説明

補助扉を有する開閉扉付きキャビネット

【課題】キャビネット内の側壁や中央部の収納物の出し入れが容易で、食器類や調味料等の物品を仮置き可能なカウンター機能をあわせ持ち、更に開閉扉表面に凸設部をなくして引き違い扉にも適用できる補助扉を有する開閉扉付きキャビネットを提供するものである。
【解決手段】キャビネット(1)の開閉扉本体(10)に開口部(13)を形成し、該開口部(13)を開閉する補助扉(15)を有する開閉扉付きキャビネットにおいて、前記開口部(13)の幅が前記開閉扉(10)の両側扉フレーム(11)間隔と略等しく、かつ該開口部(13)の下部端がキャビネット内の少なくとも一つの棚板(3)高さ位置と略同じ高さであって、前記補助扉(15)が、該補助扉(15)の両端に設けた支軸(17)を中心に揺動し、該支軸(17)の支軸受け(18)を前記開閉扉本体(10)の両扉フレーム(11)に設けて、補助扉(15)を開閉扉本体(10)の面に対して略直角となる揺動位置に保持する水平保持機構(14)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、補助扉を有する開閉扉付きキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
補助扉を有する開閉扉としては、例えば、特許文献1や特許文献2が知られている。
特許文献1は、扉本体の表壁と裏壁とを互いに離隔して中空部を形成するように両壁の周端壁を一体に連設して中空二重壁構造の扉本体とし、扉本体の一部に開口部を形成して、開口部に表壁側から開閉自在の補助扉を設け、補助扉の裏側にポケット収納部を設けたものである。このようにキャビネットの開閉扉本体に開口部を形成して補助扉を設けたことにより、使用上や作業上の態様に応じて物品の出し入れや内部の保守点検などを簡便、迅速の行うことができるものである。
【0003】
また、特許文献2は、玄関等のドア本体に手前に開く小扉を設け、小扉を閉じた時に外側から開閉できないように止め金具を取り付けたもので、小扉を開くことにより、ドア本体を閉めたまま、小型物品の授受や来訪者との簡単な用件を済ませることができる。また、小扉を水平開きとし、必要に応じて手前に開いた時に水平位置で固定できるようにストッパーを設け、カウンター兼用として、受領印の押印やサイン時等の便利性を向上するものである。
【0004】
【特許文献1】特開平8−182549号公報
【特許文献2】登録実用新案第3103033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の特許文献1の発明は、キャビネット内の物品を開閉扉本体を開閉することなく、補助扉の開閉のみで迅速に出し入れするにはよいが、横方向への揺動開閉であるため、補助扉の間口方向幅を長くするとキャビネット前面に広い補助扉開閉領域が必要となるため幅を短くせざるを得ず、補助扉の開閉によるキャビネット内中央や側壁側の収納物品の出し入れに問題があった。
【0006】
また、特許文献2の発明にあっては、玄関ドアを開閉することなく、小扉開閉で玄関ドア内外の物品授受が可能であり、且つ、小扉を水平に保持してカウンター機能をあわせもつため利便性が向上するものの、本開示技術は、玄関ドア表面にストッパー(ステー)や止め金具を凸設させており、この技術を厨房機器であるトールキャビネットなどに応用すると、凸設部に人の衣服などを引っ掛ける可能性があり、また、引き違い扉等には使用できないという課題があった。
【0007】
この発明は、かかる現状に鑑み創案されたものであって、キャビネット内の側壁や中央部の収納物の出し入れが容易で、食器類や調味料等の物品を仮置き可能なカウンター機能をあわせ持ち、更に開閉扉表面に凸設部をなくして引き違い扉にも適用できる補助扉を有する開閉扉付きキャビネットを提供し、利用者の更なる利便性を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、キャビネットの開閉扉本体に開口部を形成し、該開口部を開閉する補助扉を有する開閉扉付きキャビネットにおいて、開口部の幅が開閉扉の両側扉フレーム間隔と略等しく、かつ該開口部の下部端がキャビネット内の少なくとも一つの棚板高さ位置と略同じ高さであって、補助扉が、該補助扉の両端に設けた支軸を中心に揺動し、該支軸の支軸受けを開閉扉本体の両扉フレームに設けて、補助扉を開閉扉本体の面に対して略直角となる揺動位置に保持する水平保持機構を備えたものである。
