説明

車両の走行用油圧回路

【課題】 車輪のスリップや空転による走行不能を防止する。
【解決手段】 前後輪用の油圧ポンプ5と6に、左右の前輪1L,1Rと後輪2L,2R用の油圧モータ3L,3Rと4L,4Rを、先端側を分岐させた前進時供給側圧油管路13,22と後進時供給側圧油管路14,23を介して並列に接続する。前進時供給側分岐圧油管路13aと13b,22aと22bに、開閉制御弁15aと15b,24aと24bを設け、これと並列接続になるようにフローディバイダー20,27を設ける。更に、開閉制御弁15aと15b,24aと24bの閉位置への切換え操作用のパイロット弁18を備える。一方の前輪1L又は1Rや後輪2L又は2Rに空転が生じた場合は、開閉制御弁15a,15b,24a,24bを閉位置に切換え、作動油12をフローディバイダー20,27に通すことで、左右の油圧モータ3Lと3R,4Lと4Rへ同量の作動油12を供給させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの油圧ポンプで車両の左右の走行輪に個別に接続してある左右一対の油圧モータを駆動する形式を備えた車両の走行用油圧回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不整地で作業や荷の運搬を行う場合に用いられる不整地走行用の車両としては、図5に示す如く、図示しない車体の前部に左右一対で設けた前輪1L,1Rと、車体後部に左右一対で設けた後輪2L,2Rに、それぞれ個別の走行用の油圧モータ3L,3Rと4L,4Rを取り付けて、四輪駆動形式とした車両が用いられることがある。
【0003】
上記のような四輪駆動形式の車両では、2つの油圧ポンプ5,6を用いることがあり、この場合、通常は、一方の油圧ポンプ5を前輪用油圧ポンプ5として、該前輪用油圧ポンプ5に、上記左右の前輪1Lと1Rに取り付けられた左右の前輪用油圧モータ3Lと3Rを並列に接続してなる前輪用の油圧回路7を形成し、又、他方の油圧ポンプ6を後輪用油圧ポンプ6として、該後輪用油圧ポンプ6に、上記左右の後輪2Lと2Rに取り付けられた左右の後輪用油圧モータ4Lと4Rを並列に接続してなる後輪用の油圧回路8を形成した油圧回路構成が採用されている。9は上記2つの油圧ポンプ5及び6を運転するためのエンジンである(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−198363号公報(第2頁左欄、図2(B))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記図5に示した油圧回路構成における前輪用の油圧回路7では、前輪用油圧ポンプ5に、左右の前輪1Lと1Rに取り付けた左右の前輪用油圧モータ3Lと3Rが並列に接続してあるため、上記左右の前輪1Lと1Rのうち、いずれか一方の前輪1L又は1Rが、ぬかるみに嵌ってスリップしたり、地面より浮き上がって空転する状態になると、該一方の前輪1L又は1Rに対応する一方の前輪用油圧モータ3L又は3Rの負荷が極端に少なくなり、この負荷が少ない一方の前輪用油圧モータ3L又は3Rに、前輪用の油圧回路7に設けてある上記前輪用油圧ポンプ5の吐出流量がすべて流れてしまう現象が生じる。
【0006】
そのため、この場合は、他方の前輪1R又は1Lに対応する他方の前輪用油圧モータ3R又は3Lへの作動油(圧油)の供給が行われなくなるため、車両では、上記一方の前輪1L又は1Rが空転するのみで、他方の前輪1R又は1Lによる駆動力を発揮できなくなるというのが実状である。
【0007】
又、後輪用の油圧回路8においても、上記前輪用の油圧回路7の場合と同様に、一方の後輪2L又は2Rがスリップしたり、空転する状態になると、他方の後輪2R又は2Lによる駆動力を発揮できなくなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、車両に左右一対で設けてある走行輪に個別に取り付けた左右の油圧モータを1つの油圧ポンプで駆動するようにしてある油圧回路構成にて、左右いずれか一方の走行輪がスリップや空転することに伴って該一方の走行輪に対応する左右いずれか一方の油圧モータだけ負荷が少なくなる場合にも、上記油圧ポンプより左右いずれか他方の走行輪に対応する油圧モータへ作動油を確実に供給することができるようにして、該左右いずれか他方の走行輪による駆動力を発揮させることができる車両の走行用油圧回路を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、油圧ポンプに、車両の左右一対の走行輪に取り付けた油圧モータを、先端側を2本の前進時供給側分岐圧油管路に分岐させてなる前進時供給側圧油管路と、先端側を2本の後進時供給側分岐圧油管路に分岐させてなる後進時供給側圧油管路を介して並列に接続し、上記前進時供給側分岐圧油管路又は後進時供給側分岐圧油管路のいずれか一方に、個別の開閉制御弁を設けると共に、上記前進時供給側圧油管路又は後進時供給側圧油管路のいずれか一方より分岐させたバイパス管路を、AポートとBポートの流量をCポートの流量の1/2ずつとする機能を備えたフローディバイダーのCポートに接続し、且つ該フローディバイダーのAポートとBポートに一端部を個別に接続したバイパス分岐管路の他端部を、上記前進時供給側分岐圧油管路又は後進時供給側分岐圧油管路における上記開閉制御弁設置個所よりも対応する油圧モータ寄りとなる個所にそれぞれ接続し、更に、上記開閉制御弁の閉位置への切換えを行なうためのパイロットポートに、パイロット弁を接続してなる構成とする。
