説明

複合弁

本発明の課題は、安全機構として動作する手動弁とパイロット弁とを一体化した複合弁を提供することである。手動弁のノブ53のハンドル55が安全機構解除位置Rに存在する場合には、操作ポート24へのエア供給の有無により弁機構の開閉をすることができる。そして、手動弁のノブ53のハンドル55が安全機構解除位置Rに存在し、弁機構が弁開状態の場合においても、手動弁のノブ53のハンドル55を安全機構セット位置Sへ回転させることにより、強制的に弁機構を弁閉状態に遷移させることができる。さらに、手動弁のノブ53のハンドル55が安全機構セット位置Sに存在する場合には、操作ポート24へのエア供給に関わらず常に弁機構を弁閉状態に維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れを制御する弁において、安全装置として動作する手動弁とパイロット弁とを一体化した複合弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来半導体製造工程に代表される、各種ガス等を流す配管を備える設備では、配管を取りはずして各種作業を行う場合のために、パイロット弁の誤動作によるガス漏洩を防ぐ安全装置が必要とされている。そのような従来技術として、特許文献1に開示される技術について図14を用いて説明する。
図14に、半導体製造工程で使用される従来技術1のプロセスガスユニット200の構成を示す。プロセスガスユニット200は、手動弁201、入力エアオペレート弁205、マスフローコントローラ208、出力エアオペレート弁210、手動弁211等が直列に接続されている。そして、プロセスガスは左端矢印部GIから入り、右端矢印部GOから出て、真空チャンバ等(不図示)に送り込まれる。
【0003】
通常使用状態では手動弁201、211は弁開状態に保持されており、遠隔操作による入力エアオペレート弁205および出力エアオペレート弁210の開閉動作によりプロセスガスの供給・停止を行う。
また、プロセスガスユニット200の保守点検状態(マスフローコントローラ208を取りはずす場合等)では手動弁201、211を弁閉状態に保持し、エアオペレート弁205、210の開閉状態に関わらずガスの供給を停止する。よって、手動弁201、211が開状態の場合にはガス供給の開始・停止が自在であり、手動弁201、211が閉状態の場合には必ずガスの供給を遮断状態にできる。
さらに、ガスの供給中であっても、緊急時等には手動弁201、211を開から閉状態にすることでガスの供給を遮断できる。このように配管に手動弁とエアオペレート弁とを直列に接続する配管構成をとれば、手動弁201、211が安全装置の役割を果たす。
【0004】
ところが半導体製造ラインでは、常にさらなる装置の小型化・低価格化が要求されている。そこで、プロセスガスユニットの省スペース化の策の一つとして、手動弁とエアオペレート弁とを一体化した複合弁を構成することが考えられる。そのような複合弁の例として、特許文献2ように、手動によるレバー弁とエアオペレート弁とを一体化した動作レバー弁付エアオペレート弁が開示されている。ここで、従来技術の動作レバー弁付エアオペレート弁の一例として、特許文献2に開示される従来技術2を説明する。
【0005】
図15に示す従来技術2の動作レバー弁付エアオペレート弁は、弁箱の駆動手段によって弁体を駆動することで流体の流れを制御できる一方、弁箱に配備された動作レバーにより駆動手段の動作にかかわらず流体の流通を禁止することができることを目的とする。
【0006】
以下、図15の構成を説明する。主動作弁101は、処理液の入口と出口とを有する流路102が形成された弁箱103を備えている。流路102の中央部付近には、弁座104が形成されている。弁体105には、弁棒106の一端が連結されている。また、弁箱103には、弁棒106を弁座104側に進退可能に保持する保持部107が備えられている。ここには弁棒106の他端に連動連結されたピストン108が摺動自在に備えられている。ピストン108は、通常状態では弁体105が弁座104に対して当接するように、圧縮コイルバネ109により付勢されている。そして、ピストン108は、図示しない電磁弁を作動させると、貫通孔115からのエア供給によるエア圧によってシリンダ116においてコイルバネ109の付勢力に抗して摺動する。ピン状に形成された押圧部材110は、図示しない引っ張りコイルバネによってピストン108とは反対側に付勢されており、その基端部110aは球状に形成されている。押圧部材110の基端部110a側には、動作レバー111が配備されている。この動作レバー111は、偏心軸112を挟んで一端側に保持片113を備え、他端側に基端部110aに当接する当接片114を備えている。
【0007】
そこで、動作レバー111の保持片113を手前側に引く(図15では矢印A方向)と、当接片114が偏心軸112周りに回転し、押圧部材110がピストン108に向けて押し出され、弁体105が弁座104に当接する。すなわち、動作レバー111は、弁体105を弁座104に対して強制的に当接させる状態と、弁体105が弁座104に対して離間し得る状態とを切換えることができる。なお、上述した押圧部材110と動作レバー111が本発明における切換手段に相当し、上述した動作レバー111が進退駆動手段に相当する。このように弁箱103に備えられた保持部107によって弁体105を駆動することで処理液の流れを制御するとともに、弁箱103に配備された押圧部材110及び動作レバー111により、保持部107の動作状態にかかわらず流体の流通を強制的に禁止する。
【特許文献1】特開平11−51226号公報(第0003−0005段落、第15図)
【特許文献2】特開2003−130249号公報(第0032−0039段落、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術は、以下のような問題を有している。
(1)従来技術1については、図14に記載の従来技術1における配管構成方法によると、手動弁201、211は安全装置の機能を有するが、エアオペレート弁205、210と手動弁201、211との二種類の弁が必要となるため、弁の設置スペースの省スペース化が図れないため問題である。
【0009】
(2)従来技術2については以下のとおりである。
トグルの効果として、トグルにより装置の外側から容易に処理液の流通状態を制御することができることが得られるため、図15に記載の従来技術2では、トグルのうち動作レバー111を採用し、動作レバー弁付エアオペレート弁としている。
しかし、これにより、動作レバー弁とエアオペレート弁とを一体に形成できるが、手動により弁閉にすることができるだけで、動作レバー111の位置を所定の位置に固定保持する機構はない。そのため、確実に弁閉状態を維持できず、安全装置としての機能がない。
すなわち、従来技術2は、手動により一時的に弁閉する機能を有することを目的とするものにすぎず、例えばメンテナンス等により配管を外した際、エアオペレート弁の誤動作によって液が流出してしまう。
確かに、特許文献2の段落(0038)には、「これにより従来のトグルバルブ(13)と安全弁(17)の二つの機能を一体にすることができるので、取り付けスペースを小さくできる主動作弁21を実現することができる。」と記載されている。しかし、前記のとおり確実に弁閉状態を維持する機能は有しておらず、本来の安全弁としての機能は有していない。
【0010】
(3)薬液弁では半導体製造過程で使用する薬液が流れるため、弁体の材料として耐腐食性のあるフッ素樹脂を使用する必要がある。フッ素樹脂はいわゆるクリープ現象による変形を起こしやすいため、パイロット弁としての通常の使用を長期間にわたって続けると、弁座が荷重方向に塑性変形により縮んだままの状態になる。
従って、塑性変形が進めば、弁体と弁座間でのシール力が低下して、漏れが発生するおそれがある。
【0011】
(4)また、動作レバー111の位置を所定の弁開位置に固定保持する機構はない。そのため、確実に弁開状態を維持できず、パイロット弁としての通常の使用を維持する機能がない。すなわち、従来技術2は、手動により弁開する機能を有することを目的とするものにすぎず、例えばピストンストロークを制限するストッパ(不図示)にピストン108が当接する際に発生する動作レバー111への振動により、動作レバー111が弁閉状態に遷移して、作業者の意に反してパイロット弁が弁閉し、液の流出が止まってしてしまう。
【0012】
(5)さらに、動作レバー111により弁体105を弁座104に対して強制的に当接させるときには、貫通孔115からエア供給下であればシリンダ116内のピストン108が受けるエア圧に対抗して行わなければならず、動作レバー111操作に大きな力を要する。
