読取装置および診断システム
【課題】複数人が同時に検査結果を確認することができ、検査結果の精度を向上することができ、感染症検査の場合において感染拡大を防止することができる蛍光読取装置等を提供する。
【解決手段】蛍光読取装置1は、平面試験片5が収容された試験容器3を挿入する挿入口14を有し、全ての面が光を遮蔽する部材によって形成される筐体11を備える。筐体11の内部には、挿入口14から挿入される試験容器3に向けて励起光を発する発光部17、平面試験片5の蛍光発色の状態を撮像する撮像部18が設けられる。筐体11の外部には、撮像部18と電気的に接続され、撮像部18が撮像した画像を表示する表示部13が設けられる。
【解決手段】蛍光読取装置1は、平面試験片5が収容された試験容器3を挿入する挿入口14を有し、全ての面が光を遮蔽する部材によって形成される筐体11を備える。筐体11の内部には、挿入口14から挿入される試験容器3に向けて励起光を発する発光部17、平面試験片5の蛍光発色の状態を撮像する撮像部18が設けられる。筐体11の外部には、撮像部18と電気的に接続され、撮像部18が撮像した画像を表示する表示部13が設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光イムノクロマト法の平面試験片における蛍光発色の状態を読み取るための蛍光読取装置および診断システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
イムノクロマト法とは、被検物質が毛細管現象により多孔質支持体内を移動し、標識粒子に捕捉され、更に多孔質支持体に局所的(例えば、ライン状)に固定化された捕捉物質と効率的に接触することによって被検物質が濃縮され、捕捉物質が固定化されたラインが発色することによって被検物質の有無を判定する免疫測定法をいう。
イムノクロマト法の特徴として、少なくとも下記の2点が挙げられる。
(1)判定までに要する時間が20分以下であり、迅速な検査が可能である。
(2)検体を滴下するだけで測定でき、操作が簡便である。
これらの特徴を利用して、イムノクロマト法は妊娠検査薬やインフルエンザ検査薬に用いられており、新たなPOCT(Point Of Care Testing)の手法として注目を集めている。
ここで、POCTとは、患者に出来る限り近い場所で診断するための検査をいう。従来、採取した血液、尿、患部組織などの検体は、病院の中央検査室や専門の検査センターに送られて検査されるので、診断の確定までに時間がかかっていた。POCTによれば、瞬時に提供される検査情報を基に、迅速かつ的確な治療が可能となる。従って、病院での緊急検査や手術中の検査が可能となるので、医療現場におけるニーズが高まっている。
【0003】
従来のイムノクロマト法では、標識物質として金ナノ粒子が最も良く使用されている。金ナノ粒子の場合、検出機器が不要であるものの、検出感度が低いという問題がある。
そこで、本発明者らは、標識物質として蛍光物質を用いたイムノクロマト法標識試薬、およびイムノクロマト法用テストストリップ等を発明している(特許文献1参照)。特許文献1に記載のイムノクロマト法用標識試薬シリカナノ粒子は、様々な吸光特性および蛍光特性を付与することができる。そして、特許文献1に記載のイムノクロマト法用テストストリップを用いることで、検出感度の高い検査を行うことができる。
【0004】
更に、本発明者らは、標識物質として蛍光物質を用いたイムノクロマト法用テストストリップを目視確認するために、図11に示す蛍光読取装置301を発明している。
図11は、従来技術の蛍光読取装置301の概略斜視図である。蛍光読取装置301の筐体311内部には、励起光源(図示しない)が設置されている。筐体311の正面部には、励起光源のオン、オフの為の入力部312(スイッチ)が設けられる。筐体311の上面部には、筐体311の内部を目視するための覗き窓313が形成されている。筐体311の側面部の一方には、平面試験片(テストストリップ)303を挿入する為の挿入口314が形成されている。
観測者は、平面試験片303を挿入口314に挿入し、入力部(スイッチ)312を押下して励起光源からの励起光を発光させ、覗き窓313から筐体311内部を覗くことで、平面試験片303における蛍光発色の状態を目視し、被検物質の有無を判定する。
図11に示す蛍光読取装置301は、構成が簡便である為、装置が軽く携帯性に優れており、製造コストも低く抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4360652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図11に示す蛍光読取装置301は、以下に示す問題がある。
(1)複数人(例えば、医者と患者)が同時に確認することはできない。
(2)覗き窓313から環境光が侵入する為、検査環境によっては検査結果の精度が低下する。
(3)感染症検査の場合、感染症の疑いがある患者が蛍光読取装置301に触れることによって、感染が拡大してしまう恐れがある。
(4)平面試験片303における蛍光発色の状態を電子的に保存することができず、検査結果の直接的な証拠を残すことができない。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、複数人が同時に検査結果を確認することができる蛍光読取装置等を提供することである。また、検査結果の精度を向上することができる蛍光読取装置等を提供することである。また、感染症検査の場合において、感染拡大を防止することができる蛍光読取装置等を提供することである。また、検査結果の直接的な証拠を残すことができる蛍光読取装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために第1の発明は、蛍光イムノクロマト法の平面試験片における蛍光発色の状態を読み取るための蛍光読取装置であって、前記平面試験片のメンブレンは、蛍光標識試薬を吸着する対照領域、標的物質を捕捉する捕捉物質が固定化されており蛍光標識試薬が標的物質と結合している場合にのみ蛍光標識試薬を吸着する試験領域、並びに前記対照領域及び前記試験領域を除く背景領域を有し、前記平面試験片が収容された試験容器を挿入する挿入口を有し、全ての面が光を遮蔽する部材によって形成される筐体を備え、前記筐体の内部には、前記挿入口から挿入される前記試験容器に向けて励起光を発する発光部と、前記平面試験片の前記試験領域及び前記対照領域を少なくとも含む領域を撮像する撮像部と、が設けられ、前記筐体の外部には、前記撮像部が撮像した蛍光画像を表示する表示部、が設けられることを特徴とする蛍光読取装置である。
第1の発明により、複数人が同時に検査結果を確認することができる。また、検査結果の精度を向上することができる。また、感染症検査の場合において、感染拡大を防止することができる。
【0009】
第1の発明における前記筐体の内部には、前記撮像部から出力される出力値に基づいて、下記式で表される標的物質の含有量を示す定量評価指数Rtarget(以下、「Rt」と記載する。)、及び測定結果の妥当性指数Rvalidity(以下、「Rv」と記載する。)を算出する制御部、が更に設けられることが望ましい。
Rt={[前記試験領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}/{[前記対照領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}
Rv={[前記対照領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}/ [前記背景領域の出力値の統計量]}
これによって、標的物質の含有量を定量的に評価することができる。
【0010】
また、第1の発明における前記筐体の内部には、前記撮像部と電気的に接続され、前記撮像部が撮像した画像を記憶する記憶部、が更に設けられることが望ましい。
これによって、検査結果の直接的な証拠を残すことができる。
【0011】
第2の発明は、蛍光イムノクロマト法の平面試験片における蛍光発色の状態を読み取るための蛍光読取装置と、診断装置とがネットワークを介して接続される診断システムであって、前記平面試験片のメンブレンは、蛍光標識試薬を吸着する対照領域、標的物質を捕捉する捕捉物質が固定化されており蛍光標識試薬が標的物質と結合している場合にのみ蛍光標識試薬を吸着する試験領域、並びに前記対照領域及び前記試験領域を除く背景領域を有し、前記平面試験片が収容された試験容器を挿入する挿入口を有し、全ての面が光を遮蔽する部材によって形成される筐体を備え、前記筐体の内部には、前記挿入口から挿入される前記試験容器に向けて励起光を発する発光部と、前記平面試験片の前記試験領域及び前記対照領域を少なくとも含む領域を撮像する撮像部と、が設けられ、前記筐体の外部には、前記撮像部が撮像した蛍光画像を表示する表示部、が設けられることを特徴とする診断システムである。
第2の発明により、複数人が同時に検査結果を確認することができる。また、検査結果の精度を向上することができる。また、感染症検査の場合において、感染拡大を防止することができる。
【0012】
第2の発明における前記診断装置は、前記撮像部から出力される出力値に基づいて、下記式で表される標的物質の含有量を示す定量評価指数Rt、及び測定結果の妥当性指数Rvを算出する制御部を備えることが望ましい。
Rt={[前記試験領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}/{[前記対照領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}
Rv={[前記対照領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}/ [前記背景領域の出力値の統計量]}
これによって、標的物質の含有量を定量的に評価することができる。
【0013】
また、第2の発明における前記蛍光読取装置は、前記蛍光画像を前記診断装置に送信する通信部、を更に備え、前記診断装置は、前記蛍光読取装置から前記蛍光画像を受信する通信部と、前記蛍光画像を表示する表示部と、前記蛍光画像を記憶する記憶部と、を備えることが望ましい。
これによって、検査結果の直接的な証拠を残すことができる。また、患者と医療従事者が検査を終えるまで接触することはなく、感染の拡大を完全に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蛍光読取装置等により、複数人が同時に検査結果を確認することができる。また、検査結果の精度を向上することができる。また、感染症検査の場合において、感染拡大を防止することができる。また、検査結果の直接的な証拠を残すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態に係る蛍光読取装置1の概略斜視図
【図2】(a)平面試験片5の概略平面図、(b)平面試験片5の概略平面図の縦断面図
【図3】試験容器3の概略平面図
【図4】蛍光読取装置1の構成を示すブロック図
【図5】蛍光読取装置1の発光部17および撮像部18の内部配置を示す概略断面図
【図6】蛍光読取装置1の表示部13の表示例
