説明

補強材の敷設方法およびその方法により構築される構造物

【課題】簡素な構成で、引き抜き抵抗力を増大させ、しかも、施工作業の効率化を図る。
【解決手段】第1の工程S1で、地盤3側の被構築場所4に盛土5Aを投入し、この盛土5Aを低い一面6とこの低い一面6と段差7を介して高低差を有する高い他面8とに形成し、第2の工程S2で、第1の工程S1で形成されたこれら複数の面6、8と段差7とに補強材9Aを敷設する。第2の工程S2終了後、これら第1第2の工程S1、S2を一度繰り返した後、最後に敷設された補強材9Bと盛土5Bの露出面上に盛土5Cを投入して造成を完了する第3の工程S3とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオテキスタイル等の補強材を用いて構築される補強材の敷設方法およびその方法により構築される構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、盛土の層にジオテキスタイル等の引っ張り補強材を用い擁壁や土留め壁として構築される土構造物は、盛土内に引っ張り補強材が水平に敷設され、盛土の安定性を高めている。一方、補強材に十分な敷設長さが確保できない場合、水平方向の地震力によって壁体が壁面露出側の前方に押し出されると、引っ張り補強材が盛土内から引き抜かれ、土構造物の崩壊を引き起こすおそれがある。このような課題を解消するため、従来、盛土の各層の上面を凹凸面状に形成し、この盛土の凹凸上面に補強材を凹部に空間を保持した状態で敷設し、この補強材の上に盛土を撒き出し、転圧して補強材を緊張せしめた状態で盛土の凹凸面に添わせ、補強材を凹凸面状に起伏させて埋設するようにした工法が提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3773495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来の工法では、盛土内に引っ張り補強材を凹凸状に埋設しているので、地表面から引っ張り補強材を埋設した面までの平均的な土被り厚は、水平に敷設した場合と比較してほぼ同じになるため、引き抜き抵抗力の増加は、凹凸形状による支圧効果に限定されるという問題がある。特に、土被り厚が小さい場合は、形状が凹凸であっても、土被り厚の方が引き抜き抵抗力に対して支配的な要因となるので、十分な引き抜き抵抗力を確保できないという問題がある。また、投入された盛土を凹凸形状に形成するためには、一旦、転圧した地盤面を筋状に複数箇所平行に掘削するか、畝状に盛り立てて凹凸形状に盛土面を形成しなければならず、施工作業に時間とコストがかかるという問題がある。
また、ジオテキスタイル等を用いた補強土工法は、土質材料の強度特性を改善できるため、従来の重力式擁壁等の抗土圧構造物に比べてはるかに合理的な設計が可能になり、常時だけでなく地震時の安定性に優れる。しかしながら、山間地域の腹付け盛土、既設土構造物の耐震化を図る際に、所定の安定性を得るためには、大規模な掘削工事を実施して十分な補強敷設長を確保する必要があった。このため上記のような土構造物に対しては用地の制約からジオテキスタイルを用いにくいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡素な構成で、土被り厚を厚くとることができるとともに支圧効果を高めて引き抜き抵抗力を増大させ、しかも、施工作業の効率化を図ることができる補強材の敷設方法とその方法により構築される構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る補強材の敷設方法は、地盤側の面に盛土を投入し、一面とこの一面と段差を介して高低差を有する他面とに形成する第1の工程と、形成されたこれら複数の面と段差とに補強材を敷設する第2の工程と、敷設された補強材上に盛土を投入して造成を完了する第3の工程とを有するようにしたことを特徴としている。
【0007】
本発明の請求項1に係る補強材の敷設方法では、地盤側の面に盛土を投入し、一面とこの一面と段差を介して高低差を有する他面とに形成する第1の工程と、形成されたこれら複数の面と段差とに補強材を敷設する第2の工程と、敷設された補強材上に盛土を投入して造成を完了する第3の工程とを有するようにしたことにより、補強材の土被り厚が厚くなり、補強材に作用する面圧が増大し、面圧の増大に応じて引き抜き抵抗力が大きくなる。しかも、補強材は段差を介して高低差のある面を有して埋設されているので、補強材に引き抜き力が加えられると、補強材の段差部の上下方向から支圧が生じ、引き抜き抵抗力はさらに増大する。また、補強材の敷設には投入された盛土を高低差を有する少なくとも二面に整地しさえすればよく、通常の盛土施工工程で容易に実施できる。そのため、施工作業が効率化される。
【0008】
本発明の請求項2に係る補強材の敷設方法は、地盤側が、盛土内に補強材を水平に埋設して造成地を途中まで造成した半造成地であることを特徴としている。
【0009】
本発明の請求項2に係る補強材の敷設方法では、地盤側が、盛土内に補強材を水平に埋設して造成地を途中まで造成した半造成地であることにより、構造物構築にあたり盛土の造成のうち下側の盛土層を、盛土整地面を平坦に形成して補強材を敷設し、下側盛土層内に補強材を水平に敷設する従来の工法で、下側盛土層を構築し、上側盛土層については段差を介して高低差面を有する補強材を埋設して、求められる引き抜き抵抗力を確保することができる。このため、下側盛土層の造成にあたり、盛土の全面を平坦に整地し、上側盛土層の造成時のみ投入された盛土を高低差を有する少なくとも二面に整地すればよいので、施工作業が効率化される。
【0010】
本発明の請求項3に係る補強材の敷設方法は、地盤側が、盛土内に補強材が水平に埋設された完成済み造成地の上側が掘削され、盛土または盛土と水平に埋設された補強材とが除去されて残された下側造成地であることを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項3に係る補強材の敷設方法では、地盤側が、盛土内に補強材が水平に埋設された完成済み造成地の上側が掘削され、盛土または盛土と水平に埋設された補強材とが除去されて残された下側造成地であることにより、従来の工法により一旦補強材が水平に埋設された既存の完成済み造成地であっても、当該既存の完成済み造成地に求められる引き抜き抵抗力に応じて、完成済み造成地の上側を掘削して掘削され除去された空間に、段差を介して高低差面を有する補強材が埋設された盛土層を形成することができるので、十分な引き抜き抵抗力が確保されていない既存の完成済み造成地であっても、一部の施工作業で求められる引き抜き抵抗力が確保された造成地に造り変えることができる。
【0012】
本発明の請求項4に係る補強材の敷設方法は、第2の工程後、盛土の投入と高低差面の形成と補強材の敷設とを順に繰り返し、複数の補強材の層を形成するようにしたことを特徴としている。
【0013】
本発明の請求項4に係る補強材の敷設方法では、第2の工程後、盛土の投入と高低差面の形成と補強材の敷設とを順に繰り返し、複数の補強材の層を形成するようにしたことにより、各盛土層内に複数の補強材の層が形成されるので補強材毎に引き抜き抵抗力を確保することができ、引き抜き抵抗力が増大する。
【0014】
本発明の請求項5に係る補強材の敷設方法は、盛土は、段差を介して高低差を有する2以上の面に形成されるようにしたことを特徴としている。
【0015】
本発明の請求項5に係る補強材の敷設方法では、盛土は、段差を介して高低差を有する2以上の面に形成されるようにしたことにより、補強材の引き抜き起点から端部までの敷設長と敷設面とが制限される空間的な制約があったり狭隘な被構築場所であっても、段差部を増やして支圧効果を増大させることができるので、求められる引き抜き抵抗力を確保することができる。
【0016】
本発明の請求項6に係る補強材の敷設方法は、投入された盛土は転圧された後、補強材が敷設されるようにしたことを特徴としている。
【0017】
本発明の請求項6に係る補強材の敷設方法では、投入された盛土は転圧された後、補強材が敷設されるようにしたことにより、補強材は転圧面に敷設されるので、補強材の高低差面を乱れることのない均一な面とすることができ、予め計算された引き抜き抵抗力の性能を確保することができる。
【0018】
本発明の請求項7に係る補強材の敷設方法は、地盤側の面を段差を介して高低差を有する複数の面に形成するか、または予め地盤側の面が段差を介して高低差を有する複数の面を有しているようにしたことを特徴としている。
【0019】
本発明の請求項7に係る補強材の敷設方法では、地盤側の面を段差を介して高低差を有する複数の面に形成するか、または予め地盤側の面が段差を介して高低差を有する複数の面を有しているようにしたことにより、構築すべき構造物に高さの制約がある場合、地盤側に高低差面を形成すると盛土層厚を薄くして引き抜き抵抗力を確保することができる。また、予め地盤側の面が段差を介して高低差を有する複数の面を有している場合、その面に応じて盛土層を形成することができるので施工プランの自由度が向上する。さらに、地盤側が、整地された地盤、未整地の地盤、半造成地または上側が掘削された既存の完成済み造成地であっても、一部を掘削するか、一部に盛土を投入して整地するだけで、引き抜き抵抗力を確保した構造物が得られる。
【0020】
本発明の請求項8に係る補強材の敷設方法は、地盤側上面の高低差面または投入される盛土上面の高低差面はそれぞれ平坦に形成されるようにしたことを特徴としている。
【0021】
本発明の請求項8に係る補強材の敷設方法では、地盤側上面の高低差面または投入される盛土上面の高低差面はそれぞれ平坦に形成されるようにしたことにより、予め計算された引き抜き抵抗力の性能を確保することができるとともに、複雑な施工工程が必要ないので施工作業が効率化される。
【0022】
本発明の請求項9に係る補強材の敷設方法は、予め形成された壁内に盛土が投入されるかまたは盛土の投入に応じて壁が形成されるようにしたことを特徴としている。
【0023】
本発明の請求項9に係る補強材の敷設方法では、予め形成された壁内に盛土が投入されるかまたは盛土の投入に応じて壁が形成されるようにしたことにより、壁を必要とする構造物、すなわち、水路、道路の擁壁や河川やため池等の水域の堤体に適用することができ、構造物の耐震性が向上するので、構造物の重厚長大化を避けて小型化、コンパクト化が図れる。
