説明

車両の制御装置

【課題】取り外しの可能なスノープラウを車両に装着して除雪作業を行うときにあって、自動変速機油の温度上昇を好適に抑えることのできる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】車両1は、取り付け及び取り外しが可能な除雪用のスノープラウとトルクコンバータ付きの自動変速機とを備える。また、車両1へのスノープラウ60の装着を検出する装着センサ46を備え、この装着センサ46によってスノープラウ60の装着が検出されたときに、車両の制御装置は、自動変速機32内の油温上昇を抑える処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、除雪作業を行うことの可能な車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に取り付け及び取り外しが可能な除雪用のスノープラウが知られており(例えば特許文献1等)、こうしたスノープラウを一般車両に取り付けることにより、除雪専用車と同様な除雪作業を行うことができる。
【特許文献1】特開2001−329517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、自動変速機付きの一般車両に上記スノープラウを装着して除雪作業を行うと、次のような不都合が発生するおそれがある。
すなわち、上記自動変速機の油圧制御や潤滑、あるいは流体伝達機構であるトルクコンバータでのトルク伝達等に使われる自動変速機油は車両走行中に温度が上昇する。そのため、車両のラジエータ近傍には、自動変速機油を冷却するオイルクーラなどの放熱器が設けられている。
【0004】
ここで、スノープラウを装着した状態で車両を走行させると、ラジエータへの空気の流れがスノープラウによって妨げられてしまうため、上記放熱器による冷却効果が低下し、自動変速機油の温度は上昇しやすくなる。そして、その温度が過度に上昇してしまうと、当該自動変速機油は劣化してしまう。
【0005】
そこで、自動変速機油の放熱器を大型化するなどして除雪作業に見合った冷却性能を確保するようにすれば、上述したような自動変速機油の温度上昇を抑えることはできる。しかし、取り外し可能なスノープラウを取り付けた一般車両の場合には、除雪専用車と異なり、除雪作業が終了したり、積雪時期が終わったりすると、スノープラウは取り外されることが多く、そのようにスノープラウが取り外された状態で車両を走行させると、自動変速機油は過度に冷却されてしまうおそれがある。また、放熱器の大型化に伴う重量増加やコスト上昇等も避けられない。
【0006】
この発明はこうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、取り外しの可能なスノープラウを車両に装着して除雪作業を行うときにあって、自動変速機油の温度上昇を好適に抑えることのできる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段及びその作用効果について以下に記載する。
請求項1に記載の発明は、取り付け及び取り外しが可能な除雪用のスノープラウと自動変速機とを備える車両の制御装置であって、前記車両に前記スノープラウが装着されているか否かを判定する判定手段と、同判定手段にて前記スノープラウが装着されている旨判定されるときには、前記自動変速機内の油温上昇を抑える処理を実行する油温上昇抑制手段とを備えることをその要旨とする。
【0008】
同構成によれば、車両にスノープラウが装着されているときに自動変速機内の油温上昇を抑える処理が実行される。従って、取り外しの可能なスノープラウを車両に装着して除雪作業を行うときにあって、自動変速機油の温度上昇を好適に抑えることができるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制御装置において、前記車両への前記スノープラウの装着を検出する検出部材を備え、前記判定手段は、前記検出部材にて前記スノープラウの装着が検出されたときに、当該スノープラウが装着されていると判定することをその要旨とする。
【0010】
同構成によれば、車両へのスノープラウの装着が検出部材によって直接検出されることにより、当該スノープラウが装着されているか否かを確実に検出することができるようになる。なお、同構成における上記検出部材としては、センサやスイッチ等を挙げることができ、そうした検出部材の配設位置としては、車両側に設けられたスノープラウの装着部等が挙げられる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制御装置において、外気温を検出する温度センサと、前記車両の懸架装置への荷重を検出する荷重検出手段とを備え、前記判定手段は、前記温度センサにて検出される外気温が所定温度以下であり、かつ前記荷重検出手段にて検出される前記荷重が所定値以上であるときに、前記スノープラウが装着されていると判定することをその要旨とする。
【0012】
スノープラウが車両に装着されると、非装着時と比較して、当該車両の懸架装置にはより大きな荷重がかかる。従って、外気温が所定温度以下となっている低温下において懸架装置への荷重が所定値以上に大きくなっているときには、除雪作業のためにスノープラウが装着されている可能性が高いといえる。そこで、同構成では、温度センサにて検出される外気温が所定温度以下であり、かつ車両停止中の上記荷重が所定値以上であるときに、スノープラウが装着されていると判定するようにしており、これにより車両にスノープラウが装着されているか否かを適切に判定することができるようになる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両の制御装置において、前記判定手段は、車両停止中に検出された前記荷重を前記所定値と比較することをその要旨とする。
車両が走行しているときには、加速や減速等に起因する荷重変化が懸架装置に作用するため、スノープラウの装着に起因する荷重変化のみを適切に検出することは困難である。一方、車両停止中であればそうした加速や減速等に起因する荷重変化は生じない。そこで、同構成では、車両停止中に検出された上記荷重を所定値と比較するようにしており、これにより、スノープラウの装着に起因する荷重変化を確実に検出することができるようになる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の車両の制御装置において、前記荷重検出手段は、前記車両の車高を検出する車高センサであることをその要旨とする。
車両側から懸架装置に作用する荷重が大きくなると、当該車両の車高は低くなる。そのため、車両にスノープラウが装着されて懸架装置への荷重が増加したときには、その荷重変化が上記車高に反映される。そこで、同構成では、上記荷重検出手段として、車両の車高を検出する車高センサを用いるようにしており、これにより車両の懸架装置への荷重を検出することができるようになる。なお、車高センサとしては、懸架装置を構成するリンク機構の上下運動が回転運動に変換される部分(例えばリンク機構の車両側支持部等)の回転角を検出するセンサ(例えばホール素子等)や、車両の所定位置から地面までの距離を検出するセンサ等(例えば超音波センサ、ミリ波レーダ、レーザセンサ等)が挙げられる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制御装置において、前記スノープラウが装着された車両にあって、前記スノープラウに対向する車両側の面が走行中に受ける風量を検出する風量検出手段を備え、前記判定手段は、前記風量検出手段にて検出される風量が、車速に基づいて設定される基準風量よりも少ないときに前記スノープラウが装着されていると判定することをその要旨とする。
