説明

表示制御装置、表示制御方法、制御プログラムおよび記録媒体

【課題】マルチディスプレイの視認性を損なうことなく、環境の変化に対応した輝度制御を実現する。
【解決手段】本発明の表示制御装置は、マルチディスプレイシステム1、2を構成する各表示装置200において、表示装置200の輝度を定めた輝度設定値が保持されており、上記各表示装置200から、それぞれの輝度設定値を取得する状態取得部11と、上記各表示装置200から取得された輝度設定値に基づいて基準輝度設定値を決定し、各表示装置200によって保持されている輝度設定値を、上記基準輝度設定値に変更する表示制御処理部13とを備えていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチディスプレイシステムを構成する複数の表示装置を制御する表示制御装置およびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP;Plasma Display Panel)、LED(Light-Emitting Diode)表示器、液晶ディスプレイ(LCD;Liquid Crystal Display)などの表示装置に使用される各種部品(発光素子、液晶素子、その他の各種電子部品など)には、正常に動作できる適切な温度範囲がある。外気温、上記の各種部品の周囲温度、および、部品自体の発熱などの影響によって、部品の温度が所定以上または所定以下となる場合には、表示装置は、良好な表示状態を維持できなかったり、内部構造に異常を来たしたりして正常に動作しなくなる可能性がある。
【0003】
このような問題に対して、従来、表示装置の内外の温度に応じて、表示装置の輝度を調整することが行われてきた(特許文献1〜4)。
【0004】
例えば、表示装置が正常に動作可能な温度範囲をはずれること(以降、温度異常と呼称する)を防止するために、あるいは、温度異常が発生した場合には温度を適切な温度範囲に戻すために、表示装置の輝度を調整する技術がある。
【0005】
一般に表示装置において高輝度を実現するほど、消費電力量が増え、発熱量も多くなる。そこで、一例として、特許文献1〜3に記載の技術では、表示装置の内部温度を下げるために、発光素子の輝度を調整する制御部(または表示駆動部)が、発光素子の輝度を下げることにより、発熱量を抑えている。
【0006】
あるいは、特許文献4には、液晶の温度特性に着目し、液晶素子周囲の気温(特に、外気温度)に応じて、制御部に入力される輝度値を調整する技術が開示されている。これにより、表示品質が外気温度によって変化することを防いで、設置環境によらず、良好なLCDの表示状態を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−194337号公報(平成12年7月14日公開)
【特許文献2】特開2003−167566号公報(平成15年6月13日公開)
【特許文献3】特開2009−122494号公報(平成21年6月4日公開)
【特許文献4】特開平11−2801号公報(平成11年1月6日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜4に記載の技術を、複数の表示装置を用いたマルチディスプレイシステムに適用する場合には、以下の問題が生じる。
【0009】
具体例を挙げて説明すると、図13に示すように、4台の表示装置300a〜300dを用いて、縦横2台×2台のマルチディスプレイシステムが構成されているとする。この場合、そのうちの1台(例えば、左上の表示装置300d)において温度変化(あるいは温度異常)が発生したとすると、上述した従来技術によれば、同図に示すように、温度変化が発生した表示装置300dに対して輝度の調整が行われる。例えば、表示装置300dにおいて高温が検知された場合であれば、輝度の低減が実施されることになる。
【0010】
このような場合に、同図に示すように、温度変化が生じていない他の表示装置300a〜300cと比較して、輝度の低減が実施された表示装置300dの画面だけが暗くなってしまう。このように、マルチディスプレイシステムを構成する各表示装置間で、温度変化(温度異常)対応時に輝度ずれが生じ、マルチディスプレイ全体としての視認性が低下するという問題が生じる。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、マルチディスプレイシステムにおいて、マルチディスプレイの視認性を損なうことなく、環境の変化に対応した輝度制御を実施する表示制御装置、表示制御方法、制御プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の表示制御装置は、上記課題を解決するために、マルチディスプレイシステムを構成する複数の表示装置を制御する表示制御装置であって、各表示装置において、表示装置の輝度を定めた輝度設定値が保持されており、上記各表示装置から、それぞれの輝度設定値を取得する状態取得手段と、上記各表示装置から取得された輝度設定値に基づいて基準輝度設定値を決定し、各表示装置によって保持されている輝度設定値を、上記基準輝度設定値に変更する輝度制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、複数の表示装置で構成されるマルチディスプレイシステムにおいて、表示制御装置の状態取得手段は、上記複数の表示装置からそれぞれの輝度設定値を取得する。そして、輝度制御手段は、状態取得手段が集めたすべての表示装置の輝度設定値に基づいて、基準輝度設定値を決定する。輝度制御手段は、すべての表示装置が保持する輝度設定値を、上述の決定した基準輝度設定値へと変更する。各表示装置は、変更された基準輝度設定値に基づいて自装置の輝度を制御することができる。
【0014】
これにより、各表示装置が保持する輝度設定値がばらついていても、基準輝度設定値に統一することができる。よって、表示装置間で生じる輝度ずれを防止することが可能となり、結果として、マルチディスプレイの視認性を損なうことなく、環境の変化に対応した輝度制御を実施することが可能となる。
【0015】
上記輝度制御手段は、上記各表示装置から取得された輝度設定値のうち、最も低い値を示す輝度設定値を基準輝度設定値として選択してもよい。
【0016】
上記構成によれば、マルチディスプレイシステムにおいて、複数の表示装置のうちの一部だけが諸々の事情によって輝度を落として表示していたとしても、その低い輝度設定値に合わせるように、上記輝度制御手段が、その他の表示装置を制御する。
【0017】
これにより、表示装置の一部に低い輝度設定値が設定されているために輝度ずれが生じていたとしても、その低い輝度設定値を基準輝度設定値にして、すべての表示装置の輝度を統一することができる。よって、表示装置間で生じる輝度ずれを解消し、結果として、マルチディスプレイの視認性を損なうことなく、環境の変化に対応した輝度制御を実施することが可能となる。
【0018】
各表示装置において、さらに、表示装置の温度状態を示す温度情報が保持されており、上記輝度設定値は、上記温度情報に応じて決定されているような場合には、温度変化に対応して輝度制御を実施することが可能となるため、本発明の効果は特に大きい。
【0019】
具体的には、マルチディスプレイシステムにおいて、表示装置の各々が自装置の温度に応じて自装置の輝度設定値を調整する。このような場合、温度の変化に応じて、輝度のばらつきはますます激しくなる。
【0020】
しかし、本発明の表示制御装置の構成によれば、各表示装置の輝度設定値に基づいて、基準輝度設定値(例えば、最も低い輝度設定値など)が決定され、その輝度設定値に統一されるので、視認性を損なうことなく、温度変化に対応した輝度制御を実施することが可能となる。
【0021】
上記状態取得手段は、各表示装置から、それぞれの上記温度情報および上記輝度設定値を取得し、上記表示制御装置は、さらに、上記状態取得手段によって取得された各表示装置の温度情報に基づいて、上記複数の表示装置の少なくともいずれかにおいて温度異常が発生したか否かを判断する状況判断手段を備え、上記輝度制御手段は、上記状況判断手段によって温度異常が発生したと判断された場合に、発生した上記温度異常に対応中の表示装置から取得した輝度設定値を、上記基準輝度設定値として選択することが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、状態取得手段は、各表示装置が保持する温度情報と輝度設定値とを取得する。そして、状況判断手段が、各表示装置の温度情報をチェックしてマルチディスプレイシステムを構成する表示装置のいずれかに温度異常が発生していないかどうかを判断する。
【0023】
そして、輝度制御部は、温度異常に対応している表示装置の輝度設定値に変更するように、すべての表示装置を制御する。
【0024】
もし温度異常がいずれかの表示装置で発生していれば、上述したとおり、表示装置は、その温度異常を解消するために、輝度設定値を調整して輝度を制御しているはずである。したがって、温度異常対応中の表示装置の輝度設定値は、その他の正常な表示装置の輝度設定値から大きくかけ離れている可能性が高い。このままでは、マルチディスプレイシステムにおいて表示装置間に輝度ずれが生じ、視認性が損なわれる。
【0025】
そこで、輝度制御手段は、各表示装置の温度情報に基づいて、いずれかの表示装置に温度異常が発生していると判断された場合には、温度異常が発生している表示装置の輝度設定値を基準輝度設定値として選択し、その輝度設定値に統一するようにすべての表示装置を制御する。
【0026】
これにより、温度異常が発生した場合には、異常対応中の表示装置だけでなく、その他の表示装置も異常対応中の表示装置と同様に輝度の制御を実施することができる。
【0027】
したがって、表示装置間で生じる輝度ずれを解消し、結果として、マルチディスプレイの視認性を損なうことなく、環境の変化に対応した輝度制御を実施することが可能となる。
【0028】
さらに、マルチディスプレイシステムでは、各表示装置は密接して設置されていることが多く、異常が発生した表示装置単体で異常対応を行っても、周囲に対応していない表示装置があれば、その温度の影響を受けて、異常温度の解消が困難になるおそれがある。
【0029】
しかし、本発明の表示制御装置によれば、正常な表示装置も、異常対応中の表示装置と同様の輝度制御を行うため、異常温度の解消をより容易に実現することが可能になるというさらなる効果を奏する。
【0030】
上記状況判断手段によって温度異常が発生したと判断された場合に、該温度異常が発生する前に上記状態取得手段によって取得された輝度設定値を、通常輝度設定値として記憶する通常輝度記憶部を備えていることが好ましい。
【0031】
これにより、温度異常が発生する直前の正常な状態における輝度設定値を保存しておくことが可能となる。
【0032】
上記輝度制御手段は、上記状況判断手段によって上記温度異常が解消したと判断された場合に、各表示装置によって保持されている輝度設定値を、上記通常輝度記憶部に記憶されている通常輝度設定値に変更することが好ましい。