【0013】
本発明は前記従来技術の課題を解消するためになされたものであり、安全機構として動作する手動弁とパイロット弁とを一体化した複合弁を提供することを目的とする。
すなわち、前記従来技術の課題(1)乃至(3)を解消するために、安全機構として動作する手動弁が解除状態のときにのみパイロット弁の開閉が有効であり、またパイロット弁が弁開状態であっても手動弁を弁閉状態にすることで流体の流れを遮断し、その状態を維持できるような薬液弁としての用途も備えた複合弁を提供することを目的とする。
また、前記従来技術の課題(4)を解消するために、手動弁の弁開状態を保持する機構により、パイロット弁としての通常の使用を維持できる複合弁を提供することを目的とする。
さらに、前記従来技術の課題(5)を解消するために、作業者が力を要することなく操作できる手動弁を有する複合弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は以下の特徴を有する。
(1)弁座に当接または離間して流体の流れを制御するダイアフラム弁体を有する弁機構と、付勢手段により当接されている前記弁座と前記ダイアフラム弁体とを空気圧により離間させるパイロット機構と、前記パイロット機構と同軸上に備えられた手動機構とを有する複合弁において、前記手動機構が前記ダイアフラム弁体を前記軸方向に弁開位置から弁閉位置へ移動させるものであって、前記ダイアフラム弁体を前記弁閉位置に保持する手動弁弁閉保持手段を有することを特徴とする。
【0015】
従って、弁機構が弁開しパイロット機構へのエア供給がなされている状態から弁機構を弁閉しなければならないとする緊急時にも、作業者は手動機構により対応することができる。
また、手動機構によりパイロット機構へのエア供給のいかんに関わらず、弁機構を弁閉状態に保持することが可能であるので、例えばメンテナンス時に誤ってパイロット機構へのエア供給を行っても、弁機構が弁開状態にならず、作業者は安全にメンテナンス作業を行うことができる。
【0016】
(2)前記(1)に記載の複合弁において、ダイアフラム弁体の軸方向における弁閉位置を調整する機構を有することを特徴とする。
【0017】
従って、パイロット弁としての長期間の使用により、弁座がダイアフラム弁体から繰り返し荷重を受け、弁座が塑性変形して軸方向に縮み弁閉時のシール力が低下したときには、ダイアフラム弁体を軸方向に調整することにより、複合弁の弁閉時のシール力を上昇させることができ、弁機構の弁閉状態における流体の吐出を防止できる。
【0018】
(3)前記(1)又は(2)に記載の複合弁において、手動機構と前記ダイアフラム弁体とが各々独立して軸方向に移動可能であることを特徴とする。
【0019】
従って、弁座には手動弁のロッドの荷重はかからず、ダイアフラム弁体を経由してスプリングの荷重のみがかかるため、パイロット弁の長期間の使用により、弁座がダイアフラム弁体から繰り返し荷重を受けても、弁座が塑性変形して軸方向に縮まない。そのため、弁座とダイアフラム弁体とのシール力が低下することはなく、弁機構の弁閉状態における流体の吐出を防止できる。
また、仮にパイロット弁の長期間の使用により、弁座がダイアフラム弁体から繰り返し荷重を受けて、弁座が塑性変形して軸方向に縮んだとしても、ダイアフラム弁体を経由してスプリングの荷重により、ダイアフラム弁体が弁座に対して軸方向に追従することができる。そのため、弁座とダイアフラム弁体とのシール力が低下することはなく、弁機構の弁閉状態における流体の吐出を防止できる。
【0020】
(4)前記(1)乃至(3)に記載する複合弁のいずれか一つにおいて、手動機構がダイアフラム弁体を軸方向に弁開位置から弁閉位置へ移動させるときに、手動機構に操作ポートからのエア圧がかからない機構を有することを特徴とする。
【0021】
従って、パイロット弁の弁開状態下で、手動弁を弁開状態から弁閉状態にするときに手動弁にはエア圧がかからず、作業者は力を要することなくパイロット弁を弁閉状態にすることができる。
【0022】
(5)前記(1)乃至(4)に記載する複合弁のいずれか一つにおいて、前記手動弁を弁開位置に保持する手動弁弁開保持手段を有することを特徴とする。
【0023】
従って、パイロット機構へのエア供給のいかんに関わらず、手動弁を弁開状態に保持することが可能であるので、例えば弁機構の開閉動作時において、ピストン等の摺動部品のストロークを制限するストッパにピストン等の摺動部品が当接することで生じる振動により手動弁が弁閉状態へ遷移することを防止でき、通常のパイロット弁としての機能が維持される。
【0024】
(6)前記(4)に記載の複合弁において、前記手動機構に操作ポートからのエア圧がかからない機構として、エア圧が生じる前記パイロット機構のピストン内に軸方向に摺動可能に装填され、前記ピストンとフランジ形状部で当接または離間可能なシャフトを有することを特徴とする。
【0025】
(7)前記(4)に記載の複合弁において、前記手動機構に操作ポートからのエア圧がかからない機構として、エア供給を受ける前記手動機構のピストン形状部の外周部に形成されたエアの供給路とピストンシリンダの供給路を遮断する機構を有することを特徴とする。
【0026】
(8)前記(4)に記載の複合弁において、前記手動機構に操作ポートからのエア圧がかからない機構として、エア供給を受ける前記手動機構のピストン形状部の内部に形成されたエアの供給路と、前記ピストン形状部が摺動するスプールシリンダの供給路を遮断する機構を有することを特徴とする。
【0027】
(9)前記(1)乃至(5)に記載する複合弁のいずれか一つにおいて、前記手動弁弁閉保持手段として、鍵孔を有するブラケットが手動弁のハンドルの二股に分かれる間を貫通することを特徴とする。
【0028】
(10)前記(9)に記載の複合弁において、前記ブラケットの鍵孔に鍵を通し、前記ノブのハンドルが鍵のツルに触れる位置まで回転したときに、前記ノブと前記ピストン形状部が接しないことを特徴とする。
【0029】
(11)前記(4)に記載の複合弁において、手動機構に操作ポートからのエア圧がかからない機構として、エア供給を受ける前記手動機構の操作ポートと、カバーに形成されるエア供給ポートとを連通および遮断する機構を有することを特徴とする。
【0030】
(12)前記(4)に記載の複合弁において、カバーに、操作ポート、排気ポート、エア供給ポートが形成される3ポート弁を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、弁座に当接または離間して流体の流れを制御するダイアフラム弁体を有する弁機構と、付勢手段により当接されている前記弁座と前記ダイアフラム弁体とを空気圧により離間させるパイロット機構と、前記パイロット機構と同軸上に備えられた手動機構とを有する複合弁において、前記手動機構が前記ダイアフラム弁体を前記軸方向に弁開位置から弁閉位置へ移動させるものであって、前記ダイアフラム弁体を前記弁閉位置に保持する手動弁弁閉保持手段を有するので、弁の設置スペースの省スペース化が図れることに加えて、手動弁が解除状態のときにのみパイロット弁の開閉が有効で、また、パイロット弁が弁開状態であっても手動弁を弁閉状態にすることで流体の流れを遮断し、その状態を維持することができるという安全装置としての機能を有し、手動弁につき安全弁としての機能も有することになった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態の実施例における複合弁の手動機構による弁閉保持状態を示す図である。
【図2】第1実施形態の実施例における複合弁の弁閉状態を示す図である。
【図3】第1実施形態の実施例における複合弁の弁開状態を示す図である。
【図4】第1実施形態の実施例における複合弁の手動機構による弁閉保持状態において南京錠にて施錠した状態を示す図である。
【図5】第1実施形態の複合弁を薬液弁として使用し、弁座の塑性変形が生じた後の状態を示す図である。
【図6】図5に示す弁座の塑性変形後に、ダイアフラム弁体を弁座に追従させた状態を示す図である。
【図7】第2実施形態の実施例における複合弁の手動機構による弁閉保持状態を示す図である。
【図8】第2実施形態の実施例における複合弁の弁閉状態を示す図である。
【図9】第2実施形態の実施例における複合弁の弁開状態を示す図である。
【図10】第2実施形態の実施例において、手動機構により複合弁を弁開状態から弁閉状態にするときに、手動機構をノブと調整ロッドとがノブの外周形状の変曲点の位置で接合するまで回転させた状態を示す図である。
【図11】第3実施形態の実施例における複合弁の手動機構による弁閉保持状態を示す図である。
