説明

複合スピーカ

【課題】 薄型と小型化を実現しやすく、組立作業も容易な構造の「複合スピーカ」を提供する。
【解決手段】 磁界発生部10を構成する主ヨーク11に後方に開口する第1の空間12が形成され、内部に第1の磁気ギャップG1が形成されている。面積の大きい第1の振動体41の内周端41aに連結された第1のボイスコイル31がY1方向に向けて第1の磁気ギャップG1に挿入されている。主ヨーク11には、前後に貫通する第2の空間16が設けられ、その内部に第2の磁界発生部20が装着され、その前方に面積の小さい第2の振動体45が設けられている。第2の磁界発生部20が、第1の磁界発生部の内側に収納されている構造であるため、前後の寸法を薄型化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面積が相違する2つの振動体が搭載されて広い周波数帯域で発音できる複合スピーカに係り、特に薄型化を実現しやすく且つ組立作業が容易になる構造の複合スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、2つの振動板を有する複合スピーカが開示されている。
この複合スピーカには、面積の大きい円錐状の第1の振動板と、面積の小さいドーム状の第2の振動板とが搭載されている。
【0003】
磁界発生部を構成する第1のヨークは、前方に大きく開口する凹部を有しており、凹部の内部にリング状の第2のヨークが固定されている。第1のヨークの凹部の内周面にリング状の第1の磁石が固定されて、第1の磁石の内周面と第2のヨークの外周面との間に第1の磁気ギャップが形成されている。第1の振動板を駆動する第1のボイスコイルは、第1の磁気ギャップの内部に、前方から後方へ向けて挿入されている。
【0004】
第2のヨークで囲まれた中心部に、第2の磁石とプレートとが、前方に向けて順に積層されて固定され、第2のヨークの内周面とプレートの外周面との間に第2の磁気ギャップが形成されている。第2の駆動板を駆動する第2のボイスコイルは、第2の磁気ギャップの内部に、前方から後方へ向けて挿入されている。
【0005】
この複合スピーカは、円錐状の第1の振動板で比較的低い帯域の音圧を発生し、ドーム状の第2の振動板で比較的高い帯域の音圧を発生するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−189394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の複合スピーカは以下に列記する課題を有している。
(1)第1の振動板を駆動する第1のボイスコイルと、第2の振動板を駆動する第2のボイスコイルが、第1のヨークの凹部内に形成された磁気ギャップ内へ、共に前方から後方へ向けて挿入され、第1のボイスコイルが巻かれたボビンと、第2のボイスコイルが巻かれたボビンが、第2のヨークから前方に延び出ている。そのため、第1の振動板と第2の振動板の双方が、第1のヨークの前方の領域に配置されることになり、複合スピーカの前後方向の厚さ寸法を小さくするのが困難になっている。
【0008】
(2)第2の振動板を支持する支持部材やダンパー部材を、第1の振動板に取り付けられたボビンで囲まれた狭い空間内に組み付けることになるため、組立作業が煩雑である。
【0009】
(3)ドーム状の第2の振動板の外周領域において、円錐状の第1の振動板に連結されたボビンが前方へ延び出ているため、第2の振動板の周囲の領域を有効に利用することができず、例えば高音域の音圧を前方に導くためのホーンを配置することが困難である。あるいは、ホーンを配置できたとしても、小さなものに限られ、音圧を前方へ伝搬する機能を十分に発揮させることが難しい。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、薄型で小型化が容易であり、且つ組立が容易な構造の複合スピーカを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1の振動体と、第1の振動体よりも面積が小さい第2の振動体と、第1の振動体を駆動する第1のボイスコイルおよび第2の振動体を駆動する第2のボイスコイルが搭載された複合スピーカにおいて、
磁性材料で形成された主ヨークに、少なくとも後方に向けて開口する第1の空間が形成され、第1の空間の内部にリング状の第1の磁石が固定されて、第1の磁石の内周面または外周面と主ヨークとの間に第1の磁気ギャップが形成されて、第1のボイスコイルが、第1の磁気ギャップの内部に位置しており、
