説明

複合床材の実結合構造

【課題】複合床材の実結合部のワックスによる膨れを防止することができるとともに、しっかりと実結合できる複合床材の実結合構造を提供する。
【解決手段】木質系基材1の上に木質ボード材2を積層してなる複合床材Aにおいて、該複合床材Aに雄実3と雌実4とからなる実結合部を形成するとともに、この実結合部の上部にワックス溜まり空間を設けたことを特徴とする。上記雄実3の上に該雄実3の上面31の付け根部から木質系基材1と木質ボード材2に亘る面を面取りして中空部が設けられ、上記雌実4を構成する実上部分41は実結合したとき、上記中空部と合一して断面略三角形の中空部が形成されるように面取りされ、該中空三角形の頂点が木質ボード材の突き合わせ空隙部21に連通してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合床材に関する。さらに詳しくは、木質系基材の上に木質ボード材を積層してなる複合床材の実結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芯材として木質系基材を用い、その上に木質ボード材を貼り合わせて複合床材として用いることは公知であり、特に合板を木質系基材とし、表面に木質ボード材が積層された木質床材は、いわゆるフローリング材として一般的に使用されている。上記フローリング材は、生活様式の洋風化に伴ってリビングルーム等に広く使用され、単に拭き掃除をするのみならず、ワックスをかけて美装性を向上させることが行われている。
【0003】
一方、表面材として用いられる上記木質ボード材、例えば、MDF(中密度繊維板)は半裁、1/4裁として薄くして用いられることが多く、ワックスをかけたとき、木質ボード材がワックスの主成分である脂肪族パラフィン系炭化水素を吸収して膨れることが多い。この膨れ現象は、特に実結合部分に顕著にみられる。
【0004】
本願図5は、複数の複合床材Aを公知の実結合8によって連結する状態を示す断面図である。本願図5に示されているように、上記複合床材Aは、例えば、合板を木質系基材1とし、その上に木質ボード材2を積層して形成されている。そして、木質系基材1の対向する側端面には、雄実81および雌実82を設けこれらを結合することによって、実結合8が形成される。
【0005】
上記実結合は、雄実81を雌実82に嵌入するだけで隣接する複合床材Aどうしを結合することができるが、接着剤によって接着し、より強固に複合床材Aどうしを連結することも行われている。下記特許文献1には、雄実はその付根部分から先端側に上下の傾斜面を先細りに形成され、雌実はその先端部分から板材の内部方向に向け上下の傾斜面を先細りに形成され、実結合時に雄実と雌実とが接触することなく隙間空間が連通し、この隙間空間に接着剤を十分に行き渡らせることのできる実結合構造が記載されている。
【特許文献1】特開2006−112039号公報(第43〜45頁、第1図、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の実結合構造は、実接着することによってしっかりと床材どうしを連結することはできるものの、依然として、ワックスをかけることによって生じる上記した実結合部分の膨れ現象を防止することはできない。
【0007】
本発明は、このような状況のもとで考え出されたものであり、木質系基材の上に木質ボード材を積層してなる複合床材の実結合部のワックスによる膨れを防止することのできるとともに、しっかりと実結合できる複合床材の実結合構造を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明においては、つぎのような技術的手段を講じている。すなわち、本願請求項1に記載の複合床材の実結合構造は、木質系基材の上に木質ボード材を積層してなる複合床材において、該複合床材に雄実と雌実とからなる実結合部を形成するとともに、この実結合部の上部にワックス溜まり空間を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項2に記載の発明は、上記請求項1記載の複合床材の実結合構造において、上記雄実の上に該雄実の上面の付け根部から木質系基材と木質ボード材に亘る面を面取りして中空部が設けられ、上記雌実を構成する実上部分は実結合したとき、上記中空部と合一して断面略三角形の中空部が形成されるように面取りされ、該中空三角形の頂点が木質ボード材の突き合わせ空隙部に連通することを特徴としている。
【0010】
本願請求項3に記載の発明は、上記請求項2記載の複合床材の実結合構造において、上記中空三角形を構成する雌実部の実上部分に座繰り部を設けることを特徴としている。
【0011】
本願請求項4に記載の発明は、上記請求項1記載の複合床材の実結合構造において、上記雄実の上面に断面略三角形の溝部が凹設されたことを特徴としている。
【0012】
本願請求項5に記載の発明は、上記請求項4記載の複合床材の実結合構造において、上記雄実の突出長さを雌実を構成する実下部分の長さより小さくし、実結合したとき木質ボード材の突き合わせ空隙部に目透かしが設けられることを特徴としている。
【0013】
