説明

補助機構付き着座具

【課題】着座者が容易に起立でき、向きを変えることができる補助機能付き着座具を提供する。
【解決手段】起立補助機構と駆動機構とベース20を備え、起立補助機構を座部ユニット10の下に、駆動機構を起立補助機構の背面側に設け、駆動機構は移動体を備え、起立補助機構は数本のリンクを備え、一部のリンクが座部ユニット10に連結され、他のリンクがベース20に連結され、他のリンクが移動体に連結され、座部ユニット10が移動体の昇降に合わせて昇降するようにした。向き変更機構とベース20を備え、向き変更機構を回転体とし、回転体を座部ユニット10に連結し、ベース20を設置面に接地させると回転体が回転せず、ベース20を設置面から浮かすと回転体が設置面に接地して回転するようにした。着座具は起立補助機構と向き変更機構の双方を備えたものでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座椅子、テーブル用の椅子、ソファなどの着座具に関し、特に、座椅子に着座している着座者の起立を補助できる起立補助機能と、座を回転させて着座者の向きを変更可能な向き変更機構を備えた着座具とその支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の着座具には種々のものがある。高齢化が進む昨今は足腰の弱った高齢者でも容易に起立や着座ができる機能を備えた着座具(特許文献1)や、座った状態で着座者の向きを変更できる回転機能を備えた着座具(特許文献2)など、補助機能付きのものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−19055号公報
【特許文献2】特開2003−61775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1記載の発明は、膝や足腰の弱った年配者や障害者等の立ち上がりを補助して、立ち上がり時の負担を軽減してスムースに、安全、確実に立ち上がり可能とした昇降椅子に関するものである(段落番号0004)。この昇降椅子は、駆動機構によって座部(座部枠と座部本体)を昇降可能なものであり、座部本体を所定高さの位置で自動的に前傾させる前傾機構と、座部本体が所定の前傾角度になると前傾機構を停止させる角度検出手段を備えたものである(段落番号0005)。
【0005】
前記特許文献2記載の発明は、ベッドや椅子等から移乗し易く、座った状態でも作業し易きように体の向きを変えられる昇降椅子に関するものである(段落番号0004)。この昇降椅子は、昇降駆動機構によって昇降する座部ユニットを備えており、当該座部ユニットを平面視45度〜90度の角度で前後に首ふり可能としたものである(段落番号0005)。
【0006】
本発明の解決課題は、着座している人が容易に起立でき、所望方向に向きを変えることができる補助機能付き着座具と、その支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の補助機構付き着座具は、着座者が着座可能な座部ユニットを備えた着座具において、前記座部ユニットへの着座者の起立を補助する起立補助機構と、起立補助機構を駆動する駆動機構と、設置面(フローリング、畳等)に設置可能なベースを備え、前記起立補助機構は座部ユニットの下に設けられ、前記駆動機構は起立補助機構の背面側に設けられ、前記駆動機構は回転軸の回転により当該回転軸の軸方向に昇降可能な移動体を備え、前記起立補助機構は数本のリンクを備え、それらリンク中の一部のリンクの先端側が前記座部ユニットに連結され、他の一部のリンクの後端側が前記ベースに連結され、他の一部のリンクの後端側が前記移動体に連結されて、当該回転軸の回転により前記移動体が上昇すると前記座部ユニットに連結された数本のリンクの先端側が上昇して前記座部ユニットが上昇し、前記回転軸の逆回転により前記移動体が降下すると前記座部ユニットに連結された数本のリンクの先端側が降下して前記座部ユニットが降下するようにしたものである。
【0008】
