説明

試料採取デバイス、試料採取方法、およびニオイ検出装置

【課題】唾液に含まれるニオイ物質を効率良く採取することのできる試料採取デバイス、試料採取方法、およびニオイ検出装置を提供する。
【解決手段】試料採取デバイス50は、舌Tの表面の唾液が採取される上面61aを有する第1基板61と、下面71aを有する第2基板71と、を備え、第1基板61は第1部材60に設置され、第2基板71は第2部材70に設置されている。第1基板61の上面61aおよび第2基板71の下面71aは、粗面を有し、舌Tの表面の唾液が採取された上面61aと下面71aとがこすりあわされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係るいくつかの態様は、ニオイを発するニオイ物質を含む唾液を採取する試料採取デバイス、試料採取方法、およびニオイ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口臭などの望ましくない口腔状態を評価するために、個人の唾液サンプルを採取し、唾液サンプルを分光的、代謝学的な方法により分析することで、口腔健康度合いを算定する方法(例えば特許文献1参照)が知られている。この方法では、清浄な水道水などを使用して口腔を濯いだ後、口の中の内容物をバイアル瓶に吐き出させることで、唾液サンプルを採取している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−545740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、唾液に含まれるニオイ物質を分析する場合、ニオイ物質以外の成分、例えば、水分などがノイズ成分となり得る。しかしながら、特許文献1に記載された方法では、唾液サンプルに多くの水分(水分子)が含まれるので、ニオイ物質を効率良く採取することができない、という問題があった。
【0005】
本発明のいくつかの態様は前述の問題に鑑みてなされたものであり、唾液に含まれるニオイ物質を効率良く採取することのできる試料採取デバイス、試料採取方法、およびニオイ検出装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る試料採取デバイスは、舌の表面の唾液が採取される第1の面を有する第1の基板と、第2の面を有する第2の基板と、を備え、第1の面および第2の面は、粗面を有し、前述の唾液が採取された第1の面と第2の面とがこすりあわされる。
【0007】
かかる構成によれば、第1の面によって、舌の表面の唾液が採取される。ここで、唾液に含まれる連鎖球菌、腐敗菌、嫌気性細菌などが増殖すると、例えば、酪酸、硫化物、インドール、アンモニア、などのニオイを発するニオイ物質を繁殖(増殖)させる。一方、舌の表面には、唾液の他に、細菌類やタンパク質を多く含む舌苔が付着している。これらの舌苔に含まれる細菌類やタンパク質も、ニオイ物質を繁殖(増殖)させる。よって、舌の表面の唾液を採取することより、ニオイ物質となり得る舌苔を採取することができる。また、第1の面が粗面を有する。これにより、唾液を採取するときに、第1の面に舌の表面の唾液と舌苔とが付着し易くなる。
【0008】
さらに、唾液が採取された第1の面と第2の面とがこすりあわされる。これにより、こすりあわせたときの摩擦熱によって、唾液中の水分を蒸発させることが可能となる。また、第2の面が粗面を有する。これにより、第1の面と第2の面とをこすりあわすことにより、唾液や舌苔に含まれる細菌を破砕することができ、細菌中に含まれるニオイ物質となり得る物質を繁殖(増殖)させることが可能となる。このように、唾液とともに舌苔を採取することができ、第1の面に舌の表面の唾液と舌苔とが付着し易くなり、唾液中の水分を蒸発させることが可能となり、唾液や舌苔に含まれる細菌を破砕することができ、細菌中に含まれるニオイ物質となり得る物質を繁殖(増殖)させることが可能となるので、従来のように単に唾液を採取する場合と比較して、唾液に含まれるニオイ物質を効率良く採取することができる。
【0009】
好ましくは、第2の面に凸部が形成されている。
【0010】
かかる構成によれば、第2の面には、凸部が形成されている。これにより、第1の面と第2の面とのこすりあわせが容易になる。これにより、唾液に含まれるニオイ物質をさらに効率良く採取することができる。
【0011】
