説明

表示制御装置、画像表示システム、及び画像表示装置の制御方法

【課題】全体画像とその一部の拡大画像とを2台のディスプレイを用いて表示する場合の画質の劣化を抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】第一の画像表示装置及び第二の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチの情報、並びに第二の画像表示装置の表示パネルの水平方向及び垂直方向の画素数の情報を取得し、第二の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチが第一の画像表示装置の画素ピッチより大きいと判定される場合、第一の画像表示装置に表示させる画像内に、水平方向及び垂直方向の画素数がそれぞれ第二の画像表示装置の水平方向及び垂直方向の画素数以下となる切り出し範囲を設定し、設定された切り出し範囲内の画像を第一の画像表示装置に表示させる画像から切り出し、画素数を変更するスケーリング処理を施さずに第二の画像表示装置に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置、画像表示システム、及び画像表示装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル画像の高解像度化が進んでいる。それに伴いディスプレイもより表示画素数の多い高精細なディスプレイが使われ始めている。
高精細ディスプレイは病院等の医療機関で診断時に使用するレントゲン画像の表示や、映像制作現場における画像の編集作業等、入力された画像の細部を見たい場面で使用されることがある。
【0003】
このような用途で用いられる場合において、全体画像とその一部の拡大画像を確認したい状況がある。例えば、レントゲン画像の全体画像と不審箇所の拡大画像を見る場合や、画像編集作業で全体画像とレタッチ作業箇所を拡大した拡大画像とを確認したい場合などである。
このような、全体の画像と一部の箇所を拡大した画像を表示する方法として、特許文献1が提案されている。特許文献1に記載された発明では、全体画像のデータを縮小した縮小画像データと、全体画像において選択された領域を切出した部分画像データと、を一組の画像データとして出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−238115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、全体画像から部分画像を切り出して拡大画像として表示することができるが、同一画面内に全体画像と拡大画像とを表示するため、全体画像を表示できる領域が狭くなる。そのため全体画像を全画面表示で見ることができない。
【0006】
全体画像の表示領域を小さくせずに表示するには、2台のディスプレイを用いて全体画像と拡大画像をそれぞれ個別のディスプレイに表示すればよい。しかしながら、全体画像から切り出した画像の画像データを別のディスプレイに送る際、送り先のディスプレイの画素数に合わせて画像出力装置でスケーリング処理を行う必要があるため、別ディスプレイにおける拡大画像の表示画質が劣化してしまう問題があった。
【0007】
本発明は、全体画像とその一部の拡大画像とを2台のディスプレイを用いて表示する場合の画質の劣化を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、マトリクス状に配置された表示画素の集合からなる表示パネルを有する第一の画像表示装置及び第二の画像表示装置を制御する表示制御装置であって、
第一の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチの情報又は画素ピッチに相関する量の情報、第二の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチの情報又は画素ピッチに相関する量の情報、及び第二の画像表示装置の表示パネルの水平方向及び垂直方向の画素数の情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した情報に基づき、第一の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチ又はそれに相関する量と第二の画像表示装置の画素ピッチ又はそれに相関する量とを
比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果により、第二の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチが第一の画像表示装置の画素ピッチより大きいと判定される場合、第一の画像表示装置に表示させる画像内に、水平方向及び垂直方向の画素数が第二の画像表示装置の水平方向及び垂直方向の画素数以下となる切り出し範囲を設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された切り出し範囲内の画像を第一の画像表示装置に表示させる画像から切り出す切り出し手段と、
