説明

車両の空調制御装置

【課題】車両の加速性能向上と車内の快適性確保を両立させつつ、かつエンジンヘの負荷を軽減する車両の空調制御装置を提供する。
【解決手段】車両の空調制御装置において、車両はアクセル開度とエアコン冷媒圧を測定するセンサを備え、制御装置は時間カウントを行うタイマを備えるとともに上記センサの検出結果を入力し、制御装置はアクセル開度とエアコン冷媒圧が所定値以上であると判断された場合に時間カウントを開始し、アクセル開度とエアコン冷媒圧が所定値以上となる状態が所定時間連続して維持された場合に、エアコン用コンプレッサの作動と停止を実施する所定温度を高温側に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両の空調制御装置に係り、特に、空調装置を搭載した車両についての加速性能向上と車室の快適性確保との両立を図った車両の空調制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載した空調装置(エアコンともいう)には、エアコン冷媒を圧縮するエアコン用コンプレッサが備えられている。エアコン用コンプレッサの作動可否の判断は、エバポレータ(エアコン冷媒)の温度によるものがある。エバポレータの温度は、所定の温度範囲内にあるよう、その都度、車両の空調制御装置がエアコン用コンプレッサの作動(ONともいう)や停止(OFFともいう)を行う。
一方、車両の空調装置には、エアコン用コンプレッサの動力をエンジンから得ているものがある。そのため、エアコン用コンプレッサの作動は、エンジンにとって大きな負荷となっており、車両の加速性能悪化やエンジン過熱によるオーバーヒートの原因にもなる。
このため、従来の空調制御装置では、エンジンがオーバーヒート状態となる、またはオーバーヒートが予測される場合にエアコン用コンプレッサを停止し、エンジンヘの負荷を減らしてエンジンを冷却し、エンジンの水温が所定の温度以下となると再度エアコン用コンプレッサの作動をさせる制御を行っていた。
しかし、エアコン用コンプレッサが停止すると、車内には冷風を送ることができないので、車内への送風が停止し、車内の快適性が損なわれてしまう問題がある。
【0003】
上記問題を解決するための従来技術として、特許文献1には、エバポレータの温度情報を用いて、車両の空調制御装置がエアコン用コンプレッサの作動、停止を判断し、エアコン用コンプレッサの作動と停止を行っている。特許文献1の空調制御装置は、車両が加速状態であると判断された場合に、エアコン用コンプレッサの作動を判断する温度、停止を判断する温度の両方を高温側に変更することを特徴としている。これより、特許文献1の空調制御装置は、加速時においてエアコン用コンプレッサの稼働率を小さくし、加速を円滑に行うことができるとともに省電力化、低燃費化が実現でき、オーバーヒートの発生も抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−140218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1では、以下の問題もある。
特許文献1では、車両が加速状態であると判断するために、吸気管内の圧力(吸気圧)を検出する圧力検出スイッチや、車両内に設置されるスピードメータの入力信号により作動されるスイッチを用いるとしている。この車両が加速状態であると判断する条件は、吸気圧や車両の加速度がある一定以上の場合と推測されるが、これらの条件が満たされた場合でも車両が乗員によって故意に加速する状態ではない場合が考えられる。例えば、吸気圧は、エンジンを動力源とする他の補機の作動によってエンジンの負荷が大となり、それに伴って大となる場合がある。また、車両の加速度が上昇するのは、車両が降坂状態である場合が考えられる。
つまり、特許文献1のように、吸気圧や車速のみから車両が加速状態であると判断するのでは、必ずしも乗員の意図した車両の加速状況下でない場合があり、車内の空調装置による快適性が損なわれやすい問題がある。
また、車両は、外気温度が高温で坂道を登坂する場合、勾配がきつくなるに従いエンジン負荷が増大してエンジンの冷却性能が悪化する。その場合、空調制御装置は、オーバーヒートを判定すると、ある一定期間、空調装置を非作動にしてエンジンを冷却する。空調制御装置は、エンジンの水温が一定値以下になると、再度空調装置を稼動する。この場合、空調装置が吹き出す空気温度の変化が大きく、不快感を与えて快適性が損なわれる問題がある。また、空調装置の非作動によって、冷却水の温度上昇も著しくなる問題がある。
【0006】
この発明は、車両の加速性能向上と車内の快適性確保を両立させつつ、且つエンジンヘの負荷を軽減する車両の空調制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車両に搭載される空調装置と、前記空調装置によって車内に送風される空気を冷却するエバポレータと、エンジンから動力を得るエアコン用コンプレッサと、前記エバポレータもしくは前記エバポレータの周辺の温度を測定するエバポレータ温度センサと、前記エバポレータ温度もしくは前記エバポレータの周辺温度が所定温度となった場合に前記エアコン用コンプレッサの作動と停止を実施する制御装置と、を備える車両の空調制御装置において、前記車両はアクセル開度とエアコン冷媒圧を測定するセンサを備え、前記制御装置は時間カウントを行うタイマを備えるとともに上記センサの検出結果を入力し、前記制御装置は前記アクセル開度とエアコン冷媒圧が所定値以上であると判断された場合に時間カウントを開始し、前記アクセル開度とエアコン冷媒圧が所定値以上となる状態が所定時間連続して維持された場合に、前記エアコン用コンプレッサの作動と停止を実施する所定温度を高温側に変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の車両の空調制御装置は、乗員の車両の加速要求をアクセルペダル踏み込み量により判断することとしたので、従来技術よりも、より乗員の意に沿った車両の加速要求判断を行うことができ、且つ一つのセンサの検出結果より乗員の車両の加速要求判断を行うことができる。