好ましくは、第1の面に凹部が形成されており、第1の基板および第2の基板は、第1の面と第2の面とをこすりあわせるときに凸部が凹部の面内を動くように、構成される。
【0012】
かかる構成によれば、第1の面には、凹部が形成されている。これにより、第1の面によって採取された唾液が凹部に溜まり(集まり)易くなる。また、第1の面と第2の面とをこすりあわせるときに、凸部が凹部の面内を動くように、第1の基板および第2の基板が構成されている。これにより、凹部に溜まった(集まった)唾液が凸部に付着しても、凹部を越えて流れ出たり、飛び散ったりする可能性を低減することができる。これにより、唾液に含まれるニオイ物質の減少を防止することができる。
【0013】
好ましくは、前記第1の面の粗面および前記第2の面の粗面における算術平均粗さは、10μm以上、かつ、500μm以下である。
【0014】
かかる構成によれば、第1の面の粗面および第2の面の粗面における算術平均粗さが、10μm以上、かつ、500μm以下である。これにより、舌の表面の唾液と舌苔とが付着し易くなり、唾液や舌苔に含まれる細菌を破砕することができ、細菌中に含まれるニオイ物質となり得る物質を繁殖(増殖)させることが可能となる、第1の面の粗面および第2の面を、容易に実現することができる
【0015】
好ましくは、前述の唾液に含まれるニオイ物質を検出するニオイ検出装置であって、前述の試料採取デバイスを備える。
【0016】
かかる構成によれば、前述の唾液に含まれるニオイ物質を検出するニオイ検出装置であって、本発明に係る試料採取デバイスを備える。これにより、唾液に含まれるニオイ物質を効率良く採取することができるので、唾液中に微量に(低濃度で)含まれるニオイ物質を検出することができる。
【0017】
本発明に係る試料採取方法は、第1の基板の第1の面を用いて舌の表面の唾液を採取するステップと、第1の面と第2の基板の第2の面とをこすりあわせるステップと、を備え、第1の面および前記第2の面は、粗面を有する。
【0018】
かかる構成によれば、第1の面によって、舌の表面の唾液が採取される。ここで、唾液に含まれる連鎖球菌、腐敗菌、嫌気性細菌などが増殖すると、例えば、酪酸、硫化物、インドール、アンモニア、などのニオイを発するニオイ物質を繁殖(増殖)させる。一方、舌の表面には、唾液の他に、細菌類やタンパク質を多く含む舌苔が付着している。これらの舌苔に含まれる細菌類やタンパク質も、ニオイ物質を繁殖(増殖)させる。よって、舌の表面の唾液を採取することより、ニオイ物質となり得る舌苔を採取することができる。また、第1の面が粗面を有する。これにより、唾液を採取するときに、第1の面に舌の表面の唾液と舌苔とが付着し易くなる。
【0019】
さらに、唾液が採取された第1の面と第2の面とがこすりあわされる。これにより、こすりあわせたときの摩擦熱によって、唾液中の水分を蒸発させることが可能となる。また、第2の面が粗面を有する。これにより、第1の面と第2の面とをこすりあわすことにより、唾液や舌苔に含まれる細菌を破砕することができ、細菌中に含まれるニオイ物質となり得る物質を繁殖(増殖)させることが可能となる。このように、唾液とともに舌苔を採取することができ、第1の面に舌の表面の唾液と舌苔とが付着し易くなり、唾液中の水分を蒸発させることが可能となり、唾液や舌苔に含まれる細菌を破砕することができ、細菌中に含まれるニオイ物質となり得る物質を繁殖(増殖)させることが可能となるので、従来のように単に唾液を採取する場合と比較して、唾液に含まれるニオイ物質を効率良く採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る試料採取デバイスの第1実施形態を説明する側面図である。
【図2】図1に示した第1基板の上面図である。
【図3】図1に示した第2基板の上面図である。
【図4】図1に示した試料採取デバイスを使用して唾液を採取する方法を説明する図である。
【図5】図1に示した試料採取デバイスを使用して唾液を採取する方法を説明する図である。
【図6】図1に示した試料採取デバイスを使用して唾液を採取する方法を説明する図である。
【図7】本発明に係る試料採取デバイスの第2実施形態を説明する側面図である。
【図8】図7に示した第1基板の上面図である。
【図9】図7に示した試料採取デバイスを使用して唾液を採取する方法を説明する図である。
【図10】図7に示した試料採取デバイスを使用して唾液を採取する方法を説明する図である。
