補強基板モジュールおよびトンネルの補強構造
【課題】補強基板モジュールをより軽薄短小にすることにより、現場への搬入、組み立てが容易な補強基板モジュールの提供を目的とする。
【解決手段】剛性を有する合成樹脂からなる2つの剛性板状体の間に伸縮性を有する合成樹脂からなる伸縮性板状体が固着されたトンネルの内壁に設けられる補強基板モジュールであって、前記2つの剛性板状体の側縁に鍔が設けられ、前記2つの剛性板状体の前記トンネルの内壁に取り付けられる面と対向する面に、前記鍔に沿って金属製の枠体が設けられてなることを特徴とする。
【解決手段】剛性を有する合成樹脂からなる2つの剛性板状体の間に伸縮性を有する合成樹脂からなる伸縮性板状体が固着されたトンネルの内壁に設けられる補強基板モジュールであって、前記2つの剛性板状体の側縁に鍔が設けられ、前記2つの剛性板状体の前記トンネルの内壁に取り付けられる面と対向する面に、前記鍔に沿って金属製の枠体が設けられてなることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は補強基板モジュールおよびトンネルの補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、老朽化したトンネルを補修する場合、(1)トンネル周辺地盤を薬液注入により地盤改良したのち、トンネル内の劣化部コンクリートを全面的にはつり取り、次にはつり取った部分および既設トンネル内周壁に沿ってコンクリートを巻立てる方法、(2)馬蹄形の既設トンネル内に既設の円筒状管体を搬入して順次接合しながら配管を行ない、次に既設トンネルのコンクリートと新設配管との間にモルタルやコンクリート等をグラウトする方法、(3)鋼製底部内張補修材およびこれと別体に作られたアーチ状の鋼製上部内張補修材を馬蹄形の既設トンネル内に搬入した後、組立て溶接接合して鋼製内張補修材を構成し、次いで既設トンネルのコンクリートと鋼製内張補修材との間にモルタルやコンクリート等の硬化性材料からなるグラウト材をグラウトする方法等が実施されている。
【0003】
前記(1)の方法の場合は、通常、トンネル底部のコンクリートをはつり取るため、トンネル下部の周辺地盤を薬液注入により強化したうえで、トンネル劣化部のコンクリートをはつり取り、次に補修用のコンクリートを打設して養生する必要があるため、施工が煩雑で工事期間が長くかかり、またコンクリートをはつり取る際に落盤の危険もあり、さらにトンネル内の全面補修でないので、再び漏水を起こす恐れがある。
【0004】
前記(2)の方法の場合は、老朽化した馬蹄形の既設トンネル内に新しい円筒状管体を搬入する際に、その管体を既設トンネル内の所定位置までスムーズに搬入するためには、新しい管体の外径寸法を既設トンネルの内周寸法に帯してかなり小さくする必要があるので、補修後のトンネル内部の断面減少率が大きくなり、そのため送水量の余裕のない送水用トンネルの場合は、新たにトンネルを設置する必要があった。
【0005】
前記(3)の方法の場合は、前記(1)(2)の方法の欠点を解消することができる。しかし、(3)の方法の場合は、内張補修材設置後に老朽化したコンクリート壁から漏水した地下水の被圧水圧を受ける条件で設計されるが、被圧水圧による等分布荷重を受けると、鋼製底部内張補修材に大きな曲げモーメントが作用し、かつ底部内張補修材は、アーチ状の内部内張補修材に比較して曲率半径が著しく大きいか、またはほぼ平板状であるので、外圧に対する曲げ剛性が小さく、そのため鋼製底部内張補修材の板厚を厚くする必要があるので、既設トンネル内への鋼製底部内張補修材の搬入を行ないにくく、かつ搬入作業時間が長くかかり、さらに鋼製底部内張補修材の溶接作業時間が長くかかると共に溶接量が多くなり、したがって工事費が割高になるという問題がある。
【0006】
叙上の問題を解決するものとして、特許文献1には、トンネル内部断面の減少を最小限にすることができ、かつ漏水を防止できる既設トンネルの内張補修工法において、底部内張補修材に作用する被圧水圧による曲げモーメントを小さくして底部内張補修材の板厚を薄くすることができる馬蹄形既設トンネル内張補修方法を提供することを目的とするものであって、馬蹄形の既設トンネルの内周壁に沿って設置される薄肉の鋼製内張補修材の底部に、底部コーナー間において下方に突出するスペーサを兼用したアンカー部材を固着し、次に前記アンカー部材を介して既設トンネルと前記内張補修材との間に形成された間隙にグラウト材を充填することを特徴とする馬蹄形既設トンネル内張補修方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2579499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のトンネルの補修方法には、鋼製の内張部材が用いられていて、それぞれの部材が鋼材であるため、重厚長大になり、現場への搬入や現場での組み立てが困難であるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明はかかる事情に鑑みて、補強基板モジュールをより軽薄短小にすることにより、現場への搬入、組み立てが容易な補強基板モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の補強基板モジュールは、剛性を有する合成樹脂からなる2つの剛性板状体の間に伸縮性を有する合成樹脂からなる伸縮性板状体が固着されたトンネルの内壁に設けられる補強基板モジュールであって、前記2つの剛性板状体の側縁に鍔が設けられ、前記2つの剛性板状体の前記トンネルの内壁に取り付けられる面と対向する面に、前記鍔に沿って金属製の枠体が設けられてなることを特徴とする。
【0011】
また、前記剛性板状体が矩形状を呈し、前記矩形状の剛性板状体の、伸縮性板状体が固着された辺以外の3辺に鍔が設けられ、該鍔が実質的に前記剛性板状体に垂直に配設され、隣り合う鍔が互いに垂直かつ一体的に形成されてなることが好ましい。
【0012】
