説明

表面形状測定装置および半導体ウェハ検査装置

【課題】本発明は、半導体ウェハにおける表面形状の測定に適した精度で、そして、より短時間でその表面形状を測定し得る表面形状測定装置および半導体ウェハ検査装置を提供する。
【解決手段】本発明の表面形状測定装置Saは、測定対象である半導体ウェハSWの表面に所定の波面を持つ測定光を照射するための光源部1と、半導体ウェハSWの表面で反射した測定光の反射光における波面の形状を測定する波面センサ4と、波面センサ4で測定した反射光における波面の形状に基づいて半導体ウェハSWにおける表面の形状を求める演算制御部7aとを備える。そして、半導体ウェハ検査装置は、このような表面形状測定装置Saを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハの表面形状を測定する表面形状測定装置およびこの表面形状測定装置を備え、半導体ウェハの表面形状に対する良否を検査する半導体ウェハ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路は、素子の集積化が進んでいる。この集積回路を半導体ウェハに製造するプロセス条件であるプロセス・ルールは、通常、ゲート配線の線幅または間隔における最小加工寸法によって規定される。このプロセス・ルールが半分になれば、理論上、同じ面積に4倍のトランジスタや配線を配置することができるため、同じトランジスタ数では1/4の面積となる。この結果、1枚の半導体ウェハから製造することができるダイが4倍になるだけでなく、通常、歩留まりも改善されるため、さらに多くのダイが製造可能となる。この最小加工寸法は、高密度な集積回路を製造するために、2007年の時点の最先端では、45nmに達している。このようなサブミクロンオーダ(1μm以下)のプロセス・ルールでは、半導体ウェハに高い平坦度が要求され、半導体ウェハの表面形状(表面の高さ変化)が無視できない。このため、半導体ウェハの表面形状を高精度に、例えば、ナノメートルオーダで測定する表面形状測定装置が望まれている。
【0003】
また、半導体ウェハでは、その表面形状の平坦度は、その外縁部にエッジロールオフ(Edge Roll-off)と呼ばれる形状が存在するため、一般に、中心部よりも外縁部の方が劣る。半導体ウェハにおけるダイの製造可能領域を外縁部へ広げるために、このエッジロールオフの評価が重要であり、そのためにも半導体ウェハの表面形状を高精度に測定する表面形状測定装置が望まれている。
【0004】
面形状を測定する形状測定方法には、一般に、干渉計による方法と、光切断法による方法とが知られている。この干渉計による方法は、例えば、非特許文献1に開示されており、光源から射出された光を分割手段によって例えば2つの光に分割し、それぞれ別々の光路を通った後に、これら2つの光を合波手段によって再び重ね合わせ、光路差によって発生する干渉縞を検出手段によって検出し、これを解析手段によって解析することで、測定対象物の表面形状を求めるものである。このような干渉計による方法には、フィゾー干渉計、マイケルソン干渉計および斜入射干渉計等を用いた方法が知られている。また、光切断法による方法は、例えば、非特許文献2に開示されており、光源から射出された扇形のシート光を測定対象物に照射し、このシート光を撮影手段によって撮影し、この得られた画像中におけるシート光による輝線を解析手段によって解析することで、測定対象物の表面形状を求めるものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】フジノン株式会社、“レーザー干渉計活用ガイド”、[online]、平成21年2月19日検索、インターネット、<http://www.fujinon.co.jp/jp/products/laser/kisotisiki2.htm>
【非特許文献2】オプトウエア株式会社、“高速光切断法プロファイル計測システム”、[online]、平成21年2月19日検索、インターネット、<http://www.optoware.co.jp/densen.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、干渉計による方法は、その原理から測定範囲が波長の長さ程度、すなわち数百ナノメートルしかなく、半導体ウェハにおける表面形状の測定に制約が生じてしまう。この干渉計による方法において、前記制約を解消するために測定範囲を広げようとすると、そのために測定距離を位相連結する必要が生じてしまう。また、それによって情報処理が複雑になるとともに、その情報処理の時間もかかってしまう。また、半導体ウェハの表面形状の測定では、そのエッジ部分を測定するだけでも、数十箇所から数百箇所の測定が必要となるため、1点ずつ測定する干渉計による方法では、その1箇所の測定に時間を要してしまうと、全体の測定時間が長時間になってしまう。
【0007】
また、光切断法による方法は、その原理からその測定精度が一般にせいぜい数μm程度である。一方、半導体ウェハの表面は、上述したように高い平坦度が要求されているため、半導体ウェハの表面形状をナノメートルオーダで測定する必要があり、このため、光切断法による方法は、半導体ウェハにおける表面形状の測定に適していない。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、半導体ウェハにおける表面形状の測定に適した精度で、そして、より短時間で半導体ウェハの表面形状を測定することができる表面形状測定装置および半導体ウェハ検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる表面形状測定装置は、測定対象である半導体ウェハの表面に所定の波面を持つ測定光を照射する光照射部と、前記半導体ウェハの表面で反射した前記測定光の反射光における波面の形状を測定する波面センサと、前記波面センサで測定した前記反射光における波面の形状に基づいて前記半導体ウェハにおける表面の形状を求める表面形状演算部とを備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成の表面形状測定装置は、波面センサを用いることによって半導体ウェハにおける表面の形状(表面形状)を測定するので、その測定原理から、半導体ウェハにおける表面形状の測定に適した精度で、そして、より短時間で半導体ウェハの表面形状を測定することができる。
【0011】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記光照射部によって照射される前記測定光は、進行方向を法線とする平面な波面を持つ平面波の光であり、前記波面センサは、シャックハルトマン(Shack-Hartmann)方式の波面センサであることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、波面センサにシャックハルトマン(Shack-Hartmann)方式の波面センサを用いた表面形状測定装置が提供される。
【0013】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記シャックハルトマン方式の波面センサは、前記反射光を受光し、アレイ状に配置された複数のレンズを備えるレンズアレイと、前記レンズアレイにおける複数のレンズを通過した前記反射光の像を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された画像データのうちの所定の閾値以上のデータを抽出するデータ抽出処理部と、前記データ抽出処理部で抽出されたデータに基づいて前記反射光における波面の形状を求める波面演算部とを備え、前記データ抽出処理部における前記所定の閾値は、測定箇所を含む所定範囲領域内における平均輝度値に関する値であることを特徴とする。ここで、平均輝度値に関する値には、単純平均によって得られた値および重み付き平均によって得られた値を含み、さらに、平均輝度値に予め設定された係数を乗ずることによって得られた値や、平均輝度値と所定の閾値との対応関係を示すルックアップテーブルが予め用意されており平均輝度値からこのルックアップテーブルを参照することによって得られた値も含む。
【0014】
この構成によれば、前記撮像部で撮像された画像において、前記レンズアレイにおける複数のレンズのそれぞれによって集光された前記反射光の各光点の位置を検出するべく、前記撮像部で撮像された画像データからデータを抽出する場合に用いられる所定の閾値が、測定箇所を含む所定範囲領域内における平均輝度値であるため、前記所定の閾値が例えば半導体ウェハの表面の状態やノイズ等に応じて適応的に変更されるので、前記反射光の各光点の位置をより精度よく検出することができる。この結果、このような構成の表面形状測定装置は、半導体ウェハにおける表面形状をより精度よく測定することが可能となる。
【0015】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記シャックハルトマン方式の波面センサは、前記反射光を受光し、アレイ状に配置された複数のレンズを備えるレンズアレイと、前記レンズアレイにおける複数のレンズを通過した前記反射光の像を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された画像データのうちの所定の閾値以上のデータを抽出するデータ抽出処理部と、前記データ抽出処理部で抽出されたデータに基づいて前記反射光における波面の形状を求める波面演算部とを備え、前記データ抽出処理部における前記所定の閾値は、前記半導体ウェハの端部からの距離に応じた値であることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、前記撮像部で撮像された画像において、前記レンズアレイにおける複数のレンズのそれぞれによって集光された前記反射光の各光点の位置を検出するべく、前記撮像部で撮像された画像データからデータを抽出する場合に用いられる所定の閾値が、前記半導体ウェハの端部からの距離に応じた値であるため、前記所定の閾値が半導体ウェハにおける端部近傍領域の表面形状に応じて適応的に変更されるので、前記反射光の各光点の位置をより精度よく検出することができる。この結果、このような構成の表面形状測定装置は、半導体ウェハにおける表面形状を、特に、半導体ウェハにおける端部領域の表面形状をより精度よく測定することが可能となる。
【0017】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記反射光を複数に分岐するとともに、前記複数の分岐光のうちの1つを前記波面センサに入射させる分岐部と、前記複数の分岐光のうちの他の1つを受光することで、前記半導体ウェハの端部を少なくとも含むように前記半導体ウェハの表面を撮影する撮影部と、前記撮影部によって撮影された前記半導体ウェハの表面画像に基づいて測定箇所の座標位置を求める座標位置演算部とをさらに備えることを特徴とする。
【0018】
