説明

車両用ガラスアンテナ及び車両用窓ガラス

【課題】本発明は、アンテナ導体のアースを容易にとることができる、車両用ガラスアンテナ及び車両用窓ガラスの提供を目的とする。
【解決手段】給電部11bが付設されたアンテナ導体1〜8と、給電部11bと所定間隔離間するアース部11aとが車両用窓ガラス12に設けられており、アース部11aを接地基準としてアンテナ導体1〜8による受信信号が給電部11bから取り出し可能な車両用ガラスアンテナであって、アンテナ導体1〜8、及びヒータ線14とヒータ線14に給電する複数のバスバ(15a,15b)とを有する通電加熱式のデフォッガの少なくともいずれか一方を取り囲むループ状導体10が、アース部11aに電気的に接続されて車両用窓ガラス12に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用窓ガラスにアンテナ導体を設けた車両用ガラスアンテナ構造に関する。また、アンテナ導体が設けられた車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AM放送帯、FM放送帯を受信するために、車両の窓ガラスにAM用、FM用のアンテナパターンを形成したアンテナ導体を設けて、アンテナ導体に接続された給電部より受信信号を増幅器に送るガラスアンテナ装置が知られている。給電部と増幅器とを同軸ケーブルで接続し、外側の網線を金属からなる車両のボディに接続して通常ボディアースをとる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−318623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、窓ガラスを車両に取り付けるに当たり、その窓ガラスが取り付けられる車両側部位やその近傍がアースとして使用できない場合(例えば、ボディアースから電気的に浮いていたり、ボディ自体が樹脂などの非導電性部材であったりする場合)、そのアンテナ導体のアースを容易にとることができない。
【0004】
そこで、本発明は、上述のような場合であってもアンテナ導体のアースを容易にとることができる、車両用ガラスアンテナ及びそのガラスアンテナを有する車両用窓ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用ガラスアンテナは、給電部が付設されたアンテナ導体と、前記給電部と所定間隔離間するアース部とが車両用窓ガラスに設けられており、前記アース部を接地基準として前記アンテナ導体による受信信号が前記給電部から取り出し可能な車両用ガラスアンテナであって、前記アンテナ導体、及びヒータ線と該ヒータ線に給電する複数のバスバとを有する通電加熱式のデフォッガの少なくともいずれか一方を取り囲むループ状導体が、前記アース部に電気的に接続されて前記車両用窓ガラスに設けられていることを特徴としている。
【0006】
ここで、前記ループ状導体は、少なくとも2本の導体が並行して延伸されている部分を有するループ形状の導体であり、また、前記ループ状導体は、前記アース部を起点に延伸する渦巻状導体であって、前記アース部と前記渦巻状導体の終点とをそれらの間に介在する前記渦巻状導体を跨いで電気的に接続する接続導体が設けられていることが好適である。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る車両用窓ガラスは、上記車両用ガラスアンテナを有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、窓ガラスが取り付けられる車両側部位やその近傍がアースとして使用できない場合であっても、アンテナ導体のアースを容易にとることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。なお、形態を表現する各図において、方向について特に記載しない場合には図面上での方向をいうものとする。また、アンテナ導体が設けられた車両用窓ガラスが車両に取り付けられた状態での上下左右方向を基準として説明する。車内視又は車外視のどちらを基準として解釈してもよい。つまり、アンテナ導体など本願の構成要件を左右入れ替えた配置であってもよい。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態である車両用ガラスアンテナ100の平面図である。ガラスアンテナ100は、アンテナ導体(線状導体)1〜8と、当該アンテナ導体に接続される給電部11bと、アンテナ導体1〜8と給電部11bと取り囲むループ状導体10と、ループ状導体10と接続導体10eを介して接続されるアース部11aとを後部窓ガラス12に設けた車両用ガラスアンテナである。