【図12】第3実施形態の実施例における複合弁の弁閉状態を示す図である。
【図13】第3実施形態の実施例における複合弁の弁開状態を示す図である。
【図14】従来技術におけるプロセスガスユニットの構成を示す図である。
【図15】従来技術における動作レバー弁付エアオペレート弁を示す図である。
【図16】第4実施形態の実施例における複合弁の手動機構による弁閉保持状態を示す図である。
【図17】第4実施形態の実施例における複合弁の弁閉状態を示す図である。
【図18】第4実施形態の実施例における複合弁の弁開状態を示す図である。
【図19】ブラケットの錠孔の位置とノブのハンドルの回転の遊びを示す図である。
【図20】ノブとブラケットの配置関係を示す図である。
【図21】第5実施形態の実施例における複合弁の弁開状態を示す図である。
【図22】複合弁5の上面図である。
【図23】複合弁5の上方部分の外観図である。
【図24】ロッド部分におけるA−A断面を示す図である。
【図25】第5実施形態の実施例における複合弁の弁閉状態を示す図である。
【図26】第5実施形態の実施例におけるパッキンを示す図である。
【図27】ノブの部分の外観図である。
【図28】ノブとロッドとピンとの間の関係を示す図である。
【図29】復帰バネを利用して自動的にスライドする方法の概要図である。
【図30】復帰バネを利用して自動的にスライドする方法の概要図である。
【図31】施錠についての別仕様を示す図である。
【図32】ノブのある端面と反対側のロッドの端面の形状を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
<下2桁の番号><部品・部位名>
11 弁本体
12 シリンダ
13 カバー
21 ピストンロッドまたはロッド
23 加圧室
24 操作ポート
31 弁座
32 ダイアフラム弁体
33 ポート
34 ポート
35 連通部
51 ロッドまたは調整ロッド
53 ノブ
54 偏心軸
55 ハンドル
71 送りねじ
75 ロックナット
<その他>
S 安全機構セット位置
R 安全機構解除位置
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明にかかる複合弁について具体化した実施形態を図1乃至図13、図16乃至図32に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
<第1実施形態>
第1実施形態として、複合弁1の実施例を図1乃至図6を用いて説明する。
図1乃至図3は、本発明の複合弁1の第1実施例を示した断面図である。図3に示すように複合弁1のボディ部は、弁本体11、シリンダ12及びカバー13が一体になって構成されている。そして、複合弁1はパイロット弁と手動弁と弁座追従機構から成り立っている。なお、複合弁1で「上方」とは手動弁側、「下方」とはパイロット弁側を指すものとする。
【0035】
そこで先ず、複合弁1のパイロット弁について説明する。パイロット弁はさらにパイロット機構と弁機構に分けることができる。ここで、パイロット機構は、シリンダ12、カバー13、ピストンロッド21、スプリング22、スプリング52によって構成される。シリンダ12及びカバー13は密閉容器を構成し、その中を摺動するピストンロッド21が装填されている。ピストンロッド21によってシリンダ12及びカバー13内の空間は上下2室に分割され、下室が加圧室23とされる。加圧室23には操作ポート24が連通されている。一方、ピストンロッド21上方には、ピストンロッド21を下方へ付勢するスプリング22及びスプリング52が装填されている。
【0036】
一方、弁機構は、弁本体11、弁座31、ダイアフラム弁体32、ポート33、ポート34によって構成される。弁本体11は、ポート33とポート34とが弁座31を介して連通部35にて連通されている。そして、弁座31に当接・離間するダイアフラム弁体32が、弁本体11とシリンダ12との間で挟持固定されている。そのため、弁本体11とシリンダ12とはダイアフラム弁体32によって気密に仕切られ、連通部35内を流れる流体がシリンダ12側へ漏れることはない。また、シリンダ12にはピストンロッド21が摺動可能に挿着され、ピストンロッド21はダイアフラム弁体32と一体になっている。ピストンロッド21が下方へ付勢されない場合には、ダイアフラム弁体32は弁座31と離間し、一方、ピストンロッド21により下方へ付勢される場合には、ダイアフラム弁体32は弁座31と当接するように配置される。
【0037】
次に、複合弁1の手動弁について説明する。手動弁は、ロッド51、スプリング52、ノブ53によって構成される。ロッド51の上方にはノブ53が偏心軸54を中心にして回転可能な状態で取り付けられ、さらにノブ53はハンドル55と鍵孔56を備えている。
【0038】
次に、弁座追従機構について説明する。弁座追従機構は、外周に雄ねじ部が形成された送りねじ71、内周に雌ねじ部が形成された保持部72、調整つまみ73、止めねじ74、ロックナット75によって構成される。送りねじ71は、カバー13の保持部72に回転可能に歯合して設置され、送りねじ71とピストンロッド21の間には回り止めピン20が設置されている。また、ロックナット75が保持部72の上方に設置され、保持部72の外周側には調整つまみ73と止めねじ74が設置されている。
【0039】
以上のような構成からなる複合弁1は、次のように作用する。
始めにパイロット弁としての通常の作用について説明する。手動弁は弁開したうえでパイロット弁を弁開することにより流体を流す状態を図3に、手動弁は弁開したうえでパイロット弁を弁閉することにより流体を流さない状態を図2に示す。
【0040】
先ず、図3を説明する。図3は図示しない電磁弁によりエア圧を供給して、パイロット弁を弁開した状態を示す。具体的には、操作ポート24からエアを供給する。すると、加圧室23のエア圧の上昇によって上方への力を受けたピストンロッド21がシリンダ12内を摺動し、スプリング22及びスプリング52の下方への付勢力に対抗して上昇する。ピストンロッド21の上昇に伴ってダイアフラム弁体32も下方に付勢されなくなり、ダイアフラム弁体32は弁座31から離間する。従って、弁座31とダイアフラム弁体32との間に流路スペースができ、ポート33と連通部35とポート34とが連通するので、ポート33から供給される流体がポート34から吐出される。
【0041】
次に図2は、パイロット弁を弁閉した状態を示す。具体的には、操作ポート24から加圧室23内へ供給されたエアの供給を止めて、ピストンロッド21を上方へ付勢する加圧室23内のエア圧を減圧させれば、ピストンロッド21が上方に装填されたスプリング22及びスプリング52の付勢力によって押し下げられる。従って、ピストンロッド21が下方に付勢され、ピストンロッド21と一体のダイアフラム弁体32が弁座31に当接するので、弁座31とダイアフラム弁体32との間に流路スペースがなくなり、ポート33と連通部35とポート34とが連通せず、ポート33から供給される流体がポート34から吐出されない。
すなわち、手動弁を弁開状態にしておけば、電磁弁によりパイロット弁の開閉動作を行うことができる。
【0042】
次に、例えば、作業者がメンテナンス時等に手動弁を安全機構として使用する際の作用を、図1にて説明する。図1は、図2または図3の手動弁を弁開にした状態から手動弁を弁閉にした状態を示す。
まず、図3の手動弁を弁開にした状態から弁閉にした状態において説明する。
具体的には、手動弁を弁開にしたときのノブ53のハンドル55の位置(以下、安全機構解除位置Rという)から、ハンドル55を図面正面から見て反時計回りに偏心軸54を中心に180度回転させた位置(以下、安全機構セット位置Sという)に作業者が回転させる。すると、ロッド51とピストンロッド21とが当接し、さらに、スプリング22及びスプリング52の下方への付勢力も働くため、ピストンロッド21が下方に付勢され、ピストンロッド21と一体のダイアフラム弁体32が弁座31に当接し、ポート33から流入した流体は、ダイアフラム弁体32によって遮断された連通部35を通過できず、ポート34側へ流れない。
【0043】
一方、図2の手動弁を弁開にした状態から弁閉にした状態において説明する。
具体的には、手動弁を安全機構解除位置Rから、安全機構セット位置Sに作業者が回転させる。すると、ロッド51とピストンロッド21とが当接し、さらに、スプリング22及びスプリング52の下方への付勢力も働いているため、ピストンロッド21が下方に付勢され、ピストンロッド21と一体のダイアフラム弁体32が弁座31に当接した状態を保ち、ポート33から流入した流体は、ダイアフラム弁体32によって遮断された連通部35を通過できず、ポート34側へ流れない。
【0044】