前記切り出し手段により切り出された画像を、画素数を変更するスケーリング処理を施さずに第二の画像表示装置に表示させる制御手段と、
を有する表示制御装置である。
【0009】
本発明は、マトリクス状に配置された表示画素の集合からなる表示パネルを有する第一の画像表示装置及び第二の画像表示装置の制御方法であって、
第一の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチの情報又は画素ピッチに相関する量の情報、第二の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチの情報又は画素ピッチに相関する量の情報、及び第二の画像表示装置の表示パネルの水平方向及び垂直方向の画素数の情報を取得する取得工程と、
前記取得工程により取得した情報に基づき、第一の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチ又はそれに相関する量と第二の画像表示装置の画素ピッチ又はそれに相関する量とを比較する比較工程と、
前記比較工程による比較結果により、第二の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチが第一の画像表示装置の画素ピッチより大きいと判定される場合、第一の画像表示装置に表示させる画像内に、水平方向及び垂直方向の画素数が第二の画像表示装置の水平方向及び垂直方向の画素数以下となる切り出し範囲を設定する設定工程と、
前記設定工程により設定された切り出し範囲内の画像を第一の画像表示装置に表示させる画像から切り出す切り出し工程と、
前記切り出し工程により切り出された画像を、画素数を変更するスケーリング処理を施さずに第二の画像表示装置に表示させる表示制御工程と、
を有する画像表示装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、全体画像とその一部の拡大画像とを2台のディスプレイを用いて表示する場合の画質の劣化を抑制することができる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例の画像表示装置及び画像出力装置の構成図
【図2】実施例の第一の画像表示装置の制御フロー
【図3】実施例の表示画像イメージ
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明の実施例に係る表示制御装置によって画像表示が制御される第一の画像表示装置100及び第二の画像表示装置300、並びに第一の画像表示装置100へ画像データを出力する画像出力装置200の構成及び接続を示す図である。
【0013】
本発明の第一の画像表示装置100は、画像データを入力する画像入力部101と、入力された画像データをデコードするデコード部102を備えている。
【0014】
画像合成部104は、デコード部102でデコードした画像に他の画像やGUIを合成し画像出力部105へ出力する機能部である。例えば、画像合成部104は、切り出し範囲表示部103から送られる切り出し範囲を示すGUIと、デコード部102でデコード
した画像データと、を合成し画像出力部105に出力する。切り出し範囲を示すGUIとは、デコード部102によりデコードされ第一の画像表示装置100に表示されている画像において、第二の画像表示装置300へ出力するための画像を切り出す範囲を示すGUIである。詳細は後述する。
【0015】
画像出力部105は画像合成部104で合成した画像データを画像表示部106に出力する。
画像表示部106は、マトリクス状に配置された表示画素の集合からなる表示パネルであり、画像出力部105から出力された画像データを描画し、画像データに基づく画像の表示を行う。
操作部107を介して、ユーザは、第一の画像表示装置100に指示を入力するための操作を行うことができる。例えば、ユーザは、操作部107を介して、第一の画像表示装置100に表示されている画像において、第二の画像表示装置300へ出力するための画像を切り出す範囲を設定する操作を行う。
モニタ情報取得部108は第二の画像表示装置300の画面サイズや画素数の情報を取得する。
【0016】
画素ピッチ比較部109はモニタ情報取得部108で得られた情報から第二の画像表示装置300の画素ピッチ(隣接する画素間の距離)を算出し、第一の画像表示装置100の画素ピッチと比較する。画素ピッチ比較部109は、第一の画像表示装置100の画素ピッチの情報を記憶する不図示の記憶手段から第一の画像表示装置100の画素ピッチの情報を取得する。画素ピッチ比較部109は、第一の画像表示装置100の画素ピッチと第二の画像表示装置300の画素ピッチとの比較を行う。そして、比較結果に基づき、第二の画像表示装置300の画素ピッチが第一の画像表示装置100の画素ピッチよりも大きいか否かを判定する。
【0017】
