説明

距離センサ信号のエラー修正方法

本発明は、電磁干渉によって生じた、誘導性距離センサまたは角度センサの信号のエラーを修正するための方法および装置に関する。電磁干渉を生じさせる少なくとも1つの構成部分のアクティブ化が既知であり、かつここから結果として生じる、誘導性距離センサまたは角度センサのセンサ信号におけるエラーが既知であるときに、測定されたセンサ信号をこのエラー分だけ修正することを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導性距離センサの信号のエラー修正方法およびエラー修正装置に関する。自動車内の距離測定にはしばしば誘導性距離センサが使用される。なぜなら、誘導性距離センサは、温度変化、振動要求および汚れ等の周辺影響に対して頑強であることの他に、比較的廉価に製造可能であるからである。
【0002】
このような誘導距離センサの近くで電磁的構成素子、例えば電磁弁が使用される場合、電磁弁の操作時にしばしばセンサはノイズとなる影響を受けてしまう。
【0003】
妨害となるこのようなセンサの測定エラーを最小化するために、種々の方法が存在する。
【0004】
従来技術ではしばしば、センサは金属製の遮蔽ケースによって取り囲まれる。これによって、外部の交番電磁界が遮蔽されるないしは、受容可能な程度に低減される。しかしこのような遮蔽ケースは、センサを大きくし、かつ高価にしてしまう。センサはコイルおよび、これを取り囲む、射出成形されたプラスチックカバーから成り、従って自身の重量は僅かであるのに、遮蔽ケースは比較的厚く、ひいては重い鋼外被から製造される。
【0005】
このような遮蔽ケースはしばしば加工しにくく、ひいては、付加的に高価にしてしまう材料から製造される。
【0006】
特許出願DE10051048A1号には、センサの測定時点が常に電磁弁の駆動制御時間外にあるように、センサ値の読み出し時点を電磁弁の駆動制御時間と合うように調整することによって、誘導性センサに与えられる外部磁界のこのような妨害影響を阻止する方法が記載されている。
【0007】
しかしこれは、充分に頻繁な、かつ時間的に相応に長い電磁弁駆動制御休止時間がある場合にのみ可能である。この休止時間内にセンサ値検出が行われる。センサ値変化が迅速な場合には、動的な追従速度に関連した以下のことが欠点となる。
【0008】
誘導性距離センサへの電磁界による影響の他に、電界による妨害も生じ得ること。
【0009】
ドイツ連邦共和国特許出願第4318263号は、複数の設定位置への温度補償された制御のための方法および回路を記載している。この特許文献の中心となる考えは、正確な位置調整のために、使用されている距離センサを補償するのではなく、これとは逆に、達せられるべき目標位置のために予期されるセンサ値を各支配温度に従って見積もり、この値に位置付けるというものである。
【0010】
本発明の課題は、高価な遮蔽ケースを省き、同時に場合によって起こり得る電磁弁操作に依存しないで、恒久的なセンサ信号値を検出し、出力することができる方法および装置を構成することである。ここでは、センサ評価によって上述した妨害干渉が除去される、または少なくとも許容可能な程度に低減される。
【0011】
上述の課題は、請求項1の特徴部分を有する方法および請求項13の特徴部分を有する装置によって解決される。有利な構成は従属請求項に記載されている。
【0012】
電磁干渉によって生じた、誘導性距離センサまたは角度センサの信号エラーを修正する本発明の方法では、電磁干渉を生じさせる少なくとも1つの構成部分のアクティブ化が知られており、かつここから結果として生じる、誘導性距離センサまたは角度センサのセンサ信号におけるエラーが知られているときに、測定されたセンサ信号がこのエラー分だけ修正される。これは従来技術と比較して次のような利点を与える。すなわち、迅速な距離変化時に高い追従速度によって必要とされるセンサ信号をいつでも使用することができ、しかも、高価かつ場所を必要とする遮蔽ケースを使用する必要はないという利点を与える。
【0013】
本発明のこの利点は、電磁干渉を起こす構成部分が電磁弁の場合には特に有利に効果を発揮する。
【0014】
本発明の有利な実施形態では、マイクロコントローラはセンサも少なくとも1つの構成部分も制御する。これによって、電子コンポーネントおよび接続線路を省くことができる。これに加えて別の形態ではマイクロコントローラは、少なくとも1つの構成部分を制御するのではなく、その駆動制御信号を検出し、これを評価する。
【0015】
有利にはエラー修正値は時間に依存した特性曲線として格納される。このようにして、充分な精度で高い確実性で、再び生じ得るシステムエラーが修正される。
【0016】
修正値は有利には、構成部分の駆動制御電圧のレベルに依存する。なぜなら構成部分の高い駆動制御電圧は通常は高い妨害領域放出、ひいては高いエラーにつながるからである。この構成部分が電磁弁として構成されている場合には、駆動制御電圧の高さは直接的に磁束の大きさに関係し、駆動制御時間が同じ場合、すなわち磁束の全体的な振幅が同じ速さで変化する場合、流れの変化も駆動制御電圧に比例する。流れの変化の大きさは、同じように誘導的に結合されるエラー信号のレベルを定める。
【0017】
