説明

複合スピーカ

【課題】 薄型と小型化を実現しやすく、組立作業も容易な構造の「複合スピーカ」を提供する。
【解決手段】 磁界発生部10を構成する主ヨーク11に後方凹部12と前方凹部13が形成され、後方凹部12内に第1の磁気ギャップG1が、前方凹部13に第2の磁気ギャップG2が形成されている。面積の大きい第1の振動体41の内周端41aに連結された第1のボイスコイル31がY1方向に向けて第1の磁気ギャップG1に挿入され、面積の小さい第2の振動体45に連結された第2のボイスコイル47が第2の磁気ギャップG2にY2方向へ向けて挿入されている。主ヨーク11の少なくとも一部が、第1の振動体41で囲まれた空間内に位置しているため、前後の寸法を薄型化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面積が相違する2つの振動体が搭載されて広い周波数帯域で発音できる複合スピーカに係り、特に薄型化と小型化を実現しやすく且つ組立作業が容易になる構造の複合スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、2つのダイアフラム(振動体)を有する複合スピーカが開示されている。
【0003】
この複合スピーカには、面積の小さいドーム状ダイアフラムと、ドーム状ダイアフラムよりも面積が大きい円錐状ダイアフラムとが搭載されている。磁界発生部には、発音方向の前方に開口する大きな凹部を有する第1の台座が設けられ、第1の台座の凹部の内部に、第1の磁石と第2の台座と第2の磁石およびプレートが前方に向けて順に積層されている。
【0004】
円錐状ダイアフラムの内周端に固定されたコイルフォーマ(ボビン)にボイスコイルが保持されており、このボイスコイルが、第1の台座と第2の台座との間の磁気ギャップの内部に、前方から挿入されている。ドーム状ダイアフラムの外周端に固定されたコイルフォーマ(ボビン)にボイスコイルが保持されており、このボイスコイルが、第2の台座とプレートとの間の磁気ギャップの内部に、前方から挿入されている。
【0005】
この複合スピーカは、円錐状ダイアフラムで比較的低い帯域の音圧を発生し、ドーム状ダイアフラムで比較的高い帯域の音圧を発生するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−78086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の複合スピーカは以下に列記する課題を有している。
(1)ドーム状ダイアフラムを駆動するボイスコイルと、円錐状ダイアフラムを駆動するボイスコイルが、共に第1の台座などで構成される磁界発生部に対して前方から挿入されている。そのため、ドーム状ダイアフラムとその外周に位置する円錐状ダイアフラムの双方を磁界発生部の前方に配置せざるを得なくなり、スピーカ全体の前後方向の厚さ寸法を小さくするのが困難である。
【0008】
(2)磁界発生部の前方において、ドーム状ダイアフラムの外周側に円錐状ダイアフラムが配置されているため、ドーム状ダイアフラムを振動自在に支持するダンパー機構やコイルフォーマを配置する領域が、円錐状ダイアフラムの内周端よりも内側に限定される。そのため、円錐状ダイアフラムの内周端の直径をある程度大きくしないと、ドーム状ダイアフラムのダンパー機構やコイルフォーマなどを配置できなくなる。円錐状ダイアフラムの内周端の直径を小さくできないために、複合スピーカの直径寸法の小型化が難しい。
【0009】
(3)ドーム状ダイアフラムを支持するダンパー機構やコイルフォーマを、円錐状ダイアフラムの内周端の内側の狭い領域に組み付けることになるため、組立作業が煩雑である。
【0010】
(4)ドーム状ダイアフラムの外周の領域に、円錐状ダイアフラムに連結されたコイルフォーマが振動自在に位置しているため、ドーム状ダイアフラムの外周領域を有効に利用することができず、例えば高音域の音圧を前方に導くためのホーンを配置することが困難である。あるいは、ホーンを配置できたとしても、小さなものに限られ、音圧を前方へ伝搬する機能を十分に発揮させることが難しい。
【0011】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、薄型で小型化が容易であり、且つ組立が容易な構造の複合スピーカを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1の振動体と、第1の振動体よりも面積が小さい第2の振動体と、第1の振動体を駆動する第1のボイスコイルおよび第2の振動体を駆動する第2のボイスコイルが搭載された複合スピーカにおいて、