また、前記前記剛性板状体が矩形状を呈し、前記矩形状の剛性板状体の、伸縮性板状体が固着された辺以外の3辺に鍔が設けられ、前記剛性板状体の伸縮性板状体が固着された辺に対向する鍔が、実質的に前記剛性板状体に垂直に配設され、残り2つの互いに対向する鍔が、前記剛性板状体に対して鈍角をなすように配設されてなることが好ましい。
【0013】
また、剛性板状体の、伸縮性板状体が固着された辺以外の3辺に鍔が設けられ、該鍔が実質的に前記剛性板状体に垂直に配設され、前記剛性板状体および伸縮性板状体が、前記補強基板モジュールの長手方向の軸回りに略L字状に屈曲して形成されてなることが好ましい。
【0014】
また、本発明の補強構造は、補強基板モジュールを複数備え、当該複数の補強基板モジュールが、前記鍔を介して互いに固着手段により固着されてなり、前記複数の補強基板モジュールが、グラウト材を介して前記トンネルの内壁面に取り付けられてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、補強基板モジュールを小型かつ軽量化することにより、現場への搬入、組み立てを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の補強基板モジュールを説明するための説明図である。
【図2】本発明の補強基板モジュールを説明するための説明図である。
【図3a】本発明の補強基板モジュールの他の形態を説明するための説明図である。
【図3b】本発明の補強基板モジュールの他の形態を説明するための説明図である。
【図4a】本発明の補強基板モジュールのさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図4b】本発明の補強基板モジュールのさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図5】本発明の補強構造を説明するための説明図である。
【図6】本発明の補強構造がトンネル内に配設された状態を説明するための説明図である。
【図7】本発明の補強基板モジュールの連結状態を説明するための説明図である。
【図8】本発明の補強基板モジュールの伸縮性板状体を説明するための説明図である。
【図9】本発明の補強構造の工法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照し、本発明の補強基板モジュールおよびトンネルの補強構造を詳細に説明する。
【0018】
図1および図2に示されるように、本発明の補強基板モジュール1はトンネルの内壁を補強するために用いられ、板状体2a、2bと、当該板状体2a、2bとの間に介装されて固定された伸縮性のある伸縮性板状体3とから構成される。
【0019】
板状体2a、2bは、剛性を有する平板状の合成樹脂からなり、板状体2a、2bの材料としては、たとえば硬質のポリ塩化ビニル、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンを採用することができる。
【0020】
伸縮性板状体3は、伸縮性を有する合成樹脂からなり、当該伸縮性板状体3の材料としては、たとえば軟質のポリ塩化ビニル、低密度ポリエチレン(LDPE)、エラストマーを採用することができる。
【0021】
板状体2a、2bには、図1に示されるように、矩形状の板状体2a、2bの、伸縮性板状体3が固着された辺以外の3辺に、参照符号Lで示す補強基板モジュール1の長手方向に沿って設けられた鍔21、23と、参照符号Sで示す補強基板モジュール1の短手方向に沿って設けられた鍔22とが互いに連続して形成されている。鍔21、22、23は板状体2a、2bに対して実質的に垂直に配設され、かつ鍔21と22、鍔22と23が互いに垂直に配設されている。
【0022】
板状体2a、2bには、円弧状に立設された突起24が設けられている。補強基板モジュール1の組立後に当該円弧状の突起24に沿ってグラウトを注入するための注入孔が穿設される。注入孔は全ての補強基板モジュール1に開けられることはなく、円弧状の突起24には、注入されたグラウトが流れやすくするために、複数の切り欠き24aが形成されている。
【0023】
鍔21および鍔23には、それぞれボルトなどを挿通する孔Hおよび補強基板モジュール1同士が連結された後、グラウトが1つの補強基板モジュールから隣接する補強基板モジュール1に通るための孔GHが設けられている。当該孔Hにボルトを挿通し、一の補強基板モジュールと他の補強基板モジュールとをトンネルの周方向に連結し、ボルトとナットにより2つの補強基板モジュールを固着することができる。
【0024】
また、図1に示すように、鍔22には、角形の孔H2が設けられている。角形の孔H2を介してボルトナット等の固着手段により一の補強基板モジュールと他の補強基板モジュールとを補強されるべきトンネルの長さ方向に連結する。
【0025】
伸縮性板状体3と板状体2a、2bとは、図1に示されるように、蟻溝と蟻ほぞの関係で固着することができ、伸縮性板状体3から延びる突起部31を、板状体2a、2bに形成された凹嵌部26に嵌合させることにより固着することができる。なお、突起部を板状体2a、2b側に設け、凹嵌部を伸縮性板状体3側に設けることにより固着してもよい。
【0026】
伸縮性板状体3は、板状体2a、2bを射出成形金型内にインサートした後、樹脂を充填する、いわゆるインサート成形によって一体成形することができる。
【0027】
伸縮性板状体3および伸縮性板状体3から垂直方向に延びる鍔32には、図1に示すようにベローズが形成されている。
【0028】
鍔32は、トンネルの周方向に補強基板モジュール1が連結されたときに、一方の補強基板モジュール1の鍔32の凸部32aが、他方の補強基板モジュール1の鍔32の凹部32bに嵌まり込み、補強基板モジュール1を連結したときに、鍔32の凸部32aと凹部32bとが水密に連結され、防水効果を高めることができる。
【0029】
