説明

路盤内の蓄積ひずみの計測方法

【課題】路盤内に蓄積されたひずみを精度良く計測する。
【解決手段】計測箇所のアスファルトコンクリート層Bを除去して路盤Aを露出させた後、露出した路盤Aに所定の間隔をおいて1対の測定用ロッド1a,1bを打ち込み固定するとともに、路盤面から突き出た両測定用ロッド1a,1bの上部に変位計2の両端を固定し、変位計2による計測を開始した後、1対の測定用ロッド1a,1bを囲むようにして、アスファルトコンクリート層Bおよびその下層の路盤Aまたは露出した路盤Aを、カッターを用いて全層厚方向で切断し、計測箇所の路盤Aを切り離すことにより計測箇所の路盤Aに蓄積されたひずみを開放し、変位計2で測定された変位に基づき開放ひずみを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路、歩道、駐車場などの路盤に蓄積されたひずみを計測するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路や駐車場などの路盤材としては、天然系の材料の他に、コンクリート廃材や鉄鋼スラグなどが用いられている。施工した路盤材に、遊離CaO、遊離MgO、或いはエトリンガイト(3CaO・AlO・3CaSO・32HO)鉱物を生成する成分が含まれていると、遊離CaOや遊離MgOによる水和物の生成、或いはエトリンガイトの生成によって路盤が膨張し、この膨張量が大きい場合には、路盤に隆起、ひび割れ、せん断破壊などのような変状が生じる場合がある。路盤に、このような変状が生じる恐れがあるか否かを評価・予測するためには、路盤内の蓄積ひずみを把握することが有効である。
岩盤などの蓄積ひずみを計測するための方法として、オーバーコアリング式応力開放法が知られている。この方法は、計測すべき箇所をボーリングし、そのボーリング孔にひずみゲージを貼り付け、さらにオーバーコアリングすることで応力を開放し、その際に生じる開放ひずみを計測するものである。
【0003】
特許文献1には、ドリル軸に対して駆動モータ回転軸が同一軸心上にないコアドリル装置により、オーバーコアリング中においても連続的に計測できるオーバーコアリング式応力開放法が示されている。
また、特許文献2には、計測すべき箇所をボーリングし、そのボーリング孔にレーザー型変位計センサーを挿入して孔の断面形状を計測し、計測した孔の断面形状のひずみ量の変化から、空洞周辺の地盤応力を求める方法が示されており、この方法は、オーバーコアリング式応力開放法におけるひずみゲージの貼り付けとオーバーコアリング作業を省いたものである。
【特許文献1】特開2005−10122号公報
【特許文献2】特開2004−170210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オーバーコアリング式応力開放法は、岩盤やコンクリートなどのような強固なものを適用対象としており、ボーリングした際に、壁面や底面に凹凸を生じることなく、ほぼ均一に施工できることが前提となっている。ボーリングした際に壁面や底面に凹凸が生じるような場合には、ボーリング孔にひずみゲージを貼り付けて開放ひずみを精度良く計測することは困難である。
同様に特許文献2の方法においても、真円状にボーリングした孔が作用応力により楕円形に変形する原理を応用した測定方法を用いているため、ボーリングした壁面や底面に凹凸がある場合には、精度良く計測することは困難である。
【0005】
本発明が対象とする道路、歩道、駐車場などの路盤は、岩盤やコンクリートに較べて強度が小さく、しかも様々な粒径の砕石が不均一に混ざり合っているため、均一なボーリング孔を開けることは困難であり、ボーリング中に砕石がコアドリルに噛み合って壁面や底面が部分的に崩壊し、凹凸を生じることになる。したがって、オーバーコアリング式応力開放法や特許文献2による方法を適用することは困難である。また、路盤は様々な粒径の砕石が不均一に混ざり合っているため、オーバーコアリング式応力開放法や特許文献2の方法では、局所的な応力の影響を受けやすく、路盤の全体的な性状として蓄積ひずみを精度良く計測することは困難である。
【0006】
したがって本発明の目的は、道路、歩道、駐車場などの路盤内に蓄積されたひずみを精度良く計測することができる計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、以下を要旨とするものである。