本発明の補助機構付き着座具は、着座者が着座可能な座部ユニットを備えた着座具において、前記着座具を回転させて、当該着座具の座部ユニットに着座している着座者の向きを変えることのできる向き変更機構と、着座具の設置面に設置可能なベースを備え、前記向き変更機構は回転可能な回転体であり、前記回転体の上部は前記座部ユニットに連結され、前記ベースが設置面に接地すると回転体が設置面から離れて回転せず、回転体を設置面に接地させてベースを設置面から離すと回転するようにしたものである。
【0009】
本発明の補助機構付き着座具は、前記起立補助機構と前記向き変更機構の双方を備えたものであってもよい。その場合は、向き変更機構を起立補助機構にその下方に突出させて取付けて起立補助機構の前記昇降に伴って昇降可能とし、ベースが設置面に接地すると設置面から離れて回転せず、起立補助機構の降下により設置面に接地させてベースを設置面から離すと回転して前記座部ユニットを回転させるようにすることができる。この場合の起立補助機構は前記起立補助機構と同じ構成であっても異なる構成であってもよい。
【0010】
本発明の着座具の支持構造は、ベースとそのベースに取り付けられた起立補助機構を備えた着座具の支持構造であって、前記起立補助機構に着座具を回転可能に支持する回転体と着座者が着座可能な座部ユニットが設けられ、前記ベースを着座具の設置面から離して前記回転体を設置面に接地させると着座具が回転体によって回転可能に支持され、前記回転体を設置面から離して前記ベースを設置面に接地させると着座具が回転不能に支持されるようにした構造である。
【0011】
前記着座具の支持構造において、ベースは、起立補助機構を最低位置まで降下させて回転体を設置面に接地させると設置面から離れ、起立補助機構を最低位置以外の位置まで上昇させて回転体を設置面から離すと設置面に接地するようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の補助機構付き着座具は次のような効果を有する。
(1)座部ユニットが、着座者が立ち上がり易い位置まで上昇すると前傾するので、椅子、特に、着座具に着座している人が立ち上がり易くなり、着座具から降り易くもなる。また、立ったままで着座して設置面まで降下できるので座椅子に座り易くもなる。
(2)回転体を設置面に接地させるだけで座部ユニットを回転させることができるため、座部ユニットの向きを変えるのが容易である。また、ベースが設置面まで降下すると回転できなくなるため不用意に回転することが無く安全である。
【0013】
本発明の着座具の支持構造は次のような効果を有する。
(1)ベースを着座具の設置面から離して前記回転体を設置面に接地させることによって着座具が回転可能となるため、向きの変更が容易である。
(2)回転体を設置面から離してベースを設置面に接地させることによって、着座具が回転不能に支持されるため、着座具からの起立や着座具への着座が安定する。
(3)回転可能状態で支持するか、回転不能状態で支持するかを状況に応じて変えることができるので、使い勝手がよい。
(4)起立補助機構の昇降動作だけで回転可能と回転不能を切り替えられるので、誰でも簡単に取り扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の補助機構付き着座具の動作を示すものであって、(a)は着座具が一番低い位置(最低位置)にある状態の側面説明図、(b)は座部ユニットが水平に上昇する途上の側面説明図、(c)は座部ユニットが前傾した状態の概略説明図。
【図2】本発明の補助機構付き着座具の一例を示す組み立て説明図。
【図3】本発明の補助機構付き着座具の一例を示すものであって、回転体を着座具の設置面に接地し、ベースをその設置面から離して着座具を回転可能とした状態の側面図。
【図4】本発明の補助機構付き着座具の一例を示すものであって、座部ユニットを上昇させて座部ユニットを前傾させた状態の側面図。
