説明

足場形成装置

【課題】屋根上の別の作業エリアに足場を形成する作業を、短時間でかつ簡単に、しかも、高い危険性を伴うことなく行えるようする。
【解決手段】足場形成装置1は、屋根A上に設置されるレール部材2、3を備えている。このレール部材2、3は、屋根Aに沿うように延びている。レール部材2、3上を移動する移動台4に足場板5が配設されるようになっている。移動台4をレール部材2、3上で移動させることにより、屋根A上の別の作業エリアに足場が形成される。これにより、屋根A上で足場板5を着脱したり、搬送する作業が不要になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根上に各種作業用の足場を形成するための足場形成装置である。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1に開示されているように、スレート屋根の修理、塗装、スレートの取り替え等といった各種作業を行う際には、屋根上に足場板を配列して、踏み抜き事故の防止を図るようにしている。特許文献1の足場板は、屋根上に単に置くだけのものである。
【0003】
特許文献1のように足場板を屋根上に単に置くようにした場合には、強い風が吹いた場合に飛ばされてしまう虞れあるため、特許文献2に開示されているように、スレート屋根に複数の管部材を設置しておき、この管部材に複数の足場板を固定することが行われている。
【特許文献1】特公平4−72947号公報
【特許文献2】特開2003−13573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、屋根上での各種作業の際、作業エリアが屋根の広範囲に亘ることが多く、作業者は、作業エリアが別の作業エリアに変更になる度に、足場板を移動させる必要ある。この場合、特許文献2のように屋根に設置した管部材に足場板を固定するようにしていると、足場板を管部材から外し、さらに、管部材を屋根から外した後に、作業者がこれら管部材及び足場板を屋根の別の作業エリアまで搬送して、再び、管部材を屋根に固定し、足場板を管部材に固定するという作業が必要になる。屋根上で管部材及び足場板を着脱したり、搬送する作業は、煩雑で時間がかかり、しかも、危険性が高い作業であるため、できるたけ少なくしたいという要求がある。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、足場板を屋根から外すことなく移動できるようにすることで、屋根上の別の作業エリアに足場を形成する作業を、短時間でかつ簡単に、しかも、高い危険性を伴うことなく行えるようすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、屋根上に設置したレール部材を用いて足場板を移動させるようにした。
【0007】
具体的には、第1の発明では、屋根上に足場を形成するための足場形成装置であって、屋根上に設置され、該屋根に沿うように延びるレール部材と、上記レール部材上を移動する移動体と、上記移動体に配設される足場板とを備えている構成とする。
【0008】
この構成によれば、移動体に配設された足場板により、屋根上の作業エリアに対応するように足場を形成することが可能になる。屋根上で作業エリアを変更する場合には、移動体をレール部材上で移動させることにより、変更後の作業エリアに対応するように足場板を配置して足場を形成することが可能になる。また、足場板が強風で飛ばされ難い。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、レール部材には、多数の歯が長手方向に並んで設けられ、移動体には、上記歯に係合する歯車と、該歯車を駆動する駆動機構とが設けられている構成とする。
【0010】
この構成によれば、移動体の駆動機構を作動させることにより、歯車がレール部材の歯に係合しながら回転する。これにより、移動体がレール部材上を移動する。
【0011】
第3の発明では、第2の発明において、駆動機構は、歯車が取り付けられる歯車軸と、作業者が回転操作するハンドルと、該ハンドルが取り付けられるハンドル軸と、該ハンドル軸の回転力を上記歯車軸に伝達する伝達部材とを備えている構成とする。
【0012】
この構成によれば、作業者がハンドルを回転させると、ハンドル軸の回転力が伝達部材により歯車軸に伝達されて歯車が回転し、これにより、移動体がレール部材上を移動する。従って、作業者によるハンドルの回転速度及び回転量によって、移動体の移動速度及び移動量を任意に調節することが可能になる。
【0013】
