説明

距離測定装置

【課題】超音波センサーを水位センサーとして使用してドレン水受けに貯留したドレン水の満水を検知する場合に、反射波が戻るまでの時間をもとに算出される距離データ以外に受信量(電圧)データを採用して両者を比較することで正確な水位を検出できるようにした距離測定装置を得る。
【解決手段】水位センサー5としての超音波センサーから発信される超音波を測定用の媒体として距離を測定する距離測定装置において、受信波が測定されるまでの時間に基づいて距離を出力する手段と、受信量を出力する手段とを設けた

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば冷凍冷蔵ショーケースのドレン水の検知装置として使用される距離測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットなどの店舗に設置されるオープンタイプの縦型冷凍冷蔵ショーケースは、図13に示すようにショーケース本体の下部に形成される機械室3内に凝縮器2や圧縮機などにより構成される冷凍装置を配設し、ショーケース本体の背面側に設置した冷却器で冷却した冷気で商品収納庫1内に収納した商品を冷却するもので、冷気は循環される。図中6は凝縮機ファン、7は蒸発板を示す。
【0003】
冷気は前記のように庫内の空気が循環されるものであるが、商品収納庫1の前面が商品の出入口として開放されているため、ここから暖かい外気が流入し、これに含まれる湿気が冷却器で結露し霜となる。
【0004】
そして、この着霜により冷却器の能力が低下することを防ぐため、適宜除霜するが、除霜された水分がドレン水として発生する。
【0005】
このドレン水は、通常は排水用のパイプが接続されてこのパイプで店舗外の排水溝に導かれるが、パイプが接続されるとこの配管によってショーケースの設置位置が固定される。そこで、移動が容易なように圧縮機が組み込まれているショーケースでは、移動性が損なわれないようドレン水もショーケース内に設置したドレンパンやドレンタンクなどのドレン水受け4に貯留している。
【0006】
このようにドレン水受け4にドレン水を溜める場合、定期的に排水する必要が生じるが、ドレン水の発生量は天候や、ショーケースのサイズや温度帯、庫内に収納している商品の量などによって左右される。
【0007】
ドレン水の満水を検知する方法として、超音波センサーを水位センサーとして使用する方法があり、ドレン水受け4の上方に水位センサー5を設置し、ここから水面に向けて発信した超音波が水面に反射して戻り受信されるまでの時間を計測して水位センサー5と水面との距離、すなわち水位を計測するものである(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−59765号公報
【0008】
超音波センサーを使用する方法は、図15、図16に示すように水位センサー5である超音波センサーの水位センサー音波発振部11を制御するパルス発振部である送信回路部12から発信されたパルス信号が水面で反射されて受信回路部13に戻るまでの時間を計測し、この時間をもとに演算処理回路部14で水位センサー5と水面との距離、すなわち水位を算出するもので、受信回路部13はショーケースコントローラ8に接続される。
【0009】
一般に超音波センサーでは、測定距離を延ばすためには超音波信号の減衰分を考慮して超音波発振素子への入力を上げ音圧を高めることが必要とされる一方で、近距離測定のためには送信波形に受信波形が重ならないよう、送信波形の影響を短くするために音圧を下げる必要がある。それでも通常PZT素子で使用できる20KHzの周波数では駆動電圧の雑音や安定度が精度に影響して70mm以下を正確に測定することが不可となる。
【0010】
図17に示すように送信波形に受信波形が重なる距離は実際には80mm程度であり、受信波形の減衰で受信確認できなくなる距離が約200mmである。これにより、正常に測定できる範囲は80mm以上であることがわかる。
【0011】
図14は超音波センサーを水位センサー5として使用する場合の、ドレン水受け4との関係の一例を示す正面図で、機械室3の高さは一例として300mmであり、図17で説明した水位センサー5で正常に距離測定できる範囲を確保できる。機械室3のこの限定された高さの範囲内に水位センサー5とドレン水受け4を配置することになるが、ドレン水受け4は、水位センサー5との距離を確保するために高さの低いもの(深さの浅いもの)として例えば40mm程度のものとする。
【0012】
そして、ドレン水受け4の口縁を限界レベルとしてこの限界レベルと水位センサー5の超音波発信素子兼受信素子10との距離を、水位センサー5で正常に測定できる範囲の最小限値である70mmに設定し、この限界レベルよりもさらに10mm下方に満水レベルを設定する。
【0013】
これにより、満水レベルが水位センサー5の発信部から80mm離れた高さに位置し、満水レベルを正常測定可能範囲内に確実に位置させることができ、ドレン水受け4からドレン水が溢れるまで10mmの余裕を残してこの満水レベルで満水を報知するようにした。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記のように水位を測定する方法として超音波を使用し、この超音波が発信されてから戻るまでの時間を計測し、この時間を対応する信号に変換して外部に出力し、この出力をコントローラが受けて距離を算出する方法の場合、水位センサーそのものに製造段階で不具合が発生していた場合や、水位センサーに埃などが付着していた場合、水位センサーの取付角度が正常でなかった場合などの各種要因によって、発信した超音波が正しい反射波となって受信されないことがある。
【0015】
その結果、水位を正確に測定できないことになり、外乱での誤動作が増したり、図18に示すように検知距離範囲が少なくなるなどの不具合が生じる。