また、補強基板モジュール1の一方の鍔32の自由端縁には、図8(a)〜(c)に示すように、鍔32から補強基板モジュール1の外周側に張り出したフランジ部33が設けられ、2つの補強基板モジュール1を連結したときに、位置決めができるとともに、さらに水密に連結することができる。図8(b)および(c)に示すように、一方の鍔32と他方の鍔32とが接合され、グラウトが充填されると、一方の鍔に設けられたフランジ部33と他方の鍔32の上端縁との間の隙間(図8(b)参照)がグラウトの圧力により無くなり、フランジ部33と鍔32の上端縁とが密着する(図8(c)参照)ことにより、グラウトが漏れることを防ぐことができる。
【0030】
また、図8(a)に示すように、フランジ部33には、フランジ部33の湾曲部にスリットSLが形成されている。当該スリットSLにより、トンネルのカーブに沿って変形する伸縮性板状体3を伸縮しやすくしている。
【0031】
また、図2に示すように、参照符号Aで示す、板状体2a、2bのトンネルの内壁に取り付けられる側の面(以下、面Aという)には、鍔21、22、23に沿って矩形状の金属製の枠体4が設けられている。枠体4には、鍔21、22、23に設けられた孔H、H2、GHに対応する位置に、孔H3が設けられ、注入されるグラウトが通過するための孔GHが設けられている。また、金属製の枠体4には、一対の枠体4が対向する参照符号41で示す面Bに孔H4が設けられている。
【0032】
当該孔H4には、図7に示すように、一対の金属製の枠体4は、長ボルト5および当該長ボルト5に螺合するナット6により連結されている。当該長ボルト5およびナット6により、補強基板モジュール1の長手方向への過度な延びを制限することができる。
【0033】
図3(a)および(b)は、本発明の補強基板モジュールの他の形態を示す図である。図3(a)および(b)に示す補強基板モジュール10は、図1に示す補強基板モジュール1と同様に、板状体2a、2bと、当該板状体2a、2bとの間に介装されて固定された伸縮性のある伸縮性板状体3とから構成される。板状体2a、2bには、矩形状の板状体2a、2bの3つの側縁に鍔21、22、23が設けられ、鍔21、22、23は互いに連続して形成されている。
【0034】
図1の形態の補強基板モジュール1は、鍔21、22、23が板状体からほぼ垂直に延びているが、図3(a)および(b)に示す補強基板モジュール10の互いに対向する鍔21、23は、板状体2a、2bに対して鈍角をなし、外側に傾斜して延びている。板状体2a、2bの伸縮性板状体3が固着された辺に対向する鍔22は、板状体2a、2bに対して実質的に垂直に配設されている。図1に示す補強基板モジュールと同様に、鍔21、22、23は連続して一体に形成されている。図3bに示すように、補強基板モジュール10の鍔22の自由端縁22aと鍔21とがなす角θ2と、補強基板モジュール1の鍔22の自由端縁22aと鍔21とがなす角θ3とを合計した角度と、トンネルTの内壁面T1とT2とのなす角θ1が等しくなるように構成されている(θ2+θ3=θ1)。したがって、補強基板モジュール1と補強基板モジュール10とを連結することにより、トンネルTの内壁面に沿ったトンネルの補強構造を組み立てることができる。
【0035】
また、図3bに示すように、垂直方向または水平方向に組み立てられた補強基板モジュール1の鍔21、23と補強基板モジュール10の鍔21、23とが面接触し、隙間無く接合されるので、トンネル内壁の傾斜部分にも対応することができる。
【0036】
図4は、本発明の補強基板モジュールのさらに他の形態を示す図である。図4に示す補強基板モジュール11は、剛性板状体2a、2bおよび伸縮性板状体3とが、参照符号Xで示す補強基板モジュールの長手方向Lの軸X回りに略L字状に屈曲している。鍔21、22、23は、剛性板状体2a、2bの3辺から略垂直に配設され、互いに連続して一体に設けられている。
【0037】
補強基板モジュール11は、略L字状に折れ曲がった鍔22の自由端縁22aのなす角θ5と、トンネルTの内壁面T3とT4のなす角θ4とがほぼ等しくなるように構成されている(θ5=θ4)。したがって、補強基板モジュール1と補強基板モジュール11とを連結することにより、トンネルTの内壁の底面と側面に沿って、トンネルの補強構造を組み立てることができる。
【0038】
つぎに、本発明の補強構造を図5および6を用いて説明する。
【0039】
図5に示すように、補強構造100は、複数の補強基板モジュール1、10、11が、参照符号Pで示すトンネルの周方向Pおよび参照符号L2で示すトンネルの長手方向L2に沿って固着されている。
【0040】
図5に示すように、補強基板モジュール1、10、11の長手方向Lに沿った端面同士が、トンネルの周方向Pに複数接合され、環状の補強基板ブロックBLを形成している。複数の環状の補強基板ブロックBLがトンネルの長手方向L2に連結されることにより、補強構造100を形成している。
【0041】
図6および図7に示すように、トンネルTの底面側内壁面T3の周方向Pに沿って、補強基板モジュール1の鍔21と鍔23とが、ボルトナットB、N等の固着手段により固着され、補強基板ブロックBLの底面を構成する。また、トンネルTの側面側内壁面T1、T4の周方向Pに沿って、補強基板モジュール1の鍔21と鍔23とが、ボルトナットB、N等の固着手段により固着され、補強基板ブロックBLの側面を構成する。トンネルTの上面側内壁面T6の周方向Pに沿って、補強基板モジュール1の鍔21と鍔23とが、ボルトナットB、N等の固着手段により固着され、補強基板ブロックBLの上面を構成する。
【0042】
トンネルTの底面側内壁面T3と側面側内壁面T1、T4との境界部には、補強基板モジュール11が設けられ、底面側の補強基板モジュール1と側面側の補強基板モジュール1のそれぞれに固着され、補強基板ブロックBLの底面と側面とが連続して構成される。
【0043】
トンネルTの上面側内壁面T6と側面側内壁面T1、T4との境界部には、補強基板モジュール10が設けられ、上面側の補強基板モジュール1と側面側の補強基板モジュール1のそれぞれに固着され、補強基板ブロックBLの上面と側面とが連続して構成される。