【0009】
本発明によると、補助扉の開口部が開閉扉本体の幅方向に最大限広くすることができ、開口部の奥側のキャビネット棚板が開口部の下端とほぼ同一高さであるため、キャビネット内棚板上の収納物品の出し入れが容易となる効果がある。また、補助扉を開いて水平状態に保持できるので、その上面にキャビネットから出し入れする収納物品を仮置きできる。
【0010】
更に請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明を技術的前提として、扉フレームに設けられた支軸受けを、支軸が上下摺動可能な縦溝で構成し、該縦溝の内部には支軸係止体を設けると共に、開口部の両側扉フレームの内側には補助扉の揺動に際して乗り越え可能な弾性凸条体を設けたものである。
本発明によると、請求項1に記載の効果に加え、キャビネット内の収納物の出し入れや仮置き等の用途に応じて、補助扉の上下開閉又は揺動開閉を選択使用できるので、利用者の利便性を向上させることができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明を技術的前提とし、キャビネットが、厨房用のトールキャビネットであって、開閉扉本体は引き違い扉である。
本発明によると、補助扉を開いた水平保持位置を他のキッチン台などの天板高さに合わせて設けることができ厨房作業が効率的に行え、且つ、開き戸タイプのトールキャビネットに比較して、狭い場所での通路幅などを効果的にとることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明にかかる補助扉を有する開閉扉付きキャビネットは、以上説明した如き内容のものなので、キャビネット内の側壁や中央部の収納物の出し入れが容易で、食器類や調味料等の物品を仮置き可能なカウンター機能をあわせ持ち、更に開閉扉表面に凸設部をなくして引き違い扉にも適用できるため、利用者の更なる利便性を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づき、この発明の詳細を説明する。
図1は、本発明の一実施例である補助扉を有する開閉扉付きキャビネットの斜視図である。図2は、図1の開閉扉の分解構成図であり、図3は、補助扉の上下摺動、および係止機構を説明する要部斜視図である。
【実施例1】
【0014】
この発明の一実施例として、図1に示すトールキャビネット1を例に説明する。図1に示す如く、このトールキャビネット1はキャビネットフレーム2で両側板、天板、底板と図示しない背板で覆われ、前面が開放された箱体の底板前面に引き違い扉溝4を設けて、該引き違い扉溝4に2枚の開閉扉本体10を嵌め込み、該開閉扉本体10をスライドさせて内部の収納物品を出し入れできる食器棚である。トールキャビネット内には複数枚の棚板3が両側板間に架渡されており、該棚板3上に食器や調味料類を収容する。
【0015】
そして、このトールキャビネット1は2枚の開閉扉本体10を閉じた状態でも収納物品が出し入れできるように、開閉扉本体10の上下方向の所定高さに開口部13が設けられ、該開口部13を開閉する補助扉15を有している。開口部13の幅は開閉扉10の両側扉フレーム11間隔と略等しくし、開口部13の下部端がキャビネット内の少なくとも一つの棚板3高さ位置と略同じ高さとしている。
両側扉フレーム11間隔と略等しい幅とは、扉フレーム11、即ち扉枠と開口部13との間に扉面構造体12を設けないことを意味し、開閉扉10側端と開口部13間の距離は150mm程度以下となり、開口部13からキャビネット1の横方向の中央又は側板近傍の収納物品が出し入れできる幅としたものである。
【0016】
また、棚板3高さと略同じ高さに開口部13下端を設けるとは、キャビネット内棚板3上の収納物品を出し入れする場合に、上下方向で手がとどき易くするもので、開口部13下端から150mm程度以内の位置に棚板3上面を配置するものである。なお、補助扉15から出し入れする収納物品の収納対象棚板3の上面位置が開口部13下端よりも上部に、すなわち、補助扉15高さの1/3程度になっても物品の出し入れは可能であるが、高さのある収納物品を出し入れするため、開口部13下端を超えないことが好ましい。
【0017】
次いで、開閉扉本体10について説明する。