【0010】
更に、上記構成において、パイロット弁を、単動常時閉形式の弁とし、且つ該パイロット弁のポンプポートに、前進時供給側圧油管路又は後進時供給側圧油管路のいずれか一方に立つ圧を導くことができるようにすると共に、該パイロットの負荷側となるAポートに、開閉制御弁の閉位置への切換え用のパイロットポートを、パイロットラインを介して接続するようにした構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両の走行用油圧回路によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)油圧ポンプに、車両の左右一対の走行輪に取り付けた油圧モータを、先端側を2本の前進時供給側分岐圧油管路に分岐させてなる前進時供給側圧油管路と、先端側を2本の後進時供給側分岐圧油管路に分岐させてなる後進時供給側圧油管路を介して並列に接続し、上記前進時供給側分岐圧油管路又は後進時供給側分岐圧油管路のいずれか一方に、個別の開閉制御弁を設けると共に、上記前進時供給側圧油管路又は後進時供給側圧油管路のいずれか一方より分岐させたバイパス管路を、AポートとBポートの流量をCポートの流量の1/2ずつとする機能を備えたフローディバイダーのCポートに接続し、且つ該フローディバイダーのAポートとBポートに一端部を個別に接続したバイパス分岐管路の他端部を、上記前進時供給側分岐圧油管路又は後進時供給側分岐圧油管路における上記開閉制御弁設置個所よりも対応する油圧モータ寄りとなる個所にそれぞれ接続し、更に、上記開閉制御弁の閉位置への切換えを行なうためのパイロットポートに、パイロット弁を接続してなる構成としてあるので、通常走行時は、各開閉制御弁を開位置とすることにより、油圧ポンプより吐出される作動油を、前進時供給側圧油管路と前進時供給側分岐圧油管路、及び、後進時供給側圧油管路と後進時供給側分岐圧油管路を介して車両の左右一対の走行輪に取り付けた油圧モータへ循環供給することができるため、上記車両の左右一対の走行輪に共に駆動力を発揮させた状態で、該車両の走行を行わせることができる。
(2)この際、上記作動油は、フローディバイダーを通さずに、左右の油圧モータへ供給することができるため、圧力損失を減少させることができると共に、フローディバイダーに作動油を流通させることに伴う該フローディバイダーの発熱を回避することができる。
(3)上記車両の左右一対の走行輪のいずれか一方にスリップや地面からの浮き上がりによる空転が生じる場合は、パイロット弁により各開閉制御弁を閉位置に切換えることで、上記油圧ポンプより吐出される作動油を、フローディバイダー通しながら上記車両の左右一対の走行輪に取り付けた油圧モータへ循環供給することができるため、該各油圧モータへ供給される作動油の流量を同量にすることができる。したがって、上記車両の左右一対の走行輪に確実に駆動力を発揮させた状態で、車両の走行を行わせることができて、一方の走行輪のスリップや空転に起因する走行不能を回避することができる。
(4)パイロット弁を、単動常時閉形式の弁とし、且つ該パイロット弁のポンプポートに、前進時供給側圧油管路又は後進時供給側圧油管路のいずれか一方に立つ圧を導くことができるようにすると共に、該パイロットの負荷側となるAポートに、開閉制御弁の閉位置への切換え用のパイロットポートを、パイロットラインを介して接続するようにした構成とすることにより、前進時供給側圧油管路又は後進時供給側圧油管路に立つ圧を、パイロット弁を介して開閉制御弁の開位置と閉位置の切換え操作に利用することができる。よって、上記パイロット弁を介した開閉制御弁の開位置と閉位置の切換え操作を行うための機構を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の車両の走行用油圧回路の実施の一形態を示す概要図である。
【図2】図1の車両の走行用油圧回路にて、パイロット制御弁を非操作状態で前輪用と後輪用の各油圧ポンプを前進用に運転した状態を示す概要図である。
【図3】図1の車両の走行用油圧回路にて、パイロット制御弁により開閉制御弁を閉位置に切換え操作した状態で前輪用と後輪用の各油圧ポンプを前進用に運転した状態を示す概要図である。
【図4】本発明の実施の他の形態を示す概要図である。
【図5】従来の四輪駆動形式の車両における油圧回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1乃至図3は本発明の車両の走行用油圧回路の実施の一形態として、四輪駆動形式の車両に適用する場合の例を示すもので、以下のような構成としてある。
【0015】
すなわち、車両(図示せず)の左右の前輪1Lと1Rに、左右の前輪用油圧モータ3Lと3Rをそれぞれ個別に取り付け、左右の後輪2Lと2Rに、左右の後輪駆動用モータ4Lと4Rをそれぞれ個別に取り付ける。
【0016】
又、エンジン9により運転する前輪用油圧ポンプ5と後輪用油圧ポンプ6を備えると共に、上記前輪用油圧ポンプ5より吐出させる作動油(圧油)12を上記左右の前輪用油圧モータ3Lと3Rへ供給するための前輪用の油圧回路10と、上記後輪用油圧ポンプ6より吐出させる作動油(圧油)12を上記左右の後輪用油圧モータ4Lと4Rへ供給するための後輪用の油圧回路11を備える。
