説明

複電圧対応電気車両の電圧切り替え制御方法および制御システム

【課題】2つの異なる架線電圧区間でスムーズな相互の乗り入れを可能とすること。
【解決手段】き電電圧が、電気車の動作電圧である750Vより高い1500Vの区間、もしくは低い600Vの区間を走行する際には、切り替え手段11,12,21,22により、コンデンサ52,57のうちの一方のコンデンサをパンタグラフ1に接続して、上記き電電圧で充電し、この電圧を電圧コンバータ71で750Vまで降圧もしくは昇圧して、コンデンサ52,57のうちの他方のコンデンサを充電し、この電圧を電気車駆動装置8に供給し、電気車を駆動する。また、き電電圧が、750Vの区間を走行する際には、切り替え手段11,12,21,22により、コンデンサ52,57をパンタグラフ1に接続するとともに、電気車駆動装置8に接続し、コンデンサ52,57に充電された750Vの電圧を電気車駆動装置8に供給し、電気車を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、き電電圧の異なる2つ直流電化区間を、スムーズに直通できるようにした複電圧対応電気車両の電圧切り替え制御方法および制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来からの架線より集電する電力に加え、電気車内部に備えた蓄電装置からの電力によって運行するハイブリッド電気車が研究されている(特許文献1、特許文献2等参照)。
ハイブリッド電気車では、例えば回生ブレーキ使用中の電気車が在線するとき、近傍に力行中の電気車など、負荷がない場合、車内に設けられた蓄電装置を充電することにより、回生失効を防止することが可能である。また、回生時に蓄電したエネルギーを再び力行時に使用することで、電力効率を向上させることが可能である。
また、非電化区間であっても蓄電装置から給電して走行することができるため、都市中心部など、景観上、或いはイニシャルコスト等の問題により架線の架設が困難な場合にも電気車を運行可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】小笠、田口、上園、丸山著、「車載高性能電池による架線ハイブリッド回生失効防止定置試験結果」2004−12−17、電気学会研究会資料SPC−04−177、P45−50
【非特許文献2】関島、乾、戸田、門田、長谷部著「電気二重層キャパシタを適用した直流用電力貯蔵装置の開発」、2005−3−17、電気学会全国大会5−176
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のハイブリッド電気車は、架線より集電可能な電圧範囲は限られており、電圧の異なる線区、すなわち、き電電圧の異なる線区を直通して走行することができないという問題あった。
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであって、き電電圧が異なる区間を直通して走行することができる複電圧対応電気車両の電圧切り替え制御方法および制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、架線と、蓄電装置および走行制御システム(電気車駆動装置)との間に電圧変換器を設け、架線電圧によらずに走行制御システムへ供給される電圧が一定となるように制御する。
すなわち、本発明においては、以下のようにして上記課題を解決する。
集電装置に直列に接続された遮断器と、該遮断器を介して該集電装置に接続された電圧変換器と、電圧変換器の出力側に接続された電気車駆動装置と、上記電圧変換器の動作を制御する制御装置から構成され、異なるき電電圧区間を直通可能とした複電圧対応電気車両において、上記電気車駆動装置は蓄電装置と該蓄電装置に充電された電圧により駆動される電気車駆動用インバータ装置とを有し、この電気車駆動装置は、特定の電圧(例えば750V)で駆動される。
上記電圧変換器は、第1のコンデンサと、第2のコンデンサと、電圧コンバータと、第1のコンデンサ及び/または第2のコンデンサを上記遮断器を介して上記集電装置に選択的に接続するとともに、第1のコンデンサ及び/または第2のコンデンサを電気車駆動装置に選択的に接続する切り替え手段を備える。
そして、き電電圧が、上記電気車駆動装置が駆動される特定の電圧(例えば750V)より高い区間(例えば1500V)、もしくは低い区間(例えば600V)を走行する際には、上記切り替え手段により、第1もしくは第2のコンデンサのうちの一方のコンデンサを上記遮断器を介して上記集電装置に接続して、該コンデンサを、上記き電電圧で充電して、上記電圧コンバータで、該コンデンサに充電されてた電圧を上記電気車駆動装置が駆動される特定電圧まで降圧もしくは昇圧して、第1もしくは第2のコンデンサのうちの他方のコンデンサを充電し、該第1もしくは第2のコンデンサのうちの他方のコンデンサを上記電気車駆動装置に接続し、上記電気車駆動装置に上記特定の電圧を供給する。
また、き電電圧が、上記電気車駆動装置が駆動される特定の電圧に等しい区間を走行する際には、上記切り替え手段により、第1のコンデンサ及び第2のコンデンサを上記遮断器を介して上記集電装置に接続するとともに、第1のコンデンサ及び第2のコンデンサを電気車駆動装置に接続し、第1のコンデンサおよび第2のコンデンサの電圧を上記き電電圧で充電して、上記電気車駆動装置に上記特定の電圧を供給する。
【0006】
さらに詳細には上記電圧変換器は、以下のように構成され、上記制御装置は、き電電圧が異なる区間を走行する際に以下のように制御する。
上記電圧変換器(7)は、上記遮断器(2)に接続された線路に一方の端子が接続された第1の接触器(11)と、該第1の接触器(11)の他方の端子と接地間に接続された第2のコンデンサ(57)と、上記遮断器(2)に接続された線路に一方の端子が接続された第3の接触器(21)と、該第3の接触器(21)の他方の端子と接地間に接続された第1のコンデンサ(52)と、上記第1のコンデンサ(52)の電圧を昇圧して上記第2のコンデンサ(57)に供給し、また、上記第2のコンデンサ(57)の電圧を降圧して上記第1のコンデンサ(52)に供給する電圧コンバータ(71)と、上記第1のコンデンサ(52)のプラス側端子と上記電気車駆動装置(8)との間に接続された第2の接触器(12)と、上記第2のコンデンサ(57)のプラス側端子と上記電気車駆動装置(8)との間に接続された第4の接触器(22)とから構成され、上記第1〜第4の接触器(11,12,21,22)及び電圧コンバータ(71)は、制御部(10)により制御される。