切り出し範囲設定部110は、デコード部102がデコードした画像データから切り出す画像の範囲を設定する。切り出し範囲設定部110は、第一の画像表示装置100に表示されている画像において、第二の画像表示装置300へ出力する画像を切り出す範囲の大きさ(水平方向及び垂直方向の画素数)を設定する。この設定は、例えば、モニタ情報取得部108から入力される第二の画像表示装置300のモニタ情報(仕様情報)に基づき行われる。切り出す範囲は、予め設定された範囲や、操作部107を介してユーザが指定した範囲などに設定することもできる。後述するように、本実施例では特に、第二の画像表示装置300の画素ピッチが第一の画像表示装置100の画素ピッチよりも大きい場合に、第二の画像表示装置300の画素数に相当する範囲を切り出し範囲として設定する例を説明する。しかし、第二の画像表示装置300の画素ピッチが第一の画像表示装置100の画素ピッチよりも大きい場合であっても、ユーザの指示等に応じて、第二の画像表示装置300の画素数に相当する範囲とは異なる任意の範囲を設定する機能を有していても良い。
切り出し範囲設定部110は、第一の画像表示装置100に表示されている画像における切り出し範囲の位置を操作部107からの入力を受けて設定する。
切り出し範囲設定部110は、デコード部102から受信した画像データから、設定した切り出し範囲を切り出す処理を行い、切り出した画像データを、画素数を変更するスケーリング処理を施さずに切り出し画像出力部111に送信する。なお、切り出し範囲設定部110に、画像データに対してスケーリング処理を施す機能が備わっていても良い。そして、ユーザの指示等に応じて、切り出した画像データに対しスケーリング処理を施して切り出し画像出力部111へ送信する機能を有していても良い。
【0018】
切り出し画像出力部111は切り出し範囲設定部110から受信した切り出し画像のデータを第二の画像表示装置300へ送信する。
【0019】
第一の画像表示装置100の画像入力部101は、画像出力装置200の画像出力部201と、ケーブル等で接続されている。また、第一の画像表示装置100の切り出し画像出力部111は、第二の画像表示装置300の画像入力部301と、ケーブル等で接続されている。第一の画像表示装置100のモニタ情報取得部108は、第二の画像表示装置300のIF部302と、ケーブル等で接続されている。第一の画像表示装置100は、IF部302を介して第二の画像表示装置300のメモリ部303にアクセスすることができる。メモリ部303には、第二の画像表示装置300が有するEDID(Extended display identification data:モニタに関する様々な情報)が記憶されている。なお、メモリ部303には、EDIDに加えて他の情報が記憶されていても良い。
【0020】
なお、図1では第一の画像表示装置100と第二の画像表示装置300は、切り出し画像出力部111と画像入力部301を接続するラインと、モニタ情報取得部108とIF部302を接続するラインと、の2つのラインで接続されている。しかし、HDMIやDVI等のケーブルを用いた接続においては、物理的に1本のケーブルで画像データとEDIDを伝送することが可能である。
【0021】
次に図2を用いて本発明の制御フローを説明する。
本実施例においては画像表示部106の水平方向及び垂直方向の画素数を3840×1920、接続する第二の画像表示装置300の水平方向及び垂直方向の画素数を1920×1080、画面サイズは同一であるものとする。従って、画素ピッチは、第一の画像表示装置100の方が第二の画像表示装置300より狭い。
【0022】
S100で処理が開始すると、S101において、第一の画像表示装置100に第二の画像表示装置300が接続されたか検出し、第二の画像表示装置300の接続が検出されると、処理はS102に進む。
【0023】
S102においてモニタ情報取得部108は第二の画像表示装置300のメモリ部303にアクセスし、第二の画像表示装置300のモニタ情報を取得する。モニタ情報取得部108が取得するモニタ情報は、メモリ部303に書き込まれているEDID情報のうち、第二の画像表示装置300の画素数を示す情報及び画面サイズを示す情報である。画素数を示す情報は、H ACTIVE Pixel(水平方向の有効画素数)及びV ACTIVE Pixel(垂直方向の有効画素数)である。画面サイズを示す情報は、MAX H Size(画面幅)及びMAX V Size(画面高さ)である。
【0024】
なお、第二の画像表示装置300の表示部が、水平方向が長辺となる横位置又は垂直方向が長辺となる縦位置に切り換え可能に構成されている場合がある。その場合、表示部が横位置か縦位置かに応じて、H ACTIVE Pixel、V ACTIVE Pixel、MAX H Size、及びMAX V Sizeの値が変わる。すなわち、表示部の向きによってEDIDが書き換えられる。モニタ情報取得部108は、第二の画像表示装置300の表示部の位置が変化した場合に、最新の表示部の位置の情報を取得できるように、定期的にモニタ情報を取得しても良い。そして、第二の画像表示装置300の表示部の位置に変化があったことを検知した場合、表示部の位置に応じて切り出し範囲を変更する制御を行っても良い。
【0025】
