説明

路面排水処理装置

【課題】路面排水からの汚染物質の除去処理を簡易且つ安価な構成によって確実に行い得る路面排水処理装置を提供する。
【解決手段】、処理ユニットUが、排出路102、107に接続される第1流路2と、該第1流路2の上流側部位に設けた流入口17と下流側部位に設けた流出口18を接続する第2流路3を備え、第1流路2と第2流路3の何れか一方に、濾過体20を配設する一方、第1流路2への路面排水の流入量が所定量以下であるときには該路面排水を濾過体20が配設された側の流路へ誘導し、路面排水が所定量以上であるときには該路面排水を第1流路2と第2流路3の双方へ誘導する分水手段6を備えて構成される。係る構成によれば、処理槽の設置を必要としないので、路面排水処理装置をより安価に提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、高速道路等の路面に降った雨水とか路面洗浄水等の路面排水を集水し、排出路を通して路面外へ排出するようにした路面排水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車が走行する道路の路面上には、自動車の排気ガス中の有害物質を含んだ微粒子、濁水の原因となる微粒子、タイヤの摩耗塵、アスファルト摩耗塵等の環境破壊を招来する恐れのある様々な物質(以下、これらを総称して「汚染物質」という)が堆積している。
【0003】
このような路面上に堆積した汚染物質は、降雨によって洗い流され、雨水に混入した状態で雨水と共に側溝に集水され、該側溝を通って路面排水として放水路へ排出される。
【0004】
ところで、各種の汚染物質が混入した路面排水を何等の汚染物質除去処理を行うことなくそのまま放水路へ排出すると、この汚染物質が河川に流入して水質汚染を引き起こすとか、土壌中に浸透して土壌汚染を引き起こす危険性のあることは容易に想像でき、そのため路面排水に混入した汚染物質の除去を主旨とする路面排水処理技術が種々提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0005】
一方、汚染物質の除去を目的とする路面排水処理技術を開発するに際しては、降雨開始時点からの時間の経過に伴う「路面排水量の変化」と、路面排水への「汚染物質の混入量の変化」の関係を考慮することが必要である。
【0006】
「路面排水量の変化」 路面排水はその殆どが雨水によってもたらされるものである。そして、路面排水量は、時間当たりの雨量が少ない「小降り状態」であっても、時間当たりの雨量が多い「大降り状態」であっても、また断続的な降雨であっても「継続的な降雨」であっても、「降雨の継続時間」という観点からすれば、これら何れの場合も、「降雨の継続時間の経過とともに路面排水量が増加する」ものとして総括できる。
【0007】
「汚染物質の混入量の変化」 路面に堆積した汚染物質は雨水によって洗い流されるが、その多くは降雨初期の雨水によって集中的に洗い流される。従って、降雨初期の路面排水には汚染物質が多量に含まれるが、それ以降の路面排水には汚染物質は殆ど含まれていない、換言すれば、汚染物質は降雨初期の路面排水に集中する、と考えられる。
【0008】
これら二点を勘案すれば、降雨初期に発生する路面排水、いわゆる「初期フラッシュ排水」には「水量は少ないが汚染物質の混入量は多い」という特性がある一方、それ以降に発生する路面排水には「汚染物質の混入量は極めて少ないものの、その水量が多い」という特性がある。
【0009】
以上のことから、路面排水の全量に対して同じような浄化処理を行うのは非現実的であり、汚染物質の混入量の多い初期フラッシュ排水に対してのみ浄化処理を行うべきであると考えられ、係る観点から、路面排水を初期フラッシュ排水とこれ以外の排水に分水し、初期フラッシュ排水を処理対象とする技術も提案されている(例えば、特許文献2〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】 特開2003−286741号公報
【特許文献2】 特開2004−183376号公報
【特許文献3】 特開2001−334257号公報
【特許文献4】 特開2006−028844号公報
【特許文献5】 特開2009−035963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、特許文献1〜5に示されるものは、共に、路面排水を、地面に設置した処理槽に導入し、処理槽内において汚染物質を濾過により除去するもの(特許文献1)、処理槽内において汚染物質を沈殿除去するもの(特許文献2、5)、処理槽内において汚染物質を沈殿及び濾過により除去するもの(特許文献3)、処理槽内において汚染物質を旋回分離により除去するもの(特許文献4)であって、何れも処理槽を用いることから、大きな設置スペースを必要とし、その結果、装置の設置に伴うイニシャルコストが高くつくとともに、処理槽に溜まった汚染物質の取り除き作業が面倒であり、その維持管理に係るランニングコストも高くつくという問題がある。
【0012】
また、特許文献1〜5のそれぞれに固有の問題としては以下の点が挙げられる。
【0013】
特許文献1に示されるものは、路側の溜枡に集水した路面排水を路肩に設置した雨水浄化構築物(処理槽)に導入し、該雨水浄化構築物内で該路面排水に混入している汚染物質を濾過にて除去して浄化水として排出するものであるが、この場合、溜枡から導入される路面排水を、降雨の初期に生じた路面排水か、それ以後に生じた路面排水かを区別することなく、その全量をフィルターに通して濾過する構成であって、ここには路面排水を初期降雨による初期フラッシュ排水とそれ以後の降雨による路面排水とを区別する分水に関する思想がなく、さらに言えば汚染物質の混入量が多い初期フラッシュ排水のみを処理対象として効率的な路面排水処理を行うという思想はなく、この点からして、路面排水の処理技術としては不十分なものと言える。
【0014】
特許文献2に示されるものは、「道路側溝排水枡蓋」を、該排水枡蓋の外周縁に沿って設けられた集水溝とその内側に位置する大きな開口部からなる二重構造とし、水量の少ない初期フラッシュ排水を上記集水溝に導入し、これを処理槽に流入させる一方、それ以降の水量の多い路面排水を上記開口から直接処理槽へ流入させることで、初期フラッシュ排水とそれ以降の路面排水を分水するようにしている。しかし、この分水機能は、路面勾配に依存して上記排水枡蓋側へ流れてくる路面排水を、初期フラッシュ排水とそれ以外の路面排水との間における水量差及び流速差を利用して分水するものであるため、路面状態(例えば、路面上における土砂の堆積状態等)によって分水能力が左右されることが懸念され、路面排水をより確実に処理することが要求される路面排水処理装置としては十分ではなく、改善の余地がある。
【0015】
特許文献3に示されるものは、処理槽にU型の初期フラッシュ排水の流路を設け、その流入口から流入する初期フラッシュ排水を一旦降下移動させてその底部で汚染物質を沈殿除去し、さらに初期フラッシュ排水を上記底部から流出口へ向けて上昇移動させるとともに、この上昇移動の間に上昇流路に設けた処理体で汚染物質を濾過し、最終的に上記流出口から排出させるようになっている。しかし、初期フラッシュ排水の流れは、上記流入口と流出口のヘッド差に依存し、流入に伴う動圧は殆ど寄与しない構成であるところ、このヘッド差自体が少ないため上記処理体透過時の圧損の影響が顕著となり、その結果、初期フラッシュ排水の流れは極めて緩慢となり、初期フラッシュ排水からの汚染物質の除去機能は低いものと考えられ、路面排水をより確実に処理することが要求される路面排水処理装置としては満足できるものではない。
【0016】
特許文献4及び特許文献5に示されるものは、ともに、初期フラッシュ排水に混入した汚染物質を旋回分離によって除去するものであるが、初期フラッシュ排水はその水量が少ないことから、旋回分離機能は低いものとならざるを得ず、従って、汚染物質の除去機能の信頼性という点において問題がある。
【0017】
そこで本願発明は、上述のごとき従来技術の問題点に鑑み、路面排水からの汚染物質の除去処理を簡易且つ安価な構成によって確実に行いえるようにした路面排水処理装置を提案することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0019】
