説明

車両用インストルメントパネル

【課題】 ティアラインの破断が円滑に進行し、しかもティアライン以外の箇所においてインパネ本体が破断するのを防止する。
【解決手段】ティアライン12を、左右方向へ互いに平行に延びる二本の直線部13,14と、直線部13,14の一端部間と他端部間とにそれぞれ設けられた連結部15,16とによって構成する。連結部15は、半円状に形成し、その一端部と他端部とを直線部13,14の各一端部にそれぞれ接するように滑らかに連続させる。連結部15は、その中央部がその両端部より直線部13,14から遠ざかるように配置する。連結部16は、連結部15と左右対称に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用インストルメントパネル(以下、インパネと略称する。)、特に合成樹脂からなる一枚の硬質な板材によって構成されたハードインパネに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インパネの背面の助手席側の端部には、ティアラインが形成されている。このティアラインは、それによって囲まれる部分をエアバッグドアとしてインパネの他の部分と区分するものであり、エアバッグが膨張するとインパネがティアラインにおいて破断される。その結果、エアバッグドアがインパネの他の部分から分離されて開く。この開いた部分から膨張したエアバッグが助手席側に膨出する。
【0003】
図5は、従来のインパネ1に形成されたティアライン2を示す図であり、ティアライン2は、左右方向へ互いに平行に延びる二つの直線部3,4と、この直線部3,4の隣接する端部間にそれらと直交するようにして形成された連結部5,6とにより、左右に長い長方形状に形成されている。
【0004】
ティアライン2は、例えばティアライン2の各部の深さを調節することにより、エアバッグ(図示せず)の膨張時には直線部3の中央部から破断するように予め設定されている。破断箇所は、直線部3の中央部から左右に進み、連結部5,6を通って直線部4の中央部まで達する。これにより、エアバッグドア7がインパネ1の他の部分から切り離され、インパネ1のうちのエアバッグドア7の部分が開口する。そして、その開口部からエアバッグ(図示せず)が膨出する。
【0005】
【特許文献1】特開2000−108724
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ティアライン2の破断箇所が直線部3から連結部5,6に進むとき、及び連結部5,6から直線部4に進むときには、進行方向が直角に急変する。このため、破断が円滑に進まなくなり、ティアライン2全体の破断に遅れが生じてしまう。この結果、エアバッグの助手席側への膨出時期に僅かの遅れが生じるおそれがあった。また、直線部3,4と連結部5,6との交差部において破断方向が急変するとともに、当該交差部に応力が集中するため、各交差部から破断線イ〜ニ等が発生し、インパネ1の交差部近傍部分が破断するおそれがある。ここで、ハードインパネたるインパネ1においては、エアバッグドア7には破断片が飛散するのを防止するための対策が施されているが、それ以外の部分には飛散防止対策が施されていない。このため、交差部近傍部分から破断した破断片が飛散するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決するために、第1の発明は、合成樹脂製の硬質の板材からなり、背面にティアラインが形成された本体を備え、上記ティアラインが、ほぼ平行な二本の直線部と、この二本の直線部の互いに隣接する端部どうしを連結する連結部とによって環状に形成された車両用インストルメントパネルにおいて、上記連結部を、その両端部が上記二本の直線部の互いに隣接する端部にそれぞれ接するように滑らかに連続し、かつ中央部が両端部に対して上記直線部から離間するように突出する凸曲線によって構成したことを特徴としている。
また、第2の発明は、合成樹脂製の硬質の板材からなり、背面にティアラインが形成された本体を備え、上記ティアラインが、ほぼ平行な二本の外側直線部と、この二本の外側直線部の間のほぼ中央部にそれらとほぼ平行に配置された中央直線部と、上記外側直線部と上記中央直線部との互いに隣接する端部どうしを連結する連結部とを有する車両用インストルメントパネルにおいて、上記連結部を、その両端部が上記外側直線部と上記中央直線部との隣接する端部にそれぞれ接するように滑らかに連続し、かつ中央部が両端部に対して上記外側直線部及び中央直線部から離間するように突出する凸曲線によって構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上記特徴構成を有する第1の発明によれば、直線部と連結部とが滑らかに連続しているから、ティアラインの破断箇所が直線部から連結部へ進む場合と、連結部から直線部へ進む場合とのいずれの場合においても、破断が円滑に進む。したがって、ティアライン全体の破断に遅れが生じるのを防止することができる。しかも、直線部と連結部とが滑らかに連続しているから、それらの連続部に応力が集中することがない。したがって、インパネがティアライン以外の箇所において破断するのを防止することができる。
第2の発明によっても第1の発明と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、この発明に係るインパネの第1実施の形態を示す。このインパネ10は、インパネ本体11を備えている。インパネ本体11は、硬質の合成樹脂製の板材からなるものであり、射出成形法、その他の成形法によって成形されている。
【0010】
図1及び図2に示すように、インパネ本体11の背面11aの助手席側の端部には、ティアライン12が形成されている。ティアライン12は、断面三角形状をなしているが、断面長方形状、断面U字状等に形成してもよい。また、ティアライン12は、インパネ本体11を成形する金型(図示せず)の内面にティアライン12に対応する突条を予め形成しておくことにより、インパネ本体11の成形と同時に形成することも可能であり、インパネ本体11の成形後にレーザービームやエンドミル等によって加工することも可能である。
【0011】
