車両用サンルーフ装置
【課題】モータの負担を抑制しつつ、フロントパネルとリヤパネルによってルーフ開口を速やかに確実に開閉する。
【解決手段】フロントパネル32とリヤパネル33が全閉状態にあるときに、電動モータの駆動力に応じて、フロントパネルの後端が上方へ傾いた後に、フロントパネルがルーフ11の外面に沿うように後退して半開状態になる。次に、リヤパネルがルーフの内面11bに沿うように後退するとともに、フロントパネルがルーフの外面に沿うように後退することによって、全開状態になる。リヤパネル駆動機構39は、全閉状態のリヤパネルを開くときに、リヤパネルの前端部33aよりも先に、リヤパネルの後端部33bを下降させつつルーフの内面に沿って後退させる。
【解決手段】フロントパネル32とリヤパネル33が全閉状態にあるときに、電動モータの駆動力に応じて、フロントパネルの後端が上方へ傾いた後に、フロントパネルがルーフ11の外面に沿うように後退して半開状態になる。次に、リヤパネルがルーフの内面11bに沿うように後退するとともに、フロントパネルがルーフの外面に沿うように後退することによって、全開状態になる。リヤパネル駆動機構39は、全閉状態のリヤパネルを開くときに、リヤパネルの前端部33aよりも先に、リヤパネルの後端部33bを下降させつつルーフの内面に沿って後退させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のルーフに開けられたルーフ開口を開閉するためのサンルーフパネルが、フロントパネルとリヤパネルの前後2つのパネルから成る車両用サンルーフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用サンルーフ装置において、ルーフ開口の開口量をできるだけ大きくする技術の開発が進められている。1つのサンルーフパネルによってルーフ開口を開閉する方式では、開口量を大きくするのに限界がある。これに対して、サンルーフパネルを細分化する方式が考えられる。しかし、細分化し過ぎると構成が複雑になるので得策ではない。そこで、サンルーフパネルを、フロントパネルとリヤパネルの前後二分割する方式の技術が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実公平4−26254号公報
【0003】
特許文献1に示される、従来の車両用サンルーフ装置は、モータでワイヤケーブル(伝動部材)を押し駆動及び引き駆動することにより、ワイヤケーブルによって、フロントパネルとリヤパネルを別々に開閉させるというものである。詳しく述べると、全閉状態にあるフロントパネルとリヤパネルは次の順序で開く。
先ず、フロントパネルの後端が上方へ傾く(チルトアップ)。
次に、フロントパネルがルーフの外面に沿うように後退して半開位置まで開く。
次に、リヤパネルがルーフの内面の下まで下降する。
最後に、リヤパネルがルーフの内面に沿うように後退して全開位置まで開きながら、フロントパネルがルーフの外面に沿うように後退して全開位置まで開く。
【0004】
上述のように、フロントパネルが後退して所定の半開位置まで開いた時点、つまり、フロントパネルがリヤパネルに近づいた時点に、リヤパネルが開放動作を開始する。このため、全閉状態のフロントパネルとリヤパネルが共に全開状態になるまでの時間(全開移行時間)は、比較的長い。乗員にとって、大きいルーフ開口であっても、できるだけ速やかに開閉できることが好ましい。
【0005】
全開移行時間を短縮するには、次の2つの方法がある。
第1の時間短縮方法は、ワイヤケーブルの移動速度を増大させることである。しかし、モータの負担が増大するので、得策ではない。
【0006】
第2の時間短縮方法は、フロントパネルとリヤパネルが同時に開放動作している時間を、できるだけ長く設定することである。例えば、フロントパネルが開き始めた時点に、リヤパネルをも開き始めるようにする。しかし、リヤパネルは、開き始めるときには一旦下降した後に後退し、逆に、閉じ始めるときには一旦上昇した後に前進する。モータは、フロントパネルの他にリヤパネルをも開閉駆動するので負担が大きいのに、その上、リヤパネルを下降駆動及び上昇駆動させるので、一層負担が増す。これに対して、車両用サンルーフ装置に大出力のモータを搭載することも考えられる。しかし、コストが増すとともに、車両用サンルーフ装置が大型化になり、しかも、電力消費量が増すので得策ではない。
【0007】
モータの負担を軽減するには、リヤパネルの下降速度や上昇速度を減少させることが考えられる。ところが、ワイヤケーブルの移動速度は一定である。リヤパネルを一定距離だけ上下動させるのに必要な、ワイヤケーブルの移動量は、リヤパネルが低速になった分だけ増大してしまう。しかも、モータは、リヤパネルを駆動するワイヤケーブルによって、フロントパネルをも駆動している。フロントパネルの後退速度は変わらない。リヤパネルの下降速度を単に減少させただけでは、後退中のフロントパネルが下降中のリヤパネルに当たる心配がある。
【0008】
パネル同士が当たらないようにするには、リヤパネルが下降するタイミングを早めることが考えられる。タイミングが早まった分、リヤパネルが全開位置へ到達するタイミングも早まる。リヤパネルが全開位置に到達した時点でワイヤケーブルを止めると、フロントパネルは後退途中で停止してしまう。この結果、フロントパネルが全開にならないので、ルーフ開口を全開状態にすることができなくなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、モータの負担を抑制しつつ、フロントパネルとリヤパネルによって大きいルーフ開口を速やかに確実に開閉できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明では、車両のルーフに開けられたルーフ開口を開閉するためのサンルーフパネルが、フロントパネルとリヤパネルの前後2つのパネルから成り、
前記フロントパネルと前記リヤパネルが全閉状態にあるときに、電動モータの駆動力に応じて、前記フロントパネルの後端が上方へ傾いた後に、前記フロントパネルが前記ルーフの外面に沿うように後退して半開状態になり、次に、前記リヤパネルが前記ルーフの内面に沿うように後退するとともに前記フロントパネルが前記ルーフの外面に沿うように後退することによって、全開状態になるようにした車両用サンルーフ装置であって、
全閉状態の前記リヤパネルを開くときに、前記リヤパネルの前端部よりも先に、前記リヤパネルの後端部を下降させつつ前記ルーフの内面に沿って後退させる、リヤパネル駆動機構を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明では、請求項1において、前記リヤパネル駆動機構は、前記ルーフに対して前後スライド可能なリヤスライダと、前記リヤパネルを支持するリヤパネル支持ステーと、前記リヤスライダの後退に応じて、前記リヤパネル支持ステーを下降させつつ後退させるように連動させるリヤステー連動部と、前記リヤパネル支持ステーの後端部が下降しつつ後退するときに、前記リヤパネル支持ステーの後端部よりも遅れて、前記リヤパネル支持ステーの前端部が下降しつつ後退するように規制する規制部とから成ることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明では、請求項2において、前記リヤステー連動部は、前記リヤスライダに有したガイドピンと、前記ガイドピンに案内されるように前記リヤパネル支持ステーに有したカム溝とから成ることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明では、請求項2又は請求項3において、前記規制部は、前記リヤパネル支持ステーから前記フロントパネルへ向かって延びたステー延長部と、前記リヤパネルよりも前の位置で前記ルーフに設けられ、前記ステー延長部の先端部を案内するためのガイド溝を有したストッパ部材とから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、全閉状態のリヤパネルを開くときに、リヤパネルの前端部よりも先に、リヤパネルの後端部を下降させつつルーフの内面に沿って後退させることができる。このため、全閉状態のリヤパネルの後端部が下降を開始した降下開始時点から、リヤパネルの後端部がルーフの内面に入り込んだ降下完了時点までの、後端下降時間を短縮することができる。つまり、従来のような、リヤパネル全体を一旦下降させた後に後退させる場合に比べて、リヤパネルの後端部をルーフの内面に、短時間で入り込ませることができる。
【0015】
モータの負担を軽減するために、リヤパネルの下降速度を減少させた場合には、リヤパネルの下降時間が長くなるが、後端下降時間が短縮されることによって、補うことができる。つまり、降下完了時点を基準に考えたときに、後端下降時間が短縮された分、降下開始時点を遅らせることができる。従って、リヤパネル全体の下降開始タイミングを早めなくても、後退中のフロントパネルが下降中のリヤパネルに当たる心配はない。
【0016】
また、リヤパネルの下降開始タイミングを早めないので、リヤパネルが全開位置へ到達するタイミングが早まることはない。リヤパネルが全開位置へ到達した時点に、フロントパネルも全開位置へ到達する。フロントパネルとリヤパネルの両方を全開にすることができるので、大きいルーフ開口であっても大きく開けることができる。この結果、サンルーフパネルの全開時における開口量が増大するので、乗員にとって開放感や爽快感が増す。
しかも、大きいルーフ開口であるにもかかわらず、全開状態と全閉状態とに速やかに確実に開閉することができる。さらには、リヤパネルの下降速度及び上昇速度を減少させることができるので、モータの負担を抑制することができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、リヤスライダが後退したときに、リヤステー連動部がリヤスライダの後退に応じてリヤパネル支持ステーを下降させつつ後退させる。このときに、規制部は、リヤパネル支持ステーの前端部を後端部よりも遅れて下降させつつ後退させるように規制する。
リヤスライダとリヤパネル支持ステーとリヤステー連動部と規制部の組み合わせから成る、簡単な構成のリヤパネル駆動機構によって、リヤパネルを速やかに且つ確実に、下降させつつ後退させることができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、リヤスライダに有したガイドピンと、リヤパネル支持ステーに有したカム溝とによって、リヤステー連動部が構成される。このため、極めて簡単な構成のリヤステー連動部により、リヤスライダの後退に応じて、リヤパネル支持ステーを下降させつつ後退させるように連動させることができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、リヤパネル支持ステーからフロントパネルへ向かって延びたステー延長部と、このステー延長部の先端部を案内するためにリヤパネルの前に設けられたガイド溝とによって、規制部が構成される。このため、極めて簡単な構成の規制部によって、リヤパネル支持ステーの前端部を後端部よりも遅れて下降させつつ後退させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Leは左側、Riは右側、CLは車幅中心(車体中心)を示す。
【0021】
図1は、車両用サンルーフ装置30を備えた車両10のルーフ11周りを示している。図2(a),(b)は、ルーフ11及び車両用サンルーフ装置30の断面構造を示している。
図1及び図2に示すように、ルーフ11は、内外に貫通したルーフ開口12と、このルーフ開口12を囲うように配置されたルーフ用フレーム20とを有している。
ルーフ用フレーム20は、ルーフ開口12の位置に、フレーム側の開口21を有した平面視略矩形状の枠から成る。このフレーム20は、車体前後方向へ延びる左右一対の側部フレーム部材22,22と、左右の側部フレーム部材22,22の前端同士を結合する前部フレーム部材23と、左右の側部フレーム部材22,22の後端同士を結合する後部フレーム部材24とから成る。