【0024】
本発明の請求項10に係る補強材の敷設方法は、補強材の壁側端部は壁に接続されるようにしたことを特徴としている。
【0025】
本発明の請求項10に係る補強材の敷設方法では、補強材の壁側端部は壁に接続されるようにしたことにより、壁の転倒を阻止することができ、構造物の崩壊や破損を免れる。
【0026】
本発明の請求項11に係る補強材の敷設方法は、盛土は壁側の面が他の面より高く形成されるようにしたことを特徴としている。
【0027】
本発明の請求項11に係る補強材の敷設方法では、盛土は壁側の面が他の面より高く形成されるようにしたことにより、引き抜き力発生側に対し支圧が下方から厚く形成された土被りの方向にかかりやすいので、引き抜き抵抗力を増大させて壁を安定化させるとともに補強材の敷設長を短縮化することができる。
【0028】
本発明の請求項12に係る補強材の敷設方法は、第1の工程で、地盤側に建物の基礎を築造した後、盛土を投入し、第2の工程で、補強材を基礎に接続して敷設するようにしたことを特徴としている。
【0029】
本発明の請求項12に係る補強材の敷設方法では、第1の工程で、地盤側に建物の基礎を築造した後、盛土を投入し、第2の工程で、補強材を基礎に接続して敷設するようにしたことにより、築造予定の建物にも適用することができ、地震時などに建物が周辺地盤に対して変位するのを防ぎ、地盤と建物の相対変位の発生を抑制することにより各種ライフラインの破損が防止される。
【0030】
本発明の請求項13に係る補強材の敷設方法は、第1の工程で、既に築造されている建物の基礎回りの地盤を掘削して基礎の地中側部分を露出させた後、盛土を投入し、第2の工程で、補強材を露出された基礎の地中部分に接続して敷設するようにしたことを特徴としている。
【0031】
本発明の請求項13に係る補強材の敷設方法では、第1の工程で、既に築造されている建物の基礎回りの地盤を掘削して基礎の地中側部分を露出させた後、盛土を投入し、第2の工程で、補強材を露出された基礎の地中部分に接続して敷設するようにしたことにより、既に築造された建物にも適用することができ、建物が周辺地盤に対して変位するのを防ぐことができる。
【0032】
本発明の請求項14に係る補強材の敷設方法は、第1の工程で、地盤側に地中埋設物を配置した後、盛土を投入し、第2の工程で、補強材を地中埋設物に接続して敷設するようにしたことを特徴としている。
【0033】
本発明の請求項14に係る補強材の敷設方法では、第1の工程で、地盤側に地中埋設物を配置した後、盛土を投入し、第2の工程で、補強材を地中埋設物に接続して敷設するようにしたことにより、地中埋設物にも適用することができ、たとえ地中埋設物が地盤中の水圧によりスラスト力を受けても、スラスト抵抗力を確保することができるので、地中埋設物は安定化される。また、地震時などに地中埋設物が周辺地盤に対して変位するのを防ぐことができる。
【0034】
本発明の請求項15に係る補強材の敷設方法は、第1の工程で、地中埋設物に補強材を接続し、地盤側に補強材が接続された地中埋設物を配置した後、補強材を折り返して盛土投入面から取り除いて盛土を投入し、第2の工程で、補強材を投入された盛土の高低差面に敷設することを特徴としている。
【0035】
本発明の請求項15に係る補強材の敷設方法では、第1の工程で、地中埋設物に補強材を接続し、地盤側に補強材が接続された地中埋設物を配置した後、補強材を折り返して盛土投入面から取り除いて盛土を投入し、第2の工程で、補強材を投入された盛土の高低差面に敷設するようにしたことにより、効率よく作業を行うことができる。
【0036】
本発明の請求項16に係る補強材の敷設方法は、第1の工程で、既に埋設されている地中埋設物回りの地盤を掘削して地中埋設物を露出させた後、盛土を投入し、第2の工程で、補強材を露出された地中埋設物に接続して敷設するようにしたことを特徴としている。
【0037】
本発明の請求項16に係る補強材の敷設方法では、第1の工程で、既に埋設されている地中埋設物回りの地盤を掘削して地中埋設物を露出させた後、盛土を投入し、第2の工程で、補強材を露出された地中埋設物に接続して敷設するようにしたことにより、既に埋設された地中埋設物にも適用することができ、たとえ地中埋設物が地盤中の水圧によりスラスト力を受けても、スラスト抵抗力を確保することができるので、地中埋設物は安定化される。また、地震時などに地中埋設物が周辺地盤に対して変位するのを防ぐことができる。
【0038】
本発明の請求項17に係る補強材の敷設方法は、地中埋設物が埋設管であることを特徴としている。
【0039】
本発明の請求項18に係る補強材の敷設方法は、盛土の段差は、補強材に求められる引き抜き抵抗力の発生方向に対して直角方向に形成されるようにしたことを特徴としている。
【0040】
本発明の請求項18に係る補強材の敷設方法では、盛土の段差は、補強材に求められる引き抜き抵抗力の発生方向に対して直角方向に形成されるようにしたことにより、引き抜き力に対して引き抜き抵抗力が最も効果的に発揮される。
【0041】
本発明の請求項19に係る補強材の敷設方法は、盛土の段差は、補強材に求められる引き抜き抵抗力の発生方向に対して盛土の各層毎に上下方向の位置をほぼ合致させて形成されるようにしたことを特徴としている。
【0042】
本発明の請求項19に係る補強材の敷設方法では、盛土の段差は、補強材に求められる引き抜き抵抗力の発生方向に対して盛土の各層毎に上下方向の位置をほぼ合致させて形成されるようにしたことにより、引き抜き方向に対し上下で均一な引き抜き抵抗力を発揮させる。
【0043】
本発明の請求項20に係る補強材の敷設方法は、盛土の段差は、補強材に求められる引き抜き抵抗力の発生方向に対して盛土の各層毎に上下方向の位置を異ならせて形成されるようにしたことを特徴としている。
【0044】
本発明の請求項20に係る補強材の敷設方法では、盛土の段差は、補強材に求められる引き抜き抵抗力の発生方向に対して盛土の各層毎に上下方向の位置を異ならせて形成されるようにしたことにより、引き抜き方向に対し上下で異なる引き抜き抵抗力を発揮させるので、被構築場所の現況に応じて上下方向で引き抜き抵抗力を異ならせることができ、設計施工の自由度を向上させることができる。
【0045】
本発明の請求項21に係る補強材の敷設方法は、段差は傾斜して形成されるとともに段差と高低差面との間は断面円弧状の湾曲面に形成されるようにしたことを特徴としている。
【0046】
本発明の請求項21に係る補強材の敷設方法では、段差は傾斜して形成されるとともに段差と高低差面との間は断面円弧状の湾曲面に形成されるようにしたことにより、引き抜き力発生時、補強材の段差部と高低差面との間に密着した盛土に面圧がかかっても分散化して均一にかかるので局所的に圧力が集中することがない。このため、補強材の段差部と高低差面との間に密着した盛土が変形することがなく、引き抜けに対する剛性が低下することなく保持される。
【0047】
本発明の請求項22に係る補強材の敷設方法は、設計プランに基づいて予め構築される構造物の引き抜き抵抗力を計算により導き、導かれた引き抜き抵抗力に基づいて段差の構造と補強材の敷設長と埋設される補強材の層数とを決定するようにしたことを特徴としている。
【0048】
本発明の請求項22に係る補強材の敷設方法では、設計プランに基づいて予め構築される構造物の引き抜き抵抗力を計算により導き、導かれた引き抜き抵抗力に基づいて段差の構造と補強材の敷設長と埋設される補強材の層数とを決定するようにしたことにより、構造物に適した引き抜き抵抗力が導かれるので、段差の構造をコンパクトにしたり、補強材の敷設長を短くしたり、埋設される補強材の枚数を少なくすることができ、作業効率が向上するとともにコストが削減される。
【0049】
本発明の請求項23に係る補強材の敷設方法は、地盤側の面には、整地または未整地の地盤面、掘削された地盤面、盛土が投入された盛土面、盛土が転圧された転圧面または堆積物が堆積した堆積面のうちいずれかが含まれるようにしたことを特徴としている。
【0050】
本発明の請求項23に係る補強材の敷設方法では、地盤側の面には、整地または未整地の地盤面、掘削された地盤面、盛土が投入された盛土面、盛土が転圧された転圧面または堆積物が堆積した堆積面のうちいずれかが含まれるようにしたことにより、構造物の構築の適用範囲が拡大するとともに、洪水や土石流流出等の被害を受けた被災地の復旧にも対応することができる。
【0051】
本発明の請求項24に係る補強材の敷設方法は、盛土には、山土、真砂土、砂利、バラスト、粘性土、石、礫、土壌改良材、破砕材、火山灰、火山礫、鉱滓または残渣のうちいずれかが含まれることを特徴としている。
【0052】
本発明の請求項24に係る補強材の敷設方法では、盛土には、山土、真砂土、砂利、バラスト、粘性土、石、礫、土壌改良材、破砕材、火山灰、火山礫、鉱滓または残渣のうちいずれかが含まれることにより、水路や道路、鉄道等のインフラ用構造物だけでなく、農地や廃棄物の貯留場所にも適用範囲を拡大することができる。
【0053】
本発明の請求項25に係る補強材の敷設方法は、補強材は、金属製帯体、面状に形成された高分子材料のジオグリッド、ジオテキスタイル、ジオシンセンティックス、樹脂シートまたは不織布のうち少なくともいずれか1から構成されることを特徴としている。
【0054】
本発明の請求項25に係る補強材の敷設方法では、補強材は、金属製帯体、面状に形成された高分子材料のジオグリッド、ジオテキスタイル、ジオシンセンティックス、樹脂シートまたは不織布のうち少なくともいずれか1から構成されることにより、補強材を求められる引き抜き抵抗力に応じて適宜選択して使用することができ、設計プランの自由度が増す。
【0055】
本発明の請求項26係る構造物は、請求項1ないし25のうちいずれか1の敷設方法により構築されるようにしたことを特徴としている。
【0056】
本発明の請求項26に係る構造物では、請求項1ないし25のうちいずれか1の敷設方法により構築されるようにしたことにより、構造物は、補強材の土被り厚を厚くすることができ、補強材に作用する面圧が増大し、面圧の増大に応じて引き抜き抵抗力が大きくなる。しかも、補強材は段差を介して高低差のある面に埋設されているので、補強材に引き抜き力が加えられると、補強材の段差部の上下方向から支圧が生じ、引き抜き抵抗力はさらに増大する。また、補強材の敷設には投入された盛土を高低差を有する少なくとも二面に整地しさえすればよく、施工作業が効率化される。さらに、構造物は、請求項2ないし19のうちいずれか1に記載の構成に基づく作用を果たす。