【0033】
これにより、温度異常が解消されたときに、即時、各表示装置を正常な状態の輝度設定値で制御することが可能となり、マルチディスプレイシステムを、異常が発生する前の正常な状態にすみやかに戻すことが可能となる。
【0034】
本発明の表示制御装置と上記複数の表示装置との各装置間は、通信手段を介して直列に接続されていてもよい。
【0035】
本発明の表示制御装置は、上記マルチディスプレイシステムを構成する複数の表示装置のうちの1つに搭載されていてもよい。
【0036】
上記温度情報は、表示装置の温度が正常であるか異常であるかを示す温度状態フラグであってもよい。
【0037】
この場合、状況判断手段は、取得されたすべての表示装置の温度状態フラグが「正常」を示している場合、温度異常が発生していないと判断し、取得されたいずれかの温度状態フラグが「異常」を示している場合、温度異常が発生していると判断する。
【0038】
本発明の表示制御方法は、上記課題を解決するために、マルチディスプレイシステムを構成する複数の表示装置を制御する表示制御方法であって、各表示装置において、表示装置の輝度を定めた輝度設定値が保持されており、上記各表示装置から、それぞれの輝度設定値を取得する状態取得ステップと、上記状態取得ステップにて上記各表示装置から取得された輝度設定値に基づいて基準輝度設定値を決定し、各表示装置によって保持されている輝度設定値を、上記基準輝度設定値に変更する輝度制御ステップとを含むことを特徴としている。
【0039】
なお、上記表示制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記表示制御装置をコンピュータにて実現させる表示制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0040】
本発明の表示制御装置は、上記課題を解決するために、マルチディスプレイシステムを構成する複数の表示装置を制御する表示制御装置であって、各表示装置において、表示装置の輝度を定めた輝度設定値が保持されており、上記各表示装置から、それぞれの輝度設定値を取得する状態取得手段と、上記各表示装置から取得された輝度設定値に基づいて基準輝度設定値を決定し、各表示装置によって保持されている輝度設定値を、上記基準輝度設定値に変更する輝度制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0041】
本発明の表示制御方法は、上記課題を解決するために、マルチディスプレイシステムを構成する複数の表示装置を制御する表示制御方法であって、各表示装置において、表示装置の輝度を定めた輝度設定値が保持されており、上記各表示装置から、それぞれの輝度設定値を取得する状態取得ステップと、上記状態取得ステップにて上記各表示装置から取得された輝度設定値に基づいて基準輝度設定値を決定し、各表示装置によって保持されている輝度設定値を、上記基準輝度設定値に変更する輝度制御ステップとを含むことを特徴としている。
【0042】
これにより、マルチディスプレイシステムにおいて、マルチディスプレイの視認性を損なうことなく、環境の変化に対応した輝度制御を実施することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態における表示制御装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態におけるマルチディスプレイシステムの概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態における表示装置の要部構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態における表示制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】表示制御装置の表示制御処理部が実行する温度異常制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】表示制御装置の表示制御処理部が実行する温度異常制御解除処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態における表示装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】表示装置の状態監視部が実行する状態監視処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】本発明のマルチディスプレイシステムにおいて各表示装置が映像を表示したときの様子を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態におけるマルチディスプレイシステムの概略構成を示す図である。
【図11】本発明の他の実施形態における主表示装置の要部構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の他の実施形態における主表示装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】従来のマルチディスプレイシステムにおいて各表示装置が映像を表示したときの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
≪実施形態1≫
本発明の一実施形態について、図1〜図9に基づいて説明すると以下の通りである。
【0045】
以下で説明する実施形態では、一例として、本発明のマルチディスプレイシステムを、4台の表示装置で実現されるマルチディスプレイシステムに適用した場合について説明する。本発明の「表示装置」は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD;Liquid Crystal Display)で実現された表示部を有している。しかし、これに限らず、本発明のマルチディスプレイシステムにおいて、本発明の表示装置を、EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP;Plasma Display Panel)、LED(Light-Emitting Diode)表示器などで実現してもよい。
【0046】
また、本発明のマルチディスプレイシステムにおいて、各表示装置を統括制御する制御装置は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)などで実現されており、本実施形態では特に本発明の「表示制御装置」としても機能する。
【0047】
なお、本発明のマルチディスプレイシステムを構成する表示装置の台数や配置は、本発明を具体的に説明するための一例として採用されたものであり、本発明のマルチディスプレイシステムの構成を限定する意図はない。
【0048】
〔マルチディスプレイシステムの構成〕
まず、本実施形態におけるマルチディスプレイシステムの概要について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態におけるマルチディスプレイシステムの概略構成を示す図である。
【0049】
図2に示すように、マルチディスプレイシステム1は、縦横2台×2台に配置された合計4台の表示装置200a〜200dと、これらの表示装置を統括制御するPCなどの制御装置とを含む構成となっている。本実施形態では、上記制御装置は、上述したとおり、本発明の表示制御装置100として機能する。
【0050】
なお、本発明に係るマルチディスプレイシステムの表示装置の配置はこれに限定されるものではなく、例えば、複数の表示装置が横1列に並んだマルチディスプレイシステムを構成してもよい。
【0051】
本実施形態では、一例として、4台の表示装置200a〜200dは、表示制御装置100を最上流として、表示装置200a、表示装置200b、表示装置200c、表示装置200dの順に上流から下流へと直列に接続されている。本実施形態では、表示装置200aと接続する表示制御装置100は、表示装置200a〜200dにおいて表示される表示内容の制御を行う機能(以下、映像信号出力機能)とともに、各表示装置の温度を監視して輝度の制御を行う機能(以下、輝度制御機能)も有している。
【0052】
表示制御装置100が上記輝度制御機能を実現するにあたり各装置間では、コマンドおよびコマンドに対する応答が送受信される。この送受信のための、マルチディスプレイシステム1の各装置の接続には、例えば、RS−232C、有線/無線LAN(Local Area Network)、HDMI(High Definition Multimedia Interface)のCECなどの各種通信手段を採用することができる。なお、上記映像信号出力機能に関し、映像信号の送受信のための各装置間の接続は、従来のマルチディスプレイシステムにおける適宜の接続形態が採用されればよい。各表示装置200は、音声信号の出力も行う場合には、音声信号の送受信も可能な適宜の接続形態が採用される。
【0053】
上述したとおり、各装置は、表示制御装置100を最上流として下流の各装置まで直列に接続されている。したがって、各表示装置200は、上記通信手段を介して、表示制御装置100によって発信されたコマンドを自装置の上流装置から受信するとともに、そのコマンドが下流装置宛てのものであればそれを自装置の下流装置に送信する。一方、上記コマンドの応答を表示制御装置100に返すときは、その応答を自装置の上流装置に送信する。また、下流装置から応答を受信した場合には、自装置の上流装置に該応答を送信する。結果として、表示制御装置100から各表示装置200宛てに送信されたコマンドは、各表示装置200に行き渡り、そのコマンドに対する各表示装置200からの応答は、表示制御装置100に集約される。
【0054】
なお、図2に示す各装置の接続形態は一例であって、本発明のマルチディスプレイシステムの構成を限定する意図はない。例えば、ハブを用いて、表示制御装置100と各表示装置200とを並列に接続し、表示制御装置100がすべての表示装置200と直接通信する接続形態も本発明の範疇に入る。
【0055】
次に、本実施形態において、マルチディスプレイシステム1を構成する表示制御装置100、表示装置200の構成について、それぞれ、図1、図3を参照して説明する。
【0056】
〔表示制御装置の構成〕
図1は、本実施形態における表示制御装置100の要部構成を示すブロック図である。表示制御装置100は、図1に示すように、主制御部10、通信部20、記憶部30を備えている。
【0057】
主制御部10は、表示制御装置100が備える各部を統括制御するものであり、機能ブロックとして、少なくとも、状態取得部11、および、表示制御処理部13を備えている。さらに、主制御部10は、状況判断部12を備えていてもよい。上述した主制御部10の各機能ブロックは、CPU(central processing unit)が、ROM(read only memory)等で実現された不図示の記憶装置に記憶されているプログラムを不図示のRAM(random access memory)等に読み出して実行することで実現できる。