図1及び図3に示すように、ティアライン12は、直線部13,14と、直線部13,14の一端部間と他端部間とにそれぞれ設けられた連結部15,16とによって環状に形成されている。直線部13,14は、左右方向へ向かって互いに平行に延びており、左右方向において同一位置に配置されている。連結部15は、半円状をなしており、その一端部(図3において下端部)が直線部13の一端部(図1において左側の端部)に接し、他端部が直線部14の一端部に接している。しかも、連結部15は、その中央部が両端部に対し直線部13,14から離間するように配置されている。連結部16は、連結部15と対称に左右形成されており、その一端部が直線部13の他端部に接し、他端部が直線部14の他端部に接している。
【0012】
上記構成のティアライン12を有するインパネ10において、図3に示すように、ティアライン12の破断が一方の直線部13の中央部から始まったものとする。ティアライン12の破断は、直線部13の中央部から左右方向へ進み、連結部15,16を通って直線部14の中央まで進んで破断が終了する。すると、ティアライン12によって囲まれたエアバッグドア17がインパネ本体11から分離し、それによってインパネ本体11にエアバッグドア17に対応する貫通孔が形成される。この貫通孔からエアバッグ(図示せず)が助手席側へ向かって膨出する。
【0013】
ティアライン12における破断が直線部13から連結部15,16に進むとき、直線部13と連結部15,16とが互いに接して滑らかに連続しているから、直線部13から連結部15,16への破断の進行が円滑に行われる。同様に、連結部15,16から直線部15への破断の進行も円滑に行われる。したがって、ティアライン12全体の破断が短時間で行われる。よって、破断遅れが発生することを防止することができる。また、直線部13,14と連結部15,16との間において破断の進行方向が急変することがなく、それらの間に応力が集中するような交差部も存在しない。したがって、インパネ本体11がティアライン12以外の部分で破断することがない。
【0014】
図4は、この発明の第2実施の形態を示す。この実施の形態のインパネ10′においては、ティアライン22が2本の外側直線部23,24と、一本の中央直線部25とを有している。外側直線部23,24は、左右方向へ互いに平行に延びている。中央直線部25は、外側直線部23,25間の中央にそれらと平行に配置されている。3本の直線部23,24,25は、左右方向において同一位置に配置されている。
【0015】
外側直線部23と中央直線部25との一端部間、外側直線部23と中央直線部25との他端部間、外側直線部24と中央直線部25との一端部間、及び外側直線部24と中央直線部25との他端部間には、連結部26,27,28,29がそれぞれ設けられている。連結部26,27は、上記実施の形態の連結部15と同様に構成され、連結部28,29は、上記実施の形態の連結部16と同様に構成されている。
【0016】
上記構成のティアライン22を有するインパネ10′において、ティアライン22の破断が中央直線部25の中央部において始まったものとする。ティアライン22における破断は、中央直線部25の中央部から左右方向に進み、連結部27,28を経て外側直線部23の中央部まで進むとともに、連結部29,30を経て外側直線部24の中央部まで進む。この結果、二つのエアバッグドア17,17が形成される。
【0017】
ティアライン22における破断の進行に際しては、各直線部23,24,25と各連結部26,27,28,29とが互いに接して滑らかに連続しているから、上記の実施の形態と同様にティアライン22全体の破断に遅れが生じることもなければ、ティアライン22以外の箇所においてインパネ本体11が破断することもない。
【0018】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲いおいて適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、連結部15,16及び連結部26〜29を半円状に形成しているが、長円状に形成してもよい。この場合、長円の長軸を直線部13,14;23,24,25と直交する方向に向けてもよく、平行な方向に向けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の第1実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図3】図2のX矢視図である。
【図4】この発明の第2実施の形態の要部を示す図3と同様の図である。
【図5】従来のインパネのティアラインを示す図3と同様の図である。
【符号の説明】
【0020】
10 インストルメントパネル
10′ インストルメントパネル
11 インパネ本体
11a 背面
12 ティアライン
13 直線部
14 直線部
15 連結部
16 連結部
22 ティアライン
23 外側直線部
24 外側直線部
25 中央直線部
26 連結部
27 連結部
28 連結部
29 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の硬質の板材からなり、背面にティアラインが形成された本体を備え、上記ティアラインが、ほぼ平行な二本の直線部と、この二本の直線部の互いに隣接する端部どうしを連結する連結部とによって環状に形成された車両用インストルメントパネルにおいて、
上記連結部を、その両端部が上記二本の直線部の互いに隣接する端部にそれぞれ接するように滑らかに連続し、かつ中央部が両端部に対して上記直線部から離間するように突出する凸曲線によって構成したことを特徴とする車両用インストルメントパネル。
【請求項2】
合成樹脂製の硬質の板材からなり、背面にティアラインが形成された本体を備え、上記ティアラインが、ほぼ平行な二本の外側直線部と、この二本の外側直線部の間のほぼ中央部にそれらとほぼ平行に配置された中央直線部と、上記外側直線部と上記中央直線部との互いに隣接する端部どうしを連結する連結部とを有する車両用インストルメントパネルにおいて、
上記連結部を、その両端部が上記外側直線部と上記中央直線部との隣接する端部にそれぞれ接するように滑らかに連続し、かつ中央部が両端部に対して上記外側直線部及び中央直線部から離間するように突出する凸曲線によって構成したことを特徴とする車両用インストルメントパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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