【発明の効果】
【0057】
本発明の請求項1に係る補強材の敷設方法は、地盤側の面に盛土を投入し、一面とこの一面と段差を介して高低差を有する他面とに形成する第1の工程と、形成されたこれら複数の面と段差とに補強材を敷設する第2の工程と、敷設された補強材上に盛土を投入して造成を完了する第3の工程とを有するようにしたので、容易に引き抜き抵抗力を増大させることができ、しかも、施工作業が効率化されコストダウンを図ることができる。
【0058】
本発明の請求項26に係る構造物は、請求項1ないし25のうちいずれか1の敷設方法により構築されるようにしたので、簡素な構造で引き抜き抵抗力を増大させることができ、構造物を小型化コンパクト化することができ、しかも、施工作業が効率化されコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1の(A)ないし(E)はそれぞれ、本発明の第1の実施例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物を順を追って示す説明図である。(実施例1)
【図2】図2は図1の補強材の敷設方法により段差を設けて高低差面が形成された盛土に補強材を敷設した状態を示す説明図である。
【図3】図3は図1の補強材の敷設方法により構築された盛土造成構造について補強材に引き抜き力がかかった場合、引き抜き力により面圧が発生する部位を示す説明図である。
【図4】図4の(A)、(B)はそれぞれ、図1の補強材の敷設方法により構築された構造物について補強材に引き抜き力がかかった場合、引き抜き力により支圧が発生する部位を示す説明図および支圧の向きを示す説明図である。
【図5】図5は図1の構築方法により構築される構造物の補強材の引き抜き抵抗力を算定するにあたり用いられるモデルである。
【図6】図6は図5のモデルについて、土被り0.5mの場合について土中に敷設されたジオテキスタイルの境界条件に基づいて計算条件を当てはめた場合の段差敷設による引き抜き抵抗力の算定結果を示すグラフである。
【図7】図7は図5のモデルについて、土被り2.0mの場合について土中に敷設されたジオテキスタイルの境界条件に基づいて計算条件を当てはめた場合の段差敷設による引き抜き抵抗力の算定結果を示すグラフである。
【図8】図8の(A)ないし(E)はそれぞれ、本発明の第2の実施例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物を順を追って示す説明図である。(実施例2)
【図9】図9の(A)ないし(E)はそれぞれ、本発明の第3の実施例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物を順を追って示す説明図である。(実施例3)
【図10】図10は本発明の第3の実施例について、引き抜き抵抗力を導いて補強材の敷設長を計算するためのコンクリート水路のモデルを示す説明図である。(実施例4)
【図11】図11の(A)、(B)はそれぞれ、図10のモデルについて、土中に敷設されたジオテキスタイルの境界条件を示す説明図およびこの境界条件に基づいて計算条件を当てはめた場合の段差敷設による引き抜き抵抗力の算定結果を示すグラフである。
【図12】図12は本発明の第4の実施例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物を示す説明図である。(実施例5)
【図13】図13は本発明の第5の実施例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物を示す説明図である。(実施例6)
【図14】図14の(A)ないし(D)はそれぞれ、本発明の第3の実施例の第1の変形例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物を順を追って示す説明図である。(実施例7)
【図15】図15の(A)ないし(E)はそれぞれ、本発明の第3の実施例の第2の変形例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物、本発明の第3の実施例の第3の変形例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物、本発明の第3の実施例の第4の変形例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物、本発明の第3の実施例の第5の変形例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物および本発明の第3の実施例の第6の変形例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物を示す説明図である。(実施例8)
【図16】図16は、本発明の第6の実施例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物を示す説明図である。(実施例9)
【図17】図17は、本発明の第7の実施例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物を示す説明図である。(実施例10)
【図18】図18は、一般の埋設管において地盤中の水圧により埋設管に作用するスラスト力に対し、コンクリートを巻き立ててスラスト抵抗力を確保する例を示す説明図である。
【図19】図19の(A)、(B)はそれぞれ、本発明の第8の実施例に係る補強材の敷設方法により埋設管に補強材を接続して埋設された状態を示す説明図である。(実施例11)(実施例12)
【図20】図20の(A)は、図19の構造物を示す断面図、図20の(B)、(C)、(D)はそれぞれ、埋設管と補強材の接続を示す説明図である。
【図21】図21の(A)ないし(D)はそれぞれ、本発明の第9の実施例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物を順を追って示す説明図である。(実施例13)
【図22】図22の(A)ないし(E)はそれぞれ、本発明の第10の実施例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物を順を追って示す示す説明図である。(実施例14)
【図23】図23の(A)ないし(E)はそれぞれ、本発明の第11の実施例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物を順を追って示す示す説明図である。(実施例15)
【発明を実施するための形態】
【0060】
簡素な構成で、引き抜き抵抗力を増大させ、しかも、施工作業の効率化を図るという目的を、地盤側の面に投入される盛土を、一面とこの一面と段差を介して高低差を有する他面とに形成する第1の工程と、第1の工程で形成されたこれら複数の面と段差とに補強材を敷設する第2の工程と、第2の工程終了後、一度または一度以上第1第2の工程を繰り返した後、第2の工程で敷設された補強材と投入された盛土の露出面上に盛土を投入して造成を完了する第3の工程とを有するようにしたことにより実現した。
【実施例1】
【0061】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1の(A)ないし(E)はそれぞれ、本発明の第1の実施例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物を順を追って示す説明図である。なお、本明細書中、構造物とは盛土造成構造と同義であり、水路や道路、鉄道、パイプライン、宅地、河川やため池の堤体等のインフラ用構造物だけでなく、住宅の造成地、農地、廃棄物や残滓、火山灰の貯留場所、崖地や崖地崩壊箇所の補強構造等が含まれる。本実施例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物2は、図1の(A)に示すように、地盤3上の被構築場所(地盤側の面)4に構築される。地盤3は、整地された地盤であっても未整地の地盤であってもよい。以下、同一符号は同一または相当部分を示す。
【0062】
次に、図1の(B)に示すように、この被構築場所4に盛土5Aを投入し、この盛土5を低い一面6とこの一面6と段差(段差部)7を介して高低差を有する高い他面8とに形成する(第1の工程S1)。一面6と他面8はそれぞれ平坦に形成され、転圧装置RMにより転圧されるようになっている。すなわち、施工する際、裏込め材の撒き出し厚に差をつけ、転圧装置RMで盛土表面の仕上がり高さを変えるようにしている。段差7は、図2に示すように、高さH1が30〜80cmの範囲で、傾斜角度αが30°〜60°の範囲で緩やかに傾斜して形成されるようになっている。また、段差7は、段差面と各高低差面6、8との間の接続部7A、7Bが曲率半径の大きい断面円弧状の緩やかな湾曲面に形成される。さらに、段差7は引き抜き力Fが加わる方向に対して直角に延長される。ここでいう引き抜き力Fは、盛土のすべりや地震による水平方向の慣性力の発生によって生じるものをいう。
【0063】
次に、図1の(C)に示すように、盛土5Aの段差7と高低差面6、8に柔軟性を有する第1の補強材(引っ張り補強材)9Aを敷設する(第2の工程S2)。第1の補強材9Aは、金属製帯体、面状に形成された高分子材料のジオグリッド、ジオテキスタイル、ジオシンセンティックス、樹脂シートまたは不織布のうち少なくともいずれか1から構成される。第1の補強材9Aは、構造物が壁を備えている場合、壁側端部が壁に接続されるようになっている。この補強材9Aは、曲げには抵抗しないため、柔軟性を備え単位面積当たり所定の重量を有しているので、盛土5Aの段差7と高低差面6、8とに密接して敷設され、盛土5Aの低い一面6に接する部位が低位平坦部10、盛土5Aの高い他面8に接する部位が高位平坦部11、段差7に接する部位が傾斜部12となっている。
【0064】