【0016】
スノープラウが装着された車両にあって、スノープラウに対向する車両側の面(例えばスノープラウを車両の前方に装着する場合には車両の前面)が走行中に受ける風量は、スノープラウの非装着時における風量と比較して少なくなる。そこで、同構成では、上記車両側の面が走行中に受ける風量と車速に基づいて設定される基準風量とを比較するようにしており、これにより車両にスノープラウが装着されているか否かを適切に判定することができるようになる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車両の制御装置において、前記風量検出手段は、前記車両のラジエータに設けられる電動ファンと、同電動ファンの非駆動時においてそのファンが回転されることにより発電される発電量を検出する発電量検出手段とを備え、前記判定手段は、前記発電量が車速に応じて可変設定される所定値以下であるときに、前記スノープラウが装着されていると判定することをその要旨とする。
【0018】
同構成によれば、上記車両側の面が走行中に受ける風量と車速に基づいて設定される基準風量との比較が、上記電動ファンが走行風を受けて回転するときの電動機の発電量に基づいて行われる。従って、上記車両側の面が走行中に受ける風量と上記基準風量との比較を通じたスノープラウの装着判定を、車両に搭載された既存の機器を利用して行うことができるようになる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制御装置において、外気温を検出する温度センサを備え、前記判定手段は、前記温度センサにて検出される外気温が所定温度以下であり、かつ前記車両の駆動力が所定値よりも大きい状態が所定時間以上継続されたときに前記スノープラウが装着されていると判定することをその要旨とする。
【0020】
除雪作業中の走行抵抗は、非除雪作業中と比べて大きくなるため、除雪作業中の車両の駆動力は非除雪作業中と比べて大きくなる。従って、外気温が所定温度以下となっている低温下において、車両の駆動力が大きくなっている状態が所定時間以上継続されているときには、車両が除雪作業中であり、当該車両にはスノープラウが装着されている可能性が高いといえる。そこで、同構成では、温度センサにて検出される外気温が所定温度以下であり、かつ車両の駆動力が所定値よりも大きい状態が所定時間以上継続されたときに、スノープラウが装着されていると判定するようにしている。従って、車両にスノープラウが装着されているか否かを適切に判定することができるようになる。なお、車両の駆動力は、アクセルペダルの操作量、車速、及び自動変速機の変速段等に基づいて推定可能である。
【0021】
車両の駆動力が大きくなっているか否かを判定する上記所定値としては、請求項9に記載の発明によるように、前記スノープラウの非装着時における車両の駆動力であって車速に応じて可変設定される値である、といった構成を採用することができる。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両の制御装置において、前記自動変速機は流体伝達機構を備えており、前記油温上昇抑制手段は、前記スノープラウが装着されているときには、そうでないときと比べて前記自動変速機の変速線を高速側に変更する変速線変更処理を実行することをその要旨とする。
【0023】
自動変速機の変速は、車速及びアクセル操作量等に基づいて変速段を設定する変速線に基づいて実施される。この変速線が高速側に変更されると、低速段から高速段への変速が抑えられるようになるため、同一の車速であっても原動機の回転速度は高くなる。このように原動機の回転速度が高くなると流体伝達機構でのトルクの伝達損失が少なくなり、流体伝達機構内の自動変速機油の温度上昇が抑えられるようになる。そこで、同構成では、スノープラウが装着されているときには、その非装着時と比較して、自動変速機の変速線を高速側に変更するようにしており、これにより自動変速機油の温度上昇を抑えることができるようになる。
【0024】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の車両の制御装置において、前記自動変速機は、流体伝達機構と、同流体伝達機構の入力軸及び出力軸を直結するロックアップ機構とを備え、前記油温上昇抑制手段は、前記スノープラウが装着されているときには、そうでないときと比べて前記ロックアップ機構を直結状態にする車速領域を低速側に拡大するロックアップ領域拡大処理を実行することをその要旨とする。
【0025】
同構成によれば、スノープラウが装着されているときには、その非装着時と比較して、より低速領域からロックアップ機構が直結状態にされるようになる。従って、より低速領域から流体伝達機構のすべりが抑えられるようになり、これにより自動変速機油の温度上昇を抑えることができるようになる。
【0026】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の車両の制御装置において、前記自動変速機は流体伝達機構を備えており、前記油温上昇抑制手段は前記スノープラウが装着されているときには、そうでないときと比べて前記車両の原動機の出力トルクを低下させるトルク低下処理を実行することをその要旨とする。
【0027】
流体伝達機構に伝達される原動機の出力トルクが大きいほど、同流体伝達機構内の自動変速機油の温度は高くなる傾向がある。そこで、同構成では、スノープラウが装着されているときには、その非装着時と比較して、車両の原動機の出力トルクを低下させるようにしており、これにより自動変速機油の温度上昇を抑えることができるようになる。
【0028】
請求項13に記載の発明は、請求項1〜12のいずれか1項に記載の車両の制御装置において、電動ファンと、同電動ファンからの送風によって前記自動変速機内の油を冷却する放熱器とを備え、前記油温上昇抑制手段は、前記スノープラウが装着されているときには、そうでないときと比べて前記電動ファンの回転速度を増大させる回転速度増大処理を実行することをその要旨とする。
【0029】
同構成によれば、スノープラウが装着されているときには、その非装着時と比較して、電動ファンから上記放熱器への送風量が増大されるため、これにより自動変速機油の温度上昇を抑えることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、この発明にかかる車両の制御装置を、トルクコンバータ付きの6段式自動変速機を備える車両に具体化した第1実施形態について、図1〜図8を参照しつつ説明する。
【0031】
図1に、本実施形態における車両の概略構成図を示す。
この図1に示すように、車両1には、原動機である内燃機関10や、流体伝達機構であるトルクコンバータ30を備える自動変速機32等が搭載されている。この自動変速機32内には、同自動変速機32の油圧制御や潤滑、あるいはトルクコンバータ30でのトルク伝達等に使われる自動変速機油(以下、ATフルードという)が注入されている。