第4の発明では、第2または3の発明において、移動体には、歯車の回転を阻止する着脱式のロック部材が設けられている構成とする。
【0014】
この構成によれば、ロック部材を移動体に取り付けると、歯車の回転が阻止されて移動体が動かないように固定される。一方、ロック部材を移動体から取り外すと、歯車の回転が許容されて移動体が移動可能になる。
【0015】
第5の発明では、第1から4のいずれか1つの発明において、移動体には、作業者の安全帯が取り付けられる安全帯取付部が設けられている構成とする。
【0016】
この構成によれば、足場板上で作業している作業者の転倒事故や転落事故が防止される。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、レール部材を屋根上に設置し、このレール部材上を移動する移動体に足場板を配設したので、移動体をレール部材上で移動させるだけで、屋根上の別の作業エリアに足場を形成することができる。これにより、屋根上の作業エリアを変更する場合に、屋根上において足場板を着脱する作業や、外した足場板を作業者が搬送する作業が不要になり、よって、別の作業エリアに足場を形成する作業を、短時間でかつ簡単に、しかも高い危険性を伴うことなく行うことができる。
【0018】
第2の発明によれば、レール部材に多数の歯を設け、移動体に、歯に係合する歯車と歯車を駆動する駆動機構とを設けたので、駆動機構を作動させることにより、足場板をレール部材上で簡単に移動させることができる。
【0019】
第3の発明によれば、作業者がハンドルを回転させることによって足場板を移動させることができるので、作業者が周囲の状況を見ながら足場板の移動速度及び移動量を調節することができ、移動体を移動させる際の安全性を高めることができる。
【0020】
第4の発明によれば、歯車の回転を阻止する着脱式のロック部材を移動体に設けたので、足場板を必要時にのみ移動させて、各種作業を行っている間は動かないようにすることができ、作業者の安全性をより一層高めることができる。
【0021】
第5の発明によれば、作業者の安全帯を移動体に取り付けることができるので、作業者の転倒事故や転落事故を防止でき、作業者の安全性をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る足場形成装置1の使用状態を示すものである。この足場形成装置1は、工場、倉庫、駅のプラットフォームの上屋等のスレート屋根A上に、各種作業用の足場を形成するためのものである。尚、スレート屋根Aは、母屋を構成する鉄骨構造体の骨材と、骨材の上部に配置されるスレートSと、スレートSを骨材に取り付けるためのボルト及びナットとを備えており、全体として傾斜している。骨材は、所定の間隔をあけて複数配置されている。ボルトの基部には、骨材に引っ掛かる鈎部が形成されている。ボルトは、この鈎部からスレートSを貫通する方向に真っ直ぐに延びており、先端部がスレートSを貫通してスレートSの上面から突出している。ボルトの先端部には、ナットが螺合しており、このナットによってスレートが骨材に固定されるようになっている。また、スレート屋根A上における各種作業としては、例えば、スレート屋根Aの修理、塗装、スレートSの取り替え等が挙げられる。
【0024】
足場形成装置1は、スレート屋根Aに設置される第1及び第2レール部材2、3と、第1及び第2レール部材2、3上を移動する移動台(移動体)4と、移動台4に配設される複数の足場板5、5、…とで構成されている。第1及び第2レール部材2、3は、スレート屋根Aに沿うように、スレート屋根Aの波形状が連続する方向(水平方向)に延びていて、スレートSの上面に固定されるようになっている。図2及び図3にも示すように、第1及び第2レール部材2、3の長さは、移動台4の幅よりも十分に長く設定されている。
【0025】
第1及び第2レール部材2、3は、スレート屋根A上において波形状が連続する方向と直交する方向に間隔をあけて配置され、互いに略平行に延びている。図4及び図6に示すように、第1及び第2レール部材2、3の形状は、角筒状とされ、その断面形状は、略正方形とされている。第1レール部材2は、第2レール部材3よりもスレート屋根Aの上側に位置している。
【0026】