【0017】
上記前輪用の油圧回路10は、上記前輪用油圧ポンプ5の圧油出入口の一方と他方に、それぞれ圧油管路13,14を接続する。上記各圧油管路13と14のうち、上記前輪用油圧ポンプ5を前進用に運転するときに該前輪用油圧ポンプ5より吐出される作動油12の供給側となる前進時供給側圧油管路13は、その先端側を2本の前進時供給側分岐圧油管路13aと13bに分岐させて、該各前進時供給側分岐圧油管路13aと13bの先端側を、上記左右の各前輪用油圧モータ3Lと3Rにおける2つの圧油出入口のうち、前進駆動の際に圧油供給側となる圧油出入口に接続する。更に、上記前輪用油圧ポンプ5を後進用に運転するときに該前輪用油圧ポンプ5より吐出される作動油12の供給側となる後進時供給側圧油管路14は、その先端側を2本の後進時供給側分岐圧油管路14aと14bに分岐させて、該各後進時供給側分岐圧油管路14aと14bの先端側を、上記左右の各前輪用油圧モータ3Lと3Rにおける2つの圧油出入口のうち、後進駆動の際に圧油供給側となる圧油出入口に接続する。
【0018】
これにより、上記前輪用油圧ポンプ5を前進用に運転すると、該前輪用油圧ポンプ5より吐出される作動油12を、上記前進時供給側圧油管路13と各前進時供給側分岐圧油管路13a,13bとを順に経て、上記左右の前輪用油圧モータ3L及び3Rへ供給して、該各前輪用油圧モータ3L及び3Rを共に前進側へ駆動できるようにしてある。この際、上記各前輪用油圧モータ3Lと3Rより排出される作動油12は、上記各後進時供給側分岐圧油管路14a及び14bと、後進時供給側圧油管路14を順に経て上記前輪用油圧ポンプ5へ戻すことで、該作動油12を循環利用できるようにしてある。
【0019】
一方、上記前輪用油圧ポンプ5を後進用に運転すると、該前輪用油圧ポンプ5より吐出される作動油12を、上記後進時供給側圧油管路14と各後進時供給側分岐圧油管路14a及び14bを経て、上記左右の前輪用油圧モータ3L及び3Rへ供給して、該各前輪用油圧モータ3L及び3Rを共に後進側へ駆動できるようにしてある。この際、上記各前輪用油圧モータ3Lと3Rより排出される作動油12は、上記各前進時供給側分岐圧油管路13a及び13bと、前進時供給側圧油管路13を順に経て上記前輪用油圧ポンプ5へ戻すことで、該作動油12を循環利用できるようにしてある。
【0020】
更に、上記各前進時供給側分岐圧油管路13aと13bの途中位置に、パイロット操作で開閉操作される2ポート2位置方向制御弁である開閉制御弁15aと15bを個別に設ける。
【0021】
上記各開閉制御弁15a,15bは、スプリングリターン形式で且つノーマル位置が閉位置(ノーマルクローズ)としてあり、該各開閉制御弁15a,15bを開位置に切換えるための一方のパイロットポートp1には、上記各前進時供給側分岐圧油管路13aと13bにおける該各開閉制御弁15a,15bの設置個所の両側近傍個所が、それぞれパイロット管路16,17を介して接続してある。これにより、上記前輪用油圧ポンプ5を前進用あるいは後進用に運転することに伴って、該前進時供給側分岐圧油管路13a,13bに作動油12の圧が立つと、その圧が上記パイロット管路16,17を介して上記各開閉制御弁15a,15bの一方のパイロットポートp1へパイロット圧として伝えられるようにしてある。
【0022】
上記各開閉制御弁15a,15bの他方のパイロットポートp2には、後述する3ポート単動常時閉電磁弁であるパイロット弁18が、パイロットライン19を介して接続してある。
【0023】
これにより、上記前輪用油圧ポンプ5の運転時に、上記パイロット弁18が、ソレノイドが消磁した非操作状態で閉位置となるときには、上記各開閉制御弁15a,15bの一方のパイロットポートp1のみに、上記前進時供給側分岐圧油管路13a,13bに立つ作動油12の圧がパイロット管路16,17を介してパイロット圧として作用するようになることで、該各開閉制御弁15a,15bが、ノーマル位置である閉位置から開位置に切換えられるようにしてある。よって、この場合は、上記各前進時供給側分岐圧油管路13a,13bにおける各開閉制御弁15a,15bの設置部分を経る作動油12の流通を行わせることができるようにしてある。
【0024】
一方、上記前輪用油圧ポンプ5の運転時に、上記パイロット弁18のソレノイドが励磁されて該パイロット弁18が開位置に切換え操作されることに伴って、上記各開閉制御弁15a,15bの他方のパイロットポートp2に、上記一方のパイロットポートp1に対して上記各前進時供給側分岐圧油管路13a,13bより伝えられるパイロット圧と同等以上のパイロット圧が作用するようになると、上記スプリングリターン形式としてある各開閉制御弁15a,15bが、ノーマル位置である閉位置に切換えられて、上記各前進時供給側分岐圧油管路13a,13bにおける作動油12の流通が、該各開閉制御弁15a,15bの設置部分で遮断されるようにしてある。
【0025】
更に、前進時供給側圧油管路13の先端寄りの部分と、上記各前進時供給側分岐圧油管路13a,13bにおける上記各開閉制御弁15a,15bの設置個所よりも対応する左右の前輪用油圧モータ3L,3R寄りとなる個所との間に、上記各開閉制御弁15a,15bに対して並列となるように、フローディバイダー(分流・集流弁)20を設ける。