【図5】本発明の補助機構付き着座具の一例を示すものであって、(a)は着座具が回転しない状態の背面斜視図、(b)は座部ユニットを上昇させた状態の背面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の補助機構付き着座具(以下、単に「着座具」という)の実施形態の一例について、図1〜図5を参照して説明する。本発明の着座具1は、座椅子、テーブル用の椅子(テーブルチェアの他、デスクチェア等を含む。以下、これらをまとめて「テーブル椅子」という。)、ソファなどの各種形態の着座具を含むものであるが、以下の説明では、座椅子を一例として説明する。本発明の着座具1は着座者の起立を補助する起立補助機構2と、着座者が着座具から降りるときに所望の方向に降り易くなるように着座者の向きを変える向き変更機構3(以下、両機構を含めて「補助機構」という。)の双方又はいずれか一方を備えたものでもよいが、図1(a)〜(c)には一例として向き変更機能3を備えず起立補助機構2のみを備えた着座具1を、図2〜図4には起立補助機構2と向き変更機構3の双方を備えた着座具1を示す。図5(a)(b)に示す着座具1は起立補助機構2と向き変更機構3の双方を備えたものであるが、向き変更機構3は座部ユニット10の裏に設けられているため、図面上には表れていない。
【0016】
[動作概要]
図1に示す向き変更機構を備えない着座具1の場合は、図1(a)に示すように座部ユニット10を床や畳、フローリング等(以下、これらをまとめて「設置面」という)まで下げることによって、通常の座椅子と同様に使用することができる。その座部ユニット10に着座している人が立ち上がる場合は、起立補助機構2を操作して図1(b)のように座部ユニット10を水平状態のまま上昇させる。座部ユニット10が所望位置まで上昇すると、座部ユニット10が図1(c)のように前傾し、着座者の座部ユニット10からの起立を補助できるようにしてある。
【0017】
前記着座具1において、起立時とは逆に起立している人が着座する場合は、図1(c)のように前傾している座部ユニット10に腰を下ろしてから起立補助機構2を操作して座部ユニット10を水平に戻す。座部ユニット10が水平位置まで戻ると、座部ユニット10が図1(b)に示すように水平状態のまま図1(a)に示す位置まで降下し、着座者の座部ユニット10への着座を補助できるようにしてある。
【0018】
図2〜図4に示す向き変更機構3を備えた着座具1の場合は、図3に示すように座部ユニット10が設置面まで降りている状態で向き変更機構3を操作して座部ユニット10を含む着座具1を所望の向きまで回転させることができる。着座具1を所望の向きまで回転させた後、起立補助機構2の操作により座部ユニット10を図1(b)のように上昇させ、座部ユニット10を所望の高さまで上昇させた段階で図1(c)のように座部ユニット10を前傾させることができる。
【0019】
前記向き変更機構3を備えた着座具1において、起立時とは逆に起立している人が着座する場合は、図1(c)のように前傾している座部ユニット10に腰を下ろしてから起立補助機構2を操作して座部ユニット10を水平に戻す。その後、図1(b)に示すように座部ユニット10を水平状態のまま床まで降下させる。その後、向き変更機構3の操作により着座具1を回転させると着座者が所望の向きとなるようにすることができる。
【0020】
起立補助機構2の操作はコントローラー54(図5(a)(b))によって行うことができるが、着座具1が操作盤を備えている場合はその操作盤の操作によって行うこともできる。前記説明は高さも回転角度も、着座者が任意に操作する場合であるが、可能であれば、リモコン或いは操作盤を一度操作すると、座部ユニット10の昇降、前傾、後傾(復帰)や着座具1の回転が予め設定されている条件に従って自動的に行われるようにすることもできる。
【0021】
[機構説明]
図2〜図5に示す着座具1は、図2に示すように、ベース20と、座部ユニット10と、ベース20と座部ユニット10との間に設けられて座部ユニット10を昇降させる起立補助機構2と、起立補助機構2の下に設けられて着座具1を回転させる向き変更機構3と、起立補助機構2の背面に設けられて起立補助機構2の昇降、前傾、戻しを行う駆動機構30と、駆動機構30の動力源(モータ)Mを備えている。
【0022】
[ベース]
図2に示すように、ベース20は、前後方向に延伸する2本の支持脚21a、21bと、それら支持脚21a、21bの後方側を連結する脚連結材22で前方開口のコ字状に形成されている。脚連結材22の中央付近には二枚一対のモータ架台23a、23bが立設され、脚連結材22の長手方向両端側にはアーム架台24が立設されており、そのアーム架台24は2枚のアーム保持片24a、24bが対向配置されて構成されている。二つのアーム架台24のアーム保持片24a、24bの間には図2に示すサイドフレーム31の後端部31cが配置され、図示しない支持軸により軸支されて、その軸廻りを回転可能としてある。
