説明

被加熱具

【課題】熱効率性に優れ、短時間で急速な加熱を行うことができ、保温性に優れると共に、全面を均一に満遍なく加熱することができ、温度斑の少ない信頼性、実用性に優れた被加熱具を提供することを目的とする。
【解決手段】二重壁構造で形成された面状の密閉空間に作動液が封入されたヒートパイプ式の被加熱具であって、外部から加熱される底部と、底部の外周に立設された側部又は底部の外周に延設又は配設された周縁部と、側部又は周縁部に形成され作動液が封入された密閉空間と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理鍋、調理プレート或いは浴槽、保存容器等に用いられるヒートパイプ式の被加熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炊飯器などの調理容器では、加熱温度分布の改善を計るため、いわゆるヒートパイプ式の加熱調理容器が各種提案されている。このヒートパイプ式の加熱調理容器は、密閉された二重壁構造を成し、その外容器と内容器との間の密閉空間に、温度差によって気体〜液体に相変化する純水などの作動液が封入されている。これにより、加熱調理時に熱源から加えられる熱で外容器底部の作動液を蒸発気化させ、この蒸気を内容器の壁面で凝縮させて内容器全体に熱を均一に伝達させ、加熱温度の均一化を計り、加熱ムラのない炊飯を行うものである。
しかし、ヒートパイプ式の調理容器を用いて内容器の底面と側面とを同じ温度で加熱する場合、通常の容器で加熱を行う場合より加熱ムラを抑えることができるが、側面が底面と同程度に加熱されるため側面部での下降流が発生しづらく自然対流が阻害され、上部が高温、中心部が低温、下部が中程度の温度で加熱される加熱ムラが発生するという問題点があった。
また、ヒートパイプ式の加熱調理器における作動液の加熱は、ヒートパイプ化された外壁の底面をシーズヒータなどで加熱する方式が一般的であるが、この方式ではヒータの熱の大半が外部へ放熱されてしまい、加熱効率の点で劣るという問題点があった。
さらに、内容器と外容器との間が密封空間で隔てて分離されており、かつ内,外容器間の熱の授受を作動液の蒸発/凝縮サイクルのみで行うようにしているで、調理開始後に熱源からの熱が内容器に回るまでには時間的な遅れが生じ、特に急速な加熱調理を必要とする場合には不利であるという問題点があり、これらを改善するために種々、開発がなされている。
例えば、加熱ムラの問題点を解決するために(特許文献1)には、「外容器と内容器との間の密閉空間上部に熱抵抗層を設けた加熱調理容器」が開示されている。
また、加熱効率の問題点を解決するために、(特許文献2)には、「非磁性体からなる外壁底面の一部に凸形の突出部を形成し、この突出部を作動液を溜める液溜部とし、この液溜部の所定位置に磁性材で形成された発熱体を配設し、この発熱体が作動液内に浸漬される構造とした加熱調理器」が開示されている。
更に、加熱時間の問題点を解決するために、(特許文献3)には、「二重容器構造の内,外容器の間に画成された密封空間内には、調理容器の補強、並びに内,外容器間の伝熱機構を持たせたリブ部材を、容器の底部域では少なくとも容器の中心部に位置せしめて放射状に敷設し、容器の周面域では周上に並べて上下方向に沿って敷設し、かつ該リブ部材を内容器と外容器との間にまたがり溶接接合して構成したヒートパイプ式調理容器」が開示されている。
【特許文献1】特許第2713008号公報
【特許文献2】特許第2712864号公報
【特許文献3】特公平8−8891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の技術では、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)の加熱調理容器は、容器側面上部に熱抵抗層を設けることにより、内容器底面からの加熱量を増大させ、自然対流を活発化させて被加熱物を均一な温度で加熱するものであるため、対流を利用して被加熱物を加熱する炊飯用や煮炊き用等の容器には好適であるが、表面で直接、被加熱物を加熱するフライパン、中華鍋、ホットプレート等には用いることができないという課題を有していた。
また、容器底面にも密閉空間が形成され作動液が封入されているので、まず、密閉空間内部の作動液が加熱されなければ内容器が加熱されず、緊急の加熱調理を必要とする場合には対応できないという課題を有していた。
さらに、炊飯開始時の常温において内容器の側面部全体が熱抵抗層に用いる非凝縮性のガスで覆われるように封入量を調節する必要があり、生産性に欠けるという課題を有していた。
(2)(特許文献2)は、液溜部の所定位置に磁性材で形成された発熱体を配設することで、IHヒータ(電磁調理器具)による加熱を可能とし、加熱効率の改善を図ったものであるが、発熱体が作動液内に浸漬される構造であるため、発熱体の発熱から容器底面や容器側面への熱伝達に時間を要し、特に緊急の加熱調理を必要とする場合には対応できないという課題を有していた。
(3)(特許文献3)は、内,外容器間の伝熱機構を持たせたリブ部材を敷設することにより、加熱時間を短縮したものであるが、リブ部材の形状や配置について十分な検討がなされておらず、特に、フライパン、中華鍋、ホットプレート等の形状の異なるものに対しては、そのまま適用することができず汎用性に欠けるという課題を有していた。
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、熱効率性に優れ、短時間で急速加熱を行うことができ、保温性に優れると共に、全面を均一に満遍なく加熱することができ、温度斑の少ない信頼性、実用性に優れた被加熱具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の被加熱具は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の被加熱具は、二重壁構造で形成された面状の密閉空間に作動液が封入されたヒートパイプ式の被加熱具であって、外部から加熱される底部と、前記底部の外周に立設された周壁部又は前記底部の外周に延設又は配設された周縁部と、前記周壁部又は前記周縁部に形成され前記作動液が封入された前記密閉空間と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)外部から加熱される底部の外周に立設された周壁部又は底部の外周に延設又は配設された周縁部に密閉空間が形成され作動液が封入されているので、ヒートパイプの作用により周壁部や周縁部まで満遍なく効率的に加熱することができる。
