説明

複合焼結体

【課題】耐熱性、耐光性、および光反射性能に優れた複合焼結体を提供する。
【解決手段】複合焼結体は、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体の粉末とガラス(石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等、又は結晶化ガラス等)とを配合、成形し、焼成することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、耐光性に優れ、かつ光反射性能に優れた複合焼結体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体・電子機器装置の薄型化、小型化、高出力化にともなって、これらを収納保護するパッケージに対する要求が厳しくなってきている。例えば、発光ダイオード(LED)や半導体レーザー(LD)は、小型で高い発光効率を有するため、これらを収納するパッケージには高い耐熱性、耐光性が要求される。また、発光素子から放出される光を効率良く取り出すために、光反射性能に優れたパッケージも必要とされている。
【0003】
このようなパッケージとして、エポキシ樹脂にシリカなどの無機充填剤を添加し、吸水率や線膨張係数を低下させ高温時の変形やクラックを防止したものが利用されている。しかし、樹脂を使用したパッケージは、耐熱性、耐光性が十分でなく、長期間使用すると劣化変色し、色ムラの発生、光反射性能の低下、機械的強度の低下が生じてしまう。
【0004】
またパッケージとして、耐熱性、耐光性に優れたセラミック材料の利用も行われているが、一般にセラミックは1200〜1500℃の高温焼成が必要である。セラミックにガラスを添加し低温焼成可能な基板の報告例もあるが、光反射性能に優れたものの報告例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−302533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐熱性、耐光性、および光反射性能に優れた複合焼結体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の複合焼結体は、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体とガラスとを含むことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の複合焼結体をLEDやLDのパッケージとして用いた場合、樹脂成分を含有しないため、長期間使用しても劣化変色することなく、色ムラの発生、光反射性能の低下、機械的強度の低下等を生じることがない。すなわち、本発明の複合焼結体は、耐熱性、耐光性、および光反射性能に優れるともに、これらの特性を長期間維持できるものである。また、本発明の複合焼結体は、ガラスを含有しているため、一般的なセラミックに比べ低い温度で作製することが可能である。
【0009】
また、本発明の複合焼結体を形成する原材料を用いてペーストを作製し、このペーストを一般的なセラミック基板に塗布後、焼成することで、耐熱性、耐光性、および光反射性能に優れた複合焼結体からなるコーティング相を有するセラミック基板を作製することが可能である。
【0010】
さらに、本発明の複合焼結体は、含有するガラスの屈折率を変化させることにより、複合焼結体の光反射性能を容易に制御することが可能である。Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック粒子は、この相を含有しないセラミック粒子に比べて屈折率が高いことが知られている。このような、屈折率の高いBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック粒子と、この相を含有しない屈折率の低い粒子とが分散していることにより、全体的に、屈折率の高い粒子と、この粒子よりも屈折率の低い粒子とが隣接する場所ができる。この隣接する粒子の界面において、粒子同士の屈折率差が大きい場所では、光の反射が大きくなる。従って、このようなセラミック焼結体によれば、屈折率差の大きな粒子同士の界面が全体に分散しているので、優れた光の反射特性を有することができる。
【0011】
一方、ガラスとして屈折率Nd=1.50〜2.30のものが報告されている。従って、本発明の複合焼結体が含むガラスとして、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体と屈折率の差が大きいガラスを含有させることにより、屈折率差の大きな粒子同士の界面が生じる部分を増やすことができ、光反射性能を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の複合焼結体は、軟化点の低いガラスを含有させることにより比較的低い温度で作製することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に用いるBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体の製造方法を下記に示す。
【0014】