上記制御部(10)は、電気車駆動装置が駆動される特定の電圧(750V)より高いき電電圧区間(例えば1500V)を走行する際には、上記第1、第2の接触器(11,12)をオン、第3、第4の接触器(21,22)をオフとして、第2のコンデンサ(57)をき電電圧で充電して、上記電圧コンバータ(71)で、第2のコンデンサ(57)の電圧を上記特定の電圧まで降圧して上記第1のコンデンサ(52)を充電して、上記電気車駆動装置(8)に上記特定の電圧を供給する。
また、上記特定の電圧(750V)より低いき電電圧区間を走行する際には、上記第3、第4の接触器(21,22)をオン、第1、第2の接触器(11,12)をオフとして、第1のコンデンサ(52)をき電電圧で充電して、上記電圧コンバータ(71)で、第1のコンデンサ(52)の電圧を上記特定の電圧まで昇圧して、上記第2のコンデンサ(57)を充電して、上記電気車駆動装置(8)に上記特定の電圧(750V)を供給する。
き電電圧が、上記特定の電圧(750V)である区間を走行する際には、上記第1、第2の接触器(11,12)、および第3、第4の接触器(21,22)をオンとして、第1のコンデンサ(52)および第2のコンデンサ(57)の電圧を上記特定の電圧(750V)で充電して、上記電気車駆動装置(8)に上記特定の電圧(750V)を供給する。
【0007】
また、電気車が1500Vき電区間など、架線電圧が上記特定の電圧(750V)を超える区間を走行後、電圧の異なるき電区間へ乗り入れる場合には、前記制御部(10)は以下のように制御する。
制御部(10)は、まず、集電装置(1)から電圧変換器(7)を切り離して、蓄電装置(8c)からの給電へ切り替えた後、上記電圧コンバータ(71)で、第1のコンデンサ(52)と第2のコンデンサ(57)の電圧が等しくなるよう制御する。第1のコンデンサ(52)と第2のコンデンサ(57)の電圧が等しくなったら、第3の接触器(21)および第4の接触器(22)をオンにする。
投入動作完了後、制御部(10)は、次に走行する区間のき電電圧が600Vなど750V未満である場合は、第1の接触器(11)および第2の接触器(12)をオフにし、前記集電装置(1)と電圧変換器(7)を接続して、第1のコンデンサ(52)をき電電圧で充電して、上記電圧コンバータ(71)で、第1のコンデンサ(52)の電圧を上記特定電圧まで昇圧して上記第2のコンデンサ(57)を充電して、上記電気車駆動装置(8)に上記特定の電圧(750V)を供給する。
また、き電電圧が上記特定の電圧(750V) である場合は、そのままの状態(第1〜第4の接触器(11,12,21,22)オン)とし、前記集電装置(1)と電圧変換器(7)を接続して、第1のコンデンサ(52)、第2のコンデンサ(57)をき電電圧で充電して、上記電気車駆動装置(8)に上記特定の電圧(750V)を供給する。
【0008】
また、電気車が600Vき電区間など、架線電圧が上記特定の電圧(750V)未満の区間を走行後、電圧の異なるき電区間へ乗り入れる場合には、前記制御部(10)は以下のように制御する。
制御部(10)は、まず、集電装置(1)から電圧変換器(7)を切り離して、蓄電装置(8c)からの給電へ切り替えた後、上記電圧コンバータ(71)で第1のコンデンサ(52)と第2のコンデンサ(57)の電圧が等しくなるよう制御する。第1のコンデンサ(52)と第2のコンデンサ(57)の電圧が等しくなったら、第1の接触器(11)および第2の接触器(12)をオンにする。
投入動作完了後、乗り入れる線区のき電電圧が1500Vなど上記特定の電圧(750V)を超える場合は、第3の接触器(21)および第4の接触器(22)をオフにし、前記集電装置(1)と電圧変換器(7)を接続して、第2のコンデンサ(57)をき電電圧で充電して、上記電圧コンバータ(71)で、第2のコンデンサ(57)の電圧を上記特定の電圧まで降圧して上記第1のコンデンサ(52)を充電し、上記電気車駆動装置(8)に上記特定の電圧(750V)を供給する。
き電電圧が上記特定の電圧(750V) である場合は、そのままの状態(第1〜第4の接触器(11,12,21,22)オン)とし、前記集電装置(1)と電圧変換器(7)を接続して、第1のコンデンサ(52)、第2のコンデンサ(57)をき電電圧で充電して、上記電気車駆動装置(8)に上記特定の電圧(750V)を供給する。
【0009】
さらに、電気車が上記特定の電圧(750V) であるき電区間を走行後、電圧の異なるき電区間へ乗り入れる場合、まず、集電装置(1)から電圧変換器(7)を切り離して、蓄電装置(8c)からの給電へ切り替える。
その後、乗り入れる線区のき電電圧が上記特定の電圧(750V) を超える場合は、第3の接触器(21)、第4の接触器(22)をオフ(第1の接触器(11)、第2の接触器(12)はオン)にし、前記集電装置(1)と電圧変換器(7)を接続して、第2のコンデンサ(57)をき電電圧で充電して、上記電圧コンバータ(71)で、第2のコンデンサ(57)の電圧を上記特定の電圧まで降圧して上記第1のコンデンサ(52)を充電し、上記電気車駆動装置(8)に上記特定の電圧(750V)を供給する。
また、乗り入れる線区のき電電圧が上記特定の電圧(750V) 未満の場合には、第1の接触器(11)、第2の接触器(12)をオフ(第3の接触器(21)、第4の接触器(22)はオン)にし、前記集電装置(1)と電圧変換器(7)を接続して、第1のコンデンサ(52)をき電電圧で充電して、上記電圧コンバータ(71)で、第1のコンデンサ(52)の電圧を上記特定の電圧まで昇圧して上記第2のコンデンサ(57)を充電し、上記電気車駆動装置(8)に上記特定の電圧(750V)を供給する。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)集電装置と電気車駆動装置の間に電圧変換器を設け、この電圧変換器に第1のコンデンサと、第2のコンデンサと、電圧コンバータと、第1のコンデンサ及び/または第2のコンデンサを上記遮断器を介して上記集電装置に選択的に接続するとともに、第1のコンデンサ及び/または第2のコンデンサを電気車駆動装置に選択的に接続する切り替え手段を設けたので、上記電気車駆動装置を駆動する電圧とは異なるき電電圧の区間を走行することができるとともに、き電電圧が異なる区間を直通して走行することができる。