互いに逆向きに開口する後方凹部と前方凹部とが形成された磁性材料製の主ヨークと、後方凹部の内底部に固定された第1の磁石および第1の磁石の後方に固定された第1の対向ヨークと、前方凹部の内底部に固定された第2の磁石および第2の磁石の前方に固定された第2の対向ヨークとが設けられ、
前記第1のボイスコイルが、後方凹部の内周面と第1の対向ヨークとの間に形成された第1の磁気ギャップ内に位置し、第2のボイスコイルが、前方凹部の内周面と前記第2の対向ヨークとの間に形成された第2の磁気ギャップ内に位置していることを特徴とするものである。
【0013】
本発明は、第1の振動体は第1のボイスコイルよりも外側に位置し、第2の振動体は第2のボイスコイルよりも内側に位置しているものである。
【0014】
本発明は、前記主ヨークの少なくとも一部が、第1の振動体の外周端よりも後方で且つ内周端よりも前方に位置していることが好ましく、さらには第1の振動体の内周端が、主ヨークの前端よりも後方に位置しているものが好ましい。
【0015】
本発明の複合スピーカは、面積の大きい第1の振動体を駆動するボイスコイルが、主ヨークの後方凹部に形成される磁気ギャップ内に位置している。したがって、円錐形状などの第1の振動体が、第2の振動体よりも前方へ大きく突出することがなく、スピーカ全体の前後の寸法を小さく構成しやすい。また、第1の振動体の内周領域に第2の振動体が位置していないので、第1の振動体の内周端の直径を小さくでき、スピーカの直径方向の寸法を小さくしやすい。第2の振動体の外側の領域に、第1の振動体の内周端やボビンなどが存在していないので、第2の振動体の周囲の領域を有効に利用でき、第2の振動体を支持するダンパー機構などを配置しやすくなる。
【0016】
また、第1の振動体を駆動するボイスコイルと第2の振動体を駆動するボイスコイルを、主ヨークの後方と前方とから互いに干渉することなく組み込めるので、組立作業が容易である。
【0017】
本発明は、主ヨークには、後方凹部に連通して後方に開放された複数のスリットが設けられ、第1の振動体と第1のボイスコイルとを連結する連結部材が前記スリット内に位置している構造とすることが可能である。
【0018】
また、本発明は、第1のボイスコイルの前方に、第2の振動体の振動で発せられる音圧を前方に導くホーン部材が設けられているものとすることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の複合スピーカは、第1の振動体と第2の振動体を備えている構造であるが、前後の寸法を小さくでき、直径方向の寸法も小さくしやすい。また組立作業も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態の複合スピーカを示す縦断面図、
【図2】図1に示す複合スピーカの磁界発生部を拡大して示す半断面図、
【図3】磁界発生部を構成する主ヨークとボイスコイルを示す分解斜視図、
【図4】本発明の第2の実施の形態の複合スピーカを示す縦断面図、
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示す第1の実施の形態の複合スピーカ1は、Y1方向が発音方向である前方で、Y2方向が後方である。図1には、複合スピーカ1の前後方向に延びる中心線Oが示されている。
【0022】
複合スピーカ1は、内側フレーム2と、内側フレーム2の外周側に固定された外側フレーム3を有している。内側フレーム2と外側フレーム3は、合成樹脂材料または非磁性金属材料などの非磁性材料で形成されている。
【0023】
内側フレーム2の中心部に、前後に開口する開口部2aが形成されており、この開口部2aの前端に磁界発生部10が設けられている。
【0024】
図1と図2に示すように、磁界発生部10に主ヨーク11が設けられており、この主ヨーク11が、前記外側フレーム3の開口部2aの前端に固定されている。主ヨーク11は、磁性金属材料で形成されている。主ヨーク11は、後方(Y2方向)に向けて開口する後方凹部12と、前方(Y1方向)に向けて開口する前方凹部13とが設けられている。主ヨーク11において、後方凹部12と前方凹部13が、前後方向の互いに逆向きに開口している。
【0025】
主ヨーク11に形成された後方凹部12は内周面12aを有している。内周面12aは、中心線Oを中心とする円筒面である。後方凹部12は、前方に内底部12bを有している。内底部12bは、中心線Oと直交する平面である。
【0026】
主ヨーク11に形成された前方凹部13は内周面13aを有している。内周面12aは、中心線Oを中心とする円筒面である。前方凹部13の内周面13aの内径寸法は、後方凹部12の内周面12aの内径寸法よりも十分に小さい。前方凹部13は後方に内底部13bを有している。内底部13bは、中心線Oと直交する平面である。
【0027】
