説明

貯湯式暖房装置

【課題】暖房運転を行いながら同時に貯湯運転を行うことを可能とする。
【解決手段】湯水を貯湯する貯湯タンク1と、この貯湯タンク1内の湯水を加熱する加熱手段2と、貯湯タンク1と加熱手段2とを湯水が循環可能に接続する加熱循環回路3と、二次側の湯水を加熱するための熱交換器9と、加熱循環回路3の少なくとも一部を共有し熱交換器9と加熱手段2とを湯水が循環可能に接続する熱交循環回路10とを備え、加熱循環回路3と熱交循環回路10との分岐点に、貯湯タンク1に循環する量と熱交換器9に循環する量との分配比率を調整する分配比率調整手段11を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貯湯式暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のものには、ヒートポンプ加熱手段により深夜時間帯に貯湯タンク内の水を循環加熱して昼間での給湯に必要な分量を貯湯し、暖房を行う場合は、ヒートポンプ加熱手段で加熱した温水を貯湯タンクと並列関係にある暖房用熱交換器に直接循環させて暖房を行うようにしたものがあった(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−28414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この従来のものでは、ヒーポン循環回路と暖房用循環回路の分岐点に一方の循環回路を循環可能にする流路切換手段にて、貯湯タンクに貯湯する貯湯運転と暖房運転とを択一的に選択して運転するようにしていたので、貯湯の要求と暖房の要求が同時にあった場合に対応することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明は前記課題を解決するため、湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段と、前記貯湯タンクと前記加熱手段とを湯水が循環可能に接続する加熱循環回路と、二次側の湯水を加熱するための熱交換器と、前記加熱循環回路の少なくとも一部を共有し前記熱交換器と前記加熱手段とを湯水が循環可能に接続する熱交循環回路とを備え、前記加熱循環回路と前記熱交循環回路との分岐点に、前記貯湯タンクに循環する量と前記熱交換器に循環する量との分配比率を調整する分配比率調整手段を設けたものとした。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、暖房運転を行いながら貯湯運転も同時に行うことができ、利便性が大きく向上する。
また、分配比率を可変することで、貯湯能力と暖房能力との比率を可変することで、貯湯要求よりも暖房要求が大きい場合や、逆に暖房要求よりも貯湯要求が大きい場合にも対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の一実施形態について説明する。
1は湯水を貯湯する貯湯タンク、2は貯湯タンク1内の湯水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプ式加熱手段、3は前記貯湯タンク1の下部に接続されたヒーポン往き管4および前記貯湯タンク1の上部に接続されたヒーポン戻り管5よりなる加熱循環回路、6は前記加熱循環回路3に設けられて貯湯タンク1の湯水を循環させる加熱循環ポンプ、7は前記貯湯タンク1の下部に接続され貯湯タンク1に水を給水する入水管、8は前記貯湯タンク1の上部に接続され貯湯されている高温水を出湯する出湯管である。
【0007】
9は二次側に放熱部(図示せず)に循環する湯水を加熱するための熱交換器、10は前記熱交換器9と前記加熱手段2とを湯水が循環可能に接続する熱交循環回路である。この熱交循環回路10はその回路の少なくとも一部を前記加熱循環回路3と共有し、熱交循環回路10と加熱循環回路3との分岐点に、前記貯湯タンク1に循環する湯水の量と前記熱交換器9に循環する湯水の量の分配比率を調整する分配比率調整手段11が設けられているものである。この一実施形態では、前記加熱循環回路3の加熱手段2側の往き管と戻り管を前記熱交循環回路3が共有しているものである。
【0008】
この分配比率調整手段11は例えば図2に示すように、分岐流路11a、11bと、共通流路11cを有したボディ11dと、ボディ11d内に配された分配比率を調節するための弁体11eと、この弁体11eを駆動するステッピングモータからなる駆動手段11fより構成されている。そして、この一実施形態では分岐流路11a、11bをそれぞれ熱交循環回路10と加熱循環回路3の貯湯タンク1側に接続し、共通流路11cを加熱循環回路3の加熱手段2側に接続して構成されているものである。
【0009】
12は前記入水管7から分岐された給水管、13は前記出湯管8からの出湯と給水管12からの給水を混合して設定温度の湯を供給する給湯混合弁である。
【0010】
ここで、前記加熱手段2は、圧縮機14と凝縮器としての冷媒−水熱交換器15と電子膨張弁16と強制空冷式の蒸発器17とで構成され、この加熱手段2には冷媒として二酸化炭素が用いられて超臨界ヒートポンプサイクルを構成しているものである。
【0011】
