説明

距離測定装置および距離測定方法

【課題】光ビームを測定対象物に照射して測定対象物までの距離を測定する距離測定装置および距離測定方法において、光ビームの照射ができない範囲が無く、従来に比べて捜査範囲を広くする。
【解決手段】光ビームを測定対象物に照射して測定対象物までの距離を測定するとき、距離測定装置は、向きの異なる複数の光ビームのそれぞれをビーム出射部から出射する。このとき、距離測定装置は、反射面上に沿って回転軸を持ち、前記回転軸の周りに軸回転する1つまたは複数の反射ミラーの反射面上の前記回転軸の位置で前記複数の光ビームを反射させることにより、測定対象物に前記光ビームのそれぞれを照射させる。距離測定装置は、前記光ビームの照射により測定対象物で反射して戻ってきた反射ビームを前記反射ミラーで反射させて受光し、受光した前記反射ビームを用いて、測定対象物までの距離情報を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ビームを測定対象物に照射して測定対象物までの距離を測定する距離測定装置および距離測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、走行車両の安全性向上のために、走行車両間の車間距離を一定に保つために車間距離を計測し、あるいは、走行車両の前方の障害物までの距離を計測し、危険をドライバに知らせることのできるシステムの開発が進んでいる。例えば、走行車両前方に位置する別の走行車両や障害物等の測定対象物までの距離を測定するために、ポリゴンミラーを利用してレーザを走査することで、車両前方の測定対象物の距離を計測する距離測定装置が種々提案されている。
【0003】
図13に示されるように、上記距離測定装置100では、レーザ光源102がパルス状のレーザビームLを走行車両の前方に向けて照射し、レーザビームLが照射されて測定対象物104から帰ってきた散乱光である反射ビームRを受光器106が受光し、レーザビームLの出射から反射ビームRの受光までの時間Tを計測することにより、測定対象物104の距離情報を求める。
このとき、図14に示されるように、レーザ光源102から出射されるレーザビームLをポリゴンミラー108を利用してレーザビームLの照射方向を偏向させて走行車両の前方を走査する。これにより、距離測定装置100は、レーザビームLの走査範囲がポリゴンミラー108の周りの数10度の範囲となる。
【0004】
一方、最近、走行車両の前方あるいは後方に位置する車両や障害物等の測定対象物の情報をドライバに提供するカメラシステムが多くの車両に搭載されつつある。この車載カメラシステムでは、図15に示されるように、走行車両110の前方の撮影される視野範囲は、超広角レンズを用いることにより180度を超える範囲となっている場合が多い。このような車両や障害物等の測定対象物に関する画像の情報をドライバに提供する他、上記測定対象物までの距離情報をドライバに提供することは、ドライバにとって好ましい。
【0005】
このような状況下、空間領域における対象の位置の決定のためにパルス移動時間方法を利用するレーザ範囲検知装置が知られている。当該レーザ範囲検知装置は、光パルスを制御しつつ測定領域へ送るパルスレーザと、測定領域内に配された測定対象物から反射して戻る光パルスを受ける光検出部と、光束を考慮しつつ、光パルスの伝送及び受光間の時間から、パルスレーザから対象物までの距離に対する距離信号特性を決定する評価回路とを有する。このとき、レーザの走査のために、回転ミラーを用いるが、回転ミラーの反射表面は、回転軸に対し45度の角度をなすように傾斜している。
【0006】
また、監視コストの上昇を少なく抑えつつ、境界に沿った広範囲な監視が可能であるレーザレーダ及びレーザレーダによる境界監視方法が知られている。
当該レーザレーダでは、二つの投光部から発したレーザ光を走査する走査部と、計測対象領域で反射して戻った反射レーザ光を受ける二つの受光部を備え、走査部は、ポリゴンミラーと、ポリゴンミラーで反射した二つの投光部からのレーザ光を走査すると共に、測定対象物で反射して戻った反射レーザ光をポリゴンミラーを介して個々に受光部に戻す揺動ミラーを備える。一方の投光部及び受光部と、他方の投光部及び受光部とをポリゴンミラーを挟んでそれぞれ配置し、各光軸が成す角度を鋭角に設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−214027号公報
【特許文献2】特開2010−71725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したレーザ範囲検知装置では、レーザ光源から回転ミラーへ向かうレーザの入射光路は回転軸方向に平行であり、走査されるレーザの照射方向と直交するため、例えばレーザを水平方向に照射する場合、レーザ光源は、回転ミラーに対して鉛直方向上方あるいは鉛直下方の位置に設けられる。この結果、レーザ範囲検知装置は、嵩高く占有体積が大きくなり、レーザ範囲検知装置を車両の前方あるいは後方にコンパクトに搭載することができない場合がある。
また、上述した境界監視方法で用いるレーザレーダはポリゴンミラーを用いるため、一部の領域にレーザが照射されず測定できない範囲が発生し、さらには、ポリゴンミラーの回転軸周りに180度を超える広い範囲をレーザの光ビームは走査できない。
【0009】
そこで、本発明は、光ビームを測定対象物に照射して測定対象物までの距離を測定する距離測定装置および距離測定方法であって、従来に比べて光ビームの走査範囲を広くすることができる距離測定装置および距離測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、光ビームを測定対象物に照射して測定対象物までの距離を測定する距離測定装置である。
当該距離測定装置は、
測定対象物に照射するために、お互いに向きの異なる複数の光ビームを出射するビーム出射部と、
測定対象物から反射して戻ってきた反射ビームを受光する受光部と、
前記受光部で受光した反射ビームを用いて、測定対象物の距離情報を求めるデータ処理部と、
前記ビーム出射部から出射された複数の光ビームのそれぞれを走査するビーム走査部と、を有する。
前記ビーム走査部は、1つまたは複数の反射ミラーと、前記反射ミラーの反射面上に沿って回転軸を持つように反射ミラーを軸回転させる回転駆動部と、を備え、前記複数の光ビームは前記反射ミラーの反射面上の前記回転軸の位置に互いに異なる方向から入射する。
【0011】
本発明の他の一態様は、光ビームを測定対象物に照射して測定対象物までの距離を測定する距離測定方法である。