【0032】
車両1の前方には、内燃機関10の冷却水を冷却するラジエータ3が設けられており、同ラジエータ3には、冷却水の冷却を強制的に行うための電動ファン4が設けられている。この電動ファン4は、冷却水の温度が所定温度以上になると駆動される。また、ラジエータ3の近傍には、上記ATフルードを冷却する放熱器であるオイルクーラ34が設けられており、このオイルクーラ34にも電動ファン4で発生した風が当たるようにその配設位置が設定されている。
【0033】
また、車両1の前方にあってその下方には、車両1のフレームに対してブラケット2が固定されている。このブラケット2には、スノープラウ60を取り付けるための装着部2aが設けられている。
【0034】
上記スノープラウ60は、湾曲した板状の除雪プレート60aと、棒状のアーム部60bとで構成されている。アーム部60bの一端は除雪プレート60aに固定されており、他端は、ボルト等の固定具62によって上記装着部2aに固定可能となっている。そして固定具62でアーム部60bを装着部2aに固定することにより、スノープラウ60は車両1に装着される。また、固定具62をアーム部60b及び装着部2aから外すことにより、スノープラウ60は車両1から取り外すことが可能となっている。
【0035】
図2に、内燃機関10及び自動変速機32の概略構成を示す。
この図2に示されるように、内燃機関10の燃焼室12には、吸気通路13及び吸気ポート14を通じて空気が吸入される。
【0036】
吸気通路13内には、燃焼室12に吸入される空気の量を調量する電動式のスロットル弁15が設けられている。また、吸気ポート14には、吸入空気量に応じた燃料を同吸気ポート14に向けて噴射する燃料噴射弁16が設けられている。それら空気及び燃料からなる混合気が燃焼室12内で点火プラグ17によって点火されると、同混合気が燃焼してピストン18は往復動される。このピストン18の往復動は、コネクティングロッド19を介してクランクシャフト20に伝達され、同クランクシャフト20は回転される。
【0037】
このクランクシャフト20は、トルクコンバータ30の入力軸に連結されている。このトルクコンバータ30は、流体伝達機構の一種であり、その出力軸は自動変速機32に接続されている。そして、内燃機関10と自動変速機32との間での回転伝達をATフルードといった流体を媒介して行っている。
【0038】
さらに、このトルクコンバータ30には、上記流体を媒介することなく回転伝達を直接行うためのロックアップ機構31が設けられている。このロックアップ機構31は油圧駆動されるクラッチであって、このクラッチが係合されるとトルクコンバータ30の入力軸と出力軸とが直結状態になり、トルクコンバータ30内のATフルードのすべりによる伝達効率の低下が抑制される。
【0039】
自動変速機32の変速制御や、ロックアップ機構31の係合及び解放は、油圧制御回路33によって行われる。
内燃機関10、ロックアップ機構31、自動変速機32、電動ファン4等の各種制御は、制御装置50によって行われ、それらの各種制御は、内燃機関10や車両1の各部に設けられた各種センサの検知結果に基づいて把握されるそれら内燃機関10や車両1の運転状態に基づき行われる。
【0040】
本実施形態では、そうしたセンサとして、内燃機関10に吸入される吸入空気量GAを検出する吸入空気量センサ40や、スロットル弁の開度であるスロットル開度TAを検出するスロットルセンサ41や、内燃機関10の回転速度を検出する回転速度センサ42や、車両の走行速度である車速SPDが検出する車速センサ43が設けられている。また、アクセルペダルの操作量であるアクセル操作量ACCPを検出するアクセルセンサ44や、外気温を検出する外気温センサ45なども設けられている。
【0041】
そして制御装置50は、それら各種センサの検知結果に基づき、上記燃料噴射弁16や点火プラグ17などを駆動制御し、これにより燃料噴射弁16から噴射される燃料の量(燃料噴射量Q)や燃料の噴射時期QT、そして点火プラグ17による点火時期が調整される。
【0042】
また、制御装置50は、アクセル操作量ACCP及び車速SPDに基づいて自動変速機32の変速段を運転者の要求及び車両1の走行状態に適した変速段に切り換える。そうした変速段の選択は、制御装置50の記憶素子に記憶されたマップであって、図3に示すような変速マップに基づき行われる。この図3に示すように、同変速マップには、変速段を高速段に変更するシフトアップ用変速線と、変速段を低速段に変更するシフトダウン用変速線とが用意されており、それらシフトアップ用及びシフトダウン用変速線は、自動変速機32の変速段に対応してそれぞれ設定されている。すなわちシフトアップ用変速線としては、実線にて示すように、2速アップ用変速線、3速アップ用変速線、4速アップ用変速線、5速アップ用変速線、6速アップ用変速線が設定されている。また、シフトダウン用変速線としては、一点鎖線にて示すように、5速ダウン用変速線、4速ダウン用変速線、3速ダウン用変速線、2速ダウン用変速線、1速ダウン用変速線が設定されている。そして、例えばアクセル操作量ACCPが一定であっても、車速SPDが3速アップ用変速線U3を超えたときには、変速段が2速から3速に切り替えられる。また、車速が一定であっても、アクセル操作量ACCPが3速アップ用変速線U3を下回ったときには、変速段が2速から3速に切り替えられる。同様に、例えば操作量ACCPが一定であっても、車速SPDが2速ダウン用変速線D2を下回ったときには、変速段が3速から2速に切り替えられる。また、車速が一定であっても、アクセル操作量ACCPが2速ダウン用変速線D2を超えたときには、変速段が3速から2速に切り替えられる。
【0043】
また、制御装置50は、アクセル操作量ACCP及び車速SPDに基づいてロックアップ機構31の作動を制御する。例えば、図4に示すように、車速SPDが所定の作動許可速度SPDn以上であって、アクセル操作量ACCPが所定の操作量以下のときに、ロックアップ機構31が作動されて、同ロックアップ機構31は直結状態にされる。
【0044】
ところで、自動変速機付きの車両1に上記スノープラウ60を装着して除雪作業を行うと、次のような不都合が発生するおそれがある。
すなわち、上記自動変速機32の油圧制御や潤滑、あるいはトルクコンバータ30でのトルク伝達等に使われるATフルードは車両走行中に温度が上昇する。そのため、車両1のラジエータ3近傍には、ATフルードを冷却するオイルクーラ34が設けられている。
【0045】
ここで、スノープラウ60を装着した状態で車両1を走行させると、ラジエータ3への空気の流れがスノープラウ60によって妨げられてしまうため、オイルクーラ34によるATフルードの冷却効果も低下し、同ATフルードの温度は上昇しやすくなる。そして、その温度が過度に上昇してしまうと、当該ATフルードは劣化してしまう。
【0046】
また、除雪作業中には走行抵抗が大きくなるとともに、その走行抵抗に打ち勝つように内燃機関10の出力も大きくされる。そのため、トルクコンバータ30の入力軸とトルクコンバータの出力軸との回転速度差が大きくなり、トルクコンバータ30の滑りは大きくなりやすい。このようにトルクコンバータ30の滑りが大きくなると、同トルクコンバータ30内のATフルードの温度は上昇しやすくなり、この場合にも同ATフルードの温度が過度に上昇してしまうと、当該ATフルードは劣化してしまう。