前記主ヨークの第1の磁石に囲まれた領域内に、少なくとも前方に向けて開口する第2の空間が形成され、第2のボイスコイルと第2のボイスコイルを駆動する第2の磁界発生部が、第2の空間内に収納されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明は、第1の振動体が第1のボイスコイルよりも外側に位置し、第2の振動体が第2のボイスコイルよりも内側に位置しているものとして構成される。
【0013】
本発明の複合スピーカは、面積の大きい第1の振動体を駆動するボイスコイルが、主ヨークの後方に開口する第1の空間内に位置している。したがって、円錐形状などの第1の振動体および第1の振動体に接続されたボビンが、第2の振動体よりも前方へ大きく突出することがなくなり、スピーカ全体の前後の寸法を小さく構成しやすい。第2の振動体の外側の領域に、第1の振動体の内周端やボビンなどが存在していないので、第2の振動体の周囲の領域を有効に利用でき、第2の振動体を支持する支持部材やダンパー部材などを配置しやすくなる。
【0014】
本発明は、第2の空間は、主ヨークを前後に貫通して形成されていることが好ましい。この場合に、第2の磁界発生部が、リング状の第1の磁石で囲まれた領域内に位置しているものとなる。
【0015】
主ヨークに前後に貫通する第2の空間を形成し、第2の空間内に第2のボイスコイルおよび第2の磁界発生部を設けることで、スピーカの前後の寸法をさらに薄くすることができる。
【0016】
また、本発明は、第2の磁界発生部は、前方に開口する前方凹部を有する内側ヨークと、前方凹部の内底部に固定された第2の磁石および第2の磁石の前方に固定された対向ヨークとを有して、前方凹部の内周面と対向ヨークとの間に第2のボイスコイルが位置する第2の磁気ギャップが形成されており、前記内側ヨークが第2の空間内に前方から装着されているものとすることができる。
【0017】
上記構成では、第2の磁界発生部を組み立てた後に、この第2の磁界発生部を主ヨークの第2の空間に組み込むことができるので、組立作業が容易になる。
【0018】
本発明は、前記主ヨークの少なくとも一部が、第1の振動体の外周端よりも後方で且つ内周端よりも前方に位置しているものが好ましい。また、第1の振動体の内周端が、主ヨークの前端よりも後方に位置しているものが好ましい。
【0019】
上記のように構成することで、主ヨークの少なくとも一部を、円錐形状の第1の振動体で囲まれた空間内に配置でき、前後の寸法を小さくしやすくなる。
【0020】
本発明は、主ヨークには、第1の空間に連通して後方に開放された複数のスリットが設けられ、第1の振動体と第1のボイスコイルとを連結する連結部材が前記スリット内に位置している構造とすることが可能である。
【0021】
また、本発明は、第1のボイスコイルの前方に、第2の振動体の振動で発せられる音圧を前方に導くホーン部が設けられているものとすることもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の複合スピーカは、第1の振動体と第2の振動体を備えている構造であるが、前後の寸法を小さくでき、組立作業を容易にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態の複合スピーカを示す縦断面図、
【図2】図1に示す複合スピーカの磁界発生部を拡大して示す半断面図、
【図3】複合スピーカの中心部の構造を示す分解斜視図、
【図4】本発明の第2の実施の形態の複合スピーカを示す縦断面図、
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示す第1の実施の形態の複合スピーカ1は、Y1方向が発音方向である前方で、Y2方向が後方である。図1には、複合スピーカ1の前後方向に延びる中心線Oが示されている。
【0025】
複合スピーカ1は、内側フレーム2と、内側フレーム2の外周側に固定された外側フレーム3を有している。内側フレーム2と外側フレーム3は、合成樹脂材料または非磁性金属材料などの非磁性材料で形成されている。
【0026】
内側フレーム2の中心部に、前後に開口する開口部2aが形成されており、この開口部2aの前端に第1の磁界発生部10が固定されている。また、第1の磁界発生部10の中心部に第2の磁界発生部20が保持されている。
【0027】