図2及び図3に示すように、第1レール部材2の両端部近傍及び略中央部には、スレート屋根Aに対し固定台10を介して固定される固定部11がそれぞれ設けられている。これら固定部11、11、11は、互いに同じ構造であるため、そのうちの1つについて詳細に説明する。図5に示すように、固定部11は、第1レール部材2の長手方向に離れた2箇所の下面にそれぞれ固定された断面L字状のL字状部材12、12と、これらL字状部部材12、12を連結する2つの連結部材13、13(図2参照)とで構成されている。L字状部材12、12は、第1レール部材2と略直交する方向に延びている。連結部材13、13は、第1レール部材2と略平行に延びており、L字状部材12、12の長手方向両端部にそれぞれ配置されている。尚、図3及び図5の符号15は、詳細は後述するが移動台4が第1レール部材2から脱落するのを阻止するためのストッパであり、第1レール部材2の長手方向両端部に設けられている。上記一方のL字状部材12は、ストッパ15に固定されるようになっている。
【0027】
固定台10は、図2及び図5に示すように、スレート屋根Aの上面に載置される一対の載置部材16、16と、これら載置部材16、16を連結する一対の棒材17、17とを備えている。載置部材16、16は、第1レール部材2の長手方向と直交する方向に間隔をあけて配置されている。各載置部材16は、スレートSの波形状の谷部分に嵌るように形成され、スレート屋根Aにおける骨材の直上方に位置するようになっている。
【0028】
載置部材16には、スレートSの上面から突出するボルトの先端部が挿通する挿通孔(図示せず)が形成されている。この挿通孔にボルトの先端部を挿通させた状態で、ボルトにナットが螺合されるようになっている。これにより、載置部材16が、スレート屋根Aの骨材に固定されることになる。
【0029】
棒材17は、載置部材16の離間方向に延びており、図5に示すように、載置部材16の上部に固定されたクランプ18によって載置部材16に連結されている。これら棒材17は、第1レール部材2の固定部11の下方に配置され、クランプ19によって固定部11の連結部材13に連結されている。尚、第2レール部材3にも、第1レール部材2と同様に固定台10によってスレート屋根Aに固定される固定部11が設けられるとともに、移動台4の脱落防止用のストッパ(図示せず)が設けられている。
【0030】
第1レール部材2の上面には、第1レール部材2の長手方向に並ぶ多数の歯20aを有するラック20が設けられている。このラック20は、第1レール部材2の上面においてレール部材2の幅方向中心部よりも第2レール部材3に近い側に位置し、第1レール部材2の両端部近傍に亘って設けられている。また、図1及び図2に示すように、第2レール部材3の上面にも、同様に多数の歯を有するラック21が設けられている。この第2レール部材3のラック21は、第2レール部材3の上面において幅方向中心部よりも第1レール部材2に近い側に位置している。
【0031】
移動台4は、図2にも示すように、足場板5、5、…が固定される台本体40と、第1及び第2レール部材2、3に接する複数のローラ41、42、43(図6に示す)と、ラック20、21に係合する歯車45、45と、歯車45、45を駆動する駆動機構47とを備えている。
【0032】
台本体40は、図1に示すように、第1レール部材2近傍から第2レール部材3近傍まで延びる3本の第1鋼管50a、50b、50cと、これら第1鋼管50a、50b、50cを連結する4本の第2鋼管52、52、…とを備えている。第1鋼管50a、50b、50cは、第1レール部材2と第2レール部材3との間において、第1レール部材2の長手方向に略等間隔に配置されている。第2鋼管52、52、…は、第1レール部材2の長手方向に延びており、第1鋼管50a、50b、50cの長手方向に間隔をあけて配置されている。
【0033】
台本体40の中央部に位置する第1鋼管50bの両端部には、上方へ延びる縦管部55と、下方へ延びる縦板部56とが設けられている。これら縦管部55及び縦板部56は、第1レール部材2の第2レール部材3側の側面(内側面)と略平行に延びている。縦管部55の上下方向中間部には、第1レール部材2の上面と略平行に延びる横管部57が固定されている。この横管部57は、ラック20よりも上方に位置し、第1レール部材2を横切るようにして第1レール部材2の内側面と反対側の側面(外側面)よりも外方へ向けて突出している。横管部57の先端側には、下方へ延びる外側管部58がクランプ59によって連結されている。
【0034】
縦板部56の下端部には、側方ローラー41が取り付けられている。この側方ローラー41は、回転軸が第1レール部材2の内側面と略平行に上下方向に延びており、第1レール部材2の内側面に接触して転動するようになっている。横管部57には、上ローラー42が取り付けられている。この上ローラー42は、回転軸が第1レール部材2の幅方向に延びており、第1レール部材2の上面におけるラック20の側方に接触して転動するようになっている。外側管部58の下端部には、下ローラー43が取り付けられている。この下ローラー43は、回転軸が上ローラー42と同じ方向に延びており、第1レール部材2の下面に接触して転動するようになっている。つまり、第1レール部材2には、ローラー41、42、43が3方向から接触するようになっている。