図1と図2に示すように、主ヨーク11の後方凹部12の内部では、内底部12bに第1の磁石14が固定されており、第1の磁石14の後方に第1の対向ヨーク15が固定されている。なお、内底部12bと第1の磁石14との間や第1の磁石14と第1の対向ヨーク15との間に補助的な磁性材料の層や部材が介在してもよい。
【0028】
第1の磁石14は前後の厚さ寸法が一定の円板形状である。第1の磁石14は、内底部12bに固定される前面14aと第1の対向ヨーク15が接合される後面14bとが互いに逆の磁極となるように、前後方向に向けて着磁されている。
【0029】
第1の対向ヨーク15は、主ヨーク11と同じ磁性材料で形成されており、前後方向の厚さ寸法が一定の円板形状である。第1の対向ヨーク15の外周面15aは円筒面である。この外周面15aが、主ヨーク11の後方凹部12の内周面12aに隙間を介して対向し、第1の磁気ギャップG1が形成されている。
【0030】
主ヨーク11の前方凹部13の内部では、内底部13bに第2の磁石16が固定され、第2の磁石16の前方に第2の対向ヨーク17が固定されている。なお、内底部13bと第2の磁石16との間や第2の磁石16と第2の対向ヨーク17との間に補助的な磁性材料の層や部材が介在してもよい。
【0031】
第2の磁石16は厚さ寸法が一定の円板形状であり、その直径寸法は、第1の磁石14よりも十分に小さい。第2の磁石16は、内底部13bに固定される後面16bと第2の対向ヨーク17が接合される前面16aとが互いに逆の磁極となるように、前後方向に向けて着磁されている。
【0032】
第2の対向ヨーク17は、主ヨーク11と同じ磁性材料で形成されており、前後の厚さ寸法が一定の円板形状である。第2の対向ヨーク17の外周面17aは円筒面であり、この外周面17aと前方凹部13の内周面13aとの間に第2の磁気ギャップG2が形成されている。第2の対向ヨーク17の外周面17aの直径は、第1の対向ヨーク15の外周面15aの直径よりも小さい。したがって、第2の磁気ギャップG2の中心を通る仮想円筒面Vg2の直径Dg2は、第1の磁気ギャップG1の中心を通る仮想円筒面Vg1の直径Dg1よりも十分に小さい。
【0033】
この磁界発生部10では、第1の磁石14から発生する磁界により、第1の磁気ギャップG1を横断する横断磁束が形成され、第2の磁石16から発生する磁界により、第2の磁気ギャップG2を横断する横断磁束が形成される。
【0034】
図1と図3に示すように、主ヨーク11には、その外周面11aと、後方凹部12の内周面12aとを貫通して、後方(Y2方向)に開口する複数のスリット18が形成されている。このスリット18により、後方凹部12の内部空間と、主ヨーク11の外周の空間とが連通している。図3に示すように、スリット18は、120度の角度配置で3箇所に形成されている。
【0035】
図1と図2に示すように、第1の磁気ギャップG1内に第1のボイスコイル31が位置している。図3に示すように、第1のボイスコイル31は、導線が円筒形状に巻かれて構成されている。第1のボイスコイル31には、3箇所から外周方向へ放射状に延びる放射連結部材32が連結されており、それぞれの放射連結部材32の外端部に円筒連結部材33が連結されている。放射連結部材32と円筒連結部材33は、合成樹脂シートや紙シートや布シートまたはこれらの複合シートなどで形成されている。
【0036】
第1のボイスコイル31が第1の磁気ギャップG1内に位置し、放射連結部材32が主ヨーク11に形成されたスリット18内に位置し、円筒連結部材33が主ヨーク11の外周部に位置している。
【0037】
図1に示すように、円筒連結部材33と内側フレーム2との間にダンパー部材34が渡されている。ダンパー部材34は合成樹脂シートや布シートや紙シートまたはこれらの複合材料で形成されており、凹凸部が中心線Oを中心として同心円状に形成されている。円筒連結部材33とこれに支持された第1のボイスコイル31は、ダンパー部材34に支持されて前後方向へ振動可能である。
【0038】
図1に示すように、主ヨーク11の外周面11aの外側に、中音域や低音域の音圧を発生する第1の振動体41が設けられている。第1の振動体41は、合成樹脂シートや布シートや紙シートまたはこれらの複合材料で円錐形状に形成されている。第1の振動体41の中心部に円形穴が形成され、この円形穴の縁部が内周端41aとなっている。内周端41aは、主ヨーク11の外周面11aの外側に位置している。第1の振動体41の内周端41aは、円筒連結部材33の外側に接合されている。第1の振動体41の内周端41aよりもやや外側部分と、主ヨーク11との間に内側ダンパー部材42が設けられている。内側ダンパー部材42は、合成樹脂シートや布シートや紙シートまたはこれらの複合材料で形成されており、中心線Oを中心とする円形の凹凸部が形成されている。
【0039】