【0022】
車両用サンルーフ装置30は、ルーフ開口12及びフレーム側の開口21をサンルーフパネル31によって開閉するものである。この車両用サンルーフ装置30は、サンルーフパネル31とモータ駆動ユニット34と左右のワイヤケーブル37,37と左右のフロントパネル駆動機構38,38と左右のリヤパネル駆動機構39,39とから成る。
【0023】
サンルーフパネル31は、ルーフ開口12の前半部分を開閉するフロントパネル32と、ルーフ開口12の後半部分を開閉するリヤパネル33の、前後2つのパネルから成る。
モータ駆動ユニット34は、ルーフ用フレーム20の後部に取り付けられており、1つの電動モータ35と、電動モータ35によって駆動される1つの減速機36とから成る。
減速機36は、左右一対のワイヤケーブル37,37を各フロントパネル駆動機構38,38側に引き出し作動するとともに、反対に左右のワイヤケーブル37,37を引き戻し作動するものである。
【0024】
ワイヤケーブル37,37(プッシュプルケーブル37,37)は、減速機36で引き戻されることによって、左右のフロントパネル駆動機構38,38におけるフロントスライダ50,50を後方(矢印Pr方向)へ引き作動する。また、ワイヤケーブル37,37は、減速機36から押し出されることによって、左右のフロントスライダ50,50を前方(矢印Pf方向)へ押し作動する。
【0025】
左右のフロントパネル駆動機構38,38は、フロントパネル32を開閉する機構である。左右のリヤパネル駆動機構39,39は、左右のフロントパネル駆動機構38,38と連動してリヤパネル33を開閉する機構であって、左右のフロントパネル駆動機構38,38よりも後方に配置されている。
このような車両用サンルーフ装置30によれば、フロントパネル32とリヤパネル33を電動モータ35による自動操作モード又は手動操作モードによって、開閉させることができる。
【0026】
車両用サンルーフ装置30は、電動モータ35の駆動力に応じて図2〜図4に示すような開閉作動をする。
図2(a),(b)は、フロントパネル32とリヤパネル33の両方が全閉状態にあるときの車両用サンルーフ装置30を示している。図2(a)に示すように、フロントパネル32とリヤパネル33の両方が全閉状態(クローズ)のときに、各パネル32,33はルーフ開口12に対して次の関係にある。フロントパネル32の前端面は、ルーフ開口12の前端縁にシールされて接している。フロントパネル32の後端面は、リヤパネル33の前端面にシールされて接している。リヤパネル33の後端面は、ルーフ開口12の後端縁にシールされて接している。
以下、全閉状態にあるフロントパネル32の前端面の位置FPcのことを、フロントパネル32の「全閉位置FPc」と言う。また、全閉状態にあるリヤパネル33の前端面の位置RPcのことを、リヤパネル33の「全閉位置RPc」と言う。
【0027】
図3(a)〜(c)は、フロントパネル32だけが半開状態にあるときの車両用サンルーフ装置30を示している。図3(a)に示すように、フロントパネル32が半開状態(ハーフオープン)のときに、フロントパネル32の前端面は位置FPhにある。以下、半開状態にあるフロントパネル32の前端面の位置FPhのことをフロントパネル32の「半開位置FPh」と言う。
【0028】
図4は、フロントパネル32とリヤパネル33の両方が全開状態にあるときの車両用サンルーフ装置30を示している。フロントパネル32とリヤパネル33が共に全開状態(フルオープン)のときに、フロントパネル32の前端面は位置FPoにある。このときに、リヤパネル33の前端面は位置RPoにある。以下、全開状態にあるフロントパネル32の前端面の位置FPoのことを、フロントパネル32の「全開位置FPo」と言う。また、全開状態にあるリヤパネル33の前端面の位置RPoのことを、リヤパネル33の「全開位置RPo」と言う。
【0029】
サンルーフパネル31は、次のように開(オープン)作動する。
今、図2(a)に示すように、フロントパネル32とリヤパネル33の両方が全閉状態にある。その後、例えば図示せぬ操作スイッチを全開操作することによって、電動モータ35(図1参照)は正転する。この結果、先ず、フロントパネル32の後端が上方へ傾く(想像線で示す状態になる)。次に、フロントパネル32がルーフ11の外面11aに沿うように後退して、図3(a)に示すように半開状態になる。次に、リヤパネル33がルーフ11の内面11bに沿うように後退するとともに、フロントパネル32がルーフ11の外面11aに沿うように後退することによって、図4に示すように、全開状態になる。
【0030】
図4に示すように、ルーフ開口12における前端縁(位置FPc)から後端縁までの開口長さはL1である。これに対し、サンルーフパネル31が全開状態にあるときに、ルーフ開口12の前端縁(位置FPc)からフロントパネル32の前端面(位置FPo)までの離間寸法はL2である。従って、ルーフ開口12の開口率Ro(%)は、次の式によって求められる。
Ro=(L2/L1)×100
【0031】
サンルーフパネル31は、次のように閉作動(クローズ)する。
今、図4に示すように、フロントパネル32とリヤパネル33の両方が全開状態にある。その後、例えば図示せぬ操作スイッチを全閉操作することによって、電動モータ35(図1参照)は逆転する。この結果、先ず、リヤパネル33がルーフ11の内面11bに沿うように前進するとともに、フロントパネル32がルーフ11の外面11aに沿うように前進する。この結果、図3(a)に示すように、リヤパネル33が元の全閉状態になるとともに、フロントパネル32が半開状態になる。次に、フロントパネル32がルーフ11の外面11aに沿うように更に前進して、図2(a)に示す元の全閉位置に戻る。次に、フロントパネル32は傾いている状態の後端を元の高さまで戻すことで閉じる。
【0032】
ここで、次のように定義する。フロントパネル32の後端を、上方へ傾けることを「チルトアップ」という。フロントパネル32の後端が上限まで傾いたことを「チルトアップ完了」という。一方、上方へ傾けられているフロントパネル32の後端を下げて、元の高さまで戻すことを「チルトダウン」という。フロントパネル32の後端が元の高さまで戻ったことを「チルトダウン完了」という。
フロントパネル32やリヤパネル33を後方にスライドさせて開くことを「スライド開」という。後方へのスライドが完了したことを「スライド全開」という。フロントパネル32やリヤパネル33を前方にスライドさせて閉じることを「スライド閉」という。前方へのスライドが完了したことを「スライド全閉」という。
【0033】
次に、左の側部フレーム部材22及び左のフロントパネル駆動機構38について説明する。なお、右の側部フレーム部材22及び右のフロントパネル駆動機構38については、左と同様の構成(左右対称の構成)なので、説明を省略する。
図5は、図2に示された左のフロントパネル駆動機構38を分解して示している。図6は、図5に示された左のフロントパネル駆動機構38の組立構成を示している。なお、図6では、説明の理解を容易にするために、フロントパネル駆動機構38の構成を(a)と(b)とに分けて示している。
【0034】
図5に示すように、左の側部フレーム部材22は、前後方向に延びるガイド溝22aを有している。ガイド溝22aは、上が開放されるとともに、開放された左右の縁にフランジ22b,22bを有している。
【0035】
図5及び図6に示すように、左のフロントパネル駆動機構38は、フロントスライダ50とステー用スライダ60と連結リンク70とストッパ部材80とフロントパネル支持ステー90と引き込みアーム100とからなる。
【0036】
フロントスライダ50は、ルーフ11に対して前後スライド可能な部材であって、横板状のスライド板51と縦板状のリフトガイド板52とからなる。スライド板51は、ガイド溝22aに前後スライド可能に案内される部材であって、前部に係合溝53を有している。係合溝53は、上が開放されるとともに車幅方向に延びている。リフトガイド板52は、スライド板51から起立した、前後に細長い平板であり、側面に形成されたリフトガイド溝54と、後端部から側方へ延びたアーム掛け凸部55とを有している。リフトガイド溝54は、後方へ下がり勾配となるように形成された傾斜溝である。なお、リフトガイド溝54は、車幅方向に貫通した長孔であってもよい。
【0037】
ステー用スライダ60は、フロントスライダ50よりも前方に配置され、ルーフ11に対して前後スライド可能な部材である。このステー用スライダ60は、ガイド溝22aに前後スライド可能に配置された前後に細長い部材であって、後部から側方へ延びた連結ピン61と、前端に形成された支持凹部62と、側面に形成されたスイングガイド溝63とを有している。
【0038】
連結リンク70は、フロントスライダ50とステー用スライダ60とを連結可能な、前後に細長い部材である。この連結リンク70は、後下部の側面から側方へ延びた第1係合凸部71と、後上部の側面から側方へ延びた第2係合凸部72と、前部の側面に形成された連結孔73とを有している。第1係合凸部71は、フロントスライダ50の係合溝53に係合可能である。第1係合凸部71に対して、第2係合凸部72は同方向へ延びている。連結孔73は、ステー用スライダ60の連結ピン61に嵌合している。
【0039】
ストッパ部材80は、ステー用スライダ60よりも後方に配置されて、左のフランジ22bに取り付けられた、前後に細長い部材である。このストッパ部材80は、下面にカム溝81を有するとともに、上面にカム山82を有している。
カム溝81は、側部フレーム部材22のガイド溝22aに臨んでいる。このカム溝81は、連結リンク70の第1係合凸部71に係合可能である。カム山82の面は、ストッパ部材80の前端側が頂部であり、この頂部から後方へ向かって下がる勾配面に形成されている。このカム山82の面は、連結リンク70の第2係合凸部72に係合可能である。
【0040】
フロントパネル支持ステー90は、ルーフ11に対して前後スライド可能で且つ上下スイング可能であって、フロントパネル32を支持する部材である。このフロントパネル支持ステー90は、前後に細長く形成されており、前端部から側方へ延びるスイングピン91と、スイングピン91よりも後方において側方へ延びるガイドピン92と、ガイドピン92よりも後方において側方へ延びるリフトピン93と、後端部から側方へ延びる係合ピン94とを有している。
【0041】
スイングピン91は、ステー用スライダ60の支持凹部62に嵌合される。ガイドピン92は、ステー用スライダ60のスイングガイド溝63に嵌合される。リフトピン93は、フロントスライダ50のリフトガイド溝54に嵌合される。リフトガイド溝54と、このリフトガイド溝54に案内されて移動可能なリフトピン93との組合せ構造は、スイングガイド機構96を成す。
【0042】
以上の構成であるから、フロントパネル支持ステー90は、前端のスイングピン91をスイング基端として、上下スイング可能である。フロントスライダ50が前後にスライドしたときに、リフトガイド溝54にリフトピン93が案内されることによって、フロントパネル支持ステー90は上下スイング駆動される。このように、フロントスライダ50は、スイングガイド機構96を介して、フロントパネル支持ステー90の後端を上下スイングさせることができる。
【0043】
引き込みアーム100は、前後に細長い部材であって、前端部がフロントスライダ50のアーム掛け凸部55に掛けられ、後端部の側面に引き込み溝101を有している。引き込み溝101は、前端が開放するとともに、後方へ下がり勾配となるように形成された傾斜溝であって、フロントパネル支持ステー90の係合ピン94が嵌合可能である。
【0044】
この引き込み溝101は、次の2つの機能を有している。