本願請求項6に記載の発明は、上記請求項4記載の複合床材の実結合構造において、上記雄実の突出長さを雌実を構成する実下部分の長さより大きくし、実結合したとき木質ボード材の突き合わせ空隙部に目透かしが設けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明にかかる複合床材の実結合構造においては、上記のとおりであり、木質系基材の上に木質ボード材を積層してなる複合床材に雄実と雌実とからなる実結合部を形成し、この実結合部の上部にワックス溜まり空間が設けられているため、上記複合床材の床面にワックスをかけたとき、上記実結合部から浸入したワックスが滞留することなく、雄実の上に設けられたワックス溜まり空間に溜められ、従来、対向する木口面で吸収されたワックスにより、実結合部で膨らみが生じたことを防げる。
【0015】
請求項2に記載の複合床材の実結合構造においては、特に、上記雄実の上を面取りして中空部を設け、上記雌実を構成する実上部分には実結合したとき、上記中空部と合一して断面略三角形の中空部が形成されるように面取りし、該中空三角形の頂点が木質ボード材の突き合わせ空隙部に連通するため、複合床材の床面にワックスをかけたとき上記突き合わせ空隙部から浸入したワックスは滞留することなく、上記断面略三角形の中空部に溜められ、対向する木口面で吸収されたワックスによって、実結合部で生じる床面の膨らみを防ぐことができる。
【0016】
請求項3に記載の複合床材の実結合構造においては、特に、上記中空三角形を構成する雌実部の実上部分に座繰り部が設けられてなり、座繰りして断面略梯形の中空部が形成され、この中空部がワックス溜まりとして機能し、上記突き合わせ空隙部から浸入したワックスが木口面に接触して滞留することがないため、実結合部で膨らみを生じることを防ぐ。
【0017】
請求項4に記載の複合床材の実結合構造においては、特に、上記雄実の上面に断面略三角形の溝部が凹設されているため、突き合わせ空隙部から浸入したワックスは滞留することなく、上記溝部に溜められるため、上記突き合わせ空隙部から浸入したワックスにより、実結合部で膨らみが生じることを防ぐ。
【0018】
請求項5に記載の複合床材の実結合構造においては、特に、上記雄実の突出長さを雌実を構成する実下部分の長さより小さくし、実結合したとき木質ボード材の突き合わせ空隙部に目透かしが設けられるため、この目透かしから浸入したワックスは滞留することなく、雄実の上面に凹設されたワックス逃し溝に溜められ、さらに、雄実の突出長さを雌実の実下部分の長さより小さくすることによって生じた空隙に流れて床面の実結合部付近でワックスにより生じる膨れを防ぐことができる。
【0019】
請求項6に記載の複合床材の実結合構造においては、特に、上記雄実の突出長さを雌実を構成する実下部分の長さより大きくし、実結合したとき木質ボード材の突き合わせ空隙部に目透かしが設けられるため、この目透かしから浸入したワックスは滞留することなく、雄実の上面に凹設されたワックス逃し溝に溜められ、さらに、雄実の突出長さを雌実の実下部分の長さより大きくすることによって生じた空隙に流れて床面の実結合部付近でワックスにより生じる膨れを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態にかかる複合床材の実結合構造を示す分解説明図である。図1(a)において、複合床材Aは木質系基材1としての合板の上に木質ボード材2として厚さ2.7mmのMDF(中密度繊維板)が積層されたものであり、全厚さは12mmである。また、その側端部には、雄実3と雌実4とが設けられている。
【0021】
図1(a)に示されるように、上記雄実3の上にはその上面31の付け根部から角度αで木質系基材1と木質ボード材2に亘る面が面取りされ、その角度αは約30〜55°とされる。また、上記雌実4を構成する実上部分41と実下部分42のうち、実上部分41も同様に面取りがされ、雄実3と雌実4とが実結合したとき、断面略三角形の中空部が形成されるように加工されている。
【0022】
図1(b)は、上記雄実3と雌実4とが実結合した状態を示す断面図である。図1(b)に示すように、複合床材Aの木質ボード材2どうしを突き合わせ、実結合することにより、雄実3の上面31を底辺とする断面略三角形の三角中空部5が形成され、上記三角中空部5の頂点は木質ボード材2の突き合わせ空隙部21に連通している。
【0023】
上記のように構成することにより、複合床材Aの床面にワックスをかけたとき、上記突き合わせ空隙部21から浸入したワックスは滞留することなく、雄実3の上に設けられた三角中空部5に溜められる。その結果、従来、対向する木口面で吸収されたワックスによって生じる実結合部での膨らみを防ぐことができる。
【0024】
また、上記雄実3と雌実4とをゆるく実結合させることにより、三角中空部5に連通する空間を広げることができるとともに、実結合間の空隙がワックスの逃し溝となり、さらに床下地等に浸みこませることにより、木口面でのワックスの吸収を防ぎ、床面の膨れを防ぐことができる。
【0025】
図2は、図1(a)、(b)に示す実施形態の変形例を示す断面図である。図2に示すように、雌実4を構成する実上部分41を座繰りして断面略梯形の梯形中空部6が形成され、この梯形中空部6がワックス溜まりとして機能し、また、上記と同様に実結合間の空隙がワックスを逃し、床面の膨れを防ぐことができる。