本願の第1の発明では、路面排水を集水して排水する排出路102、107に処理ユニットUを付設して構成される路面排水処理装置において、上記処理ユニットUが、上記排出路102、107に接続される第1流路2と、該第1流路2の上流側部位に設けた流入口17と下流側部位に設けた流出口18を接続する第2流路3を備えるとともに、上記第1流路2の上記流入口17と上記流出口18の間に又は上記第2流路3の何れか一方に、濾材30を備えた濾過体20が配設される一方、上記流入口17又はその近傍に、上記第1流路2に流入する路面排水の流入量が所定量以下であるときには該路面排水を上記濾過体が配設された側の流路へ誘導し、路面排水が所定量以上であるときには該路面排水を上記第1流路2と上記第2流路3の双方へ誘導する分水手段6を備えていることを特徴としている。
【0020】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る路面排水処理装置において、上記分水手段6を、上記流入口17部分において上記第1流路2の底面高さを上記第2流路3の底面高さよりも低位に設定して構成するとともに、上記第1流路2に上記濾過体20を配設したことを特徴としている。
【0021】
本願の第3の発明では、上記第1の発明に係る路面排水処理装置において、上記分水手段6を、上記流入口17部分において上記第1流路2の底面高さと上記第2流路3の底面高さを略同一に設定するとともに、上記第1流路2側にその底面から所定高さに立ち上がる堰板16を設けて構成する一方、上記第2流路3に上記濾過体20を配設した
ことを特徴としている。
【0022】
本願の第4の発明では、上記第1の発明に係る路面排水処理装置において、上記分水手段6を、上記流入口17を上記第1流路2の底面に設け且つ該流入口17を上記第2流路3に接続して構成するとともに、上記第2流路3に上記濾過体20を配設したことを特徴としている。
【0023】
本願の第5の発明では、路面排水を集水して排水する排出路102、107に処理ユニットUを付設して構成される路面排水処理装置において、上記処理ユニットUが、上記排出路102に接続される流路5を備える一方、上記流路5は、その下流側流路部5bの流路深さが上流側流路部5aの流路深さよりも深くなるように構成するとともに、上記下流側流路部5bの底壁上に濾材30を備えた濾過体20を配設したことを特徴としている。
【0024】
本願の第6の発明では、上記第1又は第5の発明に係る路面排水処理装置において、上記濾過体20を、上記第1流路2又は上記第2流路3又は上記流路5の流路方向に前後して併設される複数の濾過体21、22、23で構成するとともに、上記濾材30を、上記各濾過体21、22、23にそれぞれ収納配置された複数の濾材31,32,33で構成したことを特徴としている。
【0025】
本願の第7の発明では、上記第6の発明に係る路面排水処理装置において、上記濾過体21、22、23を、上記第1流路2又は上記第2流路3又は上記流路5に対して着脱自在に構成したことを特徴としている。
【0026】
本願の第8の発明では、上記第6の発明に係る路面排水処理装置において、上記各濾材31,32,33を、繊維素材で構成された繊維濾材、濾過砂、濾過砂利、活性炭の何れか一つ又は二つ以上を主要素として構成したことを特徴としている。
【0027】
本願の第9の発明では、上記第1又は第5の発明に係る路面排水処理装置において、上記濾過体20の上流側に、路面排水に混入している夾雑物を捕集除去する前処理体19を配設したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
(a−1)本願の第1の発明に係る路面排水処理装置では、上記処理ユニットUが、上記排出路102、107に接続される第1流路2と、該第1流路2の上流側部位に設けた流入口17と下流側部位に設けた流出口18を接続する第2流路3を備えた極めて簡単で且つコンパクトな構成であることから、例えば、路面排水を処理槽に導入し該処理槽において汚染物質の除去処理を行う従来の路面排水処理装置のように大型の処理槽の設置を必要とせず、設置スペースという面での設置自由度が高く、また大規模な土木建築工事も必要とせず、これらの結果として、設置コストの低廉化が促進され、延いては路面排水処理装置をより安価に提供することができる。
【0029】
(a−2)上記第1流路2の上記流入口17と上記流出口18の間に又は上記第2流路3の何れか一方に、濾材30を備えた濾過体20が配設されるとともに、上記流入口17又はその近傍に設けた分水手段6を備えて、上記第1流路2に流入する路面排水の流入量が所定量以下であるときには該路面排水を上記濾過体が配設された側の流路へ誘導し、路面排水が所定量以上であるときには該路面排水を上記第1流路2と上記第2流路3の双方へ誘導するようにしているので、汚染物質の混入量が多い初期フラッシュ排水は、上記処理ユニットUへの流入量が所定量以下であるため上記分水手段6によって上記濾過体が配設された側の流路へ的確に誘導され、該流路に設けた濾過体20の濾材30を通過する際に該濾材30での濾過作用によって該初期フラッシュ排水に混入していた汚染物質が除去され、清浄な路面排水として排出されることから、例えば、汚染物質が河川等に排出されることに起因する環境破壊が可及的に防止されるなど、環境保全という面において極めて有用な効果を奏するものである。
【0030】
(a−3)
一方、初期フラッシュ排水以降においては、降雨継続時間の経過と共に路面排水の上記処理ユニットUへの流入量が増加し、さらにこれが所定量以上に達すると上記分水手段6によって該路面排水が上記第1流路2と上記第2流路3の双方へ誘導され、これら両流路2、3を通って排出されることから、上記処理ユニットUにおける路面排水の許容排出量が増大し、例えば、上記路面排水の上記処理ユニットUへの流入量が激増したような場合でも、路面排水が上記処理ユニットUから溢れ出すとか、路面排水が処理ユニットUから路面側に逆流して噴出すというような状態の発生が未然に且つ確実に回避され、これによって、路面排水処理装置の信頼性が向上する。
【0031】
(a−4)
初期フラッシュ排水以降においては、路面排水の上記処理ユニットUへの流入量が増加し、該路面排水が上記第1流路2と上記第2流路3の双方へ誘導されることから、上記濾過体20の濾材30を透過しない路面排水(即ち、汚染物質の除去処理が行われていない路面排水)の量が増加するが、元々初期フラッシュ排水以降の路面排水には汚染物質は混入していなか、混入していたとしてもその混入量は極めて少量であるため、汚染物質による環境破壊の懸念は生じない。即ち、汚染物質の混入量が多い初期フラッシュ排水については汚染物質の除去機能に重点をおき、初期フラッシュ排水以降の路面排水についてはその適正流通の確保に重点を置くという、汚染物質の発生形態に適応した路面排水処理装置を提供できる。
【0032】
(b)本願の第2の発明に係る路面排水処理装置によれば、上記(a)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記分水手段6を、上記流入口17部分において上記第1流路2の底面高さを上記第2流路3の底面高さよりも低位に設定して構成するとともに、上記第1流路2に上記濾過体20を配設しているので、上記第1流路2の底面高さと上記第2流路3の底面高さを相対的に変化させるという極めて簡単な構成によって路面排水の分水機能を実現でき、延いては路面排水処理装置の性能向上と低コスト化の両立が促進される。
【0033】
(c)本願の第3の発明に係る路面排水処理装置によれば、上記(a)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記分水手段6を、上記流入口17部分において上記第1流路2の底面高さと上記第2流路3の底面高さを略同一に設定するとともに、上記第1流路2側にその底面から所定高さに立ち上がる堰板16を設けて構成する一方、上記第2流路3に上記濾過体20を配設しているので、第1流路2側に上記堰板16を設けるという極めて簡単な構成によって路面排水の分水機能を実現でき、延いては路面排水処理装置の性能向上と低コスト化の両立が促進される。
【0034】