(2)上記切り替え手段は、第1、第2のコンデンサの電圧が等しくなった後に、接続を切り替えるので、切り替え手段の投入、遮断時には、切り替え手段に電流が流れず、切り替え手段として、比較的小型で安価な接触器を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例の複電圧対応電気車両の構成例を示す図である。
【図2】電車線切り替え区間の例を示す図である。
【図3】走行を開始する際の制御動作を示すフローチャート(1)である。
【図4】走行を開始する際の制御動作を示すフローチャート(2)である。
【図5】走行を開始する際の制御動作を示すフローチャート(3)である。
【図6】1500Vから600Vの区間に乗り入れるときの動作を説明する図(1)である。
【図7】1500Vから600Vの区間に乗り入れるときの動作を説明する図(2)である。
【図8】1500Vから600Vの区間に乗り入れるときの制御動作を示すフローチャート(1)である。
【図9】1500Vから600Vの区間に乗り入れるときの制御動作を示すフローチャート(2)である。
【図10】600Vから1500Vの区間に乗り入れるときの動作を説明する図(1)である。
【図11】600Vから1500Vの区間に乗り入れるときの動作を説明する図(2)である。
【図12】600Vから1500Vの区間に乗り入れるときの制御動作を示すフローチャート(1)である。
【図13】600Vから1500Vの区間に乗り入れるときの制御動作を示すフローチャート(2)である。
【図14】750Vから1500Vの区間に乗り入れるときの制御動作を示すフローチャート(1)である。
【図15】750Vから1500Vの区間に乗り入れるときの制御動作を示すフローチャート(2)である。
【図16】750Vから600Vの区間に乗り入れるときの制御動作を示すフローチャート(1)である
【図17】750Vから600Vの区間に乗り入れるときの制御動作を示すフローチャート(2)である
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例を示す図であり、同図(a)は電気車の主回路構成、同図(b)はインバータ装置等から構成される電気車駆動装置である750V動作回路の構成例を示す。
図1(a)において、パンタグラフ1に直列に、高速度遮断器2、接触器3,4、リアクトル6の直列回路が接続され、上記接触器4には並列に充電抵抗5が接続される。該直列回路のリアクトル6の他端側は電圧変換器7に接続され、また、高速度遮断器2と接触器3の接続点と接地間には電圧検出器50が設けられる。
また、電圧変換器7の出力側には、電気車を駆動するためのインバータ装置であるVVVF(Variable Voltage Variable Frequency )、電気車内に電源を供給するためのSIV(Static Inverter )、および蓄電装置などから構成される電気車駆動装置(750V動作回路)8が接続される。なお、本実施例では、上記電気車駆動装置8は750Vで動作するものであり、以下では750V動作回路という。
【0013】
電圧変換器7は、第1〜第4の接触器11,12,21,22、第1、第2のコンデンサ52、57、電圧検出器51,58、電流検出器54と、電圧コンバータ71とから構成され、電圧コンバータ71はリアクトル53、スイッチング素子55,56、ダイオードD1,D2を備える。
前記リアクトル6には、電圧変換器7の第1の接触器11と第3の接触器21の一方の端子が接続され、第3の接触器21の他方の端子には、電圧コンバータ71の第1の端子7aが接続され、この第1の端子7aと接地間には、第1のコンデンサ52が接続される。
また、第1の接触器11の他方の端子には、上記電圧コンバータ71の第2の端子7bが接続されるとともに、第2の端子7bと接地間に第2のコンデンサ57が接続される。さらに、上記第1のコンデンサ52と750V動作回路8との間には、第2の接触器12が接続され、さらに、上記第2のコンデンサ57と750V動作回路8との間には、第4の接触器22が接続される。
上記電圧コンバータ71のスイッチング素子55、スイッチング素子56を駆動することにより、上記電圧コンバータ71の端子7aに供給される電圧を昇圧してコンデンサ57を充電したり、端子7bに供給される電圧を降圧して、コンデンサ52を充電することができる。
制御部10は、電圧検出器50,51,58、電流検出器54により検出された電圧、電流などに基づき、上記接触器3,4、第1〜第4の接触器11,12,21,22、電圧コンバータ71を制御して、き電電圧が異なる区間を走行する際の電圧切り替え制御等を行なう。
【0014】
750V動作回路8は図1(b)に示すように、電圧変換器7が出力する750Vの電圧で駆動されるVVVF8a、SIV8b、および非電化区間に電気車を駆動するための蓄電装置8cから構成される。
VVVF8aは、スイッチSW1、コンデンサC1、インバータ81から構成され、電圧変換器7が出力する750Vの直流電圧を交流に変換し、電気車駆動用モータ8dを駆動する。SIV8bは、スイッチSW2、コンデンサC2、インバータ82、フィルタやトランスから構成される回路83から構成され、電圧変換器7が出力する750Vの直流電圧を交流に変換し、室内灯や冷暖房機器のコンプレッサ等の各種機器8eに給電する。 蓄電装置8cの電圧は750Vであり、電化区間を走行中、負荷が少ないとき、あるいは回生動作中に充電され、非電化区間を走行する際には放電して、上記VVVF8a、SIV8bに給電する。
【0015】
図2は、電車線切り替え区間の例を示す図であり、同図(a)は異なる直流き電区間91a,91bの間に、給電されていない架線が設けられ、その間が無電圧区間92になっている場合を示し、同図(b)は異なる直流き電区間91a,91bの間には架線が設けられていない無架線区間94となっている場合を示す。