測定箇所の位置は、例えば、測定対象の半導体ウェハを載置するステージの移動量に応じて求めることができるが、この構成によれば、分岐部によって前記反射光が複数の分岐光に分岐され、これら複数の分岐光のうちの1つが前記波面センサによって受光され、これら複数の分岐光のうちの他の1つが撮影部によって受光されることで、この撮影部によって半導体ウェハの表面が撮影され、座標位置演算部によって、半導体ウェハの表面画像に基づいて測定箇所の座標位置が求められる。このため、このような構成の表面形状測定装置は、半導体ウェハ上での測定箇所の位置をより正確に認識することができる。
【0019】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、ヘテロダイン干渉法を用いることによって前記半導体ウェハの厚さ分布を測定する厚さ分布測定部をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、半導体ウェハにおける表面形状だけでなく、前記半導体ウェハの厚さ分布も測定することができる表面形状測定装置が提供される。
【0021】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記光照射部は、前記半導体ウェハの一方の表面に所定の波面を持つ測定光を照射し、前記波面センサは、前記半導体ウェハの一方の表面で反射した前記測定光の反射光における波面の形状を測定し、前記表面形状演算部は、前記波面センサで測定した前記反射光における波面の形状に基づいて前記半導体ウェハの一方の表面における表面形状を求め、前記表面形状演算部によって求められた前記半導体ウェハの一方の表面における表面形状および前記厚さ分布測定部によって測定された前記半導体ウェハの厚さ分布に基づいて前記半導体ウェハの他方の表面における表面形状を求める第2表面形状演算部をさらに備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、第2表面形状演算部によって半導体ウェハにおける他方の表面形状が求められる。このため、このような構成の表面形状測定装置は、半導体ウェハの表裏両面の各表面形状を測定することができる。
【0023】
そして、本発明の他の一態様にかかる半導体ウェハ検査装置は、測定対象である半導体ウェハの表面における表面形状を測定する表面形状測定部と、前記表面形状測定部で測定された表面形状が所定の条件を満たすか否かを判定する判定部と前記判定部による判定結果を出力する出力部とを備え、前記表面形状測定部は、これら上述のいずれかの表面形状測定装置である。
【0024】
この構成によれば、これら上述のいずれかの表面形状測定装置が用いられるので、半導体ウェハにおける表面形状の測定に適した精度で、そして、より短時間で半導体ウェハの表面形状を測定することができるから、このような構成の半導体ウェハ検査装置は、よりスピーディでより正確に半導体ウェハの良否を検査することができる。したがって、このような構成の半導体ウェハ検査装置は、例えば、半導体ウェハを用いた製品の生産ラインに好適に用いることができ、要求される仕様(スペック)に達しない半導体ウェハを製造工程で選別することによって、製品の歩留まりが向上し、その結果、低コスト化も達成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかる表面形状測定装置および半導体ウェハ検査装置は、半導体ウェハにおける表面形状の測定に適した精度で、そして、より短時間で半導体ウェハの表面形状を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の表面形状測定装置における第1態様の波面センサを示す図である。
【図3】第1態様の波面センサにおける測定原理を説明するための図である。
【図4】第1態様の波面センサにおける波面角度の算出式を説明するための図である。
【図5】第1実施形態の表面形状測定装置における第2態様の波面センサを示す図である。
【図6】第1実施形態の表面形状測定装置における第3態様の波面センサを示す図である。
【図7】第1実施形態の表面形状測定装置における撮影部によって撮影される画像を説明するための図である。
【図8】第1実施形態における表面形状測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】第1実施形態の表面形状測定装置の動作において、主要な処理結果を示す図である。
【図10】波面センサのデータ抽出処理における所定の閾値を説明するための図である。
【図11】波面センサで測定された波面形状から測定対象物の表面形状を求める算出方法を説明するための図である。
【図12】第2実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。
【図13】第2実施形態の表面形状測定装置における厚さ分布測定部の構成を示す図である。
【図14】第2実施形態の表面形状測定装置において、一方表面形状および厚さ分布に基づいて他方表面形状を求める方法を説明するための図である。
【図15】第3実施形態における半導体ウェハ検査装置の構成を示す図である。
【図16】エッジロールオフを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。また、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。図2は、第1実施形態の表面形状測定装置における第1態様の波面センサを示す図である。図2(A)は、第1態様の波面センサの構成を示し、図2(B)は、マイクロレンズアレイの平面図を示す。図3は、第1態様の波面センサにおける測定原理を説明するための図である。図3(A)は、入射光の波面が歪んでいない場合(平面波である場合)を示し、図3(B)は、入射光の波面が歪んでいる場合を示す。図4は、第1態様の波面センサにおける波面角度の算出式を説明するための図である。図5は、第1実施形態の表面形状測定装置における第2態様の波面センサを示す図である。図6は、第1実施形態の表面形状測定装置における第3態様の波面センサを示す図である。図7は、第1実施形態の表面形状測定装置における撮影部によって撮影される画像を説明するための図である。
【0029】
第1実施形態の表面形状測定装置Saは、図1および図2に示すように、光源部1と、光路変更部2と、光分岐部3と、波面センサ4と、演算制御部7aとを備えて構成され、図1に示す例では、さらに、測定箇所MPの座標位置を求めるために撮影部5を備え、当該表面形状測定装置Saに所定のコマンドやデータ等を入力するために入力部6を備え、入力部6から入力された前記所定のコマンドやデータ等および当該表面形状測定装置Saの測定結果等を出力するために出力部8を備え、そして、測定箇所MPを変更するためにステージ9を備えて構成されている。
【0030】
光源部1は、演算制御部7aによって制御され、所定の波面を持つ測定光を放射する装置であり、例えば、キセノンランプやレーザ装置等である。前記所定の波面は、予め既知であればよいが、進行方向を法線とする平面な波面を持つ平面波であることが好ましい。本実施形態では、光源部1には、ヘリウムネオンレーザ装置(He−Neレーザ装置)が用いられ、このHe−Neレーザ装置によるレーザビームは、ビームエキスパンダによってビーム径20mmの平行光に拡大され、測定光として用いられる。
【0031】
光路変更部2は、光源部1から放射された測定光が入射され、測定対象物SWに測定光を照射すべく、光源部1から放射された測定光の光路を測定対象物SWに向けて変更する光学素子である。本実施形態では、測定対象物SWにおける測定面の法線方向に波面センサ4が配置され、光源部1は、前記法線方向の側面に配置され、例えば、前記法線方向に直交する方向から測定光を照射するため、光路変更部2は、ハーフミラ2を備えて構成される。光源部1から放射された測定光は、図1に示すように、ハーフミラ2に入射され、その光路がハーフミラ2によって略90度曲げられ、測定対象物SWの法線方向から、測定対象物SWの所定の測定箇所MPに照射される。測定対象物SWの測定箇所MPに照射された測定光は、測定対象物SWによって反射され、図1に示すように、再び、ハーフミラ2に入射され、ハーフミラ2を透過した前記測定光の反射光は、光分岐部3に入射される。
【0032】
測定対象物SWは、例えば、シリコンウェハ(例えば太陽電池用のシリコンウェハ等)等の半導体ウェハSWである。
【0033】
光分岐部3は、ハーフミラ2を介して入射された、測定対象物SWの表面で反射した前記測定光の反射光を2つに分岐する光学素子であり、例えば、ハーフミラ3を備えて構成される。ハーフミラ2を介して入射された、測定対象物SWの表面で反射した前記測定光の反射光は、ハーフミラ3によって2つに分岐され、その一方は、波面センサ4に入射され、その他方は、撮影部5に入射される。
【0034】
波面センサ4は、演算制御部7aによって制御され、測定対象物SWの表面で反射した前記測定光の反射光における波面の形状を測定する装置である。波面センサ4によって測定された前記反射光の波面の形状は、演算制御部7aへ出力される。この光の波面を測定する波面センサ(wave front sensor)4には、主に3つの手法がある。
【0035】
第1の手法は、シャックハルトマン方式の波面センサ(Shack-Hartmann wave-front sensor)と呼ばれ、図1および図2に示す例では、このシャックハルトマン方式の波面センサ4が用いられる。このシャックハルトマン方式の波面センサは、図2に示すように、瞳の後方に配置され、複数のマイクロレンズ411(図2(B)参照)をアレイ状に例えば2次元アレイ状に配置したマイクロレンズアレイ41と、例えばCCD型エリアセンサ(CCD型イメージセンサ)やCMOS型エリアセンサ(CMOS型イメージセンサ)等の光像を、電気的な信号に変換することによって撮像する撮像素子42と、撮像素子42の出力に対し所定の処理を行うことによって入射光(本実施形態では前記反射光)の波面を求める波面センサ演算制御部43とを備えて構成される。
【0036】
このような構成のシャックハルトマン方式の波面センサ4は、本センサ4に入射した入射光(本実施形態では前記測定光の反射光)をマイクロレンズアレイ41によって受光し、このマイクロレンズアレイ41における各マイクロレンズ411を通過した前記入射光の像、例えばマイクロレンズアレイ41における各マイクロレンズ411によって結像した前記入射光の像を撮像素子42によって撮像し、この撮像した前記入射光の像を波面センサ演算制御部43によって解析することで前記入射光の波面を求めるものである。このシャックハルトマン方式の波面センサ4では、前記入射光が平面波の場合では、図3(A)に示すように、撮像素子42において、各マイクロレンズ411によって各マイクロレンズ411の各光軸に対応した各位置(各基準位置)に前記入射光の像(光点、スポット、ドット、図中「・」で表す)が結像され、一方、入射光が平面波でなく歪みが生じている場合では、図3(B)に示すように、撮像素子42において、各マイクロレンズ411によって各マイクロレンズ411に対応した各基準位置からずれた各位置(各観測位置)に前記入射光の像(・)が結像される。前記観測位置における前記基準位置からの前記ずれ量は、前記入射光の波面に生じている歪み量(波面角度)に応じて生じる。このため、前記ずれ量を求めることで、前記入射光の波面が求められる。