(d)本願の第4の発明に係る路面排水処理装置によれば、上記(a)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記分水手段6を、上記流入口17を上記第1流路2の底面に設け且つ該流入口17を上記第2流路3に接続して構成するとともに、上記第2流路3に上記濾過体20を配設しているので、上記流入口17を上記第1流路2の底面に設けるという極めて簡単な構成によって路面排水の分水機能を実現でき、延いては路面排水処理装置の性能向上と低コスト化の両立が促進される。
【0035】
(e−1)本願の第5の発明に係る路面排水処理装置によれば、上記処理ユニットUが、上記排出路102に接続される流路5を備えた極めて簡単で且つコンパクトな構成であることから、例えば、路面排水を処理槽に導入し該処理槽において汚染物質の除去処理を行う従来の路面排水処理装置のように大型の処理槽の設置を必要とせず、設置スペースという面での設置自由度が高く、また大規模な土木建築工事も必要とせず、これらの結果として、設置コストの低廉化が促進され、延いては路面排水処理装置をより安価に提供することができる。
【0036】
(e−2)上記流路5において、その下流側流路部5bの流路深さを上流側流路部5aの流路深さよりも深くなるように構成し、且つ上記下流側流路部5bの底壁上に、濾材30を備えた濾過体20を配設したので、汚染物質の混入量が多い初期フラッシュ排水は、上記処理ユニットUへの流入量が少ないため、上記上流側流路部5aの底壁側から上記下流側流路部5b側へ流れたのち、該下流側流路部5bの底壁に沿って流れることで、該下流側流路部5bの底壁上に配設された上記濾過体20の濾材30を通過する際に該濾材30での濾過作用によって該初期フラッシュ排水に混入していた汚染物質が除去され、清浄な路面排水として排出されることから、例えば、汚染物質が河川等に排出されることに起因する環境破壊が可及的に防止されるなど、環境保全という面において極めて有用な効果を奏するものである。
【0037】
(e−3)一方、初期フラッシュ排水以降においては、降雨継続時間の経過と共に路面排水の上記処理ユニットUへの流入量が増加するため、該処理ユニットUに流入する路面排水のうち、上記濾過体20の許容流量に対応する水量部分は該濾過体20側に流れて上記濾材30の濾過作用を受けるが、上記許容流量に対応する水量を越える部分は上記濾過体20の上方側を迂回して流れる。このように路面排水が上記濾過体20の上方を迂回して流れる分だけ上記処理ユニットUにおける路面排水の許容排出量が増大することとなり、例えば、上記路面排水の上記処理ユニットUへの流入量が激増したような場合でも、路面排水が上記処理ユニットUから溢れ出すとか、路面排水が処理ユニットUから路面側に逆流して噴出すというような状態の発生が未然に且つ確実に回避され、これによって、路面排水処理装置の信頼性が向上する。
【0038】
(a−4) 初期フラッシュ排水以降においては、路面排水の上記処理ユニットUへの流入量が増加し、該路面排水の一部が上記濾渦体20の上方を迂回して流れることで、上記濾過体20の濾材30を透過しない路面排水(即ち、汚染物質の除去処理が行われていない路面排水)の量が増加するが、元々初期フラッシュ排水以降の路面排水には汚染物質は混入していなか、混入していたとしてもその混入量は極めて少量であるため、汚染物質による環境破壊の懸念は生じない。即ち、汚染物質の混入量が多い初期フラッシュ排水については汚染物質の除去機能に重点をおき、初期フラッシュ排水以降の路面排水についてはその適正流通の確保に重点を置くという、汚染物質の発生形態に適応した路面排水処理装置を提供できる。
【0039】
(f−1)本願の第6の発明に係る路面排水処理装置によれば、上記(a)又は(e)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記濾過体20を、上記第1流路2又は上記第2流路3又は上記流路5の流路方向に前後して併設される複数の濾過体21、22、23で構成しているので、例えば、上記濾過体20が単体構成である場合に比して、各濾過体21、22、23をコンパクト且つ軽量に形成することができ、そのメンテナンス作業における作業性が良好となり、延いては路面排水処理装置の保守管理性のさらなる向上が期待できる。
【0040】
(f−2)また、上記濾材30を、上記各濾過体21、22、23にそれぞれ収納配置された複数の濾材31,32,33で構成しているので例えば、上各濾材31,32,33相互間において異なる種類あるいは性状の濾材を選択して使用することで、上記濾材30全体としての濾過特性を上記各使用条件に対応させて任意に設定することができ、その結果、路面排水処理装置の要求性能面での多様化が促進され、延いては路面排水処理装置の適用範囲の拡大及び汎用性の向上が期待できる。
【0041】
(g)本願の第7の発明に係る路面排水処理装置によれば、上記(f)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記各濾過体21、22、23を、上記第1流路2又は上記第2流路3又は上記流路5に対して着脱自在に構成しているので、上記各濾過体21、22、23の各濾材31,32,33において捕捉された汚染物質を取り除く等のメンテナンス作業に際しては、該各濾過体21、22、23を上記第1流路2側から取り外して十分な作業スペースがある場所でメンテナンスを実施することができ、その結果、メンテナンス作業の簡易化が促進され、延いては高い保守管理性を備えた路面排水処理装置を提供することができる。
【0042】
(h)本願の第8の発明に係る路面排水処理装置によれば、上記各濾材31,32,33を、繊維素材で構成された繊維濾材、濾過砂、濾過砂利、活性炭の何れか一つ又は二つ以上を主要素として構成しているので、これら濾材それぞれの特性を考慮してこれを適宜選択することで、上記(f)に記載の効果をより確実に得ることができる。
【0043】
(i)本願の第9の発明に係る路面排水処理装置によれば、上記(a)又は(e)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記濾過体20の上流側に、路面排水に混入している夾雑物を捕集除去する前処理体19を配設しているので、該前処理体19を通過して上記濾過体20側へ流入する初期フラッシュ排水には夾雑物が殆ど混入しておらず、従って、上記濾過体20の濾材30が夾雑物の捕捉によって目詰まり状態となるのが可及的に防止され、その結果、上記濾過体20のメンテナンス間隔の長大化が促進され、延いては路面排水処理装置のランニングコストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】 本願発明の第1の実施形態に係る路面排水処理装置を構成する処理ユニットの分解斜視図である。
【図2】 図1に示した処理ユニットの平面図である。
【図3】 図2のIII−III断面図である。
【図4】 図3のIV−IV断面図である。
【図5】 図3のV−V断面図である。
【図6】 図3のVI−VI断面図である。
【図7】 上記処理ユニットの第1の設置状態説明図である。
【図8】 上記処理ユニットの第2の設置状態説明図である。
【図9】 本願発明の第2の実施形態に係る路面排水処理装置を構成する処理ユニットの分解斜視図である。
【図10】 本願発明の第3の実施形態に係る路面排水処理装置を構成する処理ユニットの分解斜視図である。
【図11】 本願発明の第4の実施形態に係る路面排水処理装置を構成する処理ユニットの分解斜視図である。
【図12】 図11に示した処理ユニットの平面図である。
【図13】 図11に示した処理ユニットの断面図である。
【図14】 図11に示した処理ユニットの設置状態説明図である。
【図15】 本願発明の第5の実施形態に係る路面排水処理装置を構成する処理ユニットの分解斜視図である。
【図16】 図15に示した処理ユニットの縮小断面図である。
【図17】 図15に示した前処理体の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0046】
A:第1の実施形態
図1及び図2には、本願発明の第1の実施形態に係る路面排水処理装置Z(図7、図8参照)の主要部を構成する処理ユニットUを示している。
【0047】