この発明の車両の空調制御装置は、乗員が車両の加速要求とエアコンの作動要求を持ち合わせているときにエバポレータの所定温度を高温側に変更することで、エアコン用コンプレッサの稼動量を減らして、エアコン用コンプレッサの駆動によるエンジントルクの減少を抑制できる。故に、この発明の車両の空調制御装置は、乗員の意に沿った車両の加速性能確保と空調装置の作動が可能となる。
この発明の車両の空調制御装置は、エアコン用コンプレッサの作動と停止を実施するエバポレータの所定温度を高温側に変更させるか否を、乗員の加速要求の指標となるアクセルペダル踏み込み量を示すアクセル開度と、エアコン用コンプレッサの稼動量を示すエアコン冷媒圧との2つの要素から判断することとしたので、制御装置の構成の簡素化ができる。
この発明の車両の空調制御装置は、エアコン用コンプレッサの作動と停止を実施するエバポレータの所定温度を高温側に変更させるトリガを、アクセル開度およびエアコン冷媒圧が所定値以上となることだけでなく、その状態が所定時間継続した場合としている。この発明の車両の空調制御装置は、アクセル開度およびエアコン冷媒圧が瞬間的に所定値以上となるような場合、エバポレータの所定温度を高温側とする制御に移行しないので、高温側の制御への変更頻度が軽減できる。
この発明の車両の空調制御装置は、高温側での制御時に車内に吹き出しされる空気温度は通常時の制御の場合に比べて若干高くなるが、空調装置が停止している場合よりも車内の快適性を確保することができる。
この発明の車両の空調制御装置は、フロー処理開始時に高温側の制御に移行するためのアクセル開度およびエアコン冷媒圧の条件(時間カウントを除く)をみてから、高温側の制御実行中であるか否かの確認を行うので、特に高温側の制御が実行中である場合は通常時の制御に移行するか高温側の制御を維持するかを直ちに判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】車両の空調制御装置のシステム構成図である。(実施例)
【図2】(A)は従来の空調制御装置によるエバポレータの温度とエアコン用コンプレッサのON、OFFとの関係を示す図、(B)はこの発明の空調制御装置によるエバポレータの温度とエアコン用コンプレッサのON、OFFとの関係を示す図である。(実施例)
【図3】実施例に対応した制御装置のフローチャートである。(実施例)
【図4】変形例1に対応した制御装置のフローチャートである。(変形例1)
【図5】変形例1のタイムチャートである。(変形例1)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図3は、この発明の実施例を示すものである。図1において、1は車両の空調装置制御装置である。空調制御装置1は、空調装置2と空調操作部3と制御装置4とを備えている。
【0012】
空調装置2は、エアコン冷媒を扱う冷熱サイクルユニット5と、空調空気を扱うヒータおよびクーリングユニット6と、空調空気を吹き出すフロアベンチレータ7とを備えている。
前記冷熱サイクルユニット5は、エアコン用コンプレッサリレー8で切断、接続されるマグネットクラッチ9を介してエンジンに接続されたエアコン冷媒を圧縮するエアコン用コンプレッサ10と、ラジエータファン11によりエアコン冷媒を冷却液化するコンデンサ12および液化したエアコン冷媒を貯めるレシーバドライヤ13と、エアコン冷媒の圧力を測定する冷媒圧センサ14と、エアコン冷媒を減圧膨張させるエキスパンションバルブ15と、エアコン冷媒により車内の空気を冷却するエバポレータ16とを備えている。
前記ヒータおよびクーリングユニット6は、ブロワファンドライバ17によって駆動されるブロワファンモータ18と、前記エバポレータ16に内気と外気とを切り替えて流す内外気切替アクチュエータ19および前記エバポレータ16もしくはエバポレータ16の周辺の温度を検出するエバポレータ温度センサ20と、エバポレータ16からの冷気の流れ方向を切り替るエアミックスアクチュエータ21、車内の空気を加温するヒータコア22および空気の吹出方向を空調モードに応じて切り替えるモードアクチュエータ23とを備えている。
【0013】
前記空調操作部3は、乗員による空調装置2の作動、停止要望を受ける操作パネル24を備え、前記エバポレータ温度センサ20と車両の外気温度を検出する外気温センサ25を接続している。空調操作部3は、制御装置4からの入力を受けて、空調装置2のブロワファンドライバ17によるブロワファンモータ18の動作、内外気切替アクチュエータ19、エアミックスアクチュエータ21、モードアクチュエータ23の動作を行う。
【0014】
前記制御装置4には、前記エアコン用コンプレッサリレー8を接続している。制御装置4は、エアコン用コンプレッサリレー8によりマグネットクラッチ9を接続、切断してエンジンの動力をエアコン用コンプレッサ10に供給、遮断し、エアコン用コンプレッサ10を作動、停止する。