同図(a)(b)に示すように直流き電区間91a,91bはそれぞれ、異なるき電圧を給電する直流送電所93a,93bから給電され、電気車95が、異なるき電圧区間を跨いで走行する場合には、上記無電圧区間92あるいは無架線区間94を走行し、その間、電気車95は前記蓄電装置8cから給電されて走行する。
なお、以下の説明では、直流き電区間91a,91bの電圧が、750V未満(例えば600V)、750V、750Vを超える場合(例えば1500V)であり、電気車95は上記異なった電圧の直流き電区間を走行する場合について説明する。
【0016】
以下、本発明の実施例の制御システムの動作について説明する。
(1)走行開始時
電気車が走行を開始する際、架線電圧の電圧値に応じて、図1に示す制御部10は次のような制御を行なう。以下、図3〜図5のフローチャートを参照しながら説明する。
(a)1500Vき電区間など750Vを超える区間で走行を開始する場合。
図3(a)(b)にこの場合の動作フローを示し、図3(a)は架線電圧が予め既知の場合や架線電圧を知らせる外部トリガ情報受信による場合の動作を示し、図3(b)は外部トリガ情報受信等によらずに自動で行う場合の動作フローを示す。
【0017】
電気車が1500Vき電区間など、架線電圧が750Vを超える区間を走行するとき、1500V区間であることが予め既知の場合や、1500V区間であることを知らせる外部トリガ情報受信(運転台での電圧モード選択スイッチ扱いで進入区間電圧を選択、トランスポンダやトロリコンタクタ等の地上からの異電圧区間進入情報を受信、無線等による異電圧区間への進入情報を受信)した場合は、図3(a)に示すように、まず、制御部10は、接触器11および接触器12を投入し、接触器21および接触器22を開放した状態でパンタグラフ1を上昇させる(図3(a)のステップS1〜S4)。
ついで、制御部10は、高速度遮断器2、接触器3を投入することにより充電抵抗5、リアクトル6を介して架線電圧によりコンデンサ57を充電する (ステップS5)。そして、電圧検出器50により検出される架線電圧と、電圧検出器51により検出されるコンデンサ57の電位差が十分に小さくなったところで接触器4を投入することにより充電抵抗5を短絡して充電動作を完了する(ステップS6〜S7)。
コンデンサ57の充電完了後、制御部10は、電圧コンバータ71のスイッチング素子55を動作させることによりリアクトル53を介してコンデンサ52の電圧が750Vとなるよう降圧制御する (ステップS8)。
【0018】
あるいは、走行区間電圧に応じた回路構成を、上記外部トリガ情報受信等によらず自動で行う場合には、図3(b)に示すように、パンタグラフ1を上昇してから電圧検知器50で電圧を確認し(ステップS1〜S2)、所定範囲内であることを確認した上で、制御部10は、接触器11および接触器12を投入し、接触器21および接触器22を開放する(ステップS3〜S4)。
ついで、図3(a)で説明したのと同様、制御部10は、高速度遮断器2、接触器3を投入することにより充電抵抗5、リアクトル6を介して架線電圧によりコンデンサ57を充電する (ステップS5)。そして、架線電圧とコンデンサ57の電位差が十分に小さくなったところで接触器4を投入することにより充電抵抗5を短絡して充電動作を完了する(ステップS6〜S7)。
コンデンサ57の充電完了後、電圧コンバータ71のスイッチング素子55を動作させることによりリアクトル53を介してコンデンサ52の電圧が750Vとなるよう降圧制御する (ステップS8)。
以上の動作により、き電電圧が750Vを超える区間においても、750V動作回路8に印加する電圧を750Vとし、正常に動作させることが可能である。
【0019】
(b)600Vき電区間など750V未満の区間で走行を開始する場合。
図4にこの場合の動作フローを示す。
電気車が600Vき電区間など、架線電圧が750V未満の区間を走行するとき、600V区間であることが予め既知の場合や、600V区間であることを知らせる外部トリガ情報受信(運転台での電圧モード選択スイッチ扱いで進入区間電圧を選択、トランスポンダやトロリコンタクタ等の地上からの異電圧区間進入情報を受信、無線等による異電圧区間への進入情報を受信)した場合に、図4(a)に示すように、まず、制御部10は、接触器21および接触器22を投入し、接触器11および接触器12を開放した状態でパンタグラフ1を上昇させる(ステップS1〜S4)。
ついで、制御部10は高速度遮断器2、接触器3を投入することにより充電抵抗5、リアクトル6を介して架線電圧によりコンデンサ52を充電する(ステップS5)。そして、電圧検出器50により検出される架線電圧と、電圧検出器51により検出されるコンデンサ52の電位差が十分に小さくなったところで接触器4を投入することにより充電抵抗5を短絡して充電動作を完了する(ステップS6〜S7)。
コンデンサ52の充電完了後、制御部10は、電圧コンバータ71のスイッチング素子56を動作させることによりリアクトル53を介してコンデンサ57の電圧が750Vとなるよう昇圧制御する (ステップS8)。
【0020】
あるいは、走行区間電圧に応じた回路構成を、上記外部トリガ情報受信等によらず自動で行う場合には、図4(b)に示すように、パンタグラフ1を上昇してから電圧検知器50で電圧を確認し、所定範囲内であることを確認した上で、制御部10は、接触器11および接触器12を開放した状態で、接触器21および接触器22を投入する(ステップS1〜S4)。
ついで、制御部10は高速度遮断器2、接触器3を投入することにより充電抵抗5、リアクトル6を介して架線電圧によりコンデンサ52を充電する(ステップS5)。そして、電圧検出器50により検出される架線電圧と、電圧検出器51により検出されるコンデンサ52の電位差が十分に小さくなったところで接触器4を投入することにより充電抵抗5を短絡して充電動作を完了する(ステップS6〜S7)。
コンデンサ52の充電完了後、制御部10は、電圧コンバータ71のスイッチング素子56を動作させることによりリアクトル53を介してコンデンサ57の電圧が750Vとなるよう昇圧制御する (ステップS8)。