従って、図2及び図3で手動弁を弁開にした状態から弁閉にした状態にすると、ダイアフラム弁体32と弁座31との間に流路スペースがなくなり、ポート33と連通部35とポート34とが連通しなくなるので、ポート33から供給される流体がポート34から吐出されることはない。
すなわち、たとえ図3のようにパイロット弁が弁開状態の場合においても、作業者はハンドル55を安全機構解除位置Rから安全機構セット位置Sへ回転させることにより、強制的にパイロット弁を弁開状態から弁閉状態に遷移させることができる。そのため、流体の吐出を即座に停止しなければならないとする緊急事態に対しても、作業者は対応することができる。
【0045】
そして、図1の状態でノブ53の錠孔56に、作業者が例えば南京錠57を通し施錠することにより、操作ポート24からエアを供給しても、ハンドル55は安全機構セット位置Sから回転しない(図4)。従って、ロッド51とピストンロッド21とは当接した状態が保持されるため、ピストンロッド21上方への摺動はされず、操作ポート24からエアを供給してもパイロット弁は弁閉状態が維持される。
すなわち、作業者が手動弁を弁閉状態で施錠しておけば、たとえ操作ポート24からエアを供給する誤動作があっても流体が流出することはなく、作業者は安全にメンテナンス等を行うことができる。
【0046】
次に図5と図6について説明する。ここで、図5と図6は本発明の複合弁1を薬液弁として使用した際に生じる弁機構のシール力低下の防止および対策として、弁座追従機構としての実施例を示した断面図である。
複合弁1を薬液弁として使用するために、弁座31の材質を例えば耐腐食性のあるフッ素系樹脂とした場合を考える。このとき、図2と図3のようなパイロット弁としての通常の使用を長期間にわたって続けると、弁座31はダイアフラム弁体32からの繰り返し応力を長期間受けることになり、いわゆるクリープ現象として、弁座31が塑性変形により下方へ縮むことが考えられる。そのため、手動弁を安全機構セット位置Sに設定したときに、ロッド51とピストンロッド21の間にクリアランスが生じることが考えられ、操作ポート24からエアを供給すると、スプリング22及びスプリング52の下方への付勢力に対抗して、ピストンロッド21が前記クリアランス分上方に摺動し、ピストンロッド21と一体のダイアフラム弁体32の下方への付勢力が低下し、ダイアフラム弁体32と弁座31の間のシール力が不十分となるおそれがある。
また、たとえ操作ポート24からエアを供給しなくても、ポート33からの薬液流体の圧力により、ダイアフラム弁体32及びピストンロッド21が上方に移動・摺動され、ダイアフラム弁体32と弁座31の間のシール力が不十分となるおそれがある。
すなわち、弁座31が塑性変形により下方へ縮むと、ダイアフラム弁体32と弁座31の間のシール力が不十分となり、ポート33、連通部35、ポート34が連通し、ポート33から供給される薬液がポート34から吐出されるおそれがある。
【0047】
そこで、図6では弁座追従機構の作用状態を示す。具体的には、送りねじ71を回すと、送りねじ71が上下方向に移動し、送りねじ71内に設置されているロッド51も上下方向に移動する。このとき、送りねじ71が下方に移動する方向に送りねじ71を回すことにより、ロッド51も下方に移動し、さらにロッド51に当接するピストンロッド21も下方に移動するため、ピストンロッド21と一体のダイアフラム弁体32の下方への付勢力が上昇し、ダイアフラム弁体32と弁座31とのシール力が満たされる。
すなわち、送りねじ71を下方に移動させることにより、ダイアフラム弁体32と弁座31の間のシール力が満たされ、ポート33、連通部35、ポート34が連通せず、ポート33から供給される薬液がポート34から吐出されないようにできる。
【0048】
<第2実施形態>
第2実施形態として、複合弁2の実施例を図7乃至図10を用いて説明する。
図9に示すように複合弁2のボディ部は、弁本体311、シリンダ312、ピストンシリンダ314及びカバー313が一体になって構成されている。そして、複合弁2はパイロット弁と手動弁から成り立っている。なお、複合弁2で「上方」とは手動弁側、「下方」とはパイロット弁側を指すものとする。
【0049】
そこで先ず、複合弁2のパイロット弁について説明する。パイロット弁はさらにパイロット機構と弁機構に分けることができる。ここで、パイロット機構は、シリンダ312、ピストンシリンダ314、ロッド321、スプリング322、シャフト325、ピストン326、スプリング327、スプリング328によって構成される。
シリンダ312、カバー313、ピストンシリンダ314は密閉容器を構成し、ピストンシリンダ314にはその中を摺動するピストン326、ピストン326を上方へ付勢するスプリング327、ピストン326を下方へ付勢するスプリング328が装填されている。そして、ピストン326によってピストンシリンダ314及びカバー313内の空間は上下2室に分割され、下室が加圧室323となり、加圧室323は操作ポート324と連通している。
さらに、ピストン326内にはシャフト325が装填され、シャフト325はロッド321と一体になっている。ここで、シャフト325とピストンシリンダ314間には、シャフト325を下方へ付勢するスプリング322が装填されている。
【0050】
一方、弁機構は、弁本体311、ダイアフラム弁体332、ポート333、ポート334によって構成される。弁本体311は、ポート333とポート334とが連通部335にて連通されている。そして、弁本体311に当接・離間するダイアフラム弁体332が、弁本体311とシリンダ312との間で挟持固定されている。そのため、弁本体311とシリンダ312とはダイアフラム弁体332によって気密に仕切られ、連通部335内を流れる流体がシリンダ312側へ漏れることはない。さらに、ダイアフラム弁体332はロッド321と一体になっており、ロッド321が下方へ付勢されない場合には、ダイアフラム弁体332は弁本体311と離間し、一方、ロッド321により下方へ付勢される場合には、ダイアフラム弁体332は弁本体311と当接するように配置される。
【0051】
次に、複合弁2の手動弁について説明する。手動弁は、調整ロッド351、スプリング328、ノブ353によって構成される。ここで、調整ロッド351の上方にはノブ353が偏心軸354を中心にして回転可能な状態で取り付けられ、さらにノブ353はハンドル355、鍵孔356、ノッチ360を備えている。
【0052】
以上のような構成からなる複合弁2は、次のように作用する。
始めにパイロット弁としての通常の作用について説明する。手動弁は弁開したうえでパイロット弁を弁開することにより流体を流す状態を図9に、手動弁は弁開したうえでパイロット弁を弁閉することにより流体を流さない状態を図8に示す。
【0053】
先ず、図9を説明する。図9は図示しない電磁弁によりエア圧を供給して、パイロット弁を弁開した状態を示す。具体的には、操作ポート324からエアを供給すると、エアがシリンダ312内からピストンシリンダ314のエア供給路315を通じて、加圧室323へ供給されるため、加圧室323のエア圧が上昇する。そして、加圧室323のエア圧の上昇によって上方への力を受けたピストン326がピストンシリンダ314内を摺動し、スプリング328の下方への付勢力に対抗して上方へ摺動する。さらに、ピストン326の上方への摺動に伴ってピストン326と当接したシャフト325もスプリング322の下方への付勢力に対抗して上方へ移動し、シャフト325と一体のロッド321も上方へ移動する。そのため、ロッド321と一体のダイアフラム弁体332も下方に付勢されなくなり、ダイアフラム弁体332は弁本体311から離間する。従って、ダイアフラム弁体332と弁本体311との間に流路スペースができ、ポート333と連通部335とポート334とが連通するので、ポート333から供給される流体がポート334から吐出される。
【0054】
次に図8は、パイロット弁を弁閉した状態を示す。具体的には、操作ポート324から加圧室323内へ供給されたエアの供給を止めて、ピストン326を上方へ摺動させる加圧室323内のエア圧を減圧させれば、ピストン326がスプリング327及びスプリング328の付勢力によって下方へ摺動する。そして、ピストン326とシャフト325が当接した状態で、シャフト325がスプリング322により下方に付勢され、シャフト325及びロッド321と一体のダイアフラム弁体332が弁本体311に当接する。
従って、ダイアフラム弁体332と弁本体311との間に流路スペースがなくなり、ポート333と連通部335とポート334とが連通しなくなるので、ポート333から供給される流体がポート334から吐出されることはない。