【0023】
前記両アーム架台24の背面側には上方に突出して背中側を支える背用フレーム25が設けられて、着座具1の背面側を支持する平面視コ字状の背面支持体26(図5(a)(b))が支持されている。前記背面支持体26の背面側の幅方向中央部には、縦長の開口部(図示しない)が設けられ、その開口部がカバー27によって閉塞されている。カバー27は下端側が駆動機構30の動力源(モータ)Mに連結され、後述する螺子軸62及びケース63の後傾に伴って後傾するようにしてある。
【0024】
背面支持体26の内側(前面側)には平板状の背面材28が設けられ、その上端側には着座者の頭を支持するためのヘッド部29が設けられている。
【0025】
脚連結材22の長寸方向両端部にはキャスタ取付けブラケット44a、44bが突設され、それに移動用のキャスタ44が設けられている。キャスタ44はストッパー付のものでも、ストッパーがないものでもよい。キャスタ44は設けなくてもよい。
【0026】
[座部ユニット]
座部ユニット10は座フレーム11と座フレーム11の上面に取り付けられた座体12とから構成されている。座体12は通常の座椅子用の座と同様に着座部12aと背凭れ部12bを備えており、表皮内にクッション材が内蔵されている。座体12は座フレーム11上に螺子止めされている。
【0027】
座フレーム11は座部ユニット10の底面後方側に螺子で固定される後方固定部13と、座部ユニット10の底面前方側に螺子で固定される前方固定部14と、後方固定部13と前方固定部14の間を連結する2本の連結部15を備えている。
【0028】
前記後方固定部13の幅方向両端には縦アーム16が上向きコ字状に突設されている。2本の縦アーム16の間隔は座部ユニット10の幅よりも広くして両縦アーム16間に座部ユニット10を配置できるようにしてあり、2本の縦アーム16が座部ユニット10の幅方向両外側に突出するようにしてある。
【0029】
両縦アーム16の上端にはプレート17が連結軸によりその軸廻りに回転可能(跳ね上げ可能)に取付けられている。このプレート17に肘掛18(図3)を取付けることにより、肘掛18(図4)が矢印A方向に跳ね上げることも、矢印B方向に戻すこともできるようにしてある。肘掛18は設けなくてもよい。前記前方固定部14の長寸方向両端部には側面視コ字状のガイド溝19が設けられている。
【0030】
座部ユニット10の底面に固定された座フレーム11は、図2の座取付け用ブラケット37の上に配置されて螺子止めされる。この場合、前記ガイド溝19に図2に示す座受けバー42が嵌入される。
【0031】
[起立補助機構]
起立補助機構2は、図2に示すように、上下に配置連結された上側フレーム31aと下側フレーム31bの前端側が連結片32で連結されたサイドフレーム31が、座部ユニット10の幅方向左右に一対平行に配置され、夫々のサイドフレーム31の連結片32が連結バー33で連結され、両サイドフレーム31の上側フレーム31aの先端側が座受けバー42で連結されている。連結バー33の後方であってサイドフレーム31の内側には、2本のレール34が平行に連結されている。2本のレール34の後端側は後方連結バー43で連結されている。
【0032】
前記後方連結バー43の上方には2本のモータハンガー35が立ち上げられている。モータハンガー35の上部が後方にL字状に曲がっている。 両モータハンガー35の下端側から先方に2本の可動アーム36が突設され、両可動アーム36の先端間が下向きコ字状の座取付け用ブラケット37で連結されている。
【0033】
両可動アーム36の外面(側面)には可動アーム36よりも短寸のリンク38の先端側端部が回転自在に軸支され、その反対側端部にはローラ39が支持軸40によって回転自在に支持されている。このローラ39はレール34の上に配置されてその上を回転可能としてある。
【0034】
夫々のローラ39の外側にはティルト用プルロッド41の上端部が配置され、前記支持軸40に連結されている。このティルト用プルロッド41の下端部はその外側の下側フレーム31bに軸支されている。
【0035】
[駆動機構]