以上の動作により、き電電圧が750V未満の区間においても、750V動作回路8に印加する電圧を750Vとし、正常に動作させることが可能である。
【0021】
(b)750Vのき電区間で走行を開始する場合。
図5にこの場合の動作フローを示す。
電気車が750Vであるき電区間を走行するとき、750V区間であることが予め既知の場合や、600V区間であることを知らせる外部トリガ情報受信(運転台での電圧モード選択スイッチ扱いで進入区間電圧を選択、トランスポンダやトロリコンタクタ等の地上からの異電圧区間進入情報を受信、無線等による異電圧区間への進入情報を受信)した場合に、図5(a)に示すように、制御部10は接触器21および接触器22、接触器11および接触器12を全て投入した状態でパンタグラフ1を上昇させる(ステップS1〜S4)。
ついで、制御部10は高速度遮断器2、接触器3を投入することによりコンデンサ52およびコンデンサ57を充電する (ステップS5)。そして、電圧検出器51,58により検出されるコンデンサ52およびコンデンサ57の電圧と電圧検出器50により検出される架線電圧との電位差が十分に小さくなったところで接触器4を投入することにより充電抵抗5を短絡して充電動作を完了する(ステップS6〜S7)。
【0022】
あるいは、走行区間電圧に応じた回路構成を、上記外部トリガ情報受信等によらず自動で行う場合には、図5(b)に示すようにパンタグラフ1を上昇してから電圧検知器50で電圧を確認し、所定範囲内であることを確認した上で、制御部10は、接触器21および接触器22、接触器11および接触器12を全て投入する(ステップS1〜S4)。
ついで、制御部10は高速度遮断器2、接触器3を投入することによりコンデンサ52およびコンデンサ57を充電 (ステップS5)。そして、電圧検出器51,58により検出されるコンデンサ52およびコンデンサ57の電圧と電圧検出器50により検出される架線電圧との電位差が十分に小さくなったところで接触器4を投入することにより充電抵抗5を短絡して充電動作を完了する(ステップS6〜S7)。
以上の動作により、750V動作回路8に印加する電圧を750Vとし、正常に動作させることが可能である。
【0023】
(2)走行中に電圧の異なるき電区間へ乗り入れる場合。
(a)架線電圧が750Vを超える区間(1500Vの区間)を走行後、架線電圧が750V未満の区間(600Vの区間)に乗り入れる場合
図6、図7に、架線電圧が1500Vの区間を走行後、架線電圧が600Vの区間に乗り入れるときの切り替え動作を示し、図8、図9はその動作フローを示す。
以下、図6、図7、図8、図9により、架線電圧1500Vでの走行から架線電圧600Vでの走行への切り替え動作について説明する。
図6(a)は1500V区間を走行しているときの、接触器3,4、第1〜第4の接触器11〜22の開閉状態を示す。この場合、図1に示した前記制御部10は接触器3,4をオン、接触器11,12をオン、接触器21、22をオフとし、コンデンサ57を1500Vに充電させる。また、制御部10は、電圧コンバータ71のスイッチング素子55を動作させて、リアクトル53を介してコンデンサ52の電圧が750Vとなるよう降圧制御する。これにより、750V動作回路8に750Vの電圧が印加され、750V動作回路8は正常に動作する。
【0024】
図6(a)に示すように電気車が1500Vき電区間など、架線電圧が750V を超える区間を走行後、電圧の異なるき電区間である600Vの区間へ乗り入れる場合、図8のフローチャートに示すように電圧検出器50で直接に無電圧区間を検知(ステップS1〜S2)、または、図9のフローチャートに示すように外部トリガ情報受信(運転台での電圧モード選択スイッチ扱いで進入区間電圧を選択、トランスポンダやトロリコンタクタ等の地上からの異電圧区間進入情報を受信、無線等による異電圧区間への進入情報を受信)に基づいて無電圧区間または無架線区間を検知(ステップS1〜S2)した際には、次のように制御する。
まず、制御部10は、電圧コンバータ71の流入電流を絞る動作(減流動作)の後、必要に応じてパンタグラフ1の下降動作を行い、一旦接触器3および接触器4を開放して架線を切り離し、750V動作回路8の蓄電装置8cからの給電に切り替える(図8のステップS3〜S5、図9のステップS3〜S6、図6(b)参照)。
ついで、制御部10は、電圧コンバータ71のスイッチング素子55を動作させ(微調整が必要な場合等、必要に応じてスイッチング素子56も動作)、降圧動作によりコンデンサ57のエネルギーをコンデンサ52側へ放出させ、コンデンサ52とコンデンサ57の電圧が等しくなるように制御する(図8のステップS6、図9のステップS7、図6(b)(c)参照)。
【0025】
電圧検出器58により検出されるコンデンサ52と、電圧検出器51により検出されるコンデンサ57の電圧が等しくなり750Vになったら、制御部10は、接触器21および接触器22を投入する(図8のステップS7〜S8、図9のステップS8〜S11、図7(d)参照)。コンデンサ52とコンデンサ57の電圧が等しいため、接触器21,22の投入時には電流は流れない。
投入動作完了後、乗り入れる線区き電電圧が600Vなど750V未満である場合は、制御部10は、接触器11および接触器12を開放する(図8のステップS9、図9のステップS12、図7(e)参照)。接触器11,12には電流が流れていないため、接触器11,12は電流を遮断しない。なお、図9に示すように、外部トリガ受信の場合は、この間にパンタグラフを上昇させる(ステップS10)。
この間、電気車は前記図2に示したように無電圧区間92あるいは無架線区間94を走行し、VVVF8a、SIV8bへは蓄電装置8cから給電され、電気車は蓄電装置8cで走行する。
【0026】
電気車が無電圧区間92あるいは無架線区間94からき電電圧が600Vの区間に入ると、無電圧区間をパンタグラフ1の上昇状態で走行後はそのままで、または無架線区間をパンタグラフ1の下降状態で走行後に外部トリガ情報受信(運転台での電圧モード選択スイッチ扱いで進入区間電圧を選択、トランスポンダやトロリコンタクタ等の地上からの異電圧区間進入情報を受信、無線等による異電圧区間への進入情報を受信)に基づいてパンタグラフ上昇動作を行った後は、電圧検出器50によりき電電圧が600Vの区間に入ったことが検出され、制御部10は、接触器3を投入する(図8のステップS11、図9のステップS14)。