【0037】
より具体的には、マイクロレンズアレイ41と撮像素子42との間の距離をFとし、観測位置とその基準位置との間の距離(前記ずれ量)をLとする場合に、図4に示すように、その幾何学的関係から、マイクロレンズアレイ41に垂直入射した平面波の波面に対する、測定したい入射光の波面における角度(マイクロレンズアレイ41に垂直入射した平面波の波面と、測定したい入射光の波面とのなす角の角度)である波面角度αは、tanα=L/Fで表され、α=tan−1(L/F)によって算出される。
【0038】
このように算出することによって入射光の波面、本実施形態では測定対象物SWで反射した前記測定光の反射光における波面を演算する波面センサ演算部43は、例えば、マイクロコンピュータ等を備えて構成され、図2(A)に示すように、例えば、機能的に、マイクロレンズアレイ41の各マイクロレンズ411に対応する各基準位置を記憶する基準位置記憶部434と、撮像素子42によって撮像された前記入射光(本実施形態では反射光)の像(画像)に基づいて各マイクロレンズ411に対応する各観測位置を求める観測位置演算部431と、観測位置演算部431によって求められた各観測位置ごとに、当該観測位置とその基準位置とのずれ量Lに基づいて波面角度αをそれぞれ求める波面角度演算部432と、波面角度演算部432によって求められた各波面角度αに基づいて前記入射光(本実施形態では反射光)の波面の形状を求める波面形状演算部433とを備えて構成される。
【0039】
また、第2の手法は、LSI(Lateral shearing interferometer)と呼ばれ、図5に示すように、当該波面センサに入射した波面φ(r)の入射光をshearing deviceによって所定値sだけずらして波面φ(r)を持つ光と波面φ(r+s)を持つ光とに分け、これら光の光像を撮像素子によって撮像し、この撮像した前記光の光像に示される干渉パターン(干渉縞)を解析することによって前記入射光の波面の位相を求めるものである。
【0040】
そして、第3の手法は、曲率センサ(curvature sensor)と呼ばれ、図6に示すように、当該波面センサに入射した入射光を、瞳の後方に配置されたレンズで受光し、このレンズの焦点位置fから等距離lでずれた2つの各位置で前記入射光の各像を撮像素子によってそれぞれ撮像し、これらそれぞれ撮像した各像を比較解析することによって前記入射光の波面を求めるものである。この曲率センサは、前記入射光が平面波の場合では、前記入射光の各像は、同様にぼやけた像となるが、一方、入射光が平面波でなく歪みが生じている場合では、前記入射光の各像は、それぞれ異なる像となる。前記入射光の各像間の相違は、前記入射光の波面に生じている歪み量に応じて生じる。このため、前記入射光の各像の相違を求めることで、前記入射光の波面が求められる。
【0041】
撮影部5は、演算制御部7aによって制御され、測定対象物SWを撮影する装置である。撮影部5によって撮影された測定対象物SWの画像に基づいて測定箇所MPの座標位置を求める場合には、測定対象物SWである半導体ウェハSWの端部を少なくとも含むように測定対象物SWの表面が撮影部5によって撮影される。すなわち、図7に示すように、撮影部5による画像PCは、測定対象物SWをその法線方向から撮影した場合における半導体ウェハSWの表面の画像であり、この画像PCには、半導体ウェハSWの端部SWEgが含まれる。撮影部5は、例えば、光学系、前記光学系によって結像された光像を、電気的な信号に変換することによって撮像する撮像素子、および、前記撮像素子の出力に対し所定の処理を行うことで、前記光像の画像を生成する画像処理部等を備えたカメラである。撮影部5によって撮影された画像は、演算制御部7aへ出力される。
【0042】
入力部6は、演算制御部7aに接続され、外部から当該表面形状測定装置Saにコマンド(命令)やデータ等を入力するための装置であり、例えばタッチパネルやキーボード等である。出力部8は、演算制御部7aに接続され、入力部6から入力されたコマンドやデータおよび演算制御部7aの演算結果等を出力するための装置であり、例えばCRTディスプレイやLCD(液晶ディスプレイ)や有機ELディスプレイ等のディスプレイおよびプリンタ等の印刷装置等である。
【0043】
ステージ9は、演算制御部7aによって制御され、測定対象物SWの厚さ方向に直交する水平方向に測定対象物SWを移動する装置である。
【0044】
演算制御部7aは、表面形状測定装置Saの各部を当該機能に応じて制御する回路であり、測定対象物SWの表面形状を波面センサ4の出力に基づいて求めるものである。演算制御部7aは、例えば、表面形状測定装置Saの各部を当該機能に応じて制御するための制御プログラムや測定対象物SWの表面形状を波面センサ4の出力に基づいて求める演算プログラム等の各種の所定のプログラム、および、前記所定のプログラムの実行に必要なデータ等の各種の所定のデータ等を記憶する、不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、前記所定のプログラムを読み出して実行することによって所定の演算処理や制御処理を行うCPU(Central Processing Unit)、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる前記CPUのワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)、ならびに、これらの周辺回路を備えたマイクロコンピュータ等によって構成される。演算制御部7aは、機能的に、第1表面形状演算部71と、座標位置演算部72と、全表面形状演算部73と、制御部74とを備えている。
【0045】
第1表面形状演算部71は、波面センサ4で測定した前記入射光の反射光における波面の形状に基づいて測定対象物SWにおける表面の形状を求めるものである。
【0046】
座標位置演算部72は、撮影部5によって撮影された測定対象物SWの表面画像に基づいて測定箇所MPの座標位置を求めるものである。
【0047】
全表面形状演算部73は、第1表面形状演算部71によって求められた表面形状に基づいて所望の測定範囲での測定対象物SWにおける表面全体の形状(全表面形状)を求めるものである。
【0048】
制御部74aは、光源部1、波面センサ4、撮影部5およびステージ9のそれぞれを当該各部の機能に応じて制御するものである。
【0049】
なお、表面形状測定装置Saは、さらに必要に応じて、外部記憶装置をさらに備えてもよい。この外部記憶装置は、演算制御部7aに接続され、フレキシブルディスク、CD−R(Compact Disc Recordable)およびDVD−R(Digital Versatile Disc Recordable)等の記憶媒体とデータを読み書きする補助記憶装置であり、例えば、フレキシブルディスクドライブ、CD−RドライブおよびDVD−Rドライブ等である。演算制御部7aに前記所定のプログラムおよび前記所定のデータ等が格納されていない場合には、これらを記録した記録媒体を外部記憶装置を介して演算制御部7aへ読み込むように、表面形状測定装置Saが構成されてもよい。
【0050】
次に、第1実施形態における表面形状測定装置Saの動作について説明する。図8は、第1実施形態における表面形状測定装置の動作を示すフローチャートである。図9は、第1実施形態の表面形状測定装置の動作において、主要な処理結果を示す図である。図9(A)は、波面センサ4によって取得された画像(取得画像)を示し、図9(B)は、波面センサ4におけるデータ抽出処理後の画像(スポットデータ)を示し、図9(C)は、波面センサ4で求められた図9(A)に示すAA線における前記反射波の波面形状を示し、そして、図9(D)は、第1表面形状演算部71で求められた、図9(B)に示す前記反射波の波面形状に基づく測定対象物SWの表面形状を示す。図10は、波面センサのデータ抽出処理における所定の閾値を説明するための図である。図10(A)は、波面センサ4の撮像素子42で撮像されたデータ抽出処理前の画像を示し、図10(B)は、図10(A)に示すBB線における輝度値と第1ないし第3態様のそれぞれの各閾値とを示す。図10(B)の横軸は、X座標であり、その縦軸は、当該座標位置における輝度値を示す。X座標は、測定対象物SWの端部(エッジ)付近において、予め設定した所定位置を0とし、径方向に沿って設定されている。破線は、第1態様の閾値(傾斜をかける場合)を示し、1点鎖線は、第2態様の閾値(区画ごとに算出する場合)を示し、そして、2点鎖線は、第3態様の閾値(一定の場合)を示す。図11は、波面センサで測定された波面形状から測定対象物の表面形状を求める算出方法を説明するための図である。
【0051】
図略の電源スイッチがオンされると、表面形状測定装置Saが起動され、演算制御部7aによって必要な各部の初期化が行われる。そして、例えば半導体ウェハ等の板状体の測定対象物SWがステージ9に載置され、入力部6から測定開始を指示するコマンドを受け付けると、演算制御部7aは、測定対象物SWの表面形状の測定を開始する。
【0052】
まず、演算制御部7aの制御部74aは、光源部1を駆動し、光源部1に測定光を放射させる。
【0053】
光源部1から放射された測定光は、図1に示すように、ハーフミラ2に入射され、その光路がハーフミラ2によって略90度曲げられ、測定対象物SWの法線方向から、測定対象物SWの所定の測定箇所MPに照射される。測定対象物SWの測定箇所MPに照射された測定光は、測定対象物SWによって反射され、図1に示すように、再び、ハーフミラ2に入射され、ハーフミラ2を透過した前記測定光の反射光は、ハーフミラ3に入射される。ハーフミラ3では、前記測定光の反射光が2つに分岐され、その一方は、波面センサ4に入射され、その他方は、撮影部5に入射される。
【0054】
演算制御部7aの制御部74aは、撮影部5によって撮影された画像に基づいてこの画像に測定対象物SWの端部を少なくとも含むように、ステージ9によって測定対象物SWを移動させる。演算制御部7aは、例えば、測定対象物SWの輝度と測定対象物SWの外部部分の輝度との相違を利用することによって、撮影部5によって撮影された画像に基づいて測定対象物SWの端部を検出することができる。このような測定対象物SWの端部の検出方法には、公知の常套手段である、いわゆるエッジ検出等の画像処理方法が用いられる。これによって測定対象物SWの初期位置が決定され、最初の測定箇所MPが決定される。
【0055】
測定対象物SWの初期位置が決定されると、前記最初の測定箇所MPについて、測定対象物SWの表面形状の測定が開示される。すなわち、まず、波面センサ4は、前記測定光の反射光を受光し、前記測定光の反射光の画像を取得する(S11)。より具体的には、波面センサ4では、前記測定光の反射光がマイクロレンズアレイ41を通過して、集光され、前記測定光の反射光の像が撮像素子42の撮像面に結像される。撮像素子42は、受光量に応じた電気的な信号に変換し、前記測定光の反射光の像に対応する画像の電気信号を波面センサ演算制御部43へ出力する。波面センサ演算制御部43は、撮像素子42から前記画像の電気信号を取り込み、前記測定光の反射光におけるマイクロレンズアレイ41を介した前記画像を取得する。例えば、図9(A)に示す画像が取得される。