開閉扉本体10は、図2の分解構成図、または図3の要部斜視図に示すように、上下左右の扉フレーム11と、該扉フレーム11に囲まれた内側を閉塞する上下の扉面構造体12と、上下の扉面構造体12間の開口部13を開閉する補助扉15とで構成される。
補助扉15は、両側端の下端近傍に円筒状の支軸17を設け、該支軸17を軸心として揺動可能であり、開閉扉本体10の面に対して略直角となる揺動位置、すなわち、図の実線で示す水平保持位置と破線で示す垂直位置とを揺動し、開口部13を開閉可能に構成している。
【0018】
補助扉15の支軸17を回動自在に支持する支軸受け18は、両側の扉フレーム11内側に凹状穴を設ければよいが、本実施例1では、縦溝形状として補助扉15の支軸17が上下に該縦溝18内を摺動できるように構成されている。上下動の規制は、図3に示すように縦溝18内に支軸係止体20を設けて所定位置で補助扉15が支持停止できるように構成する。支軸係止体20は支軸17に摺動する半球状先端部を有する係止凸部21と該係止凸部21を支軸方向に押圧するバネ部22で構成し、上下移動する支軸17が該係止凸部21に当接するとバネを縮めて通過させ、通過が終了するの再度伸び出て支軸17が降下しないように該位置で保持させることができる。このような構成とすることで、縦溝18の上部に補助扉15の支軸17を位置せしめ、開口部13を閉じる位置と開口部13を開いてカウンターに使用する位置とで揺動させるものである。
【0019】
また、水平保持機構14は本実施例1では、下部の扉面構造体12内に設けている。該扉面構造体12の上部に補助扉15の支軸下端片26が該扉面構造体12内で回動可能な回動空間25を形成し、補助扉15が支軸17を中心に開口部13を閉じる位置とカウンターとして使用する開口部13を開く位置とで揺動する。水平保持機構14は扉面構造体12の上端内側からキャビネット1前面側に突出する水平保持係止片24を設け、該水平保持係止片24に支軸下端片26を係止させることで、扉面に対して直角以上に補助扉15が回動降下せずカウンター使用位置を保持させる。
尚、本実施例1では、回動空間25を扉面構造体12の全幅に渡って設けているが、支軸下端片26が回動でき、90度の位置で停止保持できればよく、例えば、両側のみに回動空間25を設けるなど、下端片26の形状と合わせて幅方向に部分的に回動空間25を設けてもよい。
【0020】
以上、開口部13の揺動開閉方法について述べたが、次いで、上下開閉方法について説明する。
補助扉15の上下動に対応する扉面構造体12の構造は、補助扉15厚みに対応する深溝状の補助扉収納部23を扉面構造体12内に設けることにより、開口部13を開いたときの補助扉15を収納させることができる。この補助扉収納部23は、扉面構造体12を表面板と裏面板で構成し内部を空間にすることで容易に形成することができる。
一方、扉フレーム11の構造は、前述の如く、扉フレーム11内側に縦溝18と該縦溝18内に支軸係止体20を設けることで、補助扉15を上下開閉させることができる。
【0021】
開口部13の閉位置では、補助扉15の支軸17が支軸係止体20の上部で係止しており開口部13を閉じた状態を維持することができ、開口部13の開位置では、補助扉収納部23の底面に補助扉15の支軸下端片26が当接して開位置を保持できる。
この開位置では、補助扉15の中央上部近傍に凹設された取手16は扉面構造体12内に埋没しないで露出する位置に設けてあり、該取手16を介して補助扉15の上下開閉を行うことができる。
【0022】
また、両側扉フレーム11の内側には、補助扉15の揺動に際して乗り越え可能な弾性凸条体19が補助扉15厚みよりも若干広い幅で2条設けられる。該弾性凸条体19は補助扉15の上下動に際して前後に倒れないように補助扉15を保持すると共に、キャビネット1内への虫や埃に侵入を防止する。なお、本弾性凸条体19は補助扉15の揺動開閉に際しては前面側の弾性凸条体19を乗り越えて揺動させる必要があるため、高さが5mm程度以下の耐磨耗性に優れる弾性体を使用することか好ましい。例えば、前述の支軸係止体の構造と同様に、金属製の係止凸部とバネ部で弾性凸条体19を構成し、扉フレーム内に組み込むこともできる。
【0023】
