説明

角度設定式牽引機

【課題】
索体の引き角度をインプットした角度に自動的に至る角度設定式牽引機を提供すること。
【解決手段】
牽引機(2)と、載置部(3)と、患者に装着する装具(4)とからなる牽引装置(38)において、牽引機(2)と装具(4)の間に張設され患者を牽引する索体(6)と、牽引機(2)に設けられ索体(6)の張設途中を支持する支持具(15)と、支持具(15)を移動させる移動機構(16)と、移動機構(16)を作動させ手動で牽引角度値をインプットする角度入力器(11)とが設けられ、該索体(6)に張力を掛けて牽引治療する時、支持具(15)が移動して牽引角度がインプットした角度に自動的に至る角度設定式牽引機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰椎症又は頚椎症等の人(=以下患者という)に対して牽引治療を行なう角度設定式牽引機に関する。
【背景技術】
【0002】
前記従来技術には、背シート又は大腿シートを、アクチュエーターで作動させる速度制御式ギャッジベッドが開示されている。
【特許文献1】実登2607139号公報
【特許文献2】特開2005−334572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
実登2607139号公報に記載された従来装置は、背シート又は大腿シートを、アクチュエーターを作動させてインプットした所定の角度に至らせることができる。しかし、索の引き角度を決めるための好適な構成は開示されていない。
特開2005−334572号公報に記載された従来装置は、支柱に滑車が動く経路と該滑車を動かす為のチェーンを設け該チェーン駆動用の動力源が設けられる。しかし、索体の引き角度を所定角度に決めるための好適な構成は開示されていない。
【0004】
本発明の目的は、索体の引き角度を、インプットした角度に自動的に至る角度設定式牽引機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち本発明は、牽引機(2)と、載置部(3)と、患者に装着する装具(4)とからなる牽引装置(38)において、牽引機(2)と装具(4)の間に張設され患者を牽引する索体(6)と、牽引機(2)に設けられ索体(6)の張設途中を支持する支持具(15)と、支持具(15)を移動させる移動機構(16)と、移動機構(16)を作動させ手動で牽引角度値をインプットする角度入力器(11)と、角度値を所定計算式に基づいて支持具(15)の高さ値に変換する変換器(40)とが設けられ、該索体(6)に張力を掛けて牽引治療する時、支持具(15)が移動して牽引角度がインプットした角度に自動的に至ることを特徴とする角度設定式牽引機である。
又、牽引機(2)は支柱(12)を有し、支持具(15)は支柱(12)に摺動・固定可能に取着される。
更に、支持具(15)は、索体(6)を掛け回す滑車部(17)と、支柱(12)に摺動可能に外嵌・取着される取着部(18)と、雌ネジ部(19)とからなり、取着部(18)において、支持具(15)と摺動する面に滑性材(33)が取着される。
更に又、移動機構(16)は、雌ネジ部(19)に螺着するネジシャフト(20)と、ネジシャフト(20)を駆動するモータ(21)と、モータ(21)を駆動する電源部(22)とからなり、ネジシャフト(20)の回動により、支持具(15)が移動しその位置が調節される。
又、支柱(12)は、内部体(36)に外筒(37)を外嵌した伸縮体(35)でなり、内部体(36)は移動機構(16)によって進退移動し、支持具(15)は内部体(36)の先部に設けられ、内部体(36)の進退移動により支持具(15)の位置が調節される。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、牽引機2と装具4の間に張設され患者を牽引する索体6と、牽引機2に設けられ索体6の張設途中を支持する支持具15と、支持具15を移動させる移動機構16と、移動機構16を作動させ手動で牽引角度値をインプットする角度入力器11と、角度値を所定計算式に基づいて支持具15の高さ値に変換する変換器40とが設けられ、該索体6に張力を掛けて牽引治療する時、支持具15が移動して牽引角度がインプットした角度に自動的に至るから、
