説明

超音波加工方法

【課題】 短時間で加工レートを上昇させて、加工時間を短縮できる超音波加工方法を提供する。
【解決手段】 準備工程S1は、被加工物Wの被加工面Waの表面粗さRa0.5μm以上にする表面処理工程S12を有し、加工工程S2では、加工部10と被加工面Waとを対向させて、被加工面Waを加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波により振動する加工部と被加工物との間に砥粒及び液体を有する加工液を介在させて、被加工物を加工する超音波加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンや炭化珪素材料等の高脆性を有する材料を加工する方法として、超音波加工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。超音波加工方法では、加工部と被加工物との間に砥粒と液体とを有する加工液を介在させて、超音波により加工部を振動させる。加工部の振動によって、被加工物と対向する加工部の対向面に砥粒が押される。砥粒に被加工物に衝突して、被加工物が微小に粉砕される。微小な粉砕を繰り返すことにより、被加工物が加工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−142733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波加工方法を用いて、半導体電子デバイス等に用いられるシリコン及び炭化珪素材料を加工する場合、加工時間に対する加工深さである加工レートが上昇するまで時間がかかっていた。このため、特に、被加工物の被加工面が大きい場合には、加工時間が著しくかかるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、短時間で加工レートを上昇させて、加工時間を短縮できる超音波加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。本発明の特徴は、被加工物を準備する準備工程と、超音波により振動する加工部と被加工物とを対向させ、前記加工物と前記被加工物との間に砥粒及び液体を有する加工液を介在させて、前記被加工物を加工する加工工程と、を備えた超音波加工方法であって、前記準備工程は、前記被加工物の被加工面の表面粗さをRa0.5μm以上にする工程を有し、前記加工工程では、前記加工部と前記被加工面とを対向させて、前記被加工面を加工することを要旨とする。
【0007】
一般的に、半導体電子デバイスに用いられるシリコン及び炭化珪素材料は、研削等により表面を滑らかに仕上げていた(例えば、表面粗さがRa0.2μm以下にしていた)。このような表面が滑らかな被加工物では、表面粗さが小さい。このため、被加工面全体に均一に砥粒が衝突するため、被加工物が粉砕され始めるまでに時間がかかっていた。
【0008】
本発明の特徴によれば、被加工物の被加工面の表面粗さをRa0.5μm以上にする。これにより、被加工面には、微小な凸部が形成される。この凸部は、対向面に近いため、対向面に押された砥粒は、エネルギーが減少する前に、凸部に衝突する。そのため、被加工物の被加工面は、時間がかからずに粉砕され始める。加えて、表面粗さが大きいため、被加工面は、砥粒との衝突回数が増加する。これにより、被加工面が粉砕され始める時間が早くなるため、短時間に加工レートを上昇させることができ、加工時間を短縮することができる。
【0009】
また、前記加工工程では、前記被加工物と対向する前記加工部の対向面が2000mm以上の面積を有する前記加工部を用いて、前記被加工物を加工しても良い。
【0010】
また、前記被加工物は、炭化珪素材料であっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、短時間で加工レートを上昇させて、加工時間を短縮できる超音波加工方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本実施形態に係る超音波加工方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】図2は、本実施形態に係る超音波加工方法に用いられる装置の部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る超音波加工方法の一例について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)超音波加工方法、(2)作用効果、について説明する。
【0014】
以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
(1)超音波加工方法
本実施形態に係る超音波加工方法について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る超音波加工方法を説明するためのフローチャートである。図2は、本実施形態に係る超音波加工方法に用いられる装置の部分側面図である。
【0016】
図1に示されるように、本実施形態に係る超音波加工方法は、準備工程S1と加工工程S2とを備える。
【0017】
(1.1)準備工程S1
準備工程S1は、被加工物Wを準備する工程である。具体的には、図1に示されるように、準備工程S1は、被加工物準備工程S11と、表面処理工程S12とを有する。
【0018】
被加工物準備工程S11では、被加工物Wを準備する。被加工物Wは、超音波加工方法により、微小な貫通孔や凹部が形成されるものである。準備される被加工物Wは、脆性を有する材料が好ましい。特に、シリコンや炭化珪素材料等の高脆性を有する材料を準備することが好ましい。
【0019】