【0026】
具体的には、上記フローディバイダー20を、AポートとBポートの流量を、Cポートの流量の1/2ずつとする機能を備えるものとし、上記前進時供給側圧油管路13の先端寄りの部分として、たとえば、該前進時供給側圧油管路13の先端部における各前進時供給側分岐圧油管路13a,13bとの接続個所に、バイパス管路21の一端部を接続すると共に、該バイパス管路21の他端側を、上記フローディバイダー20のCポートに接続する。
【0027】
上記フローディバイダー20のAポートとBポートには、個別のバイパス分岐管路21aと21bの一端部をそれぞれ接続し、且つ該各バイパス分岐管路21aと21bの他端側を、上記各前進時供給側分岐圧油管路13aと13bにおける上記開閉制御弁15aと15bの設置個所よりも対応する左右の前輪用油圧モータ3Lと3R寄りとなる個所にそれぞれ接続する。
【0028】
これにより、上記したように、前輪用油圧ポンプ5の運転時に上記パイロット弁18が開位置に切換え操作されることに伴って、上記各前進時供給側分岐圧油管路13a,13b上の各開閉制御弁15a,15bがノーマル位置である閉位置に切換えられて、該各前進時供給側分岐圧油管路13a,13bにおける作動油12の流通が、上記各開閉制御弁15a,15bの設置部分で遮断されるようになると、上記作動油12が、上記前進時供給側圧油管路13と、上記各前進時供給側分岐圧油管路13aと13bにおける上記開閉制御弁15aと15bの設置個所よりも対応する左右の前輪用油圧モータ3Lと3R寄りとなる個所との間を、上記バイパス管路21と上記フローディバイダー20と上記各バイパス分岐管路21a,21bを通して流れるようにしてある。よって、上記フローディバイダー20のAポートとBポートに接続した2本のバイパス分岐管路21aと21bを流通する作動油12の流量が均等化されることに伴い、上記左右の各前輪用油圧モータ3L,3Rに循環供給される作動油の流量が、同量に調整されるようにしてある。
【0029】
なお、上記各開閉制御弁15a,15bにて、他方のパイロットポートp2にパイロット圧が作用していない状態で、該各開閉制御弁15a,15bを開位置に切換えるために一方のパイロットポートp1に作用させることが必要とされるパイロット圧は、上記フローディバイダー20に作動油12を流通させるときに該フローディバイダー20の流路抵抗によって高まる圧力よりも小さくなるように設定してあるものとする。これにより、上記前輪用油圧ポンプ5が運転された状態で、上記パイロット弁18が非操作状態とされる通常運転時には、上記前輪用油圧ポンプ5より供給される作動油12のフローディバイダー20への流通が開始される以前に、上記各開閉制御弁15a,15bの開位置への切換えが行われるようにしてある。よって、上記通常運転時には、上記前輪用油圧ポンプ5より供給される作動油12を、上記フローディバイダー20を通ることなく、上記開位置に切換え操作された開閉制御弁15a,15bが設けてある前進時供給側分岐圧油管路13a,13bを通して上記前進時供給側圧油管路13と左右の各前輪用油圧モータ3L,3Rとの間で流通させるようにすることで、上記フローディバイダー20を通ることに伴う圧力損失を防止した状態で、上記左右の各前輪用油圧モータ3L,3Rへの作動油12の循環供給を行うことができるようにしてある。
【0030】
上記後輪用の油圧回路11は、上記後輪用油圧ポンプ6の圧油出入口の一方と他方に、それぞれ圧油管路22,23を接続する。上記各圧油管路22と23のうち、上記後輪用油圧ポンプ6を前進用に運転するときに該後輪用油圧ポンプ6より吐出される作動油12の供給側となる前進時供給側圧油管路22は、その先端側を2本の前進時供給側分岐圧油管路22aと22bに分岐させて、該各前進時供給側分岐圧油管路22aと22bの先端側を、上記左右の各後輪用油圧モータ4Lと4Rにおける2つの圧油出入口のうち、前進駆動の際に圧油供給側となる圧油出入口に接続する。更に、上記後輪用油圧ポンプ6を後進用に運転するときに該後輪用油圧ポンプ6より吐出される作動油12の供給側となる後進時供給側圧油管路23は、その先端側を2本の後進時供給側分岐圧油管路23aと23bに分岐させて、該各後進時供給側分岐圧油管路23aと23bの先端側を、上記左右の各後輪用油圧モータ4Lと4Rにおける2つの圧油出入口のうち、後進駆動の際に圧油供給側となる圧油出入口に接続する。
【0031】
これにより、上記後輪用油圧ポンプ6を前進用に運転するときには、作動油12を、上記前進時供給側圧油管路22と各前進時供給側分岐圧油管路22a,22bとを順に経て、上記左右の後輪用油圧モータ4L及び4Rへ供給して、該各後輪用油圧モータ4L及び4Rを共に前進側へ駆動できるようにしてある。この際、上記各後輪用油圧モータ4Lと4Rより排出される作動油12は、上記各後進時供給側分岐圧油管路23a及び23bと、後進時供給側圧油管路23を順に経て上記後輪用油圧ポンプ6へ戻して循環利用できるようにしてある。
【0032】
一方、上記後輪用油圧ポンプ6を後進用に運転するときには、作動油12を、上記後進時供給側圧油管路23と各後進時供給側分岐圧油管路23a及び23bを経て、上記左右の後輪用油圧モータ4L及び4Rへ供給して、該各後輪用油圧モータ4L及び4Rを共に後進側へ駆動できるようにしてある。この際、上記各後輪用油圧モータ4Lと4Rより排出される作動油12は、上記各前進時供給側分岐圧油管路22a及び22bと、前進時供給側圧油管路22を順に経て上記後輪用油圧ポンプ6へ戻して循環利用できるようにしてある。