図2のS103はそのような制御を表すステップである。S103において、モニタ情報取得部108は、第二の画像表示装置300のモニタ情報が変更されたか否かを検出する。変更を検出した場合、S102に戻り、最新のモニタ情報を取得する。変更を検出しない場合、S104へ進む。なお、例えば、表示部の向きが変わらない第二の画像表示装
置300を用いる場合は、S103の処理は行わなくても良い。
【0026】
次にS104において画素ピッチ比較部109はS102で得られた画素数と画面サイズの情報に基づき、以下の式により第二の画像表示装置300の画素ピッチを算出する。水平方向の画素ピッチ=MAX H Size÷H ACTIVE Pixel・・・(式1)
垂直方向の画素ピッチ=MAX V Size÷V ACTIVE Pixel・・・(式2)
一般に画素ピッチは垂直方向と水平方向で等しいので式1と式2のどちらを用いて画素ピッチを算出してもよい。
【0027】
次に、S105において画素ピッチ比較部109は第一の画像表示装置100の画素ピッチと第二の画像表示装置300の画素ピッチの比較を行う。比較の結果、第一の画像表示装置100の画素ピッチに対して第二の画像表示装置300の画素ピッチの方が大きい(画像表示部106の方が高精細である)場合はS106へ進む。S106において、切り出し範囲設定部110は、任意の範囲を切り出し範囲として設定する指示の入力をユーザから受け付ける。例えば、切り出し範囲設定部110は、操作部107を介して、ユーザに、切り出し範囲の最も左上の画素の座標と最も右下の画素の座標をマウスのクリックやドラッグ、キーボードによる数値入力などにより指定させる。ユーザによる切り出し範囲の指定が行われた場合、S109へ進む。ユーザによる切り出し範囲の指定が行われなかった場合、S107に進む。なお、ユーザによる切り出し範囲の指定を受け付ける処理は省略しても良い。その場合、S106及び後述するS109〜S112の処理は行われず、S105で第二の画像表示装置300の画素ピッチの方が大きいと判定された場合、処理はS107へ進む。
【0028】
一方、第一の画像表示装置100の画素ピッチに対して第二の画像表示装置300の画素ピッチの方が狭いもしくは同じである(第二の画像表示装置300の方が高精細である)場合はS108に進む。
【0029】
なお、ここでは第一の画像表示装置100の画素ピッチ及び第二の画像表示装置300の画素ピッチを取得し、その比較に基づいて、第二の画像表示装置300の画素ピッチが第一の画像表示装置100の画素ピッチより大きいか判定する例を説明した。しかし、画素ピッチ比較部109は、画素ピッチに相関する量の比較に基づいて、第二の画像表示装置300の画素ピッチが第一の画像表示装置100の画素ピッチより大きいか判定しても良い。
【0030】
画素ピッチに相関する量には、例えば、単位長さ当たりの画素数がある。この場合、第二の画像表示装置300の単位長さ当たりの画素数が第一の画像表示装置100の単位長さ当たりの画素数より小さい場合、S107に進む。一方、第二の画像表示装置300の単位長さ当たりの画素数が第一の画像表示装置100の単位長さ当たりの画素数以上の場合、S108へ進む。この場合、モニタ情報取得部108は、画素ピッチに相関する量の情報として、水平方向及び垂直方向の画素数及び画面サイズを取得し、例えば水平方向の画素数を水平方向の画面サイズで割った値を求めて比較する。
【0031】
また、画素ピッチに相関する量には、単位面積当たりの画素数がある。この場合、第二の画像表示装置300の単位面積当たりの画素数が第一の画像表示装置100の単位面積当たりの画素数より小さい場合、S107へ進む。一方、第二の画像表示装置300の単位面積当たりの画素数が第一の画像表示装置100の単位面積当たりの画素数以上の場合、S108へ進む。この場合、モニタ情報取得部108は、画素ピッチに相関する量の情報として、水平方向及び垂直方向の画素数及び画面サイズを取得する。そして、総画素数
(H ACTIVE Pixel×V ACTIVE Pixel)を表示面積(MAX
H Size×MAX V Size)で割った値を求めて比較する。
【0032】
S107において、切り出し範囲設定部110は、S102で取得したモニタ情報に基づき、第一の画像表示装置100に表示された画像内に、第二の画像表示装置300の画素数と等しい画素数となる画像の範囲を切り出し範囲として設定する。切り出し範囲表示部103は、切り出し範囲の位置を示す例えば枠などのGUI部品を生成し第一の画像表示装置100に表示された画像に重畳する。
【0033】
切り出し範囲設定部110は、操作部107を介して、切り出し範囲を示す枠を所望の位置に変更する指示の入力をユーザから受け付ける。これにより、第一の画像表示装置100に表示されている画像において、第二の画像表示装置300へ出力するための画像を切り出す範囲の位置をユーザに指定させる。
【0034】
切り出し範囲設定部110は、第一の画像表示装置100に表示されている画像から、指定された切り出し範囲内の画像を切り出し、切り出した画像のデータを切り出し画像出力部111へ出力する。切り出し画像出力部111は、切り出した画像データを第二の画像表示装置300へ出力する。第二の画像表示装置300は、受信した切り出し画像データをdot by dot表示する。