この処理ユニットUは、図7に示すように、高速道路等の自動車用道路101の路側に延設された側溝102の途中に介設されて、該側溝102で集水された路面排水を排水処理する場合とか、図8に示すように、道路101の縁石体103に沿って延設された側溝102の途中に介設されて、上記縁石体103側の溜枡105に一時的に貯留された路面排水を上記側溝102で集水して排水処理する場合に適用されるに好適なものであり、以下、この処理ユニットUの構成を具体的に説明する。
【0048】
上記処理ユニットUは、高速道路等の自動車用道路101の路面上に降った雨水による路面排水を、これに混入した汚染物質を除去しながら路側に配置された排出路、例えば、側溝102を通して放水路へ排出させるためのものであって、次述する流路構成体1と前処理体19及び濾過体20を備えて構成される。
【0049】
上記流路構成体1は、コンクリート成形品又は樹脂成形品又は金属成形品とされ(この実施形態では、コンクリート成形品を例示している。以下、各実施形態において同様である)、第1流路2と第2流路3の二つの流路を併設した構成とされる。
【0050】
上記第1流路2は、周知の側溝102(特許請求の範囲中の「排出路」に該当する)の途中又は終端にこれと同軸上に介設される直状の流路であって、底壁2aと左右一対の側壁2b、2cによって上面が開放された略U形の断面形状を備えている。なお、この断面形状は、上記側溝102の断面形状に対応するように設定されるものであって、適用される側溝102の形状寸法に応じて適宜設定されるものである。
【0051】
上記第1流路2における一方の側壁2の流路方向の両端部を除く部分は次述する第2流路3の一方の側壁と一体となって隔壁4を構成している。そして、この隔壁4の上流側部位には流入口17が、下流側部位には流出口18が、それぞれ形成されている。この場合、上記流出口18は、図6に示すように、その下縁は上記第1流路2の底壁2aの上面と略同一高さとされている。これに対して、上記流入口17は、図4に示すように、それぞれの下縁は上記第1流路2の底壁2aの上面から上方へ高さhだけ立ち上がった位置に設定されている。即ち、上記流入口17部分においては、上記第1流路2の底壁2aの上面と上記流入口17の下縁の間に高さhの段差が設けられている。
【0052】
なお、この段差寸法hは、想定される初期フラッシュ排水の水量に対応して設定される。即ち、初期フラッシュ排水の水量は降雨の継続時間の経過とともに増加するが、その想定される最大水量が上記第1流路2に流入したと仮定した場合の該第1流路2における水位に対応する寸法程度に設定される。
【0053】
上記第2流路3は、上記隔壁4でその一方の側壁を上記隔壁4で構成するように、該隔壁4に沿って形成され、該隔壁4と底壁3aと他方の側壁3bの三者によって上面が開放した略U形の断面形状を呈している。そして、この第2流路3の上流端は上記流入口17に、下流端は上記流出口18に、それぞれ連通接続されている。従って、上記第2流路3の底壁3aは、上記流入口17の下縁と上記流出口18の下縁との高低差に対応して、図1に示すように段差面とされている。
【0054】
また、この実施形態では、上記流入口17部分における上記第1流路2の底壁2aと上記第2流路3の底壁3aの高低差(換言すれば、上記流入口17部分における第1流路2と第2流路3の水路面積の差)を考慮して、上記第2流路3の流路幅を上記第1流路2の水路幅よりも大きくしている。
【0055】
なお、この実施形態のように上記第2流路3の底壁3aの高さ位置を上記流入口17の下縁高さまで持ち上げるのに代えて、例えば、上記隔壁4のうち、上記流入口17の下縁から下側へ延出している部分を上記第1流路2側と第2流路3側を区画する「堰」として利用するようにすれば、図4及び図5にそれぞれ鎖線図示するように、上記第2流路3の底壁3aを上記第1流路2の底壁2aまで下げるとともに、その流路幅を狭めることが可能となる。
【0056】
一方、上記第1流路2における上記流入口17の下流側縁と上記流出口18の上流側縁の間には次述する濾過体20が着脱自在に収納配置される。
【0057】
上記濾過体20は、上記第1流路2に流入する初期フラッシュ排水を通してこれに混入している汚染物質を濾過除去して清浄な路面排水とするものであって、この実施形態においては第1濾過体21と第2濾過体22及び第3濾過体23の三個の濾過体で構成している。
【0058】
上記各濾過体21〜23は、上記第1流路2の底部側に収納配置位置されるものであって(図5参照)、図1に示すように、例えば、樹脂材あるいはステンレス鋼等の金属材によって上面が開口した矩形箱体に形成され、その対向する二組の側壁のうちの一組の側壁に多数の通孔26が形成されているとともに、他の一組の側壁の上部にはそれぞれ手掛部27が形成されている。また、これら各濾過体21〜23内にはそれぞれ濾材31〜33が収納されている。これら各濾材31〜33は、特許請求の範囲中の「濾材30」に該当する。
【0059】
上記各濾過体21〜23は、上記通孔26が形成された側壁が上記第1流路2の流路方向に指向するようにして、該第1流路2内にその上流側から下流側に向けて第1濾過体21、第2濾過体22、第3濾過体23の順に配置される。
【0060】
ここで、上記各濾過体21〜23内にそれぞれ収納される濾材31〜33について説明する。濾材の種類としては、繊維素材で構成された繊維濾材とか、濾過砂とか、濾過砂利又は活性炭が考えられる。
【0061】
上記繊維濾材の素材繊維としては、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ガラス繊維等があり、これらの素材繊維を用いた繊維濾材が市販されている。これら各繊維濾材は、空隙率(濾材体積から繊維体積を除いた空間率)が高いため濾過速度が高く、濾過に伴う圧損が低く、極微細粒子の捕捉も可能で、しかも軽量で且つ変形容易性に富むという素材繊維に由来する特性を有することから、濾過対象である路面排水に混入した夾雑物の形体とか汚染物質の形体及び性状等に照らして、最適なものを選択して使用すれば良い。
【0062】
また、繊維濾材の形体としては、球状、紐状、帯状、板状等のものが市販されているので、これらを選択して使用すれば良い。なお、球状の繊維濾材を用いる場合には、濾過体内にその底部側から順次球状繊維濾材を詰め込むが、特に球径の異なる複数種類の球状の繊維濾材を組み合わせて用いる場合には、濾過体の上流側から下流側に向けて球径の小さい球状繊維濾材の層から、次第に球径の大きい球状繊維濾材の層へ移行するように、多層に配置するのが望ましい。また、紐状の繊維濾材を用いる場合には、使用後の洗浄作業性を考慮すれば、濾過体内に紐状繊維濾材をその一端側から順次手繰り込みながら詰め込むのが望ましい。さらに、帯状の繊維濾材を用いる場合には、使用後の洗浄作業性を考慮すれば、濾過体内に帯状繊維濾材を該濾過体の上流側あるいは下流側から他方側へ向けて、アコデオン状に上下二位置で折り返しながら詰め込むのが望ましく、特に空隙率の異なる複数種類の帯状繊維濾材を組み合わせて用いる場合には、汚染物質の捕捉性という観点から、濾過体の上流側から下流側に向けて空隙率の小さい帯状繊維濾材の層から、次第に空隙率の大きい帯状繊維濾材の層へ移行するように配置するとか、空隙率の異なる複数の帯状繊維濾材を多層に重ね合わせた状態で、これをアコデオン状に上下二位置で折り返しながら詰め込むのが望ましい。また、板状の繊維濾材を用いる場合には、路面排水の流れ方向が上記板状繊維濾材の面に直交するように、濾過体内に板状繊維濾材を立てた状態で順次多層状に配置するのが望ましく、特に空隙率の異なる複数種類の板状繊維濾材を組み合わせて用いる場合には、濾過体の上流側から下流側に向けて空隙率の小さい板状繊維濾材の層から、次第に空隙率の大きい板状繊維濾材の層へ移行するように配置するのが望ましい。
【0063】
なお、この実施形態のように、上記各濾過体21〜23を着脱する構成としたものにあっては、繊維濾材の軽量性は濾材選択に際しての重要ポイントとなる。また、繊維濾材の変形容易性は、特に糸状、帯状、板状の繊維濾材を採用した場合には、該繊維濾材の上記濾過体への収納あるいは取出しに際してその作業が極めて容易となることから、これも濾材選択に際しての重要ポイントとなる。
【0064】