(2)底部が二重壁構造でなく密閉空間を有していないので、外部から短時間で底部を加熱することができ、加熱時間を短縮することができる。
【0006】
ここで、底部及び周壁部、周縁部を形成する材質としては、アルミニウム、ステンレス、銅等の金属やセラミックス、耐熱性の樹脂やガラス等が好適に用いられる。特に、アルミニウムやステンレスは軽量で耐久性があり、熱伝達効率に優れ好ましい。周縁部は底部に延設して一体に形成してもよいし、別部材で形成して底部の外周に配設してもよい。周縁部は円弧状や水平板状等に形成される。
底部及び周縁部の外形形状は略円形状、略楕円形状、略矩形状、或いはこれらを組み合わせた形状など、任意の形状に形成することができる。
作動液は温度差によって気体〜液体に相変化するものであればよく、従来から用いられている純水やプロピレングリコールなどが好適に用いられる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の被加熱具であって、前記周壁部の内壁又は外壁若しくは前記周縁部の上面、下面、内壁、外壁の内いずれか1以上に形成又は配設され前記密閉空間の内部に突出したリブを備えた構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)周壁部の内壁又は外壁若しくは周縁部の上面、下面、内壁、外壁の内いずれか1以上に密閉空間の内部に突出したリブを有するので、リブにより二重壁構造を支持して密閉空間の容積を確保できる。
(2)密閉空間の内部に突出したリブを有するので、底部でなく密閉空間が形成された周縁部や周壁部を加熱しても、ヒートパイプの作用に加え、リブによる熱伝達で周縁部や周壁部から被加熱部全体を効率的に加熱することができる。
【0008】
ここで、リブは複数の突起や凸条を形成又は配設するか、板状の部材を配設する。突起や凸条のリブを周壁部や周縁部に一体に形成する場合は、プレス等により形成することができる。また、別部材で板状等に形成されたリブの場合は、周壁部の内壁と外壁若しくは周縁部の上面と下面又は内壁と外壁で挟んで固定するか、それらの壁面に溶接等により接合する。リブの材質は底部及び周壁部、周縁部と同じ材質を使用することが好ましい。これにより、熱伝達率、熱膨張率が等しく、均等な加熱ができ、変形を防止することができる。
周壁部や周縁部の密閉空間と連通し、密閉空間内部がある圧力以上になった時に外方に開放する安全弁を設けることが好ましい。これにより、空焚き等によって被加熱具の温度が上昇し、密閉空間が膨張した場合に圧力を外部に逃がすことができ、被加熱具の破損を防止することができ、信頼性、安全性に優れる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の被加熱具であって、前記リブが、格子状に形成され前記周壁部の前記内壁又は前記周縁部の前記上面に沿って配設された構成を有している。
この構成により、請求項2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)リブが格子状に形成され、周壁部の内壁又は周縁部の上面に沿って配設されているので、より多くの接点で二重壁構造を支持できると共に、周縁部や周壁部を加熱した際に、周壁部及び周縁部全体を斑なく均一に加熱することができる。
ここで、格子状のリブとしては餅網のように金属線を縦横に編んだものが好適に用いられる。これにより、安価で容易に装着することができ生産性に優れる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の被加熱具であって、前記リブが、前記周縁部の前記内壁及び前記外壁に放射状に交互に形設された構成を有している。
この構成により、請求項2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)リブが周縁部の内壁及び外壁に放射状に交互に形設されているので、底部又は周縁部の一部を加熱するだけでも、密閉空間に封入された作動液をリブに沿って蛇行するように周縁部の隅々まで移動させることができ、周縁部全体を均一に斑なく加熱することができ、効率性に優れる。
ここで、内壁及び外壁に交互に形設されるリブは略平板状に形成することが好ましい。リブが周縁部の中央付近で互いに重なり合うように配設した場合、リブに沿った作動液の移動経路が蛇行した一本道となり、確実に作動液を周縁部の隅々まで案内することができる。
尚、リブの上端及び下端をそれぞれ周縁部の上面及び下面に当接させることにより、二重壁構造を支持して密閉空間の変形を防止でき容積を確保できる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4の内いずれか1項に記載の被加熱具であって、前記密閉空間と連通し前記底部の外周側に形成された底部密閉空間を有し、前記リブが前記内壁から前記外壁又は前記上面から前記下面に向かって縮小して形成された断面を備えた構成を有している。
この構成により、請求項2乃至4の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)リブが内壁から外壁又は上面から下面に向かって縮小して形成された断面を有するので、密閉空間の外壁や下面とリブとの接触面積を小さくして外壁側や下面側からの放熱量を低減でき、加熱効率が低下することがなく実用性に優れる。