すなわち、手動弁を弁開状態にしておけば、電磁弁によりパイロット弁の開閉動作を行うことができる。
さらに、ノブ353のノッチ360に調整ロッド351を当接しておけば、手動弁が弁閉状態に遷移することなく、確実に電磁弁によりパイロット弁の開閉動作を行うことができる。
【0055】
次に、例えば、作業者がメンテナンス時等に手動弁を安全機構として使用する際の作用を、図7と図10にて説明する。図7は、図8または図9で手動弁を弁開にした状態から弁閉にした状態を示す。
まず、図9の手動弁を弁開にした状態から弁閉にした状態において説明する。具体的には、手動弁を弁開にしたときのノブ353のハンドル355の位置(以下、安全機構解除位置Rという)から、ハンドル355を図面正面から見て反時計回りに偏心軸354を中心に回転させた所定の位置(以下、安全機構セット位置Sという)に作業者が回転させる。ここで所定の位置とは、ノブ353の外周と調整ロッド351がノブ353の外周のテーパ部で接合した位置をいう。すると、回転動作開始とともにノブ353のハンドル355の回転による下方への荷重を受けた調整ロッド351が下方に移動してピストン326と当接し、ピストン326を下方に摺動させて、ピストン326とシャフト325のフランジ形状部を離間させ、シャフト325はピストン326とは独立して上下方向に移動することができるようになる。そのため、シャフト325はスプリング322により下方に付勢され、シャフト325及びロッド321と一体のダイアフラム弁体332が弁本体311に当接する。
【0056】
一方、図8の手動弁を弁開にした状態から弁閉にした状態において説明する。具体的には、作業者がノブ353のハンドル355を安全機構解除位置Rから安全機構セット位置Sに回転させる。すると、回転動作開始とともにノブ353のハンドル355の回転による下方への荷重を受けた調整ロッド351が下方に移動してピストン326と当接し、ピストン326を下方に摺動させて、ピストン326とシャフト325のフランジ形状部を離間させ、シャフト325はピストン326とは独立して上下方向に移動することができるようになる。しかし、シャフト325はスプリング322により下方に付勢され、シャフト325及びロッド321と一体のダイアフラム弁体332が弁本体311に当接する状態は維持されたままとなる。
【0057】
従って、図8及び図9で手動弁を弁開にした状態から弁閉にした状態にすると、ダイアフラム弁体332と弁本体311との間に流路スペースがなくなり、ポート333と連通部335とポート334とが連通しなくなるので、ポート333から供給される流体がポート334から吐出されることはない。
すなわち、たとえ図9ようにパイロット弁が弁開状態の場合においても、作業者はハンドル355を安全機構解除位置Rから安全機構セット位置Sへ回転させることにより、強制的にパイロット弁を弁開状態から弁閉状態に遷移させることができる。そのため、流体の吐出を即座に停止しなければならないとする緊急事態に対しても、作業者は対応することができる。
【0058】
また、ノブ353と調整ロッド351を、ノブ353の外周のテーパ部の位置で接合させる状態(図7)まで回転させることにより、ノブ353のハンドル355を安全機構セット位置Sに固定することができる。
ここで、ノブ353のハンドル355を安全機構セット位置Sに固定することができる理由は以下のとおりである。すなわち、図10におけるノブ353の偏心軸354の中心点からノブ353の外周の変曲点までの距離(以下、距離R1という)は、ノブ353の偏心軸354の中心点からノブ353のテーパ部の外周までの距離(以下、距離R2という)よりも長い。そのため、ノブ353のハンドル355は、スプリング328の付勢力に対抗して調整ロッド351を距離R1と距離R2の差分距離について下方に押し下げる力がかからない限り回転せず、図7の状態が維持されるからである。
従って、操作ポート324からエアを供給してもパイロット弁は弁閉状態が維持される。
すなわち、作業者が手動弁を図7に示すような弁閉状態にしておけば、たとえ操作ポート324からエアを供給する誤動作があっても流体が流出することはなく、作業者は安全にメンテナンス等を行うことができる。
【0059】
さらに、図7の状態でノブ353の錠孔356に、例えば作業者が南京錠357を通し施錠することができるが、第1実施形態の複合弁1と同様なため、ここでは説明は省略する。
【0060】
さらに、図9の状態でノブ353のハンドル355を安全機構解除位置Rから安全機構セット位置Sに回転させようとするときには、たとえ図示しない電磁弁により操作ポート324にエア供給がされている状況下であっても回転動作開始とともに、ノブ353のハンドル355の回転による下方への荷重を受けた調整ロッド351がピストン326と当接し、ピストン326が下方に摺動され、ピストン326とシャフト325のフランジ形状部が離間し、操作ポート324から供給されるエア及び加圧室323のエアがピストン326とシャフト325のフランジ形状部の離間部から抜けることになる。そして、ピストン326上方のカバー313、ピストンシリンダ314、調整ロッド351で囲まれる密閉空間のエア圧とピストン326下方の加圧室323のエア圧が等しくなる。そのため、調整ロッド351に対しては、加圧室323のエア圧により生じるピストン326の上方への推力が低減される。従って、結果として、加圧室323のエア圧により生じるピストン326の上方への推力が低減された状態で、スプリング327の上方への付勢力に対抗する荷重を加えることにより、ノブ353のハンドル355を回転できることになる。
すなわち、作業者は手動弁の弁閉につき、エア圧に対抗するような大きな力を加えることなく行うことができる。
【0061】
<第3実施形態>
第3実施形態として、複合弁3の実施例を図11乃至図13を用いて説明する。
図13に示すように複合弁3のボディ部は、弁本体411、シリンダ412、ピストンシリンダ414及びカバー413が一体になって構成されている。そして、複合弁3はパイロット弁と手動弁から成り立っている。なお、複合弁3で「上方」とは手動弁側、「下方」とはパイロット弁側を指すものとする。
【0062】
そこで先ず、複合弁3のパイロット弁について説明する。パイロット弁はさらにパイロット機構と弁機構に分けることができる。ここで、パイロット機構は、シリンダ412、ピストンシリンダ414、ロッド421、スプリング422、シャフト425、ピストン426、スプリング428によって構成される。
ピストンシリンダ414、調整ロッド451は密閉容器を構成し、その中を摺動するピストン426が装填されている。そして、調整ロッド451を上方へ付勢をし、ピストン426を下方へ付勢するスプリング422が装填されている。さらに、ピストン426によってピストンシリンダ414及び調整ロッド451内の空間は上下2室に分割され、下室が加圧室423となり、加圧室423は、ピストンシリンダ414のエア供給路415及び調整ロッド451の外周部に形成されたエア供給路459を通じて、操作ポート429と連通されている。
さらに、ピストン426内にはシャフト425が装填され、シャフト425はロッド421と一体になっている。ここで、シャフト425には、シャフト425及びロッド421を下方へ付勢するスプリング422が装填されている。
【0063】
一方、弁機構は、弁本体411、ダイアフラム弁体432、ポート433、ポート434によって構成されるが、第2実施形態の複合弁2と同様なため、ここでは説明を省略する。
【0064】
次に、複合弁3の手動弁について説明する。手動弁は、調整ロッド451、スプリング428、ノブ453によって構成されるが、調整ロッド451の形状以外は第2実施形態の複合弁2と同様なため、ここでは説明を省略する。
【0065】
以上のような構成からなる複合弁3は、次のように作用する。
始めにパイロット弁としての通常の作用について説明する。手動弁は弁開したうえでパイロット弁を弁開することにより流体を流す状態を図13に、手動弁は弁開したうえでパイロット弁を弁閉することにより流体を流さない状態を図12に示す。
【0066】
先ず、図13を説明する。図13は図示しない電磁弁によりエア圧を供給して、パイロット弁を弁開した状態を示す。具体的には、操作ポート429からエアを供給する。すると、調整ロッド451の外周部に形成されたエア供給路459及びピストンシリンダ414内のエア供給路415を通じて、加圧室423へ供給されるため、加圧室423のエア圧が上昇する。そして、加圧室423のエア圧の上昇によって上方への力を受けたピストン426がピストンシリンダ414内を摺動し、スプリング428の下方への付勢力に対抗して上方へ摺動する。さらに、ピストン426の上方への摺動に伴ってピストン426と当接したシャフト425もスプリング422の下方への付勢力に対抗して上方へ移動し、シャフト425と一体のロッド421も上方へ移動する。そのため、ロッド421と一体のダイアフラム弁体432も下方に付勢されなくなり、ダイアフラム弁体432は弁本体411から離間する。従って、ダイアフラム弁体432と弁本体411との間に流路スペースができ、ポート433と連通部435とポート434とが連通するので、ポート433から供給される流体がポート434から吐出される。