【0026】
図3は、本発明の第2実施形態にかかる複合床材の実結合構造を示す断面図である。図3に示すように、本実施形態においては雄実3の上面31に断面略三角形のワックス逃し溝7が凹設されるとともに、雄実3の突出長さを雌実4を構成する実下部分42の長さより小さくし、実結合したとき木質ボード材2の突き合わせ空隙部21に幅dの目透かしが設けられるように加工されている。
【0027】
このとき、上記ワックス逃し溝7は、実結合を釘固定するときの釘溝を兼ねて設けられ、幅0.5〜1.5mm、深さ0.3〜1.0mm、頂角80〜120°とされる。また、幅dは0.3〜0.5mmとされ、この突き合わせ空隙部21の目透かしから浸入したワックスは滞留することなく、雄実3の上面31に凹設されたワックス逃し溝7に溜められる。さらに、ワックスは、雄実3の突出長さを雌実4の実下部分42の長さより小さくすることによって生じた空隙に流れ、このようにして、ワックスを逃して床面の実結合部付近の膨れを防ぐことができる。
【0028】
図4は、図3に示す第2実施形態の変形例を示す断面図である。図4に示すように、本変形例においては、雄実3の上面31に断面略三角形のワックス逃し溝7を凹設するとともに、雄実3の突出長さを雌実4を構成する実下部分42の長さより大きくし、実結合したとき木質ボード材2の突き合わせ空隙部21に幅dの目透かしが設けられるようにされている。上記と同様に、この突き合わせ空隙部21の目透かしから浸入したワックスは滞留することなく、雄実3の上面31に凹設されたワックス逃し溝7に溜められ、さらに、ワックスを逃して床面の実結合部付近の膨れを防ぐことができる。
【0029】
上記実施形態においては、複合床材Aとして、合板とMDF(中密度繊維板)とが積層されたものを例示したが、これに限られず、WPB(ウッドプラスチックボード)を木質系基材1として用い、パーティクルボードを木質ボード材2として用いてもよい。このように、本発明は設計変更自在であり、いずれの場合においても、特許請求の範囲を逸脱しない限り、本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態にかかる複合床材の実結合構造を示す分解説明図、(b)は本発明の第1実施形態にかかる雄実と雌実とが実結合した状態を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる複合床材の実結合構造の変形例を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる複合床材の実結合構造を示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態にかかる複合床材の実結合構造を示す断面図である。
【図5】複合床材を公知の実結合によって連結した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
A 複合床材
1 木質系基材
2 木質ボード材
21 突き合わせ空隙部
3 雄実
31 上面
4 雌実
41 実上部分
42 実下部分
5 三角中空部
6 梯形中空部
7 ワックス逃し溝
8 公知の実結合
81 雄実
82 雌実

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系基材の上に木質ボード材を積層してなる複合床材において、該複合床材に雄実と雌実とからなる実結合部を形成するとともに、この実結合部の上部にワックス溜まり空間を設けたことを特徴とする複合床材の実結合構造。
【請求項2】
上記雄実の上に該雄実の上面の付け根部から木質系基材と木質ボード材に亘る面を面取りして中空部が設けられ、上記雌実を構成する実上部分は実結合したとき、上記中空部と合一して断面略三角形の中空部が形成されるように面取りされ、該中空三角形の頂点が木質ボード材の突き合わせ空隙部に連通する請求項1に記載の複合床材の実結合構造。
【請求項3】
上記中空三角形を構成する雌実部の実上部分に座繰り部が設けられた請求項2に記載の複合床材の実結合構造。
【請求項4】
上記雄実の上面に断面略三角形の溝部が凹設された請求項1に記載の複合床材の実結合構造。
【請求項5】
上記雄実の突出長さを雌実を構成する実下部分の長さより小さくし、実結合したとき木質ボード材の突き合わせ空隙部に目透かしが設けられるようにした請求項4に記載の複合床材の実結合構造。
【請求項6】
上記雄実の突出長さを雌実を構成する実下部分の長さより大きくし、実結合したとき木質ボード材の突き合わせ空隙部に目透かしが設けられるようにされた請求項4に記載の複合床材の実結合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−46928(P2009−46928A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215929(P2007−215929)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】