板との隙間にも気体が届くようになる。
【0015】
さらに、上記の表示パネルの洗浄・乾燥方法であって、前記乾燥させる工程では、前記第2基板表面から前記隙間部用エアー噴射ノズルの先端下辺までの距離を0.1〜0.6mmにして、前記隙間部用エアー噴射ノズルから気体を噴射させてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表示パネルの基板間の隙間等の乾燥残渣を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態.
まず、表示装置について説明する。ここでは、一例として液晶表示装置について図1を用いて説明する。図1は、液晶表示装置300の構成を示す断面模式図である。また、図2は、液晶表示装置300に用いられる液晶表示パネル100の構成を示す平面模式図である。本実施の形態においては、液晶表示パネル100の一例として、STN型のパッシブマトリクス方式の液晶表示パネルについて説明する。
【0018】
図1に示すように、液晶表示装置300は、表示パネルとしての液晶表示パネル100、バックライトユニット200を備えている。液晶表示パネル100は、入力される表示信号に基づいて画像表示を行う。バックライトユニット200は、液晶表示パネル100の反視認側に配置されており、液晶表示パネル100の背面側から光を照射する。
【0019】
図1及び図2に示すように、液晶表示パネル100は、第1基板10、第2基板20、シール材30、液晶31、スペーサ32、第1電極11、配向膜33、第2電極21、偏光板34を備えている。図1に示すように、液晶表示パネル100は、第1基板10と、第1基板10に対向配置される第2基板20と、両基板を接着するシール材30との間の空間に液晶31を封入した構成を有している。両基板の間は、スペーサ32によって、所定の間隔となるように維持されている。第1基板10及び第2基板20としては、例えば、光透過性のあるガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂などの絶縁性基板が用いられる。ここでは、第1基板10の基板厚を0.7mm、第2基板20の基板厚を0.7mmとする。
【0020】
また、液晶表示パネル100を構成する第1基板10、第2基板20のうち、第2基板20は、第1基板10よりも平面寸法が大きく形成されている。従って、第2基板20は、第1基板10から突出するようにシール材30を介在させて重ねあわされている。液晶表示パネル100の第2基板20が第1基板10から突出して露出する端子部(以下、突出領域と称する)51には、第1基板10及び第2基板20上に形成された電極へ表示信号などを伝送する配線やドライバIC40と接続されるIC接続端子(不図示)、FPC26と接続される外部接続端子(不図示)等が形成されている。
【0021】
図2に示すように、第1基板10には、垂直方向に形成された複数の第1電極11と、それぞれの第1電極11に接続された第1引回し配線12が形成されている。第1電極11及び第1引回し配線12としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電性薄膜から形成される。第1引回し配線12は表示領域50の下端から延設され、端部には第1トランスファーパッド13が形成されている。第1トランスファーパッド13は、後述する第2基板20に形成される第2トランスファーパッド23と接続される。
【0022】
一方、第2基板20には、水平方向に形成された複数の第2電極21と、それぞれの第2電極21と接続された第2引回し配線22が形成されている。第2引回し配線22は表示領域50の右端又は左端から第2基板20の下側まで延設されている。第2引回し配線22の端部には、ドライバIC40と接続するためのIC接続端子(不図示)が形成されている。第2電極21としては、例えば、ITOなどの透明導電性薄膜から形成される。また、第2引回し配線22は、配線抵抗を極力小さくするために、ITOなどの透明導電膜とAlからなる低抵抗金属膜の積層構造としてもよい。垂直方向に形成される第1電極11と、水平方向に形成される第2電極21の交差する箇所が、画素35となる。表示領域50は、マトリクス状に配置された複数の画素35から構成される。