次に、図1の(D)に示すように、盛土5Aの段差7と高低差面6、8とに沿って敷設された第1の補強材9Aの上面に、盛土5Bを投入してこの盛土5Bを低い一面6とこの一面6と段差7を介して高低差を有する高い他面8とを形成する。一面6と他面8は平坦に整地され転圧されるようになっている。盛土5Bの段差7は、下側の盛土層5Aの段差7の上方に形成され、上下方向の位置が合致して形成されるようになっている。すなわち、どの段差7も引き抜き力Fが加わる方向に対して直角に延長され、しかも、上下方向同一位置に形成される。そして、形成された盛土5Bの段差7と高低差面6、8に第1の補強材9Aと同じ材質の第2の補強材9Bを敷設する。そして最後に、第2の補強材9Bに盛土5Cを投入して平坦に整地して転圧し構造物(盛土造成構造)2を完成する(第3の工程S3)。第1の工程S1および第3の工程S3で投入される盛土5A〜5Cは、同じ材質の盛土であって、例えば、山土、真砂土、砂利、バラスト、粘性土、石、礫、土壌改良材、破砕材、火山灰、火山礫、鉱滓または残渣のうちいずれかが含まれる。また、これら、盛土5A〜5Cは、山土、真砂土、砂利、バラスト、粘性土、石、礫、土壌改良材、破砕材、火山灰、火山礫、鉱滓または残渣のうちいずれか一部を含むようにしてもよいし、各盛土5A、5B、5C毎に材質を変えるようにしてもよい。また、転圧は一般に振動コンパクタ、ローラ、ランマーなどが用いられ、平坦に撒き出した土質材料を鉛直方向に転圧し、土質材料を締め固める方法が採られる。
【0065】
次に、上記第1の実施例にかかる補強材の敷設方法により構築された構造物2の作用について説明する。本実施例に係る構築方法により構築された構造物2は、第1の工程S1で、地盤3の被構築場所4に投入される盛土5Aを、一面6とこの一面6と段差7を介して高低差を有する他面8とに平坦に形成して転圧し、第2の工程S2で、これら各面6、8と段差7とに第1の補強材9Aを敷設し、第2の工程S2の後、敷設された第1の補強材9A上に盛土5Bを投入して段差7を有する高低差面6、8を平坦に形成して転圧し、転圧されて形成された盛土5Bの高低差面6、8と段差7とに第2の補強材9Bを敷設し、第3の工程S3で、第2の補強材9Bに盛土5Cを投入して平坦に形成して転圧し、盛土の造成を完了するようになっている。このため、構造物2は、図1の(E)に示すように、補強材9A、9Bが、地盤3の上に形成された各盛土層5A〜5C間に上下2層に埋設され、各補強材9A、9Bは、盛土5A、5Bの高低差のある各面6、8にそれぞれ対応した低位平坦部10と高位平坦部11と、段差7に対応した傾斜部12とが形作られることになる。従って、上下の補強材9A、9Bの低位平坦部10上の盛土5B、5Cの土被りの厚さ(Wd1+Wd2)が高位平坦部11上の盛土5B、5Cの土被りの厚さ(Ws1+Ws2)より厚くなっている。
【0066】
このため、かかる構築方法により構築された構造物2は、図4の(A)に示すように、水平方向の引き抜き力Fがかかった場合、補強材9A、9Bにはそれぞれ、(1)補強材の敷設方向と一致する方向(本実施例の場合、水平方向)に土との摩擦により引き抜き抵抗力Tが生じる(摩擦効果)。(2)さらに、盛土5A、5Bに段差7を付けて地中深くに補強材9A、9Bの一部(低位平坦部10)を埋設することにより土被り厚が大きくなり、引き抜き抵抗力Tが増大する(土被り厚増大効果)。(3)しかも、引き抜き力Fが大きくなればなるほど、段差7の部分で土5A〜5Cと補強材9A、9Bの面(傾斜部12の両面)との面圧が増して受働土圧(支圧)が発生し、より大きな引き抜き抵抗力Tが発揮される(支圧効果、図4の(B)参照)。このため、アンカープレートや支圧板の設置も不要であるばかりでなく、より大きな引き抜き抵抗力Tを得られる分、補強材9A、9Bの敷設長を短縮することができる。このように、本実施例に係る補強材の敷設方法およびその方法により構築された構造物2では、補強材の土被り厚が厚くなり、補強材に作用する面圧が増大し、面圧の増大に応じて引き抜き抵抗力が大きくなり、しかも、補強材は段差を介して高低差のある面に埋設されているので、補強材に引き抜き力が加えられると、補強材の段差部の上下方向から支圧が生じ、引き抜き抵抗力はさらに増大する。また、補強材の敷設には投入された盛土を高低差を有する少なくとも二面に整地しさえすればよく、施工作業が効率化される。また、段差7は、段差面と各高低差面6、8との間の接続部7A、7Bが断面円弧状の緩やかな湾曲面に形成されているので、引き抜き力発生時、図3に示すように局所的に面圧が集中して裏込め材(盛土)が変形したり剛性が低下するのを防ぐようになっている。
【0067】
なお、上記第1の実施例に係る補強材の敷設方法では、第1の工程S1と第2の工程S2の終了後、盛土5Bの投入と高低差面6、8と段差面7の形成と補強材9Bの敷設とを繰り返して第3の工程S3で盛土の造成を完了するようにしているがこれに限られるものではなく、第1第2の工程S1、S2の後、繰り返しを避けて第3の工程S3で盛土の造成を完了し、補強材9Aを一枚のみ埋設するようにしてもよい。また、第2の工程S2終了後、盛土の投入と高低差面と段差面の形成と補強材の敷設との一連の工程を何度も繰り返し、補強材を3層以上埋設するようにしてもよい。また、上記実施例では、盛土5A、5Bの段差7は、上下方向の位置が合致して形成されるようになっているがこれに限られるものではなく、どの段差7も引き抜き力Fが加わる方向に対して直角に延長されてさえいればよく、上下方向の位置をずらせてもよいことはいうまでもない。さらに、地盤3は、上記第1の実施例のように整地された地盤であっても未整地の地盤であってもよいがこれに限られるものではなく、他にも、地盤側の被構築場所としては、掘削された地盤面、盛土が投入された盛土面、盛土が転圧された転圧面または洪水などで堆積物が堆積した堆積面であってもよいし、軟弱地盤や湿地等であってもよい。また、崖崩れ現場での復旧作業などへの適用も可能である。
【0068】
次に、上記実施例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物の引き抜き抵抗力の算定方法について、図5を参照して説明する。図5は、上記構築方法により構築される構造物2の補強材の引き抜き抵抗力を算定するにあたり用いられるモデルである。まず、補強材9の水平方向始端部9Sから終端部9Eまで、補強材9の低位平坦部10と傾斜部12と高位平坦部11との各区間毎に引き抜き抵抗力を計算する。図5において符号Gは地表面を、符号hは地表面Gから高位平坦部11までの上下方向の距離を、符号Δhは高位平坦部11と低位平坦部10との間の上下方向の距離を、符号A、B、Oはそれぞれ、高位平坦部11と傾斜部12との境界点、傾斜部12と低位平坦部10との境界点および傾斜部12の傾斜面中心を示す。
【0069】
次に、補強材9の引き抜き抵抗力を導く式について説明する。
今、点Oにおける引き抜け抵抗力Tを求める。図5に示すように、点Mを中心として円弧BOをn分割した微小区間について考える。点Bから点Mを中心としてdθ進んだ地点における引き抜き抵抗力Tdθ
【0070】
【数1】

【0071】
と表すことができる。数式1中の第1項は支圧効果による引き抜き抵抗力の増分であり、第2項は土被りによる引き抜き抵抗力の増分である。
ここで支圧qは、引き抜き抵抗力Tと曲率半径rと次のような関係がある。
【0072】
【数2】

【0073】
今、点Bにおける引き抜き抵抗力T
【0074】
【数3】

【0075】
h:点Aにおける土被り圧[m]
Δh:段差高さ[m]
γ:土の単位体積重量[kN/m
:点Bから末端までのジオテキスタイル(補強材)の敷設長[m]
φ:ジオテキスタイルと地盤の摩擦角[°]
q:ジオテキスタイル周面に作用する支圧[kN/m
r:円弧BOまたは円弧OAにおける曲率半径[m]
θ:段差中央におけるジオテキスタイルの敷設角[°]
:点Bにおけるジオテキスタイルの引き抜き抵抗力[kN/m]
σ:ジオテキスタイルに作用する土被りによる垂直応力[kN/m
したがって、Tdθは、点BにおけるTを用いると、次のように書き直せる。
【0076】
【数4】

【0077】
σはθの関数であり、土圧係数K(=0.3程度)を用いると、ある土被り厚hにおけるσ は、次のように表すことができる。
【0078】
【数5】

【0079】
ここで、σν = h・γである。
次に、2dθ進んだ地点における引き抜き抵抗力T2dθを求める。dθ進んだ地点における引き抜き抵抗力Tdθを用いると、
【0080】
【数6】

【0081】
となる。これを順次繰り返して、ndθ(=θ:点O)地点における引き抜き抵抗力Tndθ(=Tθ=T)を求めると、
【0082】
【数7】

【0083】
と表される。同様な手順で円弧OAについても支圧効果および土被り効果を考慮して点Aにおける引き抜き抵抗力Tを求めると、
【0084】
【数8】

【0085】
と表すことができる。上記数式に基づいて数値計算した結果を、図6および図7に示す。図6および図7に示されるように、土被りの深さに関係なく、補強材を支圧効果が得られる段差を設けて敷設すると引き抜き抵抗力が増大していることが明らかである。また、図6から土被りが小さいと、段差による土被り増大効果は相対的に大きく、図7から土被りが大きくなると、土被り増大効果は相対的に小さくなることがわかる。
【実施例2】
【0086】
次に、本発明の第2の実施例に係る補強材の敷設方法について説明する。第2の実施例に係る補強材の敷設方法は、図8の(A)に示すように、壁(擁壁)を必要とする施工予定の構造物に対して適用される。すなわち、上記第1の実施例に係る補強材の敷設方法により構築された構造物2は、壁のない地盤3上の被構築場所(地盤側の面)4に構築されるのに対し、本実施例に係る補強材の敷設方法では、施工予定の構造物について引き抜き方向の一方に壁を有する構造物(傾斜地の棚壁等)に適用される。第2の実施例に係る補強材の敷設方法では、図8の(A)に示すように、地盤23上に第1の壁片24Aを立設する(第1の工程S11)。つまり、本実施例に係る補強材の敷設方法により構築される構造物22は、第1の壁片24Aにより区画される被構築場所25に構築される。壁片24A〜24Cは、盛土の投入に応じて上方に順次積み上げられて壁体24を構成するようになっている。
【0087】
次に、図8の(B)に示すように、この被構築場所25に盛土5Aを投入し、この盛土5Aを低い一面6とこの一面6と段差7を介して高低差を有する高い他面8とに形成し、一面6と他面8はそれぞれ平坦に整地されて転圧される(第2の工程S12)。次に、図8の(C)に示すように、盛土5Aの段差7と高低差面6、8に第1の補強材9Aを敷設する。第1の補強材9Aは、上記第1の実施例と同様の材質からなり、所定の敷設長を有している。この第1の補強材9Aの壁側端部26は、第1の壁片24Aの上部に設けられた接続部27と接続される(第3の工程S13)。