【0067】
次に図12は、パイロット弁を弁閉した状態を示す。具体的には、操作ポート429から加圧室423内へ供給されたエアの供給を止めて、ピストン426を上方へ付勢する加圧室423内のエア圧を減圧させればよいが、以降は第2実施形態の複合弁2と同様なため、ここでは説明を省略する。
【0068】
次に、例えば、作業者がメンテナンス時等に手動弁を安全機構として使用する際の作用を、図11にて説明する。図11は、図12または図13で手動弁を弁開にした状態から弁閉にした状態を示すが、第2実施形態の複合弁2と同様なため、ここでは、手動弁を弁開にした状態から弁閉にした状態への経緯の説明は省略する。
【0069】
また、ノブ453と調整ロッド451を、ノブ453の外周のテーパ部の位置で接合させる状態(図11)まで回転させることにより、ノブ453のハンドル455を安全機構セット位置Sに固定することができるが、以降は第2実施形態の複合弁2と同様なため、ここでは説明を省略する。
【0070】
また、図11の状態でノブ453の錠孔456に、例えば作業者が南京錠457を通し施錠することができるが、第1実施形態の複合弁1及び第2実施形態の複合弁2と同様なため、ここでは説明は省略する。
【0071】
さらに、図13の状態でノブ453のハンドル455を安全機構解除位置Rから安全機構セット位置Sに回転させようとするときには、たとえ図示しない電磁弁により操作ポート429にエア供給がされている状況下であっても、回転動作開始とともに調整ロッド451のエア供給路459とピストンシリンダ414のエア供給路415は遮断される。従って、操作ポート429からエア供給がされず、結果として、エア圧がかからない状態でノブ453のハンドル455を回転できることになる。
すなわち、作業者は手動弁の弁閉につき、力を要することなく行うことができる。
【0072】
<第4実施形態>
第4実施形態として、複合弁4の実施例を図16乃至図20を用いて説明する。
図18に示すように複合弁4のボディ部は、弁本体511、ピストンシリンダ512、スプールシリンダ514及びカバー513が一体になって構成されている。そして、複合弁4はパイロット弁と手動弁から成り立っている。なお、複合弁4で「上方」とは手動弁側、「下方」とはパイロット弁側を指すものとする。
【0073】
そこで先ず、複合弁4のパイロット弁について説明する。パイロット弁はさらにパイロット機構と弁機構に分けることができる。ここで、パイロット機構は、ピストンシリンダ512、スプールシリンダ514、スプリング522、ピストン526によって構成される。
ピストンシリンダ512、スプールシリンダ514は密閉容器を構成し、その中を摺動するピストン526が装填されている。そして、スプールシリンダ514を上方へ付勢をし、ピストン526を下方へ付勢するスプリング522が装填されている。
さらに、ピストン526によってピストンシリンダ512及びスプールシリンダ514内の空間は上下2室に分割され、下室が加圧室523となる。そして、加圧室523はピストン526内に形成されるエア供給流路515および後述する調整ロッド551内に形成されるエア供給流路559を通じて操作ポート529と連通されているか、あるいはピストン526内に形成されるエア供給流路515通じて排気ポート530と連通されている。
【0074】
一方、弁機構は、弁本体511、ダイアフラム弁体532、ポート533、ポート534によって構成されるが、第2実施形態の複合弁2および第3実施形態の複合弁3と同様なため、ここでは説明を省略する。
【0075】
次に、複合弁4の手動弁について説明する。手動弁は、調整ロッド551、スプリング528、ノブ553、ブラケット558によって構成される。ここで、調整ロッド551の上方にはノブ553が偏心軸554を中心にして回転可能な状態で取り付けられ、さらにノブ553はハンドル555、ノッチ560を備えている。また、エア供給流路559が調整ロッド551の内部に形成され、加工が簡単で単純な流路構造を形成している。また、図20に示すように、二股に分かれたノブ553のハンドルの間を貫通するかたちでブラケット558が配設され、ブラケット558には鍵孔556が形成されている。
【0076】
以上のような構成からなる複合弁4は、次のように作用する。
始めにパイロット弁としての通常の作用について説明する。手動弁は弁開したうえでパイロット弁を弁開することにより流体を流す状態を図18に、手動弁は弁開したうえでパイロット弁を弁閉することにより流体を流さない状態を図17に示す。
【0077】
先ず、図18を説明する。図18は図示しない電磁弁によりエア圧を供給して、パイロット弁を弁開した状態を示す。具体的には、操作ポート529からエアを供給する。すると、調整ロッド551の内部に形成されたエア供給路559及びピストン526内のエア供給路515を通じて、加圧室523へ供給されるため、加圧室523のエア圧が上昇する。そして、加圧室523のエア圧の上昇によって上方への力を受けたピストン526がピストンシリンダ512内を摺動し、スプリング522の下方への付勢力に対抗して上方へ摺動する。そのため、ピストン526と一体のダイアフラム弁体532も下方に付勢されなくなり、ダイアフラム弁体532は弁本体511から離間する。従って、ダイアフラム弁体532と弁本体511との間に流路スペースができ、ポート533と連通部535とポート534とが連通するので、ポート533から供給される流体がポート534から吐出される。
【0078】
次に図17は、パイロット弁を弁閉した状態を示す。具体的には、操作ポート529から加圧室523内へ供給されたエアの供給を止めて、ピストン526を上方へ付勢する加圧室523内のエア圧を減圧させればよいが、以降は上記のエア圧を供給してパイロット弁を弁開する作用と反対の作用にすぎないため、ここでは説明を省略する。
【0079】
次に、例えば、作業者がメンテナンス時等に手動弁を安全機構として使用する際の作用を、図16にて説明する。図16は、図17または図18で手動弁を弁開にした状態から弁閉にした状態を示す。
まず、図18の手動弁を弁開にした状態から弁閉にした状態において説明する。具体的には、図16に示すように、手動弁を弁開にしたときのノブ553のハンドル555の位置(以下、安全機構解除位置Rという)から、ハンドル555を図面正面から見て時計回りに偏心軸554を中心に回転させた所定の位置(以下、安全機構セット位置Sという)に作業者が回転させる。すると、回転動作開始とともにノブ553のハンドル555による下方への押さえつける量が小さくなるため、調整ロッド551が上方に移動する。このとき、操作ポート529と調整ロッド551のエア供給路559が遮断される一方で、加圧室523は排気ポート530と連通する。そのため、加圧室523のエアは排気ポート530から排気され、ピストン526がスプリング522の付勢力により下方へ摺動し、ピストン526と一体のダイアフラム弁体532が下方へ移動して弁本体511と当接して、図16に示すように複合弁4は弁閉状態になる。
なお、このときノブ553にて動作させる部品は調整ロッド551のみであり、ピストン526を押さえることがない。そのため、ピストン526にノブ553の回転による力が掛からず、弁本体511には、ピストン526からダイアフラム弁体532を介してスプリング522の付勢力のみが掛かるにすぎない。従って、クリープの影響は生じず、いつまでも弁機構のシール力は維持される。
【0080】
そして、図16の状態でブラケット558の錠孔556に、例えば作業者が南京錠557を通し施錠することにより、操作ポート529からエアを供給しても、ハンドル555は回転せず、パイロット弁は弁閉状態が維持される(図20)。ここで図19に示すようにブラケット558の錠孔556は、南京錠557を通し施錠した際に、ハンドル555がガタついても調整ロッド551が動くことのないような十分な遊びを持たせて形成されている。具体的には、ノブ553が回転しハンドル555が南京錠557のツルに触れた時点でも、ノブ553が調整ロッド551に接しないように十分な遊びを持たせて形成されている。そのため、作業者が誤ってハンドル555に触っても調整ロッド551が動くことはなく、操作ポート529から加圧室523にエアが供給されることはない。また、ブラケット558の板厚を小さくすることにより、図20に示すように、ツルの円弧の半径が小さい南京錠557であっても使用することができる。