また、制御装置4には、前記エアコン冷媒の圧力(Pac)を検出する冷媒圧センサ14と、前記エバポレータ16の温度(Te)を検出するエバポレータ温度センサ20と、前記車両の外気の温度(Ta)を検出する外気温センサ25と、車両の車速(VSP)を検出する車速センサ26と、エンジン回転数(Ne)を検出するクランク角センサ27と、エンジンの吸気の圧力(Pb)を検出する吸気圧センサ28と、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度ともいう)(APS)を検出するアクセルセンサ29と、エンジンの吸気の温度(Tia)を検出する吸気温センサ30と、エンジンの冷却水の温度(Tw)を検出する水温センサ31とを接続している。なお、制御装置4は、エバポレータ温度センサ20と外気温センサ25の各検出結果を、空調操作部3から入力する。さらに、制御装置4は、時間カウントを行うタイマ32を備えている。
前記冷媒圧センサ14の検出するエアコン冷媒圧は、エアコン用コンプレッサ10が稼動しているか否かを判断することができるだけでなく、エアコン用コンプレッサ10の稼働量も判断することができる。エアコン用コンプレッサ10は、その駆動源をエンジンより得ているので、エアコン用コンプレッサ10の稼動量が分かり、エンジンヘの負荷度合いも分かる。
制御装置4は、各センサ14、20、25〜31の検出結果を入力し、タイマ32がカウントした時間を合わせてエアコン用コンプレッサ10の作動(ON)、停止(OFF)を判断し、エアコン用コンプレッサ10の作動と停止を実施する。また、制御装置4は、エバポレータ温度センサ20以外のセンサの検出結果を入力し、タイマ32がカウントした時間を合わせてエアコン用コンプレッサ10の作動、停止を行うための所定温度の変更を行うか否かを判断し、エアコン用コンプレッサ10の作動、停止を実行する。
【0015】
制御装置4は、従来、図2(A)に示すように、エバポレータ16の温度Teが所定の温度近傍にあるよう、エアコン用コンプレッサ10の作動(ON)、停止(OFF)を繰り返して実施する。そのため、制御装置4には、エアコン用コンプレッサ10をONする所定温度Toと、エアコン用コンプレッサ10をOFFする所定温度Tsとが設定されている。
制御装置4は、空調装置2の作動時(操作パネル24のエアコンスイッチON時)で、エバポレータ16の温度Teが所定温度Toに達すると、エアコン用コンプレッサ10をONとし、エバポレータ15の温度Teが低下する。そして、制御装置4は、エバポレータ16の温度Teが所定温度Tsまで低下すると、エアコン用コンプレッサ10をOFFとし、再びエバポレータ16の温度Teが所定温度Toに達すると、エアコン用コンプレッサ10をONとする。
制御装置4は、以上のようなエアコン用コンプレッサ10のON、OFFのサイクルを繰り返すことで、空調装置2のエバポレータ16の温度Teが所定の温度領域にあるよう制御され、エバポレータ16を通過した空気温度が所定温度近傍にあることが可能となっている。
【0016】
この発明の制御装置4では、図2(B)に示すよう、エアコン用コンプレッサ10をONする所定温度ToにあたるTo1とTo2、また、エアコン用コンプレッサ10をOFFする所定温度TsにあたるTs1とTs2のように、エアコン用コンプレッサ10をONする所定温度ToとOFFする所定温度Tsとを夫々2つずつ備えている。エアコン用コンプレッサ10をONする所定温度To1、To2、エアコン用コンプレッサ10をOFFする所定温度Ts1、Ts2、エバポレータ16の温度Teの関係は、以下にように設定している。
制御装置4は、上記のTo、Tsにあたる所定温度を、以下の通常時と高負荷時との場合を持っている。
・通常時制御の場合
エアコン用コンプレッサ10をONする所定温度:To1
エアコン用コンプレッサ10をOFFする所定温度:Ts1
・高負荷時制御の場合
エアコン用コンプレッサ10をONする所定温度:To2
エアコン用コンプレッサ10をOFFする所定温度:Ts2
通常時制御における所定温度To1、Ts1および高負荷時制御における所定温度To2、Ts2とエアコン用コンプレッサ10のON、OFFとの関係は、上述した従来の所定温度To、Tsの場合と同様のサイクルを繰り返す構成としている。
制御装置4は、エンジン始動直後は通常時制御を行い、エンジンに負荷がかかっていると判断した場合に後述するように高温側の高負荷時制御に移行する。
To1、To2、Ts1、Ts2の大小関係は以下の通りである。
・To1<To2
・Ts1<Ts2
・Ts1<To1
・Ts2<To2
また、To1とTs1の温度の差、To2とTs2の温度の差は、同じである。さらに、To1<Ts2の条件を加えても良い。本条件を追加することで、高負荷時制御の場合のエバポレータ16の温度Teは通常時制御の場合とは異なる温度となるよう制御される。これより、高負荷時制御では、車両の加速性能向上と車内の快適性確保ができる。
【0017】
次に、作用を説明する。
制御装置4は、以下の条件(1)、(2)を満たす場合に、制御装置4のタイマ32が時間カウントを行い、且つ条件(1)、(2)を満たした状態が所定時間Tx1継続した場合に、空調制御装置1は高負荷時制御に移行し、エアコン用コンプレッサ10がON、OFFとなるエバポレータ16の所定温度を、通常時制御における所定温度To1、Ts1から高温側の所定温度To2、Ts2に変更する。
(1)アクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量)(APS)≧所定値(D)
(2)エアコン冷媒圧力(Pac)≧所定値(E)
なお、D、Eは定数である。
具体的には、アクセル開度APSが所定値D以上、エアコン冷媒圧Pacが所定値E以上であって、且つこれらの状態が所定時間Tx1継続した場合に、通常時制御の場合にエアコン用コンプレッサ10をONするエバポレータ16の所定温度To1を高温側の高負荷時制御の場合の所定温度To2に変更し、通常時制御の場合にエアコン用コンプレッサ10をOFFするエバポレータ16の所定温度Ts1を高温側の高負荷時制御の場合の所定温度Ts2に変更する。
【0018】