【0016】
また、距離としてデータを出力する場合、正しい反射波が本当に受信されているのかも判明できず、さらに、水位を正確に検出できない原因が水位センサー自体にあるのか、水位センサーの取付作業にあったのかも判明できず、的確な対処方法を得ることが困難であった。
【0017】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、超音波センサーを水位センサーとして使用してドレン水受けに貯留したドレン水の満水を検知する場合に、距離データ以外のデータを採用して水位を検出することで正確な水位を検出できるようにした距離測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は前記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、水位センサーとしての超音波センサーから発信される超音波を測定用の媒体として距離を測定する距離測定装置において、受信波が測定されるまでの時間に基づいて距離を出力する手段と、受信量を出力する手段とを設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように本発明の距離測定装置は、超音波センサーを水位センサーとして使用してドレン水受けに貯留したドレン水の満水を検知する場合に、受信波が測定されるまでの時間をもとにして算出される距離データ以外に、受信波の受信量のデータを採用して両データから水位を検出することで正確な水位を検出できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の距離測定装置の第1実施形態を制御ブロック図、図2は同上水位センサーの斜視図で、本発明が実施されるショーケースの全体構成は図13について説明した従来例と同様であるから同一の参照符号を付してここでの詳細な説明は省略する。
【0021】
本発明の距離測定装置は超音波センサーによる水位センサー5であり、超音波発信素子兼受信素子10と制御部17とを内蔵し、制御部17の出力側に超音波発信回路15を介して超音波発信素子兼受信素子10が接続され、入力側に超音波受信回路16を介して超音波発信素子兼受信素子10が接続される。
【0022】
さらに、制御部17からの距離数値出力と受信波高値出力を水位センサー5に取り付けたコネクタ18に出力する。図2において、18aはセンサー電源、18bは距離数値の信号出力、18cは受信波高値の信号出力を示す。
【0023】
これにより、超音波発信素子兼受信素子10からドレン水受け4内のドレン水の水面に向って発信された超音波は、水面で反射して超音波発信素子兼受信素子10に戻ったとき、超音波受信回路16を介して発信されてから受信されるまでの時間が制御部17に入力されるが、制御部17では時間をもとにして距離データをコネクタ18の距離数値情報の信号出力18bに出力するとともに、受信波の受信量(電圧)を受信波高値の信号出力18cに出力する。
【0024】
このように、受信波は距離データに変換されるだけでなく、電圧にも変換される。この場合、電圧値(受信波高値)は、距離が大きくなるにしたがい、減衰し戻ったときの値は下がって小さくなっている。よって、変換されて信号出力18bに出力された距離データと信号出力18cに出力された受信波高値とを比較し、整合性があれば両データは正しいものと判断され、水位センサー5の取付位置は正常であると判断される。
【0025】
図3、図4は第2実施形態を示し、基本構成は第1実施形態と同様であるが、距離数値出力と受信波高値出力とが出力される制御部17の出力側とコネクタ18との間に出力切換回路19を介在させ、この出力切換回路19に切換スイッチ20を接続した。
【0026】
そして、水位センサー5のケースに取り付けたコネクタ18に、距離数値出力または受信波高値出力のいずれか選択された信号を出力する信号出力18dを設ける。
【0027】
また、前記切換スイッチ20は、距離出力のスイッチ20aと波高値出力のスイッチ20bとで構成する。
【0028】
よって、水位センサー5の取付位置などを判断する場合に、切換えスイッチ20を操作して距離出力のスイッチ20aをオンすれば距離数値が出力され、波高値出力のスイッチ20bをオンすればHL出力で距離が100mm以下の場合は0Vを出力し、100mm以上の場合は5Vを出力する。
【0029】
図5、図6は第3実施形態を示し、制御部17からコネクタ18に対して、距離数値出力と波高値出力とを交互に出力するように設定しておく。距離数値出力と波高値出力とは同時に出力されず、交互に出力されるものであっても比較するには十分であり、サービスマンなどに提供する情報として不足はない。
【0030】
図7、図8は第4実施形態を示し、ショーケースコントローラ8に水位センサー接続用のコネクタ21を設け、ショーケースコントローラ8と水位センサー5とを接続する。そして、ショーケースコントローラ8側から水位センサー5に出力される出力切換え要求信号により、水位センサー5の制御部17では距離出力または波高値出力のいずれかをショーケースコントローラ8に出力する。
【0031】
これにより、サービスマンなどがショーケースコントローラ8を操作することで、距離データまたは波高値のいずれか、得たいデータを得たい時に知ることができる。この場合は、第2実施形態のような切換えスイッチを水位センサー5に取り付ける必要がない。
【0032】
図9、図10は第5実施形態を示し、基本構成は第4実施形態のように距離出力または波高値出力のいずれかをコネクタ18を介して出力するが、電源を投入した直後の一定の時間内、例えば4秒間は波高値データのみを水位センサー5からショーケースコントローラ8に出力する。
【0033】
これにより距離データにA/D変換されてデジタル表示される前の電圧を波高値データとして直接知ることができ、データ精度を向上できる。