また、繊維濾材は、一の第1濾過体に同一種類及び形体のものを用いることに限定されるものではなく、例えば、複数種類及び形体のものを組み合わせて用いることもできる。この点は、上記各濾過体21〜23相互間においても同様である。また、繊維濾材と濾過砂、濾過砂利あるいは活性炭を組み合わせて用いることも可能である。なお、濾過砂、濾過砂利及び活性炭については周知であるため説明を省略する。
【0065】
一方、上記各濾過体21〜23に収納される上記各濾材31〜33においては、上記第1流路2の上流側に位置するものほど下流側に位置するものよりも汚染物質の捕集性能が高くなるように設定するのが好ましく、そのため繊維濾材を用いたこの実施形態においては繊維濾材の充填度を変化させることとし、最上流に位置する上記第1濾材31の充填度を最も高く設定し、最下流に位置する第3濾材33の充填度を最も低く設定している。
【0066】
なお、濾材として濾過砂、濾過砂利あるいは活性炭を用いた場合において汚染物質の捕捉性能を変化させるには、その粒径を濾過体の配置位置に応じて変更設定すればよい。
【0067】
上記前処理体19は、上記第1濾過体21の上流側に設けられて、初期フラッシュ排水に混入している比較的大きな夾雑物を捕捉して除去することを主たる目的とするものであるが、これに加えて、初期フラッシュ排水の想定量を越える多量の路面排水が第1流路2側に流入した場合に、上記各濾過体21〜23を保護するとともに、該路面排水を上記第2流路3側へ偏流させることを他の目的としている。具体的な構成は以下の通りである。
【0068】
上記前処理体19は、図1及び図4に示すように、上面が開放された有底三角箱体であって、側壁41と背面壁42及び前面壁44を備えており、該背面壁42には多数の通孔43が設けられている。また、上記前面壁44は、上記側壁41及び背面壁42よりも高さ寸法が大きく、図4に示すように、上記第1流路2への配置状態において、該第1流路2の底壁2aから上記流入口17の上縁近傍に達するような高さに設定されている。そして、この前面壁44の下半部、即ち、上記流入口17の下縁に対応する位置よりも下側寄り部分は、例えば、金網で構成された透過部44aとされる。また、上記前面壁44の上半部、即ち、上記流入口17の下縁に対応する位置よりも上側寄り部分は盲板状の平板部44bとされている。
【0069】
そして、上記前処理体19は、上記前面壁44を上流側へ向けた状態で、上記第1流路2内の上記第1濾過体21より上流側位置に着脱自在に配置される。
【0070】
続いて、上記処理ユニットUにおける路面排水の浄化作用について、図1及び図2を参照して説明する。
【0071】
既述のように、高速道路等の路面に堆積した各種の汚染物質は、降雨時に雨水に混入して路面排水として側溝102側へ集水される。また、この汚染物質の混入量は降雨初期の雨水による路面排水、即ち、初期フラッシュ排水に集中的に含まれ、降雨初期以降の路面排水には殆ど含まれないため、汚染物質の除去処理は初期フラッシュ排水に対して行われれば十分と考えられる。さらに、路面排水の水量は、初期フラッシュ排水の発生期間においては少なく、当該期間経過後においては増大する。
【0072】
この実施形態の路面排水処理装置Zは、上述のような排水条件及び汚染物質の除去条件に適応すべく構成された上記処理ユニットUを備えたものであり、これによって所期の目的が確実に達成されるものである。
【0073】
図1及び図2において、降雨初期の路面排水、即ち、初期フラッシュ排水は、上記側溝102から上記処理ユニットUの上記第1流路2側に流入する。この場合、初期フラッシュ排水は、その流入量が少ないため、上記第1流路2を流れる初期フラッシュ排水の水位は、上記流入口17部分における上記第1流路2の底壁2aと上記第2流路3の底壁3aとの差高hよりも低く、これを越えることはない。従って、この初期フラッシュ排水は、図2に矢印W1で示すように、上記流入口17から上記第2流路3側へ流れることなく、その全量がそのまま第1流路2内を流れて上記前処理体19側に至り、さらに上記各濾過体21〜23においてここに収納された上記各濾材31〜33を透過したのち、該第1流路2の下流側に接続された側溝102へ排出される。なお、図1において符号104は側溝蓋である。
【0074】
この場合、上記初期フラッシュ排水は、先ず、上記前処理体19に流入する際、これに混入していた大きな夾雑物は上記前面壁44の透過部44aを通過する際にここで捕捉される。大きな夾雑物が除去された後の初期フラッシュ排水は、上記透過部44aを通って上記前処理体19内に流入したのち、背面壁42に設けられた多数の通孔43を通過するが、その通過の際、初期フラッシュ排水に混入している比較的小さな夾雑物が捕捉されて該前処理体19の内部に溜められる。これで、上記前処理体19における上記初期フラッシュ排水に対する前処理が完了する。
【0075】
上記前処理体19での前処理が為された後の初期フラッシュ排水は、上記第1濾過体21に流入した後、順次第2濾過体22及び第3濾過体23を通過して該第3濾過体23からその下流側へ流出するが、該初期フラッシュ排水はこれら各濾過体21〜23を通過する間に、該初期フラッシュ排水に混入していた汚染物質、即ち、自動車の排気ガス中の有害物質を含んだ微粒子とか、タイヤの摩耗麈とか、アスファルト摩耗塵等の環境破壊を招来する恐れのある様々な物質が、濾過により捕捉除去され、最下流の第3濾過体23の第3濾材33を通過した路面排水は、汚染物質の除去された清浄な排水としてその下流側へ流出し、最終的には河川とか土壌中に排出される。従って、初期フラッシュ排水に混入した汚染物質がそのまま河川等に排出されるということが確実に防止され、この汚染物質による環境汚染とか土壌汚染が未然に且つ確実に防止され、環境保全が図られるものである。
【0076】
一方、降雨継続時間の経過とともに初期フラッシュ排水の流入量は次第に増加する。しかし、上記第1流路2側の許容流通量は上記各濾過体21〜23の各濾材31〜33の流通抵抗によって自ずと制限されるので、初期フラッシュ排水の発生期間、即ち、初期降雨の期間の経過後においては、路面排水のうち、上記各濾過体21〜23側へ流入し切れなかった路面排水が最上流に位置する上記第1濾過体21の上流側に溜まり始め、その滞留水位(即ち、滞留した路面排水の水位)が次第に上昇する。そして、この滞留水位が上記流入口17の下縁に達し、さらにこれを越えて上昇すると、順次流入する路面排水のうち、上記各濾過体21〜23側へ流入し切れないものは、上記流入口17を通って上記第2流路3側へ流入し、該第2流路3を、上記各濾過体21〜23を迂回しながら流下し、上記流出口18から再度上記第1流路2側へ流入し、上記第1流路2側を通って流下する路面排水と合流して、その下流側へ排出される。
【0077】
このように上記第2流路3側を流れて排出される路面排水には汚染物質の除去処理はなされないが、元来、この第2流路3側へ路面排水が流れる時点(即ち、初期フラッシュ排水以降の降雨時期)においては、該路面排水には汚染物質が殆ど含まれていないため、未処理の路面排水w2が河川等に排出されても環境汚染を引き起こすことはない。
【0078】
ところで、上述のように、路面排水の流入量が増大してその一部が上記第1流路2側から上記流入口17を通って上記第2流路3側へ偏流する場合、上記前処理体19の上記前面壁44が有用な働きを為す。
【0079】
第1の働きは、汚染物質の路面排水への再混入防止作用と、上記各濾過体21〜23に対する保護作用である。即ち、路面排水の流入量が増大すると、それに伴って路面排水の流速及びその動圧も急激に上昇する。従って、この大流量の路面排水が上記各濾過体21〜23側に流入すると、例えば、上記各濾過体21〜23の各濾材31〜33が高流速且つ高動圧の路面排水によって洗われ、これら各濾材31〜33によって初期フラッシュ排水から捕捉除去されていた汚染物質が該各濾材31〜33から遊離して路面排水とともに排出されることが懸念される。また、高流速且つ高動圧の路面排水によって上記各濾過体21〜23が損傷を受けることも懸念される。
【0080】