【図11】本発明に係るニオイ検出装置の一例を説明する概略構成図である。
【図12】図11に示したニオイセンサーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。なお、以下の説明において、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」という。
【0022】
<試料採取デバイスおよび試料採取方法>
[第1実施形態]
図1ないし図6は、本発明に係る試料採取デバイスおよび試料採取方法の第1実施形態を示すためのものである。まず、図1ないし図3を参照して試料採取デバイスの構成について説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る試料採取デバイスの第1実施形態を説明する側面図である。図1に示すように、試料採取デバイス50は、第1基板61が設置された第1部材60と、第2基板71が設置された第2部材70と、第1部材60と第2部材70とを連結する連結部材80と、を含んで構成される。
【0024】
第1基板61は、第1部材60の一端側(図1において右端側)に、脱着自在に設置される。第1基板61の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの他に、やわらかい材料としてシリコンゴムなどが挙げられる。
【0025】
第1部材60において、第1基板61が設置された面と反対側の面(図1において下面)には、第1基板61に対向する位置に突起部材62が設置される。一方、第1部材60の他端側(図1において左端側)は、軸部材81によって連結部材80に軸支される。これにより、第1部材60は、軸部材81の周りに(軸部材81を中心として)、回動する(正逆両方向に回転する)ことができる。
【0026】
第2基板71は、第2部材70の一端側(図1において右端側)に、脱着自在に設置される。第2基板71の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの他に、やわらかい材料としてシリコンゴムなどが挙げられる。
【0027】
第2部材70において、第2基板71が設置された面と反対側の面(図1において上面)において、第2基板71に対向する位置に突起部材72が設置される。一方、第2部材70の他端側(図1において左端側)は、軸部材82によって連結部材80に軸支される。これにより、第2部材70は、軸部材82の周りに(軸部材82を中心として)、回動(正逆両方向に回転)することができる。
【0028】
図2は、図1に示した第1基板の上面図である。図2に示すように、平面視において、第1基板61の形状は、長手方向(縦方向)が長さa1、短手方向(横方向)が長さb1、の矩形(長方形)である(a1>b1)。図1に示す第1部材60の上面に露出する第1基板61の上面61aは、でこぼこした粗い面(粗面)を有する。また、上面61aは、粗面の外周に外縁部61cを有する。
【0029】
図3は、図1に示した第2基板の上面図である。図3に示すように、平面視において、第2基板71の形状は、長手方向(縦方向)が長さa2、短手方向(横方向)が長さb2、の矩形(長方形)である(a2>b2)。図1に示す第2部材70の下面に露出する第2基板71の下面71aは、でこぼこした粗い面(粗面)を有する。また、下面71aは、粗面の外周に外縁部71cを有する。
【0030】
本実施形形態では、平面視において、第1基板61および第2基板71の形状として矩形(長方形)の例を示したが、これに限定されず、他の形状であってもよい。例えば、第1基板61および第2基板71の形状は、正方形でもよいし、多角形でも円形でも楕円形でもでもよい。
【0031】
また、本実施形形態では、上面61aの一部が粗面であり、下面71aの一部が粗面である例を示したがこれに限定されない。例えば、上面61aおよび下面71aのうちの少なくとも一方の全部が粗面であってもよい。上面61aの全部が粗面である場合、外縁部61cは第1基板61の外縁となる。また、下面71aの全部が粗面である場合、外縁部71cは第2基板71の外縁となる。
【0032】
なお、図1に示すように、第2基板71の下面71aには、凸部71bが形成されているのが好ましい。本実施形態では、凸部71bとして下面71aの全体を凸形状に形成する例を示したが、これに限定されず、下面71aの一部を凸形状に形成してもよい。
