説明

複合材料

【課題】 今まで産業廃棄物として処理されていたショットカスを有効に利用した複合材料を提供する。
【解決手段】 バインダに充填材を含ませてなる複合材料において、前記充填材の主成分としてショットカスを配合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バインダに充填材を混合した複合材料に関し、より詳しくは充填材としてショットカスを利用した複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、機械加工又は金属加工の技術分野において、鉄系金属の各種成形品や機械加工品等に発生したバリを取ったり、金属表面に付着した不純物、錆、スケール等を除去すること等を目的として、鋼球製のショット玉を高速で金属表面に打ち付ける、いわゆるショットブラストと呼ばれる表面処理が行われている。
このショットブラストで回収されるショットカスには、ショット玉が破損したり割れたりしたもの、微細な金属片、金属粉等が混じっているため再利用されることなく産業廃棄物として多大な費用をかけて処理されるのが一般的であった。
【0003】
一方、研削粉等の金属粉末については、これを充填材として添加した複合材料が従来より種々提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【特許文献1】特開平9−316234号公報
【特許文献2】特開平9−316235号公報
【特許文献3】特開平9−316343号公報
【特許文献4】特開平10−147991号公報
【特許文献5】特開平6−212226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ショットカスを充填材として利用した複合材料は未だ存在していない。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、今まで産業廃棄物として処理されてきたショットカスを充填材として利用した複合材料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の複合材料は、バインダに充填材を含ませたものであり、前記充填材の主成分としてショットカスを配合したことを特徴としている。ショットカスを充填材として利用することにより、充填材を安価に得ることができ、同時に産業廃棄物の減少につながる。
前記ショットカスに、鋼材の熱間鍛造工程で鋼材表面に発生した酸化スケールが含まれているのが好ましい。鋼材の酸化スケールは酸化鉄分の含有量が多く(63%程度)、一般的に電炉での鉄回収に不向きであって利用価値が低いため、従来より産業廃棄物として処理されてきたが、本発明では、かかる酸化スケールに手を加えずにそのまま金属材料として利用することができる。
【0006】
前記バインダがアスファルト又はポリ塩化ビニル系樹脂である上記複合材料からなる制振シートとしてもよい。この場合、アスファルト又はポリ塩化ビニル系樹脂に高密度の充填材であるショットカスを加えることにより、制振効果に優れたシートを得ることができる。
また、前記バインダがセメントである上記複合材料からなる重量材としてもよい。この場合、セメントに高密度の充填材であるショットカスを加えることによりフォークリフト等のバランサーをとして利用することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の複合材料によれば、今まで産業廃棄物として処理されてきたショットカスをそのまま充填材として利用することができるので、充填材を安価に得ることができ、同時に産業廃棄物を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において充填材として使用されるショットカスは、金属の表面にショット玉をブラストした後に回収されたものであり、例えば、ショット玉が割れてやせたもの、ショット玉が砕けた粉、バリ、金属表面の不純物、汚れ、錆等が含まれる。ここで、ショット玉とは、ショットブラストに使用される鋳鉄製の球形投射材のことであり、通常粒径0.2〜3.0mm程度のものが用いられる。また、熱間鍛造品や加熱処理品の場合には、金属表面の酸化スケールがショットカスに含まれ、当該酸化スケールが鋼材の熱間鍛造工程で鋼材表面に発生したものである場合、その嵩密度は約2.8〜3.7である。
【0009】
ショットブラストされる金属のうち、鉄又は酸化鉄の例としては、鉄(Fe)、酸化鉄(FeO)、三酸化二鉄(Fe)、四酸化三鉄(Fe)等を挙げることができる。また、モリブデン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、リチウム(Li)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)等の金属を1種又は2種以上含有するスピネル型フェライト、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)等の金属を1種又は2種以上含有するマグネットプラムバイト型フェライト、イットリウム(Y)、ランタン(La)、サマリウム(Sm)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)等の金属を1種又は2種以上含有するペロブスカイト型フェライト、イットリウム(Y)、ランタン(La)、サマリウム(Sm)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)等の金属を1種又は2種以上含有するガネット型フェライトであってもよい。
【0010】
本発明において用いられるバインダとしては、使用温度条件下でショットカスを均一に分散させた状態を保持することができ、また必要に応じて高密度にできる材料であれば、周知のバインダ材料を特に限定することなく採用することができ、そのような材料として、例えば、(a)アスファルト、(b)熱可塑性樹脂、(c)熱硬化性樹脂、(d)熱可塑性エラストマー、(e)ゴム、(f)セメント等を挙げることができる。
【0011】
(a)アスファルトの例としては、バインダ成分として使用できる周知のアスファルト、例えば、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルト、トリニダットアスファルト、レーキアスファルト、ゴム変性アスファルト等を挙げることができ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
(b)熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ABS樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、メタクリル樹脂、エチレン−酸化ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。さらに、前記塩化ビニル系樹脂の例としては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等を挙げることができる。
(c)熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0012】
(d)熱可塑性エラストマーの例としては、熱可塑性ポリエステルエラストマー、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体又はこれらの水素添加物、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性クロロオレフィンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、ポリプロピレン/エチレン−プロピレン共重合ゴムを主成分とする組成物、又はその動的架橋組成物、ポリプロピレン/アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを主成分とする組成物、又はその動的架橋組成物、ポリプロピレン/スチレン−ブタジエンブロック共重合体を主成分とする組成物、又はその動的架橋組成物、ポリプロピレン/スチレン−イソプレンブロック共重合体を主成分とする組成物、又はその動的架橋組成物、ポリプロピレン/スチレン−ブタジエンブロック共重合体水素添加物を主成分とする組成物、又はその動的架橋組成物、ポリプロピレン/スチレン−イソプレンブロック共重合体水素添加物を主成分とする組成物、又はその動的架橋組成物等を挙げることができる。