係る場合、上述のように、上記前処理体19の上記前面壁44の上半部を平板部44bとすると、路面排水、特に上記各濾過体21〜23の上面側に流入する恐れのある高水位側の路面排水が上記平板部44bに衝突し、各濾過体21〜23側への流入が可及的に阻止される。この結果、上記各濾材31〜33に捕捉されていた汚染物質の路面排水側への再混入が防止され、汚染物質による環境汚染とか土壌汚染が未然に且つ確実に防止され、環境保全が図られると同時に、上記各濾過体21〜23の損傷も防止されることになる。
【0081】
第2の働きは、路面排水の溢流防止作用である。即ち、上記前処理体19側に路面排水が高流速且つ高動圧で流入する場合、この路面排水は上記前処理体19の上記前面壁44の平板部44bに衝突する。この場合、上記平板部44bが、路面排水の流通方向の上流側から下流側に向かうに伴って上記流入口17の下流縁に接近するような傾斜面とされているので、上記路面排水は上記平板部44bへの衝突によってその衝撃力が緩和されつつ、該平板部44bの面に沿って上記流入口17側へ的確に偏流され、上記第2流路3側へスムーズに流入することになる。この結果、例えば、路面排水の上記流入口17から上記第2流路3側への偏流性が低劣であると上記第1流路2の上記第1濾過体21の上流側部分における路面排水の滞留水位が上記第1流路2の側壁2bの上端を越えて上昇し、路面排水が上記第1流路2から周囲へ溢流するなど路面排水処理装置Zそのものの機能が損なわれることにもなり得るが、このような事態の発生が確実に回避され、延いては路面排水処理装置Zの信頼性が高められるものである。
【0082】
上記処理ユニットUの長期に亘る稼動に伴って、上記前処理体19の上記前面壁44の前面側及びその内部には捕捉された夾雑物が堆積し、また上記各濾過体21〜23には、上記各濾材31〜33において捕捉された汚染物質が堆積し、それぞれその機能が低下することになるため、定期的にあるいは必要に応じてこれらを清掃してその機能回復を図るとか、上記各濾材31〜33にあっては新たな濾材に取り替える等の点検保守作業が必要である。係る場合には、図1に示すように、上記前処理体19及び上記各濾過体21〜23を情報に引き上げてこれを上記処理ユニットU側から外部へ取り外すことで、その点検保守作業を広い作業スペースにおいて迅速且つ的確に行うことができ、点検保守作業における作業性が向上することになる。
【0083】
以上のように、この実施形態の処理ユニットUを備えた路面排水処理装置Zにおいては、初期フラッシュ排水に混入している汚染物質の確実な捕捉除去効果と、路面排水の流量増大時における該路面排水の散逸流出防止効果を、簡単且つ安価な構成によって両立することができるものである。
【0084】
B:第2の実施形態
図9には、本願発明の第2の実施形態に係る路面排水処理装置Z(図7、図8参照)の主要部を構成する処理ユニットUを示している。
【0085】
この実施形態における上記処理ユニットUは、上記第1の実施形態における処理ユニットUと同様に、流路構成体1と前処理体19、及び第1濾過体21〜第3濾過体23で構成される濾過体20を備えたものであって、上記第1の実施形態における処理ユニットUと異なる点は、上記第1流路2と第2流路3の流路構成と路面排水の分水構造である。従って、ここではこれら相違する点を中心に説明する。
【0086】
上記第1流路2は直状形体を有し、上記第2流路3は上記第1流路2の上流側に設けた上記流入口17と下流側に設けた上記流出口18を接続するように該第1流路2の側部に併設されているが、この第1流路2の底壁2aと第2流路3の底壁3aは同一面を形成するように同一高さ位置に設定されており、この点は上記第1の実施形態における上記流路構成体1の第1流路2と第2流路3の構成とは大きく異なる点である(第1の相違点)。
【0087】
また、前処理体19及び上記各濾過体21〜23を上記第2流路3に配置しており、これらを上記第1流路2側に配置していた第1の実施形態における上記処理ユニットUの構成とは異なったものとなっている(第2の相違点)。
【0088】
そして、上記第1の相違点と第2の相違点を前提として、降雨初期の初期フラッシュ排水を上記第1流路2側から上記前処理体19及び上記各濾過体21〜23が備えられた上記第2流路3側へ偏流させるとともに、初期フラッシュ排水以降における流入量の多い路面排水を上記第1流路2側と上記第2流路3側とに分水させるために、この実施形態では堰板16を、該第1流路2の流路方向に向かうに伴って上記流入口17側に接近するように傾斜させ、且つ下流端が上記流入口17の下流側縁に接続されるようにして、該第1流路2の底壁2aに設置している。そして、この堰板16の高さ寸法を、初期フラッシュ排水の流入量を考慮して設定しており、具体的には上記第1の実施形態における上記第1流路2の底壁2aと上記第2流路3の底壁3aの高低差h(図4参照)程度としている。
【0089】
以上のように構成することで、流入量の少ない初期フラッシュ排水は、上記側溝102から上記第1流路2の上流端側に流入した後、上記堰板16に案内されて上記流入口17を通って上記第1流路2側から上記第2流路3側へ偏流し、該第2流路3を流下する際に、上記前処理体19において初期フラッシュ排水に混入している夾雑物が捕捉除去されるとともに、上記各濾過体21〜23の上記各濾材31〜33において初期フラッシュ排水に混入している汚染物質が捕捉除去され、最終的に汚染物質の混入していない清浄な路面排水として下流側の側溝102へ排出される。
【0090】
一方、降雨継続時間の経過とともに路面排水の流入量が次第に増加し、上記第2流路3側の上記各濾過体21〜23の各濾材31〜33の流通抵抗によって路面排水の上記第1流路2側における水位が上記堰板16の高さを越えるようになると、路面排水は上記堰板16によって上記第2流路3側へ流されるものと、上記堰板16を越流して上記第1流路2側に流れ込むものとに分水される。そして、上記流出口18部分において上記第2流路3側を流下した路面排水と上記第1流路2側を流下した路面排水が合流し、上記第1流路2を通って下流側の側溝102へ排出される。このように路面排水の流入量の増大時に上記第1流路2と第2流路3の双方を通って路面排水が排出されることで、路面排水が上記第2流路3から周囲へ溢流することが未然に回避され、これによって路面排水処理装置Zの信頼性が高められるものである。
【0091】
上記以外の構成及び作用効果については、上記第1の実施形態の場合と同様であるので、その該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。
【0092】
C:第3の実施形態
図10には、本願発明の第3の実施形態に係る路面排水処理装置Z(図7、図8参照)の主要部を構成する処理ユニットUを示している。
【0093】
この実施形態における上記処理ユニットUは、上記第2の実施形態における分水構造に、上記第1の実施形態おける流路構成を適用したものであって、上記第1流路2の底壁3aを、上記堰板16の上端まで持ち上げるとともに、これを上記流出口18の上流側で再度低下させて上記第2流路3の底壁3aと同一高さに設定したものである。係る構成とした場合には、例えば、上記第2の実施形態のように上記第1流路2の底壁2aに上記堰板16を立ち上げた構成の場合に比して、上記堰板16部分を越流した後の路面排水の流れの乱れが少なくなり、該路面排水のスムーズな排出が期待できるものである。
【0094】
上記以外の構成及び作用効果については、上記第1の実施形態及び第2の実施形態の場合と同様であるので、これらの該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。
【0095】
D:第4の実施形態
図11には、本願発明の第4の実施形態に係る路面排水処理装置Z(図14参照)の主要部を構成する処理ユニットUを示している。この処理ユニットUは、図14に示すように、自動車用道路101の路側の縁石体103に設けた溜枡105に一時的に貯留された路面排水を該縁石体103に沿って設置された側溝102によって集水し、これを道路基盤の法面106に沿って下降傾斜状に設置された排出溝107(特許請求の範囲中の「排出路」の該当する)の途中あるいはその終端に設置するに好適なものであり、以下、これを具体的に説明する。
【0096】
このように道路基盤の法面106に沿って下降傾斜状に設置された排出溝107においては、その上流側(高位側)と下流側(低位側)との間に比較的大きな高低差が確保されるので、この高低差を有効に利用して路面排水の処理を行おうとするのがこの実施形態の処理ユニットUである。