【0033】
次に、図4ないし図6を参照して、試料採取デバイス50を使用して唾液を採取する方法について説明する。
【0034】
図4は、図1に示した試料採取デバイス50を使用して唾液を採取する方法を説明する図である。図4に示すように、図1に示す状態の試料採取デバイス50から、第1部材60および第2部材70のうちの少なくとも一方を回転させて、試料採取デバイス50を開く。そして、第1基板61の上面61aを被験者の舌Tの表面に接触させた(押し当てた)まま、所定時間または所定回数動かして、舌Tの表面の唾液をこすりとる。これにより、第1基板61の上面61aによって、舌Tの表面の唾液が採取される。
【0035】
ここで、唾液に含まれる連鎖球菌、腐敗菌、嫌気性細菌などが増殖すると、例えば、酪酸、硫化物、インドール、アンモニア、などのニオイを発するニオイ物質を繁殖(増殖)させる。一方、舌の表面には、唾液の他に、細菌類やタンパク質を多く含む舌苔が付着している。これらの舌苔に含まれる細菌類やタンパク質も、ニオイ物質を繁殖(増殖)させる。よって、舌の表面の唾液を採取することより、ニオイ物質となり得る舌苔を採取することができる。
【0036】
また、前述したように、第1基板61の上面61aが粗面を有する。これにより、唾液を採取するときに、上面61aに舌の表面の唾液と舌苔とが付着し易くなる。
【0037】
図5は、図1に示した試料採取デバイス50を使用して唾液を採取する方法を説明する図である。次に、図5に示すように、第1部材60および第2部材70のうちの少なくとも一方を回転させて、試料採取デバイス50を閉じる。そして、図5中にブロック矢印で示すように、突起部材62および突起部材72のうちの少なくとも一方を駆動して、唾液が採取された上面61aと第2基板71の下面71aとがこすりあわされる。これにより、こすりあわせたときの摩擦熱によって、唾液中の水分を蒸発させることが可能となる。
【0038】
また、前述したように、第2基板71の下面71aが粗面を有する。これにより、上面61aと下面71aとをこすりあわすことにより、唾液や舌苔に含まれる細菌を破砕することができ、細菌中に含まれるニオイ物質となり得る物質を繁殖(増殖)させることが可能となる。
【0039】
なお、上面61aの粗面および下面71aの粗面における算術平均粗さ(Ra)は、10[μm]以上、かつ、500[μm]以下であることが好ましい。これにより、舌の表面の唾液と舌苔とが付着し易くなり、唾液や舌苔に含まれる細菌を破砕することができ、細菌中に含まれるニオイ物質となり得る物質を繁殖(増殖)させることが可能となる、上面61aおよび下面71aを、容易に実現することができる
【0040】
また、第2基板71の下面71aには、凸部71bが形成されている。これにより、上面61aと下面71aとのこすりあわせが容易になる。
【0041】
図6は、図1に示した試料採取デバイス50を使用して唾液を採取する方法を説明する図である。次に、図6に示すように、第1部材60から第1基板61を取り外すとともに、第2部材70から第2基板71を取り外す。そして、取り外した第1基板61および第2基板71を、ガラス製などのニオイの残らない(吸着の少ない)容器90の中に封入する。唾液に含まれるニオイ物質は、容器90内にニオイ分子(ニオイ成分)を発する。容器90は供給管91を備えており、供給管91を介して容器90内の気体が外部に供給される。これにより、唾液に含まれるニオイ物質を検出することが可能となる。
【0042】
本実施形態では、第1基板61および第2基板71を容器90の中に封入する例を示したが、これに限定されない。例えば、第1基板61だけを容器90の中に封入するようにしてもよい。また、第1基板61および第2基板71を取り外さずに、そのまま試料採取デバイス50を容器90の中に封入するようにしてもよい。
【0043】
このように、本実施形態の試料採取デバイス50によれば、第1基板61の上面61aによって、舌の表面の唾液が採取される。ここで、唾液に含まれる連鎖球菌、腐敗菌、嫌気性細菌などが増殖すると、例えば、酪酸、硫化物、インドール、アンモニア、などのニオイを発するニオイ物質を繁殖(増殖)させる。一方、舌の表面には、唾液の他に、細菌類やタンパク質を多く含む舌苔が付着している。これらの舌苔に含まれる細菌類やタンパク質も、ニオイ物質を繁殖(増殖)させる。よって、舌の表面の唾液を採取することより、ニオイ物質となり得る舌苔を採取することができる。また、第1基板61の上面61aが粗面を有する。これにより、唾液を採取するときに、上面61aに舌の表面の唾液と舌苔とが付着し易くなる。