図3に示すように、制御装置4は、制御がスタートすると(101)、アクセルセンサ29および冷媒圧センサ14からアクセル開度APSおよびエアコン冷媒圧Pacの検出結果を入力し(102)、アクセル開度が所定値D以上(APS≧D)、エアコン冷媒圧力が所定値E以上(Pac≧E)であるかを判断する(103)。
この判断(103)がYESの場合は、高負荷時制御を実行中であるかを判断する(104)。この判断(104)がNOの場合は、タイマ32による時間カウントを開始し(105)、アクセルセンサ29および冷媒圧センサ14からアクセル開度APSおよびエアコン冷媒圧Pacの検出結果を入力し(106)、アクセル開度が所定値D以上(APS≧D)、エアコン冷媒圧が所定値E以上(Pac≧E)であるかを判断する(107)。
この判断(107)がYESの場合は、タイマ32の時間カウント値が所定時間Tx1を経過したかを判断する(108)。この判断(108)がNOの場合は、各センサ14、29からの検出結果の入力(106)に戻る。この判断(108)がYESの場合は、高負荷時制御を実行し(109)、これにより、エアコン用コンプレッサ10がON、OFFとなるエバポレータ16の所定温度を高温側のTo2、Ts2に変更し、制御をエンドにする(110)。
一方、前記判断(107)において、アクセル開度が所定値D未満(APS<D)、および/またはエアコン冷媒圧が所定値E未満(Pac<E)でNOの場合は、タイマ32による時間カウントを中止し(111)、通常時制御を実行し(112)、これにより、エアコン用コンプレッサ10がON、OFFとなるエバポレータ16の所定温度を通常のTo1、Ts1に変更し、制御をエンドにする(110)。
また、前記判断(104)において、高負荷時制御を実行中でYESの場合は、高負荷時制御を続行し(113)、制御をエンドにする(110)。
さらに、前記判断(103)において、アクセル開度が所定値D未満(APS<D)、および/またはエアコン冷媒圧が所定値E未満(Pac<E)でNOの場合は、高負荷時制御を実行中であるかを判断する(114)。この判断(114)がNOの場合は、各センサ14、29からの検出結果の入力(102)に戻る。この判断(114)がYESの場合は、通常時制御を実行し(112)、制御をエンドにする(110)。
【0019】
この車両の空調制御装置1は、フロー処理において、アクセルセンサ29および冷媒圧センサ14によりアクセル開度(APS)およびエアコン冷媒圧(Pac)を常に検出し、各センサ14、29から検出結果を制御装置4に入力する。(ステップ102、103)
(1)アクセル開度(APS)≧所定値(D)および(2)エアコン冷媒圧(Pac)≧所定値(E)の両方の条件が満たされた場合に、制御装置4のタイマ32が時間カウントを開始し、且つ前記(1)、(2)の両方の条件を満たした状態が所定時間Tx1継続した場合に、高負荷時制御に移行し、エアコン用コンプレッサ10がON、OFFとなるエバポレータ16の所定温度を高温側のTo2、Ts2に変更する。(ステップ105〜109)
高負荷時制御は、空調装置2のその他の制御よりも優先して実施される。高負荷時制御の場合に車内に吹き出しされる空気温度は、通常時制御の場合に比べて若干高くなる。なお、通常時制御の場合および高負荷時制御の場合に吹き出しされる空気温度の差(通常時制御の場合のエバポレータ16の所定温度と高負荷時制御の場合のエバポレータ16の所定温度との差)は、任意に設定が可能である。
一方、以下に示す場合に、制御装置4は高負荷時制御には移行せず、通常時制御を行う。一つは、時間カウント中に条件(1)、(2)の一方若しくは両方が満足されないと判断された場合である。他の一つは、前記条件(1)、(2)の一方若しくは両方が満足されないと判断された場合である。
制御装置4は、時間カウント中に条件(1)、(2)の一方若しくは両方が満足されないと判断された場合、時間カウントを中止して通常時制御を行う。(ステップ107、111、112)
また、制御装置4は、高負荷時制御に移行してフロー処理を終了した後、次回のフロー処理時において再度、条件(1)、(2)の両方を満足すると判断された場合、時間カウントは行わず高負荷時制御を続行する処理を行い、フロー処理を終了する。(ステップ103、104、113)
これに対して、制御装置4は、高負荷時制御に移行してフロー処理を終了した後、次回のフロー処理時において、条件(1)、(2)の一方若しくは両方が満足されないと判断された場合、通常時制御に移行し、フロー処理を終了する。(ステップ103、114、112)
【0020】
このように、車両の空調制御装置1は、乗員の車両の加速要求をアクセルペダル踏み込み量を示すアクセル開度により判断することとしたので、従来技術よりも、より乗員の意に沿った車両の加速要求判断を行うことができ、且つ一つのアクセルセンサ29の検出結果より乗員の車両の加速要求判断を行うことができる。
また、この車両の空調制御装置1は、乗員が車両の加速要求とエアコンの作動要求を持ち合わせているときにエバポレータ16の所定温度を高温側に変更することで、エアコン用コンプレッサ10の稼動量を減らして、エアコン用コンプレッサ10の駆動によるエンジントルクの減少を抑制できる。故に、この車両の空調制御装置1は、乗員の意に沿った車両の加速性能確保と空調装置2の作動が可能となる。
さらに、この車両の空調制御装置1は、エアコン用コンプレッサ10の作動と停止を実施するエバポレータ16の所定温度を高温側に変更させるか否を、乗員の加速要求の指標となるアクセル開度と、エアコン用コンプレッサ10の稼動量を示すエアコン冷媒圧との2つの要素から判断することとしたので、制御装置4の構成の簡素化ができる。