図1と図2に示すように、磁界発生部10は主ヨーク11を有している。主ヨーク11は、外周ヨーク11aと内周ヨーク11bとから構成されている。外周ヨーク11aと内周ヨーク11bは、中心線Oに中心を有するリング形状であり、磁性金属材料で形成されて互いに接着されて固定されている。図1に示すように、外周ヨーク11aが、前記外側フレーム3の開口部2aの前端に固定されて、第1の磁界発生部10が内側フレーム2に固定されている。
【0028】
主ヨーク11の接合部では、外周ヨーク11aの内周面と内周ヨーク11bの外周面との間に第1の空間12が形成されている。外周ヨーク11aの内周面と内周ヨーク11bの外周面は、中心線Oを中心とする円筒面であり、第1の空間12は、中心線Oを中心とするリング状の空間である。第1の空間12は前方(Y1側)が塞がれており、後方(Y2側)に開口している。
【0029】
第1の空間12内に第1の磁石13が固定されている。第1の磁石13は、中心線Oを中心とするリング形状である。第1の磁石13は、内周面13aと外周面13bが互いに逆の磁極となるように半径方向に向けて着磁されている。
【0030】
第1の磁石13は、外周面13bが外周ヨーク11aの内周面に固定されており、第1の磁石13の内周面13aと内周ヨーク11bの外周面との間に第1の磁気ギャップG1が形成されている。第1の磁石13から発生した磁束が磁気ギャップG1を横断している。なお、第1の磁石13の内周面13aが内周ヨーク11bの外周面に固定されて、第1の磁石13の外周面13bと外周ヨーク11aの内周面との間に第1の磁気ギャップG1が形成されてもよい。
【0031】
図1と図3に示すように、主ヨーク11の外周ヨーク11aには、その外周面と内周面とを貫通して、後方(Y2方向)に開口する複数のスリット15が形成されている。このスリット15により、第1の空間12と主ヨーク11の外周の空間とが連通している。図3に示すように、スリット15は、120度の角度配置で3箇所に形成されている。
【0032】
図1と図2に示す第1の磁界発生部10では、第1の磁石13が外周ヨーク11aの内周面に固定されている。そのため、第1の磁石13にも、スリット13cが設けられている。すなわち、第1の磁石13は3分割されており、主ヨーク11に形成されたスリット15の内側において、分割された第1の磁石13の端面間に、スリット13cが形成されている。
【0033】
図1と図2に示すように、第1の磁気ギャップG1内に第1のボイスコイル31が位置している。図3に示すように、第1のボイスコイル31は、導線が円筒形状に巻かれて構成されている。第1のボイスコイル31には、3箇所から外周方向へ放射状に延びる放射連結部材32が連結されており、それぞれの放射連結部材32の外端部に円筒連結部材33が連結されている。放射連結部材32と円筒連結部材33は、合成樹脂シートや紙シートや布シートまたはこれらの複合シートなどで形成されている。
【0034】
第1のボイスコイル31が第1の磁気ギャップG1内に位置し、放射連結部材32が、主ヨーク11に形成されたスリット15内および第1の磁石13のスリット13c内に位置し、円筒連結部材33が外周ヨーク11aの外周部に位置している。
【0035】
図1に示すように、円筒連結部材33と内側フレーム2との間にダンパー部材34が渡されている。ダンパー部材34は合成樹脂シートや布シートや紙シートまたはこれらの複合材料で形成されており、凹凸部が中心線Oを中心として同心円状に形成されている。円筒連結部材33とこれに支持された第1のボイスコイル31は、ダンパー部材34に支持されて前後方向へ振動可能である。
【0036】
図1に示すように、主ヨーク11の外周部に、中音域や低音域の音圧を発生する第1の振動体41が設けられている。第1の振動体41は、合成樹脂シートや布シートや紙シートまたはこれらの複合材料で円錐形状に形成されている。第1の振動体41の中心部に円形穴が形成され、この円形穴の縁部が内周端41aとなっている。内周端41aは、主ヨーク11の外周を囲むように位置している。第1の振動体41の内周端41aは、円筒連結部材33の外側に接合されている。第1の振動体41の内周端41aよりもやや外側部分と、主ヨーク11との間に内側ダンパー部材42が設けられている。内側ダンパー部材42は、合成樹脂シートや布シートや紙シートまたはこれらの複合材料で形成されており、中心線Oを中心とする円形の凹凸部が形成されている。
【0037】
第1の振動体41の外周端41bは、内周端41aよりも前方に位置し、第1の振動体41が円錐形状となっている。この外周端41bと、外側フレーム3の外周縁3aとの間に外側ダンパー部材43が取り付けられている。外側ダンパー部材43は、合成樹脂シートや布シートや紙シートまたはこれらの複合材料で形成されており、中心線Oを中心とする円形の凹凸部が形成されている。
【0038】
図1と図2に示すように、主ヨーク11を構成する内周ヨーク11bの中心部に、前後に貫通する第2の空間16が形成されている。第2の空間16には、後方(Y2方向)に開口する後部穴部16aと、前方(Y1方向)に開口する前方穴部16bとが互いに連通して形成されている。前方穴部16bは、後方穴部16aよりも開口寸法がやや広く形成されている。
【0039】
第2の空間16の後方穴部16aの内部に、第2の磁界発生部20が保持されている。
第2の磁界発生部20は、内側ヨーク21を有している。内側ヨーク21は、主ヨーク11と同じ磁性金属材料で形成されている。内側ヨーク21は、その外周面21aが、第2の空間の後方穴部16aの内部にほとんど隙間を有することなく嵌着され、接着剤などで固定されている。
【0040】
内側ヨーク21には、前方(Y1方向)に向けて開放された前方凹部22が形成されている。前方凹部22は、中心線Oを中心とする円筒面である内周面22aと、中心線Oと直交する平面である内底面22bを有している。
【0041】
前方凹部22の内部には、内底面22bに固定された第2の磁石23と、第2の磁石23の前方に固定された対向ヨーク24とが設けられている。第2の磁石23は、対向ヨーク24が固定される前面23aと、内底部22bに固定される後面23bとを有しており、前面23aと後面23bとが異なる磁極となるように、前後方向に向けて着磁されている。
【0042】
対向ヨーク24の外周面と、前方凹部22の内周面22aとの間に、第2の磁気ギャップG2が形成されている。第2の磁気ギャップG2はリング状である。第2の磁石23から発せられた磁束が第2の磁気ギャップG2を横断している。第2の磁気ギャップG2は第1の磁気ギャップG1よりも、中心線Oに対する半径が小さく、第2の磁気ギャップG2は、第1の磁気ギャップG1で囲まれた空間内に位置している。
【0043】
第2の磁界発生部20の前方に、高音域の音圧を発生するための第2の振動体45が設けられている。第2の振動体45は、合成樹脂シートや布シートや紙シートまたはこれらの複合材料でドーム状に形成されている。図1と図2に示すように、第2の振動体45の裾部には、後方に延びる小径のボビン46が設けられ、このボビン46に巻かれた第2のボイスコイル47が、第2の磁気ギャップG2の内部に位置している。
【0044】
図1と図2に示すように、主ヨーク11の第2の空間16の前方穴部16bの内部に、リング状の支持部材49が固定されており、第2の振動体45の裾部と支持部材49との間に、前方ダンパー部材48が設けられている。前方ダンパー部材48は、合成樹脂シートや布シートや紙シートまたはこれらの複合材料で形成されており、中心線Oを中心とする円形の凹凸部が形成されている。
【0045】
図1と図2に示すように、主ヨーク11の内周ヨーク11bの前部にはホーン部18が一体に形成されている。ホーン部18の前面は、前方に向かうにしたがってその開口径が徐々に広がるホーン面18aとなっている。この複合スピーカ1は、第2の振動体45の周囲に第1の振動体41やその支持機構を設ける必要がないので、ホーン面18aを、第1の磁石13や第1のボイスコイル31の前方に配置することができる。ホーン面18aを十分に広い面積で形成できるので、第2の振動体45の振動で発生する高音域の音圧を前方へ向けて効率よく配置することができる。
【0046】
図1に示す構造の複合スピーカ1の組み立て方法は以下の通りである。
主ヨーク11を構成する外周ヨーク11aと内周ヨーク11bを接合し、外周ヨーク11aと内周ヨーク11bとの間に形成された第1の空間12内に第1の磁石13を固定して第1の磁界発生部10を構成する。
【0047】
図3に示すように、第1のボイスコイル31と放射連結部材32および円筒連結部材33を組み立てた後に、第1の振動体41の内周端41aを円筒連結部材33の外周面に接合する。内側フレーム2と外側フレーム3とを連結し、円筒連結部材33をダンパー部材34を介して内側フレーム2に支持させ、第1の振動体41の外周端41bを外側ダンパー部材43を介して外側フレーム3に支持させる。
【0048】