当該距離測定方法は、
向きの異なる複数の光ビームのそれぞれをビーム出射部から出射し、
反射面上に沿って回転軸を持ち、前記回転軸の周りに軸回転する1つまたは複数の反射ミラーの反射面上の前記回転軸の位置で前記複数の光ビームを反射させることにより、測定対象物に前記光ビームのそれぞれを照射させ、
前記光ビームの照射により測定対象物で反射して戻ってきた反射ビームを前記反射ミラーで反射させて受光し、
受光した前記反射ビームを用いて、測定対象物までの距離情報を求める、ステップを有する。
【発明の効果】
【0012】
上述の態様の距離測定装置および距離測定方法によれば、従来に比べて光ビームの走査範囲を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の距離測定装置を乗用車に搭載した形態を示す図である。
【図2】第1実施形態の距離測定装置の構成を示す斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は、反射ミラーと、レーザビームの入射および反射を説明する図である。
【図4】第1実施形態のレーザビームの走査可能範囲を説明する図である。
【図5】第1実施形態の距離測定装置において行われる距離測定方法のフローを示す図である。
【図6】(a),(b)は、第1実施形態の変形例の、ビーム走査部の反射ミラーについて説明する図である。
【図7】(a),(b)は、第1実施形態の変形例を説明する図である。
【図8】第2実施形態の距離測定装置の概略の構成を示す図である。
【図9】第2実施形態の距離測定装置における距離測定方法のフローを示す図である。
【図10】第3実施形態の距離測定装置の概略の構成を示す図である。
【図11】第3実施形態のレーザビームおよび反射ビームの偏光状態を説明する図である。
【図12】第3実施形態の距離測定装置における距離測定方法のフローを示す図である。
【図13】従来の距離測定装置の距離測定を説明する図である。
【図14】従来の距離測定装置におけるレーザビームの走査方法を説明する図である。
【図15】従来の距離測定装置における走査範囲と車載カメラシステムの視野範囲を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の距離測定装置および距離測定方法について説明する。
図1は、距離測定装置10を乗用車1に搭載した形態を示す図である。本実施形態の距
離測定装置10は、乗用車1の前方に搭載され、乗用車1の前方に位置する他の乗用車や障害物等の測定対象物の距離情報を求める装置である。距離測定装置10は、求めた距離情報を、図示されない車載カメラシステムのデータ処理装置に出力する。この距離情報は、車載カメラシステムで撮影された画像内にある撮影対象物までの距離として用いられ、測定対象物に接近しすぎている等の注意喚起あるいは警報をドライバへ発するために用いられる。
【0015】
距離測定装置10は、従来の距離測定装置と同様に、パルス状のレーザビームを出射して測定対象物に照射し、この測定対象物で反射して戻った反射ビームを受光する。このとき、距離測定装置10は、図13に示す従来の距離測定装置100と同様に、レーザビームの出射と反射ビームの受光の時間差を用いて測定対象物の距離を測定する。距離測定装置10は、車両前方の広い範囲に位置する測定対象物の距離を計測するために、レーザビームを、距離測定装置10の周りに、乗用車1の前方方向Xを中心として180度を超える範囲に走査する。この走査範囲は、従来のポリゴンミラーを用いたときの走査範囲に比べて広く、車載カメラシステムで撮像された画像の視野範囲と同等である。このため、車載カメラシステムで撮像された画像内の測定対象物の実際の距離情報をドライバに提供することができ、ドライバへの注意喚起及び警報を確実に行うことができる。
以下に説明する各実施形態では、レーザビームを用いるが、レーザビームに限定されず、LED等の各種光源から出射する、赤外線や紫外線を含む光ビームであってもよい。
【0016】
(第1実施形態)
図2は、第1実施形態の距離測定装置10の構成を示す斜視図である。距離測定装置10は、従来の距離測定装置100に比べて広範囲にレーザビームを走査する。距離測定装置10は、ビーム出射部12と、受光部14と、データ処理・制御部16と、ビーム走査部18と、を有する。
ビーム出射部12は、パルス状のレーザビーム(以降、ビームという)Lを出射するレーザ光源12aと、パルス状のビームL2を出射するレーザ光源12bと、を備える。レーザ光源12aおよびレーザ光源12bは、お互いに向きの異なる方向にビームを断続的に出射する。ビーム出射部12におけるレーザビームの出射は、データ処理・制御部16から供給される制御信号に従って行われる。
レーザ光源12a,12bは、例えば、波長780nm〜950nmの近赤外領域のレーザ光を発する半導体レーザ光源が用いられる。
【0017】
受光部14は、ハーフミラー14a,14bと、フォトダイオード15a,15bと、を有する。ハーフミラー14a,14bは、到来した光の略半分を透過させ、他の略半分を反射させる光学素子である。ハーフミラー14a,14bは、ビーム出射部12とビーム走査部18との間に設けられ、測定対象物でビームが反射されて測定対象物から到来する反射ビームを反射する。レーザ光源12a,12bから出射したビームL,L2は、ハーフミラー14a,14bを透過してビーム走査部18へ導かれる。図2では、ビームLがレーザ光源12aから出射され、ビームL2がレーザ光源12bから出射されていない状態を示している。
フォトダイオード15a,15bは、パルス状のビームL,L2が測定対象物で反射されることにより得られるパルス状の反射ビームを受光し、受光信号を出力する素子である。本実施形態では、受光部14において、フォトダイオード15a,15bを受光センサとして用いるが、この他に、公知の光電変換素子を用いることができる。
【0018】
データ処理・制御部16は、受光部14で受光した反射ビームを用いて、距離測定装置10から測定対象物までの距離情報を求める。さらに、データ処理・制御部16は、レーザビームの出射のオン、オフの制御信号を生成し、レーザ光源12a,12bに供給する。具体的には、データ処理・制御部16は、後述する回転駆動部20から提供される反射ミラー18a,18b(図2参照)の位置情報に応じて、ビームL,L2を断続的に出射させるように、ビームL,L2の出射のオン、オフの制御信号を生成する。