【0033】
更に、上記各前進時供給側分岐圧油管路22aと22bの途中位置に、上記前輪用の油圧回路10における各前進時供給側分岐圧油管路13aと13b上の開閉制御弁15aと15bと同様の開閉制御弁24aと24bを個別に設ける。
【0034】
上記各開閉制御弁24a,24bを開位置に切換えるための一方のパイロットポートp1には、上記各前進時供給側分岐圧油管路22aと22bにおける該各開閉制御弁24a,24bの設置個所の両側近傍個所が、それぞれパイロット管路25,26を介して接続してある。これにより、上記後輪用油圧ポンプ6を前進用あるいは後進用に運転することに伴って、該前進時供給側分岐圧油管路22a,22bに作動油12の圧が立つと、その圧が上記パイロット管路25,26を介して上記各開閉制御弁24a,24bの一方のパイロットポートp1へパイロット圧として伝えられるようにしてある。
【0035】
上記各開閉制御弁24a,24bの他方のパイロットポートp2には、上記パイロット弁18が、パイロットライン19を介して接続してある。
【0036】
これにより、上記後輪用油圧ポンプ6の運転時に、上記パイロット弁18が非操作状態の閉位置のときには、上記各開閉制御弁24a,24bの一方のパイロットポートp1のみに、上記前進時供給側分岐圧油管路22a,22bに立つ作動油12の圧がパイロット管路25,26を介してパイロット圧として作用するようになることで、該各開閉制御弁24a,24bが、ノーマル位置である閉位置から開位置に切換えられるようにしてある。よって、この場合は、上記各前進時供給側分岐圧油管路22a,22bにおける各開閉制御弁24a,24bの設置部分を経る作動油12の流通を行わせることができるようにしてある。
【0037】
一方、上記後輪用油圧ポンプ6の運転時に、上記パイロット弁18が開位置に切換え操作されることに伴って、上記各開閉制御弁24a,24bの他方のパイロットポートp2に、上記一方のパイロットポートp1に対して上記各前進時供給側分岐圧油管路22a,22bより伝えられるパイロット圧と同等以上のパイロット圧が作用するようになると、上記スプリングリターン形式としてある各開閉制御弁24a,24bが、ノーマル位置である閉位置に切換えられて、上記各前進時供給側分岐圧油管路22a,22bにおける作動油12の流通が、該各開閉制御弁24a,24bの設置部分で遮断されるようにしてある。
【0038】
更に、前進時供給側圧油管路22の先端寄りの部分としての、該前進時供給側圧油管路22の先端部における各前進時供給側分岐圧油管路22a,22bとの接続個所と、上記各前進時供給側分岐圧油管路22a,22bにおける上記各開閉制御弁24a,24bの設置個所よりも対応する左右の後輪用油圧モータ4L,4R寄りとなる個所との間に、上記前輪用の油圧回路10と同様に、バイパス管路28と、該バイパス管路28をCポートに接続したフローディバイダー27と、該フローディバイダー27のAポートとBポートに個別に接続した2本のバイパス分岐管路28aと28bを接続して、上記フローディバイダー27が、上記各開閉制御弁24a,24bに対して並列になるようにする。
【0039】
これにより、上記したように後輪用油圧ポンプ6の運転時に上記パイロット弁18が開位置に切換え操作されることに伴って、上記各前進時供給側分岐圧油管路22a,22b上の各開閉制御弁24a,24bがノーマル位置である閉位置に切換えられて、該各前進時供給側分岐圧油管路22a,22bにおける作動油12の流通が、上記各開閉制御弁24a,24bの設置部分で遮断されるようになると、上記作動油12が、上記前進時供給側圧油管路22と、上記各前進時供給側分岐圧油管路22aと22bにおける上記開閉制御弁24aと24bの設置個所よりも対応する左右の後輪用油圧モータ4Lと4R寄りとなる個所との間を、上記バイパス管路28と上記フローディバイダー27と上記各バイパス分岐管路28a,28bを通して流れるようにしてある。よって、上記フローディバイダー27のAポートとBポートに接続した2本のバイパス分岐管路28aと28bを流通する作動油12の流量が均等化されることに伴い、上記左右の各後輪用油圧モータ4L,4Rに循環供給される作動油の流量が、同量に調整されるようにしてある。
【0040】
なお、上記各開閉制御弁24a,24bにて、他方のパイロットポートp2にパイロット圧が作用していない状態で、該各開閉制御弁24a,24bを開位置に切換えるために一方のパイロットポートp1に作用させることが必要とされるパイロット圧は、上記フローディバイダー27に作動油12を流通させるときに該フローディバイダー27の流路抵抗によって高まる圧力よりも小さくなるように設定してあるものとする。これにより、上記後輪用油圧ポンプ6が運転された状態で、上記パイロット弁18が非操作状態とされる通常運転時には、上記後輪用油圧ポンプ6より供給される作動油12のフローディバイダー27への流通が開始される以前に、上記各開閉制御弁24a,24bの開位置への切換えが行われるようにしてある。よって、上記通常運転時には、上記後輪用油圧ポンプ6より供給される作動油12を、上記フローディバイダー27を通ることなく、上記開位置に切換え操作された開閉制御弁24a,24bが設けてある前進時供給側分岐圧油管路22a,22bを通して上記前進時供給側圧油管路22と左右の各後輪用油圧モータ4L,4Rとの間で流通させるようにすることで、上記フローディバイダー27を通ることに伴う圧力損失を防止した状態で、上記左右の各後輪用油圧モータ4L,4Rへの作動油12の循環供給を行うことができるようにしてある。