【0035】
図5に示すように、台本体40の両側部に位置する第1鋼管50a、50cの両端部にも、第1鋼管50bと同様に、縦管部55、縦板部56、横管部57及び外側管部58が設けられており、縦板部56に側方ローラー41が取り付けられ、また、横管部57に上ローラー42が取り付けられ、また、外側管部58に下ローラー43が取り付けられている。第1鋼管50a、50cの下ローラー43が、第1レール部材2及び第2レール部材3のストッパ15に当接するようになっている。また、3つの外側管部58、58、58は、それらの下端部同士が連結部60によって互いに連結されている。
【0036】
台本体40の中央部に位置する第1鋼管50bには、手すり62が設けられている。すなわち、第1鋼管50bの縦管部55は上方へ延長され、その上側部分が手すり62の支柱63を構成しており、さらに、第1鋼管50bの長手方向中間部には、上方へ延びる複数の支柱63、63、…が長手方向に間隔をあけて設けられている。図4にも示すように、支柱63、63、…の高さは、第1鋼管50bの両端部に近いものが最も低くなるように設定されている。手すり62は、支柱63の上端部を連結するように延びており、従って、手すり62の高さは、第1鋼管50bの両端部に近づくほど低くなっている。手すり62及び支柱63は、作業者Pの安全帯が取り付けられる安全帯取付部である。
【0037】
図5に示すように、支柱63と第2鋼管52とは、リブ65によって連結されている。第1鋼管50bの長手方向中央寄りに位置する支柱63に連なるリブ65は、支柱63の上部側まで延長された延長部65a(図7及び図8に示す)を有している。また、リブ65の下部には、切欠部65bが形成されている。切欠部65b内には、第1鋼管50bと略平行に延びる回転軸(歯車軸)67が配置されるようになっている。この回転軸67は、リブ65に固定される軸受部材68を介してリブ65に対し回転可能に支持されている。
【0038】
回転軸67は、その中間部分において3つの軸構成部67a、67b、67cに分割されている。これら軸構成部67a、67b、67cは、ユニバーサルジョイント(自在継手)69、69を介して連結されている。
【0039】
図5に示すように、第1レール部材2側に位置する軸構成部67aの外端部は、リブ65から突出して第1レール部材2のラック20の直上方に位置している。軸構成部67aの外端部には、歯車45がラック20の歯20aに噛み合って係合するように配置され、回転一体に固定されている。歯車45は、図6に示すように、回転軸67の軸線方向に離れて配置される2枚の円盤45a、45aと、これら円盤45a、45aの間に配置され、回転軸方向に延びる多数の円柱部材45b、45b、…とを備えている。円柱部材45b、45b、…の間隔はラック20の歯20aの間隔に対応しており、円柱部材45bがラック20の歯20aに係合するようになっている。
【0040】
また、第2レール部材3側に位置する軸構成部67cの外端部も、リブ65から突出して第2レール部材3のラック21の直上方に位置している。この軸構成部67cの外端部にも、ラック21の歯に噛み合って係合する歯車45が回転一体に固定されている(図2参照)。
【0041】
図7及び図8に示すように、第1レール部材2側に位置する軸構成部67aの内端部には、従動スプロケット70が回転一体に固定されている。この従動スプロケット70は、支柱63の近傍に位置付けられている。リブ65の延長部65aの上部近傍には、回転軸67と略平行に延びる駆動軸(ハンドル軸)71が軸受部材72を介して回転可能に取り付けられている。駆動軸71の両端部は、延長部65aから突出しており、従動スプロケット70に対応する端部には、駆動スプロケット73が回転一体に固定され、反対側の端部には、駆動軸71を回転させるためのハンドル74が固定されている。また、駆動スプロケット73と従動スプロケット70とには、ローラーチェーン(伝達部材)75が巻き掛けられている。延長部65aには、ローラーチェーン75、駆動スプロケット73及び従動スプロケット70を覆うように形成されたカバー部材76が取り付けられるようになっている。
【0042】