第1の機能は、フロントパネル32を開けるときであって、フロントパネル32の後端を上方へ傾け始めるときに、係合ピン94(フロントパネル支持ステー90の後端部)を上方へ案内するとともに支えることである。
第2の機能は、フロントパネル32を閉じるときであって、傾けられている状態の後端を元の高さまで戻し終わるころに、フロントパネル支持ステー90の後端部を支えつつ下方へ引き込むことである。
第1及び第2の機能を有しているので、フロントパネル32を上下スイングさせたときに、走行風の影響によってフロントパネル32が上下にふらつくことを防止できる。
【0045】
フロントスライダ50に対して、引き込みアーム100を別部材によって構成した理由は、次の通りである。つまり、フロントパネル32を後方にスライドさせて全開にしたときに、引き込みアーム100の後端がフレーム側の開口21(図1参照)の後縁に当たり得る。後縁に当たった引き込みアーム100は、圧縮コイルばね102の弾発力に抗して前方へ移動可能である。従って、開口21の後縁に対して、フロントスライダ50及び引き込みアーム100が干渉することはない。これが、フロントスライダ50に対して、引き込みアーム100を別部材によって構成した理由である。
【0046】
次に、フロントパネル駆動機構38の作用を、図2〜図4を参照しながら図6〜図8に基づいて説明する。なお、図7及び図8では、説明の理解を容易にするために、図6と同様にフロントパネル駆動機構38の構成を(a)と(b)とに分けて示している。
【0047】
図6は、フロントパネル32が全閉状態であるときのフロントパネル駆動機構38を示している。図2(a)及び図6(a)に示すように、全閉状態において、フロントパネル支持ステー90は最も下がった位置にある。フロントパネル支持ステー90は、リフトピン93がリフトガイド溝54における後部にあり、係合ピン94が引き込み溝101の後部にある。
【0048】
図6(b)に示すように、連結リンク70の第2係合凸部72は、ストッパ部材80のカム山82における頂部の近傍に接している。このため、第1係合凸部71は、ストッパ部材80のカム溝81に嵌っているとともに、下部が下方へ突出している。
一方、フロントスライダ50は、ステー用スライダ60に接近した位置にある。このため、フロントスライダ50の係合溝53は、ストッパ部材80よりも前方の位置にある。
【0049】
その後、例えば図示せぬ操作スイッチを全開操作すると、電動モータ35(図1参照)は正転してワイヤケーブル37を引き戻す。ワイヤケーブル37は、フロントスライダ50を後方(矢印Pr方向)に引いてスライドさせる。この結果、係合溝53は、第1係合凸部71に接近する。同時に、リフトガイド溝54及び引き込み溝101は後方へ移動する。フロントパネル支持ステー90は、スイングピン91をスイング基端として、後端部が上方にスイングする。フロントパネル32の後端は上方にスイングする(チルトアップする)。この結果を図7に示す。
【0050】
図7は、フロントパネル32の後端が上限まで上方へ傾いているときの(チルトアップ完了状態における)、フロントパネル駆動機構38を示している。図7(a)に示すように、フロントパネル支持ステー90は、リフトピン93がリフトガイド溝54における前部にあり、係合ピン94が引き込み溝101から抜け出て上方の位置にある。このときに、係合溝53は、カム溝81から下方へ突出している第1係合凸部71に係合する。
その後、ワイヤケーブル37はフロントスライダ50を、さらに後方にスライドさせる。この結果、係合溝53の前縁が第1係合凸部71に当たることによって、第1係合凸部71はカム溝81から抜け出て係合溝53に嵌る。この結果を図8に示す。
【0051】
図8は、フロントパネル32の後端が上方へ傾いた状態で後方へ移動を開始するときの、フロントパネル駆動機構38を示している。図8(a)に示す状態は、上記図7(a)に示す状態と、ほぼ同じである。図8(b)は、第1係合凸部71がカム溝81から外れて係合溝53に嵌ったことによって、フロントスライダ50に連結リンク70を介してステー用スライダ60が連結されている状態を示す。この状態において、第2係合凸部72はカム山82における頂部を下降しながら、後方へ移動可能である。
【0052】
その後、ワイヤケーブル37はフロントスライダ50を、さらに後方にスライドさせる。フロントスライダ50に連結リンク70を介して連結されているステー用スライダ60も、後方にスライドする。この結果、フロントパネル32は、フロントスライダ50、ステー用スライダ60及びフロントパネル支持ステー90と共に、全開になるまで後方へ移動する。フロントパネル32が全開になった時点に、電動モータ35(図1参照)は停止する。
【0053】
その後、例えば図示せぬ操作スイッチを全閉操作すると、電動モータ35(図1参照)は逆転してワイヤケーブル37を押し出す。ワイヤケーブル37は、フロントスライダ50を前方(矢印Pf方向)に押してスライドさせる。フロントスライダ50に連結リンク70を介して連結されているステー用スライダ60も、前方にスライドする。この結果、フロントパネル32は、フロントスライダ50、ステー用スライダ60及びフロントパネル支持ステー90と共に前方へ移動する。同時に、連結リンク70における第1・第2係合凸部71,72も前方へ移動する。この結果を図7に示す。
【0054】
図7に示すように、第1係合凸部71がストッパ部材80のカム溝81の真下の位置まで移動したときに、第2係合凸部72はカム山82に案内されて前上方へ移動する。この結果、連結リンク70の後端部が上方にスイングするので、第1係合凸部71はフロントスライダ50の係合溝53から抜け出て、カム溝81に嵌る。
【0055】
この時点において、フロントスライダ50に対する連結リンク70及びステー用スライダ60の連結状態が解除される。フロントスライダ50が、さらに前方にスライドしても、ステー用スライダ60は停止状態を維持する。ステー用スライダ60が停止した時点で、フロントパネル支持ステー90とフロントパネル32は、前方への移動を停止する。つまり、フロントパネル32は、スライドによる元の全閉位置まで前方へ移動したことになる。
【0056】
その後、ワイヤケーブル37はフロントスライダ50を、さらに前方にスライドさせる。このため、リフトガイド溝54及び引き込み溝101は前方へ移動する。フロントパネル支持ステー90のリフトピン93は、リフトガイド溝54に案内されて下降する。フロントパネル支持ステー90は、スイングピン91をスイング基端として、後端部が下方にスイングする。フロントパネル32の後端は下方にスイングする(チルトダウンする)。この結果を図6に示す。
【0057】
図6(a)に示すように、リフトピン93がリフトガイド溝54に案内されて最下端まで下降した時点で、フロントパネル支持ステー90のスイングは停止する。この結果、フロントパネル32は元の全閉状態に戻る。その後に、電動モータ35(図1参照)は停止する。
【0058】
次に、左の側部フレーム部材22及び左のリヤパネル駆動機構39(図2参照)について説明する。なお、右の側部フレーム部材22及び右のリヤパネル駆動機構39については、左と同様の構成(左右対称の構成)なので、説明を省略する。
【0059】
図9は、図2に示された左のリヤパネル駆動機構39を分解して示している。図10は、図2に示されたリヤパネル駆動機構39におけるリヤスライダ110前部周りの組立構成を示している。なお、図10では、説明の理解を容易にするために、リヤスライダ110周りの構成を(a)と(b)と(c)とに分けて示している。
【0060】
図9に示すように、左のリヤパネル駆動機構39は、リヤスライダ110とスイング部材120と固定部材130と付勢部材141とスライダ連結部150とリヤパネル支持ステー170とストッパ部材180とから成る。
【0061】
図2及び図10に示すように、リヤスライダ110は、ルーフ11に対して前後スライド可能な部材であって、フロントスライダ50よりも後方に配置されている。このリヤスライダ110は、リヤパネル支持ステー170をルーフ11に対して前後スライド及び上下スイング駆動するものである。リヤパネル支持ステー170は、リヤパネル33を支持する部材である。このリヤパネル支持ステー170の詳細については後述する。
【0062】
リヤスライダ110は、図9に示すように前後一対の横板状のスライド板111,111と左右一対の縦板状のリフトガイド板112,112とからなる。
前後のスライド板111,111は、ガイド溝22aに前後スライド可能に案内される部材である。左右のリフトガイド板112,112は、スライド板111,111から起立した、前後に細長い平板であり、前後一対のピン113,114を有している。リフトガイド板112,112の前部に配置された前部ピン113と、リフトガイド板112,112の後部に配置された後部ピン114は、車幅方向へ延びるように水平に配置されている。左右のリフトガイド板112,112のいずれか一方は、フロントスライダ50へ向かって延びる延長部115を有している。延長部115は、側面から側方へ延びたバネ掛け部116と、延長先端部に形成された長孔117とを有している。この長孔117は、側方に貫通し上下に細長く形成されている。
【0063】
図9及び図10に示すように、スイング部材120は、リヤスライダ110からフロントスライダ50へ向かって(特に、リフトガイド板52の後端へ向かって)延びるように、リヤスライダ110の前部ピン113に上下スイング可能に取り付けられた細長い縦板材である。スイング部材120の質量は、フロントスライダ50の質量及びリヤスライダ110の質量よりも小さく設定されている。
【0064】
このスイング部材120は、スイング先端部分にピン121(スイングピン121)を有している。このスイングピン121は、前部ピン113に対して平行に配置され、スイング部材120を貫通して左右両方へ延びるとともに、一方へ延びた部分が緩衝部材122によって覆われている。緩衝部材122は、例えばラバー等の弾性を有したパイプから成る。スイングピン121は、緩衝部材122を介してリヤスライダ110の長孔117に嵌合される。この結果、スイング部材120は、長孔117の範囲内を上下スイング可能である。以下、スイングピン121のことを適宜「スイング先端部121」と言い換えて説明する。
【0065】
図2、図9及び図10に示すように、固定部材130は、全閉位置FSc(図2参照)に位置したときのフロントスライダ50よりも後方に配置され、且つ、リヤスライダ110よりも前方に配置されて、右のフランジ22bに取り付けられている。この結果、固定部材130は、左の側部フレーム部材22を介してルーフ11に固定される。この固定部材130は、縦板状の部材であり、ガイド溝22aに臨む側面にロック用溝131を有している。
【0066】
ロック用溝131の全体形状は、側方(車幅方向)から見たときに概ね弓形状である。つまり、ロック用溝131は、一端132(後端132)がスイング先端部121に臨むように開放された略円弧状の溝である。詳しく述べると、ロック用溝131の一端132は、スイング先端部121が出入り可能に開放されている。ロック用溝131の他端133(上端133)は開放された構成、または、閉鎖された構成であり、一端132よりも上位に配置されている。ロック用溝131は、開放された一端132に連通した略水平な横溝部134と、この横溝部134に連通して上方へ湾曲しつつ延びた円弧状のコーナ溝部135と、このコーナ溝部135に連通して他端133まで延びた略縦長の縦溝部136とから成る。スイング部材120は、スイング先端部121をロック用溝131に掛けることが可能である。
【0067】
付勢部材141は、ロック用溝131に対してスイング部材120を掛ける方向Up(上方)に付勢する部材であり、例えば、リヤスライダ110のバネ掛け部116に掛けられた「ねじりコイルばね」から成る。
図9に示すように、これらのスイング部材120と固定部材130と付勢部材141の組合せ構造は、リヤ全閉ロック部161を成す。リヤ全閉ロック部161は、リヤスライダ110を所定のリヤパネル全閉位置RSc(図10(b)参照)において停止状態に保つようにロックするものである。