図2の駆動機構30は、モータMにより回転させられるアクチュエーター61と、アクチュエーター61で回転させられる螺子軸(ボールネジ)62と、螺子軸62の回転により螺子軸62に沿って上昇し螺子軸62の逆回転により螺子軸62に沿って降下する移動体64を備えている。螺子軸62は側面開口の角筒状のケース63でカバーされている。
【0036】
駆動機構30(アクチュエーター61、螺子軸62、ケース63、移動体64)はモータMを駆動させるとモータ架台23を回転軸として後傾するようにしてある。前述のとおり、駆動機構30の背面側に設けられた背面支持体26には縦長の開口部(図示しない)が設けられ、その開口部はカバー27によって閉塞されている。カバー27は前述のようにモータ架台23に後傾可能に取り付けてあり、駆動機構30が後傾しても、駆動機構30がカバー27に接触しないようにしてある。
【0037】
図2に示すアクチュエーター61は一例であり、同様の作用効果を奏するものであればこれ以外のもの、例えばピニオンラックとか、その他の機構を用いることもできる。
【0038】
アクチュエーター61はモータ架台23a、23bの間に配置されて図示しないピンによりモータ架台23a、23bに取付けられて、当該ピン廻りを回転できるようにしてある。移動体64は図2の2本のモータハンガー35間に配置されて螺子止めされて、移動体64の昇降に伴ってモータハンガー35が昇降するようにしてある。
【0039】
[向き変更機構]
前記向き変更機構3には図2に示す回転体50が使用されている。この回転体50には例えばベアリングプレートを使用することができる。一例として図2に示すベアリングプレートは汎用のものであり、対向する上可動部51と下可動部52の間であって両板の中心部の外周に多数個の転動体53(図4)が同心円状に配置されており、上可動部51と下可動部52が別々に回転できるようになっている。回転体50には図示しないストッパーを設け、回転角度を制限することもできる。この回転体50の上可動部51が2本のレール34の底面に取付けられている。このベアリングプレートは一例であり、それと同様の作用効果を奏するものであればこれ以外の構造のベアリングとか、他の回転機構を用いることもできる。
【0040】
[電源]
本発明の着座具1は、商用電源で動作するようにすることも、バッテリで動作するようにすることもできる。商用電源を利用する場合、図5(a)(b)に示すように、着座具1の背面側から電源コードCを引き出しておく。この場合、電源コードCの根元にコイルスプリングSを設けて、電源コードCの挟み込みを防止することができる。バッテリを利用する場合、例えば、リチウムイオン電池などの二次電池を着座具1の任意スペースに実装し、必要に応じて充電できるようにしておくのが望ましい。
【0041】
[操作]
座部ユニット10の昇降、前傾、後傾(復帰)といった各動作は、図5(a)(b)に示す有線のコントローラー54や、図示しない無線のリモコンなどで操作することができる。また、着座具に操作盤等などの操作手段を搭載し、その操作盤等で操作することもできる。
【0042】
[動作詳細]
以下、本発明の着座具1の動作の詳細について、座部ユニット10の上昇と前傾、座部ユニット10の後傾(復帰)と降下、着座具1の回転と固定の順に説明する。
【0043】
(座部ユニットの上昇と前傾)
(1)コントローラー54の上昇ボタン54aをONにしてモータMを動作させ、その駆動力によってアクチュエーター61を駆動させる。アクチュエーター61の駆動により螺子軸62が回転し、移動体64が螺子軸62に沿って上昇する。
(2)移動体64の上昇により、これに連結されているモータハンガー35が上昇し、このモータハンガー35に連結されているレール34とそのレール34に連結された連結バー33が上昇する。
(3)連結バー33の両端にはサイドフレーム31の前方側を保持する連結片32が連結されているため、連結バー33の上昇に合わせてサイドフレーム31の前方側が上昇する。サイドフレーム31はその後端部31cがアーム架台24に軸支されているため、そのアーム架台24の取付軸を回転軸として、円を描くように上昇する。
(4)サイドフレーム31が円を描くように上昇すると、モータハンガー35及び可動アーム36が後方に押し込まれ、それに伴って、ローラ39がレール34上を転がって前方に移動する。