【0058】
これにより、主制御部10は、接続された各表示装置200を制御するためのコマンドを生成したり、各表示装置200に対して輝度制御機能を実行したりすることができる。主制御部10の各機能ブロックの機能は、後に詳述する。
【0059】
通信部20は、接続されている表示装置200(本実施形態では、特に、直接接続されている表示装置200a)と通信し、マルチディスプレイシステム1として接続されている各表示装置200との間で、メッセージの送受信を行うものである。通信部20は、主制御部10が生成したコマンドを表示装置200に送信するとともに、該コマンドに対する応答として表示装置200から送信された応答のメッセージを受信する。通信部20は、上述したとおり、例えば、RS−232C、有線LAN、無線LAN、HDMIなどの通信手段によって実現されている。
【0060】
記憶部30は、主制御部10が、表示制御装置100が有する各種機能を実行するときに読み出す各種データを記憶するものであり、例えば、書き換え可能な不揮発性記憶装置にて実現される。
【0061】
記憶部30は、特に、表示制御装置100が実行する輝度制御機能を実現する際に読み出す各種プログラム、データを記憶する。具体的には、記憶部30には、マルチディスプレイシステム1に関するシステム情報を記憶するシステム情報記憶部31、メモリKnにて実現された、各表示装置200の通常時の輝度設定値を記憶する通常輝度記憶部32と、メモリBnにて実現された、各表示装置200の現在の状態を記憶する現在状態記憶部33と、メモリAnにて実現された、各表示装置200の過去の状態を記憶する前回状態記憶部34とが少なくとも含まれる。各記憶部に記憶される情報のデータ構造は、後に詳述する。
【0062】
(主制御部の各部の機能)
状態取得部11は、表示制御装置100が制御する各表示装置200から、各表示装置200の状態情報を取得するものである。表示装置の状態情報とは、表示装置の状態を示す情報であり、具体的には、温度状態フラグと輝度設定値とを含んでいる。
【0063】
温度状態フラグ(温度情報)とは、表示装置の特定部位(例えば、光源や発光素子など発熱する可能性のある電子部品や、温度の影響を受け易い部品の周辺、外気温など)の温度が、あらかじめ定められた正常温度範囲にあるか、あるいは、範囲からはずれて温度異常となっているかを示すフラグである。ここでは、前者の状態を「正常」であるとして、温度状態フラグは「0」を示す。そして、後者の状態を「異常」であるとして、温度状態フラグは「1」を示すものとする。これは、温度状態フラグの一例である。他の例では、状態情報において、温度状態フラグの代わりに、測定温度を含めることとし、状態情報を取得した表示制御装置100が、測定温度(温度情報)をあらかじめ定められた正常温度範囲と比較して、「正常」または「異常」を判断してもよい。
【0064】
輝度設定値は、各表示装置200に設定されている、表示装置200が実現すべき画面輝度の値を示すものである。表示装置200は、自装置に設定されている輝度設定値にしたがって、自装置の表示部における画面輝度が該輝度設定値となるように、自装置の光源の光量や発光素子の輝度を調節する。本実施形態では、各表示装置200は、高い輝度設定値を実現するほどにより多くの電力を消費し、消費電力量に伴って表示装置の温度は上昇するものである。
【0065】
状態取得部11は、状態情報取得コマンドを各表示装置200に送信して、各表示装置の状態情報、すなわち、温度状態フラグと輝度設定値とを取得する。取得された状態情報は、表示装置ごとに現在状態記憶部33に保存される。
【0066】
本実施形態では、状態取得部11は、一定間隔ごとに状態情報取得コマンドを送信して、定期的に各表示装置の状態情報を更新し、常に、最新の状態情報(以下、現在状態情報)を把握する構成となっている。
【0067】
状況判断部12は、状態情報に含まれる温度状態フラグに基づいて、自装置が管理するマルチディスプレイシステム1の状況を判断するものである。詳細には、状況判断部12は、取得された現在状態情報に基づいて、マルチディスプレイシステム1に属する表示装置のいずれかにおいて温度異常が発生しているか否かを判断する。さらに、状況判断部12は、上記現在状態情報と、過去の状態情報(例えば、定期更新の1回前の状態情報、以下、前回状態情報)とを比較して、その異常状態(あるいは正常状態)が、継続して発生している状態であるか、今回、新たに発生した状態であるのか判断する。
【0068】
そして、状況判断部12は、判断した状況に応じて、表示制御処理部13が実行する輝度制御機能に係る制御処理の要否を判断する。具体的には、状況判断部12は、マルチディスプレイシステム1が正常な状態から温度異常の状態に遷移した場合には、温度異常制御処理を実行するように表示制御処理部13に指示し、温度異常の状態から正常な状態に遷移した場合には、温度異常制御解除処理を実行するように表示制御処理部13に指示する。
【0069】
表示制御処理部13は、輝度制御機能に係る制御処理を実行するものである。すなわち、表示制御処理部13は、マルチディスプレイシステムに属する各表示装置に対し、指定の輝度設定値にしたがって表示動作を行うように指示する輝度変更コマンドを生成して、各表示装置に送信する。より詳細には、表示制御処理部13は、マルチディスプレイシステム1に属するすべての表示装置200が、同じかほぼ同じ輝度で表示動作を行うように、統一された輝度設定値を輝度変更コマンドに含めて各表示装置200に送信する。
【0070】
例えば、温度異常発生時には、表示制御処理部13は、温度異常に対応しようとして輝度を下げている表示装置200dの異常時の輝度設定値(輝度設定値のうち最低値を示すもの)を基準輝度設定値とし、この基準輝度設定値に合わせるように、残りの表示装置200a〜cに対して指示する。あるいは、異常な状態から正常な状態に復帰した場合には、異常発生前の状態に戻るように、各表示装置200に対して、異常発生前の通常時の輝度設定値を指定する。
【0071】
上述の異常時の基準輝度設定値のことを、異常時輝度設定値(基準輝度設定値)と称する。なお、異常時輝度設定値としては、上述の例のように、最低値の輝度設定値が選択されるとは限らない。例えば、表示装置の温度が正常温度範囲の下限値を下回ったとき、温度異常が発生した表示装置において温度を上げるために輝度が高く設定された場合は、表示制御処理部13は、温度異常に対処するために輝度設定値を最も高く設定している表示装置の現在輝度設定値を異常時輝度設定値として取得してもよい。表示制御処理部13をこのような構成とするためには、状態情報は、「異常」「正常」を示すのみの温度状態フラグの代わりに、「正常温度を上回って異常」「正常温度を下回って異常」「正常」の3つの温度状態を示す温度状態情報(温度情報)を含むことが好ましい。これにより、表示制御処理部13は、マルチディスプレイシステム1において「正常範囲を上回って異常」が生じた場合には、全表示装置200の輝度設定値の最低値を異常時輝度設定値として決定する一方、「正常温度を下回って異常」が生じた場合には、全表示装置200の輝度設定値の最高値を異常時輝度設定値として決定することが可能となる。
【0072】
(記憶部のデータについて)
システム情報記憶部31は、表示制御装置100が制御するマルチディスプレイシステム1に関するシステム情報を記憶するものである。システム情報としては、例えば、マルチディスプレイシステム1を構築する各表示装置200の表示装置IDが記憶される。また、必要に応じて、各表示装置200の型番や、通信用アドレス、表示部の仕様などが記憶されてもよい。さらに、上流から下流まで、どの表示装置がどの順番で接続されているのかなど、マルチディスプレイシステム1の接続形態が記憶されてもよい。
【0073】
メモリBnで実現されている現在状態記憶部33は、上述の現在状態情報を記憶するものである。すなわち、現在状態記憶部33には、状態取得部11が各表示装置200から取得した最新の状態情報が記憶されている。
【0074】
図1に示すとおり、現在状態記憶部33には、現在状態情報として、現在温度状態フラグ、および、現在輝度設定値が、各表示装置のIDに関連付けて記憶されている。
【0075】
メモリAnで実現されている前回状態記憶部34は、上述の前回状態情報を記憶するものである。すなわち、前回状態記憶部34には、繰り返し状態情報が取得される中で、最新の現在状態情報が取得される回の1つ前の回に取得された直前の状態情報が記憶されている。
【0076】
図1に示すとおり、前回状態記憶部34には、前回状態情報として、前回温度状態フラグ、および、前回輝度設定値が、各表示装置のIDに関連付けて記憶されている。
【0077】
本実施形態では、状態取得部11が次に最新の現在状態情報を取得し更新する前に、現時点で、メモリBn(現在状態記憶部33)に記憶されている現在状態情報を、前回状態情報として、メモリAn(前回状態記憶部34)に退避させる。そして、新たに表示装置200から取得した状態情報を現在状態情報として現在状態記憶部33に記憶しなおす。こうして、現在状態記憶部33は、常に最新の情報を格納するように維持されている。
【0078】
メモリKnで実現されている通常輝度記憶部32は、温度異常が発生していない通常(正常)時に各表示装置200に設定されている輝度設定値を記憶するものである。
【0079】
本実施形態では、通常輝度記憶部32は、温度異常が発生したとき、正常時の各表示装置200の輝度設定値を退避させておく目的で用いられる。具体的には、前回の状態情報取得時に前回温度状態フラグが正常を示しており、今回の状態情報取得時に現在温度状態フラグが異常を示した場合に、表示制御装置100の表示制御処理部13が温度異常に対応して温度異常制御処理を実行する。表示制御処理部13は、異常時の輝度設定値を各表示装置200に指示する前に、前回状態記憶部34に記憶されている前回輝度設定値、すなわち正常時の輝度設定値を、通常輝度設定値として通常輝度記憶部32に退避させる。
【0080】
図1に示すとおり、通常輝度記憶部32には、通常輝度設定値が、各表示装置のIDに関連付けて記憶されている。
【0081】
これにより、温度異常が終了して正常な状態に戻ったときに、表示制御処理部13は、異常が発生する直前の正常時における各表示装置200の輝度設定値を即時かつ容易に復活させることができる。
【0082】
〔表示装置の構成〕
図3は、本実施形態における表示装置200a〜dの要部構成を示すブロック図である。なお、図2に示した表示装置200a〜200dは同じ構成であるため、図3の説明では、表示装置200aについて行う。
【0083】
表示装置200aは、図1に示すように、主制御部40、通信部50、記憶部60、表示部51、温度測定部52、および、輝度変更部53を備えている。