【0056】
続いて、波面センサ4では、波面センサ演算制御部43の観測位置演算部431は、前記画像に基づいて各マイクロレンズ411に対応する各観測位置を求めるべく、前記画像の各画素の輝度値を所定の閾値とそれぞれ比較し、当該輝度値が前記所定の閾値以上である画素のデータを抽出し、これによって撮像素子42で撮像された画像データのうちの所定の閾値以上のデータを抽出するデータ抽出処理を行う(S12)。このようなデータ抽出処理を前記画像に施すことによって、処理対象外領域と処理対象領域とに分けられてノイズが除去され、例えば、図9(A)に示す画像(撮像素子42から得られた信号そのままによる画像、生画像)は、図9(B)に示す画像となり、マイクロレンズアレイ41の各マイクロレンズ411による前記測定光の反射光の像がより明瞭となり、これによって各マイクロレンズ411に対応する各観測位置をより精度よく検出することができる。
【0057】
ここで、前記データ抽出処理における前記所定の閾値は、図10(B)に2点鎖線で示すように、予め設定された所定の一定値であってもよいが、測定対象物SWである半導体ウェハSWの表面形状や表面状態等に応じて可変としてもよい。
【0058】
測定対象物SWである半導体ウェハSWでは、その端部近傍領域には、後述するように、いわゆるエッジロールオフと呼ばれる形状が存在し、一般に、その端部領域は、半導体ウェハSWの法線方向(垂直方向、厚さ方向)に直交する水平方向に対し湾曲している。このため、半導体ウェハSWに入射した測定光は、この端部領域では、その入射方向に対し、半導体ウェハSWの表面における接平面の法線を挟んで線対称な方向へ反射するため、波面センサ4に入射する前記測定光の反射光は、端部領域よりも内側の部分の領域における前記測定光の反射光に較べて、端部領域における前記測定光の反射光の方が、その光密度が低下し、暗くなる。
【0059】
このため、前記所定の閾値は、半導体ウェハSWの端部からの距離に応じた値に設定されることが好ましい。例えば、前記所定の閾値は、図10(B)に破線で示すように、端部領域よりも内側の部分では、所定の一定値であって、前記端部領域では、端部へ向かうに従って前記所定の一定値から徐々に小さな値に変化するように予め設定されてもよい。このように前記所定の閾値が設定されることによって、前記所定の閾値が半導体ウェハSWにおける端部領域の表面形状に応じて適応的に変更されるので、前記反射光の像(光点)の位置をより精度よく検出することができる。この結果、このような構成の表面形状測定装置Saは、半導体ウェハSWにおける表面形状を、特に、半導体ウェハSWにおける端部領域の表面形状をより精度よく測定することが可能となる。
【0060】
あるいは、前記所定の閾値は、測定箇所MPを含む所定範囲領域内における平均輝度値に関する値であることが好ましい。例えば、前記所定の閾値は、図10(B)に1点鎖線で示すように、データ抽出処理を行う画素に対し、その周辺画素の輝度値を平均した平均輝度値であってよい。周辺画素は、データ抽出処理を行う画素を中心に、予め設定された所定の画素数以内に存在する画素である。なお、平均輝度値に関する値は、このような単純平均によって得られた値だけでなく、重み付き平均によって得られた値であってもよく、さらに、平均輝度値に予め設定された係数を乗ずることによって得られた値や、平均輝度値と所定の閾値との対応関係を示すルックアップテーブルが予め用意されており平均輝度値からこのルックアップテーブルを参照することによって得られた値であってもよい。このように前記所定の閾値が設定されることによって、前記所定の閾値が例えば半導体ウェハSWの表面の状態やノイズ等に応じて適応的に変更されるので、前記反射光の像(光点)の位置をより精度よく検出することができる。この結果、このような構成の表面形状測定装置Saは、半導体ウェハSWにおける表面形状をより精度よく測定することが可能となる。
【0061】
このようなデータ抽出処理を行うと、続いて、波面センサ演算制御部43の観測位置演算部431は、前記画像における高輝度値の画素に、個々に識別するために、特定し識別するための識別子であるスポット認識番号の番号付けを行う(S13)。このスポット認識番号の番号付けを行う場合では、高輝度値の画素が互いに隣接する場合には、このような各画素を、高輝度値を持つ1つの領域と扱うために、例えば、このような各画素に同一のスポット認識番号が付される。また例えば、このような各画素が互いに関連付けられ、それに1つのスポット認識番号が付される。
【0062】
続いて、波面センサ演算制御部43の観測位置演算部431は、スポット認識番号のそれぞれについて、高輝度値を持つ画素の位置を求め、観測位置を求める。ここで、上述のように、高輝度値を持つ画素が互いに隣接しており、複数の画素で高輝度値を持つ1つの領域が形成されている場合には、その重心位置が例えば幾何学的に求められ、この求められた重心位置が前記観測位置とされる(S14)。このような処理によって、波面センサ演算制御部43の観測位置演算部431は、各マイクロレンズ411のそれぞれについて、マイクロレンズ411に対応する前記測定光の反射光の像に対し、その観測位置が求められる。
【0063】
続いて、波面センサ演算制御部43の波面角度演算部は、スポット認識番号のそれぞれについて、ステップS14に求められた観測位置とこれに対応する基準位置とのずれ量Lを求め、このずれ量Lとマイクロレンズアレイ41および撮像素子42間の距離Fとから、α=tan−1(L/F)によって波面角度αを求める(S15)。前記基準位置は、上述したように、基準位置記憶部434に予め記憶されている。前記基準位置は、例えば、マイクロレンズ411の光軸と撮像素子42の撮像面との交点として与えられる。また例えば、高度な平坦面を持つ基準試料、例えば、半導体ウェハSWの中心部分を波面センサ4で実測することによって、前記基準位置が予め求められる。
【0064】
なお、測定光が平面波ではなく所定の波面を持つ光である場合には、この所定の波面と平面波の波面との相違に応じて、前記ずれ量Lを補正すればよい。
【0065】
続いて、波面センサ演算制御部43の波面形状演算部433は、前記測定光の反射光における波面形状を求める(S16)。例えば、波面形状演算部433は、半導体ウェハSWの径方向に沿った各スポット認識番号の波面角度αを順次に連結することによって、半導体ウェハSWの径方向に沿った前記測定光の反射光における波面形状を求める。このような情報処理によって、例えば、図9(B)に示すデータ抽出処理後の画像から、半導体ウェハSWの径方向に沿ったAA線での前記測定光の反射光における波面形状として、図9(C)に示す形状が得られる。
【0066】
このように波面センサ4では、前記測定光の反射光が入射され、前記反射光がマイクロレンズアレイ41によって受光され、このマイクロレンズアレイ41における複数のマイクロレンズ411を通過した前記反射光の像が撮像素子42によって撮像され、この撮像素子42で撮像された画像が、データ抽出処理部の一例として観測位置演算部431によって、前記所定の閾値によってデータ抽出され、この抽出されたデータに基づいて、波面演算部の一例としての波面角度演算部432および波面形状演算部433によって、前記反射光における波面の形状が求められる。そして、この求められた前記測定光の反射光における波面形状が波面センサ4から演算制御部7aへ出力される。
【0067】
続いて、演算制御部7aは、波面センサ4から前記測定光の反射光における波面形状を取得すると、その第1表面形状演算部71によって、波面センサ4で測定した前記測定光の反射光における波面形状に基づいて測定対象物SWにおける表面の形状を求める(S17)。より具体的には、図11に示すように、測定対象物SWにおける所定の方向に沿って、例えば、径方向に沿って座標系Xが設定される。波面センサ4での座標系をX0とすると、この座標系X0での位置x0における前記反射光の波面に対する接平面(接線)が求められ、この接平面(接線)の法線とX0=x0の直線とのなす角θ(x0)が求められる。測定対象物SWと波面センサ4におけるマイクロレンズアレイ41の受光面との間の距離をDとすると、測定対象物SWの表面における接平面(接線)と水平方向とのなす角である表面角度φ(x)は、φ(x)=θ(x0)/2、x=x0+Dtanθ(x0)によって求められる。前記距離Dは、通常、100mm程度であり、それに対し表面形状は、ナノメートルオーダ(測定範囲全体(フレーム範囲)で大略サブミクロン〜数ミクロンの変化)であるので、前記距離Dに対し測定対象物SWの厚さは、一定と見なせるから、ステージ9の載置面と波面センサ4におけるマイクロレンズアレイ41の受光面との間の距離から測定対象物SWの厚さを減算することで、前記距離Dが求められる。そして、測定対象物SWの表面形状Φは、この表面角度φ(x)を所定の測定範囲でxについて積分することによって求められる(Φ(x)=∫φ(x)dx)。このような情報処理によって、例えば、図9(C)に示す前記測定光の反射光の波面形状から、測定対象物SWの表面形状として、図9(D)に示す形状が得られる。
【0068】
なお、測定箇所MPから得られた前記画像に、X座標が複数設定可能である場合(径方向に並ぶスポット列が周方向に複数有る場合)には、これら複数のX座標のそれぞれについて、ステップS17の処理が実行され、それぞれの測定対象物SWの表面形状Φが求められる。
【0069】
このようなステップS11ないしステップS17の各処理が最初の測定箇所MP(0)について実行され、最初の測定箇所MP(0)について測定対象物SWの表面形状Φ(0)が測定されると、演算制御部7aの制御部74aは、次の測定箇所MP(1)について測定対象物SWの表面形状Φ(1)を測定するべく、ステージ9を動作させ、測定対象物SWを所定の距離だけ移動させ、次の測定箇所MP(1)に測定対象物SWをセットする。そして、この次の測定箇所MP(1)について、前記ステップS11ないしステップS17の各処理が実行され、この次の測定箇所MP(1)について測定対象物SWの表面形状Φ(1)が測定される。このような処理によって、測定対象物SWについて、所望の測定範囲における表面形状Φ(0)、Φ(1)、・・・、Φ(k)が求められる。前記所望の測定範囲は、測定対象物SWの全表面であってよく、またその一部表面であってもよい。後述する半導体ウェハSWのいわゆるエッジロールオフを観測する場合には、半導体ウェハSWの外周辺における環状部分であってよい。
【0070】
このように所望の測定範囲における表面形状Φが求められると、演算制御部7aの全表面形状演算部73は、第1表面形状演算部71によって求められた表面形状Φに基づいて前記所望の測定範囲における測定対象物SWの全表面形状を求める。例えば、全表面形状演算部73は、上述のように求められた表面形状Φ(0)、Φ(1)、・・・、Φ(k)を順次に連結することによって、前記所望の測定範囲における測定対象物SWの全表面形状を求める。