【0068】
図9及び図10に示すように、スライダ連結部150は、フロントスライダ50におけるリフトガイド板52の後端部に設けられた連結溝から成る。以下、スライダ連結部150のことを適宜「連結溝150」と言い換えて説明する。
【0069】
連結溝150の全体形状は、側方(車幅方向)から見たときに概ね弓形状であり、しかも、ロック用溝131に対して概ね上下反転した形状である。つまり、連結溝150は、一端151(後端151)がスイング先端部121に臨むように開放された略円弧状の溝である。詳しく述べると、連結溝150の一端151は、スイング先端部121が出入り可能に開放されている。連結溝150の他端152(下端152)は閉鎖された構成であり、一端151よりも下位に配置されるとともに、ロック用溝131の一端132及び横溝部134と同じ高さに設定されている。連結溝150は、開放された一端151に連通した略水平な横溝部153と、この横溝部153に連通して下方へ湾曲しつつ延びた円弧状のコーナ溝部154と、このコーナ溝部154に連通して他端152まで延びた略縦長の縦溝部155とから成る。
【0070】
次に、フロントスライダ50とリヤスライダ110の連動関係について、図2〜図4を参照しながら、図10〜図12に基づき説明する。なお、図11及び図12では、説明の理解を容易にするために、図10と同様にリヤスライダ110周りの構成を(a)と(b)と(c)とに分けて示している。
【0071】
図2及び図10は、リヤパネル33が所定の全閉位置RPcに位置しているときにおける、リヤスライダ110の位置RScを示している。なお、図2(b)に対して図10(b)が対応している。
この状態において、スイング部材120が付勢部材141に付勢されているので、スイング先端部121はロック用溝131の縦溝部136に嵌合している。つまり、スイング先端部121はロック用溝131に掛けられた状態(ロック状態)にある。このため、リヤ全閉ロック部161(図9参照)は、リヤスライダ110を所定のリヤパネル全閉位置RScにおいて停止状態に保つようにロックしている。スイング部材120は前後方向へ移動できない。しかも、スイング先端部121は長孔117の上端に接することによって、上方へのスイングが規制されている。以下、スイング先端部121がロック用溝131の縦溝部136に掛けられてロックした位置Sroのことを「ロック位置Sro」と言う。
【0072】
その後、フロントスライダ50は全閉位置FScから開方向(矢印Pr方向)にスライドすることによって、図10(c)に示す想像線で示される位置、つまり、ロック位置Sroへ到達する。この結果、連結溝150の一端151に、スイング先端部121が入り込む。その後にフロントスライダ50が更に開方向にスライドした状態を図3及び図11に示す。
【0073】
図3及び図11は、フロントスライダ50が全閉位置FScから開方向にスライドして所定の半開位置FShへ到達した状態を示している。なお、図3(b)に対して図11(b)が対応し、図3(c)に対して図11(c)が対応している。
フロントスライダ50が半開位置FShへ達したときに、フロントパネル32も所定の半開位置FPhへ達する。フロントスライダ50が全閉位置FScから半開位置FShまでスライドしたときに、連結溝150は、スイング先端部121をロック用溝131から離脱させるように案内するとともに、案内したスイング先端部121を掛け止める。つまり、スイング部材120は、付勢部材141の付勢力に抗して、長孔117の下端近くまで下方にスイングする。
【0074】
言い換えると、フロントスライダ50が矢印Pr方向へ移動することによって、連結溝150における円弧状のコーナ溝部154は、スイング先端部121を下方へ案内する。つまり、スイング部材120は下方にスイングする。この結果、スイング先端部121は、連結溝150における横溝部153から縦溝部155まで変位する。同時に、スイング先端部121は、ロック用溝131における縦溝部136から横溝部134まで変位することになる。従って、リヤ全閉ロック部161のロック状態が解除されるとともに、フロントスライダ50にリヤスライダ110が連結される。この状態において、図11(c)に示すように、スイング先端部121は水平よりも若干下がった状態にある。以下、スイング先端部121がロック用溝131の横溝部134に嵌合されてアンロックした位置Sunのことを「アンロック位置Sun」と言う。
【0075】
その後、フロントスライダ50が更に開方向にスライドすることによって、フロントスライダ50はスイング部材120と前部ピン113を介してリヤスライダ110を後方にスライド駆動する。フロントスライダ50が更に開方向へ移動した結果を図12に示す。
【0076】
図12は、フロントスライダ50が半開位置FSh(図3参照)から開方向へ更にスライドした状態を示している。スイング先端部121は、ロック用溝131の一端132から抜け出る。その後、図4に示すように、フロントスライダ50が全開位置FSoまでスライドすることによって、リヤスライダ110も全開位置RSoまでスライドする。
フロントスライダ50が全開位置FSoで停止することによって、リヤスライダ110も全開位置RSoで停止する。スイング先端部121は連結溝150に連結された状態を維持する。
【0077】
その後、図4に示すように、フロントスライダ50が全開位置FPoから閉方向(矢印Pf方向)へ戻ったときには、図12に示すように、リヤスライダ110はフロントスライダ50に引かれて前方にスライドする。この結果、スイング先端部121は、ロック用溝131の一端132に入り込む。このように、連結溝150は、スイング先端部121をロック用溝131へ入り込むように案内する。この結果を図3及び図11に示す。
【0078】
図3及び図11に示すように、その後、フロントスライダ50が更に閉方向にスライドすることによって、リヤスライダ110も閉方向にスライドする。このため、連結溝150は、ロック用溝131に入り込んだスイング先端部121を更に前方へ案内する。スイング先端部121は、横溝部134を移動してコーナ溝部135まで前進する。コーナ溝部135に到達したスイング先端部121は、連結溝150によって更に前方へ案内される。このときに、スイング先端部121は、コーナ溝部135に案内されながら、付勢部材141の付勢力によって上昇する。つまり、スイング部材120は上方にスイングする。スイング部材120が一定のスイング角だけスイングしたときに、スイング先端部121は、連結溝150の一端151に位置するとともに、ロック用溝131における縦溝部136に入り込む。この結果を図3及び図10に示す。
【0079】
図3及び図10に示すように、スイング先端部121は、連結溝150から外れるとともに、ロック用溝131によって前後移動が規制される(ロックされる。)。つまり、ロック用溝131は、ロック用溝131に入り込んだスイング先端部121を連結溝150から離脱させてロック状態に移行させるように案内する。
このように、フロントスライダ50が全開位置FSoから閉方向へ移動して半開位置FShへ戻ったときに、フロントスライダ50からリヤスライダ110が離脱するとともに、リヤ全閉ロック部161は元のロック状態に復帰する。その後には、フロントスライダ50だけが全閉位置FSc(図2参照)まで戻り、フロントパネル32を全閉状態に復帰させる。
【0080】
図9に示すように、ロック用溝131と連結溝150の組合せ構造は、スライダ離脱部162を成す。つまり、スライダ離脱部162は、ロック用溝131と連結溝150によって兼ねた構成である。このスライダ離脱部162は、フロントスライダ50が全開位置FSo(図4参照)から閉方向へ移動して半開位置FSh(図3参照)へ戻ったときに、フロントスライダ50からリヤスライダ110を離脱させるとともに、リヤ全閉ロック部161を元のロック状態に復帰させる。
【0081】
以上の説明をまとめると、次の通りである(図2〜図4、図9、図10参照)。
フロントスライダ50が全閉位置FSc(図2参照)から半開位置FSh(図3参照)へ後退したときに、スライダ連結部150(連結溝150)は、リヤ全閉ロック部161のロック状態を解除させるとともに、フロントスライダ50にリヤスライダ110を連結させる。この結果、フロントスライダ50とリヤスライダ110は直接に連動して、全開位置FSo,RSo(図4参照)まで後退することができる。このため、半開状態のフロントパネル32と全閉状態のリヤパネル33を直接に連動させて、全開位置FPo,RPoまで開くことができる。
【0082】
その後、フロントスライダ50が全開位置FSo(図4参照)から半開位置FSh(図3参照)へ前進したときに、スライダ離脱部162は、フロントスライダ50からリヤスライダ110を離脱させるとともに、リヤ全閉ロック部161を元のロック状態に復帰させる。この結果、フロントスライダ50に対してリヤスライダ110は離脱して停止する。その後には、フロントスライダ50だけが更に全閉位置FSc(図2参照)まで前進する。このため、全閉状態のリヤパネル33を停止させた状態で、フロントパネル32だけを全閉位置FPcまで閉じることができる。
【0083】
このように、車両用サンルーフ装置30に、スライダ連結部150とスライダ離脱部162を設けたので、フロントスライダ50の動作に対してリヤスライダ110を直接にタイミング良く連動させるとともに、タイミング良く解除させることができる。この結果、フロントパネル32とリヤパネル33を直接にタイミング良く連動させるとともに、タイミング良く解除させることができる。さらには、ワイヤケーブル37(図1参照)の状態にかかわらず、フロントパネル32とリヤパネル33との連動状態を、より適切な状態で長期にわたって維持することができる。しかも、スライダ連結部150とスライダ離脱部162を設けただけの簡単な構成によって、達成することができる。
【0084】
さらに、図9に示すように、スライダ連結部150は、フロントスライダ50に設けられた連結溝150だけから成る簡単な構成である。また、スライダ離脱部162は、スライダ連結部150の連結溝150とリヤ全閉ロック部161のロック用溝131によって兼ねた、簡単な構成である。このため、部品数が少なく極めて簡単な構成によって、フロントパネル32とリヤパネル33との連動状態を、より適切な状態で長期にわたって維持することができる。
【0085】
さらに、図10に示すように、リヤスライダ110からフロントスライダ50へ向かって延びたスイング部材120と、一端132がスイング先端部121に臨むように開放された略円弧状のロック用溝131と、一端151がスイング先端部121に臨むように開放された略円弧状の連結溝150とを、組み合わせただけの極めて簡単な構成によって、フロントパネル32とリヤパネル33との連動状態を、より適切な状態で長期にわたって維持することができる。
【0086】
さらに、図10に示すように、スイング部材120の質量は、フロントスライダ50の質量及びリヤスライダ110の質量よりも小さく設定されている。このため、フロントスライダ50が全閉位置FSc(図2参照)から後退したときには、先ず、連結溝150が停止中のスイング部材120に当たり、その直後に、連結溝150によってスイング部材120をスイングさせながら、リヤスライダ110を後退させる。スイング部材120の質量が小さいので、連結溝150がスイング部材120に当たったときの衝撃は小さくてすむ。このため、衝突音の発生を抑制することができる。
【0087】
次に、左のリヤパネル駆動機構39におけるリヤスライダ110とリヤパネル支持ステー170とストッパ部材180の関係について説明する。
図13(a)は、リヤパネル33が全閉状態のときの左のリヤパネル駆動機構39を示している。図13(b)は、リヤパネル33が開放する過程を示している。図13(c)は、リヤパネル33が下降完了したときの左のリヤパネル駆動機構39を示している。図14は、リヤパネル支持ステー170及びストッパ部材180周りの要部を示している。