【図7】第2の実施の形態に係る診断システム10の概略構成図
【図8】第2の実施の形態に係る蛍光読取装置1aの構成を示すブロック図
【図9】診断装置7の構成を示すブロック図
【図10】(a)表示部13に表示される画像を模式的に示した例、(b)撮像部18の出力値の例
【図11】従来技術の蛍光読取装置301の概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明において、蛍光イムノクロマト法とは、標的物質が毛細管現象により多孔質支持体(メンブレン)内を移動し、蛍光標識試薬に捕捉され、更に多孔質支持体に局所的(例えば、ライン状)に固定化された捕捉物質(例えば、標的物質と特異的に結合する抗原もしくは抗体)と効率的に接触することによって標的物質が濃縮され、捕捉物質が固定化されたラインが発色することによって被検物質の有無を判定する免疫測定法をいう。
ここで、蛍光標識試薬とは励起光を照射されたときに蛍光を発する蛍光部と、標的物質に特異的に結合する結合部とからなる任意の物質をいう。
平面試験片のメンブレン上に結合部と直接的に結合する物質を塗布した領域が対照領域(コントロールライン)であり、蛍光標識試薬は標的物質の有無に関わらず対照領域に捕捉される。すなわち、対照領域に捕捉される蛍光標識試薬の量は、その試験で使用された蛍光標識試薬の総量を表す指標となる。
一方、蛍光標識試薬の結合部が標的物質と結合しているときにのみ、標的物質を介して結合部と結合する物質(好ましくは、特異的に結合する物質)を塗布した領域が試験領域(テストライン)であり、ここには標的物質を捕捉した蛍光標識試薬のみが捕捉されることになる。すなわち、試験領域には、標的物質を捕捉する捕捉物質(例えば、標的物質と特異的に結合する抗原もしくは抗体)が固定化されている。そのため、対照領域および試験領域の両方が発色すると、被検物質が有ると判定することができる。また、対照領域のみが発色すると、被検物質が無いと判定することができる。尚、対照領域が発色しなければ、再検査を行う。ただし、このとき液体試料とともに流れずに対照領域および試験領域を除く領域に取り残されてしまう(非特異的結合)蛍光標識試薬も一定量存在しており、これらが放出する蛍光は背景となる。
【0017】
<第1の実施の形態>
最初に、第1の実施の形態に係る蛍光読取装置1の概要について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る蛍光読取装置1の概略斜視図である。
蛍光読取装置1の筐体11の内部には、励起光を発する発光部と、平面試験片5の蛍光発色の状態を撮像する撮像部が設置されている。筐体11の外部(例えば、正面部)には、蛍光読取装置1の電源をオン、オフする為の入力部(スイッチ)12、及び、撮像部と電気的に接続され、撮像部が撮像した蛍光発色の状態を表示する表示部13が設けられている。筐体11の側面部の一方には、平面試験片が収容される試験容器3を挿入する為の挿入口14が形成されている。試験容器3を挿入した状態で筐体11の内部に光が侵入しないように、筐体11は、挿入口14を除いて、全ての面が光を遮蔽する部材によって形成されることが望ましい。また、挿入口14は、試験容器3の形状に合わせて形成されることが望ましい。具体的には、挿入口14の大きさは、試験容器3の長手方向と垂直に交わる断面の形状に合わせて形成されることが望ましい。
観測者は、平面試験片が収容される試験容器3を挿入口14に挿入し、入力部(スイッチ)12を押下して電源をオンにする。蛍光読取装置1は、電源が投入されると、筐体11の内部の発光部が試験容器3に向けて励起光を発し、撮像部が平面試験片の蛍光発色の状態を撮像し、表示部13が撮像された平面試験片の蛍光発色の状態を表示する。
【0018】
蛍光読取装置1を用いることで、患者と医療従事者(医者、看護師など)は、表示部13に表示される平面試験片の蛍光発色の状態を同時に確認することができる。
また、蛍光読取装置1は、試験容器3を挿入した状態で筐体11の内部に環境光が侵入しないので、どのような検査環境であっても、検査結果の精度を保つことができる。
また、感染症検査の場合であっても、患者が蛍光読取装置1に触れることなく、平面試験片の蛍光発色の状態を確認することができるので、感染の拡大を防止することができる。
【0019】
次に、本発明に適用される蛍光イムノクロマト法の平面試験片について説明する。図2は、平面試験片5の概略平面図(図2(a))、及び平面試験片5の概略平面図の縦断面図(図2(b))である。
平面試験片5のメンブレン53は、蛍光標識試薬を吸着する対照領域(コントロールライン)57、標的物質を捕捉する捕捉物質が固定化されており蛍光標識試薬が標的物質と結合している場合にのみ蛍光標識試薬を吸着する試験領域(テストライン)56、並びに対照領域57及び試験領域56を除く背景領域を有する。また、平面試験片5は、図2に示されるように、
<1>試験添加用部材(サンプルパッド)51と蛍光標識試薬を含有させてなる試薬含有部材(コンジュゲートパッド)52とが、
<2>コンジュゲートパッド52とメンブレン53とが、並びに、
<3>メンブレン53と吸収パッド54とが
相互に毛細管現象が生じるように直列連結していることがより好ましい。
次に、前述の各部材について説明する。
1)試験添加用部材(サンプルパッド)51
サンプルパッド51は、標的物質を含む液体試料を滴下する構成部材である。
2)試験含有部材(コンジュゲートパッド)52
コンジュゲートパッド52は、蛍光標識試薬を含有する構成部材であり、サンプルパッド51から毛細管現象により移動してきた試料液体に含まれる標的物質が抗原抗体反応等の分子認識反応で、蛍光標識試薬によって捕捉されて標識される部分である。
3)メンブレン53
メンブレン53は、蛍光標識試薬により標識された標的物質が毛細管現象によって移動する構成部材であり、例えば、捕捉用抗体‐標的物質‐蛍光標識試薬からなるサンドイッチ型免疫複合体形成反応が行われる試験領域56を有する。
メンブレン53における対照領域57及び試験領域56の各々の形状としては、局所的に捕捉用抗体等が固定化されている限り特に制限はなく、ライン状、円状、帯状等が挙げられるが、幅0.5〜1.5mmのライン状であることが好ましい。
捕捉用抗体‐標的物質‐蛍光標識試薬からなるサンドイッチ型免疫複合体形成反応により、試験領域56に、例えばシリカ粒子により標識された標的物質が捕捉され、形成された複合体中の蛍光標識試薬に由来する蛍光の程度により標的物質を定量的に検出することができる。
対照領域57及び試験領域56の各々における抗体固定化量は特に制限はないが、形状がライン状の場合、単位長さ(cm)当たり0.5μg〜5μgが好ましい。
4)吸収パッド54
吸収パッド54は、毛細管現象でメンブレン53を移動してきた液体試料及び蛍光標識試薬を吸収し、常に一定の流れを生じさせるための構成部材である。
【0020】
本発明に適用される蛍光イムノクロマト法の平面試験片の好ましい態様として、例えば、特許4360652号公報に記載の、標的物質として蛍光物質を含有させた標識シリカナノ粒子を用いてなるイムノクロマト法用テストストリップ、特開2005−031029号公報に記載のイムノクロマトグラフィーテストキット、特開2000−019175号公報に記載の免疫学的検査用キット等が挙げられる。また、その他の標識粒子としては、蛍光色素で着色したラテックス粒子などが挙げられる。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲において、標的物質を含有する液体試料としては特に制限はないが、尿、血液などが挙げられる。
本明細書及び特許請求の範囲において、検出、定量、検査、診断、判定の対照としての標的物質は、抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、ペプチド、化学物質等が挙げられる。
蛍光標識試薬としては、国際公開2007/074722A1公報に記載の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を、標的物質を認識する物質(例えば、抗体、抗原、DNA、RNAなどの生体分子)で吸着等により表面修飾させてなるシリカ粒子等が挙げられる。
蛍光標識試薬の蛍光波長としては、蛍光読取装置1が検出可能な範囲にある限り特に制限はないが、400〜750nmの可視光帯域であることが好ましい。
【0022】
次に、平面試験片5を収容する試験容器について説明する。図3は、試験容器3の概略平面図である。
試験容器3は、例えば樹脂からなる細長形状であって、蓋体と収容体から構成され、平面試験片5を収容する。試験容器3は、滴下部32、蛍光読取窓33を有している。滴下部32は、標的物質を含む液体試料を滴下する部分である。滴下部32は、サンプルパッド51の一部を露出させる円形の貫通孔34が形成されており、下(紙面では奥)に行くほど径が小さくなるように、すり鉢状に立体形成されている。滴下部32がすり鉢状に立体形成されていることで、液体試料が貫通孔に誘導され、平面試験片5のサンプルパッド51に確実に滴下される。蛍光読取窓33は、蛍光読取装置1が平面試験片の蛍光発色の状態を読み取る為の窓である。蛍光読取窓33は、試験領域56及び対照領域57を含むメンブレン53の一部を露出させる細長形状の貫通孔35が形成されており、下(紙面では奥)に行くほど周囲長が小さくなるように、各辺がテーパ状に立体形成されている。各辺がテーパ状に立体形成されていることで、蛍光読取窓33に対して励起光源が斜め方向から発せられても、蛍光読取窓33から露出している全てのメンブレン53の領域に励起光源が照射される。
【0023】
次に、蛍光読取装置1の構成について説明する。図4は、蛍光読取装置1の構成を示すブロック図である。
蛍光読取装置1は、制御部15、入力部12、電源部16、発光部17、撮像部18、表示部13、記憶部19等から構成される。
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成され、筐体11の内部に設けられる。CPUは、ROM、記録部19等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バスを介して接続された各装置を駆動制御し、蛍光読取装置1全体を制御する。ROMは、不揮発性メモリであり、プログラム、データ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、プログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部15が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
第1の実施の形態では、制御部15は、受光した蛍光強度を撮像部18が変換したアナログ電流強度(アナログ値)をデジタル値に変換して蛍光画像とし、表示部13に表示する。但し、第1の実施の形態では、撮像部18がアナログ電流強度を表示部13に表示可能な値に変換し、表示部13に伝送することで、制御部15は必ずしも必要としない。
【0024】
入力部12は、例えば、蛍光読取装置1の電源をオン、オフする為のスイッチであり、筐体11の正面部に設けられる。入力部12は、必要に応じて、その他のスイッチを有しても良い。