データ処理・制御部16は、測定対象物までの距離情報を求めるとき、フォトダイオード15a,15bで受光して得られるパルス状の受光信号の提供を受け、パルス状のビームL, L2の出射のタイミングに対するパルス状の受光信号の遅れ時間を算出する。データ処理・制御部16は、レーザビームの出射のオン、オフの制御信号を生成するので、ビームL, L2の出射のタイミングの情報を取得している。さらに、データ処理・制御部16は、算出した遅れ時間に光速を乗算することにより、距離測定装置10から測定対象物までの距離情報を算出し、この距離情報を、図示されない車載カメラシステムのデータ処理装置へ提供する。
【0019】
ビーム走査部18は、2つの反射ミラー18a,18bと、回転駆動部20と、回転体ステージ21と、を有する。反射ミラー18a,18bが軸回転する回転駆動部20から延びる回転軸19は、反射ミラー18a,18bの反射面上に当該反射面に沿って設けられている。図3(a)〜(c)は、反射ミラー18a,18bと、ビームL,L2の入射および反射を説明する図である。
具体的には、ビーム走査部18の反射ミラー18a,18bは、回転体ステージ21に載置されて固定されている。回転体ステージ21は、回転駆動部20と図示されない回転シャフトにより固定され、回転体ステージ21および反射ミラー18a,18bが軸回転する。反射ミラー18a,18bは、回転体ステージ21上に、回転軸19の軸方向に多段配列し、反射面の向きがお互いに異なるように配置された配列ミラーである。反射ミラー18a,18bの反射面上の回転軸19の位置に、図3(c)に示されるように、ビームL,L2が入射する。
【0020】
また、反射ミラー18a,18bの反射面の向きに応じて、ビームL及びビームL2が使い分けられる。具体的には、後述するように、前方方向Xを正面に見て前方方向Xから左側の範囲をビームLが走査し、前方方向Xを正面に見て前方方向Xから右側の範囲をビームL2が走査する。また、回転軸19の方向を高さ方向Zとしたとき、ビーム出射部12とビーム走査部18と間のビームLおよびビームL2の光路が、高さ方向Zに直交する平面上に形成されている。すなわち、レーザ光源12a,12bの高さ方向Zにおける位置が、反射ミラー18a,18b上のビームの入射点22a,22bの高さ方向Zの位置と同じになるように、レーザ光源12a,12bが設けられている。図2に示す例では、反射ミラー18bは反射ミラー18aに比べて高さ方向Zの位置が高いので、レーザ光源12bは、レーザ光源12aに比べて高さ方向Zの位置が高くなっている。
こうして、反射ミラー18aの反射面の向きが図3(a)に示されるような場合、反射ミラー18aは回転軸19上の反射面上で光ビームLの入射を受け、反射ミラー18bの反射面の向きが図3(b)に示されるような場合、反射ミラー18bは回転軸19上の反射面上で光ビームL2の入射を受ける。
【0021】
回転駆動部20は、一定の速度で回転する図示されない駆動モータと、反射ミラー18a,18bの向きを検出するための図示されない回転角度検出器、例えばロータリエンコーダと、を備える。回転角度検出器から出力されるパルス信号は、データ処理・制御部16に送られて、反射ミラー18a,18bの向きの検出に用いられる。
【0022】
図4は、ビームL,L2の走査可能範囲を説明する図である。
ビーム走査部18によるビームL, L2による走査範囲は、前方方向Xを中心とする、回転軸19の周りの範囲であり、ビーム出射部12のレーザ光源12a,12bは、ビームL,L2のそれぞれを、反射ミラー18a,18bの反射面上の回転軸19の位置に向けて、前方方向Xに対して後方の側から出射する。これにより、反射ミラー18aによって反射されたビームLは、図4に示すように、θ=θin1から180度+θin1の範囲、すなわち、範囲Aを走査することができる。図4では、図中の左右方向のうち右方向の軸をθ=0度としている。
一方、反射ミラー18bによって反射されたビームL2は、図4に示すように、θ=−θin2から180度−θin2の範囲、すなわち範囲Bを走査することができる。ここで、θin1は、図4中のθ=180度の方向に対するビームLの入射角度を表し、θin2は、図4中のθ=0度の方向に対するビームL2の入射角度を表す。
【0023】
距離測定装置10は、ビームLの範囲AとビームL2の範囲Bとにより、180度を超える範囲を走査可能範囲とするが、この走査可能範囲のうち、互いに重なっている部分は、いずれか一方のビームを出射させる。より具体的には、θ=90度以下の場合ビームL2が出射され、θ=90度を越える場合ビームLが出射される、このように、レーザ光源12a,12bの出射のオン、オフは、反射ミラー18a,18bの反射面の向きに応じて切り替えられる。本実施形態では、ビームL, L2が同時に出射されないが、ビームL, L2を同時に出射して、距離情報を同時に算出することもできる。
【0024】
図5は、距離測定装置10において行われる距離測定方法のフローを示す図である。
距離測定装置10では、データ処理・制御部16による駆動指示により、回転駆動部20のモータは駆動を開始する(ステップS10)。これに伴って、データ処理・制御部16は、ロータリエンコーダ等の回転角度検出器から出力されるパルス信号を受信し、モータの回転角度の情報を取得する(ステップS20)。回転角度検出器から出力されるパルス信号は、回転軸19の1回転中に数千のパルス信号を出力するので、パルスをカウントすることにより、回転角度の情報を精密に得ることができる。
データ処理・制御部16は、取得した回転角度の情報を用いて、反射ミラー18a,18bのそれぞれの反射面の向きを求め、さらに、反射面の向きから、ビームL, L2を出射したときの想定される走査位置を表す測定角度を算出する(ステップS30)。あるいは、ビームL, L2の測定角度は、回転軸19の回転角度とレーザビームの測定角度との関係を予め参照テーブルとして記録したものを用いて、回転角度検出器から得られた回転角度の情報から測定角度を求めることもできる。
【0025】
次に、データ処理・制御部16は、ビームLを出射したときビームLの測定角度θ1が90度を越えて180度+θin1以内であるか、否かを判定する(ステップS40)。
上記判定において、測定角度θ1が90度を越えて180度+θin1以内である場合(ステップS40のYesの場合)、レーザ光源12aがビームLを出射するようにレーザ光源12aに制御信号を提供する。これによりビームLがレーザ光源12aから出射する(ステップS50)。ビームLはハーフミラー14aを透過し、反射ミラー18aで反射し、測定角度θ1の方向に照射される。測定角度θ1に位置する測定対象物におけるビームLの反射光である反射ビームは、反射ミラー18aに戻り、ビームLと同じ光路を通ってハーフミラー14aに戻る。ハーフミラー14aで反射された反射ビームは、フォトダイオード15aで受光され受光信号が出力される(ステップS60)。