また、軸構成部67aには、板状の回転部材78が回転一体に固定されている。この回転部材78には、回転軸67方向に貫通する複数の貫通孔78aが周方向に間隔をあけて形成されている。一方、リブ65には、貫通孔78aに対応するように筒状のブロック材79が固定されている。ブロック材79の中心孔(図示せず)は、回転部材78の各貫通孔78aと一致するようになっている。回転部材78には、着脱式のロックピン80が設けられている。回転部材78の各貫通孔78aとブロック材79の中心孔とを一致させた状態で、貫通孔78a及び中心孔にロックピン80を挿入することで、回転軸67がロックされて歯車45、45の回転が阻止されるようになっている。
【0043】
足場板5は、一般の作業現場で用いられている矩形状のものであり、図1に示すように、隣り合う第1鋼管0a、50bの間と、50b、50cの間とにそれぞれ配置されている。図7に示すように、足場板5の長手方向両端部には、フック5aが設けられている。これらフック5aが第2鋼管52に上方から係合することで、足場板5が移動台4に固定されるようになっている。
【0044】
次に、上記のように構成された足場形成装置1を使用する場合について説明する。足場形成装置1をスレート屋根A上に設置する場合には、足場板5を移動台4から取り外しておくとともに、各クランプ18、19、59で連結されている部材を外して分解した状態で、スレート屋根A上に持って上がり、組み立てる。完成後、作業者P(図1にのみ示す)が作業を行う際には、ロックピン80を回転部材78の貫通孔78a及びブロック材79の中心孔に挿入して歯車45、45の回転を阻止しておく。これにより、作業中に移動台4が不意に動くことはない。また、作業者Pは、安全帯を手すり62や支柱63に取り付けておく。これにより、足場板5上で作業している作業者Pの転倒事故や転落事故が防止される。また、手すり62の高さが長手方向両側で低くなっているので、作業者Pが、手すり62を跨いで足場板5上を容易に移動することが可能である。尚、足場板5には、各種作業道具や機械を載置することも可能である。これら道具や機械は、手すり62や支柱63に固定しておくことで落下防止を図ることができる。
【0045】
また、移動台4、足場板5及び作業者Pの重量は、固定台10を介してスレート屋根Aの骨材に作用するようになっているので、スレートSの割れが防止される。
【0046】
スレート屋根A上で作業エリアが変更になった場合には、ロックピン80を回転部材78の貫通孔78a及びブロック材79の中心孔から抜く。そして、作業者がハンドル74を回転させると、駆動軸71の駆動スプロケット73の回転力がローラーチェーン75を介して従動スプロケット70から回転軸67に伝わって歯車45、45がラック20、21に噛み合いながら回転する。これにより、移動台4が第1レール部材2及び第2レール部材3上を移動し、移動台4上の道具や機械も次の作業エリアまで同時に運ばれる。足場板5が次の作業エリア近傍になったら、ハンドル74の回転を停止させることで、移動台4が停止する。そして、ロックピン80を回転部材78の貫通孔78a及びブロック材79の中心孔に挿入する。尚、ハンドル74の回転方向、回転量及び回転速度によって、移動台4の移動方向、移動量及び移動速度を設定することが可能となっている。
【0047】
また、移動台4の側方ローラー41、上ローラー42及び下ローラ43が、第1レール部材2と第2レール部材3の各々に3方向から接触するようになっているので、移動台4は移動時において安定するとともに、強風が吹いた場合にも飛ばされ難い。
【0048】
以上説明したように、この実施形態に係る足場形成装置1によれば、第1レール部材2及び第2レール部材3をスレート屋根A上に設置し、これらレール部材2、3上を移動する移動台4に足場板5を配設したので、レール部材2、3上の移動台4を移動させるだけで、スレート屋根A上の別の作業エリアに足場を形成することができる。これにより、スレート屋根A上の作業エリアを変更する場合に、スレート屋根A上において足場板5を着脱する作業や、外した足場板5を作業者Pが搬送する作業が不要になり、よって、別の作業エリアに足場を形成する作業を、短時間でかつ簡単に、しかも高い危険性を伴うことなく行うことができる。
【0049】
また、第1レール部材2及び第2レール部材3に多数の歯20aを有するラック20、21設け、移動台4に、歯20aに係合する歯車45、45を設けて該歯車45、45を回転駆動するようにしたので、足場板5をレール部材2、3上で簡単に移動させることができる。
【0050】
また、作業者Pがハンドル74を回転させることによって足場板5を移動させることができるので、作業者Pが周囲の状況を見ながら足場板5の移動量や移動速度、移動方向を調節することができ、安全性を高めることができる。
【0051】