[1]上層にアスファルトコンクリート層(B)が設けられた路盤(A)内に蓄積されたひずみを計測するための方法であって、下記(イ)〜(ホ)の工程を有することを特徴とする路盤内の蓄積ひずみの計測方法。
(イ)計測箇所のアスファルトコンクリート層(B)を除去して路盤(A)を露出させる。
(ロ)露出した路盤(A)に所定の間隔をおいて1対の測定用ロッド(1a),(1b)を打ち込み固定するとともに、路盤面から突き出た両測定用ロッド(1a),(1b)の上部に変位計(2)の両端を固定する。
(ハ)変位計(2)による計測を開始する。
(ニ)1対の測定用ロッド(1a),(1b)を囲むようにして、アスファルトコンクリート層(B)およびその下層の路盤(A)または露出した路盤(A)を、カッターを用いて全層厚方向で切断し、計測箇所の路盤(A)を切り離すことにより計測箇所の路盤(A)に蓄積されたひずみを開放する。
(ホ)変位計(2)で測定された変位に基づき開放ひずみを求める。
[2]上記[1]の計測方法において、測定用ロッド(1a),(1b)がアンカーボルトであることを特徴とする路盤内の蓄積ひずみの計測方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の計測方法は、ボーリング孔の側面や底面でひずみを計測する従来方法と異なり、ひずみを開放する位置とひずみの計測位置が異なるため、施工した面の不均一性や施工誤差の影響をほとんど受けない。このため、従来方法では適用が困難である、強度が小さく、様々な粒径の砕石が不均一に混ざり合っている路盤に蓄積されたひずみを精度良く計測することができる。また、本発明の計測方法では、ひずみの計測位置、路盤を切断してひずみを開放する位置、測定長などを任意に設定することができるので、測定長を大きくすることにより、材料や施工のばらつきが大きい不均一な路盤でも、平均化された開放ひずみを計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1(i)〜(iv)は、本発明の計測方法の一実施形態を工程順に示すものである。
図において、Aは路盤、Bはこの路盤の上層に設けられるアスファルトコンクリート層、Cは路盤Aが設けられる路床である。本発明は、このように上層にアスファルトコンクリート層Bが設けられた路盤A内の蓄積ひずみを計測するための方法である。
本実施形態では、まず図1(i)に示すように、計測箇所のアスファルトコンクリート層Bを、アスファルトカッターなどを用いて所定の範囲で切断・除去し、路盤Aを露出させる(以上、(イ)の工程)。除去するアスファルトコンクリート層Bの広さは任意であるが、一般には、1つの計測点(下記する1対の測定用ロッド1a,1bと変位計2による計測点)当たり、0.1〜2m程度が適当である。
【0010】
次いで、図1(ii)に示すように、露出した路盤Aに所定の間隔をおいて1対の測定用ロッド1a,1bを打ち込み固定する。この測定用ロッド1a,1bは、路盤A内に打ち込み(貫入)可能で且つその頭部などに変位計を固定できるものであれば、形態や構造に特別な制限はないが、通常は、作業の容易性や路盤に対する測定用ロッドの取付安定性などの観点から、アンカーボルトが用いられる。このアンカーボルトとしては、例えば、心棒打ち込み式アンカーボルト、ケミカルアンカーボルトなど、任意の形式のものを用いることができる。1対の測定用ロッド1a,1bの間隔Lは、対象とする路盤Aの状態に応じて所望の測定精度が得られるよう、使用する変位計の長さに応じて適宜設定される。
【0011】
打ち込まれた測定用ロッド1a,1bは、頭部が路盤面から突き出ており、図1(iii)に示すように、変位計2を両測定用ロッド1a,1bの頭部間に掛け渡すように配置し、変位計2の両端を両測定用ロッド1a,1bの頭部に各々固定する(以上、(ロ)の工程)。
路盤Aは様々な粒径の砕石が不均一に混ざり合っているため、平均化した値を得たい場合には変位計2の測定長を大きくすることが望ましく、例えば、測定長300mmのパイ型変位計を用いることが好ましい。
【0012】
以上により、路盤Aに対する測定手段の設置が完了し、次に、変位計2をデータレコーダに接続し、変位の初期値を取って計測を開始する((ハ)の工程)。計測した変位を測定長で除すことでひずみが得られる。
このような計測を継続した状態で、図1(iv)に示すように、1対の測定用ロッド1a,1bを囲むようにして、アスファルトコンクリート層Bとその下層の路盤Aを、アスファルトカッターなどを用いて全層厚方向で切断3し(路床Cに達するまで切断する)、計測箇所の路盤Aを切り離すことにより計測箇所の路盤Aに蓄積されたひずみを開放する((ニ)の工程)。