電源部16は、蛍光読取装置1の起電力を供給するものである。電源部16は、例えば、筐体11の内部に設けられる電池などである。また、電源部16は、アダプタを介して、外部からの電力を蛍光読取装置1に適した形態に変換し、蛍光読取装置1の起電力として供給するようにしても良い。
【0025】
発光部17は、挿入口14から挿入される試験容器3に向けて励起光を発するものであり、筐体11の内部に設けられる。発光部17は、例えば、用いる蛍光標識試薬の波長に合わせたLD(レーザーダイオード)、LED(発光ダイオード)の他、水銀ランプ、ハロゲンランプ又はキセノンランプといった白色ランプ等が挙げられる。蛍光読取装置1をコンパクトにする為には、発光部17は、他の励起光源と比べて小型化し易いLD(レーザーダイオード)が望ましい。
【0026】
撮像部18は、平面試験片5の蛍光発色の状態を撮像し、二次元的に読み取るものであり、筐体11の内部に設けられる。撮像部18は、例えば、CCD(Charge Couple Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、PD(Photodiode)アレイ等が挙げられる。撮像部18は、平面試験片5の試験領域57及び対照領域56を少なくとも含む領域を撮像する。
【0027】
表示部13は、撮像部18によって撮像された平面試験片5の蛍光発色の状態を表示するものであり、筐体11の正面部に設けられる。表示部13は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイ等が挙げられる。
【0028】
記憶部19は、撮像部18によって撮像された平面試験片5の蛍光発色の状態を記憶するものであり、筐体11の内部に設けられる。記憶部19は、例えば、ハードディスクなどの補助記憶装置、フラッシュメモリや超小型のハードディスク等を内蔵するメモリカードの読取装置等が挙げられる。メモリカードとしては、USB(Universal Serical Bus)メモリ、SDカード等が挙げられる。尚、記憶部19は、筐体11にUSB等のポートを設けて、筐体11から取り外し可能とし、筐体11の外部に設けるようにしても良い。
蛍光読取装置1は、記憶部19を備えることで、平面試験片5の蛍光発色の状態を電子的に保存することができ、検査結果の直接的な証拠を残すことができる。
【0029】
次に、蛍光読取装置1の発光部17および撮像部18の内部配置について説明する。図5は、蛍光読取装置1の発光部17および撮像部18の内部配置を示す概略断面図である。
図5に示すように、蛍光読取装置1の内部には、発光部17および撮影部18が配置される。また、検査を行う際は、挿入口14から試験容器3が挿入される。
撮影部18は、平面試験片5からの蛍光を集光する集光レンズ21(例えば、両凸レンズ)、発光部17の励起光を除去し平面試験片5からの蛍光のみを透過するバンドパスフィルタ22、バンドバスフィルタ22を透過した蛍光を受光し蛍光画像を撮像する高感度の撮像素子23を備える。
平面試験片5に照射される励起光の強度が強い程、画像が鮮明になる為、発光部17と試験容易器3の距離は出来る限り近づけることが望ましい。発光部17による励起光の照射角度については、特に制限はない。
試験容器3の固定位置は、例えば、発光部17からの励起光の中心を示す中心線24(点線にて図示)と、集光レンズ21の中心を示す中心線25との交点26が、試験領域(テストライン)56の右端(液体試料の流れる方向に対して下流側の端部)および対照領域(コントロールライン)57の左端(液体試料の流れる方向に対して上流側の端部)から等距離の位置となるように定める。
【0030】
図6は、蛍光読取装置1の表示部13の表示例である。図6では、検査結果が陽性、すなわち対照領域57および試験領域56の両方が発色し、被検物質が有ると判定される表示例を示している。尚、図6は、カラー画像をグレースケール画像に変換したものである。
第1の実施の形態に係る蛍光読取装置1は、図6に示す表示例のように、平面試験片5の蛍光発色の状態を表示部13に表示するので、複数人が同時に検査結果を確認することができる。また、蛍光読取装置1の表示部13に表示される画像は、内部に光が侵入しない筐体11の内部に設置された撮像部18によって撮像されているので、どのような検査環境であっても、検査結果の精度を保つことができる。また、感染症検査の場合であっても、患者が蛍光読取装置1に触れることなく、平面試験片の蛍光発色の状態を確認することができる。
更に、蛍光読取装置1は、図6に示す画像を記憶部19に記憶することで、平面試験片5の蛍光発色の状態を電子的に保存することができる。
【0031】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態に係る診断システム10について説明する。尚、第1の実施の形態と同じ要素には同一の符号を付し、重複した説明を省略することとする。
図7は、第2の実施の形態に係る診断システム10の概略構成図である。図7に示すように、診断システム10は、検査室101に設置される蛍光読取装置1a、および診断室103に設置される診断装置7から構成される。蛍光読取装置1aと診断装置7は、ネットワーク9を介して接続されている。
検査室101には患者105が在室し、診断室103には医療従事者(医者、看護師など)107が在室している。また、検査室101と診断室103は、空間的に隔たりがあり、患者105と医療従事者107は、検査を終えるまで接触することはない。
ネットワーク9は、有線であっても無線であっても良い。また、ネットワーク9は、病院内LAN(Local Area Network)であっても良いし、インターネットであっても良い。
【0032】
図8は、第2の実施の形態に係る蛍光読取装置1aの構成を示すブロック図である。
図8に示すように、蛍光読取装置1aは、制御部15、入力部12、電源部16、発光部17、撮像部18、表示部13、通信部20等から構成される。
通信部20は、ネットワーク9を介して診断装置7との通信を制御するものであり、通信制御装置、通信ポート等を有する。また、通信部20は、例えば、NIC(ネットワークインタフェースカード)のような外部装置とし、筐体11にNICのスロットを設けて、蛍光読取装置1aから取り外し可能としても良い。
【0033】
図9は、診断装置7の構成を示すブロック図である。尚、図9の構成は一例であり、用途、目的に応じて様々な構成を採ることが可能である。
図9に示すように、診断装置7は、制御部71、記憶部72、表示部73、入力部74、通信部75等が、バスを介して接続される。
制御部71は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。
CPUは、記憶部72、ROM等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バスを介して接続された各装置を駆動制御し、診断装置7が行う処理を実現する。
ROMは、不揮発性メモリであり、診断装置7のブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。
RAMは、揮発性メモリであり、記憶部72、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部71が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
記憶部72は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、制御部71が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OS(オペレーティングシステム)に相当する制御プログラムや、アプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、制御部71により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
表示部73は、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携して診断装置7のビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。
入力部74は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス等の入力装置を有する。入力部74を介して、診断装置7に対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。
通信部75は、通信制御装置、通信ポート等を有し、診断装置7とネットワーク9間の通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワーク9を介して、蛍光読取装置1aとの通信制御を行う。
【0034】
第2の実施の形態に係る診断システム10では、検査室101に在室する患者105が、平面試験片5が収容される試験容器3を蛍光読取装置1aの挿入口14に挿入し、入力部12を押下して電源をオンにする。蛍光読取装置1aは、電源が投入されると、筐体11の内部の発光部17が試験容器3に向けて励起光を発し、撮像部18が平面試験片5の蛍光発色の状態を撮像し、表示部13が撮像された平面試験片5の蛍光発色の状態を示す蛍光画像を表示する。また、蛍光読取装置1aの通信部20は、ネットワーク9を介して診断装置7に蛍光画像を送信する。診断装置7の通信部75が蛍光画像を受信すると、制御部71は、受信した蛍光画像を表示部73に表示する。医療従事者107は、表示部73に表示される蛍光画像を確認し、陽性か陰性かの判定を行う。
このように、第2の実施の形態に係る診断システム10では、患者105と医療従事者107が検査を終えるまで接触することはなく、感染の拡大を完全に防止することができる。また、蛍光読取装置1aを設置する場所は、ネットワーク9と接続できる場所であれば特に制限はなく、患者105の自宅などでも良い。
【0035】
<第3の実施の形態>
次に、第3の実施の形態に係る定量評価について説明する。尚、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同じ要素には同一の符号を付し、重複した説明を省略することとする。
蛍光イムノクロマト法では、平面試験片における蛍光発色を高感度かつ定量的に評価することができる。定量的に評価するためには、メンブレン53における試験領域(テストライン)56、対照領域(コントロールライン)57、それ以外の領域である背景領域を2次元的に読み取り、得られるデータ群を適切に処理して標的物質の含有量を一意的に導出する必要がある。そこで、第3の実施の形態に係る定量評価では、第1の実施の形態に係る蛍光読取装置1または第2の実施の形態に係る蛍光読取装置1aの撮像部18から出力される出力値に基づく定量評価を行う。
ここで、撮像部18から出力される出力値とは、受光した蛍光強度を撮像部18が変換したアナログ電流強度(アナログ値)だけでなく、アナログ電流強度をA/D変換器などでデジタル化したデジタル値、およびデジタル値を所定の計算式に基づいて変換した値も含むものとする。
