説明

走行型茶葉摘採機の摘採装置の高さ設定装置

【課題】本発明は、簡単で、安価であり、ミリメートル単位で、摘採装置の高さを設定する装置を提供することを課題としている。
【解決手段】請求項1の発明では、「茶畝を挟んだ2本の走行装置を門型枠でつなぎ、門型枠下方に摘採装置を取付け、茶畝に沿って走行しながら茶葉を摘採するとともに、摘採装置に設けた指示針を上下のコマに当てて、高さを設定する走行型茶葉摘採機において、コマにストッパを設け、ストッパにバネを介してネジを挿入し、ネジの挿抜により高さを微調整する」という手段を用いる。ネジを挿抜することで、簡単に高さの微調整をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、茶畝に沿って機体を走行させながら自動的に茶葉を摘採する走行型茶葉摘採機の摘採装置を、茶樹の高さに合わせてセットする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
摘採装置の高さを上下させる機構としては、摘採装置を取付けた昇降体を機体の柱に沿って設けたネジ杆によって支え、ネジ杆を手動ハンドル、又は動力によって廻して上下させる方法や、昇降体をチェンで支え、手動ハンドル、或いは電動モータ、油圧シリンダ、油圧モータなどの動力で昇降体を上下させる方法が用いられている。手動の場合は、目測で高さを見ながら茶樹の高さにあわせてハンドルを廻しているが、高さを読み取る為に、ネジ杆の回転数、或いはチェンの上下をスプロケットの回転数で測り、これを数字で表示している。昇降体の高さを数字でセットし、動力で上下させる場合は、ネジ杆や、チェンの上下を回転数で測った数字が、セットした数字になったかどうか比較して、その数字に合わせるように制御している。また、特許文献1のように、リミットスイッチを設けて、摘採装置の高さを設定しているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−158910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、摘採装置の高さを設定する場合、コマにピンを設けて、リミット作動棒の孔にピンを差し込んでリミット作動棒にコマをセットしていたが、リミット作動棒の孔が等間隔で開いており、孔と孔の中間辺りにコマをセットしたいときに、セットできなかった。実際には、孔と孔は5ミリメートルピッチとなっており、摘採装置をあと2ミリメートル、またはあと3ミリメートル動かしたいときに、セットできなかった。1ミリメートル単位の高さの違いで、広い茶畑を摘採すると、大きな収量の差となる。摘採装置を5ミリメートル下げると古く硬い葉を刈り取ることになるので下げられず、その5ミリメートル上の孔にすると、収量が減ってしまい、農家には大きな痛手だった。また、他の高さを数字でセットして上下させるもの等は、ミリメートル単位で摘採装置の高さを設定することができた。本発明は、簡単で、安価であり、ミリメートル単位で、摘採装置の高さを設定する装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明では、「茶畝を挟んだ2本の走行装置を門型枠でつなぎ、門型枠下方に摘採装置を取付け、茶畝に沿って走行しながら茶葉を摘採するとともに、摘採装置に設けた指示針を上下のコマに当てて、高さを設定する走行型茶葉摘採機において、コマにストッパを設け、ストッパにバネを介してネジを挿入し、ネジの挿抜により高さを微調整する」という手段を用いる。ネジを挿抜することで、簡単に高さの微調整をすることができる。
【発明の効果】
【0006】
摘採作業においては、摘採装置の高さを茶樹に合わせることが非常に大切である。この発明により、簡単で安価な装置によって、摘採装置の高さをミリメートル単位で設定することができるとともに、今までよりミリメートル単位で摘採装置を下げることができるので、茶生葉の収量を増やすことができた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】走行型茶葉摘採機の側面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】図1の正面図。
【図4】前側の支柱11に摘採装置の高さ設定装置を取付けた詳細図。
【図5】図4を正面から見た図。
【図6】リミット作動棒とコマを組合わせた詳細図。