【0023】
また、第2基板20には、第1基板10の第1トランスファーパッド13に接続するための第2トランスファーパッド23が形成されている。第2トランスファーパッド23は、第1基板10と第2基板20とを対向配置したときに、第1トランスファーパッド13に対向するように形成されている。また、第2トランスファーパッド23から第2基板20の下側に延在するように、補助配線24が形成されている。補助配線24としては、第1引回し配線12と同一のITOなどの透明導電膜を用いることができる。
【0024】
補助配線24の端部には、ドライバIC40と接続するためのIC接続端子(不図示)が形成されている。また、補助配線24及び第2引回し配線22の端部に形成されたIC接続端子には、紫外線硬化型や熱硬化型の異方性導電接着材(不図示)を介してドライバIC40が接続される。ドライバIC40は、COG(Chip On Glass)方式によって第2基板20上に直接に設けられている。
【0025】
液晶表示パネル100は、外部から入力される表示信号等に基づいて、画像の表示に必要な各種の制御信号、走査電圧及び表示電圧等を出力するドライバIC40によって駆動される。なお、ドライバIC40を実装したフレキシブル基板(FPC; Flexible Printed Circuit)を液晶表示パネル100に接続する場合もある。
【0026】
また、突出領域51には、複数の外部接続配線25が形成されている。外部接続配線25の一端には、IC接続端子(不図示)が形成されている。このIC接続端子には、上述した異方性導電接着材を介してドライバIC40が接続される。また、外部接続配線25の他端には、それぞれ外部接続端子(不図示)が形成されている。外部接続端子は、ITOなどの透明導電膜で形成されている。図2に示すように、外部接続端子には、FPC26が異方性導電接着材(不図示)を介して接続される。すなわち、FPC26は、第2基板20のドライバIC40が設けられた一辺側に接着される。このように、突出領域51には、外部接続配線25、IC接続端子、外部接続端子等の種々の端子又は配線が形成されている。以下、突出領域51に形成されたこれらの配線又は端子を配線群27とする。なお、ここでの配線群27には、シール材30より外側にて、突出領域51に向けて形成された配線又は端子を含むものとする。
【0027】
なお、FPC26には、図示しない制御回路等が実装されている。制御回路には、ドライバIC40に表示信号、各種の制御信号などを供給するコントローラや、電源電圧、基準電圧などを供給する電源回路などが設けられる。従って、制御回路などが、FPC26を介して第2基板20と接続される。制御回路等から出力される表示信号や各種の制御信号は、外部接続端子、外部接続配線25を介してドライバIC40に入力される。ドライバIC40は、入力される表示信号や制御信号に基づいて、表示領域の各電極に所定のタイミングで電圧を供給する。
【0028】
図1に示すように、第1基板10において、上述した各電極及び配線等の上には配向膜33が形成されている。一方、第2基板20の第1基板10に対向する面には、カラーフィルタ(不図示)、第2電極21、配向膜33が順次積層形成されている。また、第1基板10及び第2基板20の外側の面にはそれぞれ、偏光板34が貼着されている。
【0029】
液晶表示パネル100の背面には、バックライトユニット200が備えられている。液晶表示パネル100の反視認側から当該液晶表示パネル100に対して光を照射する。バックライトユニット200としては、例えば、光源、導光板、反射シート、拡散シート、プリズムシート、反射偏光シートなどを備えた一般的な構成のものを用いることができる。
【0030】
ここで、上述の液晶表示装置300の動作について説明する。各第1電極11には、ドライバIC40から表示電圧が供給される。一方、各第2電極21には、ドライバIC40から走査電圧が供給される。第1電極11と第2電極21の電位差に応じて、各画素を構成する第1電極11と第2電極21との間の液晶の配列が変化する。これにより、バックライトユニット200からの光の透過率が変化して、表示を行うことができる。
【0031】