【0041】
更に、上記前輪用の油圧回路10の前進時供給側圧油管路13における上記バイパス管路21の接続個所よりも上流側位置より分岐させた分岐管29の先端側を、シャトル弁30のAポートに接続する。又、上記後輪用の油圧回路11の前進時供給側圧油管路22における上記バイパス管路28の接続個所よりも上流側位置より分岐させた分岐管31の先端側を、上記シャトル弁30のBポートに接続する。
【0042】
上記シャトル弁30のPポートには、上記3ポート単動常時閉電磁弁としてあるパイロット弁18のPポート(ポンプポート)を管路32を介して接続する。
【0043】
上記パイロット弁18の負荷側のAポートには、上記前輪用の油圧回路10及び後輪用の油圧回路11の各開閉制御弁15a,15b,24a,24bの他方のパイロットポートp2が、分岐させたパイロットライン19を介して接続してある。上記パイロット弁18のYポートには、ドレンライン33を介して作動油12を回収するためのタンク34を接続する。
【0044】
これにより、上記パイロット弁18のPポートに対して、上記前輪用油圧ポンプ5の運転により上記前輪用の油圧回路10に立つ作動油12の圧と、上記後輪用油圧ポンプ6の運転により上記後輪用の油圧回路11に立つ作動油12の圧のうち、いずれか高いほうの圧力が上記シャトル弁30を介して伝えられるようにしてある。よって、上記パイロット弁18を開位置に切換えると、該パイロット弁18のPポートに作用している上記前輪用の油圧回路10に立つ作動油12の圧、又は、上記後輪用の油圧回路11に立つ作動油12の圧のうちのいずれか高いほうの圧力が、パイロットライン19を介して上記前輪用の油圧回路10及び後輪用の油圧回路11の各開閉制御弁15a,15b,24a,24bの他方のパイロットポートp2に作用するようにしてある。したがって、上記パイロット弁18の開位置への切換え操作に伴って、上記前輪用の油圧回路10及び後輪用の油圧回路11の各開閉制御弁15a,15b,24a,24bをすべて閉位置に切換えることができるようになることから、上記前輪用の油圧回路10及び後輪用の油圧回路11において、フローディバイダー20,27を経る作動油12の流通を開始させることができるようにしてある。
【0045】
以上の構成としてある本発明の車両の走行用油圧回路を装備した車両を、通常走行させる場合は、上記パイロット弁18を非操作状態、すなわち、閉位置に保持する。
【0046】
この状態で、上記前輪用の油圧回路10における前輪用油圧ポンプ5と、上記後輪用の油圧回路11における後輪用油圧ポンプ6を共に前進用に運転すると、図2に示すように、上記前輪用の油圧回路10では、上記前輪用油圧ポンプ5より前進時供給側圧油管路13を経て供給される作動油12の圧が、各前進時供給側分岐圧油管路13a,13bで立つことに伴って、該各前進時供給側分岐圧油管路13a,13b上に設けてある各開閉制御弁15a,15bが共に開位置に切換えられる。よって、上記前輪用油圧ポンプ5より吐出される作動油12が、上記前進時供給側圧油管路13と、上記各前進時供給側分岐圧油管路13a,13bとを経て左右の各前輪用油圧モータ3L,3Rへ、圧力損失が少ない状態で供給されるようになることから、該左右の各前輪用油圧モータ3L,3Rにより対応する左右の前輪1L,1Rが前進側に駆動される。
【0047】
この際、上記後輪用の油圧回路11では、上記後輪用油圧ポンプ6より前進時供給側圧油管路22を経て供給される作動油12の圧が、各前進時供給側圧油管路22a,22bで立つことに伴って、該各前進時供給側圧油管路22a,22b上に設けてある各開閉制御弁24a,24bが共に開位置に切換えられる。よって、上記後輪用油圧ポンプ6より吐出される作動油12が、上記前進時供給側圧油管路22と、上記各前進時供給側圧油管路22a,22bとを経て左右の各後輪用油圧モータ4L,4Rへ、圧力損失が少ない状態で供給されるようになることから、該左右の各後輪用油圧モータ4L,4Rにより対応する左右の後輪2L,2Rが前進側に駆動される。
【0048】
以上により、左右の前輪1L,1R及び左右の後輪2L,2Rをすべて前進側に駆動した四輪駆動状態での車両(図示せず)の前進走行が行われるようになる。
【0049】
一方、上記前輪用の油圧回路10における前輪用油圧ポンプ5と、上記後輪用の油圧回路11における後輪用油圧ポンプ6を共に後進進用に運転すると、作動油12の流通方向が図2に示した状態とは逆方向になることで、左右の前輪1L,1R及び左右の後輪2L,2Rをすべて後進側へ駆動した四輪駆動状態での車両(図示せず)の後進走行が行われるようになる。
【0050】
上記車両の前進走行又は後進走行中に、左右いずれか一方の前輪1L又は1Rや、左右いずれか一方の後輪2L又は2Rが、ぬかるみに嵌ってスリップしたり、地面より浮き上がって空転する状態になった場合は、図3に示すように、上記パイロット弁18を、ソレノイドを励磁させるよう操作して、該パイロット弁18を開位置に切換え操作する。
【0051】