本発明の択一的な有利な構成ではこれに加えて、修正値特性曲線が適応算出される(adaptiv ermittelt)。エラーにおけるシステム的なずれはエラー修正の適応整合によってより良好に追従修正される。
【0018】
有利には、距離ないし角度の最終ポジションでは、構成部分のアクティブ化の間の、エラーを生じさせるセンサ信号の変化は新たな修正値として収容され、格納される。変化しない信号は、エラーのない状態において、距離ないし角度の最終ポジションに相当する。これにもかかわらず変更が収容されると、これはエラーを生じさせる。このようにして、構成部分の駆動制御によって生じるセンサ信号のエラーが容易に特定される。
【0019】
構成部分のアクティブ化の間に受容されたセンサ信号の偏差は有利には緩衝記憶され、構成部分のアクティブ化の前および後にセンサ距離信号が変わらなかった場合には、新たな補正値特性曲線として引き継がれる。
【0020】
新たに収容された修正値はこれに加えて、自身の格納から、新たな補正値特性曲線としてローパスフィルタリングされる。これによって迅速な再生不可能なエラーおよび静止している異常値が除去される。
【0021】
本発明の有利な実施形態では、粗アライメント電磁弁および微細アライメント電磁弁の駆動制御用のエラー修正値は別個に求められる。
【0022】
有利には、複数の構成素子センサユニットの場合、および比較可能な影響の場合に、1つの構成部分センサユニットに対して求められた修正値が、残りの構成部分センサユニットへ伝送される。これによって計算時間および格納場所が低減される。
【0023】
本発明の有利な構成ではこの構成部分は、クラッチ調整部を調節するために用いられる。この場合、この構成部分は電磁弁であり得る。この電磁弁は、クラッチ調整部のニューマチック式操作を制御する。
【0024】
本発明の実施例を図示する。
【0025】
図1は、電子式距離信号処理を伴う誘導性距離センサの概略図であり、
図2は、エラーを有する距離センサ信号、時間的な修正値特性曲線、電磁弁を駆動制御するための電圧経過特性並びにこの電磁弁のデジタル駆動制御信号のダイヤグラムである。
【0026】
図1は、電子式距離信号処理を伴う誘導性距離センサを示している。このセンサの空間的近くで、電磁弁が動かされている。電磁弁の磁石の切り換え時に生じる電磁干渉領域は、誘導性距離センサ内で誘導電圧を生じさせる。この誘導電圧は誘導性距離センサの測定信号内でエラー信号を生じさせる原因になる。入力値として、処理されるセンサ信号の他に電磁弁の駆動制御信号も入力されるマイクロコントローラは、電磁弁駆動制御時間を識別し、電磁弁駆動制御時にエラー修正を行い、エラー修正された距離信号を出力する。電磁弁が駆動制御される時点で、エラーを伴って読み出された距離信号は、時間にわたって収容された修正ファクタによって正しくなるように計算され、これによって補償される。従って、出力されるべき距離信号は、妨害干渉が加えられているのにもかかわらずほぼ誤りなく出力される。
【0027】
図2は、4つのダイヤグラムにおいて、上から下に向かって、エラーを有している距離センサ生信号、マイクロコントローラによって形成された時間的な修正値関数、電磁弁を駆動制御するための電圧経過特性および電磁弁のデジタル駆動制御信号を示している。電磁弁のスイッチオンおよびスイッチオフはそれぞれ、距離センサの信号内に、反対に方向付けされた極性でピークを形成する。この曲線経過特性は平滑化された導関数と同じである。この修正値経過特性は、良好な近似でエラー信号に追従する。
【0028】
特性曲線として時間にわたって構成される修正ファクタは、電磁弁のスイッチオンないしスイッチオフで開始して構成され、エラーを有するセンサ信号から減算される。これによって、センサ信号の測定されたエラー偏差が補償され、エラーが修正されて出力される。
【0029】
修正ファクタの格納された時間的特性曲線は、電磁弁の種類およびセンサに対する空間的な取付位置に依存する。従ってこれは一度だけ求められ、マイクロコンピュータ内に格納される。修正ファクタのレベルだけが、電磁弁に加えられている駆動制御電圧UVentilのレベルを介して変化する。駆動制御電圧UVentilまたはバッテリー電圧を検出することによって、修正特性曲線は、その振幅において相応に整合され(例えば乗算によって)、これによってセンサ信号内の残りのエラーがさらに実質的に最小化される。
【0030】
格納された特性曲線によるエラー修正とは択一的に、修正ファクタ特性曲線は適応算出もされる。
【0031】
マイクロコントローラを使用することによって、クラッチ調整部でこのエラー修正方法を使用する場合に、エラー修正特性曲線を適応算出することが可能になる。
【0032】
電磁弁の駆動制御にもかかわらず距離信号が変化しない場合には、これはストッパー(Anschlags)到達に対する印として、殊にクラッチ調整部の例では既に閉成されたクラッチの識別またはストッパーまで開放されたクラッチの識別として評価される。弁駆動制御の間に、生じたセンサ信号の偏差が緩衝記憶される場合には、この緩衝記憶された、時間的な経過において測定された距離センサ偏差が、定常的なセンサ距離の設定時に、新たな修正特性曲線として引き継がれる。この新たな修正値の引き継ぎに対するローパスフィルタリングによって、場合によって生じる散発的な測定エラーからの保護が可能になる。このエラー修正特性曲線はそれぞれ、センサに対する2つの弁の空間的な間隔が異なっている場合には、これらの粗調整用弁並びに微細調整用弁に対して別個に求められる。