牽引角度形成に係る操作が容易であり便利であり、好都合である。
【0007】
本発明は、牽引機2は支柱12を有し、支持具15は支柱12に摺動・固定可能に取着される。
上記構成は、支持具15を、支柱12に摺動させて牽引角度を形成するものであるから、摺動に係る構成を容易・廉価に製作でき、好都合である。
【0008】
本発明に係る支持具15は、索体6を掛け回す滑車部17と、支柱12に摺動可能に外嵌・取着される取着部18と、雌ネジ部19とからなり、取着部18において支持具15と摺動する面に滑性材33が取着される。
上記構成は、支柱12に外嵌して取り付けた支持具15を、支柱12に摺動させて牽引角度を形成するものであるから、構成が堅固であり、円滑に摺動でき、好都合である。
【0009】
本発明に係る移動機構16は、雌ネジ部19に螺着するネジシャフト20と、ネジシャフト20を駆動するモータ21と、モータ21を駆動する電源部22とからなり、ネジシャフト20の回動により、支持具15が移動しその位置が調節されるものであるから、支持具15を確実に移動・固定でき、安全であり、好都合である。
【0010】
本発明に係る支柱12は、内部体36に外筒37を外嵌した伸縮体35でなり、内部体36は移動機構16によって進退移動し、支持具15は内部体36の先部に設けられ、伸縮体35の伸縮により支持具15の位置が調節されるから、伸縮体35が最大長になるのは稀(通常、頻繁であるのは伸縮体35が中程度長である)であって当該伸縮体35が常時最大長に構成するというものではなく構成を小型化でき、又、構成を簡素、安価に製作でき、経済的であり、好都合である。
【実施例1】
【0011】
図1乃至2に本発明の実施例1を示す。
実施例1の角度設定式牽引機1は、牽引機2と、載置部3と、患者に装着する装具4とからなる牽引装置38に、牽引角度を自動設定する角度設定機5を付加設置したものであり、腰椎牽引治療及び頚椎牽引治療を施すものである。
牽引機2と装具4の間に患者を牽引する索体6が張設される。
【0012】
牽引機2は、筐体7と、筐体7の上面に立設される支柱12と、筐体7の上面に配設される操作パネル8とを有する。
又、筐体7の内部に、索体6の基端から巻き取る巻取機9を有する。
前記操作パネル8には、牽引力(=索体6の張力)を設定する牽引力入力器10と、角度入力器11(=腰用角度入力器11a及び頚用角度入力器11b)と、開始スイッチ34と、その他の諸操作器(図示省略)とが配設される。
索体6の先端にはフック30が取着される。
【0013】
支柱12は、縦支柱13と、縦支柱13の頂部に設けられる横枠14とからなる。
角度設定機5は、牽引機2に設けられる支柱12と、支柱12に設けられ索体6の中間部を支持する支持具15と、支持具15を移動させる移動機構16と、移動機構16を作動させ手動で牽引角度値をインプットする角度入力器11とを有する。
索体6に張力を掛けて牽引治療する時、手動で所望の牽引角度をインプットすると、支持具15が移動して牽引角度がインプットした角度に自動的に至る。支持具15を摺動・固定させる角度設定機5が、牽引機2に設けられる。
【0014】
支持具15は、索体6を掛け回す滑車部17と、縦支柱13に摺動可能に外嵌・取着される取着部18と、雌ネジ部19とからなる。
支持具15に索体6の牽引角度を検出する角度検出器41(=腰用角度検出器41a及び頚用角度検出器41b)が設けられる。
腰椎牽引に係るセッティングにおいては、縦支柱13に腰用の支持具15が設けられ、該支持具15を摺動・固定させる腰用移動機構16aが、牽引機2に設けられる。
又、頚椎牽引に係るセッティングにおいては、横枠14に頚用の支持具15が設けられ、該支持具15を摺動・固定させる頚用移動機構16bが、横枠14に設けられる。
取着部18において、支持具15と摺動する面に、摩擦係数の小さい硬質樹脂板材等で作る滑性材33が取着される。
【0015】
移動機構16は、ネジシャフト20の回動により、支持具15を移動しその位置を調節するものである。
前記移動機構16(=腰用移動機構16a及び頚用移動機構16b)は、支持具15の移動両端に渡って設けられ、雌ネジ部19に螺着するネジシャフト20(=腰用ネジシャフト20a及び頚用ネジシャフト20b)と、ネジシャフト20を駆動するモータ21(=腰用モータ21a及び頚用モータ21b)と、モータ21を駆動する電源部22とからなる。