【0026】
一方、上記判定において、測定角度θ1が90度を越えて180度+θin1以内の範囲にない場合(ステップS40のNoの場合)、データ処理・制御部16は、ビームL2を出射したときビームL2の測定角度θ2が−θin2から90度以内であるか、否かを判定する(ステップS70)。上記判定において、測定角度θ2が−θin2から90度以内の範囲にある場合(ステップS70のYesの場合)、レーザ光源12bがビームL2を出射するように、データ処理・制御部16は、レーザ光源12bに制御信号を提供する。これによりビームL2がレーザ光源12bから出射する(ステップS80)。ビームL2はハーフミラー14bを透過し、反射ミラー18bで反射し、測定角度θ2の方向に照射される。測定対象物におけるビームL2の反射光である反射ビームは、反射ミラー18bに戻り、ビームL2と同じ光路を通ってハーフミラー14bに戻る。ハーフミラー14bで反射された反射ビームは、フォトダイオード15bで受光され受光信号が出力される(ステップS90)。
【0027】
一方、ステップS70における判定において、ビームL2を出射したときビームL2の測定角度θ2が−θin2から90度以内の範囲内にない場合(ステップS70のNoの場合)、ビームLおよびビームL2のいずれも出射されず、ステップS20に戻り、ステップS40あるいはステップS70の判定が肯定されるまでビームL,L2は出射されない。
【0028】
次に、データ処理・制御部16は、測定対象物の距離測定を行う(ステップS100)。具体的には、フォトダイオード15aあるいはフォトダイオード15bから出力されたパルス状の受光信号を用いて、パルス状のビームLあるいはビームL2の出射のタイミングに対する遅れ時間を算出し、この遅れ時間に光速を乗算し、2を除算することにより、距離測定装置10から測定対象物までの距離情報を求める。求めた距離情報のデータは、図示されない車載カメラシステムのデータ処理装置に出力される(ステップS110)。なお、上記遅れ時間は、ビームLおよびビームL2の出射のための制御信号や受光信号の伝送による遅延時間や装置内の応答遅れ時間等の補正を行うことによって求められる。以上のステップS20〜S100は、モータの駆動開始後、継続的に行われ、距離測定がビームLおよびビームL2の出射のたびに行われるので、距離情報のデータがリアルタイムで出力される。
【0029】
以上のように、距離測定装置10の反射ミラー18a,18bの反射面上に、反射面上に沿って、反射ミラー18a,18bの回転軸19が設けられ、ビームL,L2は反射ミラー18a,18bの反射面上の回転軸19の位置に互いに異なる方向から入射される。このため、距離測定装置10は、−θin2から180度+θin1の範囲を、死角なしにビームL,L2を走査させることができる。すなわち、従来に比べてレーザビームの走査範囲を広くすることができる。
ビーム光走査部19は、回転軸19の方向に多段配列した、反射面の向きがお互いに異なる配列ミラーを、反射ミラー18a,18bとして備え、この配列ミラーのそれぞれが、ビームL,L2のうちの1つのビームの入射を受ける。このため、ビームL,L2により、走査範囲を別々に制御でき、2つのビームを用いて効率よく走査することができる。
ビーム出射部12は、ビームL,L2それぞれの出射のオン及びオフを、反射ミラー18a,18bの反射面の向きに応じて切り替えて、ビームL,L2のいずれか1つを断続的に出射するので、所望の走査範囲にある測定対象物の距離を測定することができる。
また、ビーム出射部12とビーム走査部18との間の光路は、回転軸19に沿った高さ方向Zに対して直交する平面上に形成されるので、距離測定装置10は、従来に比べて嵩高くない装置とすることができ、乗用車1の前方の空きスペースに配置固定することができる。
ビーム出射部12は、ビームL,L2のそれぞれを、回転軸19の位置に向けて、前方方向Xに対して後方の側から出射するので、距離測定装置10は、ビームL,L2を、回転軸周りに180度以上の範囲を走査することができる。
距離測定装置10は、ビーム出射部12とビーム走査部18との間に設けられ、測定対象物からの反射ビームを反射するハーフミラー14a,14bと、ハーフミラー14a,14bで反射した前記反射ビームを受光するフォトダイオード15a,15bと、を備える。このため、反射ミラーの光路をビームL,L2の光路と共有することができ、距離測定装置10をコンパクトにすることができる。
【0030】
図6(a),(b)は、第1実施形態の変形例である、ビーム走査部18の反射ミラーの構成について説明する図である。
図6(a),(b)は、第1実施形態と異なり、反射ミラー18a,18bが2つ設けられず、反射ミラー18aの1つが回転ステージ21上に設けられている。反射ミラー18a以外の構成は、第1実施形態の構成と同じであるので、反射ミラー18a以外の構成の説明は省略する。
反射ミラー18aが回転する回転軸19は、ビーム走査部18の反射ミラー18aの反射面上に、この反射面上に沿って設けられ、ビームL,L2が反射ミラー18aの反射面上の回転軸19の位置に互いに異なる方向から入射する。
したがって、図6(a)に示すように、回転する反射ミラー18aが所定の向きになるとき、ビームLをレーザ光源12aが出射し、ビームLの測定角度θ1が90度を越えて180度+θin1以内となるように走査する。また、図6(b)に示すように、回転する反射ミラー18aが所定の向きになるとき、ビームL2をレーザ光源12bが出射し、ビームL2の測定角度θ2が−θin2から90度以内となるように走査する。
【0031】
このように、レーザ光源12a,12bは、ビームL,L2それぞれの出射のオン及びオフを、反射ミラー18aの反射面の向きに応じて切り替えて、ビームL,L2のいずれか1つを断続的に出射するので、1つの反射ミラー18aを有効に用いて走査することができる。
このとき、レーザ光源12a,12bとビーム走査部18との間の光路は、回転軸19に対して直交する平面上に形成されるので、距離測定装置10は、嵩高くない装置とすることができ、乗用車1の前方の空きスペースに配置固定することができる。
【0032】