【0088】
次に、図8の(D)に示すように、第1の壁片24Aの上側に新たに第2の壁片24Bを設ける(第4の工程S14)。次に、第2の壁片24Bと第1の補強材9Aと盛土5Aの露出部とで区画された空間に盛土5Bを投入してこの盛土5Bを低い一面6とこの一面6と段差7を介して高低差を有する高い他面8とを形成して上記第2の工程S12を繰り返す。次に、図8の(E)に示すように、高低差面6、8が形成された盛土5B上面に第2の補強材9Bを敷設し、壁側端部26を第2の壁片24Bの接続部27に接続して上記第3の工程S13を繰り返す。そして最後に、第2の補強材9Bに盛土5Cを投入して平坦に整地して転圧し構造物(盛土造成構造)22を完成する(第5の工程S15)。なお、本実施例では、これら第2の工程S12、第3の工程S13および第4の工程S14をそれぞれ1回繰り返すようにしているが、所望の壁体24の高さに達するまで、壁片の積み上げ、盛土の投入と高低差面の形成および補強材の敷設と壁片への接続の一連の工程を、施工プランに応じて何度か繰り返すようにしてもよい。
【0089】
上記第2の実施例に係る補強材の敷設方法により構築された構造物22では、新たに施工される新設構造物であって壁体を有する新設構造物について、施工時に補強材9(9A、9B)の水平方向敷設面の一端26が壁体24に接続されているので、上記第1の実施例の作用効果である土被り厚の増大効果と段差部における支圧効果とに加え、壁体24は補強材9により水平方向の引き抜き力に対する引く抜き抵抗力Tにより支えられることになる。このため、地震時、例え壁体24に引き抜き力がかかっても、補強材9による引く抜き抵抗力Tにより、壁体24の下端を中心とするモーメントの発生を阻止し、壁体24の滑動を防ぐことができる。また、引き抜き抵抗力の算定方法に基づいて予め補強材9の敷設長に応じた引き抜き抵抗力を導くことができるので、壁体24を有する構造物の設計強度に応じて、補強材9の敷設長を決定することができ、補強材9を必要な敷設寸法だけ確保すればよく、無駄を省いてコストダウンを図ることができる。
【0090】
なお、上記第2の実施例では、被構築場所25に盛土5を投入して高低差面を形成する際、高い他面8を壁体24側に形成しているがこれに限られるものではなく、壁体24側に低い一面を形成し、段差を介して高低差を有する高い他面を壁体24から離れた位置に形成するようにしてもよい。また、上記第2の実施例では、壁片24A〜24Cを順次積み上げて壁体24を構築するようにしているがこれに限られるものではなく、予め施工予定の壁体を築造した後、盛土5の投入と補強材9の敷設とを繰り返して施工するようにしてもよい。
【実施例3】
【0091】
次に本発明の第3の実施例に係る補強材の敷設方法について説明する。第3の実施例に係る補強材の敷設方法は、上記第2の実施例に係る補強材の敷設方法が、壁を有する施工予定の構造物に対して壁の積み上げに応じて構造物を構築するようにしてるのに対し、すでに完成された既設構造物であるコンクリート水路33に対する耐震対策や補修に適用される点が異なっている。本実施例に係る補強材の敷設方法は、図9の(A)に示すように、既設構造物であるコンクリート水路33に対して適用される。コンクリート水路33は、鉄筋の錆などにより壁34のモーメント抵抗力が低下した既設の水路である。水路33は、コンクリート床36とコンクリート床36の左右両側端から立ち上がる壁34と備えて構成される。まず、壁34のうちモーメント抵抗力が低下した壁部34Aが特定されると、図9の(B)に示すように、その壁部34A側の地盤35を所定の深さまで掘削する(第1の工程S21)。掘削された部位が被構築場所37となる。次に、図9の(C)に示すように、この被構築場所37に盛土5Aを投入し、この盛土5Aを低い一面6とこの一面6と段差7を介して高低差を有する高い他面8とに形成し(第2の工程S22)、盛土5Aの段差7と高低差面6、8に第1の補強材9Aを敷設し、この第1の補強材9Aの壁側端部38を、壁34に設けた接続部39と接続する(第3の工程S23)。
【0092】
次に、図9の(D)に示すように、壁部34Aと第1の補強材9Aと盛土5Aの露出部とで区画された掘削された空間に盛土5Bを投入してこの盛土5Bに段差7と高低差面6、8とを形成し、上記第2の工程S22を繰り返す。次に、高低差面6、8が形成された盛土5B上面に第2の補強材9Bを敷設し、壁側端部38を壁部34Aの接続部39に接続し、上記第3の工程S23を繰り返す。そして最後に、第2の補強材9Bに盛土5Cを投入して平坦に整地して転圧し構造物(盛土造成構造)32を完成する(第4の工程S24)。なお、本実施例では、これら第2の工程S22および第3の工程S23をそれぞれ1回繰り返すようにしているが、これに限られるものではなく、所望の引き抜き抵抗力を確保するのに必要な補強材の層の数に応じて、補強材9を一枚または複数枚埋設するようにしてもよい。
【0093】
上記第3の実施例に係る補強材の敷設方法により構築された構造物32では、壁を有しすでに完成されている既設構造物(コンクリート水路、ため池堤体、農道、傾斜地の棚壁等)であっても、補修や耐震補強が必要になればいつでも簡素な施工で補強を行うことができる。
【0094】
この構造物32では、図9の(A)または(E)に示すように、コンクリート水路33では、水路の壁34の高さをHfp、最上層の補強材と壁との接続部水平位置から水路床上面までの高さをLfp、地震時の水平土圧をPhとすると、土圧による転倒モーメントはPh×1/3Hfpとなり、壁34の土質側に補強材(ジオテキスタイル)を接続し、すべての補強材の引き抜き抵抗力をTfpとした場合、壁34の下端を回転端として生じる補強材によるモーメント抵抗力はTfp×Lfpとなる。Lfpは大きいほどモーメント抵抗力が大きくなるので、転倒に対してより安定的となる。このため、補強材の敷設長を長くして過大な引き抜き抵抗力Tfpを確保しなくとも、補強材9の敷設長を短くして壁34の転倒防止の作用を果たすことができる。従って、小規模な施工で確実に壁34の転倒防止を図ることができる。
【実施例4】
【0095】
次に、上記第3の実施例に係る補強材の敷設方法により構築された構造物32について、具体的な寸法を有するコンクリート水路33をモデルとして引き抜き抵抗力を導き、補強材の敷設長をどの程度確保すればよいか計算した計算例を図10に基づいて説明する。
【0096】
図10に示すコンクリート水路33は、コンクリート水路の壁高Hfp=2.5m、コンクリート壁体の重量(厚みt=0.2m)W=0.2m×2.5m×23.0kN/m3=11.5kN、主働土圧Pa=15.9kN/m、作用点の高さ1/3Hfp、水平震度α=0.2、擁壁(壁)つま先を回転端とした転倒モーメントMa=(1+α)×Pa×1/3Hfp+α×W×1/2Hfp=15.9+14.4=30.2kN/m、抵抗モーメントMr=W×1/2t+T×Hfp’=11.5kN/m×0.1m+T×Hfp’、Tはジオテキスタイル(補強材)の引く抜き抵抗力、Hfp’は壁底面からのジオテキスタイルの設置高、転倒に対する安全率Fsを1.2とすると、
Fs=Mr/Ma>=1.2 ・・・(5)
ジオテキスタイルに求められる引き抜き抵抗力Tは、
T=(1.2Ma−W×1/2t)/Hfp’ ・・・(6)
今、Hfp’=2.2mとすると、T=16.0kN/mとなる。
ここで、ジオテキスタイルに必要な敷設長を求めると、
T=2×tanφ×σv×Lg ・・・(7)
φは地盤とジオテキスタイルの摩擦角、σvはジオテキスタイルに作用する鉛直応力、Lgはジオテキスタイルの敷設長さで、φ=30°、σv=4.7kPaとすると、Lg=2.95mとなる。
主働領域内に敷設されたジオテキスタイルは、引く抜き抵抗力として見込まないので、すべり角度60°であると、全敷設長はLgtotal=0.92m+2.95m=3.87mとなる。建設用地および施工費を考慮すると、3.87mの敷設長では確保することが困難である。しかしながら、図10に示すように、0.3mの段差を設けて敷設すると、同一の引く抜き抵抗力を得るには、1.54mの敷設長を確保すればよいので、Lgtotal=0.92m+1.02m=1.94mまで短くすることができる。引き抜き抵抗力を見込む部分で考えると、2.95mが1.02mとなるので、敷設長をほぼ1/3にまで短くすることができる。図11の(A)は、土中に敷設されたジオテキスタイルの境界条件を示し、図11の(B)は、図11の(A)の境界条件に基づいて計算条件を当てはめた場合の段差敷設による引き抜き抵抗力の算定結果を示すグラフである。図11の(B)中、aは補強材を段差を設けて敷設した場合で支圧効果を見込んだ算定結果について、bは補強材を段差を設けて敷設した場合で支圧効果を見込んでいない算定結果について、cは補強材を段差を設けず水平に敷設した場合について、それぞれ引き抜き抵抗力(kN/m)と補強材の敷設長(m)との関係を示している。図11の(B)のグラフから明らかなように、補強材を段差を設けて敷設し、かつ、支圧効果を見込むことで、設計上の敷設長を短くすることができる。
【実施例5】
【0097】
次に、本発明の第4の実施例に係る補強材の敷設方法について説明する。第4の実施例に係る補強材の敷設方法は、上記第2の実施例に係る補強材の敷設方法が、地盤23の被構築場所25に直接段差7と高低差面6、8とを有する盛土5Aの層を形成して補強材9Aを敷設するようにしているのに対し、図12に示すように、地盤43の被構築場所45に投入した盛土55Aを、全面平坦に整地して補強材59(59A)を盛土55Aの平坦な整地面上に敷設し、この盛土55の投入とその全面を平坦に形成しては補強材59の敷設を繰り返して所定高さHwlに達するまで、従来のように補強材59A〜59Cを水平に盛土層55A〜55C内に埋設し、所定高さHwlより上側の施工については、上記第2の実施例と同様に盛土5A、5B層内に補強材9A、9Bが低位平坦部10と高位平坦部11と傾斜部12とが形成されて埋設される点が異なっている。すなわち、壁体44に対してこれら水平に埋設された補強材59A〜59Cと段差を設けて埋設された9A、9Bにより壁体44の転倒を阻止するのに十分な引き抜き抵抗力を確保することができれば、この構造物42の上側にだけ補強材9A、9Bを段差を設けて埋設すればよい。
【0098】