【0044】
さらに、唾液が採取された上面61aと第2基板71の下面71aとがこすりあわされる。これにより、こすりあわせたときの摩擦熱によって、唾液中の水分を蒸発させることが可能となる。また、第2基板71の下面71aが粗面を有する。これにより、上面61aと下面71aとをこすりあわすことにより、唾液や舌苔に含まれる細菌を破砕することができ、細菌中に含まれるニオイ物質となり得る物質を繁殖(増殖)させることが可能となる。このように、唾液とともに舌苔を採取することができ、上面61aに舌の表面の唾液と舌苔とが付着し易くなり、唾液中の水分を蒸発させることが可能となり、唾液や舌苔に含まれる細菌を破砕することができ、細菌中に含まれるニオイ物質となり得る物質を繁殖(増殖)させることが可能となるので、従来のように単に唾液を採取する場合と比較して、唾液に含まれるニオイ物質を効率良く採取することができる。
【0045】
一般に、被験者が緊張や不安を感じると唾液の分膣量が低下し、唾液はねばねばした状態になる。緊張や不安が継続し、被験者がストレスを感じ始めると、新鮮な唾液が慢性的に不足した状態になる。この結果、口の中のタンパク質が濃縮され、牛乳の乾燥したようなニオイがし始める。また、新鮮な唾液が少なくなることで、唾液中の酵素も少なくなり、嫌気性細菌が活発になり、嫌なニオイがし始める。このように、被験者がストレスを感じ続けると唾液のニオイに変化が起こることが知られている。本実施形態の試料採取デバイス50は、唾液に含まれるニオイ物質を効率良く採取することができるので、ストレスの測定に適用することが可能である。
【0046】
また、本実施形態の試料採取デバイス50によれば、第2基板71の下面71aには、凸部71bが形成されている。これにより、上面61aと下面71aとのこすりあわせが容易になる。これにより、唾液に含まれるニオイ物質をさらに効率良く採取することができる。
【0047】
また、本実施形態の試料採取デバイス50によれば、上面61aの粗面および下面71aの粗面における算術平均粗さ(Ra)が、10[μm]以上、かつ、500[μm]以下である。これにより、舌の表面の唾液と舌苔とが付着し易くなり、唾液や舌苔に含まれる細菌を破砕することができ、細菌中に含まれるニオイ物質となり得る物質を繁殖(増殖)させることが可能となる、上面61aおよび下面71aを、容易に実現することができる。
【0048】
また、本実施形態の試料採取方法によれば、第1基板61の上面61aによって、舌の表面の唾液が採取される。ここで、唾液に含まれる連鎖球菌、腐敗菌、嫌気性細菌などが増殖すると、例えば、酪酸、硫化物、インドール、アンモニア、などのニオイを発するニオイ物質を繁殖(増殖)させる。一方、舌の表面には、唾液の他に、細菌類やタンパク質を多く含む舌苔が付着している。これらの舌苔に含まれる細菌類やタンパク質も、ニオイ物質を繁殖(増殖)させる。よって、舌の表面の唾液を採取することより、ニオイ物質となり得る舌苔を採取することができる。また、第1基板61の上面61aが粗面を有する。これにより、唾液を採取するときに、上面61aに舌の表面の唾液と舌苔とが付着し易くなる。
【0049】
さらに、唾液が採取された上面61aと第2基板71の下面71aとがこすりあわされる。これにより、こすりあわせたときの摩擦熱によって、唾液中の水分を蒸発させることが可能となる。また、第2基板71の下面71aが粗面を有する。これにより、上面61aと下面71aとをこすりあわすことにより、唾液や舌苔に含まれる細菌を破砕することができ、細菌中に含まれるニオイ物質となり得る物質を繁殖(増殖)させることが可能となる。このように、唾液とともに舌苔を採取することができ、上面61aに舌の表面の唾液と舌苔とが付着し易くなり、唾液中の水分を蒸発させることが可能となり、唾液や舌苔に含まれる細菌を破砕することができ、細菌中に含まれるニオイ物質となり得る物質を繁殖(増殖)させることが可能となるので、従来のように単に唾液を採取する場合と比較して、唾液に含まれるニオイ物質を効率良く採取することができる。
【0050】
[第2実施形態]