図7(a)は、第1実施形態の変形例を説明する図である。図7(a)に示すビーム走査部18は、回転ステージ21上に透明体24が設けられて固定されている。透明体24は、例えば石英からなる。透明体24内には、金属薄膜層からなる反射ミラー18a,18bが形成されている。反射ミラー18a,18bは、回転軸19の方向に多段配列した、反射面の向きがお互いに異なる配列ミラーである。反射ミラー18aがビームLの入射を受け、反射ミラー18bがビームL2の入射を受ける。
この反射ミラー18a,18bは、図2に示す反射ミラー18a,18bに対して、透明体24に設けられている点が異なるだけであり、透明体24以外は同じ構成であるので、透明体24以外の装置についての説明及び作用については省略する。
【0033】
図7(b)は、更に別の、第1実施形態の変形例を説明する図である。図7(b)に示すビーム走査部18は、回転ステージ21上に透明体24が設けられて固定されている。透明体24内には、金属薄膜層により一方の面に反射ミラー18aが形成され、他方の面に反射ミラー18bが形成されている。金属薄膜は薄いので、反射ミラー18aおよび反射ミラー18bのそれぞれの反射面上に、これらの反射面に沿って回転軸19が設けられている。
反射ミラー18aがビームLの入射を受け、反射ミラー18bがビームL2の入射を受ける。この反射ミラー18a,18bは、図2に示す反射ミラー18a,18bと異なり、透明体24内に設けられ、反射ミラー18aと反射ミラー18bの、回転軸19に沿った高さ方向Zの位置がお互いに同じである。このため、レーサ光源12a,12bと、ハーフミラー14a,14bと、フォトダイオード15a,15bを同じ高さ方向Zの位置に設け、高さ方向Zの嵩を低くすることができ、距離測定装置10をよりコンパクトにすることができる。透明体24以外の構成は、図2に示す距離測定装置10と同じであるので、透明体24以外の装置についての説明及び作用については省略する。
また、本変形例では、反射ミラー18aがビームLの入射を受け、反射ミラー18bがビームL2の入射を受けるが、反射ミラー18a,18bのいずれも、ビームL,L2が入射されてもよい。この場合、ビーム走査部18は、反射ミラー18a,18bが半回転する間に、−θin2から180度+θin1の範囲を走査することができる。
【0034】
(第2実施形態)
図8(a),(b)は、第2実施形態の距離測定装置10の概略の構成を示す図である。図8(a),(b)に示す第2実施形態では、ビーム出射部12は、1つのレーザ光源12aがコリメータレンズ13とともに用いられる。また、第2実施形態では、ビーム出射部12とビーム走査部18との間の光路上に、シャッター25a,25bと、調整ミラー26a,26bとが設けられる。
コリメータレンズ13は、レーザ光源12aから出射したレーザビームを平行光とする。レーザ光源12aの前面には、ハーフミラー28が設けられる。ハーフミラー28は、1つのレーザ光源12aから出射した1つのビームの反射および透過により2つのビームL,L2に分離する光学素子である。
【0035】
ビーム走査部18の反射ミラー18a,18bのいずれの反射面上にも、反射ミラー18a,18bが回転する回転軸19が、これらの反射面上に沿って設けられている。反射ミラー18a,18bは、反射ミラー18a,18bの反射面上の回転軸19の位置において、お互いに異なる方向からビームL,L2の入射を受ける。
反射ミラー18a,18bとして、図3(a)に示す第1実施形態の他に、図6(a),(b)に示す変形例や図7(a)あるいは図7(b)に示す変形例の各形態が用いられ得る。
図8(a)に示すように、ビームLがビーム走査部18に入射するとき、シャッター25aは開き、調整ミラー26aで反射されて、ビームLはビーム走査部18に導かれる。ビームLの反射ミラー18aへの入射は、ビームLを出射したときビームLの測定角度θ1が90度を越えて180度+θin1以内である場合に行われる。図8(b)に示すように、ビームL2がビーム走査部18に入射するとき、シャッター25bは開き、調整ミラー26bで反射されて、ビームL2はビーム走査部18に導かれる。ビームL2の反射ミラー18bへの入射は、ビームL2を出射したときビームL2の測定角度θ2が−θin2から90度以内である場合行われる。なお、ビームL2は、ビームLと同じレーザ光源12aから出射し、回転軸19の高さ方向Zの位置が反射ミラー18aと異なる反射ミラー18bに入射するが、ビームL2は、調整ミラー26bにおいて反射ミラー18bに入射するように反射される。したがって、ビームL2の光路は、厳密には回転軸19に対して直交する平面上に形成されず、反射ミラー18a,18bの高さ方向Zの位置ずれ分だけ上記平面に対して傾斜している。しかし、反射ミラー18a,18bの高さ方向Zの位置のずれ分は、光路長に比べて十分に小さいため、実質上、ビームL2の光路は、回転軸19に対して直交する平面上に形成される、といえる。
【0036】
図9は、第2実施形態の距離測定装置10における距離測定方法のフローを示す図である。第2実施形態における距離測定方法のうち、図9に示すステップS10〜S40,S60,S70,S90〜S110は、図5に示すステップS10〜S40,S60,S70,S90〜S110と同様であるので、その説明を省略する。図9に示すフローでは、ステップS45とステップS75が設けられている。
ステップS45では、ビームLを出射したときビームLの測定角度θ1が90度を越えて180度+θin1以内である場合(ステップS40のYesの場合)、シャッター25aが開き、シャッター25bが閉じる(ステップS45)。この状態で、レーザ光源12aからパルス状のレーザビームが出射され(ステップS50)、コリメータレンズ13を通して平行光とされて、ハーフミラー28でビームLとビームL2に分離される。ビームL2は、シャッター25bが閉じられることによりビーム走査部18への進行が阻止され、ビームLのみが、開いたシャッター25aを通過してビーム走査部18へ導かれる。
同様に、ステップS75では、ビームL2を出射したときビームL2の測定角度θ2が−θin2から90度以内である場合(ステップS70のYesの場合)、シャッター25bが開き、シャッター25aが閉じる(ステップS75)。この状態で、レーザ光源12aからパルス状のレーザビームが出射され(ステップS80)、コリメータレンズ13を通して平行光とされて、ハーフミラー28でビームLとビームL2に分離される。ビームLは、シャッター25aが閉じられることによりビーム走査部18への進行が阻止され、ビームL2のみが、開いたシャッター25bを通過してビーム走査部18へ導かれる。
このようにして、距離測定装置10は、パルス状のビームL,L2を断続的にビーム走査部18から測定対象物に照射することによって、測定対象物の距離を測定する。