(2)密閉空間と連通し底部の外周側に形成された底部密閉空間を有することにより、底部に加えられた熱を効率的に作動液に伝達することができ、ヒートパイプの作用を有効に利用して加熱効率を向上させることができる。
ここで、リブの形状としては略円錐状や略四角錐状、略半円球状等の突起状に形成できるほか、略台形状の横断面を有する板状等に形成できる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の被加熱具であって、前記周壁部の外周に沿って配設された断熱層を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至5の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)周壁部の外周に沿って断熱層が配設されているので、ヒートパイプ作用により高温になった周壁部に直接、手が触れることがなく、安全性に優れる。
(2)周壁部の外周に断熱層を有することにより、周壁部から外部へ熱が逃げ難く、短時間で加熱を行うことができると共に、加熱を停止しても高温状態を維持することができるので、加熱時間を短縮することができ省エネルギー性を向上させることができる。
(3)周壁部に断熱層を有するので、開口部に蓋をする等して密閉することにより、内容物の温度を長時間に渡って維持することができ保温性に優れる
【0013】
ここで、断熱層は周壁部の外周に真空層を介して断熱壁を配設するか、断熱材を貼着する等して形成する。
断熱層を真空層により形成する場合、真空層の内部には周壁部の外壁と断熱壁に当接するように断熱層用リブを形成又は配設してもよい。これにより、断熱壁が変形するのを防止でき信頼性に優れる。尚、断熱層用リブの断面が外壁から断熱壁に向かって縮小するように形成することで、断熱層用リブを通して断熱壁に伝達される熱量を低減でき、断熱効果が低下するのを防止できる。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の被加熱具であって、前記底部及び/又は前記周壁部に形設された磁性材料製のIH用発熱部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至6の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)底部及び/又は周壁部に磁性材料製のIH用発熱部が形設されているので、IHヒータ等により簡便に加熱することができ、効率性に優れる。
(2)底部のみに磁性材料製のIH用発熱部を形設した場合、周壁部や周縁部をアルミニウム等の軽量な金属で製造することができ生産性、取扱い性を向上させることができる。
(3)底部及び周壁部にIH用発熱部を形設した場合、底部だけでなく周壁部からも直接加熱することができるので、全体を効率よく短時間で加熱できる。
【0015】
ここで、IH用発熱部の磁性材料としては鉄が好適に用いられる。底部や周壁部全体を磁性材料で形成してIH用発熱部としてもよいし、底部の略中央や周壁部の一側面などに磁性材料を配設して一部をIH用発熱部としてもよい。底部や周壁部に磁性材料を配設してIH用発熱部を形成する場合、磁性材料と底部や周壁部の間に空間(空気層)ができないように密着させることが好ましい。これにより、IH用発熱部で発熱した熱を直接、底部や周壁部に伝達することができ、加熱の効率性に優れる。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の内いずれか1項に記載の被加熱具であって、前記底部及び/又は前記周壁部の外表面に鉄を溶射して形成されたIH用発熱層を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至7の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)底部及び/又は周壁部の外表面に鉄を溶射して形成されたIH用発熱層を有するので、IHヒータ等により簡便に底部及び/又は周壁部を加熱することができ、加熱の効率性を向上させることができる。
(2)アルミニウム等の軽量な金属で製造された被加熱具の底部及び/又は周壁部に鉄を溶射するだけで容易にIH用発熱層を形成でき、軽量で生産性に優れる。
ここで、IH用発熱層の厚さは被加熱具の大きさや表面粗さ等に応じて適宜、選択することができる。底部及び/又は周壁部の外表面を確実に覆うことにより、局所的な加熱斑などの発生を防止できると共に、不必要に厚くならないようにすることにより、生産性の低下を防止できる。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8の内いずれか1項に記載の被加熱具であって、前記周縁部が、前記底部に対し着脱自在に配設されている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至8の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)周縁部が底部に対し着脱自在に配設されているので、周縁部が破損した際には周縁部のみを容易に交換することができ、省資源性に優れる。
(2)周縁部が底部に対し着脱自在に配設されているので、共通の底部に対し外形寸法の異なる周縁部を取付けることができ、使用人数の増減に対応することができる。
ここで、周縁部の下部に環状の鍔部を形成し、上方から周縁部の内側に底部を嵌合するようにした場合、鍔部で底部を支持することができ、周縁部と一緒に底部を持ち上げて容易に持ち運ぶことができ、取扱い性に優れる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の被加熱具によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)外部から加熱される底部の外周に立設された周壁部又は底部の外周に延設又は配設された周縁部に密閉空間が形成され作動液が封入されているので、ヒートパイプの作用により周壁部や周縁部まで満遍なく効率的に加熱することができる効率性に優れた被加熱具を提供することができる。