この車両の空調制御装置1は、エアコン用コンプレッサ10の作動と停止を実施するエバポレータ16の所定温度を高温側に変更させるトリガを、アクセル開度およびエアコン冷媒圧が所定値以上となることだけでなく、その状態が所定時間継続した場合としている。車両の空調制御装置1は、アクセル開度およびエアコン冷媒圧が瞬間的に所定値以上となるような場合、エバポレータ16の所定温度を高温側とする高負荷時制御に移行しないので、高負荷時制御への変更頻度が軽減できる。
この車両の空調制御装置1は、高負荷時制御の場合に車内に吹き出しされる空気温度は通常時制御の場合に比べて若干高くなるが、空調装置2が停止している場合よりも車内の快適性を確保することができる。
この車両の空調制御装置1は、フロー処理開始時に高負荷時制御に移行するためのアクセル開度およびエアコン冷媒圧の条件(時間カウントを除く)をみてから、高負荷時制御が実行中であるか否かの確認を行うので、特に高負荷時制御が実行中である場合は通常時制御に移行するか高負荷時制御を維持するかを直ちに判断することができる。
【0021】
また、空調制御装置1の制御装置4は、時間カウント中にエアコン用コンプレッサ10の作動と停止を実施する所定温度を高温側に変更するための条件が満たされないと判断された場合、時間カウントを中止し、エアコン用コンプレッサ10の作動と停止を実施する所定温度を高温側に変更せずにフロー処理を終えている。
これにより、この車両の空調制御装置1は、通常時制御および高負荷時制御の制御が頻繁に切り替わることを防ぐと共に、空調装置2より吹き出しされる空気温度が頻繁に変化することを抑制し、乗員に与える不快感を軽減できる。
さらに、空調制御装置1の制御装置4は、そのフロー処理開始時にアクセルセンサ29および冷媒圧センサ14の検出結果を入力し、既にエアコン用コンプレッサ10の作動と停止を実施する所定温度を高温側に変更しており、且つタイマ32により時間カウントを行うための条件が満足される場合、エアコン用コンプレッサ10の作動と停止を実施する所定温度を高温側に維持し続けている。
これにより、この車両の空調制御装置1は、フロー処理開始時に高負荷時制御に移行するためのアクセル開度およびエアコン冷媒圧の条件(時間カウントを除く)をみてから、高負荷時制御の実行中であるか否かの確認を行うことになり、特に高負荷時制御が実行中である場合は通常時制御に移行するか高負荷時制御を維持するかを直ちに判断することができる。
さらにまた、空調制御装置1の制御装置4は、そのフロー処理開始時にアクセルセンサ29および冷媒圧センサ14の検出結果を入力し、既にエアコン用コンプレッサ10の作動と停止を実施する所定温度を高温側に変更しており、且つタイマ32により時間カウントを行うための条件が満足されない場合、エアコン用コンプレッサ10の作動と停止を実施する所定温度の高温側への変更を解除している。
これにより、この車両の空調制御装置1は、フロー処理開始時に高負荷時制御に移行するためのアクセル開度およびエアコン冷媒圧の条件(時間カウントを除く)をみてから、高負荷時制御の実行中であるか否かの確認を行うことになり、特に高負荷時制御が実行中である場合は通常時制御に移行するか高負荷時制御を維持するかを直ちに判断することができる。
【0022】
図4・図5は、変形例1を示すものである。
変形例1の空調制御装置1は、前述実施例に対し、よりエンジンヘの負荷が大きい状況下における場合を想定したものである。この状況下とは、例えば車両周辺の温度が比較的高くなる夏期に、車両が登坂路を走行する場合である。
このような場合、車両が登坂路を走行するために乗員によってアクセルペダルが通常よりも多めに踏み込まれる一方で、車内の快適性向上のために空調装置2も作動され、且つ登坂路を走行して車両の速度が低下することで、平坦路や降坂路の走行時よりもエンジンの冷却水を冷却するラジエータヘの走行風の導入量も少なくなる。つまり、エンジンにはより多くの負荷がかかり、オーバヒートを起こしやすい状態である。
変形例1の空調制御装置1は、オーバヒートの発生を抑制しつつ、車内の快適性を得るために、アクセル開度APSと、エアコン冷媒圧Pacと、車両の車速VSPと、エンジン回転数Neと、吸気圧Pbと、外気温Taと、吸気温Tiaと、エンジンの水温Twとによって、高負荷時制御に移行するための条件を設定している。
具体的には、アクセル開度APSが所定値D以上、エアコン冷媒圧Pacが所定値E以上、車速VSPが所定値A未満、エンジン回転数Neが所定値B以上、吸気圧Pbが所定値C以上、外気温Taが所定値F以上、吸気温Tiaが所定値G以上、水温Twが所定値H以上であって、且つこれらの状態が所定時間Tx2継続した場合に、通常時制御の場合にエアコン用コンプレッサ10をONするエバポレータ16の所定温度To1を高温側の高負荷時制御の所定温度To2に変更し、通常時制御の場合にエアコン用コンプレッサ10をOFFするエバポレータ16の所定温度Ts1を高温側の高負荷時制御の場合の所定温度Ts2に変更する。
【0023】
変形例1の空調制御装置1は、上記実施例のアクセル開度(APS)、エアコン冷媒圧(Pac)に加えて、車速(VSP)、エンジン回転数(Ne)、吸気圧(Pb)、外気温(Ta)、吸気温(Tia)、水温(Tw)を検出するセンサ14、25〜31を備え、各センサ14、25〜31の検出結果を判断の条件にしている。具体的には、条件(1)から(8)の全てを満たした場合に、制御装置4のタイマ32が時間カウントを行い、且つ条件(1)から(8)の全てを満たした状態が所定時間Tx2継続した場合に、空調制御装置1は高負荷時制御に移行する構成とする。
(1)アクセル開度(APS)≧所定値(D)
(2)エアコン冷媒圧(Pac)≧所定値(E)
(3)車両の車速(VSP)<所定値(A)
(4)エンジン回転数(Ne)≧所定値(B)
(5)吸気圧(Pb)≧所定値(C)
(6)外気温(Ta)≧所定値(F)