【0084】
主制御部40は、表示装置200aが備える各部を統括制御するものであり、機能ブロックとして、少なくとも、コマンド実行部42および状態監視部43を備えている。さらに、本実施形態では、各装置が直列接続であるので、自装置宛てのコマンド、および、上流/下流に送信するデータを取捨選択するコマンド選択部41を備えている。上述した主制御部40の各機能ブロックは、CPU(central processing unit)が、ROM(read only memory)等で実現された不図示の記憶装置に記憶されているプログラムを不図示のRAM(random access memory)等に読み出して実行することで実現できる。
【0085】
これにより、主制御部40は、自装置の温度を監視して輝度設定値を制御し、自装置の状態情報を取得する機能(以下、温度監視機能)、表示制御装置100の指示にしたがって輝度を変更する機能(以下、輝度変更機能)および表示制御装置100から送信されたその他のコマンドに従って処理を行い応答する機能(以下、コマンド処理機能)を実行することができる。本発明の表示装置200は、自装置の判断で輝度の変更を行う温度監視機能よりも、上流装置のコマンドに従って輝度の変更を行う輝度変更機能を優先させる構成である。主制御部40の各機能ブロックの機能は、後に詳述する。
【0086】
通信部50は、接続された上流および/または下流の装置と通信し、メッセージの送受信を行うものである。表示装置200aの場合、図2に示すとおり、上流装置は表示制御装置100であり、下流装置は表示装置200bである。表示装置200dの場合、上流装置は表示装置200cであり、下流装置はない。
【0087】
各装置間で送受信されるメッセージには、表示制御装置100から各表示装置200宛てに送信されるコマンドと、下流の表示装置200から表示制御装置100宛てに送信される上記コマンドに対する応答とがある。
【0088】
通信部50は、表示制御装置100からコマンドを受信し、自装置よりも下流の表示装置200に対し、上記コマンドを送信する。また、コマンドに対する応答を自装置よりも上流の装置(表示制御装置100または表示装置200)に送信する。通信部50は、下流の装置から応答を受信した場合には、該応答を上流の装置に送信する。通信部50は、例えば、RS−232C、有線LAN、無線LAN、HDMIなどの通信手段によって実現されている。
【0089】
記憶部60は、主制御部40が、表示装置200aが有する各種機能を実行するときに読み出す各種データを記憶するものであり、例えば、書き換え可能な不揮発性記憶装置にて実現される。
【0090】
記憶部60は、特に、表示装置200aが実行する温度監視機能、輝度変更機能、およびコマンド処理機能を実現する際に読み出す各種プログラム、データを記憶する。具体的には、記憶部60には、自装置が属するマルチディスプレイシステム1に関するシステム情報を記憶するシステム情報記憶部61、自装置の現在の状態を記憶する現在状態記憶部62と、自装置が正常に動作する温度の範囲を示す正常温度範囲を記憶する正常温度範囲記憶部63とが少なくとも含まれる。各記憶部に記憶される情報のデータ構造は、後に詳述する。
【0091】
表示部51は、外部(例えば、表示制御装置100)から供給された画像、動画像、文字情報などの映像信号を表示するものである。本実施形態では、一例として、表示部51は、液晶ディスプレイで実現される。しかし、本発明の表示装置において、表示部51は、例えば、ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、LED表示器、などで実現されてもよい。
【0092】
温度測定部52は、表示部51の温度を測定するものである。温度測定部52は、例えば、表示部51の特定部位(電子部品などの近辺)に取り付けられ、そこで感知した温度を表示部51の温度として測定し、数値を表示装置200aの主制御部40に対して出力する。例えば、温度測定部52をサーミスタなどの半導体素子で構成し、サーミスタが感知した電気抵抗を対応する温度数値に変換して利用することが考えられる。
【0093】
輝度変更部53は、主制御部40において設定された輝度設定値に基づいて、表示部51の輝度を調整する手段である。この輝度変更部53は、表示部51における輝度の調節方法に応じて、適宜の構成が採用される。例えば、表示部51が液晶ディスプレイで実現されている場合、輝度変更部53は、表示部51が備える光源(バックライト)の輝度を調整するバックライト制御部で構成される。
【0094】
(主制御部の各部の機能)
コマンド選択部41は、通信部50において受信されたメッセージのうち、自装置に対して送信されたコマンドを選択的に受け付けるものである。具体的には、コマンド選択部41は、まず、受信されたメッセージが上流装置から送信されたコマンドであるか、下流装置から送信された応答であるかを判断し、応答である場合には、受信された上記応答を自装置の上流の装置に送信するように通信部50に指示する。次に、コマンド選択部41は、コマンドである場合には、受信されたコマンドが自装置宛であるか否かを判断する。そして、コマンドが他の下流装置宛てである場合には、コマンド選択部41は、該コマンドを下流装置へ送信するよう通信部50に指示する。一方、コマンドが自装置宛てである場合には、コマンド選択部41は、該コマンドを取得して、コマンド実行部42に供給する。
【0095】
コマンド実行部42は、コマンド選択部41から供給されたコマンドの指示内容を解析し、コマンドに従って処理を実行する、あるいは、その他の処理部に処理の実行を指示するものである。
【0096】
本実施形態では、例えば、表示制御装置100から送信されるコマンドとしては、自装置の状態情報を返信するように指示する状態情報取得コマンドがある。コマンド実行部42は、受信されたコマンドが状態情報取得コマンドであると判断した場合には、上述の温度監視機能を実行するように状態監視部43に指示を行う。そして、状態監視部43によって取得された最新の状態情報を含む応答メッセージを表示制御装置100宛てに返す。
【0097】
あるいは、受信されたコマンドが輝度変更コマンドであると判断した場合には、コマンド実行部42は、コマンドで指定された輝度設定値に変更するように、輝度変更部53に対して指示を送る。そして、輝度の変更が完了すれば、完了報告を含む応答メッセージを表示制御装置100宛てに返す。
【0098】
状態監視部43は、状態情報取得コマンドにしたがって、温度監視機能を実行するものである。具体的には、状態監視部43は、自装置の温度を監視して、温度異常の有無を検知し、異常時には、異常を解消するために輝度設定値を調整する。また、状態監視部43は、自装置の温度と設定されている輝度設定値に基づいて、自装置の状態情報を生成する。
【0099】
詳細には、状態監視部43は、温度測定部52を制御して表示部51の温度を取得する。そして、正常温度範囲記憶部63に記憶されている正常温度範囲と比較して、表示部51の温度が上記範囲から外れているか否かに応じて、温度異常の有無の判断する。状態監視部43は、温度異常無しと判断した場合には、「正常」の値を示す現在温度状態フラグを生成し、現在状態記憶部62に記憶する。反対に、温度異常有りと判断した場合には、「異常」の値を示す現在温度状態フラグを生成し、現在状態記憶部62に記憶する。さらに、状態監視部43は、測定された温度に応じて輝度設定値を調整した場合には、最新の輝度設定値を現在状態記憶部62に格納して状態情報を更新する。
【0100】
上述したとおり、表示装置200は、状態監視部43が実行する温度監視機能において、状態監視部43が定めた輝度設定値よりも、コマンド実行部42が実行する輝度変更機能において、表示制御装置100から輝度変更コマンドにて指定された輝度設定値を優先させる構成となっている。
【0101】
これにより、表示装置200は、自装置が正常な状態であっても、表示制御装置100からの指示にしたがって、他の温度異常が発生した表示装置に合わせて自装置の輝度を調整することが可能となる。
【0102】
(記憶部のデータについて)
システム情報記憶部61は、表示装置200aが属するマルチディスプレイシステム1に関するシステム情報を記憶するものである。システム情報としては、例えば、マルチディスプレイシステム1を構築する各表示装置200の表示装置IDが記憶される。また、必要に応じて、各表示装置200の型番や、通信用アドレス、表示部の仕様などが記憶されてもよい。さらに、自装置の上流と下流とにはそれぞれどの表示装置が接続されているのかなど、マルチディスプレイシステム1の接続形態が記憶されている。これにより、コマンド選択部41が、上流装置と下流装置とを判断することが可能となる。
【0103】
現在状態記憶部62は、自装置(表示装置200a)の現在状態情報を記憶するものである。図3に示すとおり、現在状態記憶部62には、現在状態情報として、表示装置200aの現在温度状態フラグ、および、表示装置200aの現在輝度設定値が、表示装置200aのIDに関連付けて記憶されている。
【0104】
正常温度範囲記憶部63は、自装置(表示装置200a)が正常に動作できる温度範囲を定めた正常温度範囲を記憶するものである。状態監視部43は、正常温度範囲記憶部63に記憶されている正常温度範囲と、温度測定部52によって測定された温度とを比較することにより、表示部51の温度異常を検知することができる。正常温度範囲としては、例えば、正常に動作できる温度の上限値および/または下限値を記憶しておくことが考えられる。
【0105】
〔表示制御装置の処理フロー〕
図4は、本発明の実施形態における表示制御装置100の処理の流れを示すフローチャートである。表示制御装置100は、以下の一連の処理を実行することにより輝度制御機能を実現する。
【0106】
表示制御装置100の状態取得部11は、自装置が管理するマルチディスプレイシステム1の各表示装置200から状態情報を取得するタイミングが来たら(S101においてYES)、状態情報取得コマンドを、それぞれの表示装置200宛てに通信部20を介して送信する(S102)。状態情報を取得するタイミングは、マルチディスプレイシステム1の起動時あるいは、前回取得してから所定時間経過した時などが考えられる。状態情報取得コマンドは、表示装置200の現在の温度状態フラグおよび輝度設定値を表示制御装置100に対して送信する旨の指示を示すコマンドである。
【0107】
通信部20が、表示装置200a〜200dのそれぞれから、応答としての状態情報を受信すると、状態取得部11は、上記状態情報に含まれる現在温度状態フラグおよび現在輝度設定値を送信元の表示装置の表示装置IDに関連付けて、表示装置200ごとに、現在状態記憶部33に保存する(S103)。
【0108】
状態取得部11は、マルチディスプレイシステム1におけるすべての表示装置200a〜200dの状態情報を現在状態記憶部33に保存できたか否かを確認し(S104)、未保存の状態情報がある場合(S104においてNO)、状態取得部11は、S102に戻り、未保存の状態情報を有する表示装置に対し、再度、状態情報取得を試みる。
