説明

記録装置および記録方法

【課題】画像データの少ないときと、画像データの多いときとで、記録に要する時間を制御することで、電源容量を最大限に用いることが可能な記録装置および記録方法を提供する。
【解決手段】複数の記録素子を配列した記録ヘッドを用い、該記録ヘッドを搭載したキャリッジを記録媒体に対し当該記録素子の配列方向とは異なる方向に走査させながら記録を行う記録装置であって、1走査分の印刷ドット数を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に応じて、改行時の紙送り開始タイミングと前記記録ヘッドを搭載したキャリッジの動作タイミングを制御する制御手段とを有する。また、高速モードの記録時に、1走査分の印刷ドット数を検出し、印刷ドット数が所定値を超えた場合、改行時の紙送りと前記記録ヘッドを搭載したキャリアの動作を重複させないように変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置および記録方法に関し、詳しくは装置の電源容量を効率的に利用する構成を有した記録装置および記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写装置や、ワードプロセッサ、コンピュータ等の情報処理機器で処理される文字、画像等の情報を出力するための画像形成(記録)装置の一つとして、インクジェットプリンタ方式によりデジタル画像を行うものが広く普及している。このようなインクジェット記録装置では、記録速度の向上などのため、複数の記録素子として、インク吐出口及び液路を複数集積した記録ヘッドを用いるのが一般的である。
【0003】
さらには、昨今ではますます高速化が要求され、記録時に行われる紙送り動作を、記録ヘッドを搭載したキャリッジの動作の一部と、を重ねるなどにより記録に要する時間の短縮化が行われている。また、記録媒体への記録中に、前記記録媒体と所定量の間隔を維持できる範囲で記録媒体収納手段から次の記録媒体の給紙を行い、連続記録に要する時間の短縮化も行われている。
【0004】
これらインクジェット記録装置は、ホストコンピュータから送られてくる画像データの内容によって情報量が大きく異なったり、記録紙の一頁分など、所定領域中の記録箇所に応じて記録ドット密度が不均一に分布する場合がある。このような記録ドット密度の不均一な分布によってヘッド駆動に必要な電力および記録量が変動する場合がある。また、高速化のために、記録時に行われる紙送り動作と、記録ヘッドを搭載したキャリッジの動作の一部と同時に行われる場合がある(特許文献1参照)。あるいは、記録媒体への記録中に、給紙手段による記録媒体収納手段からの記録媒体の給紙が行われる場合がある。記録動作と記録媒体の給紙を同時に行うことは、結果的に紙送り動作、キャリッジの動作と給紙動作が重なる、こととなり、アクチュエータの動作が重なることでアクチュエータ駆動に必要な電力が増す方向に変動する場合がある。
【特許文献1】特開2001−071603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電力の変動にかかわらず、常に均等な記録を可能としたり高速化するために、比較的大きな容量の電源およびこの大容量電源の入出力に耐える回路を備えようとすると、プリンタは大型で高価なものとなる恐れがある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたものであり、画像データの少ないときと、画像データの多いときとで、記録に要する時間を制御することで、電源容量を最大限に用いることが可能な記録装置および記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明は、複数の記録素子を配列した記録ヘッドを用い、該記録ヘッドを搭載したキャリッジを記録媒体に対し当該記録素子の配列方向とは異なる方向に走査させながら記録を行う記録装置であって、1走査分の印刷ドット数を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に応じて、改行時の紙送り開始タイミングと前記記録ヘッドを搭載したキャリッジの動作タイミングを制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、複数の記録素子を配列した記録ヘッドを用い、該記録ヘッドを搭載したキャリアを記録媒体に対し当該記録素子の配列方向とは異なる方向に走査させながら記録を行う記録方法において、高速モードの記録時に、1走査分の印刷ドット数を検出し、印刷ドット数が所定値を超えた場合、改行時の紙送りと前記記録ヘッドを搭載したキャリアの動作を重複させないように変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の構成によれば、1走査分の印刷ドット数を検出する検出手段の検出結果が所定量を上回って画像データが多いと判断した場合には、記録時に行われる紙送り動作を、記録ヘッドを搭載したキャリアの動作と重ねないようにする、あるいは、記録媒体への記録中に、次の記録媒体の給紙を行う動作を止めることで、画像データが多くなることによるヘッド駆動に必要な電力の増分を、アクチュエータの重なりをなくすことでアクチュエータ駆動に必要な電力を減らすことで相殺し、これにより電源容量を最大限に有効活用出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態に係る紙送り装置を備えた記録装置の一例であるインクジェットプリンタの斜視図である。同図において、1はインクジェットプリンタ、1Aはインkジェットプリンタ本体(以下、本体という)である。また、3Aは画像記録部であり、この画像記録部3Aは記録ヘッド3と、記録ヘッド3を載置するキャリア2とを備えている。
【0011】