【0034】
図11、図12は第6実施形態を示し、これはドレン水の水面と水位センサー5との距離を測定する場合、正常と判断される距離の範囲の設定方法である。図11のフローチャーチについて正常範囲の距離測定方法を説明する。
【0035】
ドレン水の水面距離測定のモードに設定され(ステップ1)、電源オンしたときに、水位センサー5で受信される受信波形の電圧が、算出された距離データと比較したときに正常範囲であったとき(ステップ2)、ゲイン補正係数を算出する(ステップ3)。
【0036】
ゲイン補正係数=受信波形電圧÷距離−電圧特性センター値であり、こうして得られたゲイン補正係数を用いて、その後の通常のドレン水の水面距離の測定を行う(ステップ4)。
【0037】
ゲイン補正係数を用いた水面距離測定は、図12のグラフにも示すように正常範囲は、電圧特性センター値による距離だけでなく、その前後も一定の幅で正常であり、この範囲を電圧特性正常限界とした。
【0038】
前記(ステップ2)の段階で、正常範囲でない判断された時は、水位センサー異常と判断して距離異常判定信号を出力する(ステップ5)。
【0039】
距離異常判定の出力としては、例えば、水位センサー5の本体に異常警報用のLEDランプを取り付ける、水位センサー5に専用の出力線を設ける、距離情報のデータ一覧にセンサー異常コードを割付し、そのコードを出力する、など、種々の方法が考えられ、使用者のニーズにより選択する。
【0040】
なお、このショーケースコントローラ8の自己判断による異常判定は毎回の測定で行ってもよいが、ソフト上での外乱防止用のフィルター機能を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の距離測定装置の第1実施形態を示す制御ブロック図である。
【図2】本発明の距離測定装置の第1実施形態を示す水位センサーの斜視図である。
【図3】本発明の距離測定装置の第2実施形態を示す制御ブロック図である。
【図4】本発明の距離測定装置の第2実施形態を示す水位センサーの斜視図である。
【図5】本発明の距離測定装置の第3実施形態を示す制御ブロック図である。
【図6】本発明の距離測定装置の3実施形態を示す出力図である。
【図7】本発明の距離測定装置の第4実施形態を示す制御ブロック図である。
【図8】本発明の距離測定装置の第4実施形態を示す出力図である。
【図9】本発明の距離測定装置の第5実施形態を示す制御ブロック図である。
【図10】本発明の距離測定装置の第5実施形態を示す出力図である。
【図11】本発明の距離測定装置の第6実施形態を示す距離測定動作のフローチャートである。
【図12】本発明の距離測定装置の第6実施形態を示す正常範囲の距離を示すグラフである。
【図13】ドレン水検知装置を備えた冷凍冷蔵ショーケースの斜視図である。
【図14】ドレン水検知装置の正面図である。
【図15】水位センサーの制御ブロック図である。
【図16】水位センサーの波形図である。
【図17】水位センサーによる測定可能範囲を示すグラフである。
【図18】受信波形の波高値と距離との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0042】
1 商品収納庫 2 凝縮器
3 機械室 4 ドレン水受け
5 水位センサー 6 凝縮機ファン
7 蒸発板 8 ショーケースコントローラ
9 満水警報ランプ 10 超音波発信素子兼受信素子
11 水位センサー音波発振部 12 送信回路部
13 受信回路部 14 演算処理回路部
15 超音波発信回路 16 超音波受信回路
17 制御部 18 コネクタ
18a センサー電源 18b、18c、18d 信号出力
19 出力切換回路 20 切換スイッチ
20a、20b スイッチ 21 水位センサー接続用コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水位センサーとしての超音波センサーから発信される超音波を測定用の媒体として距離を測定する距離測定装置において、受信波が測定されるまでの時間に基づいて距離を出力する手段と、受信量を出力する手段とを設けたことを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記受信量の出力は、外部信号により行うことを特徴とする請求項1記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記受信量の出力は、距離情報出力部への信号入力で行うことを特徴とする距離測定装置。
【請求項4】
前記受信量の出力は、電源投入直後の所定時間内に行うことを特徴とする請求項1記載の距離測定装置。
【請求項5】
水位センサーとしての超音波センサーから発信される超音波を測定用の媒体として距離を測定する距離測定装置において、測定された距離データと、受信波の受信量データとを比較して、想定範囲外の場合に異常であることを自己判断する手段を備えることを特徴とする距離測定装置。
【請求項6】
水位センサーとしての超音波センサーから発信される超音波を測定用の媒体として距離を測定する距離測定装置において、所定の条件のもとで測定した距離データと、受信波データの感度とを比較して、受信量の補正値を決定する手段を備えることを特徴とする距離測定装置。
【請求項7】
前記受信量の補正値は、この値を外部に報知することを特徴とする請求項6記載の距離測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−180531(P2008−180531A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12588(P2007−12588)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)
【Fターム(参考)】