【0097】
上記処理ユニットUは、図11に示すように、流路構成体1と該流路構成体1に設置される前処理体19及び第1濾過体21〜第3濾過体23からなる濾過体20を備えて構成されるものであって、この基本構成は上記各実施形態の場合と同様であるが、特にこの実施形態では上記法面106の形体に由来する高低差を利用する観点から、上記流路構成体1の構成については上記各実施形態の流路構成体1とは大きく異なっている。
【0098】
上記流路構成体1は、上記法面106に傾斜配置された上記排出溝107に対してその延長上に接続される直状の第1流路2と、該第1流路2の上流側の底壁2aに設けた上記流入口17と下流側の側壁2cに設けた上記流出口18を接続するように上記第1流路2の側部に併設された第2流路3を備えるものである。しかし、上記流入口17が上記第1流路2の底壁2aに設けられ、上記流出口18が上記第1流路2の側壁2cに設けられていることから、これら流入口17と流出口18の配置位置の相違に対応して、上記第2流路3は直状形体ではなく、その流路途中が上下方向に適宜屈曲した屈曲形体とされている。
【0099】
即ち、上記第2流路3は、上述のように上下方向に適宜屈曲した屈曲形体とされるものであるが、その上流端は上記第1流路2の底壁2aの下側を通って直交方向に延びて上記流入口17にその下方側から臨んでいる。また、上記第2流路3の下流端はその底壁3aの高さと上記第1流路2の底壁2aの高さを同じとした上で上記流出口18に臨んでいる。従って、上記第2流路3の底壁3aは、図13に示すように、上記流入口17に臨む上流側底部3a1と上記第1流路2の底壁2aと平行に延びる下流側底部3a3と、これらの中間に位置する中間底部3a2からなる上下方向に屈曲した形体とされる。
【0100】
そして、図13に示すように、上記処理ユニットUを上記法面106に設置した状態においては、上記第2流路3の底壁3aの上記中間底部3a2が最も水平に近くなるため、上記流路構成体1の設計に当っては、上記法面106の傾斜角度に対応して上記中間底部3a2に所要の排水勾配が確保されるように、上記第2流路3の長さ寸法及び上記流入口17の形成位置が考慮される。
【0101】
一方、図11〜図13に示すように、上記第1流路2の底壁2aに開口された上記流入口17の上流側縁には、略エアフォイル状の断面形状をもつガイド部材45が備えられている。このガイド部材45は、流入量の少ない初期フラッシュ排水に対してはこれを越流して初期フラッシュ排水が上記第2流路3側へ流下するのを許容する一方、流入量が多くなった初期フラッシュ排水以降の路面排水に対しては、その上面の案内作用によって路面排水を、積極的に上記流入口17を越えて上記第1流路2側へ流入させる作用を為す。
【0102】
さらに、上記第2流路3の上記上流側底部3a1と中間底部3a2の境部分には、これらの間に所定の空間を確保した状態で、仕切り部材46が配置されている。この仕切り部材46は、初期フラッシュ排水以降において多量の路面排水が大きな流速及び動圧をもって上記第2流路3側に流入するとき、この路面排水を上記仕切り部材46に衝突させることでこれを緩衝し、その下流側の上記前処理体19及び上記各濾過体21〜23に悪影響を及ぼすのを未然に防止する機能を持つものである。また、この仕切り部材46は、その前面側に路面排水の貯留部を形成することで、上記排出溝107側から上記流入口17側へ流下する路面排水が該流入口17を越えて上記第1流路2側へ流れるように案内するガイド機能をも有するものである。
【0103】
なお、図11に示すように、この実施形態において用いられる上記前処理体19は、上記第1〜第3の実施形態における前処理体19とは異なって、該前処理体19を矩形箱状に形成し、該前処理体19を上記第2流路3に設置した状態においてその前面壁44が流路方向に略直交するようにしている。これは、上記前面壁44の平板部44bに路面排水の偏流機能を持たせる必要がなく、該平板部44bは路面排水に対して緩衝機能を持てば十分であることによる。
【0104】
以上のように構成することで、図11〜図13に示すように、流入量の少ない初期フラッシュ排水W1は、上記排出溝107から上記第1流路2の上流端側に流入した後、上記ガイド部材45を乗り越えて上記流入口17から下方へ流下して上記第2流路3側に流入する。そして、この初期フラッシュ排水は、該第2流路3を流下する際に、上記前処理体19においてこれに混入している夾雑物が捕捉除去されるとともに、上記各濾過体21〜23の上記各濾材31〜33において初期フラッシュ排水に混入している汚染物質が捕捉除去され、最終的に汚染物質の混入していない清浄な路面排水として、上記流出口18から上記第1流路2側へ再流入し、下流側の排出溝107へ排出される。
【0105】
一方、降雨継続時間の経過とともに路面排水の流入量が次第に増加し且つその流速が増大すると、該路面排水の一部は上記流入口17を通って上記第2流路3側に流入し続けるとともに、他の一部は上記ガイド部材45のガイド作用と上記仕切り部材46の上流側に貯留した路面排水によるガイド作用を受けて、上記流入口17を越えて上記第1流路2側へスムーズに流入し、これによって路面排水の分水が実現される。
【0106】
そして、上記第2流路3側を流下して上記流出口18から上記第1流路2側へ再流入する路面排水と直接上記第1流路2を流下する路面排水が該第1流路2の下流側で合流し、上記処理ユニットUの下流側の排出溝107へ排出される。
【0107】
このように、路面排水の流入量の増大時に上記第1流路2と第2流路3の双方を通って路面排水が排出されることで、路面排水が上記第2流路3から周囲へ溢流することが未然に回避され、これによって路面排水処理装置Zの信頼性が高められるものである。
【0108】
上記以外の構成及び作用効果については、上記第1〜第3の各実施形態の場合と同様であるので、その該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。
【0109】
E:第5の実施形態
図15には、本願発明の第4の実施形態に係る路面排水処理装置Zの主要部を構成する処理ユニットUを示している。この処理ユニットUは、上記各実施形態における処理ユニットUとは流路構成体1の構成を全く別異としている。
【0110】
即ち、上記各実施形態の流路構成体1では、第1流路2と第2流路3を併設し、初期フラッシュ排水はこれら何れかの一方側に流し、初期フラッシュ排水以降の路面排水は上記第1流路2と第2流路3の双方を流すように構成していたのに対して、この実施形態の流路構成体1では、単一の流路5を備え、初期フラッシュ排水はこの流路5の底部寄りを流し、初期フラッシュ排水以降の路面排水は上記流路5の底部寄りと上部寄りの双方、換言すれば、上記流路5の全域を利用して流すように構成したものである。具体的には、以下の通りである。
【0111】
この実施形態の処理ユニットUにおいては、図15に示すように、上記流路構成体1を単一の流路5を備えた構成としている。即ち、上記流路構成体1は、底壁51と左右一対の側壁52,53からなる上方が開口した流路5を備えるが、その場合、この流路5の底壁51を、該流路5の上流部5aにおいて高位に位置する上流側底部51aと、下流部5bにおいて低位に位置する下流側底部51cと、これら両者の中間に位置して傾斜する中間底部51bからなる屈曲構造としている。
【0112】
そして、上記流路構成体1の底壁51の下流側底部51c上に、上記前処理体19と、第1濾過体21と第2濾過体22からなる濾過体20を配置するようにしている。さらに、これら前処理体19と第1濾過体21及び第2濾過体22の上面は保護蓋40によって開閉可能に閉蓋される。
【0113】
また、この実施形態における上記前処理体19は、図17に示すように、上記第4の実施形態における前処理体19と同様にこれを矩形箱状に形成したものであるが、その前面壁44の平板部44bを後方側(即ち、背面壁42寄り)へ傾斜させており、この点は上記第4の実施形態の前処理体19とは異なっている。
【0114】