このように、第4の実施例に係る補強材の敷設方法により構築された構造物42は、下側の構造体42Aが、壁片44Aを地盤43または下側壁片に立設する工程、盛土55Aを投入する工程、投入された盛土55Aの上面を平坦に形成する工程、盛土55Aの平坦面に補強材59Aを敷設して端部を壁片44Aに接続する工程を繰り返して構築され、上側の構造体42Bが、壁片44Dを下側壁片44Cに立設する工程、盛土5Aを投入する工程、投入された盛土5Aの上面を段差7と高低差面6、8に形成する工程、盛土5Aの上面に補強材9Aを敷設して端部を壁片44Aに接続する工程を繰り返し、最後に盛土5Cを投入し整地されて構築されるようになっている。このため、構造物42の下側の施工にあたっては、従来と同様に投入された盛土55を全面平坦に整地して転圧すれば済むので、施工作業を効率化することができる。
【0099】
すなわち、既設の擁壁は、擁壁自体が重量物であるため、地震時の慣性力によって大きく変位し、転倒することがあった。この問題を解決するためには、擁壁上部に補強材を接続して、抵抗モーメントを向上させることが有効である。しかしながら、擁壁上部に接続された補強材は、地表近くに位置するので、十分な鉛直土圧が作用しない。そのため、より長い補強材敷設長を確保しなければならず、経済的にも対策を実施することが難しい。これに対し、上記第4の実施例に係る補強材の敷設方法により構築された構造物42では、補強材敷設長が短くなるので、掘削幅が減少し、補強材の使用量を減少させることができる。また、工事の用地を少なく抑えることができるので、用地の境界や隣接構造物への影響を小さくすることができる。なお、擁壁つま先を回転中心とする抵抗モーメントは、擁壁つま先から補強材の接続点までの鉛直高さに比例するので、擁壁のつま先から高い位置に補強材を接続するほど、より大きな抵抗モーメントを期待できる。
【実施例6】
【0100】
次に、本発明の第5の実施例に係る補強材の敷設方法について説明する。第5の実施例に係る補強材の敷設方法は、図13に示すように、上記第2、第4の実施例に係る補強材の敷設方法が、引き抜き方向の一方に壁が設けられているのに対し、引き抜き方向両側に壁が設けられている点が異なっている。すなわち、本発明の第5の実施例に係る補強材の敷設方法は、図13に示すように、ため池堤体、河川の堤防、農道の盛土、鉄道の軌道支持構造体、道路の盛土、建築構造物や水利施設の支持地盤等の構造物に適用される。
【0101】
本実施例に係る補強材の敷設方法は、まず、地盤63上の被構築場所65に盛土70Aを投入し、盛土70Aを左右両側に土嚢を支持する傾斜支持面71A、71Bと、これら傾斜支持面71A、71Bにそれぞれ連続する平坦な左右側高位面78A、78Bとを形成し、さらに、各左右側高位面78A、78Bにそれぞれ段差77A、77Bを設け、左右側段差77A、77B下端に接続される低位面76を高位面78A、78Bに対し低くかつ平坦に形成する(第1の工程S31)。次に、盛土70Aの傾斜支持面71A、71Bにそれぞれ第1の左右側土嚢64AR、64ALを載置する(第2の工程S32)。そして、盛土70Aの左右一方の側の高低差面78A、76と段差77Aとに第1の右側補強材9ARを敷設するとともに、盛土70Aの左右他方の側の高低差面78B、76と段差77Bとに第1の左側補強材9ALを敷設し、これら両補強材9AR、9ALの土嚢64AR、64AL側端部をそれぞれ土嚢64AR、64ALの下部に接続する(第3の工程S33)。これら左右側補強材9AR、9ALは、上記第1の実施例と同様の材質からなり、比較的短寸の敷設長を有し、両補強材9AR、9ALの互いに向き合う内側両端間は、盛土70Aの低位面76が露出するようになっている。
【0102】
両補強材9AR、9ALが敷設され端部が土嚢64AR、64ALに接続されると、次に、両土嚢64AR、64ALと左右両側の補強材9AR、9ALと盛土70Aの低位面76の露出部とで区画された空間に盛土70Bを投入し、この盛土70Bの土嚢64AR、64AL側を平坦な高位面78A、78Bに形成して、段差77A、77Bをそれぞれ設け、段差77A、77B下端に接続される低位面76を高位面78A、78Bに対し低くかつ平坦に形成する(第4の工程S34)。次に、第1の土嚢64AR、64ALの上にそれぞれ第2の土嚢64BR、64BLを積み上げる(第5の工程S35)。そして、第2層となる盛土70Bの全面に第2の補強材9Bを敷設し、補強材9Bの左右両端を第2の土嚢64BR、64BLの下部にそれぞれ接続する(第6の工程S36)。この第2の補強材9Bは、第1の左右側補強材9AR、9ALより長寸の敷設長を有し、盛土面全体、すなわち、左右の高位面78A、78Bと左右の段差77A、77Bと低位面76との全体を覆うようになっている。
【0103】
第2の補強材9Bが盛土面全体を覆って敷設され、両端が土嚢64BR、64BL下部に接続されると、次に、第4の工程S34(盛土の投入と高低差面の形成)、第3の工程S33(短寸の左右側補強材の敷設と土嚢との接続)そして第5の工程S35(土嚢の積み上げ)の一連の工程を繰り返す。すなわち、第2の土嚢64BR、64BL間で形成される空間に盛土70Cを投入し、上面を左右両側の高い面78A、78Bと段差77A、77Bを介して低い面76との高低差面を形成しては、短寸の左右側補強材9CR、9CLの敷設と左右の土嚢64CR、64CLへの接続、そして新たな土嚢の積み上げといった工程を繰り返す。この繰り返しの途中に、第3の工程S33に代えて、第6の工程S36を挟み、長寸の補強材9E(9H)を敷設するようになっている。そして、最後に、最上層の補強材9Hに盛土70Nを投入して平坦に整地して転圧し構造物(盛土造成構造)62を完成する(第7の工程S37)。
【0104】
このように、第5の実施例に係る補強材の敷設方法により構築された構造物62では、構造物の引き抜き方向の幅が比較的短いため池堤体、河川の堤防、農道の盛土、鉄道の軌道支持構造体、道路の盛土、建築構造物や水利施設の支持地盤等の構造物であっても、引き抜き抵抗力を増大させることができ、耐震性の高い構造物を構築することができる。
【0105】
なお、上記第5の実施例では、壁体を土嚢を積み上げて構成しているがこれに限られるものではなく、鋼製枠やコンクリートブロック等のブロック状の剛体を積み上げるようにしてもよい。また、上記第5の実施例では、土嚢64AR〜64NR、64AL〜64NLをずらせて積み上げ両側の壁体を傾斜させて形成するようにしているがこれに限られるものではなく、鉛直方向に積み上げて鉛直の擁壁を形成するようにしてもよい。
【実施例7】
【0106】
図14の(A)ないし(D)は、上記第3の実施例に係る補強材の敷設方法の第1の変形例を示すもので、上記第3の実施例に係る補強材の敷設方法が、補強材が埋設されていない既設の構造物に対する補強であるのに対し、この変形例に係る構造物82では、図14の(A)に示すように、既設の構造物80には、予め補強材89が壁体84に接続され盛土83内に水平にかつ多層にわたって埋設されている。まず、補強が求められる壁部84Aが特定されると、図14の(B)に示すように、その壁部84A側の盛土83を所定の深さまで掘削する(第1の工程S41)。掘削された部位が被構築場所87となる。このとき、求められる引き抜き抵抗力に応じて最上層の補強材89Aより上方の盛土83のみを掘削してもよいし、もっと深く掘削し、幾層かの補強材89を除去するようにしてもよい。この後は、上記第3の実施例と同様に、この被構築場所87に盛土5Aを投入し、この盛土5Aを低い一面とこの一面と段差を介して高低差を有する高い他面とに形成し(第2の工程S42、図14の(C)参照)、盛土5Aの段差と高低差面とに補強材9を敷設し、この補強材9の壁側端部88を、壁84に接続する(第3の工程S43)。そして最後に、補強材9に盛土5Bを投入して平坦に整地して転圧し構造物82を完成する(第4の工程S44)。このように、この変形例に係る補強材の敷設方法では、従来の工法で築造された構造物に対しても容易に補強を図ることができる。
【実施例8】
【0107】
図15の(A)ないし(E)はそれぞれ、本発明の第3の実施例に係る補強材の敷設方法の他の変形例を示すもので、図15の(A)に示す第2の変形例(構造物92)は、予め地盤93の一部を掘削し、地盤93の被構築場所95の面を高低差面と段差面と形成した後、盛土5の投入と補強材9の敷設を行うようにしている。図15の(B)に示す第3の変形例(構造物102)は、上記第2の実施例の変形例を示すもので、地盤23の被構築場所25に盛土105が投入された後、盛土105の上面に段差107A、107Bを2段にわたって設け、壁体24側から順に高位、中位、低位の3面の高低差面に形成し、この盛土面に補強材9を敷設するようにしている。このように、盛土上面に順に高低差のある複数の段差を設け、高低差面を段差の数に1加えた面に形成して補強材を敷設するようにしている。この変形例では、引き抜き方向幅の短い構造体に有効である。図15の(C)は第4の変形例(構造物112)を示すもので、地盤113の被構築場所115がすでに段差と高低差面を有している未整地面に、盛土105を投入し、盛土105を上記第3の変形例と同様に、複数の段差と高低差面を形成して補強材109を敷設するようにしている。このように、すでに段差がある未整地の地盤に対して地盤側の工事を行うことなくその地盤の形状に合わせて自由に施工することができる。図15の(D)に示す第5の変形例(構造物122)は、上記第4の実施例の変形例を示すもので、第4の実施例では、上側の構造体42Bの構築にあたり、投入された盛土5Aの上面を段差7と高低差面6、8に形成するようにしているのに対し、投入された盛土105の上面を複数の段差107A、107Bと3面の高低差面に形成し、補強材9を敷設するようにしている。図15の(E)に示す第6の変形例(構造物132)は、上記第2の実施例の変形例を示すもので、第2の実施例では、地盤23側に投入された盛土5Aの段差7と高低差面6、8に第1の補強材9Aを敷設し、盛土5の投入と高低差面の形成、そして補強材9の敷設を繰り返すようにしているのに対し、この第6の変形例では、地盤23側に投入された盛土5Aの段差7と高低差面6、8に第1の補強材9Aを敷設した後、第1の補強材9A上に投入される盛土125の上面を平坦に形成して補強材9を敷設する工程を挟むようにしている。
【実施例9】
【0108】