図9中のステップS20〜S100は、モータの駆動開始後、継続的に行われ、距離測定がビームLおよびビームL2の出射のたびに行われるので、距離情報のデータがリアルタイムで出力される(ステップS110)。
【0037】
したがって、第2実施形態の距離測定装置10においても第1実施形態の距離測定装置10と同様の効果を有する。さらに、第2実施形態の距離測定装置10は、レーザ光源12aから出射したビームを、ハーフミラー28を用いて反射および透過を行って、ビームL,L2に分離するので、用いるレーザ光源は1つで済ませることができ、コンパクトな距離測定装置10を提供することができる。
【0038】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態の距離測定装置10の概略の構成を示す図である。図10に示す第3実施形態では、ビーム出射部12は、第2実施形態と同様に、1つのレーザ光源12aがコリメータレンズ13とともに用いられる。また、受光部14は、測定対象物から到来したビームLの反射ビームと、測定対象物から到来したビームL2の反射ビームとを1つのフォトダイオード14で受光する。
具体的には、ビーム出射部12は、レーザ光源12aと、コリメータレンズ13と、偏光ビームスプリッタ29と、液晶板30と,を備える。ビーム出射部12とビーム走査部18との間のビームL,L2の光路上には、4分の1波長板32a,32bが設けられる。受光部14は反射ビームを受光するフォトダイオード15aを備える。
コリメータレンズ13は、レーザ光源12aから出射したレーザビームを平行光とする。液晶板30は、ビーム出射部12から出射した直線偏光した1つのレーザビームの偏光状態を制御する偏光回転素子である。液晶板30は、レーザビームの偏光状態の制御のために、測定対象物を測定するための第1実施形態と同様のデータ処理・制御部18(図2参照)と接続されており、データ処理・制御部18からの指示により、レーザビームの偏光状態を制御する。偏光ビームスプリッタ29は、液晶板30により偏光状態が制御されたレーザビームを、反射または透過させて、お互いに偏光状態が異なる直線偏光のビームLとビームL2に分離し、かつ、測定対象物からの反射ビームを偏光状態に応じて透過または反射させる光学素子である。偏光ビームスプリッタ29を透過した反射ビームのみが、フォトダイオード15aで受光される。
4分の1波長板32a,32bは、液晶板30で偏光されたビームL,L2の直線偏光を円偏光にし、測定対象物から到来した円偏光の反射ビームを直線偏光にする。
フォトダイオード15aは、ビーム走査部18の反射ミラー18a,18b及び4分の1波長板32a,32bを通り、偏光ビームスプリッタ29で透過あるいは反射した測定対象物からの反射ビームを受光する。
【0039】
図11は、レーザ光源12aが90度の直線偏光でレーザビームを出射した後、フォトダイオード15aで反射ビームを受光するまでのビームの偏光状態を説明している。
ビームL,L2は、第1実施形態と同様に、ビームLの測定角度θ1、ビームL2の測定角度θ2によって、ビーム走査部18の反射ミラー18a,18bへの入射が制御される。具体的には、ビームLが出射されたときビームLの測定角度θ1が、90度を越えて180度+θin1以内である場合、ビームLがビーム走査部18に入射するように、液晶板30は制御される。同様に、ビームLが出射されたときビームL2の測定角度θ2が、−θin2から90度以内で場合、ビームL2がビーム走査部18に入射するように、液晶板30は制御される。
【0040】
すなわち、ビームLが利用されるとき、90度の直線偏光のレーザビームが液晶板30で偏光状態を維持して透過する。偏光ビームスプリッタ29では、90度の直線偏光のレーザビームは反射され、ビームLとして分離される。このビームLは4分の1波長板32aにおいて円偏光状態になる。この状態で、ビームLは調整ミラー26aを介して反射ミラー18aで投射され、測定対象物に照射される。ビームLが照射された測定対象物から到来する反射ビームは、円偏光状態を維持し、4分の1波長板32aを通過するとき、偏光状態の位相が45度ずれて0度の直線偏光になる。このため、偏光ビームスプリッタ29に入射した反射ビームは、偏光ビームスプリッタ29を透過して、フォトダイオード15aで受光される。
【0041】
同様に、ビームL2が利用されるとき、液晶板30が制御されて、90度の直線偏光のレーザビームが液晶板30により0度の偏光状態に変更される。偏光ビームスプリッタ29では、0度の直線偏光のレーザビームは透過され、ビームL2として分離される。このビームL2は4分の1波長板32bにおいて円偏光になる。この状態で、ビームL2は、調整ミラー26bを介して反射ミラー18bで投射され、測定対象物に照射される。ビームL2が照射された測定対象物から到来する反射ビームは、円偏光状態を維持し、4分の1波長板32bを通過するとき、偏光状態の位相が45度ずれて90度の直線偏光になる。このため、偏光ビームスプリッタ29に入射した反射ビームは、偏光ビームスプリッタ29で反射されて、フォトダイオード15aで受光される。
【0042】
図12は、第3実施形態の距離測定装置における距離測定方法のフローを示す図である。第3実施形態における距離測定方法のうち図12に示すステップS10〜S40,S70,S100,S110は、図5に示すステップS10〜S40,S70,S100,S110と同様であるので説明を省略する。図12に示すフローでは、ステップS45とステップS75が設けられている。
【0043】
ステップS45は、ビームLを出射したときビームLの測定角度θ1が90度を越えて180度+θin1以内である場合(ステップS40のYesの場合)に行われる。具体的には、第1実施形態のデータ処理・制御部16と同様の図示されないデータ処理・制御部が、90度の直線偏光のレーザビームが90度に維持されるように液晶板30へ電圧の印加を行う(ステップS45)。この状態で、レーザビームがレーザ光源12aから出射され(ステップS50)、図11に示すように偏光状態が調整されて円偏光のビームLが測定対象物に照射される。
ステップS75は、ビームL2を出射したとき反射ミラーL2の測定角度θ2が−θin2から90度以内である場合(ステップS70のYesの場合)に行われる。具体的には、第1実施形態のデータ処理・制御部16と同様の図示されないデータ処理・制御部が、90度の直線偏光のレーザビームの偏光状態が0度の直線偏光になるように液晶板30へ電圧の印加を行う(ステップS75)。この状態で、90度の直線偏光のレーザビームがレーザ光源12aから出射され(ステップS50)、図11に示すように偏光状態が調整されて円偏光のビームL2が測定対象物に照射される。