【図7】図6の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施例に基づいて説明する。図1は走行型茶葉摘採機の側面図、図2は平面図である。図3は正面図である。1、2は無端輸送帯による走行装置である。左右の走行装置は門型枠3でつないである。前部の支柱11、13には、支柱に沿って上下する昇降体5、7を設ける。後部の支柱12、14には、支柱に沿って上下する昇降体6、8を設ける。昇降体5、7には摘採装置9を取付ける。昇降体6、8には茶袋保持枠10を取り付ける。摘採装置9と茶袋保持枠10は、お互いに接続して一体となっている。
【0009】
前部の支柱11の前半分を包み込むような形で昇降体5が設けてあり、支柱11に沿って上下する。又、後部の支柱12の後半分を包み込むような形で昇降体6が設けてあり、支柱12に沿って上下する。前部の支柱11の上部には、スプロケット19、下部にはスプロケット20が設けてあり、チェン25が張り渡してある。チェン25の端は、昇降体5とつないである。昇降体5は摘採装置9を支えている。後部の支柱12の上部にはスプロケット24、下部にはスプロケット23が設けてあり、チェン27が張設してあり、昇降体6とつないである。昇降体6は、茶袋保持枠10を支えている。
【0010】
前部の左右の支柱11、13の上部には、それぞれ昇降チェンとつながった左右のスプロケット19、28が設けてあり、回転軸41でつながっている。回転軸41にはウォームホイルとウォームギヤを組合わせたギヤボックス42が設けてあり、上方のハンドル43とつなげてある。ハンドル43は運転席38から作業者37の手が届く位置に設ける。ハンドル43と反対側の下方にはモータ44を設ける。各支柱の下側のスプロケットは2ヶ重なってついている。左前柱下側のスプロケット20の外側にはスプロケット21が、左後柱下側のスプロケット23の外側にはスプロケット22が設けてあり、チェン26でつながっている。右前柱下側のスプロケット29の外側にはスプロケット30が、右後柱下側のスプロケット32の外側にはスプロケット31が設けてあり、チェン35(右下)でつながっている。
【0011】
図4は、図1の左前の支柱11附近の詳細図であり、摘採装置の高さ設定装置を取付けた場合を示す。図5は図4を正面から見た図である。46はリミット作動棒であり、左前の支柱11に沿って取り付ける。左前の支柱11には目盛50が記してある。リミット作動棒46はその上下をサポート47、48で上下方向に遊動自在に支えられている。リミット作動棒46の下端は、バネ49で支えられている。上端側にはリミット作動用の作動板51、52が取付けてあり、これに対応した位置でリミットスイッチ15、16が取付けてある。又、リミット作動棒46には上側のコマ17、下側のコマ18をセットできるようにしてある。昇降体5には、指示針45が取付けてあり、昇降体5と共に上下する。指示針45は柱11に記してある目盛50と符合して摘採装置9の高さを示すようになっている。指示針45は上下したとき、コマ17、又は18と接触するようにしてある。
【0012】
図6はリミット作動棒26へ下側のコマ18を組合わせた状態を示す断面図、図7は側面から見た図である。コマ18はリミット作動棒48を包み込むような形となっている。リミット作動棒46には、約2〜3ミリメートルの孔56が約5ミリメートルピッチで多数あけてある。コマ18側にはピン53が貫通しており、ピン53の先端を孔56に差し込む。つまみ54はピン53を孔56に差し込んだり、抜いたりする為のものである。ピン53は孔56から抜けないように、バネ55で押えている。コマ18にはストッパ57が出ており、指示針45が下がったとき、当るようになっている。上側のコマ17も同様の構造となっている。コマのストッパ57にはネジ孔があいてあり、ネジ孔にバネ59を介してネジ58を挿入する。ネジ58を挿抜することにより、指示針45が当たる高さをストッパ57より少し高く設定することができる。また、バネ59を介してネジ58を挿入することにより、走行型茶葉摘採機を運転して、振動しても、ネジ58が回転することがない。
【0013】
次に使用方法について説明する。走行型茶葉摘採機は、まず摘採装置9を茶樹の高さに合わせ、機体を茶畝に沿って前進させながら、摘採作業を行なう。茶畝の端まで行ったら、摘採装置9を茶樹に当らない高さまで上昇させ、枕地へ出て旋回し、隣の茶畝に移動するか、枕地がない場合は、同じ茶畝をバックし、出発点まで戻ったら隣の茶畝へ移動し、再び摘採装置9を茶樹の高さに戻して、摘採作業を行なう。摘採装置9はチェンでつながった昇降体5、6、7、8で支えられており、モータ44を動かすことにより上下する。摘採装置9の高さは昇降体5に取付けられた指示針45によって、支柱11に取付けてある目盛50によって分るようになっている。コマ17、18はリミット作動棒46に摺動自在にはめ込まれてある。つまみ54を持って、ピン53を引張ると、ピン53は孔56より引き抜かれ、コマ17、18は上下に摺動可能となる。