(2)底部が二重壁構造でなく密閉空間を有していないので、外部から短時間で底部を加熱することができ、加熱時間を短縮することができる効率性に優れた被加熱具を提供することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)周壁部の内壁又は外壁若しくは周縁部の上面、下面、内壁、外壁の内いずれか1以上に密閉空間の内部に突出したリブを有するので、リブにより二重壁構造を支持して密閉空間の容積を確保できる信頼性、実用性に優れた被加熱具を提供することができる。
(2)密閉空間の内部に突出したリブを有するので、底部でなく密閉空間が形成された周縁部や周壁部を加熱しても、ヒートパイプの作用に加え、リブによる熱伝達で周縁部や周壁部から被加熱部全体を効率的に加熱することができる汎用性、実用性に優れた被加熱具を提供することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)リブが格子状に形成され、周壁部の内壁又は周縁部の上面に沿って配設されているので、より多くの接点で二重壁構造を支持できると共に、周縁部や周壁部を加熱した際に、周壁部及び周縁部全体を斑なく均一に加熱することができる信頼性、効率性に優れた被加熱具を提供することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)リブが周縁部の内壁及び外壁に放射状に交互に形設されているので、底部又は周縁部の一部を加熱するだけでも、密閉空間に封入された作動液をリブに沿って蛇行するように周縁部の隅々まで移動させることができ、周縁部全体を均一に斑なく加熱することができる効率性、実用性に優れた被加熱具を提供することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、請求項2乃至4の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)リブが内壁から外壁又は上面から下面に向かって縮小して形成された断面を有するので、密閉空間の外壁や下面とリブとの接触面積を小さくして外壁側や下面側からの放熱量を低減でき、密閉空間が底部で連通して形成されても、加熱効率が低下することがない実用性、効率性に優れた被加熱具を提供することができる。
(2)密閉空間と連通し底部の外周側に形成された底部密閉空間を有することにより、底部に加えられた熱を効率的に作動液に伝達することができ、ヒートパイプの作用を有効に利用することができる加熱の効率性に優れた被加熱具を提供することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)周壁部の外周に沿って断熱層が配設されているので、ヒートパイプ作用により高温になった周壁部に直接、手が触れることがなく安全性、実用性に優れた被加熱具を提供することができる。
(2)周壁部の外周に配設した断熱層により、周壁部から外部への熱伝達を低減でき、加熱及び保温の効率性、省エネルギー性に優れた被加熱具を提供することができる。
(3)周壁部に断熱層を有することにより保温性に優れるので、開口部に蓋をする等して密閉することで、内容物の温度を長時間に渡って維持することができ、保存容器としても好適に用いることができる実用性、汎用性に優れた被加熱具を提供することができる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)底部及び/又は周壁部に磁性材料製のIH用発熱部が形設されているので、IHヒータ等により簡便に加熱することができる安全性、効率性に優れた被加熱具を提供することができる。
(2)底部のみに磁性材料製のIH用発熱部を形設した場合、周壁部や周縁部をアルミニウム等の軽量な金属で製造することができる生産性、取扱い性に優れた被加熱具を提供することができる。
(3)底部及び周壁部にIH用発熱部を形設した場合、底部だけでなく周壁部からも直接加熱することができ、全体を効率よく短時間で加熱できる汎用性、省エネルギー性に優れた被加熱具を提供することができる。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、請求項1乃至7の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)底部及び/又は周壁部の外表面に鉄を溶射して形成されたIH用発熱層を有するので、IHヒータ等により簡便に底部及び/又は周壁部を加熱することができる安全性、効率性に優れた被加熱具を提供することができる。
(2)アルミニウム等の軽量な金属で製造された被加熱具の底部及び/又は周壁部に鉄を溶射するだけで容易にIH用発熱層を形成でき、軽量で生産性、実用性に優れた被加熱具を提供することができる。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、請求項1乃至8の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)周縁部が底部に対し着脱自在に配設されているので、周縁部が破損した際には周縁部のみを容易に交換することができる省資源性、機能性に優れた被加熱具を提供することができる。
(2)共通の底部に対し外形寸法の異なる周縁部を取付けることができるので、使用人数の増減に容易に対応することができ、生産性、汎用性に優れた被加熱具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1(a)は実施の形態1における被加熱具を示す要部断面側面図であり、図1(b)は実施の形態1における被加熱具を示す要部断面平面図である。