【0081】
さらに、図18の状態でノブ553のハンドル555を安全機構解除位置Rから安全機構セット位置Sに回転させようとするときには、たとえ図示しない電磁弁により操作ポート529にエア供給がされている状況下であっても、回転動作開始とともに調整ロッド551のエア供給路559と操作ポート529は遮断される。従って、操作ポート529からエア供給がされず、結果として、エア圧がかからない状態でノブ553のハンドル555を回転できることになる。特に、第4実施形態の複合弁4では、調整ロッド551の径が小さく上方に受けるエアの力が小さいため、ノブ553のハンドル555の回転し始めにおいても力を要しない。
すなわち、作業者は手動弁の弁閉につき、力を要することなく行うことができる。
【0082】
また、複合弁4ではピストン526内にエア供給流路515が形成されており、高さ方向の位置関係では、図16〜図18に示すように、スプリング528はスプリング522の内側に配設されている。そのため、複合弁4は高さ方向に小さくなる。ここで、実施例2,3の複合弁2,3において、スプリング528と同様に調整ロッド551を付勢する機能を有する部品は、スプリング328,428が該当する。そこで、特にこれらのスプリングの位置関係に着目すれば、複合弁4は全体として実施例2,3の複合弁2,3に比べて高さ方向に小さいことが良く分かる。
【0083】
<第5実施形態>
第5実施形態として、複合弁5の実施例を図21乃至図32を用いて説明する。
ここで、図21は複合弁5の弁開状態における断面図を、図22は複合弁5の上面図を、図23は複合弁5の上方部分の外観図を示している。
図21に示すように複合弁5のボディ部は、主に弁本体611、シリンダ612、ハウジング613が一体になって構成されている。そして、複合弁5はパイロット弁と手動弁から成り立っている。なお、複合弁5で「上方」とは手動弁側、「下方」とはパイロット弁側を指すものとする。
【0084】
そこで先ず、複合弁5のパイロット弁について説明する。パイロット弁はさらにパイロット機構と弁機構に分けることができる。ここで、パイロット機構は、主にシリンダ612、ハウジング613、スプリング622、ピストン626によって構成される。
シリンダ612及びハウジング613は密閉容器を構成し、その中を摺動するピストン626が装填されている。そして、ハウジング613を上方へ付勢をし、ピストン626を下方へ付勢するスプリング622が装填されている。
さらに、ピストン626によってシリンダ612及びハウジング613内の空間は上下2室に分割され、下室が加圧室623となる。そして、加圧室623はピストン626内に形成されるエア供給流路615を通じて後述するエア供給ポート659と連通している。
図21から図23に示すように、ハウジング613には、操作ポート629、排気ポート630、エア供給ポート659が形成されており、後述するロッド651との組み合わせにより図24に示すような3ポート弁を形成している。ここで、図24は図21のA−A断面図を示している。図24の(a)は手動弁が弁開状態にある場合を、(c)は手動弁が弁閉状態にある場合を、(b)は(a)と(c)の間の状態を示している。
【0085】
一方、弁機構は、弁本体611、ダイアフラム弁体632、ポート633、ポート634によって構成されるが、第2実施形態の複合弁2、第3実施形態の複合弁3、第4実施形態の複合弁4と同様なため、ここでは説明を省略する。
【0086】
次に、複合弁5の手動弁について説明する。手動弁は、主にロッド651、ノブ653、パッキン661、パッキン662、パッキン663、スライドプレート665によって構成される。ロッド651は、ハウジング613に形成した貫通孔667に挿入されている。ここで、ロッド651の一端側にはノブ653が回転可能な状態で取り付けられ、このノブ653はハンドル655、ピン664を備えている。また、ロッド651の中央部の外周には図26に示すような形状のパッキン661が配置され、その周囲にはパッキン662とパッキン663が配置されている。また、ロッド651の上方にはスライドプレート665が配設されている。なお、図26の(a)はパッキン661の上面図であり、(b)はパッキン661のA−A断面図である。
【0087】
以上のような構成からなる複合弁5は、次のように作用する。
始めにパイロット弁としての通常の作用について説明する。手動弁は弁開したうえでパイロット弁を弁開することにより流体を流す状態を図21に、手動弁は弁開したうえでパイロット弁を弁閉することにより流体を流さない状態を図25に示す。
【0088】
先ず、図21を説明する。図21は図示しない電磁弁によりエア圧を供給して、パイロット弁を弁開した状態を示す。具体的には、操作ポート629からエアを供給する。すると、ロッド651の外周と貫通孔667との間に形成された空間およびエア供給通路659を通り、ピストン626内のエア供給路615を通じて、加圧室623へエアが供給されるため、加圧室623のエア圧が上昇する。そして、加圧室623のエア圧の上昇によって上方への力を受けたピストン626がシリンダ612内を摺動し、スプリング622の下方への付勢力に対抗して上方へ摺動する。そのため、ピストン626と一体のダイアフラム弁体632も下方に付勢されなくなり、ダイアフラム弁体632は弁本体611から離間する。従って、ダイアフラム弁体632と弁本体611との間に流路スペースができ、ポート633と連通部635とポート634とが連通するので、ポート633から供給される流体がポート634から吐出される。
【0089】
次に図25は、パイロット弁を弁閉した状態を示す。具体的には、操作ポート629から加圧室623内へ供給されたエアの供給を止めて、ピストン626を上方へ付勢する加圧室623内のエア圧を減圧させればよいが、以降は上記と反対の作用がなされるにすぎないため、ここでは説明を省略する。
【0090】
次に、例えば、作業者がメンテナンス時等に手動弁を安全機構として使用する際の作用を図27、図28を用いて説明する。図27は、ノブ653の部分を説明するものであり図25に示すB−B断面図である。図28は、ノブ653とロッド651とピン664との間の関係を示す図である。
そこで、手動弁を弁開にした状態から弁閉にした状態において説明する。具体的には、図27に示すように、手動弁を弁開にしたときのノブ653のハンドル655の位置(以下、安全機構解除位置Rという)から、ハンドル655を図面正面から見て反時計回りに回転させた所定の位置(以下、安全機構セット位置Sという)に作業者が回転させようとする。すると、ハンドル655を所定量回転させたところで図28(a)の状態から図28(b)に示すように、ピン664を介してロッド651にノブ653の回転が伝わり、ロッド651が回転し始める。そして、ハンドル655を回転し終えて安全機構セット位置Sに達した時には、図28(c)の状態になる。
なお、図28に示すようにノブ653の回転がピン664を介してロッド651に伝わるまでに所定量の遊びを設けてある。すなわち、ノブ653の回転量に対してロッド651の回転量にはバックラッシを設けており、そのバックラッシの回転量は90度から110度としている。そのため、ノブ653が回転する量は180度であるが、実際にロッド651が回転する量は70度から90度の間である。
【0091】
以上のように安全機構セット位置Sに達すると、パッキン661により操作ポート629とエア供給ポート659が遮断される一方で、排気ポート630とエア供給ポート659が連通し、加圧室623は排気ポート630と連通することとなる。そのため、エアは排気ポート630から排気され加圧室623のエア圧は低下し、ピストン626がスプリング622の付勢力により下方へ摺動する。そして、ピストン626と一体のダイアフラム弁体632が下方へ移動して弁本体611と当接し、複合弁5は弁閉状態になる。
さらに、この状態から図21および図23に示すようにスライドプレート665をノブ653の設置方向にスライドさせて、スライドプレート665の先端部に形成される鍵孔665aに例えば南京錠657を挿入して施錠する。これにより、ノブ653は回転することができず複合弁5の弁閉状態は維持されることになる。
【0092】
なお、スライドプレート665をスライドする方法としては、以下の方法が考えられる。
(1)スライドプレート665に形成されたツマミ665bを指で押して手動で行なう方法。