次に、本発明の第6の実施例に係る補強材の敷設方法について説明する。本実施例に係る補強材の敷設方法は、図16に示すように、まず、地盤203に建物Hsの基礎224を築造した後、基礎224から外側の地盤203側の面204に盛土205Aを投入し、この盛土205Aを低い一面206とこの一面206と段差207を介して高低差を有する高い他面208とに形成する(第1の工程S51)。次に、盛土205Aの段差207と高低差面206、208に補強材209を敷設し、基礎224側の端部209Bを基礎224に図示しない接続具により接続する(第2の工程S52)。そして、盛土205Aの高低差面206、208と段差207とに沿って敷設された補強材209の上面に、盛土205Bを投入して平坦に整地して転圧し構造物202を完成する(第3の工程S53)。本実施例に係る補強材の敷設方法では、第1の工程S51で、地盤203側に建物Hsの基礎224を築造した後、盛土205Aを投入し、第2の工程S52で、補強材209を基礎224に接続して敷設するようにしているので、築造予定の建物Hsにも本発明を適用することができ、地震時などに建物Hsが周辺地盤に対して変位するのを防ぐことができる。従って、地盤203と建物Hsの相対変位の発生を抑制することにより各種ライフラインの破損を防止することができる。このように、本実施例に係る補強材の敷設方法では、水平方向の慣性力が大きく周辺地盤との間にずれ(相対変位)が生じやすい発電所、農業用の用排水機場、貯水槽、石油タンクなどの重量構造物にも適している。つまり、建物には、電気ケーブル、パイプ(ガス、水道、排水管)が接続されるが、補強材で建物を引っ張り補強することにより、地震時に建物は地盤と一体的に変位するのでライフラインの損傷を軽減することができる。
【実施例10】
【0109】
次に、本発明の第7の実施例に係る補強材の敷設方法について説明する。本実施例に係る補強材の敷設方法は、上記第6の実施例に係る補強材の敷設方法が、まず、第1の工程S51で、地盤203側に建物Hsの基礎224を築造した後、盛土205Aを投入し、第2の工程S52で、補強材209を基礎224に接続して敷設するようにしているのに対し、既に築造され地盤303中に打設された基礎杭(基礎)324に対して適用する点が異なっている。すなわち、本実施例に係る補強材の敷設方法は、図17に示すように、まず、本体支持部が地盤303に埋設された基礎杭324に対しこの基礎杭324の回りの地盤303を掘削して基礎杭324の地中側部分324Aを露出させる。その後、基礎杭324から外側の地盤303側の面304に盛土305Aを投入し、この盛土305Aを低い一面306と段差307を介して高い他面308とに形成する(第1の工程S61)。次に、盛土面306、307、308に補強材309を敷設し、基礎杭324側の端部309Bを基礎杭324に図示しない接続具により接続する(第2の工程S62)。そして、第1の工程S61と第2の工程S62とを繰り返し、基礎杭324に接続されて敷設された補強材309の上に盛土305Bを投入して高低差のある盛土面306、307、308を形成し、この盛土面306〜308に新たな補強材309を敷設して基礎杭324と接続する。その後、新たな補強材309の上面に、盛土305Cを投入して平坦に整地して転圧し構造物302を完成する(第3の工程S63)。本実施例に係る補強材の敷設方法では、第1の工程S61で、既に築造されている建物の基礎杭324回りの地盤303を掘削して基礎杭324の地中側部分324Aを露出させた後、盛土305Aを投入し、第2の工程S62で、補強材309を露出された基礎杭324の地中部分324Aに接続して敷設するようにしているので、既に築造された建物にも本発明を適用することができ、建物が周辺地盤に対して変位するのを防ぐことができ、各種ライフラインの破損を防止することができる。なお、本実施例では、最も上層の補強材309は、盛土305中で基礎杭324の上部に接続することが経済的には好ましい。また、当然ながら、基礎杭324の下部に接続してもよく、その場合でも、所望の引き抜き抵抗を得ることができる。
【実施例11】
【0110】
次に、本発明の第8の実施例に係る補強材の敷設方法について説明する。本実施例に係る補強材の敷設方法は、上記第6の実施例に係る補強材の敷設方法が地盤203上に築造される基礎224に補強材209を接続して敷設するようにしているのに対し、パイプライン等の埋設管(地中埋設物)に適用される点が異なっている。一般に、屈曲部を有する埋設管Pは、図18に示すように、地盤に埋設されて水圧が作用すると、埋設管Pが外側に押し出される力(スラスト力)が働き、埋設管Pが変位して破損するおそれがある。このため、スラスト力に抵抗するため、コンクリートのブロックCBを巻き立てスラスト力に抵抗する対策が採られる。しかしながら、このようにしてスラスト抵抗を増大させる方法では、コンクリートブロックCB自体が重量物であるため、地震時などには大きな慣性力が働いてしまい、周辺の地盤よりも大きく変位してしまうという課題がある。本実施例に係る補強材の敷設方法では、係る課題を解決することができる。
【0111】
すなわち、本発明の第8の実施例に係る補強材の敷設方法は、図19の(A)および図20の(A)に示すように、まず、地盤403上に設置を予定してる埋設管(地中埋設物)Pに補強材409を巻回して接続し、補強材409が接続された埋設管P1を地盤403に設置する。次に、補強材409を折り返して盛土投入面から取り除いて盛土405を投入し、低位面406、段差407および高位面408を有する高低差面を形成する(第1の工程S71)。次に、この盛土面406〜408上に補強材409を敷設する(第2の工程S72)。そして、補強材409の上面に、盛土405を投入して平坦に整地して転圧し構造物402を完成する(第3の工程S73)。本実施例に係る補強材の敷設方法では、第1の工程S71で、補強材409を埋設管P1に接続し、地盤403に埋設管P1を配置した後、盛土405を投入し、第2の工程S72で、補強材409を敷設するようにして第3の工程S73で築造を完了するようにしているので、埋設管(地中埋設物)にも本発明を適用することができ、たとえ埋設管が地盤中の水圧によりスラスト力を受けても、スラスト抵抗力を確保することができるので、埋設管を安定させることができる。また、地震時などに埋設管が周辺地盤に対して変位するのを防ぐことができる。なお、図19の(B)に示すように、補強材409を埋設管P1の曲管部Pcに巻き込んで接続するようにしてもよい。また、埋設管Pに予め補強材409を巻回して接続するようにしているがこれに限られるものではなく、図20の(B)に示すように、埋設管Pの外面に羽(突起部)410を設け、この羽410に補強材409を接続するようにしてよいし、図20の(C)に示すように、埋設管Pの外周に巻回したバンド411により補強材409を接続するようにしてもよい。さらに、図20の(D)に示すように、接続具を用いないで補強材409を埋設管P1の一部に接触させて巻き回して2層に形成し、各層に低位面406、段差407および高位面408を有する高低差面を形成するようにしてもよい。
【実施例12】
【0112】
なお、地中埋設物として埋設管P1を例示しているがこれに限られるものではなく、地中に一部が埋設されるタンクや、コンクリート製または鋼製の水槽、地下アンカー等に適用可能であることはいうまでもない。また、上記実施例では、埋設管P1の地盤403への設置前に、補強材409を埋設管P1に巻回して接続し、補強材409が接続された埋設管P1を地盤403に設置して盛土405Aを投入して高低差面を形成し、この盛土面に補強材409を敷設して第3の工程S73で築造を完了するようにしているが、これに限られるものではなく、第1の工程S81で、まず、埋設管P1を地盤409に設置した後、盛土405を投入して高低差面406〜408を形成し、第2の工程S82で、盛土405の高低差面406〜408に補強材409を敷設するようにしてもよい。
【実施例13】
【0113】
次に、本発明の第9の実施例に係る補強材の敷設方法について説明する。本実施例に係る補強材の敷設方法は、上記第8の実施例に係る補強材の敷設方法が埋設管P1に対し1枚の補強材409を接続するようにしているのに対し、埋設管P2に対し、複数の補強材509A〜509Cを接続して埋設するようにした点が異なっている。すなわち、本実施例に係る補強材の敷設方法では、図21の(A)ないし(D)に示すように、第1の工程S91で、地盤503側に埋設管P2を配置した後、盛土505Aを投入し、第2の工程S92で、補強材509Aを埋設管P2に接続具539を介して接続し、高低差のある盛土面506〜508に敷設する。そして、第1の工程S91と第2の工程S92を繰り返し、補強材509A〜509Cを複数埋設し、第3の工程S93で、最後の補強材509Cの上面に、盛土505Dを投入して平坦に整地して転圧し構造物502を完成するようにしている。このように、本実施例に係る補強材の敷設方法では、埋設管P2に対し補強材509A〜509Cを複数接続して埋設するようにしたので、引き抜き抵抗を増大させることができる。
【実施例14】
【0114】
次に、本発明の第10の実施例に係る補強材の敷設方法について説明する。本実施例に係る補強材の敷設方法は、上記第9の実施例に係る補強材の敷設方法が、まず、第1の工程S91で、地盤503側に埋設管P2を設置した後、盛土505Aを投入し、第2の工程S92で、補強材509を埋設管P2に接続して敷設し、盛土の投入と高低差面の形成、そして補強材の接続と敷設を繰り返して築造を完了するようにしているのに対し、既に地盤603に埋設された埋設管P3に対して適用する点が異なっている。すなわち、本実施例に係る補強材の敷設方法は、図22の(A)に示すように、まず、本体が地盤603に埋設された埋設管P3に対しこの埋設管P3の回りの地盤603を掘削し(図22の(B)参照)、埋設管P3の補強側部分P3Aを露出させる。その後、埋設管P3から補強予定の地盤603側の面604に盛土605Aを投入し(図22の(C)参照)、この盛土605を低い一面606と段差607を介して高い他面608とに形成する(第1の工程S101)。次に、盛土面606〜608に補強材609を敷設し、埋設管P3側の端部609Bを埋設管P3に図示しない接続具により接続する(第2の工程S102)。そして、補強材609の上面に、盛土605Bを投入して平坦に整地して転圧し構造物602を完成する(第3の工程S103)。本実施例に係る補強材の敷設方法では、既に埋設された埋設管P3にも本発明を適用することができ、たとえ埋設管が地盤中の水圧によりスラスト力を受けても、スラスト抵抗力を確保することができる。