【0035】
これにより、第二の画像表示装置300には、第一の画像表示装置100に表示されている画像において指定された切り出し範囲の画像が拡大表示されることになる。第二の画像表示装置300は、受信した切り出し画像データをdot by dot表示するので、スケーリング処理による画質劣化は生じない。
【0036】
S106においてユーザによる切り出し範囲の指定が行われた場合、ユーザにより指定される切り出し範囲の水平方向及び垂直方向の画素数が第二の画像表示装置300の水平方向及び垂直方向の画素数と等しくならないことがある。
【0037】
S109において、切り出し範囲設定部110は、ユーザ等により指定された切り出し範囲の水平方向及び垂直方向の画素数と、第二の画像表示装置300の水平方向及び垂直方向の画素数と比較する。指定された切り出し範囲の水平方向及び垂直方向の画素数がそれぞれ、第二の画像表示装置300の水平方向及び垂直方向の画素数以下の場合(S110:Y)、上述と同様の処理を行う。すなわち、切り出し範囲設定部110はユーザにより指定された切り出し範囲の画像を切り出し、第二の画像表示装置300は受信した切り出し画像データをdot by dot表示する(S111)。
【0038】
一方、指定された切り出し範囲の水平方向の画素数が第二の画像表示装置300の水平方向の画素数より大きい、又は指定された切り出し範囲の垂直方向の画素数が第二の画像表示装置300の垂直方向の画素数より大きい場合(S110:N)、以下の処理を行う。すなわち、切り出し範囲設定部110は、指定された切り出し範囲の水平方向及び垂直方向の画素数がそれぞれ第二の画像表示装置300の水平方向及び垂直方向の画素数以下になるように、切り出し範囲を調整する。そして、切り出し範囲設定部110は、調整後の切り出し範囲で画像の切り出しを行い、第二の画像表示装置300へ送信する。第二の画像表示装置300は受信した切り出し画像データをdot by dot表示する(S112)。
【0039】
或いは、S112において、切り出し範囲設定部110は、切り出し範囲の調整を行わずに画像の切り出しを行うと共に、切り出した画像データに対し縮小のスケーリング処理を施して、第二の画像表示装置300へ送信しても良い。この処理は、切り出した画像の第二の画像表示装置300における表示面積を、第一の画像表示装置100における切り
出し範囲の表示面積より大きくすることが可能な場合に行う。すなわち、第二の画像表示装置300における切り出し画像の表示が、第一の画像表示装置100における切り出し範囲の拡大表示となる場合に、切り出し画像に対して縮小スケーリング処理を行って第二の画像表示装置300へ出力する。
【0040】
拡大表示の可能性は、指定された切り出し範囲の画素数と、第一の画像表示装置100の画素ピッチと、第二の画像表示装置300の画素ピッチと、の関係により判断できる。例えば、第二の画像表示装置300の水平方向の画素ピッチが第一の画像表示装置100の水平方向の画素ピッチの2倍の場合、ユーザにより指定された切り出し範囲の水平方向画素数が、縮小スケーリング処理による水平方向の縮小率を1/2以下に抑えられる程度の画素数であれば、拡大表示が可能である。
【0041】
S107の処理により表示する画像のイメージ図を図3に示す。
図3(A)は第一の画像表示装置100の表示画像、図3(B)は第二の画像表示装置300が表示する画像である。
第一の画像表示装置100に表示される画素数3840×1920の画像において、第二の画像表示装置300の水平方向及び垂直方向の画素数と等しい1920×1080の切り出し範囲402が枠403によって示されている。枠403は、切り出し範囲表示部103の生成したGUIであり、デコード部102の出力する画像データに合成されて第一の画像表示装置100に表示されている。切り出し範囲表示部103は、モニタ情報取得部108が取得した第二の画像表示装置300のモニタ情報から、第二の画像表示装置300の表示部の水平方向及び垂直方向の画素数を示す情報に基づいて、枠403に示すようなGUIを生成する。ユーザは、枠403により、第一の画像表示装置100に表示されている画像においてどの範囲が切り出し範囲として指定されているか把握できる。
【0042】
第一の画像表示装置100は、切り出し範囲402の画像データを切り出し、第二の画像表示装置300へ出力する。第二の画像表示装置300は、受信した切り出し画像データをdot by dot表示することで、図3(B)の画像501のように、第一の画像表示装置100における切り出し範囲402内の画像を全画面に拡大した画像表示を行うことができる。第二の画像表示装置300に表示される画像はスケーリング処理による画質の劣化が生じない高画質な画像である。
【0043】
図3(C)に第二の画像表示装置300を90度回転させた場合の第一の画像表示装置100の表示例を示す。第二の画像表示装置300が縦向きのため、縦向きの切り出し範囲404及び切り出し範囲を示す枠405が表示されている。そして、図3(D)の画像502に示すように、切り出し範囲404の画像が第二の画像表示装置300においてdot by dot表示される。