【0016】
載置部3は患者を支持するものであり、載置部3にはベッド23と椅子24が有る。
装具4には、腰椎牽引用の腰用装具4aと、頚椎牽引用の頚用装具4bが有り、患者の腰部又は頚部に当接する当接部32と、ベルト部31とからなる。
【0017】
図2に示す電気的構成を説明する。
牽引機2の電気的構成は、実施例1を作動させる開始スイッチ34と、牽引力入力器10と、牽引力入力器10の指示に従って作動する牽引電源部25と、牽引電源部25の電力で作動する巻取機9とからなる。
巻取機9の作動により索体6が巻かれ、装具4が引っ張られ、索体6に張力が発生する。索体6の張力は、患者に掛かる牽引力である。
【0018】
移動機構16の電気的構成は、角度入力器11と、角度入力器11から得た角度値を高さ値に変換する変換器40(=腰用変換器40a及び頚用変換器40b)と、変換器40から得たインプット信号を角度検出器41から得た実測信号で補正する補正器42(=腰用補正器42a及び頚用補正器42b)と、補正器42の指示に従って作動しモータ21を制御する制御器26(=腰用制御器26a及び頚用制御器26b)と、制御器26の電力で作動するモータ21(=腰用モータ21a及び頚用モータ21b)とからなる。
更に、支持具15の位置を検出するために、モータ21の回動した数を計算するパルスカウンタ27(=腰用パルスカウンタ27a及び頚用パルスカウンタ27b)と、支持具15の現在位置(=初期位置)を検出するポテンショメータ28(=腰用ポテンショメータ28a及び頚用ポテンショメータ28b)とを有する。ポテンショメータ28は支持具15に従属して移動する移動索29に引かれて作動する。
図1中、39は脇止具、43aは腰部位置を指定するマーク、43bは頚部位置を指定するマーク、44は椅子24の高さを調節する電動伸縮具である。
【0019】
本発明の実施例1の角度設定式牽引機1を使用して牽引治療を行なう。
実施例1を腰椎牽引治療に使用する時は、患者は腰用装具4aを腰に装着し、ベッド23に仰臥する。
牽引機2から引き出す索体6の途中を、支持具15を掛け回し、フック30を腰用装具4aのベルト部31に掛止する。
次に、最適牽引角度値を腰用角度入力器11aにインプットする。
【0020】
支持具15が上下方向に移動し所定の高さ位置へ至る。実施例1では、予め支持具15の高さと牽引角度に一定の相関関係を設定している。該相関関係から、インプットした牽引角度値から支持具15の高さが所定値に決定される。
【0021】
移動機構16のネジシャフト20が回動して、支持具15が縦支柱13を摺動し、所定高さに至る。支持具15はネジシャフト20の回動が停止するとその位置に固定される。牽引角度(=フック30から腰用の支持具15の間に張った状態にある索体6の傾斜角度)がインプットした角度に到達する。
【0022】
滑性材33は支柱12と取着部18の摩擦抵抗を極小になし、支持具15の移動を円滑になす。
次に、好適な所定の牽引力値を牽引力入力器10にインプットし、開始スイッチ34を投入し、牽引治療を開始する。
所定の治療時間(具体的には約10分間)間歇牽引を行なう。約10分間実施例1を作動させ、治療タイマー(図示省略)の作動により終了する。
【0023】
実施例1を頚椎牽引治療に使用する時は、患者は頚用装具4bを首から頭にかけて装着し、椅子24に座る。
牽引機2から引き出す索体6の途中を支持具15に掛け回し、フック30を頚装具4bのベルト部31に掛止する。
【0024】
最適牽引角度値を頚用角度入力器11bにインプットする。支持具15が水平移動し所定の位置へ至る。支持具15の位置と牽引角度は一定の相関関係を有し、インプットした牽引角度値から支持具15の水平方向の位置が決定される。牽引角度(=フック30から頚用の支持具15の間に張った状態にある索体6の垂線に対する傾斜角度)がインプットした角度に到達する。
次に、好適な所定の牽引力値を牽引力入力器10にインプットし、開始スイッチ34を投入する。
所定の治療時間間歇牽引を行なう。所定の治療時間実施例1を作動させた後、実施例1の牽引作動を停止し、牽引治療を終了する。
【実施例2】
【0025】
図3に示す実施例2は、実施例1の支持具15を支持する横枠14を、伸縮体35に代えたものである。
実施例2に係る伸縮体35は、内部体36に外筒37を外嵌してなる。