電車線電圧が600Vの場合は、コンデンサ52から電車線に充電抵抗5を介して放電電流が流れ、コンデンサ52の電圧は低下する(図7(f)参照)。
コンデンサ52の電圧が600Vになると、制御部10は接触器4を投入する(図8のステップS12〜S13、図9のステップS15〜S16、図7(g)参照)。
制御部10は、以後、電圧コンバータ71によりコンデンサ52の電圧を昇圧し、コンデンサ57の電圧が750Vになるように制御する(図8のステップS14、図9のステップS17)。
これにより、750Vより電圧が高い1500V電圧区間から、750Vより電圧が低い600Vへの切り替えが行われ、電気車はき電電圧600Vの区間をスムーズに走行することができる(図8のステップS15、図9のステップS18)。また、異なる線区へ直通する場合において、一旦コンデンサ52およびコンデンサ57を放電させるというプロセスを経ることなく乗り入れることが可能である。
【0027】
(b)架線電圧が架線電圧が750V未満の区間(600Vの区間)を走行後、750Vを超える区間(1500Vの区間)に乗り入れる場合。
図10、図11に、架線電圧が750V未満の区間を走行後、架線電圧が1500Vの区間に乗り入れるときの切り替え動作を示し、図12、図13はその動作フローを示す。 以下、図10、図11、図12、図13により、架線電圧600Vでの走行から架線電圧1500Vでの走行への切り替え動作について説明する。
図10(a)は600V区間を走行しているときの、接触器3,4、第1〜第4の接触器11〜22の開閉状態を示す。この場合、図1に示した前記制御部10は接触器3,4をオン、接触器21,22をオン、接触器11、12をオフとし、コンデンサ52を600Vに充電させる。また、制御部10は、電圧コンバータ71のスイッチング素子55(回生時など),56(力行時や蓄電装置充電時など)を動作させて、コンデンサ57の電圧が750Vとなるよう昇圧制御する。これにより、750V動作回路8に750Vの電圧が印加され、750V動作回路8は正常に動作する。
【0028】
図10(a)に示すように電気車が600Vき電区間など、架線電圧が750V 未満の区間を走行後、電圧の異なるき電区間である1500Vの区間へ乗り入れる場合には、図12のフローチャートに示すように、電圧検出器50で直接に無電圧区間を検知(図12のステップS1,S2)、または図13のフローチャートに示すように、外部トリガ情報受信(運転台での電圧モード選択スイッチ扱いで進入区間電圧を選択、トランスポンダやトロリコンタクタ等の地上からの異電圧区間進入情報を受信、無線等による異電圧区間への進入情報を受信、図13のステップS1,S2)に基づいて無電圧区間または無架線区間を検知した際には次のように制御する。
まず、制御部10は、電圧コンバータ71の流入電流を絞る動作(減流動作)の後、必要に応じてパンタグラフ1下降動作を行い、一旦接触器3および接触器4を開放して架線を切り離し、750V動作回路8の蓄電装置8cからの給電に切り替える(図12のステップS3〜S5、図13のステップS3〜S6、図10(b)参照)。
【0029】
ついで、制御部10は、電圧コンバータ71のスイッチング素子55を動作させ、コンデンサ57のエネルギーをコンデンサ52側へ放出させ、コンデンサ52とコンデンサ57の電圧が等しくなるように制御する(図12のステップS6、図13のステップS7、図10(b)(c)参照)。
電圧検出器51により検出されるコンデンサ52と、電圧検出器58により検出されるコンデンサ57の電圧が等しくなり750Vになったら、制御部10は、必要に応じてパンタグラフを上昇させ、接触器11および接触器12を投入する(図12のステップS7〜S8、図13のステップS8〜S11、図11(d)参照)。コンデンサ52とコンデンサ57の電圧が等しいため、接触器11と接触器12の投入時には電流は流れない。
投入動作完了後、乗り入れる線区のき電電圧が1500Vなど750Vを超える場合は、制御部10は、接触器21および接触器22を開放する(図12のステップS9、図13のステップS12、図11(e)参照)。接触器21および接触器22には電流は流れていないため、接触器21と接触器22は電流を遮断しない。
この間、電気車は前記図2に示したように無電圧区間92あるいは無架線区間94を走行し、VVVF8a、SIV8bへは蓄電装置8cから給電され、電気車は蓄電装置8cで走行する。
【0030】
電気車が無電圧区間92あるいは無架線区間94からき電電圧が1500Vの区間に入ると、無電圧区間をパンタグラフ1上昇状態で走行後はそのままで、または無架線区間をパンタグラフ1の下降状態で走行後に外部トリガ情報受信(運転台での電圧モード選択スイッチ扱いで進入区間電圧を選択、トランスポンダやトロリコンタクタ等の地上からの異電圧区間進入情報を受信、無線等による異電圧区間への進入情報を受信)に基づいてパンタグラフ上昇動作を行った後は、電圧検出器50によりき電電圧が1500Vの区間に入ったことが検出され、制御部10は、接触器3を投入する。
電車線電圧が1500Vの場合には、電車線からコンデンサ57へ充電抵抗5を介して充電電流が流入する(図12のステップS10〜S11、図13のステップS13〜S14、図11(f)参照)。コンデンサ57の電圧が1500Vになると、制御部10は接触器4を投入する(図12のステップS12〜S13、図13のステップS15〜S16、図11(g)参照)。
制御部10は、以後、電圧コンバータ71によりコンデンサ57の電圧を降圧し、コンデンサ52の電圧が750Vになるように制御する(図12のステップS14、図13のステップS17)。
これにより、750Vより電圧が低い600V電圧区間から、750Vより電圧が高い1500V区間への切り替えが行われ、電気車はき電電圧1500Vの区間をスムースに走行することができる。また、異なる線区へ直通する場合においても、一旦コンデンサ52およびコンデンサ57を放電させるというプロセスを経ることなく乗り入れることが可能である。
【0031】