図7ないし図10は、本発明に係る試料採取デバイスおよび試料採取方法の第2実施形態を示すためのものである。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。また、前述した第1実施形態と類似する構成部分は類似の符号をもって表し、その詳細な説明を省略する。さらに、図示しない構成部分は、前述した第1実施形態と同様とする。
【0051】
図7は、本発明に係る試料採取デバイスの第2実施形態を説明する側面図である。図7に示すように、試料採取デバイス50Aは、第1基板61Aと、第2基板71Aと、を備える。第2基板71Aは、第2部材70の一端側(図7において右端側)に、支持部材73を介して脱着自在に設置される。支持部材73は、図7中にブロック矢印で示す方向に伸縮するダンピング機能を有する。
【0052】
図8は、図7に示した第1基板の上面図である。図8に示すように、第1基板61Aの上面61aは、第1実施形態と同様に、粗面と、粗面の外周に外縁部61cを有する。また、図7および図8に示すように、上面61aの粗面には、略矩形状の凹部61bが形成される。
【0053】
本実施形形態では、平面視において、凹部61bの形状として略矩形状の例を示したが、これに限定されず、他の形状であってもよい。例えば、凹部61bの形状は、矩形(長方形)でもよいし、円形でも楕円形でもよい。
【0054】
また、後述する上面61aと下面71aとをこすりあわせるときに、凸部71bが凹部61bの面内を動くように、第1基板61Aおよび第2基板71Aが構成されているのが好ましい。具体的には、上面61aと下面71aとをこすりあわせるときの上面61aと下面71aとの配置、第1基板61Aおよび第2基板71Aの寸法、凹部61bおよび凸部71bの寸法、などを設定する。例えば、下面71aが上面61aの粗面内を動いて外縁部61cにはみ出さない配置、図7に示すように第1基板61の長手方向(縦方向)の長さa1が第2基板71の長手方向(縦方向)が長さa2より長い寸法(a1>a2)、凹部61bの長手方向(縦方向)の長さa3が凸部71bの長手方向(縦方向)より長い寸法(a3>a2)が設定される。
【0055】
本実施形形態では、平面視において、凹部61bおよび凸部71bの形状として円形の例を示したが、これに限定されず、他の形状であってもよい。例えば、凹部61bおよび凸部71bの形状の形状は、楕円形でもよいし、矩形(長方形)でもよい。
【0056】
次に、図9および図10を参照して、試料採取デバイス50Aを使用して唾液を採取する方法について説明する。
【0057】
図9は、図7に示した試料採取デバイス50Aを使用して唾液を採取する方法を説明する図である。図9に示すように、第1実施形態と同様に、試料採取デバイス50Aを開く。そして、第1基板61Aの上面61aを被験者の舌Tの表面に接触させた(押し当てた)まま、所定時間または所定回数動かして、舌Tの表面の唾液をこすりとる。これにより、第1基板61Aの上面61aによって、舌Tの表面の唾液が採取される。
【0058】
前述したように、第1基板61Aの上面61aには、凹部61bが形成されている。これにより、上面61aによって採取された唾液が凹部61bに溜まり(集まり)易くなる。
【0059】
図10は、図7に示した試料採取デバイス50Aを使用して唾液を採取する方法を説明する図である。次に、図10に示すように、第1実施形態と同様に、試料採取デバイス50Aを閉じる。このとき、支持部材73が収縮して第1基板61Aの上面61aと第2基板71Aの下面71aとが接触する。そして、図10中にブロック矢印で示すように、突起部材62および突起部材72のうちの少なくとも一方を駆動して、唾液が採取された上面61aと第2基板71の下面71aとがこすりあわされる。これにより、こすりあわせたときの摩擦熱によって、唾液中の水分を蒸発させることが可能となる。
【0060】
前述したように、上面61aと下面71aとをこすりあわせるときに、凸部71bが凹部61bの面内を動くように、第1基板61Aおよび第2基板71Aが構成されている。これにより、凹部61bに溜まった(集まった)唾液が凸部71bに付着しても、凹部61bを越えて流れ出たり、飛び散ったりする可能性を低減することができる。
【0061】
次に、第1実施形態と同様に、第1部材60から第1基板61Aを取り外すとともに、第2部材70から第2基板71Aを取り外す。そして、取り外した第1基板61Aおよび第2基板71Aを、図6に示す供給管91を備える容器90の中に封入する。これにより、唾液に含まれるニオイ物質を検出することが可能となる。