【0013】
(e)ゴムの成分としては、各種の合成ゴム及び天然ゴムの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。その具体例としては、下記の(1)〜(7)に分類されるゴムを挙げることができる。
(1)天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム等の非極性ジエン系ゴム及びその水素添加物、
(2)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体ゴム、(メタ)アクリル酸エステル−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム等の極性ジエン系ゴム及びその水素添加物、
(3)(メタ)アクリル酸エステルゴム、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体ゴム、(メタ)アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体ゴム、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン共重合体ゴム、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体ゴム等の(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリルゴム、
(4)エピクロロヒドリン単独又はエチレンオキシドとの共重合体ゴムを代表とする、いわゆるヒドリンゴム、
(5)クロロプレンゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、塩素化エチレン−プロピレンゴム等のハロゲン化されたゴム、
(6)エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレンとエチリデンノルボルネン等の架橋性第3成分共重合体ゴム等の、いわゆるエチレン−プロピレンゴム、
(7)その他、いわゆる多硫化ゴム、クロロホスファゼンゴム、ウレタンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム、ポリエチレンオキシドゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の通称で呼ばれる合成ゴム全般。
(f)セメントの例としては、普通セメント、早強セメント、超早強セメント、中庸熱セメント、耐硫酸塩セメント等のポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメント等を挙げることができる。
【0014】
複合材料のバインダ成分として、前記以外の高分子物質を適量加えることも可能である。そのような高分子物質の例としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族−芳香族共重合系石油樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。
本発明のうち、バインダとしてポリ塩化ビニル系樹脂を使用する場合には、可塑剤や安定剤を使用することができる。可塑剤の例としては、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル、ジオクチルセバテート等の脂肪酸エステル、アジピン酸とエチレングリコールとの縮合体であるようなポリエステル類、トリオクチルトリメート等のトリメリット酸エステル、エポキシ化大豆油等のエポキシ系、ポリエーテルエステル等のエーテル系、塩素化パラフィン、アルキルベンゼン、アロマチック等が挙げられ、これらを単独又は混合して使用することができる。可塑剤の添加量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、2〜200重量部である。可塑剤の量が2重量部未満では軟質化せず、200重量部を超えると可塑剤の揮発や移行による物性変化が起こり易くなり、工業製品として不良になるからである。好ましい可塑剤の添加量は3〜150重量部であり、より好ましくは5〜100重量部である。
【0015】
安定剤としては、ポリ塩化ビニル系樹脂に対し、通常添加される安定剤を特に限定することなく使用することができる。安定剤の例として、ゼオライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、各種金属石鹸、有機スズ系安定剤、鉛系安定剤、アンチモン系安定剤等の金属系安定剤のほか、有機リン系安定剤、エポキシ系安定剤、ポリオール系安定剤、含窒素化合物系安定剤、含硫黄化合物系安定剤、フェノール系抗酸化剤等を挙げることができる。
本発明において、バインダとしてセメントを使用する場合には、川砂、海砂、陸砂、砕砂、珪砂等の細骨材を使用することができる。また、フライアッシュ、高炉スラグ、炭酸カルシウム、シリカフューム等を前記砂と併用することもできる。さらに、砂利、砕石等の粗骨材を添加してもよい。
【0016】
また、充填材成分としてショットカス以外に、本発明の効果を損なわない範囲で補助充填材を用いることができる。補助充填材の例としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、クレー、フライアッシュ、マイカ、ガラス中空体、硫酸バリウム、酸化鉄粉体、グラファイト、亜鉛華、古紙、化学繊維、ウッドファイバー、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維(ウィスカ)等を挙げることができる。特に、古紙、化学繊維、ウッドファイバー、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維(ウィスカ)のような繊維質物質は、複合材料をシート状に加工した場合の熱流動性を小さくさせることが可能であり、ちぎれや垂れを防止することができる。
この発明において、前記成分以外に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、核剤、顔料、難燃剤、増量剤、加工助剤等の添加剤を混合してもよい。
【0017】
充填材の主成分としてショットカスを用い、且つバインダ成分としてアスファルト又はポリ塩化ビニル系樹脂を使用する複合材料を、シート状に成形するには、例えば、まず各原材料の所定量を配合し、ヘンシェルミキサー等で予備混合し、次いでミキシングロールや加圧ニーダーで混練する。その後、カレンダーロールで所定の幅及び厚さのシート状に成形し、これを裁断又は巻き取りする。必要に応じ、さらに、粘着層を形成したり、プレス加工を施すこともできる。このようにして得られたシートは、アスファルト又はポリ塩化ビニル系樹脂に高密度の充填材であるショットカスが加えられているので、制振効果に優れており、制振シートとして使用することができる。
【0018】
充填材の主成分としてショットカスを用い、且つバインダ成分としてセメントを使用する複合材料からなる重量材を形成する場合には、ショットカスにショット玉を加えて使用することも可能である。
バインダ成分としてセメントを用い、充填材としてショットカスを用いた複合材料からなる重量材は、例えば、加熱混練機中で、水とともに混練して硬化させることにより、フォークリフト等の片方に荷重がかかる機械のバランサーとして使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダに充填材を含ませてなる複合材料において、前記充填材の主成分としてショットカスを配合したことを特徴とする複合材料。
【請求項2】
前記ショットカスに、鋼材の熱間鍛造工程で鋼材表面に発生した酸化スケールが含まれている、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記バインダがアスファルト又はポリ塩化ビニル系樹脂である請求項1に記載の複合材料からなる制振シート。
【請求項4】
前記バインダがセメントである請求項1に記載の複合材料からなる重量材。

【公開番号】特開2007−8758(P2007−8758A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191275(P2005−191275)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】