(5)ローラ39の移動に伴い、リンク38が図1(c)に示すように設置面に対して垂直又は略垂直に立ち上がり、リンク38に連結された座取付け用ブラケット37が押し上げられる。
(6)座取付け用ブラケット37が押し上げられると、これに取り付けられた座フレーム11の後方固定部13が持ち上げられ、座部ユニット10が予め設定された角度まで前傾する(図4)。
【0044】
本発明の座部ユニット10は、その上昇中又は上昇前に前傾するようにすることもできるが、安全性の観点から最上部まで上昇した後に前傾させるのが好ましい。
【0045】
(座部ユニットの後傾(復帰)と降下)
(1)コントローラー54の降下ボタン54bをONにしてモータMを動作させ、アクチュエーター61を駆動させる。アクチュエーター61の駆動により螺子軸62が上昇の場合とは逆方向に回転し、移動体64が螺子軸62に沿って降下する。
(2)移動体64が降下し始めると、ローラ39がレール34上を後方に移動し、座取付け用ブラケット37が引き戻されて、座部ユニット10が元の位置(図1(b)に示す水平位置)まで復帰する。
(3)座部ユニット10が元の位置まで復帰すると、モータハンガー35に連結されたレール34とそのレール34に連結された連結バー33が降下し始める。
(4)連結バー33が降下し始めると、連結バー33の両端に設けられた連結片32に保持されたサイドフレーム31の前方側が降下する。サイドフレーム31はその一端側がアーム架台24に軸支されているため、アーム架台24側を回転軸として、円を描くように降下する。
(5)これに伴って、座部ユニット10が水平の状態を維持したまま降下する。座部ユニット10はベース20又は回転体50が設置面に接地するまで降下させることができる。
【0046】
座部ユニット10は、その降下中に又は最低位置まで降下してから後傾する(元の位置に復帰する)ようにすることもできるが、安全性の観点から降下開始前に後傾させて(元の位置に復帰させて)おくのが好ましい。
【0047】
本発明の着座具1は、座部ユニット10の高さを変えることによって、座椅子として使用することも、テーブル椅子として使用することもできる。例えば、座部ユニット10を最低位置或いはそれに近い位置まで下げれば座椅子として使用することができ、座部ユニット10を中間位置或いはそれに近い位置とすることでテーブル椅子としても使用することができる。
【0048】
(着座具の回転と固定)
(1)本発明の着座具は、座部ユニット10を図3に示すように一番下(最低位置)まで下げたときに、ベース20が設置面から離れ、回転体50の下可動部52が設置面に接地するようにしてある。これにより、回転体50の上可動部51が回転可能となり、着座具1が回転可能に支持される。
(2)本発明の着座具は、座部ユニット10を上昇させて、最低位置を脱した状態にすると、回転体の50の下可動部52が設置面から離れ、ベース20が設置面に接地するようにしてある。これにより、着座具1が回転することなく固定された状態で支持される。
【0049】
前記実施形態における構造は一例であり、座部ユニットの昇降や着座具の回転と固定が可能な限り、他の構造とすることもできる。また、本実施形態における動作説明は着座具を前記構造とした場合の一例であり、前記以外の手順で動作するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の着座具やその支持構造(向き変更機構)は、各種着座具を支持する構造として利用することができる。特に、前記支持構造を備えた着座具は、家庭において一般的に使用する座椅子をはじめ、病院(歯科医院や眼科医院なども含む)や介護施設などで使用される各種着座具として使用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 補助機構付き着座具(着座具)
2 起立補助機構
3 向き変更機構
10 座部ユニット
11 座フレーム
12 座体
12a 着座部
12b 背凭れ部
13 後方固定部
14 前方固定部
15 連結部
16 縦アーム
17 プレート
18 肘掛
19 ガイド溝
20 ベース
21a、21b 支持脚
22 脚連結材
23、23a、23b モータ架台
24 アーム架台
24a、24b アーム保持片
25 背用フレーム
26 背面支持体
27 カバー
28 背面材
29 ヘッド部
30 駆動機構
31 サイドフレーム