(7)吸気温(Tia)≧所定値(G)
(8)エンジンの水温(Tw)≧所定値(H)
なお、A、B、C、D、E、F、G、Hは定数である。
図4に示すように、制御装置4は、制御がスタートすると(201)、各センサ14、25〜31から車速VSP、エンジン回転数Ne、吸気圧Pb、アクセル開度APS、エアコン冷媒圧Pac、外気温Ta、吸気温Tia、水温Twの検出結果を入力し(202)、車速が所定値未満(VSP<A)であり、エンジン回転数が所定値以上(Ne≧B)、吸気圧が所定値以上(Pb≧C)、アクセル開度が所定値以上(APS≧D)、エアコン冷媒圧が所定値以上(Pac≧E)、外気温が所定値以上(Ta≧F)、吸気温が所定値以上(Tia≧G)、水温が所定値以上(Tw≧H)であるかを判断する(203)。
この判断(203)がYESの場合は、高負荷時制御を実行中であるかを判断する(204)。この判断(204)がNOの場合は、タイマ32による時間カウントを開始し(205)、各センサ14、25〜31から車速VSP、エンジン回転数Ne、吸気圧Pb、アクセル開度APS、エアコン冷媒圧Pac、外気温Ta、吸気温Tia、冷却水温Twの検出結果を入力し(206)、車速が所定値未満(VSP<A)、エンジン回転数が所定値以上(Ne≧B)、吸気圧が所定値以上(Pb≧C)、アクセル開度が所定値以上(APS≧D)、エアコン冷媒圧が所定値以上(Pac≧E)、外気温が所定値以上(Ta≧F)、吸気温が所定値以上(Tia≧G)、水温が所定値以上(Tw≧H)であるかを判断する(207)。
この判断(207)がYESの場合は、タイマ32の時間カウント値が所定時間Tx2を経過したかを判断する(208)。この判断(208)がNOの場合は、各センサ14、25〜31からの検出結果の入力(206)に戻る。この判断(208)がYESの場合は、高負荷時制御を実行し(209)、これにより、エアコン用コンプレッサ10がON、OFFとなるエバポレータ16の所定温度を高温側のTo2、Ts2に変更し、制御をエンドにする(210)。
一方、前記判断(207)において、車速が所定値未満(VSP<A)、エンジン回転数が所定値以上(Ne≧B)、吸気圧が所定値以上(Pb≧C)、アクセル開度が所定値以上(APS≧D)、エアコン冷媒圧が所定値以上(Pac≧E)、外気温が所定値以上(Ta≧F)、吸気温が所定値以上(Tia≧G)、水温が所定値以上(Tw≧H)のいずれか1以上を満足せずにNOの場合は、タイマ32による時間カウントを中止し(211)、通常時制御を実行し(212)、これにより、エアコン用コンプレッサ10がON、OFFとなるエバポレータ16の所定温度を通常時制御のTo1、Ts1に変更し、制御をエンドにする(210)。
また、前記判断(204)において、高負荷時制御を実行中でYESの場合は、高負荷時制御を続行し(213)、制御をエンドにする(210)。
さらに、前記判断(203)において、車速が所定値未満(VSP<A)、エンジン回転数が所定値以上(Ne≧B)、吸気圧が所定値以上(Pb≧C)、アクセル開度が所定値以上(APS≧D)、エアコン冷媒圧が所定値以上(Pac≧E)、外気温が所定値以上(Ta≧F)、吸気温が所定値以上(Tia≧G)、水温が所定値以上(Tw≧H)のいずれか1以上を満足せずにNOの場合は、高負荷時制御を実行中であるかを判断する(214)。この判断(214)がNOの場合は、各センサ14、25〜31からの検出結果の入力(202)に戻る。この判断(214)がYESの場合は、通常時制御を実行し(212)、制御をエンドにする(210)。
【0024】
高負荷時制御は、空調装置2のその他の制御よりも優先して実施される。この高負荷時制御の場合に車内に吹き出しされる空気温度は、通常時制御に比べて若干高くなる。なお、この通常時制御の場合に吹き出しされる空気温度および高負荷時制御時に吹き出しされる空気温度の差(通常時制御の場合のエバポレータ16の所定温度と高負荷時制御の場合のエバポレータ16の所定温度との差)は、任意に設定が可能である。
一方、以下に示す場合に、制御装置4は高負荷時制御には移行せず通常時制御を行う。
・条件(1)から(8)のいずれか一つないし全てが満足されないと判断された場合。
・時間カウント中に条件(1)から(8)のいずれか一つないし全てが満足されないと判断された場合。
高負荷時制御に移行してフロー処理を終了した後、次回のフロー処理時において再度、条件(1)から(8)の全てを満足すると判断された場合、時間カウントは行わず高負荷時制御を続行する処理を行い、フロー処理を終了する。対して条件(1)から(8)のいずれか一つないし全てが満足されないと判断された場合は、通常時制御に移行し、フロー処理を終了する。
なお、所定時間Tx2は、実施例の所定時間Tx1としても良い。
【0025】
図5は、変形例1の空調制御装置1に対応したタイムチャートである。図5の縦軸は、各パラメータの値を示している。説明の都合上、図5には車速VSP、エンジン回転数Ne、吸気圧Pb、アクセル開度APSの4つのパラメータ(エアコン冷媒圧Pac、外気温Ta、吸気温Tia、水温Twは不図示)をまとめて記載している。各パラメータの縦軸の一目盛りが示す大きさは、各パラメータごとに異なる。また、図5の横軸は、時間を示している。
図5には、車速VSP、エンジン回転数Ne、吸気圧Pb、アクセル開度APSが表示されており、時間経過による各パラメータの移り変わりを示している。なお、図5では、車速VSP、エアコン冷媒圧Pac、外気温Ta、吸気温Tia、水温Twは既に条件を満たしている。
図5において、各パラメータの時間経過による移り変わりをみると、車速VSPが緩やかに増加するのに対して、アクセル開度APSが大きく増加し、あわせてエンジン回転数Neおよび吸気圧Pbも大きく増加していることが分かる。つまり、エンジンヘの負荷は大きいが、車速VSPは大きく増加しない登坂路走行状態を示している。