【0044】
S108の処理を説明する。S108では、第一の画像表示装置100は、本発明の処理は行わず、デコード部102の出力する画像データをそのまま第二の画像表示装置300へ出力する。結果として第二の画像表示装置300の表示する画像は第一の画像表示装置100の表示する画像と同じになる。
【0045】
しかし、この場合、第二の画像表示装置300が画像データをdot by dot表示すると、第二の画像表示装置300の方が画素ピッチが小さいため、第二の画像表示装置300における画像の表示面積が第一の画像表示装置100よりも小さくなってしまう。例えば、第一の画像表示装置100の画素ピッチが第二の画像表示装置300の画素ピッチの1/2倍とする。この場合、第二の画像表示装置300で画像をdot by dot表示すると、第一の画像表示装置100で画像をdot by dot表示した場合と比べて表示面積は1/2となってしまう。
【0046】
そこで、S108において切り出し範囲設定部110は、ユーザにより指定された切り出し範囲の画像が第一の画像表示装置100で表示されるよりも拡大表示されるように第二の画像表示装置300への画像データの出力を行う。上記の例では、第一の画像表示装置100は、第二の画像表示装置300には、画像を2倍以上に拡大して出力することで、第二の画像表示装置300に表示された画像は、第一の画像表示装置100で表示されている面積よりも大きく拡大されて表示される。
【0047】
また、切り出し範囲設定部110により設定される切り出し範囲402の位置は、操作部107からの入力により、変更することが可能に構成しても良い。また、操作部107からの入力により、切り出し範囲402を示す枠403の表示・非表示を切り換え可能に構成しても良い。
【0048】
本実施例の画像表示装置によれば、第一の画像表示装置100に表示されている画像の一部の領域を、スケーリング処理を行うことなく第二の画像表示装置300に拡大表示することができる。従って、全体画像と拡大画像との両方を高画質に表示することが可能になる。
【0049】
なお、上記実施例では、第一の画像表示装置100に第二の画像表示装置300が接続され、画素ピッチの比較、切り出す範囲の設定、画像の切り出し、切り出した画像データの出力、切り出し範囲の調整などの処理は、第一の画像表示装置100が実行した。すなわち、上記の実施例は、本発明の画像表示システムの一実施形態としての第一の画像表示装置100に、第二の画像表示装置300を接続した場合について説明したものである。しかし、これらの処理を実行する操作部107,切り出し範囲設定部110、切り出し範囲表示部103、画素ピッチ比較部109、モニタ情報取得部108、切り出し画像出力部111は、第一の画像表示装置100とは別体の表示制御装置が有していても良い。その場合、表示制御装置に第一の画像表示装置100及び第二の画像表示装置300が接続され、各画像表示装置の制御を表示制御装置が行う構成となる。このような表示制御装置の実施形態としては、例えば、第一の画像表示装置と第二の画像表示装置が接続され、これらの画像表示装置へ画像データを出力するとともに、モニタ情報を取得するよう構成したパーソナルコンピュータ等を例示できる。
【符号の説明】
【0050】
100 第一の画像表示装置、108 モニタ情報取得部、109 画素ピッチ比較部、110 切り出し範囲設定部、111 切り出し画像出力部、300 第二の画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された表示画素の集合からなる表示パネルを有する第一の画像表示装置及び第二の画像表示装置を制御する表示制御装置であって、
第一の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチの情報又は画素ピッチに相関する量の情報、第二の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチの情報又は画素ピッチに相関する量の情報、及び第二の画像表示装置の表示パネルの水平方向及び垂直方向の画素数の情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した情報に基づき、第一の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチ又はそれに相関する量と第二の画像表示装置の画素ピッチ又はそれに相関する量とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果により、第二の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチが第一の画像表示装置の画素ピッチより大きいと判定される場合、第一の画像表示装置に表示させる画像内に、水平方向及び垂直方向の画素数が第二の画像表示装置の水平方向及び垂直方向の画素数以下となる切り出し範囲を設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された切り出し範囲内の画像を第一の画像表示装置に表示させる画像から切り出す切り出し手段と、