まず、バリウム化合物、アルミナ、シリカを準備して、これらを適宜粉末化して混合する。なお、混合時にバリウム化合物、アルミナ、シリカをボールミル等に投入して、バリウム化合物、アルミナ、シリカのそれぞれを粉砕して粉末化しつつ混合しても良い。このとき、分散剤や可塑剤や染料をそれぞれの材料と共にボールミル等に投入しても良い。こうして、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末の混合材料を得る。
【0015】
バリウム化合物の材料としては、特に限定されないが、水素化バリウム、フッ化バリウム、水酸化バリウム、酸化バリウム、塩化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム等を挙げることができ、中でも酸化バリウム、炭酸バリウムが好ましく、特に炭酸バリウムが、原料純度が高く価格が安いという観点から好ましい。また、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された状態におけるバリウム化合物粉末の平均粒径は、1.0〜2.0μmであることが、バリウム化合物粉末を充分に分散させることができる観点から好ましい。
【0016】
バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された状態におけるアルミナ粉末の平均粒径は、5μm以下であることが、より均一に焼結したBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体を得ることができるため好ましい。また、本発明の複合焼結体の光反射性能や、可撓性、製造時の焼結性等を考慮すると、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された状態におけるアルミナ粉末の平均粒径は、0.1μm〜3μmであることが特に好ましい。
【0017】
また、アルミナ粉末においては、上述の光反射性能や、可撓性、焼結性を調整するために、異なる平均粒径を有するアルミナ粉末を混合して用いることができる。例えば、平均粒径の異なる2種類のアルミナ粉末の粒径の組み合わせとしては、特に限定されないが、3μmと0.2μm、3μmと0.3μm、3μmと0.4μm、3μmと0.5μm、3μmと0.6μm、2μmと0.2μm、2μmと0.3μm、2μmと0.4μm、2μmと0.5μm、2μmと0.6μm等を挙ることができる。また、互いに平均粒径が異なる2種類のアルミナ粉末の組み合わせに限らず、互いに平均粒径が異なる3種類以上のアルミナ粉末を組み合わせても良い。平均粒径の異なる2種のアルミナを使用する場合、(大粒径のアルミナ粉末)/(小粒径のアルミナ粉末)の重量部数による配合比は、100/1〜60/40であることが好ましい。特に、異なる平均粒径のアルミナ粉末を混合したことにより、優れた光反射性能や、可撓性、焼結性を得るためには、(大粒径のアルミナ粉末)/(小粒径のアルミナ粉末)の重量部数による配合比が、85/15〜65/35であることが好ましく、80/20〜70/30がより好ましい。
【0018】
また、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された状態におけるシリカ粉末の平均粒径は、1μm以下であることが、セラミック焼結体の吸湿性を低くする観点から好ましく、0.1〜0.7μmであることがより好ましく、0.3〜0.6μmであることがさらに好ましい。
【0019】
また、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された状態におけるアルミナ、シリカ、バリウム化合物の重量部数による配合比は、バリウム化合物の重量部数をBaOで換算する場合に、
(BaO+SiO)/(Al)=4/96〜24/76
であることが好ましい。このように混合することで、高い光反射性能を有したBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体とすることができる。
【0020】
また、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された状態におけるバリウム化合物(BaO換算)とシリカ(SiO)の配合モル比は、
(BaO/SiO)=8/1〜8/32
であることが好ましい。このように混合することで、高い光反射性能を有しつつ基板の吸湿性の低いBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体とすることができる。
【0021】
次に、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された混合材料を成形する。成形においては、この混合材料を粉体成形法やグリーンシート法により成形すれば良い。
【0022】
粉体形成法により成形する場合は、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末の混合材料を金型等の成形体により厚密して成形する。具体的には、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末の混合材料と、バインダーと、滑剤と、溶媒とを混合してスラリー状にする。そして、スラリー状にされた混合材料をスプレードライヤー等を用いて造粒する。このとき、造粒粒子の直径は、25μm〜200μmであることが好ましく、30μm〜150μmであることがより好ましい。なお、造粒後においては、造粒粒子を篩い等を使用して分級することが好ましい。これは、粒子の成形体への充填性を良くし、かつ、成形体のクリアランス等に入り込んでバリ等が発生することを抑制するためである。