【0013】
切断部3の位置は基本的に任意であるが、通常、露出した路盤Aの外縁の外側50〜100mm程度の位置(図1では50mmとしてある)を、1対の測定用ロッド1a,1bを囲むようにして四角形状または矩形状などの形状に切断する。また、1対の測定用ロッド1a,1bを囲むようにして、露出した路盤Aの位置で切断3することもできるが、アスファルトカッターなどで路盤Aのみを切断した場合、路盤Aを構成する砕石が飛び散ることがあり、またこのため切断面が不揃いになりやすい傾向がある。このため路盤Aの切断部3は、アスファルトコンクリート層Bが存在する位置とすることが好ましい。
以上のように計測箇所の路盤Aに蓄積されたひずみが開放された際の変位が変位計2で測定され、この変位に基づき開放ひずみが求められる((ホ)の工程)。すなわち、図2に示す変位(ひずみ)−時間の関係から開放ひずみが求められる。
【0014】
図3は、本発明法のより具体的な実施形態を示す平面図である。この例では、測定箇所のアスファルトコンクリート層Bを長さ700mm×幅2000mmの範囲で除去し、路盤Aを露出させてある。そして、この露出した路盤Aに対して、500mmピッチで3組の測定用ロッド1a,1bと変位計2が設置されている。各変位計2は測定長が300mmであり、各々の計測データがデータレコーダに送られる。また、各変位計2は、路盤Aのひずみ開放のために行うアスファルトカッターによる切断作業の影響を受けないようにするため、露出した路盤Aの外縁から200mm程度離して設置されている。露出した路盤Aの外縁の外側50mmの位置が切断部3となる。
【0015】
本発明法により、図3に示すような3組の測定用ロッド1a,1bと変位計2(計測装置x,y,z)を用いて実路盤の計測を行なった際の変位量の推移を図4に示す。蓄積ひずみを解放した直後からプラス(引張側)の変位が生じており、路盤が伸張していることが判る。この結果から、路盤Aは圧縮応力を受けていたと判断できる。また、気温が安定する夜間から早朝にかけては、変位量が安定しており、本発明による計測方法により安定した計測結果が得られることが判った。参考値として、10時間後、20時間後の開放ひずみを表1に示す。開放ひずみ(%)は、変位量÷測定長×100により算出することができる。
【0016】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明法の一実施形態を工程順に示す説明図
【図2】変位計で計測される変位(ひずみ)と時間との関係を示すグラフ
【図3】本発明法のより具体的な実施形態を示す平面図
【図4】本発明法により実路盤の計測を行なった際の変位量の推移を示すグラフ
【符号の説明】
【0018】
A 路盤
B,B アスファルトコンクリート層
C 路床
1a,1b 測定用ロッド
2 変位計
3 切断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上層にアスファルトコンクリート層(B)が設けられた路盤(A)内に蓄積されたひずみを計測するための方法であって、下記(イ)〜(ホ)の工程を有することを特徴とする路盤内の蓄積ひずみの計測方法。
(イ)計測箇所のアスファルトコンクリート層(B)を除去して路盤(A)を露出させる。
(ロ)露出した路盤(A)に所定の間隔をおいて1対の測定用ロッド(1a),(1b)を打ち込み固定するとともに、路盤面から突き出た両測定用ロッド(1a),(1b)の上部に変位計(2)の両端を固定する。
(ハ)変位計(2)による計測を開始する。
(ニ)1対の測定用ロッド(1a),(1b)を囲むようにして、アスファルトコンクリート層(B)およびその下層の路盤(A)または露出した路盤(A)を、カッターを用いて全層厚方向で切断し、計測箇所の路盤(A)を切り離すことにより計測箇所の路盤(A)に蓄積されたひずみを開放する。
(ホ)変位計(2)で測定された変位に基づき開放ひずみを求める。
【請求項2】
測定用ロッド(1a),(1b)がアンカーボルトであることを特徴とする請求項1に記載の路盤内の蓄積ひずみの計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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