【0071】
そして、演算制御部7aは、このように演算された測定対象物SWの全表面形状を出力部8に出力する(S18)。これによって測定対象物SWの全表面形状が提示される。なお、第1表面形状演算部71によって求められた表面形状Φが出力部8に出力されてもよい。
【0072】
一方、このような測定対象物SWの表面形状Φが算出されている間に、演算制御部7aの座標位置演算部72は、撮影部5によって撮影された測定対象物SWの表面画像CPに基づいて測定箇所MPの座標位置を求める。測定対象物SWの表面に対する撮影部5の配置位置や撮影部5の光学系の倍率等は、既知であるので、測定対象物SWの端部を認識することによって、座標位置演算部72は、この端部を基準に測定箇所MPの座標位置を求めることができる。そして、波面センサ4に入射される前記測定光の反射光と、撮影部5に入射される前記測定光の反射光とは、同一であるので、座標位置演算部72は、波面センサ4の基準位置を撮影部5によって撮影された測定対象物SWの画像に対応付けることができ、測定箇所MPの座標位置から、測定箇所MPにおいて、前記基準位置の座標位置も求めることができる。そして、このように求められた測定箇所MPの座標位置も出力部8に出力され、提示される。測定箇所MPの位置は、例えば、測定対象物SWである半導体ウェハを載置するステージ9の移動量に応じて求めることもできるが、このように波面センサ4に入射される前記測定光の反射光の一部を受光することによって得られた測定対象物SWの表面画像に基づいて測定箇所MPの座標位置が求められるので、このような構成の表面形状測定装置Saは、測定箇所MPの位置をより正確に認識することができる。
【0073】
このように第1実施形態における表面形状測定装置Saは、波面センサ4を用いることによって測定対象物SWである半導体ウェハSWにおける表面形状を測定するので、その測定原理から、半導体ウェハSWにおける表面形状の測定に適した精度で、そして、より短時間で半導体ウェハSWの表面形状を測定することができる。例えば、シャックハルトマン方式の波面センサでは、ナノメートルオーダの測定が可能であり、そして、数〜十mrad程度までの比較的大きな面角度の範囲を測定することができ、より短時間で半導体ウェハSWの表面形状を測定することができる。
【0074】
次に、別の実施形態について説明する。
【0075】
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。図13は、第2実施形態の表面形状測定装置における厚さ分布測定部の構成を示す図である。図14は、第2実施形態の表面形状測定装置において、一方表面形状および厚さ分布に基づいて他方表面形状を求める方法を説明するための図である。
【0076】
第1実施形態における表面形状測定装置Saは、測定対象物SWである半導体ウェハSWにおける一方主面の表面形状を測定する装置であるが、第2実施形態における表面形状測定装置Sbは、前記一方主面の表面形状の測定に加えて、測定対象物SWの厚さ分布を測定し、そして、これら測定された一方主面の表面形状と厚さ分布とに基づいて前記一方主面に対向する他方主面の表面形状を求める装置である。
【0077】
この第2実施形態における表面形状測定装置Sbは、第1実施形態における表面形状測定装置Saに加えて、前記厚さ分布を測定するべく、ヘテロダイン干渉法を用いることによって測定対象物SWである半導体ウェハSWの厚さ分布を測定する厚さ分布測定部をさらに備え、そして、前記他方主面の表面形状を求めるべく、光源部1は、ハーフミラ2を介して測定対象物SWの一方の表面に所定の波面を持つ測定光を照射し、波面センサ4は、測定対象物SWの一方の表面で反射した前記測定光の反射光における波面の形状を測定し、第1表面形状演算部71は、波面センサ4で測定した前記測定光の反射光における波面の形状に基づいて測定対象物SWの一方の表面における表面形状を求め、第1表面形状演算部71によって求められた測定対象物SWの一方の表面における表面形状および前記厚さ分布測定部によって測定された測定対象物SWの厚さ分布に基づいて測定対象物SWの他方の表面における表面形状を求める第2表面形状演算部76をさらに備えて構成される。
【0078】
より具体的には、第2実施形態における表面形状測定装置Sbは、図12に示すように、表面形状用測定部S1と、厚さ分布用測定部S2と、演算制御部7bとを備えて、図12に示す例では、さらに、入力部6と、出力部8と、ステージ9とを備えて構成されている。
【0079】
表面形状用測定部S1は、演算制御部7bによって制御され、測定対象物SWの一方の表面形状を測定するために、測定対象物SWに測定光を照射した場合に、前記測定光の反射波における波面形状を測定するものであり、光源部1と、光路変更部2としてのハーフミラ2と、光分岐部3としてのハーフミラ3と、波面センサ4と、撮影部5とを備えて構成されている。これら表面形状用測定部S1における光源部1、ハーフミラ2、ハーフミラ3、波面センサ4および撮影部5は、第1実施形態における表面形状測定装置Saにおける光源部1、ハーフミラ2、ハーフミラ3、波面センサ4および撮影部5と同様であるので、その説明を省略する。
【0080】
厚さ分布用測定部S2は、演算制御部7bによって制御され、光ヘテロダイン干渉法を利用することによって測定対象物SWの厚さ分布を例えばナノメートルレベルやサブナノメートルレベル(1nm以下の厚さ方向の分解能)で測定するために、厚さ分布測定用測定光(第2測定光)を測定対象物SWに照射し、その反射光を測定する装置である。このような厚さ分布用測定部S2は、例えば、図13(A)に示すように、光源部10と、一面側測定部11−1と、他面側測定部11−2と、一面側位相検波部12−1と、他方面側位相検波部12−2とを備えて構成され、ステージ9によって測定対象物SWを水平方向に移動させながら測定対象物SWの厚さ分布を測定するものである。なお、図12には、厚さ分布用測定部Sにおける一面側測定部11−1および他方側測定部11−2が示されている。
【0081】
以下、厚さ分布用測定部S2の各部について説明するが、ここで、各部で多用される光部品(光学素子)について、纏めて説明する。
【0082】
光分岐部(optical branching device、無偏光ビームスプリッタ)は、入射光を光パワーの点で2つの光に分配してそれぞれ射出する光部品である。光分岐部は、例えば、前述のハーフミラ(半透鏡)等の微少光学素子形光分岐結合器や、溶融ファイバの光ファイバ形光分岐結合器や、光導波路形光分岐結合器等を利用することができる。光分岐部は、通常、入力端子と出力端子とを入れ替えて(逆に)使用すると、入射した2つの光を合わせて射出する光結合部として機能する。光分岐部としてハーフミラが用いられる場合、通常、この分配された一方の光は、ハーフミラを通過してそのままの方向で射出され、この分配された他方の光は、ハーフミラで反射されてこの方向と垂直な方向(直交する方向)で射出される。
【0083】
偏光ビームスプリッタ(polarization beam splitter)は、入射光から互いに直交するS偏光とP偏光とを取り出してそれぞれ射出する光部品であり、通常、この取り出された一方の光(S偏光またはP偏光)は、そのままの方向で射出され、この取り出された他方の光(P偏光またはS偏光)は、この方向と垂直な方向(直交する方向)で射出される。
【0084】
偏光子(polarizer)は、入射光から所定の偏光面を持つ直線偏光を取り出して射出する光部品であり、例えば、偏光フィルタである。
【0085】
波長板(wave plate、(位相板(phase plate))は、入射光における2つの偏光成分の間に所定の位相差(したがって光路差)を与えて射出する光部品であり、例えば、前記1/4波長板や、入射光における2つの偏光成分の間にλ/2の光路差を与える1/2波長板等である。波長板を構成する例えば複屈折性の白雲母板等の結晶板における厚さをdとし、前記結晶板における2つの偏光成分に対する屈折率をそれぞれn1、n2とし、入射光の波長をλとする場合に、この波長板による位相差は、(2π/λ)(n1−n2)dで与えられる。
【0086】
反射鏡(ミラー、reflection mirror)は、入射光をその入射角に応じた反射角で所定の反射率で反射することによって光の進行方向を変更する光部品であり、例えば、ガラス部材の表面に金属薄膜や誘電体多層膜を蒸着したものである。反射鏡は、光のロスを低減するために、全反射する全反射鏡が好ましい。
【0087】
入力端子は、光部品へ光を入射するための端子であり、また、出力端子は、光部品から光を射出するための端子である。各部間の接続には、例えばミラーやレンズ等の光学部品から構成される導光手段が用いられてもよいが、本実施形態では、各部間の接続には、後述するように、偏波保持光ファイバやマルチモード光ファイバ等の光ファイバが用いられることから、これら入力端子および出力端子には、光ファイバを接続するためのコネクタが用いられる。
【0088】
以下、厚さ分布用測定部S2の各部について説明する。まず、光源部10について説明する。光源部10は、所定の可干渉光であって、測定対象物SWの厚さを光ヘテロダイン干渉法によって測定するための第2測定光を生成する装置である。第2測定光は、予め設定された所定の波長λ0(周波数ω0)を持つ単波長光であって、予め設定された所定の偏光面を持つ偏光である。第2測定光は、測定対象物SWを両面から光ヘテロダイン干渉法によって測定するために、2つの一面側測定光(第A測定光)および他面側測定光(第B測定光)を備えている。このような光源部10は、例えば、図13(A)に示すように、単波長レーザ光源101と、光アイソレータ102と、光分岐部103と、偏光子104、106と、出力端子105、107とを備えて構成される。
【0089】
単波長レーザ光源101は、予め設定された所定の波長λ0(周波数ω0)を持つ単波長レーザ光を発生する装置であり、種々のレーザ装置を用いることができるが、例えば、所定の光パワーで波長約632.8nmのレーザ光を出力することができるヘリウムネオンレーザ装置(He−Neレーザ装置)等である。単波長レーザ光源101は、波長ロッカ等を備えた周波数安定化レーザ装置が好ましい。光アイソレータ102は、その入力端子からその出力端子へ一方向のみに光を透過させる光部品である。光アイソレータ102は、単波長レーザ光源101のレーザ発振を安定させるために、厚さ分布用測定部S2内における各光部品(光学素子)の接続部等で生じる反射光(戻り光)が単波長レーザ光源101に入射することを防止するものである。
【0090】
このような光源部10では、単波長レーザ光源101から射出されたレーザ光は、光アイソレータ102を介して光分岐部103に入射され、第1レーザ光および第2レーザ光の2つに分配される。第1レーザ光は、偏光子104に入射され、所定の偏光面を持つレーザ光の一面側測定光となって、出力端子105から射出される。この一面側測定光は、一面側測定部11−1に入射される。一方、第2レーザ光は、偏光子106に入射され、所定の偏光面を持つレーザ光の他面側測定光となって、出力端子107から射出される。この他面側測定光は、他面側測定部11−2に入射される。