図1中、1は実施の形態1における被加熱具、2は略円形状に形成された被加熱具1の底部、2aは底部2の上面、2bは底部2の下面、5は底部2の外周に立設された被加熱具1の周壁部、5aは周壁部5の内壁、5bは周壁部5の外壁、5cは内壁5a、外壁5bにより二重壁構造で形成された面状の密閉空間、6は密閉空間5cに封入され温度差によって気体〜液体に相変化する純水やプロピレングリコールなどの作動液、7は外壁5bに接するように周壁部5の内壁5aの外周面に沿って円周方向と直交して配設され先端が外壁5bに向かって断面が縮小して形成された板状のリブ、8は外壁5bの外周に沿って所定間隔を空けて配設され真空の断熱層8aを形成する断熱壁、9は断熱層8aの内部に周壁部5の外壁5bに沿って円周方向と直交して配設され断熱壁8に向かって断面が縮小して形成された板状の断熱層用リブである。
【0028】
底部2の上面2aや下面2b、周壁部5の内壁5a、外壁5bは軽量なアルミニウムで製造した。これにより、被加熱具1全体を軽量化し、耐久性、熱伝達効率を向上させている。また、底部2の上面2aと下面2bの間に空間(空気層)ができないように密接させることにより、加熱時間を短縮させている。
尚、本実施の形態では被加熱具1の底部2を略円形状に形成したが、底部2の形状はこれに限定されるものではなく、略矩形状、或いはこれらを組み合わせた形状など、任意の形状に形成することができる。また、底部2や周壁部5はステンレス、銅等の金属やセラミックス、耐熱性の樹脂やガラス等で形成してもよい。
リブ7は周壁部5の内壁5aに溶接により接合した。一端が内壁5aに固定されたリブ7の他端を外壁5bに当接させることにより、密閉空間5cの変形を防止している。また、リブ7の断面は先端の外壁5bに向かって縮小するように形成した。これにより、加熱によって底部2から内壁5aに伝達された熱や作動液6によるヒートパイプ作用で内壁5aに伝達された熱がリブ7から外壁5bに伝達され難く、加熱及び保温の効率性が低下するのを防止している。
断熱層用リブ9も周壁部5の外方(断熱壁8)に向かって断面が縮小するように形成した。これにより、周壁部5の外壁5bに伝達された熱が断熱壁8に伝わり難く、加熱効率性、保温性、安全性に優れる。
尚、リブ7の下端は下面2bに接しないようにして隙間を設けた。これにより、作動液6がリブ7で分断されることがなく、被加熱具1全体を満遍なく均一に加熱できる。
【0029】
以上のように構成された実施の形態1における被加熱具の使用方法について説明する。
図1において、被加熱具1は直接、火にかけて使用する。熱は直接、底部2の下面2b、上面2aを加熱すると共に、密閉空間5cに封入された作動液6に伝達し、作動液6を気化させる。周壁部5は底部2の上面2aから内壁5aに伝達される熱と、作動液6によるヒートパイプ作用の両方で加熱される。これにより、短時間で効率よく被加熱具1全体を加熱することができる。尚、周壁部5の外周に断熱層8aを介して断熱壁8が形成されているので、周壁部5の外周が高温にならず、容易に持ち運びができる。
本実施の形態1における被加熱具1は炊飯や煮炊きを行う調理鍋や炊飯鍋、保存容器のほか、大型のものは浴槽として用いることができる。
尚、周壁部5の外周等に断熱層8aを貫通して密閉空間5cと連通し、密閉空間5cの内部がある圧力以上になった時に外方に開放する安全弁を設けた場合、空焚き等によって被加熱具1の温度が上昇し、密閉空間5cが膨張した際に圧力を外部に逃がすことができ、被加熱具1の破損を防止することができ、信頼性、安全性に優れる。
【0030】
以上のように実施の形態1における被加熱具によれば、以下の作用を有する。
(1)底部2が二重壁構造でなく密閉空間5cを有していないので、外部から短時間で底部2を加熱することができ、加熱時間を短縮することができる。
(2)外部から加熱される底部2の外周に立設された周壁部5に密閉空間5cが形成され作動液6が封入されているので、ヒートパイプの作用により周壁部5を満遍なく効率的に加熱することができる。
(3)周壁部5の内壁5a及び/又は外壁5bに密閉空間5cの内部に突出したリブ7を有するので、リブ7により二重壁構造を支持して密閉空間5cの容積を確保できる。
(4)外壁5bに向かって断面が縮小して形成されたリブ7を有するので、密閉空間5cの外壁5bとリブ7との接触面積を小さくして外壁5bからの放熱量を低減でき、加熱効率が低下することがなく実用性に優れる。
(5)周壁部5の外周に沿って断熱層8aを形成する断熱壁8が配設されているので、ヒートパイプ作用により高温になった周壁部5に直接、手が触れることがなく、安全性に優れる。
(6)断熱層8aが真空層で形成されている場合は、断熱層用リブ9により断熱壁8が変形するのを防止でき信頼性に優れる。
(7)外壁5bから外方に向かって断面が縮小して形成された断熱層用リブ9を有するので、周壁部5の熱が断熱壁8に伝わり難く、加熱効率性、保温性が低下するのを防止できる。
(8)周壁部5の外周に沿って断熱層8aが配設されているので、周壁部5から外部へ熱が逃げ難く、短時間で加熱を行うことができると共に、加熱を停止しても高温状態を維持することができるので、加熱時間を短縮することができ省エネルギー性を向上させることができる。
(9)周壁部5の外周に断熱層8aを有するので、開口部に蓋をする等して密閉することにより、内容物の温度を長時間に渡って維持することができ保温性に優れ、小型のものは携帯用の保存容器として持ち運ぶこともできる。
【0031】
(実施の形態2)
図2(a)は実施の形態2における被加熱具を示す要部断面側面図であり、図2(b)は実施の形態2における被加熱具を示す要部断面平面図である。尚、実施の形態1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図2中、実施の形態2における被加熱具1aが実施の形態1と異なるのは、底部2が底部密閉空間(作動空間)5c’を有し、底部密閉空間5c’と密閉空間5cが連通して形成されている点と、底部2の下面2bの外表面に鉄を溶射して形成されたIH用発熱層10を有する点と、鉄等の磁性材料で略円板状に形成され底部2の中央で上面2aと下面2bの間に配設されたIH用発熱部11を有する点と、リブ7a及び断熱層用リブ9aが略半円形乃至砲弾状の断面を有する凸条に形成されている点である。