次に、表示パネルの乾燥処理装置について図3を用いて説明する。図3は、乾燥処理装置の構成を示す概略図である。本実施の形態にかかる乾燥処理装置は、上記の液晶表示パネル100の隙間部を乾燥させることができる。ここで、隙間部とは、突出領域51付近の第1基板10の端部と第2基板20との間に形成されている。第1基板10の端部は、シール材30から突出領域51側に若干突出している。すなわち、第1基板10端部が庇のようになっている。これにより、シール材30の外側では第1基板10端部と第2基板20との間に空間が形成される。この空間が隙間部であり、数μm程度の大きさである。すなわち、シール材30の厚さは、数μm程度である。
【0032】
乾燥処理装置は、乾燥槽70、隙間部用エアー噴出ノズル(以下、隙間部用エアーナイフと称する)80、及び保持機構71を備える。乾燥槽70は、搬入口72及び搬出口73を有し、洗浄された液晶表示パネル100をコロ等のパネル搬送機構75により搬入・搬出することができる。さらに、乾燥槽70は、排気口74を有し、隙間部用エアーナイフ80によって吹き飛ばされた洗浄液(例えば水)を排水することができる。隙間部用エアーナイフ80は、加圧された気体を吹き出し口から噴射させて水滴等の液体を吹き飛ばして乾燥させる。ここでは、第1基板10側から第2基板20に向けて、隙間部用エアーナイフ80の吹き出し口から第1基板10と第2基板20との隙間に気体を噴射させる。なお、隙間部用エアーナイフ80の詳細については、後述する。
【0033】
保持機構71は、隙間部用エアーナイフ80を所定の状態になるように保持する。具体的には、第1基板10の第2基板20とは反対側から見た上面視において、隙間部用エアーナイフ80の吹き出し口を、被乾燥物である液晶表示パネル100の第1基板10の端面に対し傾斜させ、第1基板10の端面に向けて、隙間部用エアーナイフ80から気体が噴射されるようにする。すなわち、隙間部用エアーナイフ80の吹き出し口形成面の長辺を液晶表示パネル100の第1基板10の端面から傾斜させて気体が噴射されるようにする。なお、ここでの第1基板10の端面とは、突出領域51側の第1基板10の側面のことである。
【0034】
本実施の形態では、後述する図8に示すように、第1基板10の第2基板20とは反対側から見た上面視において、隙間部用エアーナイフ80の中心線に対し直交する吹き出し口82の先端面と、第1基板10の端面とのなす角βが0度より大きく10度以下になるように保持する。このように、保持機構71によって、隙間部用エアーナイフ80を保持することにより、隙間部にも気体が届くようになる。なお、保持機構71によって、第1基板10の端面ではなくシール材30に向けて、隙間部用エアーナイフ80から気体が噴射されるように保持してもよいが、上記のようにシール材30の厚さが数μmと非常に小さいため、結果的には、第1基板10の端面に向けて気体が噴射されることになる。本実施の形態にかかる乾燥処理装置は、以上のように構成される。
【0035】
次に、隙間部用エアーナイフ80について図4及び図5を用いて説明する。図4は、隙間部用エアーナイフ80の構成を示す上面模式図である。図5は、隙間部用エアーナイフ80の構成を示す側面模式図である。
【0036】
隙間部用エアーナイフ80は、先端部が先細り形状を有する。ここでは、側面視及び上面視において、隙間部用エアーナイフ80は、台形形状を有する。すなわち、後端から先端にかけて、徐々に細くなっている。従来と比較して、先端部を先細り形状にしたことにより、設置上の制限が少なくなる。これにより、乾燥させる箇所が複雑な構成を有する場合でも、その近傍に隙間部用エアーナイフ80を設置することができる。これにより、気体の使用量を低減することができ、コストを低く抑えることができる。
【0037】
隙間部用エアーナイフ80は、供給口81と吹き出し口82とを有する。供給口81は隙間部用エアーナイフ80の後端に配置され、吹き出し口82は隙間部用エアーナイフ80の先端に配置される。供給口81には、図示しない供給管が接続され、空気、乾燥空気、その他の気体等が供給される。そして、隙間部用エアーナイフ80内に供給された気体を吹き出し口82から噴射する。また、吹き出し口82はスリット状(帯状)の開口になっており、局所的に気体を噴射することができる。
【0038】