これにより、上記前輪用の油圧回路10では、各前進時供給側分岐圧油管路13a,13b上に設けてある各開閉制御弁15a,15bが共に閉位置に切換えられるため、前輪用油圧ポンプ5より供給される作動油12が、フローディバイダー20を経て流通するようになることで、上記左右の各前輪用油圧モータ3Lと3Rへ供給される作動油12の流量が同一に調整されるようになる。よって、上記左右の各前輪用油圧モータ3Lと3Rの双方への作動油12の供給が確実に行なわれて、該各前輪用油圧モータ3Lと3Rに対応する左右の前輪1Lと1Rによる駆動力が発揮されるようになる。
【0052】
同様に、上記後輪用の油圧回路11においても、各前進時供給側分岐圧油管路22a,22b上に設けてある各開閉制御弁24a,24bが共に閉位置に切換えられるため、後輪用油圧ポンプ6より供給される作動油12が、フローディバイダー27を経て流通するようになることで、上記左右の各後輪用油圧モータ4Lと4Rへ供給される作動油12の流量が同一に調整されるようになる。よって、上記左右の各後輪用油圧モータ4Lと4Rの双方への作動油12の供給が確実に行なわれて、該各後輪用油圧モータ4Lと4Rに対応する左右の後輪2Lと2Rによる駆動力が発揮されるようになる。
【0053】
よって、上記左右の前輪1Lと1R、及び、左右の後輪2Lと2Rのすべてにより駆動力を発揮させた状態で、前進走行や後進走行を継続して行わせることができるようになる。
【0054】
なお、上記前輪1L,1Rや、後輪2L,2Rのスリップや地面からの浮き上がりが解消された後は、上記パイロット弁18を、ソレノイドを消磁させて該パイロット弁18を閉位置に切換え操作することで、通常走行状態に復帰させるようにすればよい。
【0055】
このように、本発明の車両の走行用油圧回路によれば、左右いずれか一方の前輪1L又は1Rや、左右いずれか一方の後輪2L又は2Rにスリップや空転が生じても、パイロット弁18を開位置へ切換え操作するという簡単な操作のみで、前輪用油圧ポンプ5より左右の前輪用油圧モータ3L,3Rへフローディバイダー20を経た同量の作動油12を供給させることができると共に、後輪用油圧ポンプ6より左右の後輪用油圧モータ4L,4Rへフローディバイダー27を経た同量の作動油12を供給させることできるため、左右の前輪1Lと1R、及び、左右の後輪2Lと2Rのすべてにより駆動力を発揮させた状態で、前進走行や後進走行を行わせることができる。よって、前輪1L,1Rや後輪2L,2Rのスリップや空転に起因する走行不能を回避することができる。
【0056】
一方、通常走行時には、パイロット弁18を閉位置に保持することで、前輪用油圧ポンプ5より吐出される作動油12を、フローディバイダー20を通さずに左右の前輪用油圧モータ3L,3Rへ供給することができると共に、後輪用油圧ポンプ6より吐出される作動油12を、フローディバイダー27を通さずに左右の後輪用油圧モータ4L,4Rへ供給することができるため、圧力損失を減少させることができると共に、各フローディバイダー20,27に作動油12を流通させることに伴う該各フローディバイダー20,27の発熱も回避することができる。
【0057】
次に、図4は本発明の実施の更に他の形態として、車両の左右位置に設けてある走行輪のうち、左右一輪ずつの走行輪として、たとえば、左右の前輪のみを駆動するようにした前輪駆動形式の車両に適用する場合の例を示すもので、以下のような構成としてある。
【0058】
すなわち、本実施の形態の車両の走行用油圧回路は、図1に示したものにおける前輪用の油圧回路10と同様の構成としてあり、図1に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0059】
なお、本実施の形態では、図1に示したような後輪用の油圧回路11は備えていないことに鑑みて、パイロット弁18のPポート(ポンプポート)には、前進時供給側圧油管路13より分岐させた分岐管29を直接接続した構成としてある。
【0060】
以上の構成としてある本実施の形態の車両の走行用油圧回路によっても、通常運転時は、上記パイロット弁18を非操作状態とし、この状態で、前輪用油圧ポンプ5を前進用に運転すると、該前輪用油圧ポンプ5より前進時供給側圧油管路13を経て供給される作動油12の圧が、各前進時供給側分岐圧油管路13a,13bで立つことに伴って、該各前進時供給側分岐圧油管路13a,13b上の各開閉制御弁15a,15bが共に開位置に切換えられる。このため、上記前輪用油圧ポンプ5より吐出される作動油12を、上記前進時供給側圧油管路13と、上記各前進時供給側分岐圧油管路13a,13bとを経て左右の各前輪用油圧モータ3L,3Rへ、圧力損失が少ない状態で供給させることができて、該左右の各前輪用油圧モータ3L,3Rにより対応する左右の前輪1L,1Rを駆動することができる。
【0061】
この際、上記前輪用油圧ポンプ5より吐出される作動油12を、フローディバイダー20を通さずに左右の前輪用油圧モータ3L,3Rへ供給することができるため、圧力損失を減少させることができると共に、上記フローディバイダー20に作動油12を流通させることに伴う該フローディバイダー20の発熱も回避することができる。
【0062】