【0044】
複数の補強基板モジュール1、10、11が周方向Pに沿って環状に連結され、当該環状に連結された複数の補強基板モジュール1、10、11が、トンネルTの長手方向L2に沿って互いにボルトナット等の固着手段により固着され、トンネルの内壁面T1〜T6と補強基板モジュール1、10、11との間にグラウト材が充填され、トンネルTの補強構造100となる。グラウト材としては、モルタルまたはコンクリート等の硬化性材料が採用される。
【0045】
つぎに本発明の補強構造100の工法を、図9を参照しながら説明する。
【0046】
(1)図9に示すように、既設の下水トンネルTが走る地下に向けて補強基板モジュール1の搬入穴H5および牽引機8が設置され、牽引するためのワイヤーWを通すための穴H6を掘削し、トンネルTを分断する。
【0047】
(2)掘削された穴の内部から、既設トンネルT内に、組み立てられた補強基板モジュール1を牽引するための先導管9が配置される。先導管9には、ワイヤーWが掛止され、牽引機8により穴H6側に牽引される。
【0048】
(3)つぎに、補強基板モジュール1が搬入穴H5内部に搬入され、穴H5の内部で補強基板モジュール1をトンネルTの周方向に沿ってボルトナット等の固着手段により接合する。
【0049】
補強基板モジュール1の搬入前、たとえば工場の出荷時に、予め補強基板モジュール1を穴H5に入る最大の大きさまで接合しておくことにより、下水が流れている穴の内部での作業量を減らすことができる。
【0050】
(4)トンネルTの周方向に沿って接合された補強基板モジュール1と牽引機8により牽引される先導管9とをボルトナット等の固着手段により固定する。(5)トンネルTの周方向に沿って組み立てた補強基板モジュール1をトンネルTの長手方向に沿って連結した後、牽引機8により先導管9に連結された補強基板モジュール1を牽引する。この作業を繰り返すことにより、搬入穴H5における作業だけで既設のトンネルT内に補強基板モジュール1が組み立てられた補強構造100を形成することができる。なお、補強基板モジュール1には、伸縮性板状体3が剛性板状体2a、2bの間に介装され、伸縮性板状体3がトンネルTの周方向に沿って環状に形成され、トンネルTの長手方向に沿って環状の伸縮部分が複数設けられるので、トンネルTが曲がっている場合でも、当該環状の伸縮部分により、補強基板モジュール1がトンネルTのカーブに沿って変形し、牽引がスムーズになるとともに、補強基板モジュール1が破壊されることがない。
【0051】
なお、一対の金属製の枠体4内に、板状体の鍔の高さよりも長い径のローラを設置することにより、トンネルTの内壁にローラの表面が接触し、補強基板モジュール1の牽引による移動をスムーズにすることができる。
【0052】
(6)既設トンネルTの入口側T7から出口側T8までの内面が、連結された補強基板モジュール1に覆われると、補強基板モジュール1の一部に設けられたグラウト注入孔25からグラウトGが注入され、注入されたグラウトGは、一の補強基板モジュール1から隣接する補強基板モジュール1に鍔21、22、23に設けられた孔GHを介して流入し(図7参照)、トンネルTの内壁部と補強基板モジュール1の間の空間に充填される(図6参照)。上記工程により、補強構造100が完成する。
【0053】
本発明の補強基板モジュール1は、2つの剛性板状体2a、2bの間に、伸縮性板状体3が介装されていることにより、それぞれの補強基板モジュールが、圧縮、引張、曲げに対して強く、トンネルT内のカーブ部分にも対応が可能であり、直線部分とカーブ部分で別の部材を用意する必要がない。また、トンネルT内に設置する際、補強基板モジュール1を組み立てて牽引する場合に、牽引されたそれぞれの補強基板モジュール1がカーブに応じて変形が可能であるので、牽引時に曲げ応力に耐えきれずに破壊される虞がない。
【符号の説明】
【0054】
1、10、11 補強基板モジュール
2a、2b 板状体
21、22、23 鍔
25グラウト注入孔
3 伸縮性板状体
32 鍔
33 フランジ部
4 金属製枠体
8 牽引機
9 先導管
100 補強構造
T トンネル
H5、H6 穴
W ワイヤー
【技術分野】
【0001】
本発明は補強基板モジュールおよびトンネルの補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、老朽化したトンネルを補修する場合、(1)トンネル周辺地盤を薬液注入により地盤改良したのち、トンネル内の劣化部コンクリートを全面的にはつり取り、次にはつり取った部分および既設トンネル内周壁に沿ってコンクリートを巻立てる方法、(2)馬蹄形の既設トンネル内に既設の円筒状管体を搬入して順次接合しながら配管を行ない、次に既設トンネルのコンクリートと新設配管との間にモルタルやコンクリート等をグラウトする方法、(3)鋼製底部内張補修材およびこれと別体に作られたアーチ状の鋼製上部内張補修材を馬蹄形の既設トンネル内に搬入した後、組立て溶接接合して鋼製内張補修材を構成し、次いで既設トンネルのコンクリートと鋼製内張補修材との間にモルタルやコンクリート等の硬化性材料からなるグラウト材をグラウトする方法等が実施されている。
【0003】
前記(1)の方法の場合は、通常、トンネル底部のコンクリートをはつり取るため、トンネル下部の周辺地盤を薬液注入により強化したうえで、トンネル劣化部のコンクリートをはつり取り、次に補修用のコンクリートを打設して養生する必要があるため、施工が煩雑で工事期間が長くかかり、またコンクリートをはつり取る際に落盤の危険もあり、さらにトンネル内の全面補修でないので、再び漏水を起こす恐れがある。
【0004】
前記(2)の方法の場合は、老朽化した馬蹄形の既設トンネル内に新しい円筒状管体を搬入する際に、その管体を既設トンネル内の所定位置までスムーズに搬入するためには、新しい管体の外径寸法を既設トンネルの内周寸法に帯してかなり小さくする必要があるので、補修後のトンネル内部の断面減少率が大きくなり、そのため送水量の余裕のない送水用トンネルの場合は、新たにトンネルを設置する必要があった。