【0088】
図13に示すように、リヤパネル駆動機構39は、全閉状態のリヤパネル33を開くときに、リヤパネル33の前端部33aよりも先の時点に、リヤパネル33の後端部33bをルーフ11の内面11bまで下降させる、つまり、リヤパネル33の後端部33bを下降させつつルーフ11の内面11bに沿って後退させるものである。
【0089】
図9、図13(a)及び図14に示すように、リヤパネル支持ステー170は前後に細長い縦板状の平板から成り、前端部170aの側面及び後端部170bの側面に前後一対のカム溝171,172を有している。前後のカム溝171,172は前後に細長い長孔から成り、リヤパネル支持ステー170を左右貫通している。これらの長孔171,172における長手方向の両端は閉鎖されている。
前端部170aに形成された第1カム溝171は、リヤスライダ110の前部ピン113に嵌合されている。第1カム溝171は、前部ピン113(ガイドピン113)に案内される。後端部170bに形成された第2カム溝172は、リヤスライダ110の後部ピン114に嵌合されている。第2カム溝172は、後部ピン114(ガイドピン114)に案内される。
【0090】
図14に示すように、第1カム溝171は、概ね水平な前側の第1横溝部171aと、第1横溝部171aの後端から後上方へ湾曲しつつ延びた第1傾斜溝部171bと、第1傾斜溝部171bの後端から上方へ湾曲しつつ延びた第1縦溝部171cとから成り、連続している。
第2カム溝172は、概ね水平な前側の第2横溝部172aと、第2横溝部172aの後端から後上方へ湾曲しつつ延びた第2傾斜溝部172bと、第2傾斜溝部172bの後端から上方へ湾曲しつつ延びた第2縦溝部172cとから成り、連続している。
【0091】
第1カム溝171と第2カム溝172の全体形状及び各寸法は、互いに概ね同じであるが、次の点で大きく異なる。第1傾斜溝部171bの傾斜角θ1は、第2傾斜溝部172bの傾斜角θ2よりも小さく設定されている。また、第1カム溝171において、第1傾斜溝部171bの後端と第1縦溝部171cの下端との間の、湾曲したコーナ部分は、半径rcで大きく湾曲している。これに対し、第2カム溝172には、コーナ部分が小さく湾曲している。
【0092】
さらに、図9、図13(a)及び図14に示すように、リヤパネル支持ステー170は、前端部170aからフロントパネル32へ向かって(特に、フロントスライダ50におけるリフトガイド板52の後端へ向かって)延びたステー延長部173を有している。このステー延長部173は、先端部分にピン174を有している。このピン174は、前部ピン113に対して平行に配置されている。以下、ピン174のことを適宜「ステー延長部173の先端部174」と言い換えて説明する。
【0093】
ストッパ部材180は、全閉状態にあるときのリヤパネル33よりも前の位置(フロントパネル32寄りの位置)に配置されて、左のフランジ22bに取り付けられている。この結果、ストッパ部材180は、左の側部フレーム部材22を介してルーフ11に固定される。つまり、ストッパ部材180は、ルーフ11に対し移動が規制されて設けられる。このストッパ部材180は板状の部材であり、ガイド溝22aに臨む側面にガイド溝181を有している。ガイド溝181は、ステー延長部173の先端部174を掛けて案内するための溝である。
【0094】
図14に示すように、ガイド溝181の全体形状は、側方(車幅方向)から見たときに概ね弓形状である。つまり、ガイド溝181は、一端182(後端182)が先端部174に臨むように開放された略円弧状の溝である。詳しく述べると、ガイド溝181の一端182は、リヤパネル33の前端部33aが下降した状態のときに、先端部174が出入り可能に開放されている。ガイド溝181の他端183(上端183)は、ガイド溝181の一端182よりも上位に配置され、リヤパネル33(図2参照)が全閉状態のときに、先端部174が上昇することを規制するように閉鎖されている。
【0095】
ガイド溝181は、開放された一端182に連通した略水平な横溝部184と、この横溝部184に連通して上方へ湾曲しつつ延びた円弧状のコーナ溝部185と、このコーナ溝部185に連通して他端183まで延びた略縦長の縦溝部186とから成る。コーナ溝部185は、横溝部184に連なる下半分の半径r1が大きく、縦溝部186に連なる下半分の半径r2が小さく設定されている。
【0096】
図13及び図14に示すように、前部ピン113と第1カム溝171との組合せ構造は、第1のリヤステー連動部191を成す。また、後部ピン114と第2カム溝172との組合せ構造は、第2のリヤステー連動部192を成す。第1及び第2のリヤステー連動部191,192は、リヤスライダ110の後退に応じて、リヤパネル支持ステー170を下降させつつ後退させるように連動させるものである。
【0097】
ステー延長部173とストッパ部材180との組合せ構造は、規制部193を成す。規制部193は、リヤパネル支持ステー170の後端部170bが下降しつつ後退するときに、リヤパネル支持ステー170の後端部170bよりも遅れて、リヤパネル支持ステー170の前端部170aが下降しつつ後退するように規制するものである。さらに、規制部193は、ステー延長部173のスイング上限を規制するものである。
【0098】
次に、リヤスライダ110とリヤパネル支持ステー170とストッパ部材180の作動関係について説明する(図13、図14参照)。
図13(a)及び図14に示すように、リヤパネル33が全閉状態のときは、リヤスライダ110の前部ピン113は第1カム溝171の第1横溝部171aに嵌合している。また、リヤスライダ110の後部ピン114は第2カム溝172の第2横溝部172aに嵌合している。また、リヤパネル支持ステー170の先端部174は、ガイド溝181の縦溝部186に嵌合するとともに、閉鎖された他端183(閉鎖端183)によって、上方へのスイングが規制されている。
【0099】
その後、リヤスライダ110を後方へ移動させることによって、前部ピン113と後部ピン114も後方へ移動する。第1傾斜溝部171bの傾斜角θ1は、第2傾斜溝部172bの傾斜角θ2よりも小さく設定されている。このため、リヤスライダ110が後方へ移動するにつれて、リヤパネル支持ステー170は前部・後部ピン113,114に案内されて、後端部170bが前端部170aよりも先に下降しつつ後退しようとする。しかも、規制部193は、前端部170aを後端部170bよりも遅れて下降させつつ後退させるように規制する。
【0100】
このため、リヤスライダ110が後方へ移動することにより、後端部170bは、前端部170aよりも先にルーフ11の下方まで下降しながら後退する。従って、図13(b)に示すように、全閉状態のリヤパネル33を開くときに、リヤパネル33の前端部33aよりも先に、リヤパネル33の後端部33bが下降する。
さらには、リヤパネル支持ステー170の先端部174が規制部193によって、上方へのスイングが規制されているので、リヤパネル33の後端部33bが下降するときに、リヤパネル33の前端部33aが上昇することはない。
そして、図13(c)に示すように、リヤパネル33はルーフ11の内面11bまで下降する。このときに、リヤパネル33の後端部33bは、ルーフ開口12の後縁よりも後方へ入り込んだ状態になる。
【0101】
下降が完了した状態において、リヤスライダ110の前部・後部ピン113,114は第1・第2カム溝171,172の縦溝部171c、172c(図14参照)に嵌合する。また、リヤパネル支持ステー170の先端部174は、ガイド溝181の一端182から抜け出る。
【0102】
リヤスライダ110が更に後方へ移動することにより、リヤパネル支持ステー170も後方へ移動する。この結果、リヤパネル33は、ルーフ11の内面11bに沿って後方へ移動して開放する。
【0103】
その後、リヤスライダ110を前方へ移動させることにより、リヤパネル支持ステー170も前方へ移動する。この結果、リヤパネル33は、ルーフ11の内面11bに沿って前方へ移動して、図13(c)に示す状態に戻る。つまり、リヤパネル33は後端部33bだけが、ルーフ開口12の後縁よりも後方へ入り込んだ状態になる。このときに、リヤパネル支持ステー170の先端部174は、ガイド溝181の一端182へ入り込む。
【0104】
リヤスライダ110が更に前方へ移動することにより、リヤパネル支持ステー170の先端部174は、ガイド溝181に案内されて前上方へ移動する。このときに、リヤパネル支持ステー170は前部・後部ピン113,114に案内されて、前端部170aが後端部170bよりも先に上昇しつつ前進する。従って、図13(b)に示すように、リヤパネル33を閉じるときに、前端部33aは後端部33bよりも先に上昇する。リヤパネル33は上昇が完了した結果、図13(a)の全閉状態に戻る。
【0105】
以上の説明をまとめると、次の通りである。
図13に示すように、全閉状態のリヤパネル33を開くときに、リヤパネル駆動機構39によって、リヤパネル33の前端部33aよりも先に、リヤパネル33の後端部33bをルーフ11の内面11bまで下降させることができる。このため、リヤパネル33の後端部33bを下降させつつルーフ11の内面11bに沿って後退させることができる。この結果、リヤパネル33が後退するタイミングを早めることができる。従って、従来のような、リヤパネル33全体を一旦下降させた後に後退させる場合に比べて、リヤパネル33の後端部33bをルーフ11の内面11bに短時間で入り込ませることができる。さらには、リヤパネル33の後端部33bが下降するときに、リヤパネル33の前端部33aが上昇しないように、規制部193によって規制することができる。
【0106】
このように、リヤパネル33の後端部33bをルーフ11の内面11bに短時間で入り込ませるとともに、リヤパネル33の前端部33aが上昇しないように規制することによって、フロントパネル32とリヤパネル33とが互いに干渉することなく、ルーフ開口12を速やかに大きく開閉できる。
【0107】
言い換えると、全閉状態のリヤパネル33がルーフ11の内面11bに沿うように後退するときに、リヤパネル33の前端部33aが上昇しないように規制部193(パネル前端上昇規制部193)で規制しながら、リヤパネル33の後端部33bを下降させることができる。後端部33bが下降するときに前端部33aが上昇しないので、その分だけ、フロントパネル32を後退させてもリヤパネル33に当たる心配はない。後退してきたフロントパネル32が、リヤパネル33の前端部33aの間近まで近づいた時点に、リヤパネル33を開き始めればよい。つまり、リヤパネル33の前端部33aが上昇しない分だけ、リヤパネル33が開き始めるタイミングを遅らせることができる。開き始めタイミングを遅らせることによって、フロントパネル32とリヤパネル33を、全開位置へ同時に到達させることができる。フロントパネル32とリヤパネル33の両方を全開にすることができるので、大きいルーフ開口12を大きく開けることができる。この結果、サンルーフパネル31の全開時における開口量が増大する。
【0108】
さらに、リヤパネル33を支持するリヤパネル支持ステー170に設けられたステー延長部173と、ステー延長部173のスイング上限を規制するストッパ部材180との、組み合わせから成る簡単な構成の規制部193によって、リヤパネル33の前端部33aが上昇しないように確実に規制することができる。
【0109】
しかも、ストッパ部材180が、全閉状態にあるときのリヤパネル33よりも前の位置に、ルーフ11に対し移動が規制されて設けられているので、リヤパネル33の前端部33aが上昇することを、より一層確実に規制することができる。
【0110】