【0032】
実施の形態1と同様にリブ7a及び断熱層用リブ9aの断面が周壁部5の内壁5a側から断熱壁8側に向かって縮小するので、周壁部5の熱が外壁5bや断熱壁8に伝わり難く、加熱効率性、保温性、安全性が低下するのを防止できる。
IH用発熱層10は底部2の下面2bの凹凸を確実に覆い、局所的な加熱斑などの発生を防ぐと共に、不必要に厚くならないようにして生産性の低下を防止した。
IH用発熱部11は底部2の上面2aと下面2bの間に蜜設した。これにより、IH用ヒータ等により発熱したIH用発熱部11の熱を直接、底部2に伝達することができ、加熱の効率性に優れる。
【0033】
以上のように構成された実施の形態2における被加熱具の使用方法について説明する。
図2において、被加熱具1aをIHヒータ等に載置する。発熱したIH用発熱層10及びIH用発熱部11の熱は直接、底部2の上面2aと下面2bに伝達し、被加熱具1aの底部2を加熱すると共に、密閉空間5c及び底部密閉空間5c’に封入された作動液6を加熱し気化させる。周壁部5は底部2の上面2aから内壁5aに伝達される熱と、作動液6によるヒートパイプ作用の両方で加熱される。これにより、短時間で効率よく被加熱具1a全体を加熱することができる。また、周壁部5の外周に断熱層8aを介して断熱壁8が形成されているので、断熱壁8の外周が高温にならず、容易に持ち運びができる。尚、リブ7a及び断熱層用リブ9aはいずれか一方のみを設けてもよい。
本実施の形態2における被加熱具1aは、本実施の形態1と同様に炊飯や煮炊きを行う調理鍋のほか、大型のものは浴槽として用いることができる。
尚、本実施の形態では、底部2にIH用発熱層10とIH用発熱部11の両方を設けたが、いずれか一方のみでもよい。また、周壁部5に断熱壁8や断熱層用リブ9aを設けず、IH用発熱層10やIH用発熱部11を設けてもよい。特に、底部2が略矩形状に形成されている場合、周壁部5を側方から加熱することができ汎用性に優れる。また、周壁部5の密閉空間5cが底部密閉空間5c’により底部2で連通しているので、リブ7aを下面2bまで延設して形成してもよい。
【0034】
次に、リブ及び断熱層用リブの変形例について、図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態2と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図3(a)はリブ及び断熱層用リブの第1の変形例を示す要部断面側面図であり、図3(b)はリブ及び断熱層用リブの第1の変形例を示す要部断面平面図である。
図3の第1の変形例が実施の形態2のリブ及び断熱層用リブと異なるのは、被加熱具1bのリブ7b及び断熱層用リブ9bが複数の略半球状の突起で形成されている点である。実施の形態2に比べリブ7b及び断熱層用リブ9bと外壁5b及び断熱壁8の内周との接触面積を小さくすることができ、加熱の効率性、保温性を向上させることができる。
【0035】
図4(a)はリブ及び断熱層用リブの第2の変形例を示す要部断面側面図であり、図4(b)はリブ及び断熱層用リブの第2の変形例を示す要部断面平面図である。
図4の第2の変形例が第1の変形例と異なるのは、被加熱具1cのリブ7c及び断熱層用リブ9cが略円錐状の突起で形成されている点である。外壁5bの両面を打ち出し加工することにより、1枚の板でリブ7c及び断熱層用リブ9cを形成することができ、生産性に優れる。
【0036】
図5(a)はリブの第3の変形例を示す要部断面側面図であり、図5(b)はリブの第3の変形例を示す要部断面平面図であり、図5(c)はリブの第3の変形例を示す要部拡大斜視図である。
図5の第3の変形例が実施の形態2のリブと異なるのは、被加熱具1dの内壁5aの外周面に沿って縦方向に配設された金属線のリブ7dと横方向に配設された金属線のリブ7d’により格子状に形成されている点である。予め格子状に形成された金網等を内壁5aの外周に巻き付けるように配設するだけでリブ7d、7d’を形成することができ、低コスト性、生産性に優れる。
【0037】
以上のように実施の形態2における被加熱具によれば、実施の形態1の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)周壁部5の内壁5a及び/又は外壁5bに密閉空間5cの内部に突出したリブ7a〜7dを有するので、リブ7a〜7dにより二重壁構造を支持して密閉空間5cの容積を確保できる。
(2)外壁5bに向かって断面が縮小して形成されたリブ7a、7bを有する場合、密閉空間5cの外壁5bとリブ7a、7bとの接触面積を小さくして外壁5bからの放熱量を低減でき、周壁部5の内壁5aを短時間で効率よく加熱することができ、加熱効率が低下することがなく実用性に優れる。
(3)密閉空間5cと連通し底部2の外周側に形成された底部密閉空間5c’を有することにより、底部2に加えられた熱を効率的に作動液6に伝達することができ、ヒートパイプの作用を有効に利用して加熱効率を向上させることができる。
(4)格子状に形成されたリブ7d、7d’が周壁部5の内壁5aに沿って配設されている場合、より多くの接点で二重壁構造を支持できると共に、周壁部5を斑なく均一に加熱することができる。
(5)断熱層8aの内部に断熱層用リブ9a〜9cを形成又は配設した場合、断熱壁8が変形するのを防止でき信頼性に優れる。
(6)周壁部5から外方(断熱壁8)に向かって断面が縮小して形成された断熱層用リブ9a〜9cを有する場合、周壁部5の熱が断熱壁8に伝わり難く、加熱効率性、保温性、安全性が低下するのを防止できる。
(7)底部2の略中央に磁性材料製のIH用発熱部11が配設されているので、IHヒータ等により簡便に加熱することができ、加熱の効率性に優れる。
(8)IH用発熱部11のみを磁性材料製とするだけで全体を効率よく加熱できるので、周壁部2をアルミニウム等の軽量な金属で製造することができ生産性、取扱い性を向上させることができる。