【0005】
前記(3)の方法の場合は、前記(1)(2)の方法の欠点を解消することができる。しかし、(3)の方法の場合は、内張補修材設置後に老朽化したコンクリート壁から漏水した地下水の被圧水圧を受ける条件で設計されるが、被圧水圧による等分布荷重を受けると、鋼製底部内張補修材に大きな曲げモーメントが作用し、かつ底部内張補修材は、アーチ状の内部内張補修材に比較して曲率半径が著しく大きいか、またはほぼ平板状であるので、外圧に対する曲げ剛性が小さく、そのため鋼製底部内張補修材の板厚を厚くする必要があるので、既設トンネル内への鋼製底部内張補修材の搬入を行ないにくく、かつ搬入作業時間が長くかかり、さらに鋼製底部内張補修材の溶接作業時間が長くかかると共に溶接量が多くなり、したがって工事費が割高になるという問題がある。
【0006】
叙上の問題を解決するものとして、特許文献1には、トンネル内部断面の減少を最小限にすることができ、かつ漏水を防止できる既設トンネルの内張補修工法において、底部内張補修材に作用する被圧水圧による曲げモーメントを小さくして底部内張補修材の板厚を薄くすることができる馬蹄形既設トンネル内張補修方法を提供することを目的とするものであって、馬蹄形の既設トンネルの内周壁に沿って設置される薄肉の鋼製内張補修材の底部に、底部コーナー間において下方に突出するスペーサを兼用したアンカー部材を固着し、次に前記アンカー部材を介して既設トンネルと前記内張補修材との間に形成された間隙にグラウト材を充填することを特徴とする馬蹄形既設トンネル内張補修方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2579499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のトンネルの補修方法には、鋼製の内張部材が用いられていて、それぞれの部材が鋼材であるため、重厚長大になり、現場への搬入や現場での組み立てが困難であるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明はかかる事情に鑑みて、補強基板モジュールをより軽薄短小にすることにより、現場への搬入、組み立てが容易な補強基板モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の補強基板モジュールは、剛性を有する合成樹脂からなる2つの剛性板状体の間に伸縮性を有する合成樹脂からなる伸縮性板状体が固着されたトンネルの内壁に設けられる補強基板モジュールであって、前記2つの剛性板状体の側縁に鍔が設けられ、前記2つの剛性板状体の前記トンネルの内壁に取り付けられる面と対向する面に、前記鍔に沿って金属製の枠体が設けられてなることを特徴とする。
【0011】
また、前記剛性板状体が矩形状を呈し、前記矩形状の剛性板状体の、伸縮性板状体が固着された辺以外の3辺に鍔が設けられ、該鍔が実質的に前記剛性板状体に垂直に配設され、隣り合う鍔が互いに垂直かつ一体的に形成されてなることが好ましい。
【0012】
また、前記前記剛性板状体が矩形状を呈し、前記矩形状の剛性板状体の、伸縮性板状体が固着された辺以外の3辺に鍔が設けられ、前記剛性板状体の伸縮性板状体が固着された辺に対向する鍔が、実質的に前記剛性板状体に垂直に配設され、残り2つの互いに対向する鍔が、前記剛性板状体に対して鈍角をなすように配設されてなることが好ましい。
【0013】
また、剛性板状体の、伸縮性板状体が固着された辺以外の3辺に鍔が設けられ、該鍔が実質的に前記剛性板状体に垂直に配設され、前記剛性板状体および伸縮性板状体が、前記補強基板モジュールの長手方向の軸回りに略L字状に屈曲して形成されてなることが好ましい。
【0014】
また、本発明の補強構造は、補強基板モジュールを複数備え、当該複数の補強基板モジュールが、前記鍔を介して互いに固着手段により固着されてなり、前記複数の補強基板モジュールが、グラウト材を介して前記トンネルの内壁面に取り付けられてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、補強基板モジュールを小型かつ軽量化することにより、現場への搬入、組み立てを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の補強基板モジュールを説明するための説明図である。
【図2】本発明の補強基板モジュールを説明するための説明図である。
【図3a】本発明の補強基板モジュールの他の形態を説明するための説明図である。
【図3b】本発明の補強基板モジュールの他の形態を説明するための説明図である。
【図4a】本発明の補強基板モジュールのさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図4b】本発明の補強基板モジュールのさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図5】本発明の補強構造を説明するための説明図である。
【図6】本発明の補強構造がトンネル内に配設された状態を説明するための説明図である。
【図7】本発明の補強基板モジュールの連結状態を説明するための説明図である。
【図8】本発明の補強基板モジュールの伸縮性板状体を説明するための説明図である。
【図9】本発明の補強構造の工法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照し、本発明の補強基板モジュールおよびトンネルの補強構造を詳細に説明する。
【0018】
図1および図2に示されるように、本発明の補強基板モジュール1はトンネルの内壁を補強するために用いられ、板状体2a、2bと、当該板状体2a、2bとの間に介装されて固定された伸縮性のある伸縮性板状体3とから構成される。
【0019】
板状体2a、2bは、剛性を有する平板状の合成樹脂からなり、板状体2a、2bの材料としては、たとえば硬質のポリ塩化ビニル、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンを採用することができる。