内部体36には芯部分に雌ネジが形成されており、この雌ネジに移動機構16の頚用ネジシャフト20bが螺着される。頚用の支持具15は内部体36の先部に設けられる。
【0026】
内部体36は頚用移動機構16bによって進退移動し、伸縮体35が伸縮する。内部体36の進退移動により支持具15が水平の前後方向に移動しその位置が調節される。支持具15の上記移動により頚椎に係る牽引角度が手動でインプットした所定の角度に至る。
【産業上の利用可能性】
【0027】
牽引機2と、載置部3と、患者に装着する装具4とからなる牽引装置38において、牽引機2と装具4の間に張設され患者を牽引する索体6と、牽引機2に設けられ索体6の張設途中を支持する支持具15と、支持具15を移動させる移動機構16と、移動機構16を作動させ任意の牽引角度値をインプットする角度入力器11とが設けられるものに為して、索体6の引き角度を、設定した角度に自動的に至らせる角度設定式牽引機1に適用する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例1の右側面図である。
【図2】本発明の実施例1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例2の右側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 角度設定式牽引機
2 牽引機
3 載置部
4 装具
6 索体
11 角度入力器
12 支柱
15 支持具
16 移動機構
17 滑車部
18 取着部
19 雌ネジ部
20 ネジシャフト
21 モータ
22 電源部
33 滑性材
35 伸縮体
36 内部体
37 外筒
38 牽引装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引機(2)と、載置部(3)と、患者に装着する装具(4)とからなる牽引装置(38)において、
牽引機(2)と装具(4)の間に張設され患者を牽引する索体(6)と、牽引機(2)に設けられ索体(6)の張設途中を支持する支持具(15)と、支持具(15)を移動させる移動機構(16)と、移動機構(16)を作動させ手動で牽引角度値をインプットする角度入力器(11)と、角度値を所定計算式に基づいて支持具(15)の高さ値に変換する変換器(40)とが設けられ、
該索体(6)に張力を掛けて牽引治療する時、支持具(15)が移動して牽引角度がインプットした角度に自動的に至ることを特徴とする角度設定式牽引機。
【請求項2】
牽引機(2)は支柱(12)を有し、
支持具(15)は支柱(12)に摺動・固定可能に取着されることを特徴とする請求項1記載の角度設定式牽引機。
【請求項3】
支持具(15)は、索体(6)を掛け回す滑車部(17)と、支柱(12)に摺動可能に外嵌・取着される取着部(18)と、雌ネジ部(19)とからなり、
取着部(18)において、支持具(15)と摺動する面に滑性材(33)が取着されることを特徴とする請求項1又は2記載の角度設定式牽引機。
【請求項4】
移動機構(16)は、雌ネジ部(19)に螺着するネジシャフト(20)と、ネジシャフト(20)を駆動するモータ(21)と、モータ(21)を駆動する電源部(22)とからなり、
ネジシャフト(20)の回動により、支持具(15)が移動しその位置が調節されることを特徴とする請求項1又は2又は3記載の角度設定式牽引機。
【請求項5】
支柱(12)は、内部体(36)に外筒(37)を外嵌した伸縮体(35)でなり、
内部体(36)は移動機構(16)によって進退移動し、支持具(15)は内部体(36)の先部に設けられ、
内部体(36)の進退移動により支持具(15)の位置が調節されることを特徴とする請求項1又は2又は3記載の角度設定式牽引機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−313243(P2007−313243A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148971(P2006−148971)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000103471)オージー技研株式会社 (109)
【Fターム(参考)】