【0011】
また、車両用窓ガラス12には、複数のヒータ線14(図上、21本を例示)と該ヒータ線に給電する複数のバスバ(図上、2つのバスバ15a,15bを例示)とを有する通電加熱式のデフォッガが設けられ、余白領域にアンテナ導体1〜8、給電部11b、ループ状導体10及びアース部10aとが設けられている。ループ状導体10は、デフォッガを取り囲むように形成されている。なお、ループ状導体とバスバとの間隔を、3mm以上50mm以下となるように形成させることで、アンテナ利得が向上するため好ましい。
【0012】
ガラスアンテナ100は、所定の周波数帯Hの電波を受信し、周波数帯Hの受信用のH用アンテナ導体(H用アンテナパターン)として、エレメント1〜8(第1〜第8のアンテナエレメント)を備える。また、ガラスアンテナ100は、エレメント1〜8に給電する給電部11bを備える。給電部11bは、デフォッガの右上余白領域に設けられている。
【0013】
エレメント1から5は、互いに左右方向に並走している。エレメント3,4,5は、後部窓ガラス12の左右中央線46の左側で、上下方向に設けられたエレメント7で電気的に接続されている。エレメント4,5は、左右中央線46の右側で、上下方向に設けられたエレメント8で電気的に接続されている。
【0014】
上記した図1に示すアンテナ導体10は一例であり、これに限定されることはない。所望の周波数帯を受信できるアンテナパターンで形成されたアンテナ導体であれば本発明で使用できる。
【0015】
ループ状導体10は、アンテナ導体1〜8とデフォッガとを取り囲むようにグランドパターンとして形成され、アース部11aと接続導体10eを介して接続される。つまり、接続導体10eを起点として、ループ状導体10を経て再び終点である接続導体10eに戻ってくるように形成される。これにより、ループ状導体10はアースとして機能し、アース部11aを接地基準として給電部11bから取り出されるアンテナ導体1〜8による受信信号がアンプやチューナーなどの受信機に送られる。
【0016】
受信する周波数帯が低周波であるほど、ループ状導体10の導体長を長くすること、またはループ導体10の導体幅を幅広に形成することで、受信信号を安定して得られ、アンテナ利得が向上するので好ましい。また、受信する所望の周波数帯に対して充分な導体長や導体幅が形成されるのであれば、アンテナ導体1〜8のみを取り囲む、またはデフォッガのみを取り囲むようにループ状導体10を形成させてもよい。
【0017】
給電部11bとアース部11aとは、近接して設けられている。給電部11bは、図示しない同軸ケーブルの内部導体と半田などで接続され、アース部11aは同軸ケーブルの外部導体と半田などで接続され、図示しない増幅器に受信信号が伝達される。
【0018】
または、図示しないコネクタが給電部11bとアース部11aとを覆うように後部窓ガラス12に取り付けられる。コネクタには2つの端子が設けられ、給電部11bとアース部11aそれぞれと電気的に接続する。コネクタは、コネクタの底面に両面テープなどの粘着剤を処理して後部窓ガラス12に接着してもよいし、2つの端子を給電部11bとアース部11aとにそれぞれ直接半田付けなどで固定してもよい。
【0019】
コネクタは、その内部に増幅回路が設けられている。また、増幅回路には、受信機(不図示)と接続される同軸ケーブルが接続される。増幅回路の入力側に給電部11bが接続され、増幅回路の出力側に同軸ケーブルの内部導体が接続される。また、同軸ケーブルの外部導体は、アース部11aに電気的に接続される。
【0020】
また、帯状のバスバ15a,15bは、後部窓ガラス12の左側領域及び右側領域にそれぞれ少なくとも1本ずつ設けられている。また、バスバ15a,15bは後部窓ガラス板12の縦方向又は略縦方向に伸長されている。バスバ15aはアースに接続され、バスバ15bは直流電源の陽極に接続される。複数本のヒータ線14は水平方向又は略水平方向、広義には横方向又は略横方向に伸長されている。これらの複数本のヒータ線14のうち14e〜14mは、上下方向に延伸する短絡線16により短絡されている。短絡線16は、左右中央線16上に配置されている。
【0021】
なお、バスバは2つに限定されず、バスバは3つ以上であってもよい。バスバは後部窓ガラス12の縦方向又は略縦方向に伸長されていなくてもよく、例えば、横方向又は略横方向に伸長されていてもよい。また、一般の自動車では、視野確保の点から、バスバ15a,15bとの間の最短間隔が900mm以上1200mm以下であることが好ましい。また、デフォッガとアンテナ導体との間の最短間隔(最下段のエレメント5と最上段のヒータ線との間隔D6)が、20mm以上40mm以下であることが、アンテナ利得が向上し、好ましい。