また、着脱式のロックピン80を移動台4に設けたので、足場板5を必要時にのみ移動させて、各種作業を行っている間は動かないようにすることができ、作業者Pの安全性をより一層高めることができる。
【0052】
また、作業者Pの安全帯を移動台4に取り付けることができるので、作業者Pの転倒事故や転落事故を防止でき、作業者Pの安全性をより一層高めることができる。
【0053】
尚、上記実施形態では、ロックピン80を回転部材78の貫通孔78a及びブロック材79の中心孔に挿入することで、歯車45、45の回転を阻止するようにしたが、これに限らず、歯車45、45とラック20、21との間にロック部材を噛ませることによって歯車の回転を阻止するようにしてもよいし、ハンドル74を手すり62や支柱63に固定するロック部材によって歯車45、45の回転を阻止するようにしてもよい。
【0054】
また、駆動軸71に駆動プーリを設け、回転軸67に従動プーリを設け、これらプーリにベルト(伝達部材)を巻き掛けるようにしてもよい。また、駆動軸71と回転軸67とは、歯車(伝達部材)の噛み合わせによって回転力を伝達するようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、歯車45、45を作業者Pが回転させるようにしているが、これに限らず、モーター等の動力機械を用いて回転させるようにしてもよい。
【0056】
また、本発明は、スレート屋根A以外の屋根上に足場を形成する場合にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、本発明に係る足場形成装置は、例えば、スレート屋根上に足場を形成して各種作業を行う場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】スレート屋根に設置された足場形成装置の使用状態を説明する斜視図である。
【図2】足場形成装置の平面図である。
【図3】足場形成装置を第1レール部材側から見た正面図である。
【図4】足場形成装置の側面図である。
【図5】足場形成装置の第1レール部材側を拡大して示す斜視図である。
【図6】図3におけるVI−VI線断面図である。
【図7】足場形成装置の駆動機構近傍を拡大して示す斜視図である。
【図8】図2におけるVIII−VIII線断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 足場形成装置
2 第1レール部材
3 第2レール部材
4 移動台(移動体)
5 足場板
20 ラック
20a 歯
45 歯車
47 駆動機構
62 手すり(安全帯取付部)
63 支柱(安全帯取付部)
67 回転軸(歯車軸)
71 駆動軸(ハンドル軸)
74 ハンドル
75 ローラーチェーン(伝達部材)
80 ロックピン(ロック部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根上に足場を形成するための足場形成装置であって、
屋根上に設置され、該屋根に沿うように延びるレール部材と、
上記レール部材上を移動する移動体と、
上記移動体に配設される足場板とを備えていることを特徴とする足場形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の足場形成装置において、
レール部材には、多数の歯が長手方向に並んで設けられ、
移動体には、上記歯に係合する歯車と、該歯車を駆動する駆動機構とが設けられていることを特徴とする足場形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の足場形成装置において、
駆動機構は、歯車が取り付けられる歯車軸と、作業者が回転操作するハンドルと、該ハンドルが取り付けられるハンドル軸と、該ハンドル軸の回転力を上記歯車軸に伝達する伝達部材とを備えていることを特徴とする足場形成装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の足場形成装置において、
移動体には、歯車の回転を阻止する着脱式のロック部材が設けられていることを特徴とする足場形成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の足場形成装置において、
移動体には、作業者の安全帯が取り付けられる安全帯取付部が設けられていることを特徴とする足場形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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