そして、第1の磁界発生部10のスリット13cとスリット15の内部に放射連結部材32をY1方向へ向けて挿入し、第1のボイスコイル31を第1の磁気ギャップG1内に位置させる。そして、内側フレーム2に主ヨーク11の外周ヨーク11aを固定するとともに、第1の振動体41と主ヨーク11を、内側ダンパー部材42を介して連結する。
【0049】
一方、内側ヨーク21に形成された前方凹部22の内部に第2の磁石23と対向ヨーク24とがY1方向に順に重ねられて固定されて第2の磁界発生部20が構成される。組み立てられた第2の磁界発生部20が、内側ヨーク11bに形成された第2の空間16の後方穴部16aに、Y2方向に向けて組み込まれて嵌着される。
【0050】
また、ボビン46および第2のボイスコイル47が取り付けられた第2の振動体45を、ダンパー部材48を介して支持部材49に支持させる。そして、リング状の支持部材49を、内周ヨーク11bの第2の空間16の前方穴部16bの内部にY2方向に向けて装着し、第2のボイスコイル47を第2の磁気ギャップG2内に挿入する。
【0051】
なお、図3に示すように、第2の磁界発生部20を構成する内側ヨーク21の前端面に支持部材49を接着剤などで固定し、第2のボイスコイル47を第2の磁気ギャップG2に挿入して、高音用で小型のスピーカユニットを予め組み立てておき、この小型のスピーカユニットを、内周ヨーク11bに形成された第2の空間16の内部に向けてY方向へ組み込んでもよい。
【0052】
上記複合スピーカ1の組立作業は、第1の振動体41を駆動する第1のボイスコイル31が、第1の磁界発生部10の第1の空間12に対して後方からY1方向へ向けて組み込まれる。また、第2の磁界発生部20、および第2の振動体45を支持する支持部材49が、第2の空間16に対して前方からY2方向へ向けて組み込まれる。あるいは、第2の磁界発生部20に支持部材49が固定された小型のスピーカユニットが、第2の空間16に対して前方からY2方向へ向けて組み込まれる。
【0053】
第2の磁界発生部20を1つのユニットして組み込むことができ、または第2の磁界発生部20と第2の振動体45とが組み合わされたスピーカユニットを組み込むことができるので、組立作業が容易である。
【0054】
内側ヨーク21と第2の磁石23および対向ヨーク24を有する第2の磁界発生部20は、少なくとも一部が、リング状の第1の磁石13の前端と後端との間に位置していることになり、磁界発生部の薄型化を実現できる。特に、図1と図2に示す複合スピーカ1では、第2の磁界発生部20が、前後に貫通する第2の空間16の内部に位置し、第2の磁界発生部20の全体が第1の磁石13の前端と後端との間に位置しているため、さらに薄型化を実現しやすくなっている。
【0055】
図1に示すように、第1のボイスコイル31を支持するボビンや連結部材さらには第1の振動体41の内端部41aが、主ヨーク11の前方に位置していないので、第2の振動体45を支持する前方ダンパー部材48や支持部材49の形状や大きさを自由に設定できる。また、内周ヨーク11bと一体に形成されているホーン面18aの面積および直径を十分に大きくでき、第2の振動体45の振動で発せられる高音域の音圧を前方へ効果的に導くことができる。なお、ホーン部18が、内周ヨーク11bと別体に形成されて、主ヨーク11に固定されてもよい。
【0056】
図1に示す複合スピーカ1は、第1の振動体41の内周端41aが主ヨーク11の後端よりも前方に位置し、第1の振動体41の外周端41bが主ヨーク11の前端よりも後方に位置している。そのため、中音域または低音域と高音域を発する複合スピーカを非常に薄型に構成することが可能になる。
【0057】
図4に示す第2の実施の形態の複合スピーカ101は、図1に示したスピーカ1と同じ構造の第1の磁界発生部10と第2の磁界発生部20を有している。また、第2の振動体45と支持部材49と第2のボイスコイル47なども、図1に示すスピーカ1と同じである。
【0058】
第2の実施の形態の複合スピーカ101は、第1の振動体41の内周端41aにボビン132が接合されている。ボビン132は、内周端41aから前方(Y1方向)に向けて延びており、その前端部に第1のボイスコイル31が取り付けられている。第1のボイスコイル31とボビン132は、主ヨーク11に形成された第1の磁気ギャップG1の内部に、Y1方向に向けて挿入されている。
【0059】
この複合スピーカ101も、円錐形状の第1の振動体41の外周端41bが、主ヨーク11のY1側の端部よりも後方に位置している。そのため、前後の寸法を薄型にできる。