【0047】
なお、ATフルードの温度上昇に対する対策として、そうした温度上昇を警告灯で車両の運転者に知らせるようにし、その警告灯が消灯するまで除雪作業を中断させるようにすれば、ATフルードの過度な温度上昇を抑えることができる。しかし、この場合にはATフルードの温度がある程度下がるまで除雪作業を中断しなければならず、利便性等の点で問題がある。
【0048】
また、オイルクーラ34を大型化するなどして除雪作業に見合った冷却性能を確保するようにすれば、上述したようなATフルードの温度上昇を抑えることはできる。しかし、取り外し可能なスノープラウ60を取り付けた車両1の場合には、除雪専用車と異なり、除雪作業が終了したり、積雪時期が終わったりすると、スノープラウ60は取り外されることが多く、そのようにスノープラウ60が取り外された状態で車両1を走行させると、ATフルードは過度に冷却されてしまうおそれがある。また、オイルクーラ34の大型化に伴う重量増加やコスト上昇等も避けられない。
【0049】
そこで、本実施形態では、車両1にスノープラウ60が取り付けられているか否かを判定し、車両1にスノープラウ60が装着されているときには、ATフルードの温度上昇を抑える油温上昇抑制処理を行うようにしている。そしてこれにより、取り外しの可能なスノープラウ60を車両1に装着して除雪作業を行うときにあって、ATフルードの温度上昇を抑えるようにしている。
【0050】
図5に、上記油温上昇抑制処理の実行可否を判定する処理についてその手順を示す。なお、本処理は制御装置50によって所定周期毎に繰り返し実行される。また、この実行可否判定を行う制御装置50は、上記判定手段及び油温上昇抑制手段を構成している。
【0051】
本処理が開始されると、まず、スノープラウ60が車両1に装着されているか否かを判定する装着判定処理が実行される(S100)。本実施形態での装着判定処理についてその処理手順を図6に示す。
【0052】
この図6に示すように、装着判定処理が実行されると、まず、装着センサ46の信号が「ON」となっているか否かが判定される(S101)。この装着センサ46は、車両1にスノープラウ60が装着されているか否かを検出するためのセンサであり、車両1にスノープラウ60が装着されているときには、「ON」を示す信号が出力され、その信号は制御装置50に入力される。なお、本実施形態では、上記装着部2aに装着センサ46が設けられており、同装着センサ46としては、光センサや静電容量式センサ、或いは近接スイッチなどを採用することができる。また、センサに限らず、スノープラウ60のアーム部60bが装着部2aに取り付けられたときに「ON」状態となるスイッチを採用することも可能である。また、本実施形態にあっては、装着センサ46が上記検出部材を構成する。
【0053】
そして、装着センサ46の信号が「ON」となっているときには(S101:YES)、スノープラウ60が装着されていると判定されて(S102)、本処理は一旦終了される。一方、装着センサ46の信号が「ON」となっていないときには(S101:NO)、スノープラウ60が装着されていないと判定されて(S103)、本処理は一旦終了される。
【0054】
こうした装着判定処理が実行されると、その判定結果に基づいて先の図5に示すステップS200の処理が行われる。すなわち、スノープラウ60が装着されていると判定されたか否かが判断され、装着判定処理にてスノープラウ60が装着されていないと判定されているときには、(S200:NO)、本処理は一旦終了される。
【0055】
一方、装着判定処理にてスノープラウ60が装着されていると判定されているときには、(S200:YES)、ATフルードの油温上昇抑制処理が実行されて(S300)、本処理は一旦終了される。その油温上昇抑制処理として、本実施形態では、次の(a)〜(d)の処理が実行される。なお、(a)〜(d)のうちの少なくとも1つの処理を実行するようにしてもATフルードの油温上昇を抑えることは可能である。
【0056】
(a)スノープラウ60が装着されているときには、そうでないときと比べて、自動変速機32の各変速線を高速側に変更する変速線変更処理を実行する。この変速線変更処理では、図7に示すように、スノープラウ60の非装着時に最適化された通常走行用の各変速線(二点鎖線にて図示)が、所定のシフト量SHの分だけ高速側に変更された除雪作業用の変速線(実線にて図示)に変更される。なお、図7では、一部の変速線に付いてのみ図示しているが、他の各変速線についても同様にシフト量SHの分だけ高速側に変更される。また、通常走行用の変速線及び除雪作業用の変速線を示す各マップは制御装置50の記憶素子に記憶されており、変速線変更処理が実行されると、自動変速機32の変速マップは、通常走行用の変速マップから除雪作業用の変速マップに切り替えられる。
【0057】
このように変速線が高速側に変更されると、低速段から高速段への変速が抑えられるようになる。例えば、先の図7に示すように、通常走行用の変速線を用いたときに4速が選択されるアクセル操作量ACCPa及び車速SPDaの組み合わせにおいて、除雪作業用の変速線に変更されると、自動変速機32の変速段は3速が選択されるようになる。このように低速段から高速段への変速が抑えられるようになると、同一の車速であっても内燃機関10の回転速度は高くなり、トルクコンバータ30でのトルクの伝達損失が少なくなる、換言すればトルクコンバータ30の滑りが減少する。その結果、同トルクコンバータ30内のATフルードの発熱が抑えられ、もって同ATフルードの温度上昇が抑えられるようになる。
【0058】
ちなみに、自動変速機32の各変速線を高速側に変更するときの態様として、変速マップを切り替えるのではなく、通常走行用の各変速線を所定の係数で変更することにより、各変速線を高速側に変更するようにしてもよい。また、本実施形態では、通常走行用の各変速線を上記シフト量SHの分だけ平行移動させたものを除雪作業用の各変速線とするようにしたが、要は、スノープラウ60が装着されているときには、そうでないときと比べて低速段から高速段への変速が抑えられるように通常走行用の各変速線を高速側に変更するようにすればよい。
【0059】
(b)スノープラウ60が装着されているときには、そうでないときと比べて、ロックアップ機構31を直結状態にする車速領域を低速側に拡大するロックアップ領域拡大処理を実行する。このロックアップ領域拡大処理では、図8に示すように、ロックアップ機構31の作動を許可する最低速度についてこれを規定する上記作動許可速度SPDnが、修正値Sの分だけ低い速度に変更される。これにより、スノープラウ60が装着されているときには、その非装着時と比較して、より低速領域からロックアップ機構31が直結状態になる。従って、より低速領域からロックアップ機構31の滑りが抑えられるようになり、これによりATフルードの発熱が抑えられ、もって同ATフルードの温度上昇が抑えられるようになる。
【0060】
(c)トルクコンバータ30に伝達される内燃機関10の出力トルクが大きいほど、同トルクコンバータ30内のATフルードの温度は高くなる傾向がある。そこで、油温上昇抑制処理として、スノープラウ60が装着されているときには、そうでないときと比べて、内燃機関10の出力トルクを低下させるトルク低下処理を実行する。このトルク低下処理が実行されることにより、スノープラウ60が装着されているときには、その非装着時と比較して、内燃機関10の出力トルクは低下され、ATフルードの発熱は抑えられ、もって同ATフルードの温度上昇が抑えられるようになる。なお、内燃機関10の出力トルクを低下させる際には、点火時期の遅角、或いは燃料噴射量や吸入空気量の減量等を行うようにすればよい。