【0044】
照射された測定対象物から反射光として到来する反射ビームは、偏光ビームスプリッタ29を通して透過あるいは反射されて、フォトダイオード15aに受光される(ステップS60)。
このようにして、距離測定装置10は、パルス状のビームL,L2を断続的にビーム走査部18から測定対象物に照射し、測定対象物の距離が測定される。
図12中のステップS20〜S100は、モータの駆動開始後、継続的に行われ、距離測定がビームLおよびビームL2の出射のたびに行われるので、距離情報のデータがリアルタイムで出力される(ステップS110)。
【0045】
したがって、第3実施形態の距離測定装置10においても第1実施形態の距離測定装置10と同様の効果を有する。さらに、第3実施形態の距離測定装置10は、レーザ光源12aから出射したレーザビームの偏光状態を、液晶板29を用いて調整することにより、レーザビームを偏光ビームスプリッタ29において反射または透過させて、ビームL,L2を生成する。第3実施形態の距離測定装置10は、さらに、4分の1波長板32a,32bを用いて反射ビームの偏光状態を調整して偏光ビームスプリッタ30において反射または透過させて、反射ビームをフォトダイオード15aにおいて受光する。このため、第3実施形態の距離測定装置10は、レーザ光源およびフォトダイオードをそれぞれ1つで済ませることができ、コンパクトな距離測定装置10を提供することができる。また、第2実施形態のようにハーフミラー28を用いて一部分のレーザビームを測定対象物に照射し、ハーフミラー14a,14bを用いて反射ビームの一部分を受光する場合に比べて、受光する反射ビームの光強度は低下しないので、第3実施形態では、レーザ光源12aのレーザビームの光強度を抑えることができる。
【0046】
上記実施形態は、以下に示す内容を開示する。
(付記1)
光ビームを測定対象物に照射して測定対象物までの距離を測定する距離測定装置(10)であって、
測定対象物に照射するために、お互いに向きの異なる複数の光ビームを出射するビーム出射部と、
測定対象物から反射して戻ってきた反射ビームを受光する受光部と、
前記受光部で受光した反射ビームを用いて、測定対象物の距離情報を求めるデータ処理部と、
前記ビーム出射部から出射された複数の光ビームのそれぞれを走査するビーム走査部と、を有し、
前記ビーム走査部は、1つまたは複数の反射ミラーと、前記反射ミラーの反射面上に沿って回転軸を持つように反射ミラーを軸回転させる回転駆動部と、を備え、前記複数の光ビームは前記反射ミラーの反射面上の前記回転軸の位置に互いに異なる方向から入射する、ことを特徴とする距離測定装置。
【0047】
(付記2)
前記ビーム光走査部は、前記回転軸の方向に多段配列した、反射面の向きがお互いに異なる配列ミラーを、前記反射ミラーとして備え、
前記配列ミラーのそれぞれが、前記複数の光ビームのうちの1つのビームの入射を受ける、付記1に記載の距離測定装置。
【0048】
(付記3)
前記ビーム出射部は、前記複数の光ビームそれぞれの出射のオン及びオフを、前記反射ミラーの反射面の向きに応じて切り替えて、前記複数の光ビームのいずれか1つを断続的に出射する、付記1または2に記載の距離測定装置。
【0049】
(付記4)
前記ビーム出射部と前記ビーム走査部との間の光路は、前記回転軸に対して直交する平面上に形成される、付記1〜3のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【0050】
(付記5)
前記ビーム走査部による前記複数の光ビームによる走査範囲は、第1の方向を中心とする、前記回転軸の周りの範囲であり、
前記ビーム出射部は、前記複数の光ビームのそれぞれを、前記反射ミラーの反射面上の前記回転軸の位置に向けて、前記第1の方向に対して後方の側から出射する、付記1〜4のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【0051】
(付記6)
前記ビーム出射部は、1つのビーム光源と、前記ビーム出射部から出射した1つの光ビームの反射および透過により2つの光ビームに分離する第1光学素子を備える光学系と、を有する付記1〜5のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【0052】
(付記7)
前記受光部は、前記ビーム出射部と前記ビーム走査部との間に設けられ、測定対象物からの反射ビームを反射する第2光学素子と、前記第2光学素子で反射した前記反射ビームを受光する受光センサと、を備える、付記1〜6のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【0053】
(付記8)
前記ビーム出射部は、1つのビーム光源と、前記ビーム出射部から出射した1つの光ビームの偏光状態を制御する偏光制御素子と、偏光状態が制御された光ビームを、前記光ビームの偏光状態に応じて反射または透過させ、かつ、測定対象物からの反射ビームを、前記反射ビームの偏光状態に応じて透過または反射させる第3光学素子と、を備え、
前記ビーム出射部と前記ビーム走査部との間には、4分の1波長板が設けられ、
前記受光部は、前記反射ミラー及び前記4分の1波長板を通り、前記第3光学素子で透過または反射した測定対象物からの前記反射ビームを受光する受光センサを備える、付記1〜5のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【0054】
(付記9)
光ビームを測定対象物に照射して測定対象物までの距離を測定する距離測定方法であって、
向きの異なる複数の光ビームのそれぞれをビーム出射部から出射し、
反射面上に沿って回転軸を持ち、前記回転軸の周りに軸回転する1つまたは複数の反射ミラーの反射面上の前記回転軸の位置で前記複数の光ビームを反射させることにより、測定対象物に前記光ビームのそれぞれを照射させ、
前記光ビームの照射により測定対象物で反射して戻ってきた反射ビームを前記反射ミラーで反射させて受光し、
受光した前記反射ビームを用いて、測定対象物までの距離情報を求める、ことを特徴とする距離測定方法。
【0055】
(付記10)
測定対象物の距離を測定するとき、前記反射ミラーの反射面の向きに応じて、前記複数の光ビームの照射のオンおよびオフを切り替えて、前記複数の光ビームのいずれか1つを断続的に出射する、付記9に記載の距離測定方法。
【0056】
(付記11)