(9)IH用発熱部11を底部2の上面2aと下面2bの間に蜜設することにより、IH用ヒータ等により発熱したIH用発熱部11の熱を直接、底部2に伝達することができ、加熱効率性に優れる。
(10)底部2の下面2bに鉄を溶射して形成されたIH用発熱層10を有するので、IHヒータ等により簡便に底部2全体を加熱することができ、より加熱効率性に優れる。
(11)アルミニウム等の軽量な金属で製造された被加熱具1a〜1dの底部2の下面2bに鉄を溶射するだけで容易にIH用発熱層10を形成でき、軽量で生産性に優れる。
【0038】
(実施の形態3)
図6は実施の形態3における被加熱具を示す要部断面側面図である。
尚、実施の形態1又は2と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図6中、実施の形態3における被加熱具1eが実施の形態1及び2と異なるのは、底部2の外周に延設されて底部2と一体に形成された円弧状の周縁部12を有する点と、周縁部12の内壁12a及び外壁12bに接する板状のリブ7eが内壁12aの外周に放射状に配設されている点である。
リブ7eの断面は根元の内壁12a側から先端の外壁12bに向かって縮小するように形成した。これにより、作動液6によるヒートパイプ作用で周縁部12に伝達された熱が外壁12b側に逃げ難く、加熱の効率性を向上させている。
【0039】
以上のように構成された実施の形態3における被加熱具の使用方法について説明する。
図6において、被加熱具1eは直火により加熱される。被加熱具1eの底部2が加熱されることにより、密閉空間5cに封入された作動液6が加熱され気化する。周縁部12は底部2の上面2aから内壁12aに伝達される熱と、作動液6によるヒートパイプ作用の両方で加熱される。これにより、短時間で効率よく被加熱具1e全体を加熱することができる。
本実施の形態3における被加熱具1eはフライパンや中華鍋として用いることができる。特に、中華鍋として用いた場合、弱い火力でも被加熱具1e全体を短時間で効率よく加熱でき、実用性に優れる。
尚、本実施の形態では、リブ7eを板状に形成したが、略円形状や略三角形状の横断面を有する凸条や略円錐状や略四角錐状、略半円球状等の突起状に形成してもよい。また、底部2に実施の形態2と同様のIH用発熱層10やIH用発熱部11を設けてもよい。
【0040】
以上のように実施の形態3における被加熱具によれば、以下の作用を有する。
(1)外部から加熱される底部2の外周に延設された周縁部12に密閉空間5cが形成され作動液6が封入されているので、ヒートパイプの作用により周縁部12の隅々まで満遍なく効率的に加熱することができる。
(2)周縁部12の内壁12aに密閉空間5cの内部に突出したリブ7eを有するので、リブ7eにより二重壁構造を支持して密閉空間5cの容積を確保できる。
(3)リブ7eが先端の外壁12bに向かって縮小して形成された断面を有するので、密閉空間5cの外壁12bとリブ7eとの接触面積を小さくして外壁12b側からの放熱量を低減でき、加熱効率が低下することがなく実用性に優れる。
【0041】
(実施の形態4)
図7(a)は実施の形態4における被加熱具を示す要部断面側面図であり、図7(b)は実施の形態4における被加熱具を示す要部断面平面図である。
尚、実施の形態1乃至3と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図7中、実施の形態4における被加熱具1fが実施の形態3と異なるのは、上面15a、下面15b、内壁15c、外壁15dで囲まれた密閉空間5cを有する周縁部15が底部2と分割されて形成されている点と、周縁部15の下部内周に環状の鍔部15eが形成され底部2が周縁部15の内側に着脱自在に嵌合されている点と、内壁15c及び外壁15dに放射状に交互に形設された板状のリブ7f、7gを有する点である。
リブ7f、7gは中央部で互いに重なり合うように配設した。これにより、リブ7f、7gに沿った作動液6の移動経路を蛇行した一本道とすることができ、片側が偏って加熱されても確実に作動液6を周縁部15の隅々まで案内することができる。
また、リブ7f、7gの上端及び下端をそれぞれ周縁部15の上面15a及び下面15bに当接させ、二重壁構造を支持して密閉空間5cの容積を確保している。
周縁部15の下部内周に鍔部15eを環状に形成し、底部2の下面2bに当接させた。これにより、周縁部15で底部2を確実に支持でき、底部2と周縁部15を一体に持ち運ぶことができると共に、底部2を容易に着脱できる。
【0042】
以上のように構成された実施の形態4における被加熱具の使用方法について説明する。
図7において、被加熱具1fをIHヒータ等に載置する。発熱したIH用発熱層10の熱は直接、底部2の上面2aと下面2bに伝達し、被加熱具1fの底部2を加熱すると共に、周縁部15の下面15b、内壁15cに伝達され密閉空間5cに封入された作動液6を加熱し気化させる。周縁部15は底部2の上面2aから上面15aに伝達される熱と、作動液6によるヒートパイプ作用の両方で加熱される。このとき、密閉空間5cの内部に配設されたリブ7f、7gの作用により、作動液6が矢印で示したような蛇行した一本道の移動経路をたどる。これにより、周縁部15の隅々まで熱が伝達され、短時間で満遍なく被加熱具1f全体を加熱することができる。
本実施の形態4における被加熱具1fは焼肉プレート等に好適に用いることができる。
尚、底部2にIH用発熱層10を設けず、直火や炭火で加熱してもよい。また、底部2や周縁部15の外形は略円形状以外に略楕円形状や略矩形状などの任意の形状に形成することができる。
【0043】
次に、リブの変形例について、図面を参照しながら説明する。尚、実施の形態4と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図8はリブの変形例を示す要部断面平面図である。
図8の変形例が実施の形態4のリブと異なるのは、複数の突起状のリブ7hが周縁部15の上面2aに配設されている点である。