【0061】
(d)スノープラウ60が装着されているときには、そうでないときと比べて、電動ファン4の回転速度を増大させる回転速度増大処理を実行する。こうした回転速度増大処理を実行することにより、スノープラウ60が装着されているときには、その非装着時と比較して、電動ファン4から上記オイルクーラ34への送風量が増大されるため、これによりATフルードの冷却効果が向上して、同ATフルードの温度上昇が抑えられるようになる。
【0062】
なお、本実施形態では、スノープラウ60が装着されていると判定されたときには、油温上昇抑制処理が実行される。従って、ATフルードが既定の温度に達してから油温上昇抑制処理を行う場合と比較して、同ATフルードの温度上昇を未然に抑えることが可能である。
【0063】
以上説明したように、本実施形態によれば次のような効果を得ることができる。
(1)車両1にスノープラウ60が装着されているか否かを判定し、スノープラウ60が装着されていると判定されるときには、自動変速機32内の油温上昇を抑える処理を実行するようにしている。従って、車両1にスノープラウ60が装着されているときに自動変速機32内の油温上昇を抑える処理が実行される。そのため、取り外しの可能なスノープラウ60を車両1に装着して除雪作業を行うときにあって、ATフルードの温度上昇を好適に抑えることができるようになる。
【0064】
(2)車両1へのスノープラウ60の装着を検出する装着センサ46を備え、同装着センサ46にてスノープラウ60の装着が検出されたときに、当該スノープラウ60が装着されていると判定するようにしている。従って、車両1へのスノープラウ60の装着が装着センサ46によって直接検出されることにより、当該スノープラウ60が装着されているか否かを確実に検出することができるようになる。
【0065】
(3)スノープラウ60が装着されているときには、そうでないときと比べて自動変速機32の変速線を高速側に変更する変速線変更処理を実行するようにしており、これによりATフルードの温度上昇を抑えることができるようになる。
【0066】
(4)スノープラウ60が装着されているときには、そうでないときと比べてロックアップ機構31を直結状態にする車速領域を低速側に拡大するロックアップ領域拡大処理を実行するようにしており、これによりATフルードの温度上昇を抑えることができるようになる。
【0067】
(5)スノープラウ60が装着されているときには、そうでないときと比べて内燃機関10の出力トルクを低下させるトルク低下処理を実行するようにしており、これによりATフルードの温度上昇を抑えることができるようになる。
【0068】
(6)スノープラウ60が装着されているときには、そうでないときと比べて電動ファン4の回転速度を増大させる回転速度増大処理を実行するようにしており、これによりATフルードの温度上昇を抑えることができるようになる。
(第2実施形態)
次に、この発明にかかる車両の制御装置を具体化した第2実施形態について、図9及び図10を参照しつつ説明する。
【0069】
第1実施形態では、装着センサ46の検出信号に基づいてスノープラウ60の装着判定を行うようにしたが、本実施形態では他の態様でスノープラウ60の装着判定を行うようにしており、先の図5に示したステップS100で実行される装着判定処理及び車両1に設けられたセンサの一部が第1実施形態とは異なっている。そこで、以下では、それら相違点を中心に、本実施形態にかかる車両の制御装置を説明する。
【0070】
スノープラウ60が車両1に装着されると、非装着時と比較して、当該車両1の懸架装置にはより大きな荷重がかかる。従って、外気温が所定温度以下となっている低温下において懸架装置への荷重が所定値以上に大きくなっているときには、除雪作業のためにスノープラウ60が装着されている可能性が高いといえる。そこで、本実施形態では、図9に示すように、上記装着センサ46の代わりに、懸架装置への荷重SLを検出する荷重検出手段として荷重センサ47を設けるようにしている。
【0071】
ここで、車両側から懸架装置に作用する荷重SLが大きくなると、当該車両の車高は低くなる。そのため、車両1にスノープラウ60が装着されて懸架装置への荷重が増加したときには、その荷重変化が上記車高に反映される。そこで、本実施形態では、上記荷重センサ47として、車両の車高を検出する車高センサを用いるようにしている。より詳細には、車高センサとして、懸架装置を構成するリンク機構の上下運動が回転運動に変換される部分(例えばリンク機構の車両側支持部等)の回転角を検出する回転角センサ(例えばホール素子を用いたセンサ等)を用いるようにしており、この場合には、荷重SLの大きさが回転角の大きさに反映される。ちなみに、荷重SLに基づいてスノープラウ60の装着を判定する場合には、同スノープラウ60の装着部位に近い方の懸架装置に対する荷重SLを検出することが望ましい。従って、スノープラウ60が前方に装着される車両1にあっては、前輪の懸架装置に荷重センサ47が設けられている。また、本実施形態では、車高センサとして上記回転角センサを用いるようにしているが、この他、車両の所定位置から地面までの距離を検出するセンサ等(例えば超音波センサ、ミリ波レーダ、レーザセンサ等)を用いることも可能である。
【0072】
そして、上記外気温センサ45にて検出される外気温THOが判定値α以下であり、かつ車両停止中に検出される荷重SLが判定値β以上であるときに、スノープラウ60が装着されていると判定するようにしている。
【0073】
図10に、上記原理に基づいて実行される本実施形態の装着判定処理についてその処理手順を示す。なお、本処理も制御装置50によって所定周期毎に繰り返し実行される。
本処理が開始されるとまず、車両1が停止中であるか否かが車速SPDに基づいて判定される(S111)。
【0074】
このステップS111の処理は、次の理由により実行される。すなわち、車両1が走行しているときには、加速や減速等に起因する荷重変化が懸架装置に作用するため、スノープラウ60の装着に起因する荷重変化のみを適切に検出することは困難である。一方、車両1の停止中であればそうした加速や減速等に起因する荷重変化は生じない。そこで、本実施形態では、車両停止中に検出された上記荷重SLを判定値βと比較するようにしており、これにより、スノープラウ60の装着に起因する荷重変化を確実に検出することができる。
【0075】
そして、車両1が停止中でない場合には(S111:NO)、本処理は一旦終了される。一方、車両1が停止中である場合には(S111:YES)、外気温THO及び懸架装置への荷重SLが読み込まれ(S112)、外気温THOが判定値α以下であって、かつ荷重SLが判定値β以上であるか否かが判定される(S113)。
【0076】
そして、外気温THOが判定値α以下であって、かつ荷重SLが判定値β以上である場合には(S113:YES)、スノープラウ60が装着されていると判定されて(S114)、本処理は一旦終了される。一方、外気温THOが判定値αよりも高い場合、あるいは荷重SLが判定値β未満である場合には(S113:NO)、スノープラウ60は装着されていないと判定されて(S115)、本処理は一旦終了される。