【0014】
摘採装置9を茶樹の高さにあわせたら、下側のコマ18を指示針45に当る位置に合わせ、ピン53を離すとバネ55によりピン53は孔56に挿入され、コマ18がリミット作動棒46に固定される。コマ18は5ミリメートルピッチでしか上下できないため、ネジ58を挿抜させて、高さを調整する。ネジ58の頭に目印61をつけておくことで、ネジ58が1周したことを確認でき、目盛60によりミリメートル単位の高さを数値で見ることができる。上側のコマ17は同様にピン53を抜き、下側のコマ18より約10センチメートル上にセットする。下側のコマ17で摘採時の茶樹の高さが決まるので、正確に茶樹に合わせる必要があるが、上側のコマ17は摘採装置9が茶樹に当らない位置であればどこでもよい。
【0015】
上記のようにセットしたら機体を前進させ、摘採作業を始める。茶畝の端まで前進して摘採が終わったら、摘採装置9の上昇スイッチを入れると、モータ44が廻り、摘採装置9は上昇し、指示針45が上側のコマ17に当ると、リミット作動棒46が上へ押し上げられ、作動板51が上端のリミットスイッチ15に当り、モータ44を停止させる。機体が隣の茶畝に移ったら、下降スイッチを入れ、モータ44を廻して摘採装置9を下降させる。指示針45が下側のコマ18に当ると、リミット作動棒46が下方へ押し下げられ、作動板52が下端のリミットスイッチ16に当り、モータ44を停止させる。バネ49はリミット作動棒46の重さで作動板52がリミットスイッチ16に当らないように支えている。このようにして、コマ17、18をセットすることにより、摘採装置9を任意の高さに設定することが出来る。
【符号の説明】
【0016】
1 走行装置(左)
2 走行装置(右)
3 門型枠
4 エンジン
5 昇降体(左前)
6 昇降体(左後)
7 昇降体(右前)
8 昇降体(右後)
9 摘採装置
10 茶袋保持枠
11 支柱(左前)
12 支柱(左後)
13 支柱(右前)
14 支柱(右後)
15 上端リミットスイッチ
16 下端リミットスイッチ
17 コマ(上側)
18 コマ(下側)
19 スプロケット(左前柱上)
20 スプロケット(左前柱下内)
21 スプロケット(左前柱下外)
22 スプロケット(左後柱下外)
23 スプロケット(左後柱下内)
24 スプロケット(左後柱上)
25 上下チェン(左前)
26 前後つなぎチェン(左)
27 上下チェン(左後)
28 スプロケット(右前柱上)
29 スプロケット(右前柱下内)
30 スプロケット(右前柱下外)
31 スプロケット(右後柱下外)
32 スプロケット(右後柱下内)
33 スプロケット(右後柱上)
34 上下チェン(右前)
35 前後つなぎチェン(右)
36 上下チェン(右後)
37 作業者
38 運転席
39 茶袋
40 茶畝
41 回転軸
42 ギヤボックス
43 ハンドル
44 モータ
45 指示針
46 リミット作動棒
47 サポート上
48 サポート下
49 バネ
50 目盛
51 作動板(上端用)
52 作動板(下端用)
53 ピン
54 つまみ
55 バネ
56 孔
57 ストッパ
58 ネジ
59 バネ
60 目盛
61 目印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶畝を挟んだ2本の走行装置を門型枠でつなぎ、門型枠下方に摘採装置を取付け、茶畝に沿って走行しながら茶葉を摘採するとともに、摘採装置に設けた指示針を上下のコマに当てて、高さを設定する走行型茶葉摘採機において、コマにストッパを設け、ストッパにバネを介してネジを挿入し、ネジの挿抜により高さを微調整することを特徴とする走行型茶葉摘採機の摘採装置の高さ設定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−24025(P2012−24025A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166051(P2010−166051)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000145116)株式会社寺田製作所 (90)
【Fターム(参考)】