(c)架線電圧が架線電圧が750V区間を走行後、750Vを超える区間(1500Vの区間)に乗り入れる場合。
図14、図15にその動作フローを示す。
電気車が750Vであるき電区間を走行中は、前記したように遮断器2、接触器3,4がオン、また、接触器11,12,21,22がオンであり、コンデンサ52,57の電圧は750Vに充電されている。
電気車が750Vであるき電区間を走行後、電圧が750Vを超えるき電区間(1500Vの区間)へ乗り入れる場合、電圧検出器50で直接に無電圧区間を検知(図14のステップS1,S2)、または外部トリガ情報受信(運転台での電圧モード選択スイッチ扱いで進入区間電圧を選択、トランスポンダやトロリコンタクタ等の地上からの異電圧区間進入情報を受信、無線等による異電圧区間への進入情報を受信、図15のステップS1,S2)に基づいて無電圧区間または無架線区間を検知した際には次のように制御する。
まず、制御部10は、電圧コンバータ71の流入電流を絞る動作(減流動作)の後、必要に応じてパンタグラフ1下降動作を行い、一旦接触器3および接触器4を開放し、750V動作回路8の蓄電装置8cからの給電へ切り替える(図14のステップS3〜S5、図15のステップS3〜S6)。
その後、乗り入れる線区のき電電圧が1500Vなど750Vを超える場合は、必要に応じてパンタグラフを上昇させ、接触器21および接触器22を開放する(図14のステップS6、図15のステップS7〜S9)。
【0032】
電気車が無電圧区間92あるいは無架線区間94からき電電圧が1500Vの区間に入ると、電圧検出器50によりき電電圧が1500Vの区間に入ったことが検出され、制御部10は、接触器3を投入し、充電抵抗5を介してコンデンサ57を充電させる(図14のステップS7〜S8、図15のステップS10〜S11)。
コンデンサ57の電圧が1500Vになると、制御部10は接触器4を投入する(図14のステップS9〜S10、図15のステップS12〜S13)。
制御部10は、以後、電圧コンバータ71によりコンデンサ57の電圧を降圧し、コンデンサ52の電圧が750Vになるように制御する(図14のステップS11、図15のステップS14)。
これにより、750V電圧区間から750Vより電圧が高い1500V区間への切り替えが行われ、電気車はき電電圧1500Vの区間をスムースに走行することができる。
【0033】
(d)架線電圧が架線電圧が750V区間を走行後、750V未満の区間(600Vの区間)に乗り入れる場合。
図16、図17にその動作フローを示す。
電気車が750Vであるき電区間を走行後、電圧が750V未満のき電区間(600Vの区間)へ乗り入れる場合、電圧検出器50で直接に無電圧区間を検知(図16のステップS1,S2)、または外部トリガ情報受信(運転台での電圧モード選択スイッチ扱いで進入区間電圧を選択、トランスポンダやトロリコンタクタ等の地上からの異電圧区間進入情報を受信、無線等による異電圧区間への進入情報を受信、図17のステップS1,S2)に基づいて無電圧区間または無架線区間を検知した際には次のように制御する。
まず、制御部10は、電圧コンバータ71の流入電流を絞る動作(減流動作)の後、必要に応じてパンタグラフ1下降動作を行い、一旦接触器3および接触器4を開放し、750V動作回路8の蓄電装置8cからの給電へ切り替える(図16のステップS3〜S5、図17のステップS3〜S6)。
その後、乗り入れる線区のき電電圧が600Vなど750V 未満である場合は、必要に応じてパンタグラフを上昇させ、接触器11および接触器12を開放する(図16のステップS6、図17のステップS7〜S9)。
【0034】
電気車が無電圧区間92あるいは無架線区間94からき電電圧が600Vの区間に入ると、無電圧区間をパンタグラフ1の上昇状態で走行後はそのままで、または無架線区間をパンタグラフ1下降状態で走行後に外部トリガ情報受信(運転台での電圧モード選択スイッチ扱いで進入区間電圧を選択、トランスポンダやトロリコンタクタ等の地上からの異電圧区間進入情報を受信、無線等による異電圧区間への進入情報を受信)に基づいてパンタグラフ上昇動作を行った後は、電圧検出器50によりき電電圧が600Vの区間に入ったことが検出され、制御部10は、接触器3を投入し、充電抵抗5を介してコンデンサ52を放電させる(図16のステップS7〜S8、図17のステップS10〜S11)。
コンデンサ52の電圧が600Vになると、制御部10は接触器4を投入する(図16のステップS9〜S10、図17のステップS12〜S13)。
制御部10は、以後、電圧コンバータ71によりコンデンサ52の電圧を昇圧し、コンデンサ57を750Vになるように制御する(図16のステップS11、図17のステップS14)。
これにより、750V電圧区間から、750V未満の600V区間への切り替えが行われ、電気車はき電電圧600Vの区間をスムースに走行することができる。
【0035】
基本となる特定の電圧750Vに対して、それよりも高い架線電圧1500Vと低い架線電圧600Vの場合を例としてを挙げたが、例えば基本となる特定の電圧1500V、それよりも高い架線電圧3000V、低い架線電圧600Vとなる公称電圧の組合せなど、異なる公称電圧の組合せに対しても効果は同じである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、き電電圧が異なる複数の路線を直通して走行することが可能なハイブリッド電気車に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 パンタグラフ
2 高速度遮断器
3 接触器
4 接触器
5 充電抵抗
6 リアクトル
7 電圧変換器
8 750V 動作回路
11 接触器
12 接触器
21 接触器
22 接触器
50 電圧検出器
51 電圧検出器
52 コンデンサ
53 リアクトル
54 電流検出器
55 スイッチング素子
56 スイッチング素子
57 コンデンサ
58 電圧検出器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電装置に直列に接続された遮断器と、該遮断器を介して該集電装置に接続された電圧変換器と、電圧変換器の出力側に接続された電気車駆動装置と、上記電圧変換器の動作を制御する制御装置から構成され、異なるき電電圧区間を直通可能とした複電圧対応電気車両の切り替え制御方法であって、