【0036】
図10(a)は、表示部13に表示される画像を模式的に示した例、図10(b)は、撮像部18の出力値の例である。
図10(a)に示す画像は、試験領域56、対照領域57が含まれており、検査結果が陽性の例を示している。
図10(b)に示すグラフは、同一のx座標の画素に対して画素値の平均値を算出し、出力値として表示したものである。尚、出力値としてはこれに限定されるものではなく、例えば、特定のy座標の画素に関する画素値としても良い。特定のy座標は、例えば、試験容器3に形成される滴下部32の貫通孔34の中心座標、蛍光読取装置1(1a)の発光部17からの励起光の中心を示す中心線25と集光レンズ21の中心を示す中心線25との交点26(図5参照)の座標などが挙げられる。貫通孔34の中心位置の座標は、同一のx座標の画素の中では、液体試料が滴下された位置から距離が最も近い為、試験領域56、対照領域57の蛍光強度が高いと考えられる。
蛍光読取装置1(1a)の表示部13は、撮像部が撮像した画像と重畳して、図10(b)に示すグラフを表示するようにしても良い。
【0037】
以下では、撮像部18の出力値を3種類に分けて考える。すなわち、試験領域56に相当する画素である試験領域画素205の出力値、対照領域57に相当する画素である対照領域画素207の出力値、背景領域に相当する画素である背景領域画素209、211、213の出力値である。
各画素が、試験領域画素205、対照領域画素207、背景領域画素209、211、213のいずれに該当するかを決める基準としては、例えば、図10(b)に示すグラフのピーク値201、203を用いることができる。まず、液体試料の流れる方向に対して上流側にあるピーク値201の画素は、試験領域画素205とする。そして、ピーク値201の画素の周辺であって、α×ピーク値201(0<α<1)よりも大きい出力値の画素も、試験領域画素205とする。同様に、液体試料の流れる方向に対して下流側にあるピーク値203の画素は、対照領域画素207とする。そして、ピーク値203の画素の周辺であって、α×ピーク値203(0<α<1)よりも大きい出力値の画素も、対照領域画素207とする。試験領域画素205または対照領域画素207ではない画素は、x座標に応じて、それぞれ背景領域に相当する画素である背景領域画素209、211、213とする。αの値は、試験領域56、対照領域57、および背景領域の境界が明確な校正サンプルを用意し、それに基づいて微調整できることが好ましい。
尚、検査結果が陰性の場合にはピーク値201が存在しないことになるが、検査結果が陰性の場合には定量評価を行う必要がない為、ピーク値201、203を基準とすることに問題はない。
【0038】
蛍光読取装置1(1a)の制御部15、または診断装置7の制御部71は、撮像部18から出力される出力値に基づいて、下記式で表される標的物質の含有量を示す定量評価指数Rt、及び測定結果の妥当性指数Rvを算出する。
Rt={[試験領域の出力値の統計量]−[背景領域の出力値の統計量]}/{[対照領域の出力値の統計量]−[背景領域の出力値の統計量]}
Rv={[対照領域の出力値の統計量]−[背景領域の出力値の統計量]}/ [背景領域の出力値の統計量]}
算出した定量評価指数Rt、及び測定結果の妥当性指数Rvは、蛍光読取装置1(1a)の表示部13、または診断装置7の表示部73に表示する。
定量評価指数Rtは、標的物質を直接的に表す値ではなく、標的物質の含有量を得るためにはこれに変換係数を乗じる必要がある。変換係数は、標的物質と用いた蛍光標識試薬の組み合わせによって定まる値であるため、予め標的物質や蛍光標識試薬の組み合わせに対応する変換係数を算出しておくことが望ましい。
妥当性指数Rvは、液体試料への蛍光標識試薬の添加量の多少、平面試験片5の固定位置等が適切であるか否かを示すものである。
蛍光読取装置1(1a)の大きさによる制約上、発光部17による励起光の照射角度は、図5に示すように斜め方向となり、励起光の照射具合に強度ムラがあると、妥当性指数Rvによるセッティング判定に誤差が生じてしまう。そこで、試験領域56および対照領域57の両領域で同じ蛍光強度を示す校正サンプルを用意し、それに基づいて妥当性指数Rvを微調整することが好ましい。
【0039】
試験領域の出力値の統計量は、例えば、試験領域画素205の平均値、中央値、最大値、最小値等である。また、試験領域の出力値の統計量は、例えば、特定のx座標に関する出力値であっても良い。特定のx座標としては、ピーク値201、試験領域画素205と判定された画素の中心、左端、右端などが挙げられる。
対照領域の出力値の統計量も、例えば、対照領域画素207の平均値、中央値、最大値、最小値等である。また、対照領域の出力値の統計量も、例えば、特定のx座標に関する出力値であっても良い。特定のx座標としては、ピーク値203、対照領域画素207と判定された画素の中心、左端、右端などが挙げられる。
背景領域の出力値の統計量は、例えば、背景領域画素209、211、213のいずれか1つの平均値、中央値、最大値、最小値等である。また、背景領域の出力値の統計量は、背景領域画素209、211、213のいずれか2つの平均値、中央値、最大値、最小値等でも良い。また、背景領域の出力値の統計量は、背景領域画素209、211、213の全ての平均値、中央値、最大値、最小値等でも良い。また、背景領域の出力値の統計量も、例えば、特定のx座標に関する出力値であっても良い。特定のx座標としては、例えば、ピーク値201とピーク値203の中点、背景領域画素209(211、213)と判定された画素の中心、左端、右端などが挙げられる。
【0040】
従来のイムノクロマト法の検査キットでは、図10(a)に示すように、試験領域56と対照領域57が液体試料の流れる方向に対して直列的に配置されていて、試験領域56が上流側、対照領域57が下流側という位置関係にある。この場合、液体試料中に過剰量の標的物質が含有されているとそれらと結合した蛍光標的試薬の大部分が試験領域56に特異的に吸着してしまい、それらは対照領域57まで到達することができない。そのため、対照領域57が液体試料に混入された蛍光標識試薬の総量をよく表さないことになってしまう。
そこで、標的物質を定量的に評価する場合、平面試験片5が、対照領域57と試験領域56とが試薬含有部材から等距離の位置に並べて配置してあること、言い換えれば、試験領域56と対照領域57を液体試料の流れに対して並列に並べて配置してあることが好ましい。
尚、並列に並んだ2本のラインという配列は、肉眼でそれらを視認するにはあまり適していない。一方、蛍光読取装置1(1a)は、筐体11の内部に環境光が侵入しない状態で平面試験片5の蛍光発色の状態を撮像し、撮像した画像を表示部13に表示することから、並列に並んだ2本のラインであっても十分に識別可能である。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る蛍光読取装置等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0042】
1………蛍光読取装置
3………試験容器
5………平面試験片
7………診断装置
9………ネットワーク
10………診断システム
11………筐体
12………入力部
13………表示部
14………挿入口
15………制御部
16………電源部
17………発光部
18………撮像部
19………記憶部
20………通信部
56………試験領域
57………対照領域
205………試験領域画素
207………対照領域画素
209、211、213………背景領域画素
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光イムノクロマト法の平面試験片における蛍光発色の状態を読み取るための蛍光読取装置および診断システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
イムノクロマト法とは、被検物質が毛細管現象により多孔質支持体内を移動し、標識粒子に捕捉され、更に多孔質支持体に局所的(例えば、ライン状)に固定化された捕捉物質と効率的に接触することによって被検物質が濃縮され、捕捉物質が固定化されたラインが発色することによって被検物質の有無を判定する免疫測定法をいう。
イムノクロマト法の特徴として、少なくとも下記の2点が挙げられる。
(1)判定までに要する時間が20分以下であり、迅速な検査が可能である。
(2)検体を滴下するだけで測定でき、操作が簡便である。
これらの特徴を利用して、イムノクロマト法は妊娠検査薬やインフルエンザ検査薬に用いられており、新たなPOCT(Point Of Care Testing)の手法として注目を集めている。
ここで、POCTとは、患者に出来る限り近い場所で診断するための検査をいう。従来、採取した血液、尿、患部組織などの検体は、病院の中央検査室や専門の検査センターに送られて検査されるので、診断の確定までに時間がかかっていた。POCTによれば、瞬時に提供される検査情報を基に、迅速かつ的確な治療が可能となる。従って、病院での緊急検査や手術中の検査が可能となるので、医療現場におけるニーズが高まっている。
【0003】
従来のイムノクロマト法では、標識物質として金ナノ粒子が最も良く使用されている。金ナノ粒子の場合、検出機器が不要であるものの、検出感度が低いという問題がある。
そこで、本発明者らは、標識物質として蛍光物質を用いたイムノクロマト法標識試薬、およびイムノクロマト法用テストストリップ等を発明している(特許文献1参照)。特許文献1に記載のイムノクロマト法用標識試薬シリカナノ粒子は、様々な吸光特性および蛍光特性を付与することができる。そして、特許文献1に記載のイムノクロマト法用テストストリップを用いることで、検出感度の高い検査を行うことができる。
【0004】
更に、本発明者らは、標識物質として蛍光物質を用いたイムノクロマト法用テストストリップを目視確認するために、図11に示す蛍光読取装置301を発明している。
図11は、従来技術の蛍光読取装置301の概略斜視図である。蛍光読取装置301の筐体311内部には、励起光源(図示しない)が設置されている。筐体311の正面部には、励起光源のオン、オフの為の入力部312(スイッチ)が設けられる。筐体311の上面部には、筐体311の内部を目視するための覗き窓313が形成されている。筐体311の側面部の一方には、平面試験片(テストストリップ)303を挿入する為の挿入口314が形成されている。
観測者は、平面試験片303を挿入口314に挿入し、入力部(スイッチ)312を押下して励起光源からの励起光を発光させ、覗き窓313から筐体311内部を覗くことで、平面試験片303における蛍光発色の状態を目視し、被検物質の有無を判定する。
図11に示す蛍光読取装置301は、構成が簡便である為、装置が軽く携帯性に優れており、製造コストも低く抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4360652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図11に示す蛍光読取装置301は、以下に示す問題がある。
(1)複数人(例えば、医者と患者)が同時に確認することはできない。
(2)覗き窓313から環境光が侵入する為、検査環境によっては検査結果の精度が低下する。