【0091】
ここで、説明の便宜上、測定対象物SWの一方面(図13に示す例では上側の面(上面))を「A面」と呼称することとし、測定対象物SWの、A面と表裏の関係にある他方面(図13に示す例では下側の面(下面))を「B面」と呼称することとする。本実施形態では、前記一面側測定光は、測定対象物SWのA面を光ヘテロダイン干渉法によって測定するために用いられ、前記他面側測定光は、測定対象物SWのB面を光ヘテロダイン干渉法によって測定するために用いられる。
【0092】
光源部10と一面側測定部11−1との接続、および、光源部10と他面側測定部11−2との接続には、光源部10および一面側測定部11−1間の光路長と、光源部10および他面側測定部11−2間の光路長との調整を容易にする観点から、本実施形態では、それぞれ、光をその偏波面を保持しながら導光する偏波保持光ファイバOF(OF−1、OF−2)が用いられる。偏波保持光ファイバは、例えば、PANDAファイバや楕円コア光ファイバ等である。光源部10の出力端子105から射出した一面側測定光は、偏波保持光ファイバOF−1によって導光され、一面側測定部11−1へ入射し、光源部10の出力端子107から射出した他面側測定光は、偏波保持光ファイバOF−2によって導光され、他面側測定部11−2へ入射する。
【0093】
次に、一面側測定部11−1および他方側測定部11−2について説明するが、これらは、同一の構成であるので、ここでは、一面側測定部11−1を以下に説明し、他方側測定部11−2の説明を省略する。
【0094】
一面側測定部(第A測定部)11−1は、光源部10からの一面側測定光が入射され、一面側測定光を用いた光ヘテロダイン干渉法によって測定対象物WAにおけるA面でのビート光信号を得る装置である。
【0095】
より具体的には、一面側測定部11−1は、測定対象物SWのA面に対向配置され、光源部10からの一面側測定光(第A測定光)を第1一面側測定光(第A1測定光)と第2一面側測定光(第A2測定光)とにさらに分け、光ヘテロダイン干渉によって、前記分けられた第1一面側測定光における測定対象物SWのA面に照射されて反射された照射後一面側測定光(第A照射後測定光)と前記分けられた第2一面側測定光とを干渉させた照射後一面側干渉光(第A照射後干渉光)を生成するとともに、光ヘテロダイン干渉によって、前記分けられた第1一面側測定光における測定対象物SWのA面に照射される前の照射前一面側測定光(第A照射前測定光)と前記分けられた第2一面側測定光とを干渉させた照射前一面側干渉光(第A照射前干渉光)を生成する測定光学系である。このような構成の他面側測定部11−1では、照射前一面側干渉光を基準に、照射後一面側干渉光における各位相がそれぞれ測定され得る。
【0096】
さらに、より具体的には、一面側測定部11−1は、測定対象物SWのA面に対向配置され、一面側測定光から、互いに周波数の異なる2つの第1および第2一面側測定光を生成し、この2つの第1一面側測定光と第2一面側測定光とを干渉(光ヘテロダイン干渉)させ、それらの差の周波数を持つビート光信号を生成する光ヘテロダイン干渉計であり、一面側測定光から第1および第2一面側測定光が生成されてから第1一面側測定光と第2一面側測定光とが干渉されるまでの間に、第1一面側測定光が測定対象物SWのA面に照射され反射される第1一面側光路および第1一面側測定光が測定対象物SWのA面に照射されない第2一面側光路を含む測定光学系である。
【0097】
このような一面側測定部11−1は、例えば、図13(B)に示すように、入力端子11aと、光分岐部11b、11f、11h、11i、11mと、偏光ビームスプリッタ11lと、光波長シフタ11d、11eと、反射鏡11c、11gと、1/4波長板11pと、レンズ11gと、偏光板11j、11nと、出力端子11k、11oとを備えて構成される。
【0098】
このような構成の一面側測定部11−1では、光源部10から偏波保持光ファイバOF−1を介して入力端子11aに入射された一面側測定光は、光分岐部11bに入射され、第1一面側測定光および第2一面側測定光の2つに分配される。第1一面側測定光は、そのままの方向(光分岐部11bにおいて、入射光の進行方向と射出光の進行方向とが同じ)で進行する一方、第2一面側測定光は、第1一面側測定光の進行方向に対し直交する方向(垂直な方向)へ進行する。第1一面側測定光は、光波長シフタ11dcに入射され、その波長(周波数)がシフト(変更)され、第2一面側測定光は、反射鏡11cを介して光波長シフタ11eに入射され、その波長(周波数)がシフト(変更)される。
【0099】
また、光分岐部11bから射出された第2一面側測定光は、本実施形態では光分岐部11bによって第1一面側測定光の進行方向に対し直交する方向へ進行するが、反射鏡11cによってその進行方向が直角に曲げられ、第1一面側測定光の進行方向と揃えられる。このように反射鏡11cは、光分岐部11bから射出された第1一面側測定光の進行方向と第2一側測定光の進行方向とを揃えるために設けられている。
【0100】
波長シフタ11dから射出された第1一面側測定光(波長シフト後の第1一面側測定光)は、光分岐部11hに入射され、第11一面側測定光(第A11測定光)および第12一面側測定光(第A12測定光)の2つに分配される。この第11一面側測定光は、そのままの方向で進行する一方、第12一面側測定光は、第11一面側測定光の進行方向に対し直交する方向へ進行する。また、波長シフタ11eから射出された第2一面側測定光(波長シフト後の第1一面側測定光)は、光分岐部11fに入射され、第21一面側測定光(第A21測定光)および第22一面側測定光(第A22測定光)の2つに分配される。この第21一面側測定光は、そのままの方向で進行する一方、第22一面側測定光は、第21一面側測定光の進行方向に対し直交する方向へ進行する。
【0101】
第12一面側測定光は、照射前一面側測定光であり、光分岐部11iに入射され、第22一面側測定光は、反射鏡11gを介して光分岐部11iに入射される。そして、この光分岐部11iに入射された第12一面側測定光と第22一面側測定光とは、光分岐部11iで光が合わされて光ヘテロダイン干渉を行い、そのビート光信号が偏光板11jを介して照射前一面側干渉光として出力端子11kから射出される。ここでは、光分岐部11iは、光結合部として機能している。この出力端子11kから射出されたビート光信号の照射前一面側干渉光は、一方面側位相検波部12−1に入射される。
【0102】
第11一面側測定光は、偏光ビームスプリッタ11lを介して1/4波長板11pに入射され、レンズ11qで集光され、測定対象物SWのA面に照射される。そして、この測定対象物SWのA面で反射された第11一面側測定光は、照射後一面側測定光として、再び、レンズ11qに入射され、そして、1/4波長板11pに入射される。したがって、この1/4波長板11pの存在によって、偏光ビームスプリッタ11lから測定対象物SWのA面に照射される第11一面側測定光における偏光状態(例えばP偏光またはS偏光)と、測定対象物SWのA面で反射して偏光ビームスプリッタ11lに入射される第11一面側測定光における偏光状態(例えばS偏光またはP偏光)とが互いに入れ替わることになる。このため、光分岐部11hから偏光ビームスプリッタ11lに入射された第11一面側測定光は、偏光ビームスプリッタ11lを測定対象物SWのA面に向かって通過する一方、測定対象物SWのA面からレンズ11qおよび1/4波長板11pを介して偏光ビームスプリッタ11lに入射した第11一面側測定光(照射後一面側測定光)は、所定の方向、本実施形態では、前記第11一面側測定光(照射後一面側測定光)が測定対象物SWのA面から偏光ビームスプリッタ11lへ向かう方向に対し直交する方向に反射される。
【0103】
偏光ビームスプリッタ11lから射出された第11一面側測定光(照射後一面側測定光)は、光分岐部11mに入射される。光分岐部11mには、光分岐部11fで分配された第21一面側測定光も、入射される。そして、この光分岐部11fに入射された第11一面側測定光(照射後一面側測定光)と第21一面側測定光とは、光分岐部11mで各光が合わされて光ヘテロダイン干渉を行い、そのビート光信号が偏光板11nを介して照射後一面側干渉光として出力端子11oから射出される。ここでは、光分岐部11mは、光結合部として機能している。この出力端子11oから射出されたビート光信号の照射後一面側干渉光は、一面側位相検波部12−1に入射される。
【0104】
そして、一面側測定部11−1と他面側測定部11−2とは、測定対象物SWのA面における測定箇所(測定位置)とそのB面における測定箇所(測定位置)とが表裏関係で以て同じ位置となるように、配置される。すなわち、測定対象物SWの厚さ方向をZ軸とし、前記厚さ方向に直交する水平面内における互いに直交する2方向をそれぞれX軸およびY軸とする直交XYZ座標系を設定する場合に、第11一面側測定光が測定対象物SWのA面に照射される箇所のX座標値およびY座標値が、第11他面側測定光が測定対象物SWのB面に照射される箇所のX座標値およびY座標値と一致するように、正対配置される。
【0105】
次に、一面側位相検波部(第A位相検波部)12−1および他方側位相検波部(第B位相検波部)12−2について説明するが、これらは、同一の構成であるので、ここでは、一面側位相検波部12−1を以下に説明し、他方側位相検波部12−2の説明を省略する。
【0106】
一面側位相検波部12−1は、一面側測定部11−1によって得られた照射後一面側干渉光と照射前一面側干渉光との間における各位相差△Φ2を検出するための装置である。より具体的には、このような一方面側位相検波部12−1は、例えば、図13(A)に示すように、光電変換部121、124と、増幅器122、125と、位相検波器126と、シールド板123とを備えて構成される。
【0107】
光電変換部121は、例えばホトダイオード等の光電変換素子を備えて構成され、一面側測定部11−1からの照射前一面側干渉光をマルチモード光ファイバおよび図略の入力端子を介して受光して、その光量に応じた信号レベルの電気信号を一面側参照ビート信号(第A参照ビート信号)Ref1として出力するものである。光電変換部124は、例えばホトダイオード等の光電変換素子を備えて構成され、一面側測定部11−1からの照射後一面側干渉光をマルチモード光ファイバおよび図略の入力端子を介して受光して、その光量に応じた信号レベルの電気信号を一面側測定ビート信号(第A測定ビート信号)Sig1として出力するものである。
【0108】
増幅器122は、信号増幅用のアンプであり、光電変換部121からの一面側参照ビート信号Ref1を所定のゲインで増幅し、位相検波器126へ出力する。増幅器1245は、信号増幅用のアンプであり、光電変換部124からの一面側測定ビート信号Sig1を所定のゲインで増幅し、位相検波器126へ出力する。