【0109】
状態取得部11が、すべての表示装置200a〜200dの状態情報を保存したと判定した場合(S104においてYES)、次に、状況判断部12は、現在状態記憶部33に記憶されている表示装置200a〜200dの温度状態フラグをそれぞれ読み出す(S105)。
【0110】
状況判断部12は、読み出した各表示装置の現在温度状態フラグに基づいて、温度異常が発生している表示装置が存在するか否かを判定する(S106)。
【0111】
状況判断部12は、温度異常が発生している表示装置が存在すると判定した場合(S106においてYES)、次に、前回状態記憶部34に記憶されている前回温度状態フラグを読み出す(S107)。状況判断部12は、S106において温度異常が発生していると判断した表示装置の前回温度状態フラグを確認して、S106にて確認した温度異常が前回から継続して発生している温度異常であるのか否かを判断する(S108)。
【0112】
状況判断部12は、S106で検知した温度異常が、前回は正常であって、今回新たに発生した異常であると判断した場合(S108においてNO)、この温度異常に対して措置が必要であると判断し、温度異常制御処理の実行を表示制御処理部13に指示する。この指示にしたがって、表示制御処理部13は、温度異常制御処理を行う(S109)。なお、温度異常制御処理の流れについては、図面を変えて後述する。一方、状況判断部12は、前回も異常であって、今回検知された異常は前回から継続しているものであると判断した場合(S108においてYES)、前回から実施されている温度異常制御処理を継続すべきであるとして、表示制御処理部13に対して新たに指示を送らない。この場合、表示制御処理部13において温度異常制御処理が継続される。
【0113】
ここまでの一連の処理が終了すると、状態取得部11は、S103にて取得保存した現在状態情報を、前回状態情報として前回状態記憶部34に保存した後(S110)、現在状態記憶部33を初期化して(S111)、次の状態情報取得タイミングに備える。
【0114】
状況判断部12は、温度異常が発生している表示装置が存在しないと判定した場合(S106においてNO)、次に、前回状態記憶部34に記憶されている前回温度状態フラグを読み出す(S112)。状況判断部12は、すべての表示装置の前回温度状態フラグに基づいて、前回温度異常が発生した表示装置の有無を確認して、S106にて確認した正常な状態が前回から継続されているのか否かを判断する(S113)。
【0115】
状況判断部12は、S106で判断した正常な状態が、前回は温度異常が発生しており、今回正常な状態に復帰したと判断した場合(S113においてYES)、前回までの温度異常措置の解除が必要であると判断し、温度異常制御解除処理の実行を表示制御処理部13に指示する。この指示にしたがって、表示制御処理部13は、温度異常制御解除処理を行う(S114)。なお、温度異常制御解除処理の流れについては、図面を変えて後述する。一方、状況判断部12は、前回も正常であって、今回検知された正常な状態は前回から継続しているものであると判断した場合(S113においてNO)、現状を維持すべきであるとして、表示制御処理部13に対して指示を送らない。この場合、現時点で各表示装置200に指定されている輝度設定値に基づいて、各表示装置200の輝度は維持される。
【0116】
ここまでの一連の処理が終了すると、状態取得部11は、S103にて取得保存した現在状態情報を、前回状態情報として前回状態記憶部34に保存した後(S110)、現在状態記憶部33を初期化して(S111)、次の状態情報取得タイミングに備える(S101に戻る)。
【0117】
(温度異常制御処理)
図5は、表示制御装置100の表示制御処理部13が実行する温度異常制御処理(図4のS109)の流れを示すフローチャートである。
【0118】
まず、表示制御処理部13は、前回状態記憶部34に記憶されている前回輝度設定値を読み出し、それを、正常状態に回復したときの復帰用の輝度設定値(通常輝度設定値)として通常輝度記憶部32に表示装置200ごとに記憶する(S121)。
【0119】
次に、表示制御処理部13は、現在状態記憶部33に記憶されている現在輝度設定値のうち、温度異常に対処するために輝度設定値を最も低く(あるいは、最も高く)設定している表示装置の現在輝度設定値を、異常時輝度設定値として取得する(S122)。
【0120】
続いて、表示制御処理部13は、表示装置200a〜200dの輝度設定値を、S122で取得した上記異常時輝度設定値に変更する旨を指示する輝度変更コマンドを各表示装置200宛てに生成し、通信部20を介して、それぞれの表示装置200に送信する(S123)。ここで、例えば、表示装置200dが、輝度設定値を最も低くして温度異常に対応している場合、既に上記異常時輝度設定値を設定している表示装置200dには、上記輝度変更コマンドは不要である。そこで、この場合、上記輝度変更コマンドは、表示装置200dを除く表示装置200a〜200cに送信されることが好ましい。
【0121】
ここで、通信部20は、各表示装置200a〜200cから、輝度設定値の変更が完了した旨を通知する完了報告の応答を受信する。表示制御処理部13は、表示装置200a〜200cのすべてから、上記応答を受信した否かを判定する(S124)。表示制御処理部13は、表示装置200a〜200cのすべてからの完了報告の応答を受信したと判定した場合に(S124においてYES)、温度異常制御処理を終了する。一方、応答未受信の表示装置200がある場合には(S124においてNO)、表示制御処理部13は、その表示装置200宛てに、輝度変更コマンドを再送するよう通信部20に通知する。すなわち、表示制御処理部13は、輝度変更コマンドを送信すべきすべての表示装置200から完了報告の応答を受信するまで、S123、S124の動作を繰り返す。
【0122】
上記方法によれば、マルチディスプレイシステム1において、一部の表示装置200に温度異常が発生した場合でも、一部の表示装置200の輝度だけが変更されるのではなく、マルチディスプレイシステム1を構成するすべての表示装置200の輝度が、温度異常が発生した表示装置200に合わせて一律変更される。したがって、マルチディスプレイシステム1の表示装置200間での輝度ずれを防ぎ、結果として、マルチディスプレイシステム1における表示の視認性が低下することを防止できるという効果を奏する。
【0123】
(温度異常制御解除処理)
図6は、表示制御装置100の表示制御処理部13が実行する温度異常制御解除処理(図4のS114)の流れを示すフローチャートである。
【0124】
まず、表示制御処理部13は、通常輝度記憶部32に記憶されている各表示装置200の通常輝度設定値を読み出す(S131)。
【0125】
次に、表示制御処理部13は、表示装置200a〜200dごとに、現在設定されている輝度設定値を、上記の各通常輝度設定値に変更する旨を指示する輝度変更コマンドを、各表示装置200宛てに個別に生成し、通信部20を介して、それぞれの表示装置200に送信する(S132)。
【0126】
ここで、通信部20は、各表示装置200から、輝度設定値の変更が完了した旨を通知する完了報告の応答を受信する。表示制御処理部13は、表示装置200a〜200dのすべてから、上記応答を受信した否かを判定する(S133)。表示制御処理部13は、表示装置200a〜200dのすべてからの完了報告の応答を受信したと判定した場合に(S133においてYES)、温度異常制御解除処理を終了する。一方、応答未受信の表示装置200がある場合には(S133においてNO)、表示制御処理部13は、その表示装置200宛てに、輝度変更コマンドを再送するよう通信部20に通知する。すなわち、表示制御処理部13は、すべての表示装置200から完了報告の応答を受信するまで、S132、S133の動作を繰り返す。
【0127】
〔表示装置の処理フロー〕
図7は、本発明の実施形態における表示装置200の処理の流れを示すフローチャートである。なお、表示装置200a〜200dは、上流装置および下流装置に対して同じ動作を行うため、図7の説明は、表示装置200aの動作を例に挙げて行う。
【0128】
表示装置200aは、マルチディスプレイシステム1が起動されると、表示制御装置100の指示にしたがって映像信号を表示する間、上流装置または下流装置からメッセージを受信できるメッセージ待機状態にある(S201)。
【0129】
ここで、通信部50が外部からメッセージを受信すると(S202においてYES)、コマンド選択部41は、受信されたメッセージが上流装置(ここでは、表示制御装置100)から送信されたコマンドであるか、または、下流装置(ここでは、表示装置200b)から送信された応答であるかを判定する(S203)。
【0130】
コマンド選択部41は、受信されたメッセージが下流装置から送信された応答であると判定した場合(S203においてB)、コマンド選択部41は、受信された応答をそのまま、通信部50を介して、上流装置(表示制御装置100)に送信する(S204)。
【0131】
一方、コマンド選択部41は、受信されたメッセージが上流装置から送信されたコマンドであると判定した場合(S203においてA)、コマンドの宛先に設定されている表示装置IDを確認する(S205)。
【0132】
コマンド選択部41は、上記コマンドの宛先の表示装置IDが自装置の表示装置IDではないと判断し、該コマンドが他の下流装置宛てであると判定した場合には(S206においてNO)、コマンド選択部41は、受信したコマンドをそのまま、通信部50を介して下流装置(ここでは、表示装置200b)に送信する(S207)。
【0133】
一方、コマンド選択部41は、受信されたコマンドの宛先が自装置の表示装置IDと一致することにより、該コマンドが自装置宛てであると判定した場合には(S206においてYES)、該コマンドを受け付けて、コマンド実行部42に供給する。
【0134】
続いて、コマンド実行部42は、受信されたコマンドを解析してコマンドの指示内容を確認する(S208)。
【0135】
コマンド実行部42は、受信されたコマンドが状態情報取得コマンドであると判定した場合(S209において1)、コマンド実行部42は、状態監視部43に対して温度監視機能を実現するための処理である「状態監視処理」の実行を指示する。状態監視部43は、この指示にしたがって状態監視処理を実行し、自装置の現在の状態(現在状態情報)を確認する(S210)。なお、状態監視処理の流れについては、図面を変えて後述する。
【0136】
コマンド実行部42は、状態監視処理が終了し、状態監視部43から自装置の現在状態情報を取得すると、該現在状態情報を含む応答を生成し、通信部50を介して、上流装置である表示制御装置100に送信する(S211)。受け付けたコマンドに対して応答を返し、一連の処理が終了すると、表示装置200aは、S201のメッセージ待機状態に戻る。