【0023】
このときに用いるバインダーとしては、特に制限されないが、例えばアクリル系樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)系樹脂等を挙げることができる。また、スラリーの固形分中に対するバインダー樹脂の含有量は、0.5重量%〜5.0重量%であることが好ましく、1.5重量%〜3.5重量%であることがさらに好ましい。
【0024】
また、滑剤としては、特に制限されないが、例えばステアリン酸エマルジョンを挙げることができ、スラリーの固形分中の含有量は、0.05重量%〜0.5重量%であることが好ましく、0.1重量%〜0.3重量%であることがさらに好ましい。
【0025】
また、溶媒としては、特に限定されないが、上述の様な材料を使用する場合には、水を挙げることができる。溶媒の量は、特に制限されないが、例えば、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末の総量に対して、20重量%〜80重量%であることが好ましく、40重量%〜60重量%であることがより好ましい。
【0026】
また、造粒粒子を金型等の成形体により厚密して成形するとき、造粒粒子を金型の中に充填し、常温にて圧力をかけて成型すれば良い。このとき、造粒粒子に加える圧力は、0.5t/cm〜2.0t/cmであることが好ましく、0.7t/cm〜1.5t/cmであることが更に好ましい。こうして、成形されたバリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された材料を得る。
【0027】
グリーンシート法により成形する場合は、まず、バリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末の混合材料に溶剤、バインダー樹脂、分散剤、可塑剤等を加え混練することによりスラリーを調製する。
【0028】
バインダー樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、PVB(ポリビニルブチラール)系樹脂等のバインダー樹脂を挙げることができる。また、スラリーの固形分に対するバインダー樹脂の含有量は、4.0重量%〜20重量%であることが好ましく、6.0重量%〜8.0重量%であることが更に好ましい。
【0029】
また、分散剤としては、界面活性剤を使用することができ、スラリーの固形分に対する含有率は、0.1重量%〜1.0重量%が好ましく、0.3重量%〜0.5重量%であることが更に好ましい。
【0030】
また、可塑剤としては、例えば、DOP(Dioctyl Phthalate)、DBP(Dibutyl Phthalate)等が使用することができ、スラリーの固形分中の含有量は、3.0重量%〜15重量%であることが好ましく、4.0重量%〜6.0重量%であることがより好ましい。
【0031】
溶剤としては、例えばアルコールやトルエン等を使用することができ、スラリーの固形分の総量が70重量%〜80重量%となることが好ましい。また、スラリーの粘度は、3,000cps〜30,000cpsとすることが好ましく、10,000cps〜20,000cpsとすることがさらに好ましい。
【0032】
次いで、得られたスラリーを離型剤が設けられたキャリアフィルムに塗布し、乾燥によって溶剤を蒸発させる。このとき、乾燥温度を80℃〜130℃とすることが好ましく、100℃〜120℃とすることがより好ましい。また、乾燥速度は、0.2m/min〜2.0m/minとすることが好ましい。
【0033】
この後、キャリアフィルムを剥離するとグリーンシートが生成する。このグリーンシートを、所望の形状にプレス成型機にて打ち抜いて、成形されたバリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された材料を得る。
【0034】
次に、成形されたバリウム化合物粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末が混合された材料を焼成する。このときの焼成温度は、1400℃〜1600℃であることが、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体が効率良く得られるため好ましく、1500℃〜1600℃であることがより好ましい。こうして、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体が得られる。
【0035】
次に、得られたBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体を粉砕する。粉砕においては、得られたBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体を、適当な方法により、例えば、2mm四方程度に粉砕した後、溶媒と共にボールミルに投入して、さらに粉砕する方法が挙げられる。この場合、ボールミルによりセラミック焼結体を粉砕して粉末とした後、溶媒と共に粉末を取り出して、乾燥させることにより溶媒を除去する。こうして、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体の粉末を得る。
【0036】
本発明の複合焼結体には、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、フッ化物ガラス等を含有させることができる。また、本発明の複合焼結体には、コージュライト、ムライト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウレイマイト、ドロマイト、ペタライト等を含有させることもできる。本発明の複合焼結体は、所望により上記ガラスの2種以上を含有させることが可能である。
【0037】
本発明の複合焼結体は、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体の粉末と、前記ガラスの1種以上を含む粉末との混合物を焼成することにより作製することが可能である。また、本発明の複合焼結体は、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体の粉末と、焼成後に上記ガラスの1種以上を形成する無機酸化物との混合物を焼成することにより作製することも可能である。
【0038】
本発明の複合焼結体は、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体の粉末と、ガラスの粉末あるいは無機酸化物の粉末との混合材料を、粉体成形法やグリーンシート法により成形することが可能である。この場合の、粉砕、混合、成形等は、上述したBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体の作製で用いた条件と、同じ条件を用いることが可能である。
【0039】
本発明の複合焼結体におけるBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体の含有量は、30〜95重量%であることが好ましい。Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体の含有量が30重量%以上であれば、優れた光反射性能が得られるため好ましい。また、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体の含有量が95重量%以下であれば、複合焼結体を作製する際の焼成温度を低くすることができるため好ましい。
【0040】
また、本発明の複合焼結体が含有するガラスとしては、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体との屈折率Nd(589.3nmにおける屈折率)の差が0.1以上であるものが好ましく、より好ましくは0.2以上である。ガラスとBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体との屈折率の差が、0.1以上であれば優れた光反射性能が得られるため好ましい。
【0041】
本発明の複合焼結体が含有するガラスは、軟化点が600℃〜1000℃であることが好ましく、600℃〜900℃であることがより好ましい。ガラスの軟化点が1000℃以下であれば、複合焼結体の焼成温度が低くすることができるため好ましい。
【0042】
本発明の複合焼結体におけるBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体は、比較的屈折率が高いものである。一方、ガラスは屈折率が高くなるにつれて軟化点が高くなる傾向があり、高屈折率ガラスの軟化点は、1200〜1300℃であり、低屈折率ガラスの軟化点は700℃程度であることが知られている。従って、本発明の複合焼結体におけるガラスは、複合焼結体が優れた光反射性能を有するためにも、複合焼結体の焼成温度を低くするためにも、軟化点の低い低屈折率ガラスを含有させることが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
<製造例1>
まず、Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体の原料として、高純度の炭酸バリウム(製品名:LSR、日本化学工業株式会社製)を31.0重量部(52.7kg)、低ソーダアルミナ(製品名:HQ−C、住友化学株式会社製)を48.0重量部(81.6kg)、及び、合成球状シリカ(製品名:アドマファインSO−C2、株式会社アドマテックス製)を21.0重量部(35.7kg)準備した。次に、炭酸バリウム、低ソーダアルミナ、合成球状シリカを容量が200リットルのアルミナライナーのボールミルに投入した。このとき上記材料と共に、分散剤としてソルビタンセスキオレエート(製品名:ソルゲン30、第一工業薬品株式会社製)を0.4重量部(0.68kg)、可塑剤(DOP)を5.0重量部(8.5kg)、染料(製品名:アミニールブルーE−2GL、田岡化学工業株式会社製)を0.02重量部(0.035kg)、及び、溶媒として混合有機溶剤(トルエン50重量%、エタノール50重量%)を33.2重量部(56.5kg)投入した。そして、毎分26回転で24時間混合した。
【0045】
次にポリビニルブチラール(製品名:エスレックBL−S、及び、BM−SZの混合物、積水化学工業株式会社製)を10.0重量部(17.0kg)投入し、毎分26回転で更に24時間混合して、青色のスラリーを得た。
【0046】
得られた青色のスラリーをドクターブレード法にて塗工し、幅30cm、長さ1m、厚さ約0.34mmのセラミック焼結体用グリーンシートを複数作製した。こうして得られた複数のグリーンシートをロール状に丸めて、アルミナ製の匣鉢に隙間無く並べ、焼成炉(装置名:HST−30−17F、中外プロックス社製)に設置し、1518℃で40分間、大気焼成してBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体を得た。
【0047】
次に、得られたBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体を適当な道具を用いて、約2mm四方に粗く粉砕して、容量が2リットルのアルミナ製ポットミルに0.4446kg投入した。また、溶媒として混合有機溶剤(トルエン50重量%、エタノール50重量%)を0.2966kg投入し(固形分60%)、毎分50回転で96時間混合粉砕した。その後、ステンレス製のバットに中身を出して溶剤を乾燥させ、セラミック焼結体の粉末を回収した。回収したセラミック焼結体の粉末を、粒度分布測定装置(日機装社製:マイクロトラックMT−3000)で測定したところ、D50は2.6μmであった。
【0048】
<実施例1>
先に得られたBa0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体の粉末を73.8重量部(693.5g)、及びガラス(製品名:ASF102X、旭硝子株式会社製)を26.2重量部(246.0g)準備し、容量が2リットルのアルミナ製のポットミルに投入した。このとき分散剤としてソルビタンセスキオレエート(製品名:ソルゲン30、第一工業薬品株式会社製)を0.4重量部(3.8g)、可塑剤(DOP)を2.5重量部(23.5g)、染料(製品名:アミニールブルーE−2GL、田岡化学工業株式会社製)を0.020重量部(0.2g)、及び、溶媒として混合有機溶剤(トルエン50重量%、エタノール50重量%)を31.0重量部(291.0g)投入した。そして、毎分50回転で24時間混合した。
【0049】
次に、ポリビニルブチラール(製品名:エスレックBL−S、及び、BM−SZの混合物、積水化学工業株式会社製)をそれぞれ5.0重量部(47.0g)投入した。そして、毎分50回転で更に24時間混合して、青色のスラリーを得た。
【0050】
次に、脱泡した青色のスラリーをドクターブレード法にてキャリアフィルムに塗工し、グリーンシートとした。このときドクターブレードとキャリアフィルムのギャップを0.850mm、ラインスピードは0.1m/minとし、乾燥温度を第一ゾーンが50℃、第二ゾーンが100℃とした。塗工したグリーンシートは、キャリアフィルムから注意深く剥離し、約240mmの長さで切断して回収した。グリーンシートの先頭における厚さを計測したところ、約880μmであった。なお、グリーンシート表面には塗工スジおよび気泡などの異常は見られなかった。
【0051】
次に、得られたグリーンシートの厚さを計測し、厚さが640μmから760μmの範囲のグリーンシートを切り出した。そして、切り出したグリーンシートをプレス機にて成形した。成形時においては、打ち抜き外形を縦72mm、横84mmとした。
【0052】
次に、成形したグリーンシートをアルミナ製の棚板の上に乾燥面とキャリア面が交互に重なるように3枚組みで重ねて焼成炉に設置し、850℃で20分間大気焼成して本発明の複合焼結体1を得た。
【0053】
<実施例2>
実施例1のガラスを、ガラス(製品名:CY0037、日本フリット株式会社製)に変更し、グリーンシートの焼成温度を750℃に変更した他は、実施例1と同様にして複合焼結体2を得た。
【0054】
<反射率評価>
実施例1及び2で得られた複合焼結体1及び2の反射率の測定を行った。反射率の測定には、日立製作所社製の分光光度計U−4000を用い、250nm〜800nmの波長領域の光に対する反射率を測定した。このとき測定条件として、バンドパスを5nmとし、スキャンスピードを300nm/minとした。
【0055】
その結果、硫酸バリウムから成る標準白板の反射率を100とした場合、本発明の複合焼結体1及び2は、波長300nm〜800nmの領域において、何れも反射率90以上を維持し光反射性能に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体とガラスとを含む複合焼結体。
【請求項2】
ガラスが石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、フッ化物ガラスからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の複合焼結体。
【請求項3】
ガラスが、コージュライト、ムライト、アノーサイト、セルジアン、スピネル、ガーナイト、ウイレマイト、ドロマイトからなる群から選択される1種以上の結晶化ガラスであることを特徴とする請求項1に記載の複合焼結体。
【請求項4】
Ba0.808Al1.71Si2.29相を含有するセラミック焼結体の含有量が、30〜95重量%であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の複合焼結体。

【公開番号】特開2012−41222(P2012−41222A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182496(P2010−182496)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】