第1の振動体41の外周端41bは、内周端41aよりも前方に位置し、第1の振動体41が円錐形状となっている。この外周端41bと、外側フレーム3の外周縁3aとの間に外側ダンパー部材43が取り付けられている。外側ダンパー部材43は、合成樹脂シートや布シートや紙シートまたはこれらの複合材料で形成されており、中心線Oを中心とする円形の凹凸部が形成されている。
【0040】
主ヨーク11の前端部には、高音域の音圧を発生するための第2の振動体45が設けられている。第2の振動体45は、合成樹脂シートや布シートや紙シートまたはこれらの複合材料でドーム状に形成されている。図1と図2に示すように、第2の振動体45の裾部には、後方に延びる小径のボビン46が設けられ、このボビン46に巻かれた第2のボイスコイル47が、第2の磁気ギャップG2の内部に位置している。
【0041】
図1に示すように、主ヨーク11の前端面に、リング状の支持部材49が固定されており、第2の振動体45の裾部と支持部材49との間に、前方ダンパー部材48が設けられている。前方ダンパー部材48は、合成樹脂シートや布シートや紙シートまたはこれらの複合材料で形成されており、中心線Oを中心とする円形の凹凸部が形成されている。
【0042】
図1に示す構造の複合スピーカ1の組み立て方法は以下の通りである。
主ヨーク11の後方凹部12の内部に第1の磁石14と第1の対向ヨーク15を固定し、前方凹部13の内部に第2の磁石16と第2の対向ヨーク17を固定して磁界発生部10を構成する。
【0043】
図3に示すように、第1のボイスコイル31と放射連結部材32および円筒連結部材33を組み立てた後に、第1の振動体41の内周端41aを円筒連結部材33の外周面に接合する。内側フレーム2と外側フレーム3とを連結し、円筒連結部材33をダンパー部材34を介して内側フレーム2に支持させ、第1の振動体41の外周端41bを外側ダンパー部材43を介して外側フレーム3に支持させる。
【0044】
そして、磁界発生部10に対して、第1のボイスコイル31をY1方向に向けて組み込み、主ヨーク11と内側フレーム2とを固定するとともに、第1の振動体41と主ヨーク11を、内側ダンパー部材42を介して連結する。
【0045】
一方、第2の振動体45と、支持部材49と前方ダンパー部材48および第2のボイスコイル47が組み立てられて、第2のボイスコイル47が磁界発生部10に対してY2方向へ向けて組み付けられ、支持部材49が主ヨーク11の前端面に固定される。
【0046】
上記のように複合スピーカ1の組立作業は、磁界発生部10が組み立てられた後に、第1の振動体41を駆動する第1のボイスコイル31と、第2の振動体45を駆動する第2のボイスコイル47とが、磁界発生部10に対して互いに逆方向から組み付けられる。第1のボイスコイル31と第2のボイスコイル47を互いに干渉することなく組み付けられるので、組立作業が容易である。また、第1のボイスコイル31と第2のボイスコイル47を互いに接近させて組み立てる必要がないので、コイルの損傷や配線の破損などを未然に防ぐことができる。
【0047】
図1に示すように、第1のボイスコイル31を支持するボビンや連結部材さらには第1の振動体41の内端部41aが、主ヨーク11の前方に位置していないので、第2の振動体45を支持する前方ダンパー部材48や支持部材49の形状や大きさを自由に設定できる。よって、第1の磁気ギャップG1の中心を通る仮想円筒面Vg1の前方(Y1側)に、支持部材49と前方ダンパー部材48を設けたり、支持部材49と前方ダンパー部材48を、仮想円筒面Vg1の前方よりも外周側に延ばすことも可能である。
【0048】
また、図1に鎖線で示しているように、第2の振動体45の外周部分にスペースの余裕が生じるので、この部分にホーン51を取り付けることができる。このホーン51は、仮想円筒面Vg1の前方に重なる領域に配置でき、または仮想円筒面Vg1の前方のさらに外周側に配置することが可能になる。ホーン51は十分に大きな直径で形成できるため、前方に向くホーン面51aの面積および直径を大きくでき、第2の振動体45の振動で発せられる高音域の音圧を前方へ効果的に導くことができる。
【0049】
図2に示すように、第1の磁気ギャップG1の中心を通る仮想円筒面Vg1の直径Dg1を小さくしても、第2の磁気ギャップG2の中心を通る仮想円筒面Vg2と干渉することがない。よって、仮想円筒面Vg1の直径Dg1を小さくして、第1の振動体41の内周端41aの内径寸法を小さくできる。そのため、外周縁41bの直径を大きくすること無く、第1の振動体41の面積を広くすることができ、複合スピーカの直径寸法が過大になるのを防止できるようになる。
【0050】
図1に示すように、第1の振動体41は、その内周端41aと外周端41bの双方を、第2のボイスコイル47よりも後方に位置させることができる。また、第1の振動体41の内周端41aを主ヨーク11の後端よりも前方に位置させ、第1の振動体41の外周端41bを主ヨーク11の前端よりも後方に位置させている。そのため、中音域または低音域と高音域を発する複合スピーカを非常に薄型に構成することが可能になる。