【0020】
伸縮性板状体3は、伸縮性を有する合成樹脂からなり、当該伸縮性板状体3の材料としては、たとえば軟質のポリ塩化ビニル、低密度ポリエチレン(LDPE)、エラストマーを採用することができる。
【0021】
板状体2a、2bには、図1に示されるように、矩形状の板状体2a、2bの、伸縮性板状体3が固着された辺以外の3辺に、参照符号Lで示す補強基板モジュール1の長手方向に沿って設けられた鍔21、23と、参照符号Sで示す補強基板モジュール1の短手方向に沿って設けられた鍔22とが互いに連続して形成されている。鍔21、22、23は板状体2a、2bに対して実質的に垂直に配設され、かつ鍔21と22、鍔22と23が互いに垂直に配設されている。
【0022】
板状体2a、2bには、円弧状に立設された突起24が設けられている。補強基板モジュール1の組立後に当該円弧状の突起24に沿ってグラウトを注入するための注入孔が穿設される。注入孔は全ての補強基板モジュール1に開けられることはなく、円弧状の突起24には、注入されたグラウトが流れやすくするために、複数の切り欠き24aが形成されている。
【0023】
鍔21および鍔23には、それぞれボルトなどを挿通する孔Hおよび補強基板モジュール1同士が連結された後、グラウトが1つの補強基板モジュールから隣接する補強基板モジュール1に通るための孔GHが設けられている。当該孔Hにボルトを挿通し、一の補強基板モジュールと他の補強基板モジュールとをトンネルの周方向に連結し、ボルトとナットにより2つの補強基板モジュールを固着することができる。
【0024】
また、図1に示すように、鍔22には、角形の孔H2が設けられている。角形の孔H2を介してボルトナット等の固着手段により一の補強基板モジュールと他の補強基板モジュールとを補強されるべきトンネルの長さ方向に連結する。
【0025】
伸縮性板状体3と板状体2a、2bとは、図1に示されるように、蟻溝と蟻ほぞの関係で固着することができ、伸縮性板状体3から延びる突起部31を、板状体2a、2bに形成された凹嵌部26に嵌合させることにより固着することができる。なお、突起部を板状体2a、2b側に設け、凹嵌部を伸縮性板状体3側に設けることにより固着してもよい。
【0026】
伸縮性板状体3は、板状体2a、2bを射出成形金型内にインサートした後、樹脂を充填する、いわゆるインサート成形によって一体成形することができる。
【0027】
伸縮性板状体3および伸縮性板状体3から垂直方向に延びる鍔32には、図1に示すようにベローズが形成されている。
【0028】
鍔32は、トンネルの周方向に補強基板モジュール1が連結されたときに、一方の補強基板モジュール1の鍔32の凸部32aが、他方の補強基板モジュール1の鍔32の凹部32bに嵌まり込み、補強基板モジュール1を連結したときに、鍔32の凸部32aと凹部32bとが水密に連結され、防水効果を高めることができる。
【0029】
また、補強基板モジュール1の一方の鍔32の自由端縁には、図8(a)〜(c)に示すように、鍔32から補強基板モジュール1の外周側に張り出したフランジ部33が設けられ、2つの補強基板モジュール1を連結したときに、位置決めができるとともに、さらに水密に連結することができる。図8(b)および(c)に示すように、一方の鍔32と他方の鍔32とが接合され、グラウトが充填されると、一方の鍔に設けられたフランジ部33と他方の鍔32の上端縁との間の隙間(図8(b)参照)がグラウトの圧力により無くなり、フランジ部33と鍔32の上端縁とが密着する(図8(c)参照)ことにより、グラウトが漏れることを防ぐことができる。
【0030】
また、図8(a)に示すように、フランジ部33には、フランジ部33の湾曲部にスリットSLが形成されている。当該スリットSLにより、トンネルのカーブに沿って変形する伸縮性板状体3を伸縮しやすくしている。
【0031】
また、図2に示すように、参照符号Aで示す、板状体2a、2bのトンネルの内壁に取り付けられる側の面(以下、面Aという)には、鍔21、22、23に沿って矩形状の金属製の枠体4が設けられている。枠体4には、鍔21、22、23に設けられた孔H、H2、GHに対応する位置に、孔H3が設けられ、注入されるグラウトが通過するための孔GHが設けられている。また、金属製の枠体4には、一対の枠体4が対向する参照符号41で示す面Bに孔H4が設けられている。
【0032】
当該孔H4には、図7に示すように、一対の金属製の枠体4は、長ボルト5および当該長ボルト5に螺合するナット6により連結されている。当該長ボルト5およびナット6により、補強基板モジュール1の長手方向への過度な延びを制限することができる。
【0033】
図3(a)および(b)は、本発明の補強基板モジュールの他の形態を示す図である。図3(a)および(b)に示す補強基板モジュール10は、図1に示す補強基板モジュール1と同様に、板状体2a、2bと、当該板状体2a、2bとの間に介装されて固定された伸縮性のある伸縮性板状体3とから構成される。板状体2a、2bには、矩形状の板状体2a、2bの3つの側縁に鍔21、22、23が設けられ、鍔21、22、23は互いに連続して形成されている。
【0034】
図1の形態の補強基板モジュール1は、鍔21、22、23が板状体からほぼ垂直に延びているが、図3(a)および(b)に示す補強基板モジュール10の互いに対向する鍔21、23は、板状体2a、2bに対して鈍角をなし、外側に傾斜して延びている。板状体2a、2bの伸縮性板状体3が固着された辺に対向する鍔22は、板状体2a、2bに対して実質的に垂直に配設されている。図1に示す補強基板モジュールと同様に、鍔21、22、23は連続して一体に形成されている。図3bに示すように、補強基板モジュール10の鍔22の自由端縁22aと鍔21とがなす角θ2と、補強基板モジュール1の鍔22の自由端縁22aと鍔21とがなす角θ3とを合計した角度と、トンネルTの内壁面T1とT2とのなす角θ1が等しくなるように構成されている(θ2+θ3=θ1)。したがって、補強基板モジュール1と補強基板モジュール10とを連結することにより、トンネルTの内壁面に沿ったトンネルの補強構造を組み立てることができる。