一方、左右いずれか一方の前輪1L又は1Rにスリップや空転が生じた場合は、上記パイロット弁18を開位置へ切換え操作するという簡単な操作のみで、上記各前進時供給側分岐圧油管路13a,13b上の各開閉制御弁15a,15bを共に閉位置に切換えて、前輪用油圧ポンプ5より、左右の前輪用油圧モータ3L,3Rへフローディバイダー20を経た同量の作動油12を供給させることができる。よって、左右の前輪1Lと1Rにより駆動力を発揮させた状態で、走行を行わせることができることから、上記前輪1L,1Rのスリップや空転に起因する走行不能を回避することができる。
【0063】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、図1乃至図3の実施の形態、図4の実施の形態では、いずれも開閉制御弁15a,15b,24a,24bを、前進時供給側分岐圧油管路13a,13b,22a,22bに設け、フローディバイダー20,27を、前進時供給側圧油管路13と前進時供給側分岐圧油管路13a,13b,22a,22bとの間に、上記開閉制御弁15a,15b,24a,24bと並列に設けてなる構成について示したが、開閉制御弁15a,15b,24a,24bを、後進時供給側分岐圧油管路14a,14b,23a,23bに設け、且つフローディバイダー20,27を、後進時供給側圧油管路14,23と後進時供給側分岐圧油管路14a,14b,23a,23bとの間に、上記開閉制御弁15a,15b,24a,24bと並列に設けるようにしてもよい。
【0064】
開閉制御弁15a,15b,24a,24bは、パイロット弁18の非操作状態での車両の通常走行時は、開位置に切換えられ、上記パイロット弁18が操作されることに伴って、閉位置に切換え操作されるようにしてあれば、いかなる形式の弁を採用してもよい。
【0065】
パイロット弁18は、上記車両の通常走行時は開位置となるようにしてある開閉制御弁15a,15b,24a,24bを、必要に応じて閉位置に切換えることができるようにしてあれば、手動切換え方式等、電磁弁以外の形式のパイロット弁18を採用してもよい。
【0066】
図4の実施の形態は、車両の左右の前輪1L,1Rに代えて、左右の後輪2L,2Rを駆動する油圧回路に適用してもよい。
【0067】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1L 左前輪(走行輪)
1R 右前輪(走行輪)
2L 左後輪(走行輪)
2R 右後輪(走行輪)
3L 左前輪用油圧モータ(油圧モータ)
3R 右前輪用油圧モータ(油圧モータ)
4L 左後輪用油圧モータ(油圧モータ)
4R 右後輪用油圧モータ(油圧モータ)
5 前輪用油圧ポンプ(油圧ポンプ)
6 後輪用油圧ポンプ(油圧ポンプ)
13 前進時供給側圧油管路
13a,13b 前進時供給側分岐圧油管路
14 後進時供給側圧油管路
14a,14b 後進時供給側分岐圧油管路
15a,15b 開閉制御弁
18 パイロット弁
19 パイロットライン
20 フローディバイダー
21 バイパス管路
21a,21b バイパス分岐管路
22 前進時供給側圧油管路
22a,22b 前進時供給側分岐圧油管路
23 後進時供給側圧油管路
23a,23b 後進時供給側分岐圧油管路
24a,24b 開閉制御弁
27 フローディバイダー
28 バイパス管路
28a,28b バイパス分岐管路
p2 パイロットポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプに、車両の左右一対の走行輪に取り付けた油圧モータを、先端側を2本の前進時供給側分岐圧油管路に分岐させてなる前進時供給側圧油管路と、先端側を2本の後進時供給側分岐圧油管路に分岐させてなる後進時供給側圧油管路を介して並列に接続し、上記前進時供給側分岐圧油管路又は後進時供給側分岐圧油管路のいずれか一方に、個別の開閉制御弁を設けると共に、上記前進時供給側圧油管路又は後進時供給側圧油管路のいずれか一方より分岐させたバイパス管路を、AポートとBポートの流量をCポートの流量の1/2ずつとする機能を備えたフローディバイダーのCポートに接続し、且つ該フローディバイダーのAポートとBポートに一端部を個別に接続したバイパス分岐管路の他端部を、上記前進時供給側分岐圧油管路又は後進時供給側分岐圧油管路における上記開閉制御弁設置個所よりも対応する油圧モータ寄りとなる個所にそれぞれ接続し、更に、上記開閉制御弁の閉位置への切換えを行なうためのパイロットポートに、パイロット弁を接続してなる構成を有することを特徴とする車両の走行用油圧回路。
【請求項2】
パイロット弁を、単動常時閉形式の弁とし、且つ該パイロット弁のポンプポートに、前進時供給側分岐圧油管路又は後進時供給側分岐圧油管路のいずれか一方に立つ圧を導くことができるようにすると共に、該パイロットの負荷側となるAポートに、開閉制御弁の閉位置への切換え用のパイロットポートを、パイロットラインを介して接続するようにした請求項1記載の車両の走行用油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−1025(P2012−1025A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135496(P2010−135496)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000198293)IHI建機株式会社 (96)
【Fターム(参考)】