制御装置4は、図5において、エンジン回転数Ne、吸気圧Pb、アクセル開度APSが順に所定値以上となり全条件が成立する(t1)ことで時間カウントを開始し、時間カウント中も各パラメータは所定値以上となっている。これより、空調制御装置1は、時間カウントによる所定時間Tx2の経過(t2)を経て、高負荷時制御に移行している。
【0026】
このように、変形例1の空調制御装置1は、各センサ14、25〜31からアクセル開度APS、エアコン冷媒圧Pac、車速VSP、エンジン回転数Ne、吸気圧Pb、外気温Ta、吸気温Tia、水温Twの検出結果を入力し、車速が所定値未満(VSP<A)であり、エンジン回転数が所定値以上(Ne≧B)、アクセル開度が所定値以上(APS≧D)、エアコン冷媒圧が所定値以上(Pac≧E)、吸気圧が所定値以上(Pb≧C)、外気温が所定値以上(Ta≧F)、吸気温が所定値以上(Tia≧G)、水温が所定値以上(Tw≧H)となる状態が所定時間Tx2連続して維持された場合に、エアコン用コンプレッサ10の作動と停止をするエバポレータ16の所定温度を高温側に変更する。
これにより、この車両の空調制御装置1は、高温登坂時などのエンジンヘの負荷が高い状況下において、車両の加速性確保と車内の快適性を得ることができる。また、この車両の空調制御装置1は、エンジンヘの負荷を減らし、オーバヒートの発生も抑制できる。
また、この車両の空調制御装置1は、乗員が車両の加速要求とエアコンの作動要求を持ち合わせているときにエバポレータ16の設定温度を高温側に変更することで、エアコン用コンプレッサ10の稼動量を減らして、エアコン用コンプレッサ10の駆動によるエンジントルクの減少を抑制できる。故に、この車両の空調制御装置1は、乗員の意に沿った車両の加速性能確保と空調装置2の作動が可能となる。
さらに、この車両の空調制御装置1は、エアコン用コンプレッサ10の作動と停止を実施するエバポレータ16の所定温度を高温側に変更させるトリガ(車速、エンジン回転数、アクセル開度、エアコン冷媒圧、吸気圧、外気温、吸気温、水温)は、各センサ14、25〜31の検出結果が制御装置4に設定された所定値(A〜H)を満足するだけでなく、その状態が所定時間Tx2継続した場合としている。この車両の空調制御装置1は、各センサ14、25〜31の検出結果が瞬間的に制御装置4に設定された所定値を満足するような場合、エバポレータ16の所定温度を高温側とする高負荷時制御へ移行しないので、高負荷時制御への変更頻度が軽減できる。
この車両の空調制御装置1は、高負荷時制御の場合に車内に吹き出しされる空気温度は通常時制御の場合に比べて若干高くなるが、空調装置2が停止している場合よりも車内の快適性を確保することができる。
この車両の空調制御装置1は、フロー処理開始時に高負荷時制御に移行するためのアクセル開度およびエアコン冷媒圧の条件(時間カウントを除く)をみてから、高負荷時制御が実行中であるか否かの確認を行うので、特に高負荷時制御が実行中である場合は通常時制御に移行するか高負荷時制御を維持するかを直ちに判断することができる。
【0027】
また、変形例1の空調制御装置1は、前述実施例と同様に、時間カウント中にエアコン用コンプレッサ10の作動と停止を実施する所定温度を高温側に変更するための条件が満たされないと判断された場合、時間カウントを中止し、エアコン用コンプレッサ10の作動と停止を実施する所定温度を高温側に変更せずにフロー処理を終えているので、通常時制御および高負荷時制御の制御が頻繁に切り替わることを防ぐと共に、空調装置2より吹き出しされる空気温度が頻繁に変化することを抑制し、乗員に与える不快感を軽減できる。
さらに、変形例1の空調制御装置1は、そのフロー処理開始時に各センサ14、25〜31の検出結果を入力し、既にエアコン用コンプレッサ10の作動と停止を実施する所定温度を高温側に変更しており、且つタイマ32により時間カウントを行うための条件が満足される場合、エアコン用コンプレッサ10の作動と停止を実施する所定温度を高温側に維持し続けているので、フロー処理開始時に高負荷時制御に移行するための車速などの条件(時間カウントを除く)をみてから、高負荷時制御の実行中であるか否かの確認を行うことになり、特に高負荷時制御が実行中である場合は通常時制御に移行するか高負荷時制御を維持するかを直ちに判断することができる。
さらにまた、変形例1の空調制御装置1は、そのフロー処理開始時に各センサ14、25〜31の検出結果を入力し、既にエアコン用コンプレッサ10の作動と停止を実施する所定温度を高温側に変更しており、且つタイマ32により時間カウントを行うための条件が満足されない場合、エアコン用コンプレッサ10の作動と停止を実施する所定温度の高温側への変更を解除しているので、フロー処理開始時に高負荷時制御に移行するための車速などの条件(時間カウントを除く)をみてから、高負荷時制御の実行中であるか否かの確認を行うことになり、特に高負荷時制御が実行中である場合は通常時制御に移行するか高負荷時制御を維持するかを直ちに判断することができる。
【0028】
この発明は、上述実施例および変形例1以外にも、種々応用改変が可能である。
例えば、上述実施例および変形例1において、高負荷時制御から通常時制御へ移行(高負荷時制御の解除ともいう)は、高負荷時制御に移行するための条件(時間カウントを除く)が一つ以上満足されないと判断された時点で行うとした。しかし、高負荷時制御に移行してからの一定時間は、高負荷時制御を維持する構成としても良い。(変形例2)
変形例2の空調制御装置1は、高負荷時制御に移行してからの一定時間は、高負荷時制御を維持する構成とするので、車両の加速性確保およびエンジンヘの負荷軽減をより長く得ることができる。