【0035】
また、図3bに示すように、垂直方向または水平方向に組み立てられた補強基板モジュール1の鍔21、23と補強基板モジュール10の鍔21、23とが面接触し、隙間無く接合されるので、トンネル内壁の傾斜部分にも対応することができる。
【0036】
図4は、本発明の補強基板モジュールのさらに他の形態を示す図である。図4に示す補強基板モジュール11は、剛性板状体2a、2bおよび伸縮性板状体3とが、参照符号Xで示す補強基板モジュールの長手方向Lの軸X回りに略L字状に屈曲している。鍔21、22、23は、剛性板状体2a、2bの3辺から略垂直に配設され、互いに連続して一体に設けられている。
【0037】
補強基板モジュール11は、略L字状に折れ曲がった鍔22の自由端縁22aのなす角θ5と、トンネルTの内壁面T3とT4のなす角θ4とがほぼ等しくなるように構成されている(θ5=θ4)。したがって、補強基板モジュール1と補強基板モジュール11とを連結することにより、トンネルTの内壁の底面と側面に沿って、トンネルの補強構造を組み立てることができる。
【0038】
つぎに、本発明の補強構造を図5および6を用いて説明する。
【0039】
図5に示すように、補強構造100は、複数の補強基板モジュール1、10、11が、参照符号Pで示すトンネルの周方向Pおよび参照符号L2で示すトンネルの長手方向L2に沿って固着されている。
【0040】
図5に示すように、補強基板モジュール1、10、11の長手方向Lに沿った端面同士が、トンネルの周方向Pに複数接合され、環状の補強基板ブロックBLを形成している。複数の環状の補強基板ブロックBLがトンネルの長手方向L2に連結されることにより、補強構造100を形成している。
【0041】
図6および図7に示すように、トンネルTの底面側内壁面T3の周方向Pに沿って、補強基板モジュール1の鍔21と鍔23とが、ボルトナットB、N等の固着手段により固着され、補強基板ブロックBLの底面を構成する。また、トンネルTの側面側内壁面T1、T4の周方向Pに沿って、補強基板モジュール1の鍔21と鍔23とが、ボルトナットB、N等の固着手段により固着され、補強基板ブロックBLの側面を構成する。トンネルTの上面側内壁面T6の周方向Pに沿って、補強基板モジュール1の鍔21と鍔23とが、ボルトナットB、N等の固着手段により固着され、補強基板ブロックBLの上面を構成する。
【0042】
トンネルTの底面側内壁面T3と側面側内壁面T1、T4との境界部には、補強基板モジュール11が設けられ、底面側の補強基板モジュール1と側面側の補強基板モジュール1のそれぞれに固着され、補強基板ブロックBLの底面と側面とが連続して構成される。
【0043】
トンネルTの上面側内壁面T6と側面側内壁面T1、T4との境界部には、補強基板モジュール10が設けられ、上面側の補強基板モジュール1と側面側の補強基板モジュール1のそれぞれに固着され、補強基板ブロックBLの上面と側面とが連続して構成される。
【0044】
複数の補強基板モジュール1、10、11が周方向Pに沿って環状に連結され、当該環状に連結された複数の補強基板モジュール1、10、11が、トンネルTの長手方向L2に沿って互いにボルトナット等の固着手段により固着され、トンネルの内壁面T1〜T6と補強基板モジュール1、10、11との間にグラウト材が充填され、トンネルTの補強構造100となる。グラウト材としては、モルタルまたはコンクリート等の硬化性材料が採用される。
【0045】
つぎに本発明の補強構造100の工法を、図9を参照しながら説明する。
【0046】
(1)図9に示すように、既設の下水トンネルTが走る地下に向けて補強基板モジュール1の搬入穴H5および牽引機8が設置され、牽引するためのワイヤーWを通すための穴H6を掘削し、トンネルTを分断する。
【0047】
(2)掘削された穴の内部から、既設トンネルT内に、組み立てられた補強基板モジュール1を牽引するための先導管9が配置される。先導管9には、ワイヤーWが掛止され、牽引機8により穴H6側に牽引される。
【0048】
(3)つぎに、補強基板モジュール1が搬入穴H5内部に搬入され、穴H5の内部で補強基板モジュール1をトンネルTの周方向に沿ってボルトナット等の固着手段により接合する。
【0049】
補強基板モジュール1の搬入前、たとえば工場の出荷時に、予め補強基板モジュール1を穴H5に入る最大の大きさまで接合しておくことにより、下水が流れている穴の内部での作業量を減らすことができる。
【0050】
(4)トンネルTの周方向に沿って接合された補強基板モジュール1と牽引機8により牽引される先導管9とをボルトナット等の固着手段により固定する。(5)トンネルTの周方向に沿って組み立てた補強基板モジュール1をトンネルTの長手方向に沿って連結した後、牽引機8により先導管9に連結された補強基板モジュール1を牽引する。この作業を繰り返すことにより、搬入穴H5における作業だけで既設のトンネルT内に補強基板モジュール1が組み立てられた補強構造100を形成することができる。なお、補強基板モジュール1には、伸縮性板状体3が剛性板状体2a、2bの間に介装され、伸縮性板状体3がトンネルTの周方向に沿って環状に形成され、トンネルTの長手方向に沿って環状の伸縮部分が複数設けられるので、トンネルTが曲がっている場合でも、当該環状の伸縮部分により、補強基板モジュール1がトンネルTのカーブに沿って変形し、牽引がスムーズになるとともに、補強基板モジュール1が破壊されることがない。
【0051】
なお、一対の金属製の枠体4内に、板状体の鍔の高さよりも長い径のローラを設置することにより、トンネルTの内壁にローラの表面が接触し、補強基板モジュール1の牽引による移動をスムーズにすることができる。
【0052】