【実施例15】
【0115】
次に、本発明の第11の実施例に係る補強材の敷設方法について説明する。本実施例に係る補強材の敷設方法は、上記第10の実施例に係る補強材の敷設方法が、埋設管P3に対し、一枚の補強材609を接続するようにしているのに対し、複数の補強材709A〜709Cを接続するようにした点が異なっている。すなわち、本実施例に係る補強材の敷設方法は、図23の(A)に示すように、まず、本体が地盤703に埋設された埋設管P4に対しこの埋設管P4の回りの地盤703を掘削し(図23の(B)参照)、埋設管P4の補強側部分P4Aを露出させる。そして、埋設管P4の補強側部分P4A近傍の地盤703を埋設管P4から離れた場所を埋設管P4に沿って掘削し、埋設管P4の載置されている地盤703Aより低くなった低位面703Bを形成する。その後、埋設管P4から補強予定の地盤703側の面704に盛土705Aを投入し(図23の(C)参照)、地盤の高位面703Aと低位面703Bとの間に段差707を形成する(第1の工程S111)。次に、補強予定地盤面704の高位面703Aと盛土上面と盛土段差面707と地盤低位面703Bに補強材709Aを敷設し、埋設管P4側の端部739を埋設管P4に図示しない接続具により接続する(第2の工程S112)。次に、埋設管P4の両側に盛土705Bを投入し、段差が形成されて敷設された補強材709上に、高位面708、段差707および低位面706を有する高低差面を形成する(第3の工程S113)。そして、第2の工程S112と第3の工程S113とを繰り返し、補強予定の地盤側704に高低差面を設けて形成された盛土705Bの上面に補強材709Bを敷設して埋設管P4に接続しては、新たな盛土705Cを投入する。そして、最後の補強材509Cを敷設して埋設管P4に接続すると、埋設管P4の両側に盛土705Dを投入して平坦に整地して転圧し構造物702を完成する(第4の工程S114)。本実施例では、埋設管P4に複数の補強材を接続しているので、大口径の埋設管P4にも本発明を適用することができる。なお、本実施例では、埋設管P4の一方の側を補強予定の地盤として埋設管P4の一方の側にのみ補強材を敷設しているがこれに限られるものではなく、埋設管P4の両側に補強材709を複層埋設するようにしてもよい。
【0116】
なお、上記各実施例および変形例では、地盤側の面に盛土を投入して補強材を敷設するようにしているがこれに限られるものではなく、予め段差と高低差面が形成された地盤や段差と高低差面を形成した地盤に第1の補強材を直接敷設して盛土を投入し、補強材の層を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0117】
3 地盤
5A〜5C 盛土
6 低い一面(一面)
7 段差
8 高い他面(他面)
9A、9B 補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤側の面に盛土を投入し、一面とこの一面と段差を介して高低差を有する他面とに形成する第1の工程と、形成されたこれら複数の面と段差とに補強材を敷設する第2の工程と、敷設された補強材上に盛土を投入して造成を完了する第3の工程とを有することを特徴とする補強材の敷設方法。
【請求項2】
地盤側が、盛土内に補強材を水平に埋設して造成地を途中まで造成した半造成地であることを特徴とする請求項1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項3】
地盤側が、盛土内に補強材が水平に埋設された完成済み造成地の上側が掘削され、盛土または盛土と水平に埋設された補強材とが除去されて残された下側造成地であることを特徴とする請求項1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項4】
第2の工程後、盛土の投入と高低差面の形成と補強材の敷設とを順に繰り返し、複数の補強材の層を形成することを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項5】
盛土は、段差を介して高低差を有する2以上の面に形成されることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項6】
投入された盛土は転圧された後、補強材が敷設されることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項7】
地盤側の面を段差を介して高低差を有する複数の面に形成するか、または予め地盤側の面が段差を介して高低差を有する複数の面を有していることを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項8】
地盤側上面の高低差面または投入される盛土上面の高低差面はそれぞれ平坦に形成されることを特徴とする請求項7に記載の補強材の敷設方法。
【請求項9】
予め形成された壁内に盛土が投入されるかまたは盛土の投入に応じて壁が形成されることを特徴とする請求項1ないし8のうちいずれか1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項10】
補強材の壁側端部は壁に接続されることを特徴とする請求項9に記載の補強材の敷設方法。
【請求項11】
盛土は壁側の面が他の面より高く形成されることを特徴とする請求項9または10に記載の補強材の敷設方法。
【請求項12】
第1の工程で、地盤側に建物の基礎を築造した後、盛土を投入し、第2の工程で、補強材を基礎に接続して敷設することを特徴とする請求項1ないし8のうちいずれか1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項13】
第1の工程で、既に築造されている建物の基礎回りの地盤を掘削して基礎の地中側部分を露出させた後、盛土を投入し、第2の工程で、補強材を露出された基礎の地中部分に接続して敷設することを特徴とする請求項1ないし8のうちいずれか1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項14】
第1の工程で、地盤側に地中埋設物を配置した後、盛土を投入し、第2の工程で、補強材を地中埋設物に接続して敷設することを特徴とする請求項1ないし8のうちいずれか1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項15】
第1の工程で、地中埋設物に補強材を接続し、地盤側に補強材が接続された地中埋設物を配置した後、補強材を折り返して盛土投入面から取り除いて盛土を投入し、第2の工程で、補強材を投入された盛土の高低差面に敷設することを特徴とする請求項1ないし8のうちいずれか1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項16】
第1の工程で、既に埋設されている地中埋設物回りの地盤を掘削して地中埋設物を露出させた後、盛土を投入し、第2の工程で、補強材を露出された地中埋設物に接続して敷設することを特徴とする請求項1ないし8のうちいずれか1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項17】
地中埋設物が埋設管であることを特徴とする請求項14ないし16のうちいずれか1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項18】
盛土の段差は、補強材に求められる引き抜き抵抗力の発生方向に対して直角方向に形成されることを特徴とする請求項1ないし17のうちいずれか1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項19】
盛土の段差は、補強材に求められる引き抜き抵抗力の発生方向に対して盛土の各層毎に上下方向の位置をほぼ合致させて形成されることを特徴とする請求項18に記載の補強材の敷設方法。
【請求項20】
盛土の段差は、補強材に求められる引き抜き抵抗力の発生方向に対して盛土の各層毎に上下方向の位置を異ならせて形成されることを特徴とする請求項18に記載の補強材の敷設方法。
【請求項21】
段差は傾斜して形成されるとともに段差と高低差面との間は断面円弧状の湾曲面に形成されることを特徴とする請求項18ないし20のうちいずれか1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項22】
設計プランに基づいて予め構築される土質構造の引き抜き抵抗力を計算により導き、導かれた引き抜き抵抗力に基づいて段差の構造と補強材の敷設長と埋設される補強材の層数とを決定することを特徴とする請求項1ないし21のうちいずれか1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項23】
地盤側の面には、整地または未整地の地盤面、掘削された地盤面、盛土が投入された盛土面、盛土が転圧された転圧面または堆積物が堆積した堆積面のうちいずれかが含まれることを特徴とする請求項1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項24】
盛土には、山土、真砂土、砂利、バラスト、粘性土、石、礫、土壌改良材、破砕材、火山灰、火山礫、鉱滓または残渣のうちいずれかが含まれることを特徴とする請求項1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項25】
補強材は、金属製帯体、面状に形成された高分子材料のジオグリッド、ジオテキスタイル、ジオシンセンティックス、樹脂シートまたは不織布のうち少なくともいずれか1から構成されることを特徴とする請求項1に記載の補強材の敷設方法。
【請求項26】
請求項1ないし25のうちいずれか1の敷設方法により構築されることを特徴とする構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−207432(P2012−207432A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73289(P2011−73289)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】