【0109】
シールド板123は、光電変換部121から位相検波器126に至る信号伝送路と、光電変換部124から位相検波器126に至る信号伝送路との間に配置された例えば金属製の板であり、一方の信号伝送路で発生した電磁波の不要輻射が他方の信号伝送路へ及ぼす影響を低減し、これら信号伝送路間のクロストークを防止するためのものである。
【0110】
位相検波器126は、入力信号間の位相を検出する装置であり、光電変換部121から増幅器122を介して一面側参照ビート信号Ref1が入力され、光電変換部124から増幅器125を介して一面側測定ビート信号Sig1が入力され、これら一面側参照ビート信号Ref1と一面側測定ビート信号Sig1との間における位相差△Φ2を検出する。
【0111】
そして、一面側位相検波部12−1は、この検出した位相差△Φ2を演算制御部7bへ出力する。同様に、他面側位相検波部12−2では、光電変換部121から増幅器122を介して他面側参照ビート信号Ref2が入力され、光電変換部124から増幅器125を介して他面側測定ビート信号Sig2が入力され、これら他面側参照ビート信号Ref2と他面側測定ビート信号Sig2との間における位相差△Φ1が検出され、他面側位相検波部12−2は、この検出した位相差△Φ1を演算制御部7bへ出力する。
【0112】
このように第2実施形態における表面形状測定装置Sbは、測定対象物SWの厚さを測定するために、測定対象物SWの両面から第2測定光が照射され、その反射光が測定される。このため、ステージ9は、例えば、図12に示すように、測定対象物SWの振動による影響を受けることなく、測定対象物SWの測定箇所MPにおける表面形状および厚さを高精度にかつ高速に測定することができるように、中央部材から径方向に延びる3個のアーム部材を備え、前記アーム部材の先端で、半導体ウェハSW等の円盤状の測定対象物SWをその縁部(エッジ領域)において円周上の3箇所で3点支持する支持部9dと、支持部9dの前記中央部材に連結される回転軸9aと、回転軸9aを回転駆動する回転駆動部9bと、回転駆動部9bを所定の移動範囲内で直線移動する直線駆動部9cとを備えている。これら回転駆動部9bや直線駆動部9cは、例えばサーボモータ等のアクチュエータや減速ギヤ等の駆動機構を備えて構成される。
【0113】
このような構成のステージ9では、測定対象物SWが支持部9dにおける3個のアーム部材の各先端に載せられて支持部9dによって3点支持される。そして、このように測定対象物SWがステージ9に載置された場合に、測定対象物SWのA面およびB面が一面側測定部11−1および他面側測定部11−2によって測定することができるように、ステージ9が一面側測定部11−1および他面側測定部11−2の配置位置に対して配設される。
【0114】
そして、このような構成のステージ9では、演算制御部7bの制御に従って回転駆動部9bが回転することで、回転軸9aを介して支持部9dが回転し、測定対象物SWが回転軸9a(支持部9dの中央部材)を中心に回転する。そして、演算制御部7bの制御に従って直線駆動部9cが回転駆動部9bを直線移動することで、測定対象物SWが径方向に沿って移動する。このような回転駆動部9bによる測定対象物SWの回転移動と、直線駆動部9cによる測定対象物SWの直線方向の移動とを併用することによって、ステージ9の移動範囲内において測定対象物SWの所望の測定箇所MPを測定することができる。
【0115】
演算制御部7bは、表面形状測定装置Saの各部を当該機能に応じて制御する回路であり、測定対象物SWの一方の表面における表面形状を波面形状用測定部S1における波面センサ4の出力に基づいて求め、測定対象物SWの厚さ分布を厚さ分布用測定部S2の出力に基づいて求め、これら求められた測定対象物SWの一方の表面における表面形状および測定対象物SWの厚さ分布に基づいて測定対象物SWの他方の表面における表面形状を求めるものである。演算制御部7bは、演算制御部7aと同様に、例えば、マイクロコンピュータ等によって構成され、機能的に、第1表面形状演算部71と、座標位置演算部72と、全表面形状演算部73と、制御部74bと、厚さ分布演算部75と、第2表面形状演算部76とを備えている。
【0116】
これら演算制御部7bにおける第1表面形状演算部71、座標位置演算部72および全表面形状演算部73は、第1実施形態の表面形状測定装置Saの演算制御部7aにおける第1表面形状演算部71、座標位置演算部72および全表面形状演算部73と同様であるので、その説明を省略する。
【0117】
厚さ分布演算部75は、一面側測定部11−1によって生成された照射前一面側干渉光および照射後一面側干渉光を一面側位相検波部12−1で位相検波することによって得られた位相差△Φ2と、他面側測定部11−2によって生成された照射前他面側干渉光および照射後他面側干渉光を他方面側位相検波部12−2で位相検波することによって得られた位相差△Φ1との差分(△Φ2−△Φ1)に基づいて、測定対象物SWにおけるA面からB面までの距離を測定対象物WAの厚さとして求める。この差分(△Φ2−△Φ1)は、測定対象物SWの厚さに関する値であり、一面側測定光の波長および他面側測定光の波長とが等しいとの近似の下に、一面側測定光の波長をλとする場合に、測定対象物SWの厚さDは、例えば、D=(△Φ1+△Φ2)×(λ/2)/(2π)によって求められる。前記式の符号(△Φ1と△Φ2との間の符号)は、光学系によって正負いずれもとることができ、通常、一面側測定部11−1および他面側測定部11−2を対称に作った(構成した)場合には、正(+)となる。なお、本実施形態では、一面側と他面側との第2測定光は、同じ光源からの光を分岐したものであり、一面側と他面側との第2測定光の波長は、一致している。そして、A面側の一面側位相検波部12−1およびB面側の他面側位相検波部12−2は、演算制御部7bにおける制御部74bの制御に従って同期され、同期した(同じタイミングで)前記位相検波を行う。これにより、前記差分(△Φ2−△Φ1)は、測定対象物SWの振動による影響を受けることなく、測定対象物SWの厚さを測定することができる。このような測定対象物SWの厚さの測定が測定対象物SWの各測定箇所MPについて行われ、これによって厚さ分布演算部75は、測定対象物SWの厚さ分布を求める。
【0118】
このように厚さ分布演算部75は、各測定箇所MPについて、一面側位相検波部12−1から入力された位相差△Φ2および他面側位相検波部12−2から入力された位相差△Φ1に基づいて測定対象物SWである半導体ウェハSWの厚さをそれぞれ求め、半導体ウェハSWの厚さ分布を求める。
【0119】
第2表面形状演算部76は、第1表面形状演算部71によって求められた測定対象物SWである半導体ウェハSWの一方の表面における表面形状および厚さ分布測定部75によって測定された半導体ウェハSWの厚さ分布に基づいて半導体ウェハSWの他方の表面における表面形状を求めるものである。図14に示すように、半導体ウェハSWの他方の表面における表面形状(他方表面形状h(r))は、半導体ウェハSWの一方の表面における表面形状(一方表面形状g(r))から厚さ分布f(r)を減算することによって求められる。このため、より具体的には、第2表面形状演算部76は、第1表面形状演算部71によって求められた半導体ウェハSWの一方表面形状g(r)から厚さ分布測定部75によって求められた半導体ウェハSWの厚さ分布f(r)を減算することによって半導体ウェハSWの他方表面形状h(r)を求める。なお、rは、測定対象物SWにおける所定の方向に沿って、例えば、径方向にそって設定されたR座標における座標値である。
【0120】
制御部74bは、光源部1、波面センサ4、撮影部5、ステージ9、光源部10、一面側測定部11−1、他面側測定部11−2、一面側位相検波部12−1および他方面側位相検波部12−2のそれぞれを当該各部の機能に応じて制御するものである。
【0121】
そして、表面形状用測定部S1と厚さ分布用測定部S2における一面側位相検波部12−1または他方面側位相検波部12−2とは、図12に示す例では、表面形状用測定部S1と厚さ分布用測定部S2の一面側位相検波部12−1とは、測定対象物SWである半導体ウェハSWを個々に測定することができるように、互いに離間して、半導体ウェハSWにおける同じ側、例えばA面側に配置される。
【0122】
このような構成の表面形状測定装置Sbでは、図略の電源スイッチがオンされると、表面形状測定装置Sbが起動され、演算制御部7bによって必要な各部の初期化が行われる。そして、例えば半導体ウェハ等の板状体の測定対象物SWがステージ9に載置され、入力部6から測定開始を指示するコマンドを受け付けると、演算制御部7bは、測定対象物SWの表面形状の測定を開始する。すなわち、測定対象物SWの一方表面形状g(r)の測定では、第1実施形態における表面形状測定装置Saと同様に動作し、演算制御部7bの第1表面形状演算部71によって測定対象物SWの一方表面形状g(r)が求められる。そして、測定対象物SWの厚さ分布の測定では、光源部10から第2測定光が一面側測定部11−1に導光され、一面側測定部11−1によってA面側が測定され、一面側位相検波部12−1によって前記位相差△Φ2が検出され、この前記位相差△Φ2が演算制御部7bへ出力され、光源部10から第2測定光が他方面側測定部11−2に導光され、他方面側測定部11−2によってB面側が測定され、他方面側位相検波部12−2によって前記位相差△Φ1が検出され、この前記位相差△Φ1が演算制御部7bへ出力される。そして、厚さ分布演算部75は、これら位相差△Φ1、△Φ2から測定対象物SWの厚さを求める。そして、ステージ9によって順次に測定箇所MPが変更されることで、厚さ分布演算部75は、測定対象物SWの厚さ分布f(r)を求める。
【0123】
測定対象物SWの一方表面形状g(r)およびその厚さ分布f(r)が求められると、第2表面形状演算部76は、第1表面形状演算部71によって求められた半導体ウェハSWの一方表面形状g(r)から厚さ分布測定部75によって求められた半導体ウェハSWの厚さ分布f(r)を減算することによって半導体ウェハSWの他方表面形状h(r)を求める。測定対象物SWの一方表面形状g(r)とその厚さ分布f(r)との間におけるデータの同期(互いの対応付け)は、表面形状用測定部S1と一面側測定部11−1または他方側測定部11−2との間における配設位置の関係に基づいて行うことができる。そして、これら求められた測定対象物SWの一方表面形状g(r)、その他方表面形状h(r)およびその厚さ分布f(r)が出力部8に出力され、これらが提示される。
【0124】
このように第2実施形態における表面形状測定装置Sbは、半導体ウェハの表裏両面の各表面形状を測定することができ、その厚さ分布も測定することができる。
【0125】
なお、上述では、測定対象物SWの一方表面形状g(r)およびその厚さ分布f(r)は、1つのステージ9によって行われたが、個々にステージを設け、別個のステージで行われてもよい。測定対象物SWを一方のステージから他方のステージへ搬送する搬送機構が設けられ、測定対象物SWが各ステージ間で移動される。この場合において、測定対象物SWの一方表面形状g(r)とその厚さ分布f(r)との間におけるデータの同期をとるために、例えば、最初の測定箇所MPが一致される。