これは、図16に示すように、上記前処理体19と上記第1濾過体21及び第2濾過体22を上記流路5に設置した場合、最上流側に位置する上記前処理体19の上記前面壁44が上記中間底部51bに対向するため、該中間底部51bに沿って流下してくる多量の路面排水が該前面壁44に衝突することになるが、この場合、この路面排水を上記前面壁44の傾斜した平板部44bに衝突させて上記保護蓋40の上面側へ積極的に偏流させることで、路面排水の衝突による衝撃が緩和されるとともに、路面排水の上記保護蓋40の上面側への偏流もよりスムーズとなる。
【0115】
なお、この実施形態では上記濾過体20を第1濾過体21と第2濾過体22で構成したが、この濾過体の配置個数は必要に応じて増減設定することができるものである。
【0116】
以上のように構成することで、図15及び図16に示すように、流入量の少ない初期フラッシュ排水W1は、上記上流側底部51aを流下した後、中間底部51bに沿って流下して上記前処理体19にその透過部44a側から流入し、さらに上記第1濾過体21及び第2濾過体22を通過して上記流路5の下流部5b側へ排出される。そして、この初期フラッシュ排水は、上記前処理体19においてこれに混入している夾雑物が捕捉除去されるとともに、上記各濾過体21、22の上記各濾材31、32において初期フラッシュ排水に混入している汚染物質が捕捉除去され、最終的に汚染物質の混入していない清浄な路面排水として該流路5の下流部5b側へ排出される。
【0117】
一方、降雨継続時間の経過とともに路面排水の流入量が次第に増加すると、該路面排水の一部W1はそれまでと同様に上記前処理体19の透過部44aを通って上記前処理体19及び各濾過体21,22側へ流れるが、他の一部W2は上記前処理体19の前面壁44の平板部44bに衝突してこれによる上方への偏向作用を受けるため、上記保護蓋40の上側を該保護蓋40に沿って流れ、上記流路5の下流部5bにおいてこれら両者が合流して下流側へ排出される。
【0118】
即ち、この実施形態の流路構成体1においては、上記流路5の底壁51に高低差をもたせ、この低位側に上記前処理体19及び上記各濾過体21,22を配置することで、上記路面排水の分水が行われるものである。そして、路面排水の流入量の増大時に上記流路5の底部寄り領域と上部寄り領域の双方を通って路面排水が排出されることで、路面排水が上記流路5から周囲へ溢流することが未然に回避され、これによって路面排水処理装置Zの信頼性が高められるものである。
【0119】
上記以外の構成及び作用効果については、上記第1〜第4の各実施形態の場合と同様であるので、その該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。
【0120】
F:その他
上記各実施形態においては、上記流路構成体1をU形の側溝の形状に対応させてU形の溝構造としているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、例えば、他の実施形態においては、これをヒューム管等の丸形側溝の形状に対応させて丸形の溝構造とすることもできる。
【符号の説明】
【0121】
1 ・・流路構成体
2 ・・第1流路
3 ・・第2流路
4 ・・隔壁
5 ・・流路
6 ・・分水手段
16 ・・堰板
17 ・・流入口
18 ・・流出口
19 ・・前処理体
20 ・・濾過体
21 ・・第1濾過体
22 ・・第2濾過体
23 ・・第3濾過体
26 ・・通孔
27 ・・手掛部
30 ・・濾材
31 ・・第1濾材
32 ・・第2濾材
33 ・・第3濾材
40 ・・保護蓋
41 ・・側壁
42 ・・背面壁
43 ・・通孔
44 ・・前面壁
45 ・・ガイド部材
46 ・・仕切り部材
51 ・・底壁
52 ・・側壁
53 ・・側壁
101・・道路
102・・側溝(排出路)
103・・縁石体
104・・側溝蓋
105・・溜枡
106・・法面
107・・排出溝(排出路)
U ・・処理ユニット
Z ・・路面排水処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面排水を集水して排水する排出路(102)、(107)に処理ユニット(U)を付設して構成される路面排水処理装置であって、
上記処理ユニット(U)は、上記排出路(102)、(107)に接続される第1流路(2)と、該第1流路(2)の上流側部位に設けた流入口(17)と下流側部位に設けた流出口(18)を接続する第2流路(3)を備えるとともに、上記第1流路(2)の上記流入口(17)と上記流出口(18)の間に、又は上記第2流路(3)の何れか一方に、濾材(30)を備えた濾過体(20)が配設される一方、
上記流入口(17)又はその近傍に、上記第1流路(2)に流入する路面排水の流入量が所定量以下であるときには該路面排水を上記濾過体(20)が配設された側の流路へ誘導し、路面排水が所定量以上であるときには該路面排水を上記第1流路(2)と上記第2流路(3)の双方へ誘導する分水手段(6)が備えられていることを特徴とする路面排水処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記分水手段(6)は、上記流入口(17)部分において上記第1流路(2)の底面高さを上記第2流路(3)の底面高さよりも低位に設定して構成されるとともに、上記第1流路(2)に上記濾過体(20)が配設されていることを特徴とする路面排水処理装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記分水手段(6)は、上記流入口(17)部分において上記第1流路(2)の底面高さと上記第2流路(3)の底面高さを略同一に設定するとともに、上記第1流路(2)側にその底面から所定高さに立ち上がる堰板(16)を設けて構成される一方、
上記第2流路(3)に上記濾過体(20)が配設されていることを特徴とする路面排水処理装置。
【請求項4】
請求項1において、
上記分水手段(6)は、上記流入口(17)を上記第1流路(2)の底面に設け且つ該流入口(17)を上記第2流路(3)に接続して構成されるとともに、
上記第2流路(3)に上記濾過体(20)が配設されていることを特徴とする路面排水処理装置。
【請求項5】
路面排水を集水して排水する排出路(102)、(107)に処理ユニット(U)を付設して構成される路面排水処理装置であって、
上記処理ユニット(U)が、上記排出路(102)に接続される流路(5)を備える一方、
上記流路(5)は、その下流側流路部(5b)の流路深さが上流側流路部(5a)の流路深さよりも深くなるように構成されるとともに、
上記下流側流路部(5b)の底壁上には濾材(30)を備えた濾過体(20)が配設されていることを特徴とする路面排水処理装置。
【請求項6】
請求項1又は5において、
上記濾過体(20)は、上記第1流路(2)又は上記第2流路(3)又は上記流路(5)の流路方向に前後して併設される複数の濾過体(21)、(22)、(23)で構成されるとともに、
上記濾材(30)は、上記各濾過体(21)、(22)、(23)にそれぞれ収納配置された複数の濾材(31),(32),(33)で構成されていることを特徴とする路面排水処理装置。
【請求項7】
請求項6において、
上記濾過体(21)、(22)、(23)は、上記第1流路(2)又は上記第2流路(3)又は上記流路(5)に対して着脱自在に構成されていることを特徴とする路面排水処理装置。
【請求項8】
請求項6において、
上記各濾材(31),(32),(33)は、繊維素材で構成された繊維濾材、濾過砂、濾過砂利、活性炭の何れか一つ又は二つ以上を主要素として構成されていることを特徴とする路面排水処理装置。
【請求項9】
請求項1又は5において、
上記濾過体(20)の上流側に、路面排水に混入している夾雑物を捕集除去する前処理体(19)が配設されていることを特徴とする路面排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−36711(P2012−36711A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186607(P2010−186607)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(510203924)大真興業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】