さらには、ストッパ部材180は、リヤパネル33が全閉状態にあるときには、ステー延長部173のスイング上限を規制する他にステー延長部173の前後スライドをも規制し、リヤパネル33の前端部33aが下降した状態のときには、ステー延長部173の前後スライドを許容するように構成されている。
【0111】
従って、リヤパネル33が全閉状態にあるときには、ステー延長部173はストッパ部材180によってスイング上限及び前後スライドが規制される。このため、リヤパネル33の前端部33aを全閉状態に確実に維持させることができる。
一方、リヤパネル33の前端部33aが下降した状態のときには、ステー延長部173は自由に前後スライドできる。このため、リヤパネル33を前後スライドさせることによって、ルーフ開口12を円滑に開閉することができる。
【0112】
さらに、ストッパ部材180は、ステー延長部173の先端部174を案内するための、略円弧状のガイド溝181を有している。略円弧状のガイド溝181は、開放された一端182(開放端182)に対して、閉鎖された他端183(閉鎖端183)が上位に配置されている。このため、リヤパネル33が全閉状態のときには、先端部174は閉鎖端183によって上昇及び前後スライドが規制される。リヤパネル33の前端部33aが下降した状態のときには、先端部174は開放端182から自由に出入りできる。開放端182から出たリヤパネル33を、ルーフ11の内面11bに沿って前後にスライドさせることができる。さらには、略円弧状のガイド溝181によって、先端部174を上限位置の閉鎖端183から下限位置の開放端182の間で極めて円滑に移動させることができる。
【0113】
このように、上端が閉鎖された略円弧状のガイド溝181でステー延長部173の先端部174を案内するようにした、極めて簡単な構成だけで、リヤパネル33の前端部33aの開閉動作を円滑に行わせることができる。
【0114】
さらには、上述のように、全閉状態のリヤパネル33を開くときに、前端部33aよりも先に後端部33bを下降させつつルーフ11の内面11bに沿って後退させる。このため、図13(b)に示すように、全閉状態のリヤパネル33の後端部33bが、下降を開始した降下開始時点Tsから、ルーフ11の内面11bに入り込んだ降下完了時点Teまでの、後端下降時間Tmdを短縮することができる。つまり、従来のような、リヤパネル33全体を一旦下降させた後に後退させる場合に比べて、リヤパネル33の後端部33bをルーフ11の内面11bに、短時間で入り込ませることができる。
【0115】
電動モータ35の負担を軽減するために、リヤパネル33の下降速度を減少させた場合には、リヤパネル33の下降時間が長くなるが、後端下降時間Tmdが短縮されることによって、補うことができる。つまり、降下完了時点Teを基準に考えたときに、後端下降時間Tmdが短縮された分、降下開始時点Tsを遅らせることができる。従って、リヤパネル33の下降開始タイミングを早めなくても、後退中のフロントパネル32が下降中のリヤパネル33に当たる心配はない。
【0116】
また、リヤパネル33の下降開始タイミングを早めないので、リヤパネル33が全開位置RPoへ到達するタイミングが早まることはない。リヤパネル33が全開位置RPoへ到達した時点に、フロントパネル32も全開位置FPoへ到達する。フロントパネル32とリヤパネル33の両方を全開にすることができるので、大きいルーフ開口12であっても大きく開けることができる。この結果、サンルーフパネル31の全開時における開口量が増大するので、乗員にとって開放感や爽快感が増す。
【0117】
しかも、大きいルーフ開口12であるにもかかわらず、全開状態と全閉状態とに速やかに確実に開閉することができる。さらには、リヤパネル33の下降速度及び上昇速度を減少させることができるので、電動モータ35の負担を抑制することができる。
【0118】
さらには、リヤスライダ110とリヤパネル支持ステー170とリヤステー連動部191,192と規制部193の組み合わせから成る、簡単な構成のリヤパネル駆動機構39によって、リヤパネル33を速やかに且つ確実に、下降させつつ後退させることができる。
さらには、ガイドピン113,114とカム溝171,172とから成る、極めて簡単な構成のリヤステー連動部191,192により、リヤスライダ110の後退に応じて、リヤパネル支持ステー170を下降させつつ後退させるように連動させることができる。
さらには、ストッパ部材180のガイド溝181と延長部173とから成る、極めて簡単な構成の規制部193によって、リヤパネル支持ステー170の前端部170aを後端部170bよりも遅れて下降させつつ後退させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の車両用サンルーフ装置30は、小型車を含む各種の乗用車に設けるのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明に係る車両用サンルーフ装置を備えた車両の平面図である。
【図2】図1に示すフロントパネルとリヤパネルが全閉状態にあるときの車両用サンルーフ装置の断面図である。
【図3】図2に示すフロントパネルだけが半開状態にあるときの車両用サンルーフ装置の断面図である。
【図4】図2に示すフロントパネルとリヤパネルが全開状態にあるときの車両用サンルーフ装置の断面図である。
【図5】図2に示された左のフロントパネル駆動機構の分解図である。
【図6】図5に示されたフロントパネル駆動機構の組立図である。
【図7】図5に示されたフロントパネル駆動機構の作用図(その1)である。
【図8】図5に示されたフロントパネル駆動機構の作用図(その2)である。
【図9】図2に示された左のリヤパネル駆動機構の分解図である。
【図10】図9に示されたリヤスライダの前部周りの組立図である。
【図11】図10に示されたリヤスライダの前部周りの作用図(その1)である。
【図12】図10に示されたリヤスライダの前部周りの作用図(その2)である。
【図13】図9に示された左のリヤパネル駆動機構の組立図である。
【図14】図13に示されたリヤパネル支持ステー及びストッパ部材周りの要部構成図である。
【符号の説明】
【0121】
10…車両、11…ルーフ、11a…外面、11b…内面、12…ルーフ開口、30…車両用サンルーフ装置、31…サンルーフパネル、32…フロントパネル、33…リヤパネル、35…電動モータ、37…ワイヤケーブル、39…リヤパネル駆動機構、50…フロントスライダ、110…リヤスライダ、113…ガイドピン(前部ピン)、114…ガイドピン(後部ピン)、170…リヤパネル支持ステー、170a…前端部、170b…後端部、171…カム溝(第1カム溝)、172…カム溝(第2カム溝)、180…ストッパ部材、191…リヤステー連動部(第1のリヤステー連動部)、192…リヤステー連動部(第2のリヤステー連動部)、FPc…フロントパネルの全閉位置、FPh…フロントパネルの半開位置、FPo…フロントパネルの全開位置、FSc…フロントスライダの全閉位置、FSh…フロントスライダの半開位置、FSo…フロントスライダの全開位置、L1…ルーフ開口の開口長さ、RPc…リヤパネルの全閉位置、RPo…リヤパネルの全開位置、RSc…リヤスライダのリヤパネル全閉位置、RSo…リヤスライダのリヤパネル全開位置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のルーフに開けられたルーフ開口を開閉するためのサンルーフパネルが、フロントパネルとリヤパネルの前後2つのパネルから成る車両用サンルーフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用サンルーフ装置において、ルーフ開口の開口量をできるだけ大きくする技術の開発が進められている。1つのサンルーフパネルによってルーフ開口を開閉する方式では、開口量を大きくするのに限界がある。これに対して、サンルーフパネルを細分化する方式が考えられる。しかし、細分化し過ぎると構成が複雑になるので得策ではない。そこで、サンルーフパネルを、フロントパネルとリヤパネルの前後二分割する方式の技術が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実公平4−26254号公報
【0003】
特許文献1に示される、従来の車両用サンルーフ装置は、モータでワイヤケーブル(伝動部材)を押し駆動及び引き駆動することにより、ワイヤケーブルによって、フロントパネルとリヤパネルを別々に開閉させるというものである。詳しく述べると、全閉状態にあるフロントパネルとリヤパネルは次の順序で開く。
先ず、フロントパネルの後端が上方へ傾く(チルトアップ)。
次に、フロントパネルがルーフの外面に沿うように後退して半開位置まで開く。
次に、リヤパネルがルーフの内面の下まで下降する。
最後に、リヤパネルがルーフの内面に沿うように後退して全開位置まで開きながら、フロントパネルがルーフの外面に沿うように後退して全開位置まで開く。
【0004】
上述のように、フロントパネルが後退して所定の半開位置まで開いた時点、つまり、フロントパネルがリヤパネルに近づいた時点に、リヤパネルが開放動作を開始する。このため、全閉状態のフロントパネルとリヤパネルが共に全開状態になるまでの時間(全開移行時間)は、比較的長い。乗員にとって、大きいルーフ開口であっても、できるだけ速やかに開閉できることが好ましい。
【0005】
全開移行時間を短縮するには、次の2つの方法がある。
第1の時間短縮方法は、ワイヤケーブルの移動速度を増大させることである。しかし、モータの負担が増大するので、得策ではない。
【0006】
第2の時間短縮方法は、フロントパネルとリヤパネルが同時に開放動作している時間を、できるだけ長く設定することである。例えば、フロントパネルが開き始めた時点に、リヤパネルをも開き始めるようにする。しかし、リヤパネルは、開き始めるときには一旦下降した後に後退し、逆に、閉じ始めるときには一旦上昇した後に前進する。モータは、フロントパネルの他にリヤパネルをも開閉駆動するので負担が大きいのに、その上、リヤパネルを下降駆動及び上昇駆動させるので、一層負担が増す。これに対して、車両用サンルーフ装置に大出力のモータを搭載することも考えられる。しかし、コストが増すとともに、車両用サンルーフ装置が大型化になり、しかも、電力消費量が増すので得策ではない。
【0007】
モータの負担を軽減するには、リヤパネルの下降速度や上昇速度を減少させることが考えられる。ところが、ワイヤケーブルの移動速度は一定である。リヤパネルを一定距離だけ上下動させるのに必要な、ワイヤケーブルの移動量は、リヤパネルが低速になった分だけ増大してしまう。しかも、モータは、リヤパネルを駆動するワイヤケーブルによって、フロントパネルをも駆動している。フロントパネルの後退速度は変わらない。リヤパネルの下降速度を単に減少させただけでは、後退中のフロントパネルが下降中のリヤパネルに当たる心配がある。
【0008】
パネル同士が当たらないようにするには、リヤパネルが下降するタイミングを早めることが考えられる。タイミングが早まった分、リヤパネルが全開位置へ到達するタイミングも早まる。リヤパネルが全開位置に到達した時点でワイヤケーブルを止めると、フロントパネルは後退途中で停止してしまう。この結果、フロントパネルが全開にならないので、ルーフ開口を全開状態にすることができなくなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、モータの負担を抑制しつつ、フロントパネルとリヤパネルによって大きいルーフ開口を速やかに確実に開閉できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明では、車両のルーフに開けられたルーフ開口を開閉するためのサンルーフパネルが、フロントパネルとリヤパネルの前後2つのパネルから成り、
前記フロントパネルと前記リヤパネルが全閉状態にあるときに、電動モータの駆動力に応じて、前記フロントパネルの後端が上方へ傾いた後に、前記フロントパネルが前記ルーフの外面に沿うように後退して半開状態になり、次に、前記リヤパネルが前記ルーフの内面に沿うように後退するとともに前記フロントパネルが前記ルーフの外面に沿うように後退することによって、全開状態になるようにした車両用サンルーフ装置であって、
全閉状態の前記リヤパネルを開くときに、前記リヤパネルの前端部よりも先に、前記リヤパネルの後端部を下降させつつ前記ルーフの内面に沿って後退させる、リヤパネル駆動機構を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明では、請求項1において、前記リヤパネル駆動機構は、前記ルーフに対して前後スライド可能なリヤスライダと、前記リヤパネルを支持するリヤパネル支持ステーと、前記リヤスライダの後退に応じて、前記リヤパネル支持ステーを下降させつつ後退させるように連動させるリヤステー連動部と、前記リヤパネル支持ステーの後端部が下降しつつ後退するときに、前記リヤパネル支持ステーの後端部よりも遅れて、前記リヤパネル支持ステーの前端部が下降しつつ後退するように規制する規制部とから成ることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明では、請求項2において、前記リヤステー連動部は、前記リヤスライダに有したガイドピンと、前記ガイドピンに案内されるように前記リヤパネル支持ステーに有したカム溝とから成ることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明では、請求項2又は請求項3において、前記規制部は、前記リヤパネル支持ステーから前記フロントパネルへ向かって延びたステー延長部と、前記リヤパネルよりも前の位置で前記ルーフに設けられ、前記ステー延長部の先端部を案内するためのガイド溝を有したストッパ部材とから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、全閉状態のリヤパネルを開くときに、リヤパネルの前端部よりも先に、リヤパネルの後端部を下降させつつルーフの内面に沿って後退させることができる。このため、全閉状態のリヤパネルの後端部が下降を開始した降下開始時点から、リヤパネルの後端部がルーフの内面に入り込んだ降下完了時点までの、後端下降時間を短縮することができる。つまり、従来のような、リヤパネル全体を一旦下降させた後に後退させる場合に比べて、リヤパネルの後端部をルーフの内面に、短時間で入り込ませることができる。
【0015】
モータの負担を軽減するために、リヤパネルの下降速度を減少させた場合には、リヤパネルの下降時間が長くなるが、後端下降時間が短縮されることによって、補うことができる。つまり、降下完了時点を基準に考えたときに、後端下降時間が短縮された分、降下開始時点を遅らせることができる。従って、リヤパネル全体の下降開始タイミングを早めなくても、後退中のフロントパネルが下降中のリヤパネルに当たる心配はない。
【0016】
また、リヤパネルの下降開始タイミングを早めないので、リヤパネルが全開位置へ到達するタイミングが早まることはない。リヤパネルが全開位置へ到達した時点に、フロントパネルも全開位置へ到達する。フロントパネルとリヤパネルの両方を全開にすることができるので、大きいルーフ開口であっても大きく開けることができる。この結果、サンルーフパネルの全開時における開口量が増大するので、乗員にとって開放感や爽快感が増す。
しかも、大きいルーフ開口であるにもかかわらず、全開状態と全閉状態とに速やかに確実に開閉することができる。さらには、リヤパネルの下降速度及び上昇速度を減少させることができるので、モータの負担を抑制することができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、リヤスライダが後退したときに、リヤステー連動部がリヤスライダの後退に応じてリヤパネル支持ステーを下降させつつ後退させる。このときに、規制部は、リヤパネル支持ステーの前端部を後端部よりも遅れて下降させつつ後退させるように規制する。
リヤスライダとリヤパネル支持ステーとリヤステー連動部と規制部の組み合わせから成る、簡単な構成のリヤパネル駆動機構によって、リヤパネルを速やかに且つ確実に、下降させつつ後退させることができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、リヤスライダに有したガイドピンと、リヤパネル支持ステーに有したカム溝とによって、リヤステー連動部が構成される。このため、極めて簡単な構成のリヤステー連動部により、リヤスライダの後退に応じて、リヤパネル支持ステーを下降させつつ後退させるように連動させることができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、リヤパネル支持ステーからフロントパネルへ向かって延びたステー延長部と、このステー延長部の先端部を案内するためにリヤパネルの前に設けられたガイド溝とによって、規制部が構成される。このため、極めて簡単な構成の規制部によって、リヤパネル支持ステーの前端部を後端部よりも遅れて下降させつつ後退させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Leは左側、Riは右側、CLは車幅中心(車体中心)を示す。
【0021】
図1は、車両用サンルーフ装置30を備えた車両10のルーフ11周りを示している。図2(a),(b)は、ルーフ11及び車両用サンルーフ装置30の断面構造を示している。
図1及び図2に示すように、ルーフ11は、内外に貫通したルーフ開口12と、このルーフ開口12を囲うように配置されたルーフ用フレーム20とを有している。
ルーフ用フレーム20は、ルーフ開口12の位置に、フレーム側の開口21を有した平面視略矩形状の枠から成る。このフレーム20は、車体前後方向へ延びる左右一対の側部フレーム部材22,22と、左右の側部フレーム部材22,22の前端同士を結合する前部フレーム部材23と、左右の側部フレーム部材22,22の後端同士を結合する後部フレーム部材24とから成る。
【0022】
車両用サンルーフ装置30は、ルーフ開口12及びフレーム側の開口21をサンルーフパネル31によって開閉するものである。この車両用サンルーフ装置30は、サンルーフパネル31とモータ駆動ユニット34と左右のワイヤケーブル37,37と左右のフロントパネル駆動機構38,38と左右のリヤパネル駆動機構39,39とから成る。
【0023】
サンルーフパネル31は、ルーフ開口12の前半部分を開閉するフロントパネル32と、ルーフ開口12の後半部分を開閉するリヤパネル33の、前後2つのパネルから成る。
モータ駆動ユニット34は、ルーフ用フレーム20の後部に取り付けられており、1つの電動モータ35と、電動モータ35によって駆動される1つの減速機36とから成る。
減速機36は、左右一対のワイヤケーブル37,37を各フロントパネル駆動機構38,38側に引き出し作動するとともに、反対に左右のワイヤケーブル37,37を引き戻し作動するものである。
【0024】
ワイヤケーブル37,37(プッシュプルケーブル37,37)は、減速機36で引き戻されることによって、左右のフロントパネル駆動機構38,38におけるフロントスライダ50,50を後方(矢印Pr方向)へ引き作動する。また、ワイヤケーブル37,37は、減速機36から押し出されることによって、左右のフロントスライダ50,50を前方(矢印Pf方向)へ押し作動する。
【0025】
左右のフロントパネル駆動機構38,38は、フロントパネル32を開閉する機構である。左右のリヤパネル駆動機構39,39は、左右のフロントパネル駆動機構38,38と連動してリヤパネル33を開閉する機構であって、左右のフロントパネル駆動機構38,38よりも後方に配置されている。
このような車両用サンルーフ装置30によれば、フロントパネル32とリヤパネル33を電動モータ35による自動操作モード又は手動操作モードによって、開閉させることができる。
【0026】
車両用サンルーフ装置30は、電動モータ35の駆動力に応じて図2〜図4に示すような開閉作動をする。
図2(a),(b)は、フロントパネル32とリヤパネル33の両方が全閉状態にあるときの車両用サンルーフ装置30を示している。図2(a)に示すように、フロントパネル32とリヤパネル33の両方が全閉状態(クローズ)のときに、各パネル32,33はルーフ開口12に対して次の関係にある。フロントパネル32の前端面は、ルーフ開口12の前端縁にシールされて接している。フロントパネル32の後端面は、リヤパネル33の前端面にシールされて接している。リヤパネル33の後端面は、ルーフ開口12の後端縁にシールされて接している。
以下、全閉状態にあるフロントパネル32の前端面の位置FPcのことを、フロントパネル32の「全閉位置FPc」と言う。また、全閉状態にあるリヤパネル33の前端面の位置RPcのことを、リヤパネル33の「全閉位置RPc」と言う。
【0027】
図3(a)〜(c)は、フロントパネル32だけが半開状態にあるときの車両用サンルーフ装置30を示している。図3(a)に示すように、フロントパネル32が半開状態(ハーフオープン)のときに、フロントパネル32の前端面は位置FPhにある。以下、半開状態にあるフロントパネル32の前端面の位置FPhのことをフロントパネル32の「半開位置FPh」と言う。
【0028】
図4は、フロントパネル32とリヤパネル33の両方が全開状態にあるときの車両用サンルーフ装置30を示している。フロントパネル32とリヤパネル33が共に全開状態(フルオープン)のときに、フロントパネル32の前端面は位置FPoにある。このときに、リヤパネル33の前端面は位置RPoにある。以下、全開状態にあるフロントパネル32の前端面の位置FPoのことを、フロントパネル32の「全開位置FPo」と言う。また、全開状態にあるリヤパネル33の前端面の位置RPoのことを、リヤパネル33の「全開位置RPo」と言う。
【0029】
サンルーフパネル31は、次のように開(オープン)作動する。
今、図2(a)に示すように、フロントパネル32とリヤパネル33の両方が全閉状態にある。その後、例えば図示せぬ操作スイッチを全開操作することによって、電動モータ35(図1参照)は正転する。この結果、先ず、フロントパネル32の後端が上方へ傾く(想像線で示す状態になる)。次に、フロントパネル32がルーフ11の外面11aに沿うように後退して、図3(a)に示すように半開状態になる。次に、リヤパネル33がルーフ11の内面11bに沿うように後退するとともに、フロントパネル32がルーフ11の外面11aに沿うように後退することによって、図4に示すように、全開状態になる。
【0030】
図4に示すように、ルーフ開口12における前端縁(位置FPc)から後端縁までの開口長さはL1である。これに対し、サンルーフパネル31が全開状態にあるときに、ルーフ開口12の前端縁(位置FPc)からフロントパネル32の前端面(位置FPo)までの離間寸法はL2である。従って、ルーフ開口12の開口率Ro(%)は、次の式によって求められる。
Ro=(L2/L1)×100
【0031】
サンルーフパネル31は、次のように閉作動(クローズ)する。
今、図4に示すように、フロントパネル32とリヤパネル33の両方が全開状態にある。その後、例えば図示せぬ操作スイッチを全閉操作することによって、電動モータ35(図1参照)は逆転する。この結果、先ず、リヤパネル33がルーフ11の内面11bに沿うように前進するとともに、フロントパネル32がルーフ11の外面11aに沿うように前進する。この結果、図3(a)に示すように、リヤパネル33が元の全閉状態になるとともに、フロントパネル32が半開状態になる。次に、フロントパネル32がルーフ11の外面11aに沿うように更に前進して、図2(a)に示す元の全閉位置に戻る。次に、フロントパネル32は傾いている状態の後端を元の高さまで戻すことで閉じる。
【0032】