【0126】
次に、別の実施形態について説明する。
【0127】
(第3実施形態)
図15は、第3実施形態における半導体ウェハ検査装置の構成を示す図である。図16は、エッジロールオフを説明するための図である。図16(A)は、ウェハ(Wafer)の表面プロファイル(Surface Profile)を示す模式図であり、図16(B)は、前記ウェハの縦断面模式図である。図16(A)の横軸は、ウェハにおけるエッジからの距離であり、その縦軸は、高さである。
【0128】
第3実施形態における半導体ウェハ検査装置Scは、第1または第2実施形態にかかる表面形状測定装置Sa、Sbを備え、半導体ウェハSWの表面形状が所定の条件を満たすか否かを検査する装置である。このような半導体ウェハ検査装置Scは、これら上述の第1およびは第2実施形態の表面形状測定装置Sa、Sbのいずれかが用いられるので、半導体ウェハSWにおける表面形状の測定に適した精度で、そして、より短時間で半導体ウェハSWの表面形状を測定することができる。このため、このような半導体ウェハ検査装置Scは、よりスピーディでより正確に半導体ウェハSWの良否を検査することができる。したがって、このような半導体ウェハ検査装置Scは、例えば、半導体ウェハSWを用いた製品の生産ラインに好適に用いることができる。より具体的には、半導体ウェハ検査装置Scは、例えば、前記製造ラインに配置され、前記製品の製造中に半導体ウェハSWを検査し、半導体ウェハSWの表面形状が所定の条件を満たさない場合に、製造ラインから当該半導体ウェハSWを取り除くべく、当該半導体ウェハSWの表面形状が所定の条件を満たさない旨を出力する。このような半導体ウェハ検査装置Scは、要求される仕様(スペック)に達しない半導体ウェハSWを製造工程で選別することによって、製品の歩留まりが向上し、その結果、低コスト化も達成することができる。
【0129】
このような半導体ウェハ検査装置Scは、測定対象である半導体ウェハSWの表面における表面形状を測定する表面形状測定部と、前記表面形状測定部で測定された表面形状が所定の条件を満たすか否かを判定する判定部と、前記判定部による判定結果を出力する出力部とを備え、前記表面形状測定部は、第1および第2実施形態の表面形状測定装置Sa、Sbのいずれかである。図15には、前記表面形状測定部に第1実施形態の表面形状測定装置Saを用いた場合の半導体ウェハ検査装置Scが示されている。すなわち、図15に示す半導体ウェハ検査装置Scは、光源部1と、光路変更部2と、光分岐部3と、波面センサ4と、撮影部5と、入力部6と、演算制御部7aと、出力部8と、ステージ9と、判定部21とを備えて構成されている。これら光源部1、光路変更部2、光分岐部3、波面センサ4、撮影部5、入力部6、演算制御部7a、出力部8およびステージ9の各部によって第1実施形態の表面形状測定装置Saが構成され、これら各部は、上述した第1実施形態の表面形状測定装置Saにおける光源部1、光路変更部2、光分岐部3、波面センサ4、撮影部5、入力部6、演算制御部7a、出力部8およびステージ9と同様である。
【0130】
判定部21は、演算制御部7aに接続され、演算制御部7aによって求められた半導体ウェハSWの表面形状が所定の条件を満たすか否かを判定するものである。判定部21は、例えば、演算制御部7aと同様に、マイクロコンピュータ等を備えて構成され、このマイクロコンピュータによって機能的に実現される。そして、判定部21の判定結果は、出力部8に出力される。
【0131】
前記所定の条件は、半導体ウェハSWによって製造される製品に応じて適宜に設定されればよく、例えば、半導体ウェハSWの平坦度であってよく、またエッジロールオフを表す指標であってもよい。
【0132】
半導体ウェハには、図16に示すように、最も外側にChamferと呼ばれる面取部があり、例えば、300mmウェハでは、物理的な先端から約0.3mm〜0.5mmの領域が前記面取部に当たる。エッジロールオフ(Edge Roll-off)は、前記面取部より内部の数mmまでに至る領域である。このエッジロールオフは、様々な要因によって生じるが、その大きな要因は、半導体ウェハの研磨工程にある。このエッジロールオフは、通常、図16に示すように、「ダレた形状」を呈するが、条件によっては、ダレではなく、「盛り上がった形状」を呈する場合もある。
【0133】
このエッジロールオフの評価方法として、例えば、Kimuraらが提案しているROA(Roll-off Amount;ROA)という評価値がある。この評価値は、図16(A)に示すように、半導体ウェハが平坦であると考えられる、半導体ウェハの物理的な先端から約3〜6mmの位置(Reference area)における半導体ウェハの形状から基準平面を求め、1mmの位置の半導体ウェハの形状と前記基準面との距離として定義される。この評価値ROAは、半導体ウェハの外縁部がどの程度ダレているか、あるいは盛り上がっているかを表す指標である。このようなエッジロールオフの指標である評価値ROAを求める場合には、判定部21は、径方向に沿った半導体ウェハSWの表面形状を演算制御部7aより得て評価値ROAを求め、この求めた評価値ROAが所定の条件としての評価値ROA(基準ROA)と比較され、半導体ウェハSWの表面形状が所定の条件を満たすか否かを判断する。
【0134】
上述では、前記表面形状測定部に第1実施形態の表面形状測定装置Saを用いた場合の半導体ウェハ検査装置Scについて図15を用いて説明したが、前記表面形状測定部に第2実施形態の表面形状測定装置Sbを用いた場合の半導体ウェハ検査装置も同様である。
【0135】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0136】
Sa、Sb 表面形状測定装置
Sc 半導体ウェハ検査装置
1、10 光源部
4 波面センサ
5 撮影部
7a、7b 演算制御部
41 マイクロレンズアレイ
42 撮像素子
43 波面センサ演算制御部
71 第1表面形状演算部
72 座標位置演算部
75 厚さ分布演算部
76 第2表面形状演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象である半導体ウェハの表面に所定の波面を持つ測定光を照射する光照射部と、
前記半導体ウェハの表面で反射した前記測定光の反射光における波面の形状を測定する波面センサと、
前記波面センサで測定した前記反射光における波面の形状に基づいて前記半導体ウェハにおける表面の形状を求める表面形状演算部とを備えること
を特徴とする表面形状測定装置。
【請求項2】
前記光照射部によって照射される前記測定光は、進行方向を法線とする平面な波面を持つ平面波の光であり、
前記波面センサは、シャックハルトマン(Shack-Hartmann)方式の波面センサであること
を特徴とする請求項1に記載の表面形状測定装置。
【請求項3】
前記シャックハルトマン方式の波面センサは、
前記反射光を受光し、アレイ状に配置された複数のレンズを備えるレンズアレイと、
前記レンズアレイにおける複数のレンズを通過した前記反射光の像を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像データのうちの所定の閾値以上のデータを抽出するデータ抽出処理部と、
前記データ抽出処理部で抽出されたデータに基づいて前記反射光における波面の形状を求める波面演算部とを備え、
前記データ抽出処理部における前記所定の閾値は、測定箇所を含む所定範囲領域内における平均輝度値に関する値であること
を特徴とする請求項2に記載の表面形状測定装置。
【請求項4】
前記シャックハルトマン方式の波面センサは、
前記反射光を受光し、アレイ状に配置された複数のレンズを備えるレンズアレイと、
前記レンズアレイにおける複数のレンズを通過した前記反射光の像を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像データのうちの所定の閾値以上のデータを抽出するデータ抽出処理部と、
前記データ抽出処理部で抽出されたデータに基づいて前記反射光における波面の形状を求める波面演算部とを備え、
前記データ抽出処理部における前記所定の閾値は、前記半導体ウェハの端部からの距離に応じた値であること
を特徴とする請求項2に記載の表面形状測定装置。
【請求項5】
前記反射光を複数に分岐するとともに、前記複数の分岐光のうちの1つを前記波面センサに入射させる分岐部と、
前記複数の分岐光のうちの他の1つを受光することで、前記半導体ウェハの端部を少なくとも含むように前記半導体ウェハの表面を撮影する撮影部と、
前記撮影部によって撮影された前記半導体ウェハの表面画像に基づいて測定箇所の座標位置を求める座標位置演算部とをさらに備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項4に記載の表面形状測定装置。
【請求項6】
ヘテロダイン干渉法を用いることによって前記半導体ウェハの厚さ分布を測定する厚さ分布測定部をさらに備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項5に記載の表面形状測定装置。
【請求項7】
前記光照射部は、前記半導体ウェハの一方の表面に所定の波面を持つ測定光を照射し、
前記波面センサは、前記半導体ウェハの一方の表面で反射した前記測定光の反射光における波面の形状を測定し、
前記表面形状演算部は、前記波面センサで測定した前記反射光における波面の形状に基づいて前記半導体ウェハの一方の表面における表面形状を求め、
前記表面形状演算部によって求められた前記半導体ウェハの一方の表面における表面形状および前記厚さ分布測定部によって測定された前記半導体ウェハの厚さ分布に基づいて前記半導体ウェハの他方の表面における表面形状を求める第2表面形状演算部をさらに備えること
を特徴とする請求項6に記載の表面形状測定装置。
【請求項8】
測定対象である半導体ウェハの表面における表面形状を測定する表面形状測定部と、
前記表面形状測定部で測定された表面形状が所定の条件を満たすか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を出力する出力部とを備え、
前記表面形状測定部は、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の表面形状測定装置であること
を特徴とする半導体ウェハ検査装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図2】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−226989(P2011−226989A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98916(P2010−98916)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】