さらに、図4に示されるように、隙間部用エアーナイフ80内部には、複数の長焦点用溝83が形成されているのが好ましい。長焦点用溝83は、気体の流路となり、吹き出し口82に向けて幅が狭くなる帯状の溝である。図4においては、供給口81が設けられた後端から吹き出し口82が設けられた先端まで、直線状に4本の長焦点用溝83が設けられている。このような長焦点用溝83が気体の流路となり、気体の流動が制御される。具体的には、供給口81から供給された気体が、長焦点用溝83に沿って流動し、それぞれの長焦点用溝83の方向に沿って吹き出し口82から噴射する。これにより、吹き出し口82から噴出される気体の焦点距離が長くなる。すなわち、吹き出し口82近傍のみならず、吹き出し口82からある程度離間した場所まで気体を噴射することができる。
【0039】
ここで、気体の焦点距離とは、吹き出し口82から、帯状になったそれぞれの長焦点用溝83をその延長方向に伸ばしたときに交差する点(焦点)までの距離のことである。なお、長焦点にすることができれば、長焦点用溝83に限らず、例えば整流板を形成してもよい。また、それぞれの長焦点用溝83を吹き出し口82に向けて幅が狭くなるように形成したため、吹き出し口82から噴射される気体の勢いが増す。これにより、高い圧力の気体を局所的に噴射することができ、隙間部にも気体が届くようになる。隙間部用エアーナイフ80は以上のように構成される。
【0040】
上記のような乾燥処理装置及び隙間部用エアーナイフ80により、従来、乾燥できなかった隙間部の配線群27まで乾燥させることができ、乾燥残渣を低減することができる。そして、配線群27の乾燥ムラを抑制することができる。これにより、ITO等によって形成される配線群27の腐食(電蝕)を抑制することができ、表示特性が良好となる。
【0041】
次に、表示パネルの洗浄・乾燥方法について図6を用いて説明する。ここでは、一例として、上記の液晶表示装置300の液晶表示パネル100の洗浄・乾燥方法について説明する。図6は、液晶表示パネル100の洗浄・乾燥方法の工程、及びその前後の工程を説明するフローチャート図である。
【0042】
まず、図2に示されるように、基板10、20上に透明導電膜を成膜し、当該透明導電膜をパターニングする。これにより、第1基板10に第1電極11等、第2基板20に第2電極21等が形成される(ステップS1)。
【0043】
そして、第1基板10の電極形成面と第2基板20の電極形成面とを対向配置させ、シール材30により貼り合せる。ここでは、第2基板20上の一辺側に形成された突出領域51を露出させるように、シール材30を介して、第1基板10と第2基板20とを接着させる。その後、各基板間に液晶31を封入して、液晶セルを形成する。そして、液晶セルの外面に偏光板34を貼り付けて液晶表示パネル100を形成する(ステップS2)。
【0044】
液晶表示パネル100は、図2に示されるように、第2基板20が第1基板10から突出し、この突出領域51に向けて、種々の端子・配線(配線群27)が形成されている。この配線群27に、ドライバIC40、FPC26等の電子部品を実装する前に、配線群27の洗浄を行う(ステップS3)。これは、液晶表示パネル100に不要な液晶材料や異物が残っていると、半導体素子等の接続不良や、配線間ショート等を生じて、誤作動を起こす場合があるためである。洗浄方法としては、ウェット洗浄を用いることができる。本実施の形態では、蒸気洗浄によって配線群27を洗浄する。
【0045】
このような洗浄は、偏光板34等が貼付された液晶表示パネル100の配線群27に対して行われる。偏光板34は、高温・高湿下における耐久性が乏しい。このため、偏光板34は、高温・高湿環境下では劣化し、偏光性能が急激に低下する。従って、上記のような洗浄方法を用いる場合、配線群27以外の領域を遮蔽板によって遮蔽し、水分の浸入を防ぐ必要がある。
【0046】
後述する図7及び図9に記載されている遮蔽板90は、例えば矩形の板状になっており、液晶表示パネル100の基板10、20に対して垂直に配置される。遮蔽板90は、配線群27と配線群27以外の領域を区切るように配置される。すなわち、第1基板10の突出領域51の端辺近傍に、当該端辺に対して平行に配置される。また、遮蔽板90は、配線群27に吹き付けられた高温の水蒸気が偏光板34側に回り込まないように、下端に弾性ゴムが取り付けられており、液晶表示パネル100に対して密に接触されている。そして、遮蔽板90が上記のように配置された状態で、配線群27に向けてノズルから高温の水蒸気を吹き付ける。これにより、液晶表示パネル100の配線群27に付着した液晶材料や塵埃等を除去される。