前記回転軸の方向に多段配列した、反射面の向きがお互いに異なる配列ミラーのそれぞれが、前記複数の光ビームの1つの入射を受けることにより、前記配列ミラーのそれぞれが前記反射ミラーとして用いられる、付記9に記載の距離測定方法。
【0057】
(付記12)
前記複数の光ビームそれぞれの走査範囲は、第1の方向を中心とする、前記回転軸の周りの範囲であり、
前記複数の光ビームのそれぞれは、前記反射ミラーの反射面上の前記回転軸の位置に向けて、前記第1の方向に対して後方の側から出射される、付記9〜11のいずれか1項に記載の距離測定方法。
【0058】
(付記13)
前記複数の光ビームは、第1光学素子を用いて1つの光ビームを透過および反射させることにより形成される、付記9〜12のいずれか1項に記載の距離測定方法。
【0059】
(付記14)
測定対象物からの前記反射ビームは、前記反射ミラーと前記ビーム出射部との間の前記複数の光ビームそれぞれの光路を逆方向に進み、前記光路上に設けられる第2光学素子を用いて前記反射ビームが反射されることにより、前記反射ビームは前記光路から外れた位置で受光センサにより受光される、付記9〜13のいずれか1項に記載の距離測定方法。
【0060】
(付記15)
前記複数の光ビームのそれぞれは、偏光制御素子を用いて偏光状態が制御され、さらに、第3光学素子を用いて前記偏光状態に応じて反射または透過させることにより、前記ビーム出射部から異なるタイミングで出射し、
偏光した前記複数の光ビームのそれぞれは4分の1波長板を用いて円偏光状態に調整されて、前記反射ミラーに入射され、
測定対象物からの前記反射ビームは、前記反射ミラーおよび前記4分の1波長板を通って前記第3光学素子に導かれ、前記第3光学素子により、前記反射ビームの偏光状態に応じて反射または透過されて、受光センサにより受光される、付記9〜12のいずれか1項に記載の距離測定方法。
【0061】
以上、本発明の距離測定装置および距離測定方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0062】
1 乗用車
10,100 距離測定装置
12 ビーム出射部
12a,12b,102 レーザ光源
13 コリメータレンズ
14,106 受光部
14a,14b,28 ハーフミラー
15a,15b フォトダイオード
16 データ処理・制御部
18 ビーム走査部
18a,18b 反射ミラー
19 回転軸
20 回転駆動部
21 回転体ステージ
22a,22b 入射点
24 透明体
25a,25b シャッター
26a,26b 調整ミラー
29 偏光ビームスプリッタ
30 液晶板
32a,32b 4分の1波長板
104 測定対象物
108 ポリゴンミラー
110 走行車両



【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを測定対象物に照射して測定対象物までの距離を測定する距離測定装置であって、
測定対象物に照射するために、お互いに向きの異なる複数の光ビームを出射するビーム出射部と、
測定対象物から反射して戻ってきた反射ビームを受光する受光部と、
前記受光部で受光した反射ビームを用いて、測定対象物の距離情報を求めるデータ処理部と、
前記ビーム出射部から出射された複数の光ビームのそれぞれを走査するビーム走査部と、を有し、
前記ビーム走査部は、1つまたは複数の反射ミラーと、前記反射ミラーの反射面上に沿って回転軸を持つように反射ミラーを軸回転させる回転駆動部と、を備え、前記複数の光ビームは前記反射ミラーの反射面上の前記回転軸の位置に互いに異なる方向から入射する、ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記ビーム光走査部は、前記回転軸の方向に多段配列した、反射面の向きがお互いに異なる配列ミラーを、前記反射ミラーとして備え、
前記配列ミラーのそれぞれが、前記複数の光ビームのうちの1つのビームの入射を受ける、請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記ビーム出射部は、前記複数の光ビームそれぞれの出射のオン及びオフを、前記反射ミラーの反射面の向きに応じて切り替えて、前記複数の光ビームのいずれか1つを断続的に出射する、請求項1または2に記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記ビーム出射部と前記ビーム走査部との間の光路は、前記回転軸に対して直交する平面上に形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記ビーム走査部による前記複数の光ビームによる走査範囲は、第1の方向を中心とする、前記回転軸の周りの範囲であり、
前記ビーム出射部は、前記複数の光ビームのそれぞれを、前記反射ミラーの反射面上の前記回転軸の位置に向けて、前記第1の方向に対して後方の側から出射する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【請求項6】
光ビームを測定対象物に照射して測定対象物までの距離を測定する距離測定方法であって、
向きの異なる複数の光ビームのそれぞれをビーム出射部から出射し、
反射面上に沿って回転軸を持ち、前記回転軸の周りに軸回転する1つまたは複数の反射ミラーの反射面上の前記回転軸の位置で前記複数の光ビームを反射させることにより、測定対象物に前記光ビームのそれぞれを照射させ、
前記光ビームの照射により測定対象物で反射して戻ってきた反射ビームを前記反射ミラーで反射させて受光し、
受光した前記反射ビームを用いて、測定対象物までの距離情報を求める、ことを特徴とする距離測定方法。
【請求項7】
測定対象物の距離を測定するとき、前記反射ミラーの反射面の向きに応じて、前記複数の光ビームの照射のオンおよびオフを切り替えて、前記複数の光ビームのいずれか1つを断続的に出射する、請求項6に記載の距離測定方法。
【請求項8】
前記回転軸の方向に多段配列した、反射面の向きがお互いに異なる配列ミラーのそれぞれが、前記複数の光ビームの1つの入射を受けることにより、前記配列ミラーのそれぞれが前記反射ミラーとして用いられる、請求項6に記載の距離測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−117996(P2012−117996A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270051(P2010−270051)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】