ここで、この記録ヘッド3は記録媒体である記録紙Pに対した面の副走査方向に不図示の複数のノズル(記録素子)列を持ち、ノズル列ごとに異なる色のインクを吐出するようになっている。なお、この記録ヘッド3には色のノズルに対して各々の記録液供給チューブ5を介してインクタンク4より各色のインクが供給されるようになっている。また、キャリア2は、本体1Aのフレーム6に両端部が固定され、互いに平行に配置されたガイドシャフト7とガイドレール8に沿って摺動可能に支持されている。
【0012】
そして、このキャリア2を往復動させながら記録ヘッド3よりインクを記録紙Pに向けて吐出することにより、記録紙上に画像が記録されるようになっている。なお、このキャリア2は不図示のベルト駆動装置とモータとにより往復動されるようになっている。
【0013】
一方、図2はインクジェットプリンタ1の概略構成を示す断面図であり、同図において、1Bは記録紙供給装置(以下、給紙装置という)であり、この給紙装置1Bは本体1Aに着脱自在に装着された記録紙収納手段である記録紙収納カセット(以下、給紙カセットという)10と、給紙カセット10に収納された記録紙Pを送り出す給紙手段である給紙ローラ15を備えている。
【0014】
ここで、給紙カセット10は、記録紙送り出し方向下流側端部に給紙ローラ15の回転により送り出された記録紙Pに当接して記録紙Pを分離するための斜面部材である分離板19を設けている。また、給紙ローラ15は、給紙カセット10の上方に設けられ、給紙ローラ15よりも上流側に位置している支点14aにより回動自在に支持されているアーム14に回転自在に、かつ給紙カセット10に収納された記録紙Pに接離可能に保持されている。
【0015】
そして、この給紙ローラは、画像記録の際には、自重とアーム14の下方回動により給紙カセット10に積載された記録紙Pの最上部の記録紙P1に当接するとともに、図3に示すプーリ16、ベルト17、及びギア18介して伝達される不図示の駆動源からの駆動により回転するようになっている。
【0016】
図2において、9は搬送手段である第一の搬送ローラ、21は第二の搬送ローラ、20は第二の搬送ローラ21に対向する位置に設けられたローラガイド、22は第二の搬送ローラの周面に押圧するための押圧ローラ、23は第二の搬送ローラ回動自在に移動するためのリンクであり、給紙ローラ15の回転により送り出された記録紙P1は、この第二の搬送ローラ21と押圧ローラ22及びローラガイド20との間に形成された記録紙を反転する記録紙搬送路Rを通過して搬送ローラ9に向かうようになっている。
【0017】
次に、このような構成のインクジェットプリンタの画像記録動作について説明する。画像記録動作が開始されると、まずアーム14の下方回動と、自重により給紙ローラ15が給紙カセット10に積載された記録紙Pの最上位の記録紙に当接する。そして、この状態で給紙ローラ15が回転すると、記録紙Pが送り出され、この後、分離板19により抵抗力を受けて最上位の記録紙P1のみが記録紙搬送路Rに進入する。
【0018】
このとき、分離性能の安定から、給紙ローラの外周速度は、給紙ローラの起動時から分離板19により抵抗力を受けて最上位の記録紙P1のみが記録紙搬送路Rに進入しようとする直前まで、3インチ/秒から6インチ/秒であることが望ましい。記録紙搬送路に進入すると、第二の搬送ローラ21の回転により第一の搬送ローラ9とピンチローラ12との間に導かれ、この後、第一の搬送ローラ9及びピンチローラ12に挟まれた状態で記録ヘッド3と対向する記録位置に設けられたプラテン24まで搬送される。次にプラテン24に搬送された記録紙P1に対し、キャリア2に搭載された記録ヘッド3による印字(画像記録)動作が開始される。
【0019】
ここで、普通モードをについて説明する。図5に示すように、記録ヘッド3による1走査分の印字が終了した後、記録ヘッド3を搭載したキャリア2を減速させる。キャリア2が停止した後、プラテン24上に位置する記録紙P1を第一の搬送ローラ9にて所定量だけ改行(紙送り)し、再びキャリア2の加速を開始する。キャリア2が定常速度に至り記録開始位置に到達した後、次の1走査分の印字を開始する。
【0020】
つづいて高速モードについて説明する。図4に示すように、記録ヘッド3による1走査分の印字が終了したタイミングで、改行(紙送り)動作を開始する。改行動作中にキャリア2の減速、加速を行う。ここで改行動作が終了するとほぼ同時に、キャリア2の加速が終わり定常速度に達するように改行のタイミングを合わせる。キャリア2が定常速度に至り記録開始位置に到達した後、次の1走査分の印字を開始する。キャリア2の減速、加速の時間と改行の時間を重ねることで、改行の時間分記録時間を短縮することが出来ることになる。
【0021】
次に先行給紙時の高速モ−ドについて説明する。図6に示すように、記録動作については、高速モードと同じであるが、記録紙への記録中に、紙端検知B(図2参照)が記録紙P1の後端を検知したタイミングで、給紙ローラ15の駆動を開始し、収納カセット10に収納されている記録紙Pの給紙を開始し、記録紙Pの先端が紙端検知Aに到達したところで待機するようになっている。次記録紙Pの待機位置がより記録ヘッドに近くなることにより、記録時間が短縮される。
【0022】
図7は、制御手段による制御を説明するフローチャートである。ステップS1で1行あたりの印刷ドット数を検出手段によって調べて、所定のしきい値より大きければステップS3へ、しきい値より小さければステップS2へ進む。印刷ドット数が多いと判断してステップS3に進んだ場合は、印刷ドット数が多いことによりヘッド駆動のための電力が大きくなると判断し、アクチュエータ駆動のための電力が小さくなるように改行(紙送り)開始のタイミング、キャリア2の加速開始のタイミングを、図5に示すように、他のアクチュエータ駆動と重ならないように変更する。そのままステップS4に進み、図6に示すように高速化のために行っていた、印刷中の給紙動作を停止する。反対に印刷ドット数が少ないと判断してステップ2に進んだ場合は、印刷ドット数が少ないことによりヘッド駆動のための電力が小さくなると判断し、アクチュエータ駆動のための電力が大きくてもいいと判断し、図4、図6に示すように、改行(紙送り)動作とキャリア2の減速・加速の時間を重ねたり、印刷中に給紙動作を重ねて記録時間の短縮を図る。