【0047】
次に、洗浄を行った配線群27を乾燥させる。まず、突出領域51の乾燥を行う(ステップS4)。ここでの乾燥方法としては、蒸気洗浄の際に、吹き付けられた高温の温風で加熱された第2基板20によって、水分蒸発を促進して自然乾燥させる方法がある。乾燥方法は、これに限らず、エアーナイフによって水分を吹き飛ばすことにより乾燥させてもよい。なお、ここで用いられるエアーナイフは、図4及び図5に示された隙間部用エアーナイフ80に限らず、従来一般的に用いられるエアーナイフ(以下、広域用エアーナイフとする)を用いることができる。この広域用エアーナイフを、第1基板10の突出領域51側の端辺に沿って、突出領域51の一端から他端に向けて、移動させることにより順次水切り乾燥させる。これにより、突出領域51の略全面を乾燥させることができる。
【0048】
次に、隙間部の乾燥を行う(ステップS5)。ステップS5の乾燥では、突出領域51の略全面を乾燥させることができるが、隙間部の乾燥が不十分である。これは、自然乾燥させる方法では、隙間部まで水分蒸発させることができないためである。一方、広域用エアーナイフの場合、遮蔽板90と干渉してしまい、隙間部の近傍に広域用エアーナイフを設置することができない。さらに、隙間部において、エアーナイフから噴射される気体の入り口が非常に狭い。このため、広域用エアーナイフからの噴射気体は、隙間部まで届かず、隙間部の水滴は除去されない。すなわち、隙間部に形成された配線群27には、乾燥ムラが生じる。ここで、本実施の形態では、上記の隙間部用エアーナイフ80が備えられた乾燥処理装置を用いる。図7は、隙間部52を乾燥させる様子を示す断面模式図である。図8は、隙間部52を乾燥させる様子を示す上面模式図である。図9は、隙間部52を乾燥させる様子を示す斜視模式図である。なお、図7〜図9において、液晶表示パネル100の詳細な構成については図示を省略する。
【0049】
まず、隙間部用エアーナイフ80を保持機構71によって所定の状態に保持する。具体的には、図7に示されるように、突出領域51、すなわち第2基板20表面から隙間部用エアーナイフ80の先端下辺までの距離を0.1〜0.6mm、好ましくは0.5mmとする。すなわち、突出領域51から0.1〜0.6mm上方に隙間部用エアーナイフ80の先端下辺を合わせる。また、第2基板20の表面、すなわち第2基板20の配線群27が形成された面に対する隙間部用エアーナイフ80の縦断面の中心線を基準とする噴射角度αを25〜35度とする。すなわち、第2基板20の表面と気体の噴射方向のなす角を25〜35度とする。噴射角度αが低いと、隙間部用エアーナイフ80が配線群27に接触することがあるので好ましくない。反対に、噴射角度αが高いと、隙間部52に噴射気体が入らなくなる。また、図8に示されるように、隙間部用エアーナイフ80の中心線と直交する先端面(吹き出し口82形成面)において、長辺方向の一端を第1基板10端面に近づける。すなわち、隙間部用エアーナイフ80の吹き出し口82の先端面を第1基板10端面から傾斜させる。具体的には、隙間部用エアーナイフ80の進行方向と反対方向における、隙間部用エアーナイフ80の先端面の端部を第1基板10端面に近づける。これにより、上面視において、隙間部用エアーナイフ80は、進行方向側に角度が開いた状態になる。ここでは、上面視において、隙間部用エアーナイフ80の中心線に対し直交する吹き出し口82の先端面と、第1基板10の端面とのなす角βが約0度より大きく10度以下になるように保持する。
【0050】
このように、一定の傾斜をつけた状態で保持機構71によって位置を保持し、第1基板10の端面に沿って隙間部用エアーナイフ80を移動させる。図7〜図9においては、隙間部用エアーナイフ80を中抜き矢印方向に第1基板10の端面に沿って移動させる。これにより、吹き出し口82と端面との距離が一定になったまま、隙間部用エアーナイフ80が移動する。そして、隙間部52の一端から他端に向けて、気体が噴射される。上記のように、隙間部用エアーナイフ80は、長焦点用溝83を有するため、噴射気体の焦点距離が広域用エアーナイフよりも長い。そして、高い気体圧で気体を噴射させるため、隙間部52内にも、気体が届くようになる。従って、シール材30の側面まで気体が届くようになる。