【0062】
このように、本実施形態の試料採取デバイス50Aによれば、第1基板61Aの上面61aには、凹部61bが形成されている。これにより、上面61aによって採取された唾液が凹部61bに溜まり(集まり)易くなる。また、上面61aと下面71aとをこすりあわせるときに、凸部71bが凹部61bの面内を動くように、第1基板61Aおよび第2基板71Aが構成されている。これにより、凹部61bに溜まった(集まった)唾液が凸部71bに付着しても、凹部61bを越えて流れ出たり、飛び散ったりする可能性を低減することができる。これにより、唾液に含まれるニオイ物質の減少を防止することができる。
【0063】
<ニオイ検出装置>
図11および図12は、本発明に係るニオイ検出装置の一実施形態を示すためのものである。なお、前述した本発明に係る試料採取デバイスおよび試料採取方法の実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。また、図示しない構成部分は、前述した本発明に係る試料採取デバイスおよび試料採取方法の各実施形態と同様とする。
【0064】
図11は本発明に係るニオイ検出装置の一例を説明する概略構成図である。図11に示すように、ニオイ検出装置100は、唾液に含まれるニオイ物質を検出するためのものである。ニオイ検出装置100は、複数のニオイセンサー10が設置された測定室20と、各ニオイセンサー10に電気的に接続された検出部30と、前述した本発明に係る試料採取デバイス50の第1基板61および第2基板71が封入された容器90と、を含んで構成される。
【0065】
本実施形態では、容器90に試料採取デバイス50の第1基板61および第2基板71を封入する例を示したが、これに限定されず、試料採取デバイス50Aの第1基板61Aおよび第2基板71Aを容器90に封入してもよい。
【0066】
図12は、図11に示したニオイセンサーの断面図である。図12に示すように、ニオイセンサー10は、水晶振動子11と、吸着膜15と、を含んで構成される。水晶振動子11は、水晶基板12と、水晶基板12の両面(図12において上面および下面)に配置された2つの電極13と、それぞれが電極13に電気的に接続された2つの信号線14と、を含んで構成される。
【0067】
水晶振動子11は、例えば、ATカット型の水晶振動子である。水晶振動子11は、水晶基板12の両面に設けた電極13間に電圧を印加すると、水晶基板12の両面が互いにずれるように振動する、いわゆる厚みすべり振動モードで動作する。水晶振動子11の共振周波数(共振振動数)f0は、電極13間に挟まれた水晶基板12の厚さtに反比例し、以下の式(1)で表すことができる。
0=1670/t …(1)
但し、水晶基板12の厚さtの単位は[μm]であり、水晶振動子11の共振周波数f0の単位は[MHz]である。
【0068】
この水晶振動子11を用いたニオイセンサー10において、質量変化量ΔMと、共振周波数の変化量Δfとの関係は、以下のSauerbreyの式(2)で表すことができる。
【0069】
【数1】

但し、ρは水晶の密度、μは水晶のせん断弾性定数、Aは有効振動面積であって、略電極面積である。
【0070】
吸着膜15は、所定のニオイ分子を吸着する材料、例えば、有機ポリマー材料で構成される。吸着膜15は、水晶基板12の両面(図12において上面および下面)を、電極13を含んで被覆するように、形成される。
【0071】
吸着膜15の形成方法としては、例えば、スピンコートや噴霧などにより塗布する方法が挙げられる。
【0072】
このように構成されたニオイセンサー10では、吸着膜15に所定のニオイ分子が吸着すると、ニオイセンサー10の質量が変化し、前述した式(2)に従って共振周波数が変化する。
【0073】
本実施形態では、水晶振動子11を用いたニオイセンサー10の例を示したが、これに限定されない。例えば、(熱)酸化物半導体を用いたニオイセンサーなど、他の方式(形式)のニオイセンサーであってもよい。
【0074】
図11に示す検出部30は、ニオイセンサー10の共振周波数の変化量Δfに基づいて、所定のニオイ分子を検出するためのものである。検出部30には、各ニオイセンサー10の信号線14が接続されており、ニオイセンサー10に所定のニオイ分子が吸着すると、当該ニオイセンサー10から共振周波数の変化量Δfに基づく検出信号が入力される。