【0137】
あるいは、コマンド実行部42は、受信されたコマンドが輝度変更コマンドであると判定した場合(S209において2)、コマンド実行部42は、輝度変更部53を制御して、輝度変更機能を実施する(S212)。具体的には、コマンド実行部42は、現在状態記憶部33に記憶されている現在輝度設定値を、輝度変更コマンドにおいて指定されている輝度設定値に変更する。輝度変更部53は、変更された輝度設定値にしたがって表示部51の輝度を変更する。輝度変更部53による輝度の変更が完了すると、コマンド実行部42は、輝度変更完了報告を含む応答を生成し、通信部50を介して、上流装置に送信する(S213)。受け付けたコマンドに対して応答を返し、一連の処理が終了すると、表示装置200aは、S201のメッセージ待機状態に戻る。
【0138】
あるいは、コマンド実行部42は、受信されたコマンドがその他のコマンドであると判定した場合(S209において3)、コマンド実行部42は、上記コマンドの指示内容にしたがって各種処理を実行する、あるいは、他の処理部に処理の実行を指示する(S214)。コマンド実行部42は、上述のコマンド処理機能を実施した後、その完了報告を含む応答を生成し、通信部50を介して、上流装置に送信する(S215)。受け付けたコマンドに対して応答を返し、一連の処理が終了すると、表示装置200aは、S201のメッセージ待機状態に戻る。
【0139】
(状態監視処理)
図8は、表示装置200の状態監視部43が実行する状態監視処理(図7のS210)の流れを示すフローチャートである。
【0140】
まず、状態監視部43は、温度測定部52によって実施された測定結果から表示部51の温度を取得する(S221)。次に、状態監視部43は、取得した表示部51の温度を、正常温度範囲記憶部63に記憶されている正常温度範囲と比較し、温度異常が発生しているか否かを判定する(S222)。
【0141】
状態監視部43は、温度異常が発生していると判定した場合(S222においてYES)、現在状態記憶部62に記憶されている自装置の現在温度状態フラグを、温度異常が発生していることを示す値に設定する(S223)。そして、状態監視部43は、温度測定部52から取得した表示部51の温度に応じて、現在状態記憶部62に記憶されている現在輝度設定値を変更する(S224)。例えば、表示部51の温度が異常に高くなっている場合には、温度を下げるために消費電力を抑える目的で、輝度設定値を低く設定する。
【0142】
これにより、輝度変更部53は、変更後の輝度設定値にしたがって表示部51の輝度を変更する。
【0143】
一方、状態監視部43は、温度異常が発生していないと判定した場合(S222においてNO)、現在状態記憶部62に記憶されている現在温度状態フラグを、温度異常が発生していないことを示す値に設定する(S225)。そして、状態監視部43は、現在設定されている輝度設定値を維持する(S226)。
【0144】
状態監視部43は、上述の一連の処理が完了した時点で現在状態記憶部62に記憶されている自装置の現在状態情報をコマンド実行部42に返す。
【0145】
上記方法によれば、表示制御装置100からの状態情報取得コマンドに応答して、常に、最新の情報(温度異常発生の有無、および、表示装置200の状態)を表示制御装置100に供給することが可能となる。そして、上記方法によれば、各表示装置200は、表示制御装置100からの輝度変更コマンドに応答して、マルチディスプレイシステム1において温度異常が発生したときには、統一された異常時輝度設定値にしたがって表示部51の輝度を調整する。したがって、マルチディスプレイシステムを構成する各表示装置間での輝度ずれを防ぎ、マルチディスプレイ全体としての視認性の低下を防止することが可能となる。
【0146】
図9は、本発明のマルチディスプレイシステム1において各表示装置が映像を表示したときの様子を示す図である。図13は、従来のマルチディスプレイシステムにおいて各表示装置が映像を表示したときの様子を示す図である。
【0147】
図9に示すように、4台の本発明の表示装置200a〜200dを用いて、縦横2台×2台のマルチディスプレイシステムが構成されている。例えば、そのうちの1台(例えば、左上の表示装置200d)において温度変化(例えば、正常範囲を超える高温の温度異常)が発生したとする。この場合、表示装置200dは、自装置の輝度設定値を下げて、自装置の表示部51の輝度を下げる。
【0148】
表示装置200dにおいて下げられた輝度設定値の情報は、「異常」を示す温度状態フラグとともに、現在状態情報として表示制御装置100に通知される。表示制御装置100は、すべての表示装置200からの現在状態情報を確認した結果、表示装置200dの輝度設定値が最も低いと判断し、これを基準の異常時輝度設定値として残りの表示装置200a〜200cに通知する。
【0149】
上記構成によれば、マルチディスプレイシステム1に属するすべての表示装置200a〜200dは、統一された上記異常時輝度設定値にしたがって、マルチディスプレイシステム1全体として表示部51の温度を下げるために、自装置の表示部51の輝度を下げる。
【0150】
これにより、図9に示すとおり、すべての表示装置200a〜200dの輝度を一致させることができ、表示装置間で生じる輝度ずれを防止し、結果として、マルチディスプレイ全体としての視認性が低下することを防ぐことができる。
【0151】
さらに、本願発明のマルチディスプレイシステム1によれば、以下のような効果も奏する。
【0152】
すなわち、例えば図13に示すように、従来のマルチディスプレイシステムでは、温度異常が発生した表示装置300d以外の表示装置300a〜300cは、正常な状態であるかぎり、輝度設定値の調整は実施されない。したがって、通常時の輝度設定値に基づく表示動作が継続されるため、依然、表示装置300dに隣接する表示装置300a〜300cの温度が表示装置300dにも伝わる。このために、表示装置300dの輝度を調整するだけでは、表示装置300dの温度異常が解消されにくいという問題が生じる。特に、上段の表示装置(図13に示す例では、表示装置300c、300d)における高温の温度異常に対応する場合、熱は、下段から上段へと伝わりやすいため、温度異常の解消の困難性は特に深刻な問題となる。
【0153】
しかし、本実施形態では、図9に示すように、本発明のマルチディスプレイシステム1では、表示装置200dにおいて温度異常が発生した場合に、表示装置200a〜200cの輝度を表示装置200dが設定した輝度に一致させることができる。したがって、周囲の表示装置の温度を、温度異常が発生した表示装置と同様に変化させることができる。例えば、表示装置200a〜200cの輝度設定値を、表示装置200dと同様の輝度設定値に下げた場合、表示装置200dに隣接する表示装置200a〜200cの温度も下げることが可能となり、表示装置200a〜200cから伝わる発熱量を、従来の構成と比較して抑えることができる。結果として、表示装置200dで発生した温度異常の解消をより容易にすることができる。
【0154】
≪実施形態2≫
本発明の他の実施形態について、図10〜図12に基づいて説明すると以下の通りである。
【0155】
上述の実施形態では、マルチディスプレイシステム1において各表示装置を統括制御する制御装置が、本発明の「表示制御装置(100)」として機能し、マルチディスプレイシステム1に属するすべての表示装置の輝度の制御(輝度制御機能)を実施していた。
【0156】
しかし、本発明のマルチディスプレイシステムの構成は、上述の例に限定されない。例えば、以下のようなマルチディスプレイシステムも本発明の範疇に入る。すなわち、各表示装置を統括制御する上記制御装置が、従来と同じく映像信号出力機能の実行に特化しており、マルチディスプレイシステムに属する表示装置のうちの1台が、本発明の「表示制御装置(100)」を備えている。表示制御装置100を備えた表示装置は、温度異常のチェックと異常対応を行うときだけ、つまり、上述の輝度制御機能を実施するときだけ、マルチディスプレイシステムを制御する権限を上記制御装置から取得する。そして、自装置を含むすべての表示装置200に対して輝度制御機能を実施する。
【0157】
〔マルチディスプレイシステムの構成〕
図10は、本実施形態におけるマルチディスプレイシステムの概略構成を示す図である。
【0158】
図10に示すように、マルチディスプレイシステム2は、縦横2台×2台に配置された合計4台の表示装置と、これらの表示装置を統括制御するPCなどの制御装置99とを含む構成となっている。4台の表示装置のうち、制御装置99を接続する最上流の表示装置は、マスタとしての主表示装置210であり、それより下流の表示装置は、スレイブとしての表示装置200b〜200dである。
【0159】
本実施形態では、主表示装置210は、上述したとおり、マルチディスプレイシステム2に属する表示装置であるとともに、表示制御装置100を備え、本発明の「表示制御装置」としても機能する。
【0160】
本実施形態では、一例として、4台の表示装置、すなわち、主表示装置210、および、表示装置200b〜200dは、制御装置99を最上流として、主表示装置210、表示装置200b、表示装置200c、表示装置200dの順に上流から下流へと直列に接続されている。本実施形態では、制御装置99は、主表示装置210、および、表示装置200b〜200dにおいて表示される表示内容の制御を行う機能(映像信号出力機能)を有している。一方、主表示装置210は、表示制御装置100を備えていることにより、各表示装置の温度を監視して輝度の制御を行う機能(輝度制御機能)を有している。
【0161】
主表示装置210が上記輝度制御機能を実現するにあたり各装置間では、コマンドおよびコマンドに対する応答が送受信される。この送受信のための、マルチディスプレイシステム2の各装置の接続には、例えば、RS−232C、有線/無線LAN(Local Area Network)、HDMI(High Definition Multimedia Interface)のCECなどの各種通信手段を採用することができる。
【0162】
各表示装置は、主表示装置210を最上流として下流の各表示装置まで直列に接続されている。したがって、各表示装置200b〜200dは、上記通信手段を介して、主表示装置210によって発信されたコマンドを自装置の上流装置から受信するとともに、そのコマンドが下流装置宛てのものであればそれを自装置の下流装置に送信する。一方、上記コマンドの応答を主表示装置210に返すときは、その応答を自装置の上流装置に送信する。また、下流装置から応答を受信した場合には、自装置の上流装置に該応答を送信する。結果として、主表示装置210の表示制御装置100から、各表示装置200b〜200d宛てに送信されたコマンドは、各表示装置200に行き渡り、そのコマンドに対する各表示装置200からの応答は、主表示装置210の表示制御装置100に集約される。
【0163】