【0060】
図1と図4に示す本発明の実施の形態のスピーカ1,101は、共に、主ヨーク11の一部が、円錐形状の第1の振動体41の外周端41bを通る水平線H1よりも後方で且つ第1の振動体41の内周端41aよりも前方の領域に位置している。すなわち、主ヨーク11の少なくとも一部が、第1の振動体41で囲まれた円錐形状の内側空間内に位置している。そのため、前後の寸法を薄型化しやすくなる。また、主ヨーク11の全体が、第1の振動体41の外周端41bよりも後方で、内周端41aよりも前方に位置している構造にすると、さらに薄型化を実現しやすくなる。
【符号の説明】
【0061】
1,101 複合スピーカ
2 内側フレーム
3 外側フレーム
10 第1の磁界発生部
11 主ヨーク
11a 外周ヨーク
11b 内周ヨーク
12 第1の空間
13 第1の磁石
13c スリット
15 スリット
16 第2の空間
16a 後方穴部
16b 前方穴部
18 ホーン部
18a ホーン面
20 第2の磁界発生部
21 内側ヨーク
22 前方凹部
23 第2の磁石
24 対向ヨーク
31 第1のボイスコイル
32 放射連結部材
33 円筒連結部材
34 ダンパー部材
41 第1の振動体
41a 内周端
41b 外周端
42 内側ダンパー部材
43 外側ダンパー部材
45 第2の振動体
47 第2のボイスコイル
49 支持部材
G1 第1の磁気ギャップ
G2 第2の磁気ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の振動体と、第1の振動体よりも面積が小さい第2の振動体と、第1の振動体を駆動する第1のボイスコイルおよび第2の振動体を駆動する第2のボイスコイルが搭載された複合スピーカにおいて、
磁性材料で形成された主ヨークに、少なくとも後方に向けて開口する第1の空間が形成され、第1の空間の内部にリング状の第1の磁石が固定されて、第1の磁石の内周面または外周面と主ヨークとの間に第1の磁気ギャップが形成されて、第1のボイスコイルが、第1の磁気ギャップの内部に位置しており、
前記主ヨークの第1の磁石に囲まれた領域内に、少なくとも前方に向けて開口する第2の空間が形成され、第2のボイスコイルと第2のボイスコイルを駆動する第2の磁界発生部が、第2の空間内に収納されていることを特徴とする複合スピーカ。
【請求項2】
第1の振動体は第1のボイスコイルよりも外側に位置し、第2の振動体は第2のボイスコイルよりも内側に位置している請求項1記載の複合スピーカ。
【請求項3】
第2の空間は、主ヨークを前後に貫通して形成されている請求項1または2記載の複合スピーカ。
【請求項4】
第2の磁界発生部が、リング状の第1の磁石で囲まれた領域内に位置している請求項3記載の複合スピーカ。
【請求項5】
第2の磁界発生部は、前方に開口する前方凹部を有する内側ヨークと、前方凹部の内底部に固定された第2の磁石および第2の磁石の前方に固定された対向ヨークとを有して、前方凹部の内周面と対向ヨークとの間に第2のボイスコイルが位置する第2の磁気ギャップが形成されており、前記内側ヨークが第2の空間内に前方から装着されている請求項1ないし4のいずれかに記載の複合スピーカ。
【請求項6】
前記主ヨークの少なくとも一部が、第1の振動体の外周端よりも後方で且つ内周端よりも前方に位置している請求項1ないし5のいずれかに記載の複合スピーカ。
【請求項7】
第1の振動体の内周端が、主ヨークの前端よりも後方に位置している請求項1ないし6のいずれかに記載の複合スピーカ。
【請求項8】
主ヨークには、第1の空間に連通して後方に開放された複数のスリットが設けられ、第1の振動体と第1のボイスコイルとを連結する連結部材が前記スリット内に位置している請求項1ないし7のいずれかに記載の複合スピーカ。
【請求項9】
第1のボイスコイルの前方に、第2の振動体の振動で発せられる音圧を前方に導くホーン部が設けられている請求項1ないし8のいずれかに記載の複合スピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−124719(P2012−124719A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273961(P2010−273961)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】