18は、前記分配比率調整手段11の駆動を制御すると共に、前記給湯混合弁13の駆動を制御し、さらにヒートポンプ回路の構成要素と前記加熱循環ポンプ6の駆動を制御することで冷媒−水熱交換器19に流入してきた湯水を所望の沸き上げ温度まで沸き上げるようにしている制御手段であり、予めプログラミングされたマイクロコンピュータを主体として構成されている。
【0012】
ここで、貯湯タンク1内に加熱手段2で加熱された高温水を貯湯する貯湯運転について説明する。
制御手段18は深夜時刻になると電力単価が安価な深夜時間帯内で朝の所定時刻までに沸き上がるように貯湯運転を開始し、分配比率調整手段11を加熱手段2と貯湯タンク1だけが連通するように分配比率を調整し、加熱循環ポンプ6と加熱手段2を駆動および起動して、貯湯タンク1の下部から取り出した湯水を加熱手段2により沸き上げ温度まで沸き上げて貯湯タンク1の上部に積層させるように貯湯する。そして、所望の熱量を貯湯すると加熱循環ポンプ6および加熱手段2の停止して貯湯運転を終了する。
【0013】
次に、ユーザーが給湯栓を開いて給湯する時の給湯運転について説明する。
給湯栓が開かれると入水管7から貯湯タンク1内に給水されると同時に出湯管8から貯湯温水が出湯される。そして、この出湯管8からの湯水は給湯混合弁17に流入し、給水管12からの給水と混合されて所望の給湯設定温度で給湯栓から給湯される。
【0014】
次に、暖房運転について説明する。
暖房の要求が発生すると、前記制御手段18は暖房の二次側の運転を開始すると共に、分配比率調整手段11を熱交換器9と加熱循環回路3の加熱手段2側だけが連通するように分配比率を調整し、加熱循環ポンプ6と加熱手段2を駆動及び起動して、加熱手段2で沸き上げた高温水を熱交換器9に直接供給し、二次側と熱交換して温度低下した温水を再度加熱手段2に直接循環させて再度加熱して暖房を行う。なお、この場合の暖房運転を直暖運転と呼ぶ。
【0015】
そして、例えば暖房運転中に貯湯タンク1内の残湯量が少なくなり、暖房運転(直暖運転)の要求と貯湯運転の要求とが同時に発生した場合は、前記制御手段18は分配比率調整手段11を加熱手段2と熱交換器9および貯湯タンク1とが連通するようにその分配比率を調節する。例えば分配比率を50:50として、暖房運転を行いながら貯湯運転も同時に行うことができるものである。
【0016】
ここで、例えば現時点以降に使用する予定の貯湯量(学習値)に較べて現時点の貯湯量が大幅に下回って貯湯要求が多い場合あるいは初冬や春先等の外気温があまり低くなく暖房の負荷が小さい場合は、加熱手段2で沸き上げられる温水の分配比率を70:30(貯湯:暖房)として、暖房能力よりも貯湯能力を優先することが可能なものであり、逆に、現時点以降に使用する予定の貯湯量(学習値)に較べて現時点の貯湯量が少し下回っている貯湯要求が少ない場合あるいは真冬等の外気温が低く暖房の負荷が大きい場合は、加熱手段2で沸き上げられる温水の分配比率を30:70(貯湯:暖房)として、貯湯能力よりも暖房能力を優先することが可能で、その時その時の状況に合わせた最適な能力分配が可能で貯湯式暖房装置としての利便性が大幅に向上するものである。
【0017】
なお、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で様々な変形が可能なものである。例えば、図3においては、前記熱交循環回路10の往き側が貯湯タンク1の上部に連通され、戻り側だけを前記加熱循環回路3と共有する構成としている。そして、前記加熱循環回路3の戻り側(ヒーポン戻り管5)よりも下部に熱交循環回路10の往き側を連通している。また、例えば、図4においては、前記熱交循環回路10の戻り側が貯湯タンク1の下部に連通され、前記分配比率調整手段11を加熱循環回路3の戻り側に設け、熱交循環回路10の往き側だけを前記加熱循環回路3と共有する構成としている。また、加熱手段2はヒートポンプ式のものだけに限定されるものではなく、電熱ヒータで構成してもよいものである。
【0018】
また、前記分配比率調整手段11は、上記実施形態のものに限定されるものでなく、例えば従来からの流路切換手段を加熱循環回路3と熱交循環回路10とが共に連通する半開位置になるように制御するようにしてもよく、要は貯湯タンク1に循環する量と熱交換器9に循環する量との分配比率を調整することが可能なものであればよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成図。
【図2】同一実施形態の分配比率調整手段の一例の断面図。
【図3】本発明の他の一実施形態の概略構成図。
【図4】本発明の他の一実施形態の概略構成図。
【符号の説明】
【0020】
1 貯湯タンク
2 加熱手段
3 加熱循環回路
6 加熱循環ポンプ
9 熱交換器
10 熱交循環回路
11 分配比率調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段と、前記貯湯タンクと前記加熱手段とを湯水が循環可能に接続する加熱循環回路と、二次側の湯水を加熱するための熱交換器と、前記加熱循環回路の少なくとも一部を共有し前記熱交換器と前記加熱手段とを湯水が循環可能に接続する熱交循環回路とを備え、前記加熱循環回路と前記熱交循環回路との分岐点に、前記貯湯タンクに循環する量と前記熱交換器に循環する量との分配比率を調整する分配比率調整手段を設けたことを特徴とする貯湯式暖房装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate