説明

車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造

【課題】衝撃力の入力方向のいかんに関わらず、遮蔽部材の衝撃吸収機能を高めることができる車両用カウルルーバの衝撃吸収構造を提供する。
【解決手段】遮蔽部材13は、車両上方からの荷重入力時に下方へ変形可能に縦壁部12aに取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントガラスの下縁部を覆うカウル本体と、該カウル本体から前方上向きに延びる溝形状の樋部と、該樋部の車幅方向端部を遮蔽するように設けられた別体の遮蔽部材とを備えた車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のフロントガラスとフードとの間に配設されたカウルルーバは、雨水等を車外に排出する溝形状の樋部と、走行風を室内に導入するための空気導入口とを有している。この種のカウルルーバでは、エンジン室内の熱が空気導入口に入り込まないようにするために、カウルルーバとフードとの間をフードシール部材で閉塞するとともに、前記樋部の左,右側端部を遮蔽板で遮蔽するようにしている。
【0003】
ところで、前記カウルルーバの遮蔽板部分は剛性が高くなっていることから、車両上方から被衝突物が落下したときに、遮蔽板が衝撃力吸収の妨げとなり、被衝突物への影響が懸念される。
【0004】
そこで遮蔽板の衝撃力吸収機能を高めるために、例えば、特許文献1には、遮蔽板をカウルルーバと別体に形成し、前記被衝突物の落下により衝撃力が加わったときに、遮蔽板をカウルルーバから下方に脱落させるようにした構造が提案されている。
【特許文献1】特開2007−137363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来の衝撃力吸収構造では、真上からの衝撃力に対しては遮蔽板の脱落はスムーズに行えるものの、例えば斜め上方あるいは斜め側方からの衝撃力に対しては、遮蔽板がカウルルーバの後壁と前壁との間で突っ張り、スムーズに脱落しないおそれがある。
【0006】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、衝撃力の入力方向のいかんに関わらず、遮蔽部材の衝撃力吸収機能を高めることができる車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、フロントガラスの下縁部を覆うように車幅方向に延びるカウル本体と、該カウル本体の前縁から下方に延びる縦壁部及び該縦壁部の下縁から前方上向きに延びる前壁部を有する溝形状の樋部と、該樋部の車幅方向端部を遮蔽するように配設された別体の遮蔽部材とを備えた車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造であって、前記遮蔽部材は、車両上方からの荷重入力時に下方へ変形可能に前記縦壁部に取り付けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造において、前記遮蔽部材は、前後方向に延びる平板部と、該平板部の車幅方向両縁から車幅方向外側に拡開しつつ下方に延びる脚部とを有し、該各脚部と前記平板部とのコーナー部には、前記荷重入力時の変形を誘発する脆弱部が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係る衝撃力吸収構造によれば、遮蔽部材を、カウル本体の前縁から下方に延びる縦壁部に取り付けたので、車両上方から加わる荷重の入力方向のいかんに関わらず、遮蔽部材は、縦壁部の取り付け部を中心に下方に変位しつつ、該遮蔽部材自体が変形して衝撃力を吸収することとなる。これにより、遮蔽部材の衝撃力吸収性能を高めることができ、ひいては被衝突物への影響を抑制できる。
【0010】
請求項2の発明では、遮蔽部材を、平板部と該平板部の車幅方向両縁から下方に拡開しつつ延びる脚部とを有するものとし、前記平板部と各脚部とのコーナー部に脆弱部を形成したので、左,右の脚部が脆弱部を起点に車幅方向外側に拡開しつつ変形することとなり、前記遮蔽部材の取り付け部を中心とした下方への変位を確実に誘発することができ、衝撃力吸収性能をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1ないし図6は、本発明の一実施形態による車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造を説明するための図であり、図1はカウルルーバが配設された自動車の前部車体の概略斜視図、図2はカウルルーバの側面図、図3はカウルルーバの断面側面図(図1のIII-III線断面図)、図4はカウルルーバに配設された遮蔽部材の断面正面図(図1のIV-IV線断面)、図5は遮蔽部材の断面側面図(図1のV-V-線断面図)、図6は遮蔽部材の斜視図である。
【0013】
図において、1は自動車の前部車体を示しており、該前部車体1は、車両上下方向に延びる左,右のフロントピラー2,2と、該左,右のフロントピラー2に車両前方に延びるよう接続されたエプロンメンバ3,3と、該左,右のエプロンメンバ3の内側に接続されたサスペンショウタワー4,4とを備えている。
【0014】
前記左,右のエプロンメンバ3の間には、車幅方向に延びるカウルパネル5が配設されており、該カウルパネル5とこれに接続されたダッシュパネル(不図示)とで前部車体1はエンジン室Aと車室Bとに画成されている。
【0015】
前記カウルパネル5の前側には、前記エンジン室Aの上端開口を開閉するフード6が配設されている。該フード6は、これの左,右後端部が前記カウルパネル5に取り付けられたフードヒンジ(不図示)により上下回動自在に支持されている。また前記フード6の後部6aには、外装部品としてのフードガーニッシュ7が取り付けられている。
【0016】
前記カウルパネル5は、カウルアッパ5aとカウルロア5bとの後縁部(不図示)同士を結合した構造を有する。該カウルアッパ5aは、前記後縁部から前斜め上方に延び、前記左,右のフロントピラー2の間に配設されたフロントガラス9の下縁部9aを支持している。前記カウルロア5bは、前記後縁部から下方に円弧状をなすよう前記カウルアッパ5aより車両前方に延びている。
【0017】
前記カウルパネル5には、前記フロントガラス9とフード6との間を覆うように配設された樹脂製のカウルルーバ10が配設されている。該カウルルーバ10は、前記カウルロア5b内に収容配置され、クリップ部材8により該カウルロア5bに取り付けられている(図4参照)。
【0018】
前記カウルルーバ10は、前記フロントガラス9の下縁部9aを覆うように車幅方向に延びるカウル本体11と、該カウル本体11の前縁から下方に延びる縦壁部12a及び該縦壁部12aの下縁から前方上向きに延びる前壁部12bを有する溝形状の樋部12とを一体に形成した構造を有する。
【0019】
この樋部12は、前記カウルルーバ10内に進入した雨水,洗浄水を車幅方向外部に排出するためのものである。
【0020】
また前記カウルルーバ10は、前記樋部12の車幅方向左,右両端部を遮蔽する遮蔽部材13,13を備えている。該左,右の遮蔽部材13は、樹脂製のもので、前記カウルルーバ10とは別体に形成されている。
【0021】
前記カウル本体11は、前記フロントガラス9の下縁部9aから前方に概ね下方に湾曲して延びている。該カウル本体11には、走行風を車室B内に導入する空気導入口11a,11aと、ピボット孔11b,11bとが形成されている。該各ピボット孔11bには、前記フロントガラス9に付着した雨水を払拭するワイパユニット15のピボット軸15aが挿入されており、該ピボット軸15aはカウルロア5bに支持されている。
【0022】
前記樋部12の縦壁部12aには、複数の空気導入口12dが車幅方向に間隔をあけて形成されている。この空気導入口12d及び11aから導入した空気は、ヒータユニット又はエアコンディショナ(不図示)により所定温度に調整されて車室B内に供給される。
【0023】
前記前壁部12bには、略平坦なフランジ部12cが前方に突出形成されている。このフランジ部12cは、前記左,右の遮蔽部材13の上面と同じ高さに位置し、かつカウルルーバ10の車幅方向全長に渡る長さを有する。
【0024】
前記フード6は、これの後部6aが前記樋部12の上方を覆うように配置されている。また前記フードガーニッシュ7の後縁はカウル本体11の前縁に近接する位置に配置されている。
【0025】
前記フランジ部12c及び左,右の遮蔽部材13の上面には、前記フード6の全閉時に該フード6に弾性変形して圧接する前フードシール部材16及び左,右フードシール部材17,17が装着されている。これによりエンジン室A内の熱がカウルルーバ10から空気導入口11a,12d内に進入するのを防止している。
【0026】
前記樋部12の前壁部12bの左,右端部には、前後方向に延びるトンネル部12d,12dが上方に膨出形成されている。該左,右のトンネル部12dと前記カウルロア5bとで囲まれた通路が形成され、該通路内には、デアイサ18が挿通されている。該デアイサ18は、前記フロントガラス9に配索された電熱線(不図示)に電力を供給するものであり、これによりフロントガラス9の曇り除去する。
【0027】
前記左,右の遮蔽部材13は、車両上方からの荷重入力時に下方へ変形可能に前記樋部12の縦壁部12aに取り付けられており、詳細には以下の構造を有する。
【0028】
前記左,右の遮蔽部材13は、前記トンネル部12dに重なるように上方から配置されている。このように、遮蔽部材13をトンネル部12dに重なるように配置したので、トンネル部12dの高さ位置を低くしつつ、前記左,右フードシール部材17,17を前フードシール部材16と同じ高さ位置に配置できる。即ち、左,右フードシール部材17をフードシール部材16と同じ高さにするには、トンネル部12dを高くする必要があるが、このようにするとカウルルーバ10の成形性が損なわれるおそれがある。本実施形態では、前記遮蔽部材13によりトンネル部12dの高さ位置を嵩上げしたので、カウルルーバ10の成形性を損なうことなく、フード6をカウルルーバ10の樋部12を覆う位置まで延長する場合のシール性を確保できる。
【0029】
前記遮蔽部材13は、車両前方から見たとき、前後方向に延びる平板部13aと、該平板部13aの左,右縁部から車幅方向外側に拡開しつつ下方に延びる左,右脚部13b,13cとを有する(図4,図6参照)。
【0030】
前記平板部13aは、前記トンネル部12dの上方に位置するよう配置されている。該トンネル部12dの上面と平板部13aとの隙間が衝撃力吸収ストロークとなっている。前述のようにトンネル部12dの高さ位置を低くすることが可能となるので、前記ストロークの確保が容易となっている。
【0031】
前記左脚部13bは、上方から見ると、前記トンネル部12dのコーナー部12eと重なるよう配置されている。これにより遮蔽部材13が下方に変位すると、左脚部13bがトンネル部12dに当接すると外側に開くように変形する。
【0032】
また前記右脚部13cの下部は、上部より薄肉に形成されており、前記遮蔽部材13の変位により右脚部13cが前壁部12bに当接すると外側に開くように変形する。
【0033】
前記左,右脚部13b,13cと平板部13aとのコーナー部には、前記荷重入力時の変形を誘発する脆弱部13d,13dが形成されている。この脆弱部13dは、前記コーナー部の肉厚を他の部分より薄肉にすることにより形成さている。なお、前記脆弱部13dは、スリットにより形成しても良く、また複数箇所設けてもよい。
【0034】
前記遮蔽部材13の左,右脚部13b,13cの後縁には、後方に突出する取付け片13e,13eが一体に形成されている。また前記平板部13aの下面には、下方に突出する係合片13fが一体に形成されている。
【0035】
前記樋部12の縦壁部12a及びトンネル部12dの前記左,右の取付け片13e及び係合片13fに対応する部位には、前挿入孔12e及び後挿入孔12f,12fが形成されている。そして前記遮蔽部材13は、左,右の取付け片13eを後挿入孔12fに差込み、係合片13fを前挿入孔12eに差し込むことにより、前記樋部12に取り付けられている。
【0036】
フード6の後部6aに、車両上方から被衝突物が落下し、該フード6から遮蔽部材13に衝突荷重が加わると、該遮蔽部材13は、左,右取付け片13eを支点に下方に変位するとともに、左,右脚部13b,13cが拡開しつつ変形する。
【0037】
本実施形態によれば、カウルルーバ10とは別体に形成された左,右の遮蔽部材13を、カウル本体11の前縁から下方に延びる縦壁部12aに取り付けたので、車両上方からの荷重の入力方向のいかんに関わらず、遮蔽部材13は、左,右の取付け片13eを中心に下方に変位しつつ、該遮蔽部材13自体が変形することとなる。これにより、衝撃力吸収性能を高めることができ、ひいては被衝突物への影響を抑制できる。
【0038】
本実施形態では、前記遮蔽部材13を、前後方向に延びる平板部13aと該平板部13aの左,右縁部から下方に拡開しつつ延びる左,右脚部13b,13cとを有するものとしたので、何れの方向から荷重入力が加わっても左,右脚部13b,13cが拡開して容易に変形することとなり、衝撃力吸収性能を確実に高めることができる。即ち、下向きコ字形状の遮蔽部材13の左,右脚部13b,13cを縦壁部12aにより片持ち支持する構造であるので、斜め上方及び斜め側方からの衝撃力によっても、遮蔽部材自体が変形し易くなっている。
【0039】
また前記平板部13aと各脚部13b,13cとのコーナー部に脆弱部13dを形成したので、左,右脚部13b,13cが脆弱部13dを起点により拡開することとなり、遮蔽部材13の下方への変位を確実に誘発することができ、衝撃力吸収性能をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態によるカウルルーバが配設された自動車の前部車体の概略斜視図である。
【図2】前記カウルルーバの側面図である。
【図3】前記カウルルーバの断面側面図(図1のIII-III線断面図)である。
【図4】前記カウルルーバに配設された遮蔽部材の断面正面図(図1のIV-IV線断面)である。
【図5】前記遮蔽部材の断面側面図(図1のV-V-線断面図)である。
【図6】前記遮蔽部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
9 フロントガラス
9a 下縁部
10 カウルルーバ
11 カウル本体
12 樋部
12a 縦壁部
12b 前壁部
13 遮蔽部材
13a 平板部
13b,13c 脚部
13d 脆弱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラスの下縁部を覆うように車幅方向に延びるカウル本体と、該カウル本体の前縁から下方に延びる縦壁部及び該縦壁部の下縁から前方上向きに延びる前壁部を有する溝形状の樋部と、該樋部の車幅方向端部を遮蔽するように配設された別体の遮蔽部材とを備えた車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造であって、
前記遮蔽部材は、車両上方からの荷重入力時に下方へ変形可能に前記縦壁部に取り付けられていることを特徴とする車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造において、
前記遮蔽部材は、前後方向に延びる平板部と、該平板部の車幅方向両縁から車幅方向外側に拡開しつつ下方に延びる脚部とを有し、該各脚部と前記平板部とのコーナー部には、前記荷重入力時の変形を誘発する脆弱部が形成されていることを特徴とする車両用カウルルーバの衝撃力吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−89715(P2010−89715A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263674(P2008−263674)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100780)アイシン化工株式会社 (171)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】