【0022】
一方、図2は、本発明の一実施形態である車両用ガラスアンテナ200の平面図である。ガラスアンテナ200も、アンテナ導体(線状導体)1〜8と、当該アンテナ導体に接続される給電部11bと、アンテナ導体1〜8と給電部11bと取り囲むループ状導体20と、ループ状導体20と接続導体22を介して接続されるアース部11aとを後部窓ガラス12に設けた車両用ガラスアンテナである。なお、ガラスアンテナ200のアンテナ導体1〜8及びデフォッガの形状は、図1のガラスアンテナ100の場合と同様であるため、説明を省略する。
【0023】
アンテナ導体1〜8とデフォッガとを取り囲むループ状導体20は、渦巻を構成する線状の導体であり、窓ガラス12上で形成される。ループ状導体20は、アース部11aを起点に、左回りにアンテナ導体1〜8とデフォッガとを取り囲むように渦巻を描いて延伸する。
【0024】
21は、渦巻を描いて2周した渦巻状導体の終点である。終点21がループ状導体20の開放端にならないように、アース部11aと終点21は、それらの間のループ状導体を構成する線状導体20eを跨いで、線状導体20eと電気的に接続しないようにAV線やジャンパ線やコの字型コネクタなどの接続導体22で接続される。すなわち、起点であるアース部11aから、渦巻を描くループ状導体20を経て、終点21から接続導体22を介して再びアース部11aに戻るまでの間に、ループ状導体が短絡されていない状態となっている。
【0025】
図2の場合、ループ状導体20は2周している。なお、導体を周回させる回数は、2周以上とするとループ状導体の導体長が長くなるため、好ましい。また、周回数を増やすにつれて、ループ状導体の面積が増大し安定したアースを確保することができる。ループ状導体を構成する隣り合う導体同士は、平行又は略平行である。その隣接間隔は、見栄えやアンテナ特性を安定化させるため、アース部11aから終点21まで一定であることが好ましいが、これに限定されることはない。
【0026】
ところで、AM放送帯、FM放送帯のアース用にボディアースの他に窓ガラスにグランドパターンとして幅広の導体を設けることが知られている。ガラス板に幅広の導体が銀ペーストなどで形成されていると、加熱軟化したガラス板を自重による重力曲げ成形やプレス型によるプレス成形などで所望の形状に成形しようとしたときに、導体部分とその他の部分とで熱吸収率の違いにより、加熱段階で局所的な温度分布が発生し、ガラス板に歪が生じることがある。本実施形態のように線状の導体でグランドパターンを形成することによって、局所的な温度分布の発生を防ぎ、窓ガラスの成形において歪の発生を防止することができる。
【0027】
20a〜20iのループ状導体の導体幅は、0.7mmである。また、D10〜D13は、渦巻を構成する隣り合う導線同士の隣接間隔である。D14は、導線20eと右側バスバ15bとの間の隣接間隔であり、D15は、導線20gと左側バスバ15aとの間の隣接間隔である。
【0028】
なお、グランド導体20の外形の最大横幅W11やグランド導体20の外形の最大縦幅W12についても、これらの隣接間隔の可変により変化する。それ以外の各部の寸法、定数については、ガラスアンテナ100と同一である。
【0029】
また、図3は、本発明の他の実施形態である車両用ガラスアンテナ300の平面図である。ガラスアンテナ300も、アンテナ導体(線状導体)1〜8と、当該アンテナ導体に接続される給電部11bと、アンテナ導体1〜8と給電部11bと取り囲むループ状導体30と、ループ状導体30と接続導線10eを介して接続されるアース部11aとを後部窓ガラス12に設けた車両用ガラスアンテナである。なお、図1及び図2と同じ部分については説明を省略する。
【0030】
アンテナ導体1〜8とデフォッガとを取り囲むループ状導体30は、二重のループ状導体からなり、二重のループ状導体の一部を切り欠いた切り欠き部31を有し、切り欠き部31の両端でそれぞれ内周側のループ状導体30aと外周側のループ状導体30bを接続して形成される。内周側のループ状導体30aは、接続導体10eを介してアース部11aと接続される。つまり、接続導体10eを起点として、ループ状導体30を経て再び終点である接続導体10eに戻ってくるように形成される。ループ状導体30を構成する隣り合う導体同士は、アンテナ特性を安定化させるため、途中で短絡することなく平行又は略平行に形成されているが、これに限定されない。
【0031】
なお、図3の場合、ループ状導体は二重であるが、さらに外側にループ状導体を形成し、外側とその内側のループ状導体を切り欠いて、その両端でループ状導体同士を接続させれば、何重にも形成させることが可能になる。また、二重以上にすることによって、ループ状導体の導体長が長くなり、ループ状導体の面積が増大し安定したアースを確保することができる。