【0075】
本実施形態では、測定室20内に4つのニオイセンサー10を設置する例を示したが、これに限定されず、ニオイセンサー10を測定室20内に1つ設置するようにしてもよいし、2つ、3つ、または5つ以上設置するようにしてもよい。
【0076】
なお、図11に示すように、測定室20の内部に複数のニオイセンサー10を設置する場合、複数のニオイセンサー10のそれぞれは、互いに異なる所定のニオイ分子の吸着により共振周波数が変化するように構成するのが好ましい。具体的には、それぞれのニオイセンサー10において、吸着膜15として、互いに異なる所定のニオイ分子に対して感応性を有する材料を選択すればよい。
【0077】
また、測定室20の内部には、供給管91を介して、唾液に含まれるニオイ物質の発した所定のニオイ分子が、容器90から供給される。
【0078】
供給された所定のニオイ分子が、ニオイセンサー10の吸着膜15に吸着すると、共振周波数の変化量Δfに基づく検出信号が、信号線14を介して検出部30に入力される。検出部30は、この検出信号に基づいて、所定のニオイ分子を検出する。
【0079】
このように、本実施形態のニオイ検出装置100によれば、唾液に含まれるニオイ物質を検出するニオイ検出装置100であって、本発明に係る試料採取デバイス50,50Aの第1基板61,61Aおよび第2基板71,71Aを備える。これにより、唾液に含まれるニオイ物質を効率良く採取することができるので、唾液中に微量に(低濃度で)含まれるニオイ物質を検出することができる。
【0080】
なお、前述した各実施形態の構成を組み合わせたり、あるいは、一部の構成部分を入れ替えたりしてもよい。また、本発明の構成は、前述した各実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10…ニオイセンサー、20…測定室、30…測定部、42…真空ポンプ、50,50A…試料採取デバイス、61,61A…第1基板、61a…上面、61b…凹部、71,71A…第2基板、71a…下面、71b…凸部、T…舌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舌の表面の唾液が採取される第1の面を有する第1の基板と、
第2の面を有する第2の基板と、を備え、
前記第1の面および前記第2の面は、粗面を有し、
前記唾液が採取された前記第1の面と前記第2の面とがこすりあわされる
ことを特徴とする試料採取デバイス。
【請求項2】
前記第2の面に凸部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の試料採取デバイス。
【請求項3】
前記第1の面に凹部が形成されており、
前記第1の基板および前記第2の基板は、前記第1の面と前記第2の面とをこすりあわせるときに前記凸部が前記凹部の面内を動くように、構成される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の試料採取デバイス。
【請求項4】
前記第1の面の粗面および前記第2の面の粗面における算術平均粗さは、10μm以上、かつ、500μm以下である
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の試料採取デバイス。
【請求項5】
前記唾液に含まれるニオイ物質を検出するニオイ検出装置であって、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の試料採取デバイスを備える
ことを特徴とするニオイ検出装置。
【請求項6】
第1の基板の第1の面を用いて舌の表面の唾液を採取するステップと、
前記第1の面と第2の基板の第2の面とをこすりあわせるステップと、を備え、
前記第1の面および前記第2の面は、粗面を有する
ことを特徴とする試料採取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−237617(P2012−237617A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106019(P2011−106019)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】