(6)既設トンネルTの入口側T7から出口側T8までの内面が、連結された補強基板モジュール1に覆われると、補強基板モジュール1の一部に設けられたグラウト注入孔25からグラウトGが注入され、注入されたグラウトGは、一の補強基板モジュール1から隣接する補強基板モジュール1に鍔21、22、23に設けられた孔GHを介して流入し(図7参照)、トンネルTの内壁部と補強基板モジュール1の間の空間に充填される(図6参照)。上記工程により、補強構造100が完成する。
【0053】
本発明の補強基板モジュール1は、2つの剛性板状体2a、2bの間に、伸縮性板状体3が介装されていることにより、それぞれの補強基板モジュールが、圧縮、引張、曲げに対して強く、トンネルT内のカーブ部分にも対応が可能であり、直線部分とカーブ部分で別の部材を用意する必要がない。また、トンネルT内に設置する際、補強基板モジュール1を組み立てて牽引する場合に、牽引されたそれぞれの補強基板モジュール1がカーブに応じて変形が可能であるので、牽引時に曲げ応力に耐えきれずに破壊される虞がない。
【符号の説明】
【0054】
1、10、11 補強基板モジュール
2a、2b 板状体
21、22、23 鍔
25グラウト注入孔
3 伸縮性板状体
32 鍔
33 フランジ部
4 金属製枠体
8 牽引機
9 先導管
100 補強構造
T トンネル
H5、H6 穴
W ワイヤー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性を有する合成樹脂からなる2つの剛性板状体の間に伸縮性を有する合成樹脂からなる伸縮性板状体が固着されたトンネルの内壁に設けられる補強基板モジュールであって、
前記2つの剛性板状体の側縁に鍔が設けられ、
前記2つの剛性板状体の前記トンネルの内壁に取り付けられる面と対向する面に、前記鍔に沿って金属製の枠体が設けられてなる
補強基板モジュール。
【請求項2】
前記剛性板状体が矩形状を呈し、
前記矩形状の剛性板状体の、伸縮性板状体が固着された辺以外の3辺に鍔が設けられ、該鍔が実質的に前記剛性板状体に垂直に配設され、
隣り合う鍔が互いに垂直かつ一体的に形成されてなることを特徴とする請求項1記載の補強基板モジュール。
【請求項3】
前記前記剛性板状体が矩形状を呈し、
前記矩形状の剛性板状体の、伸縮性板状体が固着された辺以外の3辺に鍔が設けられ、
前記剛性板状体の伸縮性板状体が固着された辺に対向する鍔が、実質的に前記剛性板状体に垂直に配設され、
残り2つの互いに対向する鍔が、前記剛性板状体に対して鈍角をなすように配設されてなることを特徴とする請求項1記載の補強基板モジュール。
【請求項4】
剛性板状体の、伸縮性板状体が固着された辺以外の3辺に鍔が設けられ、該鍔が実質的に前記剛性板状体に垂直に配設され、
前記剛性板状体および伸縮性板状体が、前記補強基板モジュールの長手方向の軸回りに略L字状に屈曲して形成されてなることを特徴とする請求項1記載の補強基板モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4記載の補強基板モジュールを複数備え、
当該複数の補強基板モジュールが、前記鍔を介して互いに固着手段により固着されてなり、
前記複数の補強基板モジュールが、グラウト材を介して前記トンネルの内壁面に取り付けられてなるトンネルの補強構造。
【請求項1】
剛性を有する合成樹脂からなる2つの剛性板状体の間に伸縮性を有する合成樹脂からなる伸縮性板状体が固着されたトンネルの内壁に設けられる補強基板モジュールであって、
前記2つの剛性板状体の側縁に鍔が設けられ、
前記2つの剛性板状体の前記トンネルの内壁に取り付けられる面と対向する面に、前記鍔に沿って金属製の枠体が設けられてなる
補強基板モジュール。
【請求項2】
前記剛性板状体が矩形状を呈し、
前記矩形状の剛性板状体の、伸縮性板状体が固着された辺以外の3辺に鍔が設けられ、該鍔が実質的に前記剛性板状体に垂直に配設され、
隣り合う鍔が互いに垂直かつ一体的に形成されてなることを特徴とする請求項1記載の補強基板モジュール。
【請求項3】
前記前記剛性板状体が矩形状を呈し、
前記矩形状の剛性板状体の、伸縮性板状体が固着された辺以外の3辺に鍔が設けられ、
前記剛性板状体の伸縮性板状体が固着された辺に対向する鍔が、実質的に前記剛性板状体に垂直に配設され、
残り2つの互いに対向する鍔が、前記剛性板状体に対して鈍角をなすように配設されてなることを特徴とする請求項1記載の補強基板モジュール。
【請求項4】
剛性板状体の、伸縮性板状体が固着された辺以外の3辺に鍔が設けられ、該鍔が実質的に前記剛性板状体に垂直に配設され、
前記剛性板状体および伸縮性板状体が、前記補強基板モジュールの長手方向の軸回りに略L字状に屈曲して形成されてなることを特徴とする請求項1記載の補強基板モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4記載の補強基板モジュールを複数備え、
当該複数の補強基板モジュールが、前記鍔を介して互いに固着手段により固着されてなり、
前記複数の補強基板モジュールが、グラウト材を介して前記トンネルの内壁面に取り付けられてなるトンネルの補強構造。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−184929(P2011−184929A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50619(P2010−50619)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000100595)アァルピィ東プラ株式会社 (27)
【出願人】(510063719)明石セミシールド建設株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000100595)アァルピィ東プラ株式会社 (27)
【出願人】(510063719)明石セミシールド建設株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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