(3)感染症検査の場合、感染症の疑いがある患者が蛍光読取装置301に触れることによって、感染が拡大してしまう恐れがある。
(4)平面試験片303における蛍光発色の状態を電子的に保存することができず、検査結果の直接的な証拠を残すことができない。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、複数人が同時に検査結果を確認することができる蛍光読取装置等を提供することである。また、検査結果の精度を向上することができる蛍光読取装置等を提供することである。また、感染症検査の場合において、感染拡大を防止することができる蛍光読取装置等を提供することである。また、検査結果の直接的な証拠を残すことができる蛍光読取装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために第1の発明は、蛍光イムノクロマト法の平面試験片における蛍光発色の状態を読み取るための蛍光読取装置であって、前記平面試験片のメンブレンは、蛍光標識試薬を吸着する対照領域、標的物質を捕捉する捕捉物質が固定化されており蛍光標識試薬が標的物質と結合している場合にのみ蛍光標識試薬を吸着する試験領域、並びに前記対照領域及び前記試験領域を除く背景領域を有し、前記平面試験片が収容された試験容器を挿入する挿入口を有し、全ての面が光を遮蔽する部材によって形成される筐体を備え、前記筐体の内部には、前記挿入口から挿入される前記試験容器に向けて励起光を発する発光部と、前記平面試験片の前記試験領域及び前記対照領域を少なくとも含む領域を撮像する撮像部と、が設けられ、前記筐体の外部には、前記撮像部が撮像した蛍光画像を表示する表示部、が設けられることを特徴とする蛍光読取装置である。
第1の発明により、複数人が同時に検査結果を確認することができる。また、検査結果の精度を向上することができる。また、感染症検査の場合において、感染拡大を防止することができる。
【0009】
第1の発明における前記筐体の内部には、前記撮像部から出力される出力値に基づいて、下記式で表される標的物質の含有量を示す定量評価指数Rtarget(以下、「Rt」と記載する。)、及び測定結果の妥当性指数Rvalidity(以下、「Rv」と記載する。)を算出する制御部、が更に設けられることが望ましい。
Rt={[前記試験領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}/{[前記対照領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}
Rv={[前記対照領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}/ [前記背景領域の出力値の統計量]}
これによって、標的物質の含有量を定量的に評価することができる。
【0010】
また、第1の発明における前記筐体の内部には、前記撮像部と電気的に接続され、前記撮像部が撮像した画像を記憶する記憶部、が更に設けられることが望ましい。
これによって、検査結果の直接的な証拠を残すことができる。
【0011】
第2の発明は、蛍光イムノクロマト法の平面試験片における蛍光発色の状態を読み取るための蛍光読取装置と、診断装置とがネットワークを介して接続される診断システムであって、前記平面試験片のメンブレンは、蛍光標識試薬を吸着する対照領域、標的物質を捕捉する捕捉物質が固定化されており蛍光標識試薬が標的物質と結合している場合にのみ蛍光標識試薬を吸着する試験領域、並びに前記対照領域及び前記試験領域を除く背景領域を有し、前記平面試験片が収容された試験容器を挿入する挿入口を有し、全ての面が光を遮蔽する部材によって形成される筐体を備え、前記筐体の内部には、前記挿入口から挿入される前記試験容器に向けて励起光を発する発光部と、前記平面試験片の前記試験領域及び前記対照領域を少なくとも含む領域を撮像する撮像部と、が設けられ、前記筐体の外部には、前記撮像部が撮像した蛍光画像を表示する表示部、が設けられることを特徴とする診断システムである。
第2の発明により、複数人が同時に検査結果を確認することができる。また、検査結果の精度を向上することができる。また、感染症検査の場合において、感染拡大を防止することができる。
【0012】
第2の発明における前記診断装置は、前記撮像部から出力される出力値に基づいて、下記式で表される標的物質の含有量を示す定量評価指数Rt、及び測定結果の妥当性指数Rvを算出する制御部を備えることが望ましい。
Rt={[前記試験領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}/{[前記対照領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}
Rv={[前記対照領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}/ [前記背景領域の出力値の統計量]}
これによって、標的物質の含有量を定量的に評価することができる。
【0013】
また、第2の発明における前記蛍光読取装置は、前記蛍光画像を前記診断装置に送信する通信部、を更に備え、前記診断装置は、前記蛍光読取装置から前記蛍光画像を受信する通信部と、前記蛍光画像を表示する表示部と、前記蛍光画像を記憶する記憶部と、を備えることが望ましい。
これによって、検査結果の直接的な証拠を残すことができる。また、患者と医療従事者が検査を終えるまで接触することはなく、感染の拡大を完全に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蛍光読取装置等により、複数人が同時に検査結果を確認することができる。また、検査結果の精度を向上することができる。また、感染症検査の場合において、感染拡大を防止することができる。また、検査結果の直接的な証拠を残すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態に係る蛍光読取装置1の概略斜視図
【図2】(a)平面試験片5の概略平面図、(b)平面試験片5の概略平面図の縦断面図
【図3】試験容器3の概略平面図
【図4】蛍光読取装置1の構成を示すブロック図
【図5】蛍光読取装置1の発光部17および撮像部18の内部配置を示す概略断面図
【図6】蛍光読取装置1の表示部13の表示例
【図7】第2の実施の形態に係る診断システム10の概略構成図
【図8】第2の実施の形態に係る蛍光読取装置1aの構成を示すブロック図
【図9】診断装置7の構成を示すブロック図
【図10】(a)表示部13に表示される画像を模式的に示した例、(b)撮像部18の出力値の例
【図11】従来技術の蛍光読取装置301の概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明において、蛍光イムノクロマト法とは、標的物質が毛細管現象により多孔質支持体(メンブレン)内を移動し、蛍光標識試薬に捕捉され、更に多孔質支持体に局所的(例えば、ライン状)に固定化された捕捉物質(例えば、標的物質と特異的に結合する抗原もしくは抗体)と効率的に接触することによって標的物質が濃縮され、捕捉物質が固定化されたラインが発色することによって被検物質の有無を判定する免疫測定法をいう。
ここで、蛍光標識試薬とは励起光を照射されたときに蛍光を発する蛍光部と、標的物質に特異的に結合する結合部とからなる任意の物質をいう。
平面試験片のメンブレン上に結合部と直接的に結合する物質を塗布した領域が対照領域(コントロールライン)であり、蛍光標識試薬は標的物質の有無に関わらず対照領域に捕捉される。すなわち、対照領域に捕捉される蛍光標識試薬の量は、その試験で使用された蛍光標識試薬の総量を表す指標となる。
一方、蛍光標識試薬の結合部が標的物質と結合しているときにのみ、標的物質を介して結合部と結合する物質(好ましくは、特異的に結合する物質)を塗布した領域が試験領域(テストライン)であり、ここには標的物質を捕捉した蛍光標識試薬のみが捕捉されることになる。すなわち、試験領域には、標的物質を捕捉する捕捉物質(例えば、標的物質と特異的に結合する抗原もしくは抗体)が固定化されている。そのため、対照領域および試験領域の両方が発色すると、被検物質が有ると判定することができる。また、対照領域のみが発色すると、被検物質が無いと判定することができる。尚、対照領域が発色しなければ、再検査を行う。ただし、このとき液体試料とともに流れずに対照領域および試験領域を除く領域に取り残されてしまう(非特異的結合)蛍光標識試薬も一定量存在しており、これらが放出する蛍光は背景となる。
【0017】
<第1の実施の形態>
最初に、第1の実施の形態に係る蛍光読取装置1の概要について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る蛍光読取装置1の概略斜視図である。
蛍光読取装置1の筐体11の内部には、励起光を発する発光部と、平面試験片5の蛍光発色の状態を撮像する撮像部が設置されている。筐体11の外部(例えば、正面部)には、蛍光読取装置1の電源をオン、オフする為の入力部(スイッチ)12、及び、撮像部と電気的に接続され、撮像部が撮像した蛍光発色の状態を表示する表示部13が設けられている。筐体11の側面部の一方には、平面試験片が収容される試験容器3を挿入する為の挿入口14が形成されている。試験容器3を挿入した状態で筐体11の内部に光が侵入しないように、筐体11は、挿入口14を除いて、全ての面が光を遮蔽する部材によって形成されることが望ましい。また、挿入口14は、試験容器3の形状に合わせて形成されることが望ましい。具体的には、挿入口14の大きさは、試験容器3の長手方向と垂直に交わる断面の形状に合わせて形成されることが望ましい。
観測者は、平面試験片が収容される試験容器3を挿入口14に挿入し、入力部(スイッチ)12を押下して電源をオンにする。蛍光読取装置1は、電源が投入されると、筐体11の内部の発光部が試験容器3に向けて励起光を発し、撮像部が平面試験片の蛍光発色の状態を撮像し、表示部13が撮像された平面試験片の蛍光発色の状態を表示する。
【0018】
蛍光読取装置1を用いることで、患者と医療従事者(医者、看護師など)は、表示部13に表示される平面試験片の蛍光発色の状態を同時に確認することができる。
また、蛍光読取装置1は、試験容器3を挿入した状態で筐体11の内部に環境光が侵入しないので、どのような検査環境であっても、検査結果の精度を保つことができる。
また、感染症検査の場合であっても、患者が蛍光読取装置1に触れることなく、平面試験片の蛍光発色の状態を確認することができるので、感染の拡大を防止することができる。
【0019】
次に、本発明に適用される蛍光イムノクロマト法の平面試験片について説明する。図2は、平面試験片5の概略平面図(図2(a))、及び平面試験片5の概略平面図の縦断面図(図2(b))である。
平面試験片5のメンブレン53は、蛍光標識試薬を吸着する対照領域(コントロールライン)57、標的物質を捕捉する捕捉物質が固定化されており蛍光標識試薬が標的物質と結合している場合にのみ蛍光標識試薬を吸着する試験領域(テストライン)56、並びに対照領域57及び試験領域56を除く背景領域を有する。また、平面試験片5は、図2に示されるように、