リブ7hの断面が周縁部15の下面15bに向かって縮小するように略円錐形状又は略半球状に形成した。これにより、作動液6によるヒートパイプ作用で周縁部15に伝達された熱が下面15b側に逃げ難く、加熱効率性に優れる。また、リブ7hの下端を周縁部15の下面15bに当接させ、二重壁構造を支持して密閉空間5cの容積を確保している。
【0044】
以上のように実施の形態4における被加熱具によれば、実施の形態1乃至3に加え、以下の作用を有する。
(1)リブ7f、7gがそれぞれ周縁部15の内壁15c及び外壁15dに放射状に交互に形設されているので、密閉空間5cに封入された作動液6をリブ7f、7gに沿って蛇行するように周縁部15の隅々まで移動させることができ、周縁部15全体を均一に斑なく加熱することができ、加熱処理した料理の保温性や熱効率性に優れる。
(2)周縁部15が底部2に対し着脱自在に配設されているので、周縁部15が破損した際には周縁部15のみを容易に交換することができ、省資源性に優れる。
(3)周縁部15の下部に底部2を支持する環状の鍔部15eを形成することにより、周縁部15と一緒に底部2を持ち上げて持ち運ぶことができ、取扱い性に優れる。
(4)周縁部15が底部2に対し着脱自在に配設されているので、共通の底部2に対し外形寸法の異なる周縁部15を取付けることができ、使用人数の増減に対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、熱効率性に優れ、短時間で急速な加熱を行うことができ、保温性に優れると共に、全面を均一に満遍なく加熱することができ、温度斑の少ない信頼性、実用性に優れた被加熱具を提供することができ、調理鍋、フライパン、中華鍋、焼肉プレート、炊飯鍋或いは保存容器や浴槽などに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)実施の形態1における被加熱具を示す要部断面側面図(b)実施の形態1における被加熱具を示す要部断面平面図
【図2】(a)実施の形態2における被加熱具を示す要部断面側面図(b)実施の形態2における被加熱具を示す要部断面平面図
【図3】(a)リブ及び断熱層用リブの第1の変形例を示す要部断面側面図(b)リブ及び断熱層用リブの第1の変形例を示す要部断面平面図
【図4】(a)リブ及び断熱層用リブの第2の変形例を示す要部断面側面図(b)リブ及び断熱層用リブの第2の変形例を示す要部断面平面図
【図5】(a)リブの第3の変形例を示す要部断面側面図(b)リブの第3の変形例を示す要部断面平面図(c)リブの第3の変形例を示す要部拡大斜視図
【図6】実施の形態3における被加熱具を示す要部断面側面図
【図7】(a)実施の形態4における被加熱具を示す要部断面側面図(b)実施の形態4における被加熱具を示す要部断面平面図
【図8】リブの変形例を示す要部断面平面図
【符号の説明】
【0047】
1 実施の形態1における被加熱具
1a、1b、1c、1d 実施の形態2における被加熱具
1e 実施の形態3における被加熱具
1f 実施の形態4における被加熱具
2 底部
2a,15a 上面
2b,15b 下面
5 周壁部
5a,12a,15c 内壁
5b,12b,15d 外壁
5c 密閉空間
6 作動液
7、7a、7b、7c、7d、7d’、7e、7f、7g、7h リブ
8 断熱壁
8a 断熱層
9、9a、9b、9c 断熱層用リブ
10 IH用発熱層
11 IH用発熱部
12,15 周縁部
15e 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重壁構造で形成された面状の密閉空間に作動液が封入されたヒートパイプ式の被加熱具であって、外部から加熱される底部と、前記底部の外周に立設された周壁部若しくは前記底部の外周に延設又は配設された周縁部と、前記周壁部又は前記周縁部に形成され前記作動液が封入された前記密閉空間と、を備えていることを特徴とする被加熱具。
【請求項2】
前記周壁部の内壁又は外壁若しくは前記周縁部の上面、下面、内壁、外壁の内いずれか1以上に形成又は配設され前記密閉空間の内部に突出したリブを備えていることを特徴とする請求項1記載の被加熱具。
【請求項3】
前記リブが、格子状に形成され前記周壁部の前記内壁又は前記周縁部の前記上面に沿って配設されていることを特徴とする請求項2に記載の被加熱具。
【請求項4】
前記リブが、前記周縁部の前記内壁及び前記外壁に放射状に交互に形設されていることを特徴とする請求項2に記載の被加熱具。
【請求項5】
前記密閉空間と連通し前記底部の外周側に形成された底部密閉空間を有し、前記リブが前記内壁から前記外壁又は前記上面から前記下面に向かって縮小して形成された断面を備えていることを特徴とする請求項2乃至4の内いずれか1項に記載の被加熱具。
【請求項6】
前記周壁部の外周に沿って配設された断熱層を備えていることを特徴とする請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の被加熱具。
【請求項7】
前記底部及び/又は前記周壁部に配設された磁性材料製のIH用発熱部を備えていることを特徴とする請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の被加熱具。
【請求項8】
前記底部及び/又は前記周壁部の外表面に鉄を溶射して形成されたIH用発熱層を備えていることを特徴とする請求項1乃至7の内いずれか1項に記載の被加熱具。
【請求項9】
前記周縁部が、前記底部に対し着脱自在に配設されていることを特徴とする請求項1乃至8の内いずれか1項に記載の被加熱具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−87912(P2006−87912A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242627(P2005−242627)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(301057967)株式会社ジャスト東海 (8)
【Fターム(参考)】