【0029】
また、上述実施例のアクセル開度(APS)≧所定値(D)の条件(1)の代わりに、車両の他の機器の制御に用いるセンサ類の検出結果を用いる構成としても良い。他の機器としては、例えばトルクコンバータを備えた有段変速機、ベルト式の無段変速機等からなる自動変速機である。このような自動変速機を搭載した車両には、登降坂路走行において頻繁に変速が実施されることを抑制するために、車両が登降坂路を走行中であるか否かを判断しているものがある。これより、自動変速機に用いる制御を利用して登坂路を判断し、エバポレータ16の所定温度を高温側に変更する構成としても良い。(変形例3)
変形例3の空調制御装置1は、自動変速機に用いる制御を用いて、車両が登坂路を走行しているか否かを判断できるので、上述実施例と同様の効果が得られ、また、制御装置4の共有化および制御装置4の簡素化ができる。なお、条件(1)と他の機器の制御に用いるセンサ類の検出結果を併用した構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明は、空調装置を搭載した車両についての加速性能向上と車室の快適性確保との両立を図ることができ、空調装置を搭載した輸送機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 空調制御装置
2 空調装置
3 空調操作部
4 制御装置
5 冷熱サイクルユニット
6 ヒータおよびクーリングユニット
7 フロアベンチレータ
10 エアコン用コンプレッサ
12 コンデンサ
13 レシーバドライヤ
14 冷媒圧センサ
16 エバポレータ
18 ブロワファンモータ
20 エバポレータ温度センサ
22 ヒータコア
24 操作パネル
25 外気温センサ
26 車速センサ
27 クランク角センサ
28 吸気圧センサ
29 アクセルセンサ
30 吸気温センサ
31 水温センサ
32 タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される空調装置と、
前記空調装置によって車内に送風される空気を冷却するエバポレータと、
エンジンから動力を得るエアコン用コンプレッサと、
前記エバポレータもしくは前記エバポレータの周辺の温度を測定するエバポレータ温度センサと、
前記エバポレータ温度もしくは前記エバポレータの周辺温度が所定温度となった場合に前記エアコン用コンプレッサの作動と停止を実施する制御装置と、を備える車両の空調制御装置において、
前記車両はアクセル開度とエアコン冷媒圧を測定するセンサを備え、
前記制御装置は時間カウントを行うタイマを備えるとともに上記センサの検出結果を入力し、
前記制御装置は前記アクセル開度とエアコン冷媒圧が所定値以上であると判断された場合に時間カウントを開始し、前記アクセル開度とエアコン冷媒圧が所定値以上となる状態が所定時間連続して維持された場合に、前記エアコン用コンプレッサの作動と停止を実施する所定温度を高温側に変更することを特徴とする車両の空調制御装置。
【請求項2】
前記車両の車速と前記エンジンの回転数と前記エンジンの吸気圧と前記車両の外気温と前記エンジンの吸気温と前記エンジンの水温とを測定するセンサを備え、
前記制御装置は上記センサの検出結果を入力し、前記車速が所定値未満であり前記エンジン回転数と前記エンジンの吸気圧と前記車両の外気温と前記エンジンの吸気温と前記エンジンの水温とが所定値以上であると判断された場合に前記時間カウントを開始し、前記車連が所定値未満であり前記エンジン回転数と前記エンジンの吸気圧と前記車両の外気温と前記エンジンの吸気温と前記エンジンの水温とが夫々ある所定値以上となる状態が所定時間連続して維持された場合に、前記エアコン用コンプレッサの作動と停止をする所定温度を高温側に変更することを特徴とする請求項1に記載の車両の空調制御装置。
は確保される。
【請求項3】
前記制御装置は前記時間カウント中に前記エアコン用コンプレッサの作動と停止を実施する所定温度を高温側に変更するための条件が満たされないと判断された場合、前記時間カウントを中止し、前記エアコン用コンプレッサの作動と停止を実施する所定温度を高温側に変更せずにフロー処理を終えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両の空調制御装置。
【請求項4】
前記制御装置はそのフロー処理開始時に前記センサの検出結果を入力し、既に前記エアコン用コンプレッサの作動と停止を実施する所定温度を高温側に変更しており、且つ前記時間カウントを行うための条件が満足される場合は前記エアコン用コンプレッサの作動と停止を実施する所定温度を高温側に維持し続けることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両の空調制御装置。
【請求項5】
前記制御装置はそのフロー処理開始時に前記センサの検出結果を入力し、既に前記エアコン用コンプレッサの作動と停止を実施する所定温度を高温側に変更しており、且つ前記時間カウントを行うための条件が満足されない場合は前記エアコン用コンプレッサの作動と停止を実施する所定温度の高温側への変更を解除することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両の空調制御装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−1015(P2012−1015A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135002(P2010−135002)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】