<1>試験添加用部材(サンプルパッド)51と蛍光標識試薬を含有させてなる試薬含有部材(コンジュゲートパッド)52とが、
<2>コンジュゲートパッド52とメンブレン53とが、並びに、
<3>メンブレン53と吸収パッド54とが
相互に毛細管現象が生じるように直列連結していることがより好ましい。
次に、前述の各部材について説明する。
1)試験添加用部材(サンプルパッド)51
サンプルパッド51は、標的物質を含む液体試料を滴下する構成部材である。
2)試験含有部材(コンジュゲートパッド)52
コンジュゲートパッド52は、蛍光標識試薬を含有する構成部材であり、サンプルパッド51から毛細管現象により移動してきた試料液体に含まれる標的物質が抗原抗体反応等の分子認識反応で、蛍光標識試薬によって捕捉されて標識される部分である。
3)メンブレン53
メンブレン53は、蛍光標識試薬により標識された標的物質が毛細管現象によって移動する構成部材であり、例えば、捕捉用抗体‐標的物質‐蛍光標識試薬からなるサンドイッチ型免疫複合体形成反応が行われる試験領域56を有する。
メンブレン53における対照領域57及び試験領域56の各々の形状としては、局所的に捕捉用抗体等が固定化されている限り特に制限はなく、ライン状、円状、帯状等が挙げられるが、幅0.5〜1.5mmのライン状であることが好ましい。
捕捉用抗体‐標的物質‐蛍光標識試薬からなるサンドイッチ型免疫複合体形成反応により、試験領域56に、例えばシリカ粒子により標識された標的物質が捕捉され、形成された複合体中の蛍光標識試薬に由来する蛍光の程度により標的物質を定量的に検出することができる。
対照領域57及び試験領域56の各々における抗体固定化量は特に制限はないが、形状がライン状の場合、単位長さ(cm)当たり0.5μg〜5μgが好ましい。
4)吸収パッド54
吸収パッド54は、毛細管現象でメンブレン53を移動してきた液体試料及び蛍光標識試薬を吸収し、常に一定の流れを生じさせるための構成部材である。
【0020】
本発明に適用される蛍光イムノクロマト法の平面試験片の好ましい態様として、例えば、特許4360652号公報に記載の、標的物質として蛍光物質を含有させた標識シリカナノ粒子を用いてなるイムノクロマト法用テストストリップ、特開2005−031029号公報に記載のイムノクロマトグラフィーテストキット、特開2000−019175号公報に記載の免疫学的検査用キット等が挙げられる。また、その他の標識粒子としては、蛍光色素で着色したラテックス粒子などが挙げられる。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲において、標的物質を含有する液体試料としては特に制限はないが、尿、血液などが挙げられる。
本明細書及び特許請求の範囲において、検出、定量、検査、診断、判定の対照としての標的物質は、抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、ペプチド、化学物質等が挙げられる。
蛍光標識試薬としては、国際公開2007/074722A1公報に記載の蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子を、標的物質を認識する物質(例えば、抗体、抗原、DNA、RNAなどの生体分子)で吸着等により表面修飾させてなるシリカ粒子等が挙げられる。
蛍光標識試薬の蛍光波長としては、蛍光読取装置1が検出可能な範囲にある限り特に制限はないが、400〜750nmの可視光帯域であることが好ましい。
【0022】
次に、平面試験片5を収容する試験容器について説明する。図3は、試験容器3の概略平面図である。
試験容器3は、例えば樹脂からなる細長形状であって、蓋体と収容体から構成され、平面試験片5を収容する。試験容器3は、滴下部32、蛍光読取窓33を有している。滴下部32は、標的物質を含む液体試料を滴下する部分である。滴下部32は、サンプルパッド51の一部を露出させる円形の貫通孔34が形成されており、下(紙面では奥)に行くほど径が小さくなるように、すり鉢状に立体形成されている。滴下部32がすり鉢状に立体形成されていることで、液体試料が貫通孔に誘導され、平面試験片5のサンプルパッド51に確実に滴下される。蛍光読取窓33は、蛍光読取装置1が平面試験片の蛍光発色の状態を読み取る為の窓である。蛍光読取窓33は、試験領域56及び対照領域57を含むメンブレン53の一部を露出させる細長形状の貫通孔35が形成されており、下(紙面では奥)に行くほど周囲長が小さくなるように、各辺がテーパ状に立体形成されている。各辺がテーパ状に立体形成されていることで、蛍光読取窓33に対して励起光源が斜め方向から発せられても、蛍光読取窓33から露出している全てのメンブレン53の領域に励起光源が照射される。
【0023】
次に、蛍光読取装置1の構成について説明する。図4は、蛍光読取装置1の構成を示すブロック図である。
蛍光読取装置1は、制御部15、入力部12、電源部16、発光部17、撮像部18、表示部13、記憶部19等から構成される。
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成され、筐体11の内部に設けられる。CPUは、ROM、記録部19等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バスを介して接続された各装置を駆動制御し、蛍光読取装置1全体を制御する。ROMは、不揮発性メモリであり、プログラム、データ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、プログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部15が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
第1の実施の形態では、制御部15は、受光した蛍光強度を撮像部18が変換したアナログ電流強度(アナログ値)をデジタル値に変換して蛍光画像とし、表示部13に表示する。但し、第1の実施の形態では、撮像部18がアナログ電流強度を表示部13に表示可能な値に変換し、表示部13に伝送することで、制御部15は必ずしも必要としない。
【0024】
入力部12は、例えば、蛍光読取装置1の電源をオン、オフする為のスイッチであり、筐体11の正面部に設けられる。入力部12は、必要に応じて、その他のスイッチを有しても良い。
電源部16は、蛍光読取装置1の起電力を供給するものである。電源部16は、例えば、筐体11の内部に設けられる電池などである。また、電源部16は、アダプタを介して、外部からの電力を蛍光読取装置1に適した形態に変換し、蛍光読取装置1の起電力として供給するようにしても良い。
【0025】
発光部17は、挿入口14から挿入される試験容器3に向けて励起光を発するものであり、筐体11の内部に設けられる。発光部17は、例えば、用いる蛍光標識試薬の波長に合わせたLD(レーザーダイオード)、LED(発光ダイオード)の他、水銀ランプ、ハロゲンランプ又はキセノンランプといった白色ランプ等が挙げられる。蛍光読取装置1をコンパクトにする為には、発光部17は、他の励起光源と比べて小型化し易いLD(レーザーダイオード)が望ましい。
【0026】
撮像部18は、平面試験片5の蛍光発色の状態を撮像し、二次元的に読み取るものであり、筐体11の内部に設けられる。撮像部18は、例えば、CCD(Charge Couple Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、PD(Photodiode)アレイ等が挙げられる。撮像部18は、平面試験片5の試験領域57及び対照領域56を少なくとも含む領域を撮像する。
【0027】
表示部13は、撮像部18によって撮像された平面試験片5の蛍光発色の状態を表示するものであり、筐体11の正面部に設けられる。表示部13は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイ等が挙げられる。
【0028】
記憶部19は、撮像部18によって撮像された平面試験片5の蛍光発色の状態を記憶するものであり、筐体11の内部に設けられる。記憶部19は、例えば、ハードディスクなどの補助記憶装置、フラッシュメモリや超小型のハードディスク等を内蔵するメモリカードの読取装置等が挙げられる。メモリカードとしては、USB(Universal Serical Bus)メモリ、SDカード等が挙げられる。尚、記憶部19は、筐体11にUSB等のポートを設けて、筐体11から取り外し可能とし、筐体11の外部に設けるようにしても良い。
蛍光読取装置1は、記憶部19を備えることで、平面試験片5の蛍光発色の状態を電子的に保存することができ、検査結果の直接的な証拠を残すことができる。
【0029】
次に、蛍光読取装置1の発光部17および撮像部18の内部配置について説明する。図5は、蛍光読取装置1の発光部17および撮像部18の内部配置を示す概略断面図である。
図5に示すように、蛍光読取装置1の内部には、発光部17および撮影部18が配置される。また、検査を行う際は、挿入口14から試験容器3が挿入される。
撮影部18は、平面試験片5からの蛍光を集光する集光レンズ21(例えば、両凸レンズ)、発光部17の励起光を除去し平面試験片5からの蛍光のみを透過するバンドパスフィルタ22、バンドバスフィルタ22を透過した蛍光を受光し蛍光画像を撮像する高感度の撮像素子23を備える。
平面試験片5に照射される励起光の強度が強い程、画像が鮮明になる為、発光部17と試験容易器3の距離は出来る限り近づけることが望ましい。発光部17による励起光の照射角度については、特に制限はない。
試験容器3の固定位置は、例えば、発光部17からの励起光の中心を示す中心線24(点線にて図示)と、集光レンズ21の中心を示す中心線25との交点26が、試験領域(テストライン)56の右端(液体試料の流れる方向に対して下流側の端部)および対照領域(コントロールライン)57の左端(液体試料の流れる方向に対して上流側の端部)から等距離の位置となるように定める。
【0030】
図6は、蛍光読取装置1の表示部13の表示例である。図6では、検査結果が陽性、すなわち対照領域57および試験領域56の両方が発色し、被検物質が有ると判定される表示例を示している。尚、図6は、カラー画像をグレースケール画像に変換したものである。
第1の実施の形態に係る蛍光読取装置1は、図6に示す表示例のように、平面試験片5の蛍光発色の状態を表示部13に表示するので、複数人が同時に検査結果を確認することができる。また、蛍光読取装置1の表示部13に表示される画像は、内部に光が侵入しない筐体11の内部に設置された撮像部18によって撮像されているので、どのような検査環境であっても、検査結果の精度を保つことができる。また、感染症検査の場合であっても、患者が蛍光読取装置1に触れることなく、平面試験片の蛍光発色の状態を確認することができる。
更に、蛍光読取装置1は、図6に示す画像を記憶部19に記憶することで、平面試験片5の蛍光発色の状態を電子的に保存することができる。
【0031】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態に係る診断システム10について説明する。尚、第1の実施の形態と同じ要素には同一の符号を付し、重複した説明を省略することとする。