【0077】
そして、こうした判定結果に基づいて先の図5に示したステップS200以降の処理が実行される。
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0078】
(1)外気温THOを検出する外気温センサ45と、車両1の懸架装置への荷重SLを検出する荷重センサ47とを備え、外気温THOが判定値α以下であり、かつ荷重SLが判定値β以上であるときに、スノープラウ60が車両1に装着されていると判定するようにしている。そのため、車両1にスノープラウ60が装着されているか否かを適切に判定することができるようになる。
【0079】
(2)車両停止中に検出された荷重SLを判定値βと比較するようにしており、これによりスノープラウ60の装着に起因した荷重変化を確実に検出することができるようになる。
【0080】
(3)上記荷重センサ47として、車両1の車高を検出する車高センサを利用するようにしている。これにより車両1の懸架装置に付与される荷重SLを検出することができるようになる。
【0081】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・車両1の加速や減速等に起因する荷重変化を予め求めておき、車両走行中に検出される荷重SLから加速や減速等に起因する荷重変化分を減算してスノープラウ60の装着に起因する荷重変化分のみを取り出すことができる場合には、車両走行中に検出される荷重SLに基づいてスノープラウ60の装着を判定することも可能である。
【0082】
・懸架装置への荷重SLを圧電素子などで直接検出するようにしてもよい。
(第3実施形態)
次に、この発明にかかる車両の制御装置を具体化した第3実施形態について、図11〜図13を参照しつつ説明する。
【0083】
第1実施形態では、装着センサ46の検出信号に基づいてスノープラウ60の装着判定を行うようにしたが、本実施形態では他の態様でスノープラウ60の装着判定を行うようにしており、先の図5に示したステップS100で実行される装着判定処理及び車両1に設けられたセンサの一部が第1実施形態とは異なっている。そこで、以下では、それら相違点を中心に、本実施形態にかかる車両の制御装置を説明する。
【0084】
図11に実線にて示すように、スノープラウ60が装着された車両1にあって、スノープラウ60に対向する車両側の面(例えば、スノープラウが前方に装着される車両1にあっては、ラジエータ3が設けられる車両1の前面1a)が走行中に受ける風量は、スノープラウ60の非装着時における風量(一点鎖線にて図示)と比較して少なくなる。そこで、本実施形態では、図11に一点鎖線にて示す風量、すなわちスノープラウ60の非装着時において前面1aが走行中に受ける風量であって車速に応じて変化する風量を基準風量とし、この基準風量と前面1aが走行中に実際に受ける風量とを比較することで、車両1にスノープラウ60が装着されているか否かを適切に判定するようにしている。
【0085】
ここで、車両1の前面1a近傍にはラジエータ3が設けられており、このラジエータ3には電動ファン4が設けられている。この電動ファン4は、図12に示すように、ファン4aや電動機4b等から構成されており、同電動ファン4の非駆動時においてファン4aが走行風を受けて回転すると、電動機4bからは風量に応じた発電量が得られる。すなわち上記風量は電動機4bの発電量で把握することができる。そこで、本実施形態では、電動機4bの発電量EGを検出する発電量センサ48を設け、同発電量センサ48にて検出された発電量EGを制御装置50に入力するようにしている。そして、発電量EGが、車速SPDに応じて可変設定される基準発電量EGb以下であるときには、スノープラウ60が装着されていると判定するようにしており、上記前面1aが走行中に受ける風量と上記基準風量との比較を通じたスノープラウ60の装着判定を、車両1に搭載された既存の機器を利用して行うようにしている。なお、上記発電量センサ48は、上記風量検出手段や発電量検出手段を構成している。
【0086】
図13に、上記原理に基づいて実行される本実施形態の装着判定処理についてその処理手順を示す。なお、本処理も制御装置50によって所定周期毎に繰り返し実行される。
本処理が開始されるとまず、電動ファン4の発電量EG及び現在の車速SPDが読み込まれる(S121)。そして、現在の車速SPDに基づいて基準発電量EGbが設定される(S122)。この基準発電量EGbは、先の図11に一点鎖線にて示した基準風量、すなわちスノープラウ60の非装着時において車速とともに変化する風量に応じて得られる電動機4bの発電量であり、車速SPDが高くなるほど同基準発電量EGbの値は大きくされる。
【0087】
そして、現在の発電量EGが基準発電量EGb以下である否かが判定され(S123)、発電量EGが基準発電量EGb以下である場合には(S123:YES)、スノープラウ60が装着されていると判定されて(S124)、本処理は一旦終了される。一方、発電量EGが基準発電量EGbを超えている場合には(S123:NO)、スノープラウ60は装着されていないと判定されて(S125)、本処理は一旦終了される。
【0088】
そして、こうした判定結果に基づいて先の図5に示したステップS200以降の処理が実行される。
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0089】
(1)スノープラウ60に対向する車両側の面(前面1a)が走行中に受ける風量を検出し、その検出された風量が、車速に基づいて設定される基準風量よりも少ないときにスノープラウ60が装着されていると判定するようにしている。そのため、車両1にスノープラウ60が装着されているか否かを適切に判定することができるようになる。
【0090】
(2)電動ファン4の非駆動時においてそのファン4aが回転されることにより発電される発電量EGを検出する発電量センサ48を備え、同発電量EGが車速SPDに応じて可変設定される基準発電量EGb以下であるときには、スノープラウ60が装着されていると判定するようにしている。従って、上記車両側の面(前面1a)が走行中に受ける風量と、車速に応じた上記基準風量との比較を、その発電量EGに基づいて行うことができる。従って、上記車両側の面が走行中に受ける風量と上記基準風量との比較を通じたスノープラウ60の装着判定を、車両1に搭載された既存の機器を利用して行うことができるようになる。
【0091】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・電動ファン4の非駆動時においてファン4aが走行風を受けて回転するときの回転速度を検出し、その検出された回転速度と上記基準風量に相当するファン4aの回転速度とを比較して、スノープラウ60の装着判定を行うようにしてもよい。この場合にも、上記車両側の面が走行中に受ける風量と上記基準風量との比較を通じたスノープラウ60の装着判定を、車両1に搭載された既存の機器を利用して行うことができるようになる。
【0092】
・上記発電量EGを発電するファン付きの発電機を、電動ファン4とは別に設けるようにしてもよい。この場合にも、上記車両側の面が走行中に受ける風量と上記基準風量との比較を通じたスノープラウ60の装着判定を、発電機の発電量EGに基づいて行うことができる。
(第4実施形態)