本実施形態におけるマルチディスプレイシステム2において、図2示すマルチディスプレイシステム1と最も大きく異なる点は、主表示装置210が、輝度制御機能を実施するときだけ、制御権を握るために制御装置99からのコマンドをブロックする点である。
【0164】
なお、図10に示す各装置の接続形態は一例であって、本発明のマルチディスプレイシステム2の構成を限定する意図はない。例えば、制御装置99と主表示装置210とを直列に接続し、ハブを用いて、主表示装置210と残りの表示装置200とを並列に接続する。このように、主表示装置210の表示制御装置100がすべての表示装置200と直接通信する接続形態も本発明の範疇に入る。
【0165】
次に、本実施形態において、マルチディスプレイシステム2を構成する主表示装置210の構成について、図11を参照して説明する。なお、表示装置200b〜200dの構成は、図3に示す表示装置200a〜dの構成と同様であるため、ここでは説明を繰り返さない。
【0166】
〔主表示装置の構成〕
図11は、本実施形態における主表示装置210の要部構成を示すブロック図である。主表示装置210は、先の実施形態における表示制御装置100の機能と表示装置200の機能との両方を備えている。よって、図11の各構成要素に付された符号は、図1または図3の各構成要素に付された符号に対応しており、同じ符号は、同じ構成要素を示している。したがって、上述の実施形態ですでに説明した構成要素について重複する説明は省略する。
【0167】
主表示装置210は、図11に示すように、主制御部70、通信部50、記憶部80、表示部51、温度測定部52、および、輝度変更部53を備えている。
【0168】
主制御部70は、主表示装置210が備える各部を統括制御するものであり、機能ブロックとして、少なくとも、状態取得部11、状況判断部12、表示制御処理部13、制御調整部14、および、状態監視部43を備えており、このうち、状態取得部11、状況判断部12、表示制御処理部13および制御調整部14は、表示制御装置100として機能する。上述した主制御部70の各機能ブロックは、CPU(central processing unit)が、ROM(read only memory)等で実現された不図示の記憶装置に記憶されているプログラムを不図示のRAM(random access memory)等に読み出して実行することで実現できる。
【0169】
さらに、主制御部70は、制御装置99から送信されたコマンドに対応するために、図示しないコマンド選択部41およびコマンド実行部42を備えていてもよい。
【0170】
これにより、主制御部70は、表示制御装置100として自装置および各表示装置200に対して輝度制御機能を実行したり、表示装置として温度監視機能、輝度変更機能およびコマンド処理機能を実行したりすることができる。図11に示す主表示装置210の表示制御装置100において、図1に示す表示制御装置100と異なる点は、主制御部70がさらに制御調整部14を備えている点である。制御調整部14の機能については後に詳述する。
【0171】
通信部50は、他の表示装置200に備えられている通信部50と同様に、接続された上流および/または下流の装置と通信し、メッセージの送受信を行うものである。主表示装置210の場合、図11に示すとおり、上流装置は制御装置99であり、下流装置は表示装置200bである。
【0172】
本実施形態では、通信部50は、さらに、自装置(表示制御装置100)にて生成されたコマンドを、自装置よりも下流の表示装置200に対して送信する。
【0173】
記憶部80は、主制御部70が、主表示装置210が有する各種機能を実行するときに読み出す各種データを記憶するものであり、例えば、書き換え可能な不揮発性記憶装置にて実現される。
【0174】
記憶部80は、特に、主表示装置210が実行する、輝度制御機能、ならびに、温度監視機能および輝度変更機能を実現する際に読み出す各種プログラム、データを記憶する。具体的には、記憶部80には、マルチディスプレイシステム2に関するシステム情報を記憶するシステム情報記憶部31、メモリKnにて実現された、自装置および各表示装置200の通常時の輝度設定値を記憶する通常輝度記憶部32、メモリBnにて実現された、自装置および各表示装置200の現在の状態を記憶する現在状態記憶部33、メモリAnにて実現された、自装置および各表示装置200の過去の状態を記憶する前回状態記憶部34、ならびに、自装置が正常に動作する温度の範囲を示す正常温度範囲を記憶する正常温度範囲記憶部63が少なくとも含まれる。
【0175】
システム情報記憶部31には、各表示装置200の情報のほか、制御装置99に関する各種情報が記憶されていてもよい。
【0176】
(主制御部の各部の機能)
状態取得部11は、状態情報取得コマンドを各表示装置200に送信して各表示装置200b〜200dからそれぞれの状態情報を取得するとともに、自装置の状態監視部43に状態監視処理の実行を指示して自装置の状態情報を取得する。
【0177】
状況判断部12は、取得された現在状態情報に基づいて、マルチディスプレイシステム2に属する表示装置200および自装置(主表示装置210)のいずれかにおいて温度異常が発生しているか否かを判断する。そして判断した状況に応じて、表示制御処理部13が実行する輝度制御機能に係る制御処理(上述の温度異常制御処理および温度異常制御解除処理)の要否を判断する。
【0178】
表示制御処理部13は、温度異常制御処理および温度異常制御解除処理を実行するものである。表示制御処理部13は、マルチディスプレイシステム2に属する各表示装置200b〜200dに対し、指定の輝度設定値にしたがって表示動作を行うように指示する輝度変更コマンドを生成して、各表示装置に送信する。さらに、表示制御処理部13は、自装置の現在状態記憶部33に記憶されている現在輝度設定値を上記指定の輝度設定値に設定し、他の表示装置と同様に自装置の輝度変更部53を制御して、輝度変更機能を実行する。
【0179】
制御調整部14は、自装置(主表示装置210)の処理実行状態を監視し、主表示装置210の処理実行状態に応じて、必要なときに上流装置からコマンド発信および制御の権限を取得するものである。具体的には、制御調整部14は、主表示装置210が、温度異常のチェックを行うとき、および、温度異常が発生したときの異常対応(輝度制御機能)を実施するときに、この間だけ、制御装置99の代わりにコマンド発信および制御の権限を得る。すなわち、制御調整部14は、権限を得ている上記の間、制御装置99からのコマンドが下流装置に流れないようにコマンドをブロックし、自装置の各部がコマンドを下流装置に送信することを許可している。制御調整部14は、異常のチェックと異常対応の一連の処理が終了すると、上流装置からのコマンドのブロックを解除する。
【0180】
〔主表示装置の処理フロー〕
図12は、本発明の実施形態における主表示装置210の処理の流れを示すフローチャートである。主表示装置210は、以下の一連の処理を実行することにより輝度制御機能を実現する。
【0181】
主表示装置210の状態取得部11が、状態情報を取得するタイミングが来たと判断したら(S301においてYES)、まず、制御調整部14が、制御の権限を取得し、制御装置99からのコマンドを無視するモードに自装置を設定する(S302)。
【0182】
次に、状態取得部11は、状態情報取得コマンドを、それぞれの表示装置200b〜200d宛てに通信部50を介して送信する(S303)。
【0183】
通信部50が、表示装置200b〜200dのそれぞれから、応答としての状態情報を受信すると、状態取得部11は、上記状態情報に含まれる現在温度状態フラグおよび現在輝度設定値を送信元の表示装置の表示装置IDに関連付けて、表示装置200ごとに、現在状態記憶部33に保存する(S304)。
【0184】
状態取得部11は、マルチディスプレイシステム2における下流のすべての表示装置200b〜200dの状態情報を現在状態記憶部33に保存できたか否かを確認し(S305)、未保存の状態情報がある場合(S305においてNO)、状態取得部11は、S303に戻り、未保存の状態情報を有する表示装置に対し、再度、状態情報の取得を試みる。
【0185】
状態取得部11が、表示装置200b〜200dの状態情報をすべて保存したと判定した場合(S305においてYES)、状態取得部11は、自装置の状態監視部43に対して、状態監視処理の実行を指示することにより、自装置の現在状態情報を、自装置のIDに関連付けて現在状態記憶部33に保存する(S306)。状態監視部43が実施する状態監視処理の流れは、図8に基づいて既に説明したとおりである。
【0186】
次に、状況判断部12は、現在状態記憶部33に記憶されている、全表示装置、すなわち、自装置(主表示装置210)および表示装置200b〜200dの温度状態フラグをそれぞれ読み出す(S307)。
【0187】
状況判断部12は、読み出した全表示装置の現在温度状態フラグに基づいて、自装置も含めて温度異常が発生している表示装置が存在するか否かを判定する(S308)。
【0188】
状況判断部12は、温度異常が発生している表示装置が存在すると判定した場合(S308においてYES)、次に、前回状態記憶部34に記憶されている前回温度状態フラグを読み出す(S309)。状況判断部12は、S308において温度異常が発生していると判断した表示装置の前回温度状態フラグを確認して、S308にて確認した温度異常が前回から継続して発生している温度異常であるのか否かを判断する(S310)。
【0189】
状況判断部12は、S308で検知した温度異常が、前回は正常であって、今回新たに発生した異常であると判断した場合(S310においてNO)、この温度異常に対して措置が必要であると判断し、温度異常制御処理の実行を表示制御処理部13に指示する。この指示にしたがって、表示制御処理部13は、温度異常制御処理を行う(S311)。表示制御処理部13が実施する温度異常制御処理の流れは、図5に基づいて既に説明したとおりである。一方、状況判断部12は、前回も異常であって、今回検知された異常は前回から継続しているものであると判断した場合(S310においてYES)、前回から実施されている温度異常制御処理を継続すべきであるとして、表示制御処理部13に対して新たに指示を送らない。この場合、表示制御処理部13において温度異常制御処理が継続される。
【0190】
ここまでの一連の処理が終了すると、状態取得部11は、S304にて取得保存した現在状態情報、および、S306で取得した自装置の現在状態情報を、前回状態情報として前回状態記憶部34に保存し(S312)、次の状態情報取得タイミングに備えて、現在状態記憶部33を初期化する(S313)。最後に、制御調整部14は、S302で行った、コマンドを無視するモードを解除して、制御の権限を制御装置99に返す(S314)。
【0191】
あるいは、状況判断部12は、温度異常が発生している表示装置が存在しないと判定した場合(S308においてNO)、次に、前回状態記憶部34に記憶されている前回温度状態フラグを読み出す(S315)。状況判断部12は、すべての表示装置の前回温度状態フラグに基づいて、前回温度異常が発生した表示装置の有無を確認して、S308にて確認した正常な状態が前回から継続されているのか否かを判断する(S316)。