表面処理工程S12では、準備された被加工物Wの表面を処理する。具体的には、いわゆる梨地処理を行い、被加工物Wの被加工面Waの表面粗さをRa0.5μm以上にする。表面粗さをRa0.5μm以上にする方法として、例えば、粉体状の研磨剤を被加工物Wに衝突させるブラスト処理が挙げられる。これにより、被加工面Waに微小な凸部が形成される。
【0020】
以上の工程により、表面粗さがRa0.5μm以上の被加工面Waを有する被加工物Wが準備される。
【0021】
(1.2)加工工程S2
加工工程S2は、被加工物Wを加工する工程である。
【0022】
本実施形態に係る超音波加工装置において、超音波により振動する加工部は、面積が2000mm以上の対向面10aを有する。具体的には、対向面10aは、直径50mm以上の円形である。なお、円形とは、実質的に円形であればよく、必ずしも真円でなくても良い。対向面10aは、超音波振動する振動方向c側に位置する。
【0023】
まず、図2に示されるように、被加工面Waが加工部10の対向面10aと対向するように被加工物Wを載置する。具体的には、加工液30が入る加工槽50の内部に設けられた載置台60に被加工物Wを載置する。このとき、被加工面Waが加工部10の対向面10aと対向するように載置する。図2に示されるように、載置された被加工面Waを覆うように、砥粒及び液体を有する加工液30を入れておく。
【0024】
被加工物Wを載置した後、加工部10を被加工面Waに移動させる。超音波によって、加工部10を振動方向cに振動させて、被加工面Waに対向面10aを押し当てる。被加工面Waは、加工液30に覆われているため、加工部10と被加工面Waとの間には、加工液が介在する。これにより、振動する対向面10aに押された砥粒は、被加工面Waに形成された凸部に衝突する。凸部は、対向面10aに近いため、砥粒は、エネルギーが減少する前に、凸部に衝突する。そのため、被加工物Wの被加工面Waは、時間がかからずに粉砕され始める。加えて、表面粗さが大きいため、被加工面は、砥粒との衝突回数が増加する。凸部が粉砕されるまでの間に凸部の周囲にも砥粒は衝突するため、凸部が粉砕されるまでに、凸部の周囲は粉砕されている、若しくは、凸部の周囲は時間がかからずに簡単に粉砕される。その結果、凸部は凹部へと加工され、凸部の周囲が新たな凸部となって加工される、ことが繰り返され、加工が進行する。
【0025】
以上により、被加工物Wには、対向面10aの形状に対応した直径50mm以上の円形状の凹部が形成される。
【0026】
(2)作用効果
本実施形態に係る超音波加工方法によれば、準備工程S1は、被加工物Wの被加工面Waの表面粗さRa0.5μm以上にする表面処理工程S12を有し、加工工程S2では、加工部10と被加工面Waとを対向させて、被加工面Waを加工する。被加工面Waには、加工する前に予め凸部が形成される。この予め形成された凸部を選択的に粉砕し始めるため、表面処理工程S12を行わない場合に比べて、早期に被加工面Waが粉砕され始める。その後、予め形成された凸部は凹部へと加工され、凸部の周囲が新たな凸部となって加工される。新たな凸部が選択的に粉砕される。これが繰り返されることによって、加工が進行する。従って、加工工程S2の始めから加工レートを上昇させることができるため、加工時間を短縮することができる。
【0027】
本実施形態に係る超音波加工方法によれば、対向面10aが2000mm以上の面積を有する加工部10を用いて、被加工物Wを加工する。被加工面Waの面積が大きくなると、対向面10aと被加工面Waとの間に働く抵抗が大きくなる。このため、加工レートの上昇が著しく低下する。本実施形態では、表面粗さをRa0.5μm以上に被加工面Waを加工しているため、被加工面Waには、加工する前に予め凸部が形成されている。このため、対向面10aが2000mm以上の面積を有する加工部10を用いた場合であっても、加工工程S2の始めから加工レートを上昇させることができる。表面処理工程S12が行われない場合に比べると、加工時間をより短縮することができる。従って、面積の大きな対向面10aを有する加工部10を用いて、大きな面積の加工を行う場合、本発明は、特に有効である。
【0028】
本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。本発明はここでは記載していない様々な実施形態を含む。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0029】
10…加工部
10a…対向面
30…加工液
50…加工槽
60…載置台
W…被加工物
Wa…被加工面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を準備する準備工程と
超音波により振動する加工部と被加工物とを対向させ、前記加工物と前記被加工物との間に砥粒及び液体を有する加工液を介在させて、前記被加工物を加工する加工工程と、を備えた超音波加工方法であって、
前記準備工程は、前記被加工物の被加工面の表面粗さをRa0.5μm以上にする工程を有し、
前記加工工程では、前記加工部と前記被加工面とを対向させて、前記被加工面を加工する超音波加工方法。
【請求項2】
前記加工工程では、前記被加工物と対向する前記加工部の対向面が2000mm以上の面積を有する前記加工部を用いて、前記被加工物を加工する請求項1に記載の超音波加工方法。
【請求項3】
前記被加工物は、炭化珪素材料である請求項1又は2に記載の超音波加工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−161849(P2012−161849A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21817(P2011−21817)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】