【0032】
本実施形態のように構成することで、前述の渦巻状のグランドパターンと同様に線状導体で形成されているため、車両用窓ガラスの成形時に歪の発生を防止できる。
【0033】
また、図8は、本発明の他の実施形態である車両用ガラスアンテナ500の平面図である。ガラスアンテナ500は、アンテナ導体(線状導体)1〜8と、当該アンテナ導体に接続される給電部11bと、アンテナ導体1〜8を取り囲まずにデフォッガを取り囲むループ状導体50(線状導体50a〜50hで構成される)と、ループ状導体50と接続導体22を介して接続されるアース部11aとを後部窓ガラス12に設けた車両用ガラスアンテナである。なお、図1,2と同じ部分については説明を省略する。
【0034】
図8のガラスアンテナ500において、アース部11aは給電部11bよりもデフォッガ側に設けられている(つまり、図2のガラスアンテナ200の給電部とアース部の上下方向の位置関係が入れ替わっている)。アンテナ導体1〜8を取り囲まずにデフォッガを取り囲むループ状導体50は、渦巻を構成する線状の導体であり、窓ガラス12上で形成される。ループ状導体50は、アース部11aを起点に、左回りにデフォッガを取り囲むように内側に巻き込む渦巻を描いて延伸する。
【0035】
21は、渦巻を描いて2周した渦巻状導体の終点である。終点21がループ状導体50の開放端にならないように、アース部11aと終点21は、それらの間のループ状導体を構成する線状導体50dを跨いで、線状導体50dと電気的に接続しないようにAV線やジャンパ線やコの字型コネクタなどの接続導体22で接続される。すなわち、起点であるアース部11aから、渦巻を描くループ状導体50を経て、終点21から接続導体22を介して再びアース部11aに戻るまでの間に、ループ状導体が短絡されていない状態となっている。
【0036】
本実施形態のように構成することで、図2の渦巻状のグランドパターンと同様に、車両用窓ガラスの成形時に歪の発生を防止できる。
【0037】
ここで、図1,2,3,8においては、アンテナ導体1〜8が受信する所望の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλといい、ガラス波長短縮率をkといい、k=0.64とし、λ=λ・kとするとき、ループ状導体の起点から終点までの長さは、2.5・λ以上であることがアンテナ利得向上の点では好ましい。具体的には、ループ状導体の導体長が5000mm以上、特には6000mm以上であることが、アンテナ利得の向上の点で好ましい。
【0038】
また、車両用ガラスアンテナとして実装し易くするために、ループ状導体の形状は長方形、略長方形、長辺及び短辺を有する平行四辺形、長辺及び短辺を有する略平行四辺形、台形又は略台形が好ましい。また、ループ状導体の形状が長方形以外の、四角形又は略四角形の場合、4つの内角の角度が、それぞれ70〜110°特には、80〜100°であることがアンテナ利得向上及び実装上の便宜の点で好ましい。
【0039】
また、ループ状導体が形づくる図形の最大縦幅Hと最大横幅Wとの関係が、(W/H)=0.5〜2、特には、(W/H)=1〜1.5、であることがアンテナ利得向上の点で好ましい。例えば、ループ形状のグランド導体の外形が長方形である場合、最大縦幅Hと最大横幅Wは当該長方形の最大外形寸法である長辺と短辺の長さに相当する。図1の場合、最大縦幅HはW2に相当し、最大横幅WはW1に相当する。図2の場合、最大縦幅HはW12に相当し、最大横幅WはW11に相当する。図3の場合、最大縦幅HはW22に相当し、最大横幅WはW21に相当する。図8の場合、最大縦幅HはW32に相当し、最大横幅WはW31に相当する。
【0040】
アンテナ導体1〜8、ループ状導体10、20、30,50及びデフォッガは、通常、銀ペースト等の、導電性金属を含有するペーストを後部窓ガラス板12の車内側表面にプリントし、焼付けて形成される。しかし、この形成方法に限定されず、銅等の導電性物質からなる、線状体又は箔状体を、後部窓ガラス12の車両側表面又は車外側表面に形成してもよく、窓ガラス12に接着剤等により形成してもよく、後部窓ガラス12自身の内部に設けてもよい。また、その内部又はその表面に導体層を設けた合成樹脂製フィルムを後部窓ガラス12の車内側表面又は車外側表面に形成して、アンテナ導体等としてもよい。
【0041】