本実施例1では、補助扉15の取手16は凹設され、該補助扉15は扉面構造体12内に収納可能であるため、開閉扉10表面には凸設部分がなく、扉フレーム11厚み内からはみだす部分がない。そのため、図示しない開き戸タイプの開閉扉付きキャビネット1にも適用できるが、特に引き違い扉付きキャビネット1には有効である。また、キャビネット1の高さや幅が大きくて開閉扉10の開閉に労力を有する大型収納キャビネット1には、出し入れ頻度多い収納物品を補助扉15から出し入れできるため有効である。
【0024】
以上、本発明の実施例を説明してきたが、本実施例に限定されるものではなく、例えば、補助扉15の水平保持機構14は、開口部13が扉フレーム11間隔と略等しく、開口幅が広く設けられ、キャビネット1側板近くの収納物品の取り出しが容易であればよく、扉フレーム11と補助扉15裏面を屈曲アーム等で水平支持させてもよく、また、チェーンやワイヤ等で補助扉15を開いた後に引っ掛け支持してもよい。
そして、好ましくは、扉フレーム11の奥行き幅内に水平保持機構14の構成要素器具がすべて納まるようにすると引き違い扉に適用できる。
【0025】
また、本実施例では補助扉15の支軸17を開閉扉10の開口部13下方に設けて、上開きの揺動開閉の例で示したが、開口部13上部に設けて上開きの揺動開閉としてもよく、上下開閉にあっても、補助扉収納部23を上部の扉面構造体12に設けることで上方に補助扉15を開動作する構造としても良い。
さらに、本実施例1では、2枚の開閉扉本体10は同一構造の補助扉15を有する開閉扉10としているが、開閉扉本体10の一方は補助扉15を有さないものとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例である補助扉を有する開閉扉付きキャビネットの斜視図である。
【図2】図1の開閉扉の分解構成斜視図である。
【図3】図2に示すA−A‘視縦断面の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 キャビネット(トールキャビネット)
2 キャビネットフレーム
3 棚板
4 引き違い扉溝
10 開閉扉(開閉扉本体)
11 扉フレーム
12 扉面構造体
13 開口部
14 水平保持機構
15 補助扉
16 取手
17 支軸
18 支軸受け(縦溝)
19 弾性凸条体
20 支軸係止体
21 係止凸部
22 バネ部
23 補助扉収納部
24 水平保持係止片
25 回動空間
26 下端片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネット(1)の開閉扉本体(10)に開口部(13)を形成し、該開口部(13)を開閉する補助扉(15)を有する開閉扉付きキャビネットにおいて、前記開口部(13)の幅が前記開閉扉(10)の両側扉フレーム(11)間隔と略等しく、かつ該開口部(13)の下部端がキャビネット内の少なくとも一つの棚板(3)高さ位置と略同じ高さであって、前記補助扉(15)が、該補助扉(15)の両端に設けた支軸(17)を中心に揺動し、該支軸(17)の支軸受け(18)を前記開閉扉本体(10)の両扉フレーム(11)に設けて、補助扉(15)を開閉扉本体(10)の面に対して略直角となる揺動位置に保持する水平保持機構(14)を備えたことを特徴とする補助扉を有する開閉扉付きキャビネット。
【請求項2】
扉フレーム(11)に設けられた前記支軸受け(18)は、前記支軸(17)が上下摺動可能な縦溝(18)で構成され、該縦溝(18)の内部には支軸係止体(20)を設けると共に、前記開口部(13)の両側扉フレーム(11)の内側には前記補助扉(15)の揺動に際して乗り越え可能な弾性凸条体(19)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の補助扉を有する開閉扉付きキャビネット。
【請求項3】
前記キャビネット(1)が、厨房用のトールキャビネット(1)であって、開閉扉本体(10)は引き違い扉であることを特徴とする請求項1または2に記載の補助扉を有する開閉扉付きキャビネット。

































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−228776(P2008−228776A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68670(P2007−68670)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【Fターム(参考)】