上記電気車駆動装置は蓄電装置と該蓄電装置に充電された電圧により駆動される電気車駆動用インバータ装置とを具備し、上記電気車駆動装置は特定の電圧で駆動されるものであり、
上記電圧変換器は、第1のコンデンサと、第2のコンデンサと、電圧コンバータと、第1のコンデンサ及び/または第2のコンデンサを上記遮断器を介して上記集電装置に選択的に接続するとともに、第1のコンデンサ及び/または第2のコンデンサを電気車駆動装置に選択的に接続する切り替え手段を備え、
き電電圧が、上記電気車駆動装置が駆動される特定の電圧より高い区間、もしくは低い区間を走行する際には、上記切り替え手段により、第1もしくは第2のコンデンサのうちの一方のコンデンサを上記遮断器を介して上記集電装置に接続して、該コンデンサを、上記き電電圧で充電して、上記電圧コンバータで、該コンデンサに充電されてた電圧を上記電気車駆動装置が駆動される特定電圧まで降圧もしくは昇圧して、第1もしくは第2のコンデンサのうちの他方のコンデンサを充電し、
該第1もしくは第2のコンデンサのうちの他方のコンデンサを上記電気車駆動装置に接続し、上記電気車駆動装置に上記特定の電圧を供給する
ことを特徴とする複電圧対応電気車両の切り替え制御方法。
【請求項2】
集電装置に直列に接続された遮断器と、該遮断器を介して該集電装置に接続された電圧変換器と、電圧変換器の出力側に接続された電気車駆動装置と、上記電圧変換器の動作を制御する制御装置から構成され、異なるき電電圧区間を直通可能とした複電圧対応電気車両用制御システムであって、
上記電気車駆動装置は蓄電装置と該蓄電装置に充電された電圧により駆動される電気車駆動用インバータ装置とを具備し、上記電気車駆動装置は特定の電圧で駆動されるものであり、
上記電圧変換器は、第1のコンデンサと、第2のコンデンサと、電圧コンバータと、第1のコンデンサ及び/または第2のコンデンサを上記遮断器を介して上記集電装置に選択的に接続するとともに、第1のコンデンサ及び/または第2のコンデンサを電気車駆動装置に選択的に接続する切り替え手段を備え、
上記制御装置は、き電電圧が、上記電気車駆動装置が駆動される特定の電圧より高い区間、もしくは低い区間を走行する際には、上記切り替え手段により、第1もしくは第2のコンデンサのうちの一方のコンデンサを上記遮断器を介して上記集電装置に接続して、該コンデンサを、上記き電電圧で充電して、上記電圧コンバータで、該コンデンサに充電されてた電圧を上記電気車駆動装置が駆動される特定電圧まで降圧もしくは昇圧して、第1もしくは第2のコンデンサのうちの他方のコンデンサを充電し、
該第1もしくは第2のコンデンサのうちの他方のコンデンサを上記電気車駆動装置に接続し、上記電気車駆動装置に上記特定の電圧を供給する
ことを特徴とする複電圧対応電気車両用制御システム。
【請求項3】
き電電圧が、上記電気車駆動装置が駆動される特定の電圧に等しい区間を走行する際には、上記切り替え手段により、第1のコンデンサ及び第2のコンデンサを上記遮断器を介して上記集電装置に接続するとともに、第1のコンデンサ及び第2のコンデンサを電気車駆動装置に接続し、第1のコンデンサおよび第2のコンデンサの電圧を上記き電電圧で充電して、上記電気車駆動装置に上記特定の電圧を供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の複電圧対応電気車両用制御システム。
【請求項4】
集電装置に直列に接続された遮断器と、該遮断器を介して該集電装置に接続された電圧変換器と、電圧変換器の出力側に接続された電気車駆動装置と、上記電圧変換器の動作を制御する制御装置から構成され、異なるき電電圧区間を直通可能とした複電圧対応電気車両用制御システムであって、
上記電気車駆動装置は蓄電装置と該蓄電装置に充電された電圧により駆動される電気車駆動用インバータ装置とを具備し、上記電気車駆動装置は特定の電圧で駆動されるものであり、
上記電圧変換器は、第1のコンデンサと、第2のコンデンサと、電圧コンバータと、第1のコンデンサ及び/または第2のコンデンサを上記遮断器を介して上記集電装置に選択的に接続するとともに、第1のコンデンサ及び/または第2のコンデンサを電気車駆動装置に選択的に接続する切り替え手段を備え、
上記制御装置は、上記電気車駆動装置が駆動される特定の電圧より高い電圧区間を走行する際には、上記切り替え手段により、第1のコンデンサを上記遮断器を介して上記集電装置に接続して、上記第1のコンデンサをき電電圧で充電して、上記電圧コンバータで、第1のコンデンサの電圧を上記電気車駆動装置が駆動される特定の電圧まで降圧して上記第2のコンデンサを充電して、第2のコンデンサを電気車駆動装置に接続して、上記電気車駆動装置に上記特定の電圧を供給し、
上記電気車駆動装置が駆動される特定の電圧より低い電圧区間を走行する際には、上記切り替え手段により、第2のコンデンサを上記遮断器を介して上記集電装置に接続して、上記第2のコンデンサをき電電圧で充電して、上記電圧コンバータで、第2のコンデンサの電圧を上記電気車駆動装置が駆動される特定の電圧まで昇圧して上記第1のコンデンサを充電して、第1のコンデンサを電気車駆動装置に接続して、上記電気車駆動装置に上記特定の電圧を供給し、
き電電圧が、上記電気車駆動装置が駆動される特定の電圧に等しい区間を走行する際には、上記切り替え手段により、第1のコンデンサ及び第2のコンデンサを上記遮断器を介して上記集電装置に接続するとともに、第1のコンデンサ及び第2のコンデンサを電気車駆動装置に接続し、第1のコンデンサおよび第2のコンデンサの電圧を上記特定の電圧で充電して、上記電気車駆動装置に上記特定の電圧を供給する
ことを特徴とする複電圧対応電気車両用制御システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−130579(P2011−130579A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286324(P2009−286324)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】