また、図7に示すガラスアンテナ400のように、ループ状導体は角部で曲率を有していてもよいし、直線部分が曲率を有していてもよい。さらに図7の隠蔽膜境界線40と後部窓ガラス板12の外形13との間に、窓ガラスの面上に隠蔽膜を形成し、この隠蔽膜の上にループ状導体、アンテナ導体の一部分又は全体を設けてもよい。隠蔽膜は黒色セラミックス膜等のセラミックスが挙げられる。この場合、窓ガラスの車外側から見た場合、隠蔽膜により、隠蔽膜上に設けられているアンテナ導体やループ状導体については、車外からみて見えないため、デザインの優れた窓ガラスとなる。
【0042】
また、その内部又はその表面に導体層を設けた合成樹脂製フィルムを後部窓ガラスの車内側表面又は車外側表面に形成してアンテナ導体やループ状導体としてもよい。さらに、その内部又はその表面に導体層を設けたフレキシブル回路基板後部窓ガラス板の車内側表面又は車外側表面に形成してアンテナ導体やループ状導体としてもよい。
【0043】
また、アンテナ導体1〜8が受信する電波の周波数帯は、日本のFM放送帯(76〜90MHz)、米国のFM放送帯(88〜108MHz)及びテレビVHF帯のLow帯(90〜108MHz)の周波数帯から選ばれる1つの周波数であることが、好適である。また、AM放送帯(530〜1605kHz)でもよい。また、地上波デジタルテレビ放送帯(470〜770MHz)でもよい。
【実施例】
【0044】
実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されず、本発明の要旨を損なわない限り、各種の改良や変更を許容する。
[例1(実施例1)]
図1に示す、ガラスアンテナ100の効果について実証した。図4は、ガラスアンテナのアンテナ利得(ゲイン)の周波数特性を測定するための試験環境を示した側方から見た図である。アンテナ導体及びループ状導体が形成された車両用窓ガラス(検討ガラス)は、ターンテーブル上の高さ調整用治具で支えられている。検討ガラスは、その下端が水平面から1mの高さの位置に水平面に対して14°傾けた状態で固定されている。給電部とアース部にはアンプ内蔵のコネクタが取り付けられている。アンプのゲインは8dBである。また、コネクタは、チューナ(不図示)とフィーダ線(1.5C−2V 4.5m)によって接続される。水平方向から検討ガラスに対して全方向から電波(周波数88〜108MHzの垂直偏波又は水平偏波)が照射されるように、ターンテーブルが回転する。
【0045】
図1のアンテナ導体、ループ状導体及びデフォッガを形成させた窓ガラスを図4の試験環境によって、アンテナ利得(ゲイン)の周波数特性を測定した。その結果を図5、図6に示す。図5、図6に示されるアンテナ利得(ゲイン)は、周波数88〜108MHzの電波を1MHz毎にターンテーブルを360°回転させたときに計測したゲインの1MHz毎の平均値である。図5は、垂直偏波の場合のゲインの周波数特性である。図6は、水平偏波の場合のゲインの周波数特性である。
【0046】
なお、各部の寸法、定数は、長さの単位をmmとして、
L1:300 L2:300 L3:325 L4:340
L5:400 L6:400
D1:30 D2:30 D3:30 D4:30
D5:30 D6:40 D7:30 D8:5
D9:5
ループ状導体10の外形の最大横幅W1:880
ループ状導体10の外形の最大縦幅W2:880
ループ状導体10の左辺10bの導体幅W3:20
ループ状導体10の右辺10dの導体幅W4:20
ループ状導体10の上辺10aの導体幅W5:30
ループ状導体10の下辺10cの導体幅W6:30
ヒータ線同士の間隔 :30
バスバ15a,15bのそれぞれの導体幅 :15
とする。
[例2(実施例2)]
図2に示す、ガラスアンテナ200の効果について実証した。試験条件については例1と同じである。図2の渦巻を描くループ状導体の線状導体の隣接間隔D10〜D15を変化した場合のアンテナ利得(ゲイン)の周波数特性(隣接間隔D10〜D15=5,10,15,20mmの4パターン)を測定した。垂直偏波の結果を図5に、水平偏波の結果を図6に示す。なお、ループ状導体の導体幅は0.7mmである。特に示していない各部の寸法、定数は例1と同じである。
【0047】
また、例1及び例2について計測した周波数全体でのアンテナ利得(ゲイン:単位はdBμV)の平均値を表1に示す。
【0048】
【表1】

図5、図6において、垂直偏波、水平偏波ともにアンテナ利得の差においては同じような傾向が現れた。つまり、低周波の領域ではループ状導体の導体幅を太くした例1の方がゲインは高くなることがわかり、高周波側では渦巻を描いたループ状導体の例2の方がゲインは高くなることがわかる。さらに、高周波側では例2のループ状導体の隣接間隔を狭くするほどゲインは高くなった。
【0049】
また、表1において、計測した周波数全体でのアンテナ利得(ゲイン)の平均値を比較すると、例2のループ状導体であっても隣接間隔を狭くするほどアンテナ利得の平均値は高くなり、5mmの隣接間隔に設定すると例1と同等のアンテナ利得が得られた。