【0192】
状況判断部12は、S308で判断した正常な状態が、前回は温度異常が発生しており、今回正常な状態に復帰したと判断した場合(S316においてYES)、前回までの温度異常措置の解除が必要であると判断し、温度異常制御解除処理の実行を表示制御処理部13に指示する。この指示にしたがって、表示制御処理部13は、温度異常制御解除処理を行う(S317)。表示制御処理部13が実施する温度異常制御解除処理の流れは、図6に基づいて既に説明したとおりである。一方、状況判断部12は、前回も正常であって、今回検知された正常な状態は前回から継続しているものであると判断した場合(S316においてNO)、現状を維持すべきであるとして、表示制御処理部13に対して指示を送らない。この場合、現時点で各表示装置に指定されている輝度設定値に基づいて、各表示装置の輝度は維持される。
【0193】
ここまでの一連の処理が終了すると、状態取得部11は、S304にて取得保存した現在状態情報、および、S306で取得した自装置の現在状態情報を、前回状態情報として前回状態記憶部34に保存し(S312)、次の状態情報取得タイミングに備えて、現在状態記憶部33を初期化する(S313)。最後に、制御調整部14は、S302で行った、コマンドを無視するモードを解除して、制御の権限を制御装置99に返す(S314)。そして、主制御部70はS301に戻る。
【0194】
〔変形例〕
上述の各実施形態では、表示制御装置100の表示制御処理部13は、温度異常が発生した場合に、温度異常に対応する表示装置から取得された現在輝度設定値を基準輝度設定値として選択する構成であった。
【0195】
しかしながら、本発明の表示制御装置100の構成は上記に限定されない。例えば、温度異常の発生の有無に関係なく、表示制御装置100が、各表示装置の輝度設定値を監視し、輝度設定値にずれが生じた場合に1つの基準輝度設定値に統一するように、下流の表示装置を制御する構成であってもよい。
【0196】
この場合、表示制御処理部13は、定期的に状態取得部11によって取得された各表示装置の輝度設定値をチェックして、すべての輝度設定値に基づいて1つの基準輝度設定値を決定する。例えば、表示制御処理部13は、すべての輝度設定値の平均値を算出して、これを基準輝度設定値として決定してもよいし、すべての輝度設定値のうち、平均値に最も近い輝度設定値を基準輝度設定値として選択してもよいし、最も低い値の輝度設定値を基準輝度設定値として選択してもよいし、最も高い値の輝度設定値を基準輝度設定値として選択してもよい。
【0197】
表示制御処理部13は、決定した基準輝度設定値を含む輝度変更コマンドを生成し、これを、マルチディスプレイシステムを構成するすべての表示装置に送信する。
【0198】
上記構成によれば、温度異常の発生の有無に関係なく、環境の変化に応じて各表示装置が個別に輝度の制御を行う場合でも、マルチディスプレイシステム全体で、すべての表示装置の輝度を統一することが可能となり、表示装置間の輝度ずれを防止することができる。結果として、マルチディスプレイシステム全体としての視認性の低下を解消することが可能となる。
【0199】
なお、表示制御処理部13は、状態取得部11によって取得された各表示装置の輝度設定値をチェックして、輝度設定値が一致しているか、または、ずれが生じているかを判断し、ずれが生じていると判断した場合のみ、基準輝度設定値で統一するという動作を行ってもよい。ここで、輝度設定値が一致しているかずれが生じているかの判断について、すべての輝度設定値が完全に一致している状態のみを一致していると判断し、それ以外を「ずれ」と判定してもよいが、ある程度のずれを許容して、輝度設定値がほぼ一致している状態を一致していると判断してもよい。どの程度のずれを許容するのかについてはあらかじめ閾値で定めておけばよい。
【0200】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0201】
最後に、表示制御装置100、表示装置200、および、主表示装置210の各ブロック、特に、状態取得部11、状況判断部12、表示制御処理部13、制御調整部14、コマンド選択部41、コマンド実行部42、および、状態監視部43は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0202】
すなわち、表示制御装置100、表示装置200、および、主表示装置210は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである表示制御装置100、表示装置200、および、主表示装置210それぞれの制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記表示制御装置100、表示装置200、および、主表示装置210にそれぞれ供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0203】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0204】
また、表示制御装置100、表示装置200、および、主表示装置210を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを、通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0205】
本発明の表示制御装置によれば、表示装置内外の温度に応じて自装置の輝度制御を行う表示装置が複数ある場合、一部の表示装置に温度異常が発生しても統一された輝度設定値に基づいてすべての表示装置の輝度制御を行うことができる。したがって、本発明の表示制御装置を、複数の表示装置で構成されたマルチディスプレイシステムの制御に好適に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0206】
1 マルチディスプレイシステム
2 マルチディスプレイシステム
10 主制御部
11 状態取得部(状態取得手段)
12 状況判断部(状況判断手段)
13 表示制御処理部(輝度制御手段)
14 制御調整部
20 通信部
30 記憶部
31 システム情報記憶部
32 通常輝度記憶部
33 現在状態記憶部
34 前回状態記憶部
40 主制御部
41 コマンド選択部
42 コマンド実行部
43 状態監視部
50 通信部
51 表示部
52 温度測定部
53 輝度変更部
60 記憶部
61 システム情報記憶部
62 現在状態記憶部
63 正常温度範囲記憶部
70 主制御部
80 記憶部
99 制御装置
100 表示制御装置
200a〜200d 表示装置
210 主表示装置(表示制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチディスプレイシステムを構成する複数の表示装置を制御する表示制御装置であって、
各表示装置において、表示装置の輝度を定めた輝度設定値が保持されており、
上記各表示装置から、それぞれの輝度設定値を取得する状態取得手段と、
上記各表示装置から取得された輝度設定値に基づいて基準輝度設定値を決定し、各表示装置によって保持されている輝度設定値を、上記基準輝度設定値に変更する輝度制御手段とを備えていることを特徴とする表示制御装置。
【請求項2】
上記輝度制御手段は、上記各表示装置から取得された輝度設定値のうち、最も低い値を示す輝度設定値を基準輝度設定値として選択することを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
各表示装置において、さらに、表示装置の温度状態を示す温度情報が保持されており、上記輝度設定値は、上記温度情報に応じて決定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
上記状態取得手段は、各表示装置から、それぞれの上記温度情報および上記輝度設定値を取得し、
上記表示制御装置は、さらに、上記状態取得手段によって取得された各表示装置の温度情報に基づいて、上記複数の表示装置の少なくともいずれかにおいて温度異常が発生したか否かを判断する状況判断手段を備え、
上記輝度制御手段は、上記状況判断手段によって温度異常が発生したと判断された場合に、発生した上記温度異常に対応中の表示装置から取得した輝度設定値を、上記基準輝度設定値として選択することを特徴とする請求項3に記載の表示制御装置。
【請求項5】
上記状況判断手段によって温度異常が発生したと判断された場合に、該温度異常が発生する前に上記状態取得手段によって取得された輝度設定値を、通常輝度設定値として記憶する通常輝度記憶部を備えていることを特徴とする請求項4に記載の表示制御装置。
【請求項6】
上記輝度制御手段は、
上記状況判断手段によって上記温度異常が解消したと判断された場合に、各表示装置によって保持されている輝度設定値を、上記通常輝度記憶部に記憶されている通常輝度設定値に変更することを特徴とする請求項5に記載の表示制御装置。
【請求項7】
上記表示制御装置と上記複数の表示装置とは、通信手段を介して直列に接続されていることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項8】
上記マルチディスプレイシステムを構成する複数の表示装置のうちの1つに搭載されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項9】
上記温度情報は、表示装置の温度が正常であるか異常であるかを示す温度状態フラグであることを特徴とする請求項4に記載の表示制御装置。
【請求項10】
マルチディスプレイシステムを構成する複数の表示装置を制御する表示制御方法であって、各表示装置において、表示装置の輝度を定めた輝度設定値が保持されており、
上記各表示装置から、それぞれの輝度設定値を取得する状態取得ステップと、
上記状態取得ステップにて上記各表示装置から取得された輝度設定値に基づいて基準輝度設定値を決定し、各表示装置によって保持されている輝度設定値を、上記基準輝度設定値に変更する輝度制御ステップとを含むことを特徴とする表示制御方法。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1から9までのいずれか1項に記載の表示制御装置の各手段として機能させるための制御プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−227303(P2011−227303A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97194(P2010−97194)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】