次に、この発明にかかる車両の制御装置を具体化した第4実施形態について、図14及び図15を参照しつつ説明する。
【0093】
第1実施形態では、装着センサ46の検出信号に基づいてスノープラウ60の装着判定を行うようにしたが、本実施形態では、装着センサ46の検出信号を用いることなく、他の態様でスノープラウ60の装着判定を行うようにしている。そして、装着センサ46が省略されている点、及び先の図5に示したステップS100で実行される装着判定処理として別の処理が行われる点が第1実施形態とは異なっている。そこで、以下では、それら相違点を中心に、本実施形態にかかる車両の制御装置を説明する。
【0094】
除雪作業中の車両1の走行抵抗は、除雪作業を行っていない場合と比べて大きくなるため、図14に実線にて示すように、同一の車速であっても、除雪作業中の車両1の駆動力は、除雪作業を行っていないときの駆動力(一点鎖線にて図示)と比べて大きくなる。従って、外気温が所定温度以下となっている低温下において、車両1の駆動力が大きくなっている状態が所定時間以上継続されているときには、車両1が除雪作業中であり、当該車両1にはスノープラウ60が装着されている可能性が高いといえる。そこで、本実施形態では、外気温センサ45にて検出される外気温が判定値α以下であり、かつ車両1の駆動力Tが基準駆動力Tb以上となっている状態が所定時間以上継続されたときに、スノープラウ60が車両1に装着されていると判定するようにしている。なお、上記基準駆動力Tbとは、予め設定された値であって、先の図14に一点鎖線で示した駆動力、すなわち除雪作業を行っておらず、スノープラウ60が非装着となっている状態の車両1の車速を維持するために必要とされる当該車両1の駆動力であり、車速SPDが高くなるほどより大きな値が設定される。
【0095】
図15に、上記原理に基づいて実行される本実施形態の装着判定処理についてその処理手順を示す。なお、本処理も制御装置50によって所定周期毎に繰り返し実行される。
本処理が開始されるとまず、アクセル操作量ACCP、車速SPD、現在の自動変速機32の変速段H、及び外気温THOが読み込まれる(S131)。
【0096】
そして、外気温THOが判定値α以下であるか否かが判定され(S132)、外気温THOが判定値αを超えているときには(S132:NO)、本処理は一旦終了される。
一方、外気温THOが判定値α以下である場合には(S132:YES)、アクセル操作量ACCP及び車速SPDに基づいて内燃機関10の出力トルクが推定され、この出力トルクが現在の変速段Hや最終減速比等によって変換されて、車両1の駆動力Tが推定される(S133)。
【0097】
次に、車速SPDに基づいて上記基準駆動力Tbが算出されて(S134)、現在の駆動力Tが基準駆動力Tb以上であるか否かが判定される(S135)。
そして、駆動力Tが基準駆動力Tbに満たない場合には(S135:NO)、後述するカウンタCがリセットされて(S140)、本処理は一旦終了される。
【0098】
一方、駆動力Tが基準駆動力Tb以上である場合には(S135:YES)、カウンタCの値に「1」が加算される(S136)。このカウンタCの初期値は「0」であり、このステップS135の処理が行われることにより、その値には駆動力Tが基準駆動力Tb以上となっていた時間が反映される。
【0099】
そして、現在のカウンタCが判定値γ以上であるか否かが判定され(S137)、カウンタCが判定値γ未満である場合には(S137:NO)、スノープラウ60が装着されていないと判定される(S139)。そして、カウンタCがリセットされて(S140)、本処理は一旦終了される。
【0100】
一方、本処理の実行周期毎に、上記ステップS135にて駆動力Tが基準駆動力Tb以上である旨の判定が繰り返しなされ、カウンタCが判定値γ以上となった場合には(S137:YES)、外気温THOが判定値α以下の低温となっており、かつ車両1の駆動力Tが上記基準駆動力Tb以上に大きくなっている状態が所定時間以上継続されている。従って、ステップS137にて肯定判定されるときには、スノープラウ60が車両1に装着されていると判定されて(S138)、本処理は一旦終了される。
【0101】
そして、こうした判定結果に基づいて先の図5に示したステップS200以降の処理が実行される。
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0102】
(1)外気温THOが判定値α以下であり、かつスノープラウ60の非装着時における車両1の駆動力Tであって車速SPDに応じて可変設定される基準駆動力Tbよりも車両1の実際の駆動力Tが大きい状態が所定時間以上継続されたときに、スノープラウ60が車両1に装着されていると判定するようにしている。従って、車両1にスノープラウ60が装着されているか否かを適切に判定することができるようになる。
【0103】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・車両1の駆動力Tを推定し、その駆動力Tと上記基準駆動力Tbを比較するようにした。この他、駆動力が大きいときには、小さいときと比較して、同一車速に対するアクセル操作量ACCPがより大きくなる傾向にある。また、同一のアクセル操作量ACCPに対して車速SPDがより遅くなる傾向にある。そこで、スノープラウ60の非装着時におけるアクセル操作量ACCPと車速SPDとの対応関係を予め求めておく。そして、現在の車速に対するアクセル操作量ACCPの大きさが、その予め求められたアクセル操作量ACCPと車速SPDとの対応関係よりも大きい場合には、除雪作業によって車両1の駆動力が大きくなっていると判定するようにしてもよい。また、現在のアクセル操作量ACCPに対する車速SPDの速さが、その予め求められたアクセル操作量ACCPと車速SPDとの対応関係よりも低い場合には、除雪作業によって車両1の駆動力が大きくなっていると判定するようにしてもよい。
【0104】
さらに、上記各実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・自動変速機32の変速段の数は適宜変更することができる。
・上記変速線図やロックアップ機構31を作動させる領域は一例であり、適宜変更することができる。
【0105】
・上記スノープラウ60の構造は一例であり、車両に対して取り付け及び取り外しの可能なスノープラウであれば、他の構造のものでもよい。
・第3実施形態と第4実施形態とを組み合わせて、それら各実施形態における判定結果に基づいてスノープラウ60が装着されているか否かを判定するようにしてもよい。
【0106】
・上記自動変速機32は、トルクコンバータ30を備える変速機であった。この他、トルクコンバータ30を有していない自動変速機であっても、その内部でATフルードが攪拌される等により、同ATフルードの温度は上昇することがある。従って、そうしたトルクコンバータ30を有していない自動変速機を備える車両にあっても、本発明にかかる制御装置を適用することにより、上記各実施形態と同様な作用効果を得ることができる。なお、この場合に実行する油温上昇抑制処理としては、上記(d)の処理が適切である。
【0107】
・各実施形態において、車両1の原動機は内燃機関であった。この他、電動モータなどを原動機として備える車両にも本発明にかかる制御装置は適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態における車両の概略構成図。