【0033】
クラッチの各他の弁が正確に、それぞれ、センサに対して同じ空間的間隔を有している場合には、この新たな修正値は他の弁にも伝達される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】電子式距離信号処理を伴う誘導性距離センサの概略図
【図2】エラーを有する距離センサ信号、時間的な修正値特性曲線、電磁弁を駆動制御するための電圧経過特性並びにこの電磁弁のデジタル駆動制御信号のダイヤグラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁干渉によって生じる、誘導性距離センサまたは角度センサの信号のエラーを修正するための方法であって、
電磁干渉を生じさせる少なくとも1つの構成部分のアクティブ化が既知であり、かつここから結果として生じる、誘導性距離センサまたは角度センサのセンサ信号におけるエラーが既知であるときに、測定されたセンサ信号を当該エラー分だけ修正する、
ことを特徴とする、電磁干渉によって生じる、誘導性距離センサまたは角度センサの信号のエラーを修正するための方法。
【請求項2】
前記電磁干渉を生じさせる構成部分は電磁弁である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
マイクロコントローラは前記センサも、前記少なくとも1つの構成部分も制御する、または駆動制御信号を検出し、評価する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
エラー修正値を、時間に依存する特性曲線として格納する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記修正値は前記構成部分の駆動制御電圧のレベルに依存する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
修正値特性曲線を適応算出する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
距離ないし角度の最終ポジションで、前記構成部分のアクティブ化の間の、エラーを生じさせるセンサ信号変化を新たな修正値として収容し、格納する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記構成部分のアクティブ化の間に収容されたセンサ信号偏差を緩衝記憶し、実際の距離が前記構成部分のアクティブ化の前および後に変えられていないことが既知である場合に、新たな修正値特性曲線として引き継ぐ、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記新たに収容された修正値を、格納前に、新たな修正値特性曲線としてローパスフィルタリングする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
粗アライメント電磁弁を駆動制御するためのエラー修正値および微細アライメント電磁弁を駆動制御するためのエラー修正値を別個に求める、請求項2から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
複数の構成部分センサユニットの場合、および比較可能な影響の場合、1つの構成部分センサユニットに対して求められた修正値を残りの構成部分センサユニットに伝送する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記構成部分はクラッチ調整部を調節する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの調節構成部分および少なくとも1つの距離センサないし角度センサおよび少なくとも1つのマイクロコントローラを有する、距離または角度を調節するための装置であって、
前記マイクロコントローラ内に修正特性曲線が収容可能であり、当該修正特性曲線によって前記少なくとも1つの調節構成部分のアクティブ化時に、電磁干渉によって生じた、誘導性距離センサまたは角度センサの測定されたセンサ信号内のエラーが修正される、
ことを特徴とする、距離または角度を調節するための装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−538239(P2007−538239A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517090(P2007−517090)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005475
【国際公開番号】WO2005/114110
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(597007363)クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (110)
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D−80809 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】