(2)スライドプレート665とハウジング613の間に配設される復帰バネを利用して自動的にスライドする方法。
そして、上記(2)に述べる復帰バネを利用して自動的にスライドする方法としては、具体的に以下のような方法(A)および方法(B)が考えられる。
【0093】
図29は、復帰バネを利用して自動的にスライドする方法のうち方法(A)の概要図である。図29(a)は手動弁が弁開状態にある場合の断面図と側面図を、図29(b)は手動弁が弁閉状態にある場合の断面図と側面図を示している。
方法(A)は、図29に示すようにスライドプレート665にツマミ665bとツメ形状665cを形成し、さらにハウジング613との間に復帰バネ666を配設する方法である。この方法では、手動弁が弁開状態にあるときには、図29(a)に示すようにツメ形状665cの部分をロッド651の端部651aに引っ掛けておくことにより、スライドプレート665はスライドが出来なくなる。このとき、復帰バネ666には引張り力が作用している。
ここで、ノブの端部651aは切り欠き形状を有しており、ノブ653を回転し手動弁を弁閉状態にした時点では、図29(b)に示すように切り欠き形状の部分が丁度スライドプレート665のツメ形状665cの部分に位置することになっている。そのため、スライドプレート665のツメ形状665cによる引っ掛かりがなくなる。そのため、復帰バネ666に引張り力が作用しなくなり、スライドプレート665は自動的にスライドするというものである。
【0094】
図30は、復帰バネを利用して自動的にスライドする方法のうち方法(B)の概要図である。図30(a)は手動弁が弁開状態にある場合の断面図を、図30(b)は手動弁が弁閉状態にある場合の断面図を示している。
方法(B)は、図30に示すようにスライドプレート665にツマミ665bを形成し、ハウジング613との間に復帰バネ666を配設する方法である。この方法では方法(A)とは復帰バネ666の作用を逆に設定している。すなわち、スライドプレート665に形成されたツマミ665bを指で押さないときには、復帰バネ666は自然長の状態でありバネ力が生じておらず、スライドプレート665はスライドされない状態が維持される。そのため、スライドプレート665に形成されたツマミ665bを指で押して復帰バネ666を収縮させてスライドさせるというものである。
【0095】
また、南京錠657などによる施錠の別仕様として、図31と図32に示すような仕様も考えられる。この複合弁5では、ロッド651においてノブ653のある端面と反対側の端面651aの形状が図32のように形成されている。具体的には、ノブ653が手動弁が弁開状態のときは端面651aが図32の実線で示す向きになり、手動弁が弁閉状態のときは端面651aが図32の2点差線で示す向きになる。そして、手動弁が弁閉状態のときには、鍵孔651bがハウジング613の上面の上方に位置し、この状態で南京錠657などを通して施錠する。
【0096】
なお、このときノブ653にて動作させる部品はロッド651のみであり、ピストン626を押さえることがない。そのため、ピストン626にノブ653の回転による力が掛からず、弁本体611には、ピストン626からダイアフラム弁体632を介してスプリング622の付勢力のみが掛かるにすぎない。従って、クリープの影響は生じず、いつまでも弁機構のシール力は維持される。
【0097】
さらに、図21の状態でノブ653のハンドル655を安全機構解除位置Rから安全機構セット位置Sに回転させようとするときには、たとえ図示しない電磁弁により操作ポート629にエア供給がされている状況下であっても、回転動作開始とともにロッド651のパッキン661によりエア供給路659と操作ポート629は遮断される。従って、操作ポート629からエア供給がされず、結果として、エア圧がかからない状態でノブ653のハンドル655を回転できることになる。
すなわち、作業者は手動弁の弁閉につき、力を要することなく行うことができる。
【0098】
また、複合弁5ではロッド651は上下方向と垂直をなす横方向に配設されノブ653が複合弁5の側面に配設されている。そのため、弁機構およびパイロット機構と同軸上にノブあるとする第1〜4実施形態の複合弁1〜4に比べて、複合弁5は高さ方向に小さくなる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
弁座のクリープ現象による弁機構のシール力の低下を防止する機構または低下に対応する機構を有するので、弁座の材質として耐腐食性を有するフッ素樹脂を使用することにより半導体製造工程における薬液弁としての用途にも適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座に当接または離間して流体の流れを制御するダイアフラム弁体を有する弁機構と、
付勢手段により当接されている前記弁座と前記ダイアフラム弁体とを空気圧により離間させるパイロット機構と、
前記パイロット機構の動作に作用する手動機構とを有する複合弁において、
前記手動機構が前記ダイアフラム弁体を前記軸方向に弁開位置から弁閉位置へ移動させるものであって、
前記ダイアフラム弁体を前記弁閉位置に保持する手動弁弁閉保持手段を有することを特徴とする複合弁。
【請求項2】
請求項1に記載の複合弁において、
前記ダイアフラム弁体の前記軸方向における前記弁閉位置を調整する機構を有することを特徴とする複合弁。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の複合弁において、
前記手動機構と前記ダイアフラム弁体とが各々独立して前記軸方向に移動可能であることを特徴とする複合弁。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載する複合弁のいずれか一つにおいて、
前記手動機構が前記ダイアフラム弁体を前記軸方向に弁開位置から弁閉位置へ移動させるときに、前記手動機構に操作ポートからのエア圧がかからない機構を有することを特徴とする複合弁。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載する複合弁のいずれか一つにおいて、
前記手動弁を弁開位置に保持する手動弁弁開保持手段を有することを特徴とする複合弁。
【請求項6】
請求項4に記載の複合弁において、
前記手動機構に操作ポートからのエア圧がかからない機構として、エア圧が生じる前記パイロット機構のピストン内に軸方向に摺動可能に装填され、前記ピストンとフランジ形状部で当接または離間可能なシャフトを有することを特徴とする複合弁。
【請求項7】
請求項4に記載の複合弁において、
前記手動機構に操作ポートからのエア圧がかからない機構として、エア供給を受ける前記手動機構のピストン形状部の外周部に形成されたエアの供給路とピストンシリンダの供給路を遮断する機構を有することを特徴とする複合弁。
【請求項8】
請求項4に記載の複合弁において、
前記手動機構に操作ポートからのエア圧がかからない機構として、エア供給を受ける前記手動機構のピストン形状部の内部に形成されたエアの供給路と、前記ピストン形状部が摺動するスプールシリンダの供給路を遮断する機構を有することを特徴とする複合弁。
【請求項9】
請求項1乃至請求項5に記載する複合弁のいずれか一つにおいて、
前記手動弁弁閉保持手段として、鍵孔を有するブラケットが手動弁のハンドルの二股に分かれる間を貫通することを特徴とする複合弁。
【請求項10】
請求項9に記載の複合弁において、
前記ブラケットの鍵孔に鍵を通し、前記ノブのハンドルが鍵のツルに触れる位置まで回転したときに、前記ノブと前記ピストン形状部が接しないことを特徴とする複合弁。
【請求項11】
請求項4に記載の複合弁において、
前記手動機構に操作ポートからのエア圧がかからない機構として、エア供給を受ける前記手動機構の操作ポートと、カバーに形成されるエア供給ポートとを連通および遮断する機構を有することを特徴とする複合弁。
【請求項12】
請求項4に記載の複合弁において、
前記カバーに、操作ポート、排気ポート、エア供給ポートが形成される3ポート弁を有することを特徴とする複合弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【国際公開番号】WO2005/038323
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514756(P2005−514756)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015058
【国際出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】