【図2】同実施形態における内燃機関及び自動変速機の概略構成図。
【図3】自動変速機の変速線を示すグラフ。
【図4】ロックアップ機構の作動領域を示す概念図。
【図5】同実施形態における油温上昇抑制処理の実行可否判定処理についてその手順を示すフローチャート。
【図6】同実施形態におけるスノープラウの装着判定処理についてその手順を示すフローチャート。
【図7】変速線変更処理による変速線の変更態様についてその一例を示すグラフ。
【図8】ロックアップ領域拡大処理によるロックアップ作動領域の変更態様についてその一例を示す概念図。
【図9】第2の実施形態における内燃機関及び自動変速機の概略構成図。
【図10】同実施形態におけるスノープラウの装着判定処理についてその手順を示すフローチャート。
【図11】第3実施形態において車速と風量との関係を示すグラフ。
【図12】同実施形態における内燃機関及び自動変速機の概略構成図。
【図13】同実施形態におけるスノープラウの装着判定処理についてその手順を示すフローチャート。
【図14】第4実施形態において車速と駆動力との関係を示すグラフ。
【図15】同実施形態におけるスノープラウの装着判定処理についてその手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0109】
1…車両、1a…(車両の)前面、2…ブラケット、2a…装着部、3…ラジエータ、4…電動ファン、4a…ファン、4b…電動機、10…内燃機関、12…燃焼室、13…吸気通路、14…吸気ポート、15…スロットル弁、16…燃料噴射弁、17…点火プラグ、18…ピストン、19…コネクティングロッド、20…クランクシャフト、30…トルクコンバータ、31…ロックアップ機構、32…自動変速機、33…油圧制御回路、34…オイルクーラ、40…吸入空気量センサ、41…スロットルセンサ、42…回転速度センサ、43…車速センサ、44…アクセルセンサ、45…外気温センサ、46…装着センサ、47…荷重センサ、48…発電量センサ、50…制御装置、60…スノープラウ、60a…除雪プレート、60b…アーム部、62…固定具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り付け及び取り外しが可能な除雪用のスノープラウと自動変速機とを備える車両の制御装置であって、
前記車両に前記スノープラウが装着されているか否かを判定する判定手段と、
同判定手段にて前記スノープラウが装着されている旨判定されるときには、前記自動変速機内の油温上昇を抑える処理を実行する油温上昇抑制手段とを備える
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記車両への前記スノープラウの装着を検出する検出部材を備え、
前記判定手段は、前記検出部材にて前記スノープラウの装着が検出されたときに、当該スノープラウが装着されていると判定する
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
外気温を検出する温度センサと、前記車両の懸架装置への荷重を検出する荷重検出手段とを備え、
前記判定手段は、前記温度センサにて検出される外気温が所定温度以下であり、かつ前記荷重検出手段にて検出される前記荷重が所定値以上であるときに、前記スノープラウが装着されていると判定する
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記判定手段は、車両停止中に検出された前記荷重を前記所定値と比較する
請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記荷重検出手段は、前記車両の車高を検出する車高センサである
請求項3または4に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記スノープラウが装着された車両にあって、前記スノープラウに対向する車両側の面が走行中に受ける風量を検出する風量検出手段を備え、
前記判定手段は、前記風量検出手段にて検出される風量が、車速に基づいて設定される基準風量よりも少ないときに前記スノープラウが装着されていると判定する
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記風量検出手段は、前記車両のラジエータに設けられる電動ファンと、同電動ファンの非駆動時においてそのファンが回転されることにより発電される発電量を検出する発電量検出手段とを備え、
前記判定手段は、前記発電量が車速に応じて可変設定される所定値以下であるときに、前記スノープラウが装着されていると判定する
請求項6に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
外気温を検出する温度センサを備え、
前記判定手段は、前記温度センサにて検出される外気温が所定温度以下であり、かつ前記車両の駆動力が所定値よりも大きい状態が所定時間以上継続されたときに前記スノープラウが装着されていると判定する
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記所定値は、前記スノープラウの非装着時における駆動力であって車速に応じて可変設定される値である
請求項8に記載の車両の制御装置。
【請求項10】
前記自動変速機は流体伝達機構を備えており、
前記油温上昇抑制手段は、前記スノープラウが装着されているときには、そうでないときと比べて前記自動変速機の変速線を高速側に変更する変速線変更処理を実行する
請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項11】
前記自動変速機は、流体伝達機構と、同流体伝達機構の入力軸及び出力軸を直結するロックアップ機構とを備え、
前記油温上昇抑制手段は、前記スノープラウが装着されているときには、そうでないときと比べて前記ロックアップ機構を直結状態にする車速領域を低速側に拡大するロックアップ領域拡大処理を実行する
請求項1〜10のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項12】
前記自動変速機は流体伝達機構を備えており、
前記油温上昇抑制手段は前記スノープラウが装着されているときには、そうでないときと比べて前記車両の原動機の出力トルクを低下させるトルク低下処理を実行する
請求項1〜11のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項13】
電動ファンと、同電動ファンからの送風によって前記自動変速機内の油を冷却する放熱器とを備え、
前記油温上昇抑制手段は、前記スノープラウが装着されているときには、そうでないときと比べて前記電動ファンの回転速度を増大させる回転速度増大処理を実行する
請求項1〜12のいずれか1項に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−75261(P2008−75261A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252647(P2006−252647)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】