【0051】
また、図8に示されるように、進行方向側に角度が開いた状態で、気体を噴出させる。これにより、進行方向側に水滴91等が飛散する。ここでは、角度βを0度より大きく10度以下と鋭角にしているため、突出領域51の広域に亘って、水滴91が飛散することが抑制される。このように、一定の傾斜をつけた状態で気体を噴出するため、隙間部52内の水滴91は、液晶表示パネル100内部に押し込まれず、外側に向けて押し出される。そして、隙間部用エアーナイフ80を隙間部52の一端から他端に向けて中抜き矢印方向に移動させることにより、水滴91も一端から他端に向けて移動する。すなわち、図8において、矢印方向に水が送り出される。そして、隙間部用エアーナイフ80によって、隙間部52の他端側に移動した水滴91は、液晶表示パネル100外に吹き飛ばされる。なお、ここでの角度α及び角度βは、略一定にするのが好ましい。これにより、隙間部用エアーナイフ80からの噴出気体による水滴91に対する衝撃力も略一定に保つことができる。このような工程により、突出領域51及び隙間部52に形成された配線群27を乾燥されることができる。
【0052】
また、ステップS4の突出領域51の乾燥で広域用エアーナイフを用いた場合、一定の間隔保って、広域用エアーナイフと隙間部用エアーナイフ80とを配置させ、これらのエアーナイフを並行して移動させてもよい。この場合、広域用エアーナイフを進行方向前方側、隙間部用エアーナイフ80を進行方向後方側に配置させる。そして、広域用エアーナイフによって乾燥させた突出領域51に隣接する隙間部52から順次隙間部用エアーナイフ80によって乾燥させる。このように乾燥させることにより、ステップS4の突出領域51の乾燥とステップS5の隙間部52の乾燥とを略同時に進行させることができ、処理時間を短縮させる。ここで、広域用エアーナイフ及び隙間部用エアーナイフ80に供給される気体は、乾燥した空気、浮遊異物の少ないクリーンな気体が好ましい。
【0053】
次に、乾燥させた配線群27の端子にドライバIC40及びFPC26を実装する(ステップS6)。その後、バックライトユニット200等を配置することにより、液晶表示装置300が製造される。
【0054】
上記のような液晶表示パネル100の洗浄・乾燥方法により、製造される液晶表示装置300の隙間部52も含め、乾燥残渣を低減することができ、配線群27の乾燥ムラを抑制することができる。これにより、ITO等によって形成される配線群27の腐食(電蝕)を抑制することができ、液晶表示装置300の表示特性が良好となる。
【0055】
なお、上記のような表示パネルの乾燥処理装置及び表示パネルの洗浄・乾燥方法は、他の表示装置に用いることができる。また、蒸気洗浄に限らず、スプレー洗浄等の他のウェット洗浄に対しても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施の形態にかかる液晶表示装置の構成を示す断面模式図である。
【図2】実施の形態にかかる液晶表示パネルの構成を示す平面模式図である。
【図3】実施の形態にかかる乾燥処理装置の構成を示す概略図である。
【図4】実施の形態にかかる隙間部用エアーナイフの構成を示す上面模式図である。
【図5】実施の形態にかかる隙間部用エアーナイフの構成を示す側面模式図である。
【図6】実施の形態にかかる液晶表示パネルの洗浄・乾燥方法の工程、及びその前後の工程を説明するフローチャート図である。
【図7】実施の形態にかかる隙間部を乾燥させる様子を示す断面模式図である。
【図8】実施の形態にかかる隙間部を乾燥させる様子を示す上面模式図である。
【図9】実施の形態にかかる隙間部を乾燥させる様子を示す斜視模式図である。
【符号の説明】
【0057】
10 第1基板、11 第1電極、12 第1引回し配線、
13 第1トランスファーパッド、20 第2基板、21 第2電極、
22 第2引回し配線、23 第2トランスファーパッド、24 補助配線、
25 外部接続配線、26 FPC、27 配線群、30 シール材、
31 液晶、32 スペーサ、33 配向膜、34 偏光板、35 画素、