31a 上側フレーム
31b 下側フレーム
31c 後端部
32 連結片
33 連結バー
34 レール
35 モータハンガー
36 可動アーム
37 座取付け用ブラケット
38 リンク
39 ローラ
40 支持軸
41 ティルト用プルロッド
42 座受けバー
43 後方連結バー
44 キャスタ
44a、44b キャスタ取付けブラケット
50 回転体
51 上可動部
52 下可動部
53 転動体
54 コントローラー
54a 上昇ボタン
54b 下降ボタン
61 アクチュエーター
62 螺子軸
63 ケース
64 移動体
C 電源コード
M 動力源(モータ)
S コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者が着座可能な座部ユニットを備えた着座具において、
座部ユニットへの着座者の起立を補助する起立補助機構と、起立補助機構を駆動する駆動機構と、設置面に設置可能なベースを備え、
前記起立補助機構は座部ユニットの下に設けられ、
前記駆動機構は起立補助機構の背面側に設けられ、
前記駆動機構は回転軸の回転により当該回転軸の軸方向に昇降可能な移動体を備え、
前記起立補助機構は数本のリンクを備え、それらリンク中の一部のリンクの先端側が前記座部ユニットに連結され、他の一部のリンクの後端側が前記ベースに連結され、他の一部のリンクの後端側が前記移動体に連結されて、当該回転軸の回転により前記移動体が上昇すると前記座部ユニットに連結された数本のリンクの先端側が上昇して前記座部ユニットが上昇し、前記回転軸の逆回転により前記移動体が降下すると前記座部ユニットに連結された数本のリンクの先端側が降下して前記座部ユニットが降下する、
ことを特徴とする補助機構付き着座具。
【請求項2】
着座者が着座可能な座部ユニットを備えた着座具において、
前記着座具を回転させて、当該着座具の座部ユニットに着座している着座者の向きを変えることのできる向き変更機構と、着座具の設置面に設置可能なベースを備え、
前記向き変更機構は回転可能な回転体であり、
前記回転体の上部は前記座部ユニットに連結され、
前記ベースが設置面に接地すると回転体が設置面から離れて回転せず、回転体を設置面に接地させてベースを設置面から離すと回転する、
ことを特徴とする補助機構付き着座具。
【請求項3】
請求項1記載の補助機構付き着座具において、
請求項2記載の向き変更機構を備え、
前記向き変更機構は起立補助機構にその下方に突出して取り付けられ、当該起立補助機構の昇降に伴って昇降可能である、
ことを特徴とする補助機構付き着座具。
【請求項4】
ベースとそのベースに取り付けられた起立補助機構を備えた着座具の支持構造において、
前記起立補助機構は着座具を回転可能に支持する回転体と着座者が着座可能な座部ユニットを備え、
前記ベースを着座具の設置面から離して前記回転体を当該設置面に接地させると着座具が回転可能に支持され、前記回転体を前記設置面から離して前記ベースを当該設置面に接地させると着座具が回転不能に支持される、
ことを特徴とする着座具の支持構造。
【請求項5】
請求項4記載の着座具の支持構造において、
ベースは起立補助機構を最低位置まで降下させて回転体を設置面に接地させると設置面から離れ、起立補助機構を最低位置以外の位置まで上昇させて回転体を設置面から離すと設置面に接地する、
ことを特徴とする着座具の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−111387(P2013−111387A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262398(P2011−262398)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【特許番号】特許第5166592号(P5166592)
【特許公報発行日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 博覧会名:第38回国際福祉機器展H.C.R.2011 主催者名:社会福祉法人全国社会福祉協議会、一般財団法人保健福祉広報協会 開催日:平成23年10月5日から同7日
【出願人】(597021886)株式会社馬場家具 (7)
【Fターム(参考)】