【0051】
図4に示す第2の実施の形態の複合スピーカ101は、図1に示したスピーカ1と同じ構造の磁界発生部10を有している。また、第2の振動体45と支持部材49と第2のボイスコイルも、図1に示すスピーカ1と同じである。
【0052】
第2の実施の形態の複合スピーカ101は、第1の振動体41の内周端41aにボビン132が接合されている。ボビン132は、内周端41aから前方(Y1方向)に向けて延びており、その前端部に第1のボイスコイル31が取り付けられている。第1のボイスコイル31とボビン132は、主ヨーク11と第1の対向ヨーク15との間に形成された第1の磁気ギャップG1の内部に、Y1方向に向けて挿入されている。
【0053】
この複合スピーカ101も、円錐形状の第1の振動体41の外周端41bが、主ヨーク11のY1側の端部よりも後方に位置している。そのため、前後の寸法を薄型にできる。
【0054】
図1と図4に示す本発明の実施の形態のスピーカ1,101は、共に、主ヨーク11の一部が、円錐形状の第1の振動体41の外周端41bを通る水平線H1よりも後方で且つ第1の振動体41の内周端41aよりも前方の領域に位置している。すなわち、主ヨーク11の少なくとも一部が、第1の振動体41で囲まれた円錐形状の内側空間内に位置している。そのため、前後の寸法を薄型化しやすくなる。また、主ヨーク11の全体が、第1の振動体41の外周端41bよりも後方で、内周端41aよりも前方に位置している構造にすると、さらに薄型化を実現しやすくなる。
【符号の説明】
【0055】
1,101 複合スピーカ
2 内側フレーム
3 外側フレーム
10 磁界発生部
11 主ヨーク
12 後方凹部
12a 内周面
12b 内底面
13 前方凹部
13a 内周面
13b 内底面
14 第1の磁石
15 第1の対向ヨーク
16 第2の磁石
17 第2の対向ヨーク
18 スリット
31 第1のボイスコイル
32 放射連結部材
33 円筒連結部材
34 ダンパー部材
41 第1の振動体
41a 内周端
41b 外周端
42 内側ダンパー部材
43 外側ダンパー部材
45 第2の振動体
47 第2のボイスコイル
48 前方ダンパー部材
49 支持部材
51 ホーン
G1 第1の磁気ギャップ
G2 第2の磁気ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の振動体と、第1の振動体よりも面積が小さい第2の振動体と、第1の振動体を駆動する第1のボイスコイルおよび第2の振動体を駆動する第2のボイスコイルが搭載された複合スピーカにおいて、
互いに逆向きに開口する後方凹部と前方凹部とが形成された磁性材料製の主ヨークと、後方凹部の内底部に固定された第1の磁石および第1の磁石の後方に固定された第1の対向ヨークと、前方凹部の内底部に固定された第2の磁石および第2の磁石の前方に固定された第2の対向ヨークとが設けられ、
前記第1のボイスコイルが、後方凹部の内周面と第1の対向ヨークとの間に形成された第1の磁気ギャップ内に位置し、第2のボイスコイルが、前方凹部の内周面と前記第2の対向ヨークとの間に形成された第2の磁気ギャップ内に位置していることを特徴とする複合スピーカ。
【請求項2】
第1の振動体は第1のボイスコイルよりも外側に位置し、第2の振動体は第2のボイスコイルよりも内側に位置している請求項1記載の複合スピーカ。
【請求項3】
前記主ヨークの少なくとも一部が、第1の振動体の外周端よりも後方で且つ内周端よりも前方に位置している請求項2記載の複合スピーカ。
【請求項4】
第1の振動体の内周端が、主ヨークの前端よりも後方に位置している請求項1または2記載の複合スピーカ。
【請求項5】
主ヨークには、後方凹部に連通して後方に開放された複数のスリットが設けられ、第1の振動体と第1のボイスコイルとを連結する連結部材が前記スリット内に位置している請求項1ないし4のいずれかに記載の複合スピーカ。
【請求項6】
第1のボイスコイルの前方に、第2の振動体の振動で発せられる音圧を前方に導くホーン部材が設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載の複合スピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−124718(P2012−124718A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273959(P2010−273959)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】