40 ドライバIC、50 表示領域、51 突出領域、52 隙間部、
70 乾燥槽、71 保持機構、72 搬入口、73 搬出口、74 排気口、
75 パネル搬送機構、80 隙間部用エアー噴射ノズル(隙間部用エアーナイフ)、
81 供給口、82 吹き出し口、83 長焦点用溝、90 遮蔽板、
91 水滴、100 液晶表示パネル、200 バックライトユニット、
300 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2基板上の一辺側に形成された端子部と、前記端子部に形成された配線群と、前記端子部を露出させるように前記第2基板上にシール材を介して接着された第1基板とを有する表示パネルにおける前記配線群を乾燥させる表示パネルの乾燥処理装置であって、
前記表示パネルの前記第1基板側から前記第2基板に向けて、吹き出し口から前記第1基板と前記第2基板との隙間に気体を噴射させる隙間部用エアー噴射ノズルと、
前記隙間部用エアー噴射ノズルを保持する保持機構とを有することを特徴とする表示パネルの乾燥処理装置。
【請求項2】
前記保持機構は、前記第1基板の前記第2基板とは反対側から見た上面視において、前記隙間部用エアー噴射ノズルの前記吹き出し口を前記第1基板の端面に対し傾斜させ、前記第1基板の端面に向けて、前記隙間部用エアー噴射ノズルから気体を噴射するように前記隙間部用エアー噴射ノズルを保持し、前記隙間部用エアー噴射ノズルの吹き出し口と前記第1基板の端面とのなす角が0度より大きく10度以下となるように前記隙間部用エアー噴射ノズルを保持する請求項1に記載の表示パネルの乾燥処理装置。
【請求項3】
前記保持機構は、前記第2基板の表面に対する前記隙間部用エアー噴射ノズルの噴射角度が25〜35度となるように前記隙間部用エアー噴射ノズルを保持する請求項1又は2に記載の表示パネルの乾燥処理装置。
【請求項4】
前記保持機構は、前記第2基板の表面から前記隙間部用エアー噴射ノズルの先端下辺までの距離が0.1〜0.6mmとなるように前記隙間部用エアー噴射ノズルを保持する請求項1乃至3のいずれかに記載の表示パネルの乾燥処理装置。
【請求項5】
前記隙間部用エアー噴射ノズルは、気体の流路となり、前記吹き出し口に向けて幅が狭くなる帯状の溝を内部に有する請求項1乃至4のいずれかに記載の表示パネルの乾燥処理装置。
【請求項6】
第2基板上の一辺側に形成された端子部と、前記端子部に形成された配線群と、前記端子部を露出させるように前記第2基板上にシール材を介して接着された第1基板とを有する表示パネルの洗浄・乾燥方法において、
前記配線群に対して、ウェット洗浄を行う工程と、
前記第1基板の前記第2基板とは反対側から見た上面視において、隙間部用エアー噴射ノズルの吹き出し口を前記第1基板の端面に対し傾斜させ、前記第1基板の端面に向けて前記隙間部用エアー噴射ノズルから気体を噴射して、ウェット洗浄された前記配線群及び前記第1基板と前記第2基板との隙間部を乾燥させる工程とを有する表示パネルの洗浄・乾燥方法。
【請求項7】
前記乾燥させる工程では、前記第1基板の前記第2基板とは反対側から見た上面視において、前記隙間部用エアー噴射ノズルの吹き出し口と前記第1基板の端面とのなす角を0度より大きく10度以下にして、前記隙間部用エアー噴射ノズルから気体を噴射させる請求項6に記載の表示パネルの洗浄・乾燥方法。
【請求項8】
前記乾燥させる工程では、前記第2基板の表面に対する前記隙間部用エアー噴射ノズルの噴射角度を25〜35度にして、前記隙間部用エアー噴射ノズルから気体を噴射させる請求項6又は7に記載の表示パネルの洗浄・乾燥方法。
【請求項9】
前記乾燥させる工程では、前記第2基板表面から前記隙間部用エアー噴射ノズルの先端下辺までの距離を0.1〜0.6mmにして、前記隙間部用エアー噴射ノズルから気体を噴射させる請求項6乃至8のいずれかに記載の表示パネルの洗浄・乾燥方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−249795(P2008−249795A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87671(P2007−87671)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】