図7は、第2の実施の形態に係る診断システム10の概略構成図である。図7に示すように、診断システム10は、検査室101に設置される蛍光読取装置1a、および診断室103に設置される診断装置7から構成される。蛍光読取装置1aと診断装置7は、ネットワーク9を介して接続されている。
検査室101には患者105が在室し、診断室103には医療従事者(医者、看護師など)107が在室している。また、検査室101と診断室103は、空間的に隔たりがあり、患者105と医療従事者107は、検査を終えるまで接触することはない。
ネットワーク9は、有線であっても無線であっても良い。また、ネットワーク9は、病院内LAN(Local Area Network)であっても良いし、インターネットであっても良い。
【0032】
図8は、第2の実施の形態に係る蛍光読取装置1aの構成を示すブロック図である。
図8に示すように、蛍光読取装置1aは、制御部15、入力部12、電源部16、発光部17、撮像部18、表示部13、通信部20等から構成される。
通信部20は、ネットワーク9を介して診断装置7との通信を制御するものであり、通信制御装置、通信ポート等を有する。また、通信部20は、例えば、NIC(ネットワークインタフェースカード)のような外部装置とし、筐体11にNICのスロットを設けて、蛍光読取装置1aから取り外し可能としても良い。
【0033】
図9は、診断装置7の構成を示すブロック図である。尚、図9の構成は一例であり、用途、目的に応じて様々な構成を採ることが可能である。
図9に示すように、診断装置7は、制御部71、記憶部72、表示部73、入力部74、通信部75等が、バスを介して接続される。
制御部71は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。
CPUは、記憶部72、ROM等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バスを介して接続された各装置を駆動制御し、診断装置7が行う処理を実現する。
ROMは、不揮発性メモリであり、診断装置7のブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。
RAMは、揮発性メモリであり、記憶部72、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部71が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
記憶部72は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、制御部71が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OS(オペレーティングシステム)に相当する制御プログラムや、アプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、制御部71により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
表示部73は、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携して診断装置7のビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。
入力部74は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス等の入力装置を有する。入力部74を介して、診断装置7に対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。
通信部75は、通信制御装置、通信ポート等を有し、診断装置7とネットワーク9間の通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワーク9を介して、蛍光読取装置1aとの通信制御を行う。
【0034】
第2の実施の形態に係る診断システム10では、検査室101に在室する患者105が、平面試験片5が収容される試験容器3を蛍光読取装置1aの挿入口14に挿入し、入力部12を押下して電源をオンにする。蛍光読取装置1aは、電源が投入されると、筐体11の内部の発光部17が試験容器3に向けて励起光を発し、撮像部18が平面試験片5の蛍光発色の状態を撮像し、表示部13が撮像された平面試験片5の蛍光発色の状態を示す蛍光画像を表示する。また、蛍光読取装置1aの通信部20は、ネットワーク9を介して診断装置7に蛍光画像を送信する。診断装置7の通信部75が蛍光画像を受信すると、制御部71は、受信した蛍光画像を表示部73に表示する。医療従事者107は、表示部73に表示される蛍光画像を確認し、陽性か陰性かの判定を行う。
このように、第2の実施の形態に係る診断システム10では、患者105と医療従事者107が検査を終えるまで接触することはなく、感染の拡大を完全に防止することができる。また、蛍光読取装置1aを設置する場所は、ネットワーク9と接続できる場所であれば特に制限はなく、患者105の自宅などでも良い。
【0035】
<第3の実施の形態>
次に、第3の実施の形態に係る定量評価について説明する。尚、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同じ要素には同一の符号を付し、重複した説明を省略することとする。
蛍光イムノクロマト法では、平面試験片における蛍光発色を高感度かつ定量的に評価することができる。定量的に評価するためには、メンブレン53における試験領域(テストライン)56、対照領域(コントロールライン)57、それ以外の領域である背景領域を2次元的に読み取り、得られるデータ群を適切に処理して標的物質の含有量を一意的に導出する必要がある。そこで、第3の実施の形態に係る定量評価では、第1の実施の形態に係る蛍光読取装置1または第2の実施の形態に係る蛍光読取装置1aの撮像部18から出力される出力値に基づく定量評価を行う。
ここで、撮像部18から出力される出力値とは、受光した蛍光強度を撮像部18が変換したアナログ電流強度(アナログ値)だけでなく、アナログ電流強度をA/D変換器などでデジタル化したデジタル値、およびデジタル値を所定の計算式に基づいて変換した値も含むものとする。
【0036】
図10(a)は、表示部13に表示される画像を模式的に示した例、図10(b)は、撮像部18の出力値の例である。
図10(a)に示す画像は、試験領域56、対照領域57が含まれており、検査結果が陽性の例を示している。
図10(b)に示すグラフは、同一のx座標の画素に対して画素値の平均値を算出し、出力値として表示したものである。尚、出力値としてはこれに限定されるものではなく、例えば、特定のy座標の画素に関する画素値としても良い。特定のy座標は、例えば、試験容器3に形成される滴下部32の貫通孔34の中心座標、蛍光読取装置1(1a)の発光部17からの励起光の中心を示す中心線25と集光レンズ21の中心を示す中心線25との交点26(図5参照)の座標などが挙げられる。貫通孔34の中心位置の座標は、同一のx座標の画素の中では、液体試料が滴下された位置から距離が最も近い為、試験領域56、対照領域57の蛍光強度が高いと考えられる。
蛍光読取装置1(1a)の表示部13は、撮像部が撮像した画像と重畳して、図10(b)に示すグラフを表示するようにしても良い。
【0037】
以下では、撮像部18の出力値を3種類に分けて考える。すなわち、試験領域56に相当する画素である試験領域画素205の出力値、対照領域57に相当する画素である対照領域画素207の出力値、背景領域に相当する画素である背景領域画素209、211、213の出力値である。
各画素が、試験領域画素205、対照領域画素207、背景領域画素209、211、213のいずれに該当するかを決める基準としては、例えば、図10(b)に示すグラフのピーク値201、203を用いることができる。まず、液体試料の流れる方向に対して上流側にあるピーク値201の画素は、試験領域画素205とする。そして、ピーク値201の画素の周辺であって、α×ピーク値201(0<α<1)よりも大きい出力値の画素も、試験領域画素205とする。同様に、液体試料の流れる方向に対して下流側にあるピーク値203の画素は、対照領域画素207とする。そして、ピーク値203の画素の周辺であって、α×ピーク値203(0<α<1)よりも大きい出力値の画素も、対照領域画素207とする。試験領域画素205または対照領域画素207ではない画素は、x座標に応じて、それぞれ背景領域に相当する画素である背景領域画素209、211、213とする。αの値は、試験領域56、対照領域57、および背景領域の境界が明確な校正サンプルを用意し、それに基づいて微調整できることが好ましい。
尚、検査結果が陰性の場合にはピーク値201が存在しないことになるが、検査結果が陰性の場合には定量評価を行う必要がない為、ピーク値201、203を基準とすることに問題はない。
【0038】
蛍光読取装置1(1a)の制御部15、または診断装置7の制御部71は、撮像部18から出力される出力値に基づいて、下記式で表される標的物質の含有量を示す定量評価指数Rt、及び測定結果の妥当性指数Rvを算出する。
Rt={[試験領域の出力値の統計量]−[背景領域の出力値の統計量]}/{[対照領域の出力値の統計量]−[背景領域の出力値の統計量]}
Rv={[対照領域の出力値の統計量]−[背景領域の出力値の統計量]}/ [背景領域の出力値の統計量]}
算出した定量評価指数Rt、及び測定結果の妥当性指数Rvは、蛍光読取装置1(1a)の表示部13、または診断装置7の表示部73に表示する。
定量評価指数Rtは、標的物質を直接的に表す値ではなく、標的物質の含有量を得るためにはこれに変換係数を乗じる必要がある。変換係数は、標的物質と用いた蛍光標識試薬の組み合わせによって定まる値であるため、予め標的物質や蛍光標識試薬の組み合わせに対応する変換係数を算出しておくことが望ましい。
妥当性指数Rvは、液体試料への蛍光標識試薬の添加量の多少、平面試験片5の固定位置等が適切であるか否かを示すものである。
蛍光読取装置1(1a)の大きさによる制約上、発光部17による励起光の照射角度は、図5に示すように斜め方向となり、励起光の照射具合に強度ムラがあると、妥当性指数Rvによるセッティング判定に誤差が生じてしまう。そこで、試験領域56および対照領域57の両領域で同じ蛍光強度を示す校正サンプルを用意し、それに基づいて妥当性指数Rvを微調整することが好ましい。
【0039】
試験領域の出力値の統計量は、例えば、試験領域画素205の平均値、中央値、最大値、最小値等である。また、試験領域の出力値の統計量は、例えば、特定のx座標に関する出力値であっても良い。特定のx座標としては、ピーク値201、試験領域画素205と判定された画素の中心、左端、右端などが挙げられる。
対照領域の出力値の統計量も、例えば、対照領域画素207の平均値、中央値、最大値、最小値等である。また、対照領域の出力値の統計量も、例えば、特定のx座標に関する出力値であっても良い。特定のx座標としては、ピーク値203、対照領域画素207と判定された画素の中心、左端、右端などが挙げられる。