前記切り出し手段により切り出された画像を、画素数を変更するスケーリング処理を施さずに第二の画像表示装置に表示させる制御手段と、
を有する表示制御装置。
【請求項2】
前記設定手段により設定された切り出し範囲の位置を表すGUIを生成する生成手段を有し、
前記制御手段は、第一の画像表示装置に表示させる画像に前記生成手段が生成したGUIを重畳して第一の画像表示装置に表示させる請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記設定手段により設定された切り出し範囲の位置を変更する指示の入力をユーザから受け付ける入力手段を有し、
前記切り出し手段は、ユーザによる指示に基づき位置を変更した切り出し範囲内の画像を第一の画像表示装置に表示させる画像から切り出す請求項1又は2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記入力手段は、第一の画像表示装置に表示させる画像内に任意の範囲を設定する指示の入力をユーザから受け付け、
前記切り出し手段は、
ユーザにより指定された範囲の水平方向及び垂直方向の画素数がそれぞれ第二の画像表示装置の水平方向及び垂直方向の画素数以下の場合、ユーザにより指定された範囲内の画像を第一の画像表示装置に表示させる画像から切り出し、
ユーザにより指定された範囲の水平方向の画素数が第二の画像表示装置の水平方向の画素数を超えているか、又はユーザにより指定された範囲の垂直方向の画素数が第二の画像表示装置の垂直方向の画素数を超えているか、の少なくともいずれかの場合、ユーザにより指定された範囲を、水平方向及び垂直方向の画素数が第二の画像表示装置の水平方向及び垂直方向の画素数以下になるように調整し、調整後の範囲内の画像を第一の画像表示装置に表示させる画像から切り出す請求項3に記載の表示制御装置。
【請求項5】
第二の画像表示装置の表示パネルは、水平方向が長辺となる横位置又は表示パネルの垂直方向が長辺となる縦位置にすることが可能であり、
前記取得手段は、第二の画像表示装置の表示パネルの位置の情報を取得し、
前記設定手段は、第二の画像表示装置の表示パネルの位置に応じて切り出し範囲を変更する請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の表示制御装置と、第一の画像表示装置と、を含む画像表示システムであって、
第二の画像表示装置と接続し前記切り出し手段により切り出された画像の画像データを第二の画像表示装置へ出力する画像出力手段と、
第二の画像表示装置と接続し第二の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチの情報又は画素ピッチを算出するための情報、並びに水平方向及び垂直方向の画素数の情報を第二の画像表示装置から取得する情報取得手段と、
を有する画像表示システム。
【請求項7】
マトリクス状に配置された表示画素の集合からなる表示パネルを有する第一の画像表示装置及び第二の画像表示装置の制御方法であって、
第一の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチの情報又は画素ピッチに相関する量の情報、第二の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチの情報又は画素ピッチに相関する量の情報、及び第二の画像表示装置の表示パネルの水平方向及び垂直方向の画素数の情報を取得する取得工程と、
前記取得工程により取得した情報に基づき、第一の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチ又はそれに相関する量と第二の画像表示装置の画素ピッチ又はそれに相関する量とを比較する比較工程と、
前記比較工程による比較結果により、第二の画像表示装置の表示パネルの画素ピッチが第一の画像表示装置の画素ピッチより大きいと判定される場合、第一の画像表示装置に表示させる画像内に、水平方向及び垂直方向の画素数が第二の画像表示装置の水平方向及び垂直方向の画素数以下となる切り出し範囲を設定する設定工程と、
前記設定工程により設定された切り出し範囲内の画像を第一の画像表示装置に表示させる画像から切り出す切り出し工程と、
前記切り出し工程により切り出された画像を、画素数を変更するスケーリング処理を施さずに第二の画像表示装置に表示させる表示制御工程と、
を有する画像表示装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−215779(P2012−215779A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81998(P2011−81998)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】