【0023】
このようにして、ヘッド駆動のための電力とアクチュエータ駆動のための電力の総和を、印刷ドットが少ないときは記録時間の高速化を停止し、印刷ドットが多いときには記録時間の高速化を行うことで、ほぼ同じに合わせて、これにより、電源容量を最大限に利用することが可能となる。
【0024】
このようにしてプラテン24上で順次記録ヘッド3による印字が行なわれた後、記録紙は記録紙排出ローラ(排紙ローラ)25と排紙拍車26にてカセットカバー13に排紙されるようになっている。なお、図1において、11はヘッド回復手段であり、このヘッド回復手段11はキャリア2が、その移動範囲の一端付近に設けられたホームポジションに移動した際、記録ヘッド3と対向可能な位置に設けられている。そして、このヘッド回復手段11を待機中、記録動作前後もしくは1行毎の記録の合間に作動させ、記録ヘッド3に対してキャッピング、吸引、ワイピング等の動作を行なわせることにより、記録ヘッド3の目詰まり等を防止して記録ヘッド3の性能を保持するようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の紙送り装置を備えた記録装置の一例であるインクジェットプリンタの斜視図である。
【図2】上記インクジェットプリンタの概略構成を示す断面図である。
【図3】上記給紙装置の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の、高速モードでのアクチュエータのタイムチャートを説明する図である。
【図5】本発明の、普通モードでのアクチュエータのタイムチャートを説明する図である。
【図6】本発明の、先行給紙時の高速モードでのアクチュエータのタイムチャートを説明する図である。
【図7】本発明の実施例の制御フローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 インクジェットプリンタ
1A インクジェットプリンタ本体
1B 給紙装置
3 記録ヘッド
3A 画像記録部
4 インクタンク
5 記録液供給チューブ
7 ガイドシャフト
6 フレーム
8 ガイドレール
9 第一の搬送ローラ
10 給紙カセット
11 回復手段
12 ピンチローラ
13 カセットカバー
14 アーム
15 給紙ローラ
16 プーリ
17 ベルト
18 ギア
19 分離板
20 ローラガイド
21 第二の搬送ローラ
22 紙端検知A
23 紙端検知B
24 プラテン
25 記録紙排出ローラ
26 拍車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録素子を配列した記録ヘッドを用い、該記録ヘッドを搭載したキャリアを記録媒体に対し走査させながら記録を行う記録装置であって、1走査分の印刷ドット数を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に応じて、搬送手段の改行時の紙送り開始タイミングと前記記録ヘッドを搭載したキャリアの動作タイミングを制御する制御手段と、を有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、1走査分の印刷ドット数が所定以上のときはキャリアの走査と、改行のための紙送りが同時に行なわれないに制御する請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記記録素子はインクを吐出するノズルであり、前記制御手段は1走査分の印刷ドット数が所定以上のときは、キャリアの加速と改行のための紙送りが同時に行なわれないように制御する請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
インクを吐出して記録を行う記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行う記録装置において、前記記録装置は、前記記録ヘッドに対向する位置を通過するように記録媒体を搬送する搬送手段と、記録媒体を収納する記録媒体収納手段と、前記記録媒体収納手段に収納された記録媒体を前記搬送手段に送り出す給紙手段と、1走査分の印刷ドット数を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された印刷ドット数が所定以上のときは、前記記録ヘッドのインク吐出と前記給紙手段による給紙が同時に行なわれないように制御する記録装置。
【請求項5】
複数の記録素子を配列した記録ヘッドを用い、該記録ヘッドを搭載したキャリアを記録媒体に対し当該記録素子の配列方向とは異なる方向に走査させながら記録を行う記録方法において、高速モードの記録時に、1走査分の印刷ドット数を検出し、印刷ドット数が所定値を超えた場合、改行時の紙送りと前記記録ヘッドを搭載したキャリアの動作を重複させないように変更することを特徴とする記録方法。
【請求項6】
先行給紙の高速モード時に、印刷ドット数が所定値を超えた場合、さらに、先行給紙を停止することを特徴とする請求項5記載の記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−144646(P2007−144646A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338585(P2005−338585)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】