【0050】
したがって、ガラスアンテナ100,200のように、窓ガラス上に本発明のようなループ状導体を設けることにより、車両側でアンテナ導体のアースを取りにくい場合であっても、アンテナ導体のアースを窓ガラス上で容易にとることができ、アンテナとして機能し得るゲインを確実に確保することができる。
【0051】
特に、ガラスアンテナ200のようにループ状導体を螺旋状にすることによって、ループ状導体の導体幅を小さくすることができ、窓ガラスの成形時の問題を解決し、かつガラスアンテナ100と同等のゲイン特性を得ることができる。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0053】
例えば、窓ガラスは、後部窓ガラス、前部窓ガラス及びサイド窓ガラスなどの車両用窓ガラスであれば、特に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態である車両用ガラスアンテナ100の平面図である。
【図2】本発明の一実施形態である車両用ガラスアンテナ200の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態である車両用ガラスアンテナ300の平面図である。
【図4】ガラスアンテナのゲインの周波数特性を測定するための試験環境を示した図である。
【図5】垂直偏波の場合のゲインの周波数特性である。
【図6】水平偏波の場合のゲインの周波数特性である。
【図7】本発明の一実施形態である車両用ガラスアンテナ400の平面図である。
【図8】本発明の一実施形態である車両用ガラスアンテナ500の平面図である。
【符号の説明】
【0055】
1〜8 アンテナ導体
10,20,30,50 ループ状導体
11a アース部
11b 給電部
12 後部窓ガラス
14 ヒータ線
15a,15b バスバ
22 接続導体
31 切り欠き部
100,200,300,400,500 ガラスアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電部が付設されたアンテナ導体と、前記給電部と所定間隔離間するアース部とが車両用窓ガラスに設けられており、
前記アース部を接地基準として前記アンテナ導体による受信信号が前記給電部から取り出し可能な車両用ガラスアンテナであって、
前記アンテナ導体、及びヒータ線と該ヒータ線に給電する複数のバスバとを有する通電加熱式のデフォッガの少なくともいずれか一方を取り囲むループ状導体が、前記アース部に電気的に接続されて前記車両用窓ガラスに設けられていることを特徴とする、車両用ガラスアンテナ。
【請求項2】
前記ループ状導体は、少なくとも2本の導体が並行して延伸されている部分を有するループ形状の導体である、請求項1に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項3】
前記ループ状導体は、前記アース部を起点に延伸する渦巻状導体であって、
前記アース部と前記渦巻状導体の終点とをそれらの間に介在する前記渦巻状導体を跨いで電気的に接続する接続導体が設けられた、請求項1又は2のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項4】
前記ループ状導体を構成する導線間の隣接間隔は、3mm以上30mm以下である、請求項2又は3に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項5】
所望の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλとし、ガラス波長短縮率をk=0.64とし、λ=λ・kである場合に、前記ループ状導体の長さが、2.5・λ以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項6】
前記ループ状導体の長さが、5000mm以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項7】
前記ループ状導体と前記バスバとの間隔は、3mm以上50mm以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の、車両用ガラスアンテナ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用ガラスアンテナを有する、車両用窓ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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