背景領域の出力値の統計量は、例えば、背景領域画素209、211、213のいずれか1つの平均値、中央値、最大値、最小値等である。また、背景領域の出力値の統計量は、背景領域画素209、211、213のいずれか2つの平均値、中央値、最大値、最小値等でも良い。また、背景領域の出力値の統計量は、背景領域画素209、211、213の全ての平均値、中央値、最大値、最小値等でも良い。また、背景領域の出力値の統計量も、例えば、特定のx座標に関する出力値であっても良い。特定のx座標としては、例えば、ピーク値201とピーク値203の中点、背景領域画素209(211、213)と判定された画素の中心、左端、右端などが挙げられる。
【0040】
従来のイムノクロマト法の検査キットでは、図10(a)に示すように、試験領域56と対照領域57が液体試料の流れる方向に対して直列的に配置されていて、試験領域56が上流側、対照領域57が下流側という位置関係にある。この場合、液体試料中に過剰量の標的物質が含有されているとそれらと結合した蛍光標的試薬の大部分が試験領域56に特異的に吸着してしまい、それらは対照領域57まで到達することができない。そのため、対照領域57が液体試料に混入された蛍光標識試薬の総量をよく表さないことになってしまう。
そこで、標的物質を定量的に評価する場合、平面試験片5が、対照領域57と試験領域56とが試薬含有部材から等距離の位置に並べて配置してあること、言い換えれば、試験領域56と対照領域57を液体試料の流れに対して並列に並べて配置してあることが好ましい。
尚、並列に並んだ2本のラインという配列は、肉眼でそれらを視認するにはあまり適していない。一方、蛍光読取装置1(1a)は、筐体11の内部に環境光が侵入しない状態で平面試験片5の蛍光発色の状態を撮像し、撮像した画像を表示部13に表示することから、並列に並んだ2本のラインであっても十分に識別可能である。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る蛍光読取装置等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0042】
1………蛍光読取装置
3………試験容器
5………平面試験片
7………診断装置
9………ネットワーク
10………診断システム
11………筐体
12………入力部
13………表示部
14………挿入口
15………制御部
16………電源部
17………発光部
18………撮像部
19………記憶部
20………通信部
56………試験領域
57………対照領域
205………試験領域画素
207………対照領域画素
209、211、213………背景領域画素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光イムノクロマト法の平面試験片における蛍光発色の状態を読み取るための蛍光読取装置であって、
前記平面試験片のメンブレンは、蛍光標識試薬を吸着する対照領域、標的物質を捕捉する捕捉物質が固定化されており蛍光標識試薬が標的物質と結合している場合にのみ蛍光標識試薬を吸着する試験領域、並びに前記対照領域及び前記試験領域を除く背景領域を有し、
前記平面試験片が収容された試験容器を挿入する挿入口を有し、全ての面が光を遮蔽する部材によって形成される筐体を備え、
前記筐体の内部には、
前記挿入口から挿入される前記試験容器に向けて励起光を発する発光部と、
前記平面試験片の前記試験領域及び前記対照領域を少なくとも含む領域を撮像する撮像部と、
が設けられ、
前記筐体の外部には、
前記撮像部が撮像した蛍光画像を表示する表示部、
が設けられることを特徴とする蛍光読取装置。
【請求項2】
前記筐体の内部には、前記撮像部から出力される出力値に基づいて、下記式で表される標的物質の含有量を示す定量評価指数Rt、及び測定結果の妥当性指数Rvを算出する制御部、が更に設けられることを特徴とする請求項1に記載の蛍光読取装置。
Rt={[前記試験領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}/{[前記対照領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}
Rv={[前記対照領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}/ [前記背景領域の出力値の統計量]}
【請求項3】
前記筐体の内部には、前記撮像部と電気的に接続され、前記撮像部が撮像した画像を記憶する記憶部、が更に設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光読取装置。
【請求項4】
蛍光イムノクロマト法の平面試験片における蛍光発色の状態を読み取るための蛍光読取装置と、診断装置とがネットワークを介して接続される診断システムであって、
前記平面試験片のメンブレンは、蛍光標識試薬を吸着する対照領域、標的物質を捕捉する捕捉物質が固定化されており蛍光標識試薬が標的物質と結合している場合にのみ蛍光標識試薬を吸着する試験領域、並びに前記対照領域及び前記試験領域を除く背景領域を有し、
前記平面試験片が収容された試験容器を挿入する挿入口を有し、全ての面が光を遮蔽する部材によって形成される筐体を備え、
前記筐体の内部には、
前記挿入口から挿入される前記試験容器に向けて励起光を発する発光部と、
前記平面試験片の前記試験領域及び前記対照領域を少なくとも含む領域を撮像する撮像部と、
が設けられ、
前記筐体の外部には、
前記撮像部が撮像した蛍光画像を表示する表示部、
が設けられることを特徴とする診断システム。
【請求項5】
前記診断装置は、前記撮像部から出力される出力値に基づいて、下記式で表される標的物質の含有量を示す定量評価指数Rt、及び測定結果の妥当性指数Rvを算出する制御部を備えることを特徴とする請求項4に記載の診断システム。
Rt={[前記試験領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}/{[前記対照領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}
Rv={[前記対照領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}/ [前記背景領域の出力値の統計量]}
【請求項6】
前記蛍光読取装置は、前記蛍光画像を前記診断装置に送信する通信部、を更に備え、
前記診断装置は、前記蛍光読取装置から前記蛍光画像を受信する通信部と、前記蛍光画像を表示する表示部と、前記蛍光画像を記憶する記憶部と、を備えることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の診断システム。
【請求項1】
蛍光イムノクロマト法の平面試験片における蛍光発色の状態を読み取るための蛍光読取装置であって、
前記平面試験片のメンブレンは、蛍光標識試薬を吸着する対照領域、標的物質を捕捉する捕捉物質が固定化されており蛍光標識試薬が標的物質と結合している場合にのみ蛍光標識試薬を吸着する試験領域、並びに前記対照領域及び前記試験領域を除く背景領域を有し、
前記平面試験片が収容された試験容器を挿入する挿入口を有し、全ての面が光を遮蔽する部材によって形成される筐体を備え、
前記筐体の内部には、
前記挿入口から挿入される前記試験容器に向けて励起光を発する発光部と、
前記平面試験片の前記試験領域及び前記対照領域を少なくとも含む領域を撮像する撮像部と、
が設けられ、
前記筐体の外部には、
前記撮像部が撮像した蛍光画像を表示する表示部、
が設けられることを特徴とする蛍光読取装置。
【請求項2】
前記筐体の内部には、前記撮像部から出力される出力値に基づいて、下記式で表される標的物質の含有量を示す定量評価指数Rt、及び測定結果の妥当性指数Rvを算出する制御部、が更に設けられることを特徴とする請求項1に記載の蛍光読取装置。
Rt={[前記試験領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}/{[前記対照領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}
Rv={[前記対照領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}/ [前記背景領域の出力値の統計量]}
【請求項3】
前記筐体の内部には、前記撮像部と電気的に接続され、前記撮像部が撮像した画像を記憶する記憶部、が更に設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光読取装置。
【請求項4】
蛍光イムノクロマト法の平面試験片における蛍光発色の状態を読み取るための蛍光読取装置と、診断装置とがネットワークを介して接続される診断システムであって、
前記平面試験片のメンブレンは、蛍光標識試薬を吸着する対照領域、標的物質を捕捉する捕捉物質が固定化されており蛍光標識試薬が標的物質と結合している場合にのみ蛍光標識試薬を吸着する試験領域、並びに前記対照領域及び前記試験領域を除く背景領域を有し、
前記平面試験片が収容された試験容器を挿入する挿入口を有し、全ての面が光を遮蔽する部材によって形成される筐体を備え、
前記筐体の内部には、
前記挿入口から挿入される前記試験容器に向けて励起光を発する発光部と、
前記平面試験片の前記試験領域及び前記対照領域を少なくとも含む領域を撮像する撮像部と、
が設けられ、
前記筐体の外部には、
前記撮像部が撮像した蛍光画像を表示する表示部、
が設けられることを特徴とする診断システム。
【請求項5】
前記診断装置は、前記撮像部から出力される出力値に基づいて、下記式で表される標的物質の含有量を示す定量評価指数Rt、及び測定結果の妥当性指数Rvを算出する制御部を備えることを特徴とする請求項4に記載の診断システム。
Rt={[前記試験領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}/{[前記対照領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}
Rv={[前記対照領域の出力値の統計量]−[前記背景領域の出力値の統計量]}/ [前記背景領域の出力値の統計量]}
【請求項6】
前記蛍光読取装置は、前記蛍光画像を前記診断装置に送信する通信部、を更に備え、
前記診断装置は、前記蛍光読取装置から前記蛍光画像を受信する通信部と、前記蛍光画像を表示する表示部と、前記蛍光画像を記憶する記憶部と、を備えることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の診断システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【公開番号】特開2011−196825(P2011−196825A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63959(P2010−63959)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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