ここで、次のように定義する。フロントパネル32の後端を、上方へ傾けることを「チルトアップ」という。フロントパネル32の後端が上限まで傾いたことを「チルトアップ完了」という。一方、上方へ傾けられているフロントパネル32の後端を下げて、元の高さまで戻すことを「チルトダウン」という。フロントパネル32の後端が元の高さまで戻ったことを「チルトダウン完了」という。
フロントパネル32やリヤパネル33を後方にスライドさせて開くことを「スライド開」という。後方へのスライドが完了したことを「スライド全開」という。フロントパネル32やリヤパネル33を前方にスライドさせて閉じることを「スライド閉」という。前方へのスライドが完了したことを「スライド全閉」という。
【0033】
次に、左の側部フレーム部材22及び左のフロントパネル駆動機構38について説明する。なお、右の側部フレーム部材22及び右のフロントパネル駆動機構38については、左と同様の構成(左右対称の構成)なので、説明を省略する。
図5は、図2に示された左のフロントパネル駆動機構38を分解して示している。図6は、図5に示された左のフロントパネル駆動機構38の組立構成を示している。なお、図6では、説明の理解を容易にするために、フロントパネル駆動機構38の構成を(a)と(b)とに分けて示している。
【0034】
図5に示すように、左の側部フレーム部材22は、前後方向に延びるガイド溝22aを有している。ガイド溝22aは、上が開放されるとともに、開放された左右の縁にフランジ22b,22bを有している。
【0035】
図5及び図6に示すように、左のフロントパネル駆動機構38は、フロントスライダ50とステー用スライダ60と連結リンク70とストッパ部材80とフロントパネル支持ステー90と引き込みアーム100とからなる。
【0036】
フロントスライダ50は、ルーフ11に対して前後スライド可能な部材であって、横板状のスライド板51と縦板状のリフトガイド板52とからなる。スライド板51は、ガイド溝22aに前後スライド可能に案内される部材であって、前部に係合溝53を有している。係合溝53は、上が開放されるとともに車幅方向に延びている。リフトガイド板52は、スライド板51から起立した、前後に細長い平板であり、側面に形成されたリフトガイド溝54と、後端部から側方へ延びたアーム掛け凸部55とを有している。リフトガイド溝54は、後方へ下がり勾配となるように形成された傾斜溝である。なお、リフトガイド溝54は、車幅方向に貫通した長孔であってもよい。
【0037】
ステー用スライダ60は、フロントスライダ50よりも前方に配置され、ルーフ11に対して前後スライド可能な部材である。このステー用スライダ60は、ガイド溝22aに前後スライド可能に配置された前後に細長い部材であって、後部から側方へ延びた連結ピン61と、前端に形成された支持凹部62と、側面に形成されたスイングガイド溝63とを有している。
【0038】
連結リンク70は、フロントスライダ50とステー用スライダ60とを連結可能な、前後に細長い部材である。この連結リンク70は、後下部の側面から側方へ延びた第1係合凸部71と、後上部の側面から側方へ延びた第2係合凸部72と、前部の側面に形成された連結孔73とを有している。第1係合凸部71は、フロントスライダ50の係合溝53に係合可能である。第1係合凸部71に対して、第2係合凸部72は同方向へ延びている。連結孔73は、ステー用スライダ60の連結ピン61に嵌合している。
【0039】
ストッパ部材80は、ステー用スライダ60よりも後方に配置されて、左のフランジ22bに取り付けられた、前後に細長い部材である。このストッパ部材80は、下面にカム溝81を有するとともに、上面にカム山82を有している。
カム溝81は、側部フレーム部材22のガイド溝22aに臨んでいる。このカム溝81は、連結リンク70の第1係合凸部71に係合可能である。カム山82の面は、ストッパ部材80の前端側が頂部であり、この頂部から後方へ向かって下がる勾配面に形成されている。このカム山82の面は、連結リンク70の第2係合凸部72に係合可能である。
【0040】
フロントパネル支持ステー90は、ルーフ11に対して前後スライド可能で且つ上下スイング可能であって、フロントパネル32を支持する部材である。このフロントパネル支持ステー90は、前後に細長く形成されており、前端部から側方へ延びるスイングピン91と、スイングピン91よりも後方において側方へ延びるガイドピン92と、ガイドピン92よりも後方において側方へ延びるリフトピン93と、後端部から側方へ延びる係合ピン94とを有している。
【0041】
スイングピン91は、ステー用スライダ60の支持凹部62に嵌合される。ガイドピン92は、ステー用スライダ60のスイングガイド溝63に嵌合される。リフトピン93は、フロントスライダ50のリフトガイド溝54に嵌合される。リフトガイド溝54と、このリフトガイド溝54に案内されて移動可能なリフトピン93との組合せ構造は、スイングガイド機構96を成す。
【0042】
以上の構成であるから、フロントパネル支持ステー90は、前端のスイングピン91をスイング基端として、上下スイング可能である。フロントスライダ50が前後にスライドしたときに、リフトガイド溝54にリフトピン93が案内されることによって、フロントパネル支持ステー90は上下スイング駆動される。このように、フロントスライダ50は、スイングガイド機構96を介して、フロントパネル支持ステー90の後端を上下スイングさせることができる。
【0043】
引き込みアーム100は、前後に細長い部材であって、前端部がフロントスライダ50のアーム掛け凸部55に掛けられ、後端部の側面に引き込み溝101を有している。引き込み溝101は、前端が開放するとともに、後方へ下がり勾配となるように形成された傾斜溝であって、フロントパネル支持ステー90の係合ピン94が嵌合可能である。
【0044】
この引き込み溝101は、次の2つの機能を有している。
第1の機能は、フロントパネル32を開けるときであって、フロントパネル32の後端を上方へ傾け始めるときに、係合ピン94(フロントパネル支持ステー90の後端部)を上方へ案内するとともに支えることである。
第2の機能は、フロントパネル32を閉じるときであって、傾けられている状態の後端を元の高さまで戻し終わるころに、フロントパネル支持ステー90の後端部を支えつつ下方へ引き込むことである。
第1及び第2の機能を有しているので、フロントパネル32を上下スイングさせたときに、走行風の影響によってフロントパネル32が上下にふらつくことを防止できる。
【0045】
フロントスライダ50に対して、引き込みアーム100を別部材によって構成した理由は、次の通りである。つまり、フロントパネル32を後方にスライドさせて全開にしたときに、引き込みアーム100の後端がフレーム側の開口21(図1参照)の後縁に当たり得る。後縁に当たった引き込みアーム100は、圧縮コイルばね102の弾発力に抗して前方へ移動可能である。従って、開口21の後縁に対して、フロントスライダ50及び引き込みアーム100が干渉することはない。これが、フロントスライダ50に対して、引き込みアーム100を別部材によって構成した理由である。
【0046】
次に、フロントパネル駆動機構38の作用を、図2〜図4を参照しながら図6〜図8に基づいて説明する。なお、図7及び図8では、説明の理解を容易にするために、図6と同様にフロントパネル駆動機構38の構成を(a)と(b)とに分けて示している。
【0047】
図6は、フロントパネル32が全閉状態であるときのフロントパネル駆動機構38を示している。図2(a)及び図6(a)に示すように、全閉状態において、フロントパネル支持ステー90は最も下がった位置にある。フロントパネル支持ステー90は、リフトピン93がリフトガイド溝54における後部にあり、係合ピン94が引き込み溝101の後部にある。
【0048】
図6(b)に示すように、連結リンク70の第2係合凸部72は、ストッパ部材80のカム山82における頂部の近傍に接している。このため、第1係合凸部71は、ストッパ部材80のカム溝81に嵌っているとともに、下部が下方へ突出している。
一方、フロントスライダ50は、ステー用スライダ60に接近した位置にある。このため、フロントスライダ50の係合溝53は、ストッパ部材80よりも前方の位置にある。
【0049】
その後、例えば図示せぬ操作スイッチを全開操作すると、電動モータ35(図1参照)は正転してワイヤケーブル37を引き戻す。ワイヤケーブル37は、フロントスライダ50を後方(矢印Pr方向)に引いてスライドさせる。この結果、係合溝53は、第1係合凸部71に接近する。同時に、リフトガイド溝54及び引き込み溝101は後方へ移動する。フロントパネル支持ステー90は、スイングピン91をスイング基端として、後端部が上方にスイングする。フロントパネル32の後端は上方にスイングする(チルトアップする)。この結果を図7に示す。
【0050】
図7は、フロントパネル32の後端が上限まで上方へ傾いているときの(チルトアップ完了状態における)、フロントパネル駆動機構38を示している。図7(a)に示すように、フロントパネル支持ステー90は、リフトピン93がリフトガイド溝54における前部にあり、係合ピン94が引き込み溝101から抜け出て上方の位置にある。このときに、係合溝53は、カム溝81から下方へ突出している第1係合凸部71に係合する。
その後、ワイヤケーブル37はフロントスライダ50を、さらに後方にスライドさせる。この結果、係合溝53の前縁が第1係合凸部71に当たることによって、第1係合凸部71はカム溝81から抜け出て係合溝53に嵌る。この結果を図8に示す。
【0051】
図8は、フロントパネル32の後端が上方へ傾いた状態で後方へ移動を開始するときの、フロントパネル駆動機構38を示している。図8(a)に示す状態は、上記図7(a)に示す状態と、ほぼ同じである。図8(b)は、第1係合凸部71がカム溝81から外れて係合溝53に嵌ったことによって、フロントスライダ50に連結リンク70を介してステー用スライダ60が連結されている状態を示す。この状態において、第2係合凸部72はカム山82における頂部を下降しながら、後方へ移動可能である。
【0052】
その後、ワイヤケーブル37はフロントスライダ50を、さらに後方にスライドさせる。フロントスライダ50に連結リンク70を介して連結されているステー用スライダ60も、後方にスライドする。この結果、フロントパネル32は、フロントスライダ50、ステー用スライダ60及びフロントパネル支持ステー90と共に、全開になるまで後方へ移動する。フロントパネル32が全開になった時点に、電動モータ35(図1参照)は停止する。
【0053】
その後、例えば図示せぬ操作スイッチを全閉操作すると、電動モータ35(図1参照)は逆転してワイヤケーブル37を押し出す。ワイヤケーブル37は、フロントスライダ50を前方(矢印Pf方向)に押してスライドさせる。フロントスライダ50に連結リンク70を介して連結されているステー用スライダ60も、前方にスライドする。この結果、フロントパネル32は、フロントスライダ50、ステー用スライダ60及びフロントパネル支持ステー90と共に前方へ移動する。同時に、連結リンク70における第1・第2係合凸部71,72も前方へ移動する。この結果を図7に示す。
【0054】
図7に示すように、第1係合凸部71がストッパ部材80のカム溝81の真下の位置まで移動したときに、第2係合凸部72はカム山82に案内されて前上方へ移動する。この結果、連結リンク70の後端部が上方にスイングするので、第1係合凸部71はフロントスライダ50の係合溝53から抜け出て、カム溝81に嵌る。
【0055】
この時点において、フロントスライダ50に対する連結リンク70及びステー用スライダ60の連結状態が解除される。フロントスライダ50が、さらに前方にスライドしても、ステー用スライダ60は停止状態を維持する。ステー用スライダ60が停止した時点で、フロントパネル支持ステー90とフロントパネル32は、前方への移動を停止する。つまり、フロントパネル32は、スライドによる元の全閉位置まで前方へ移動したことになる。
【0056】
その後、ワイヤケーブル37はフロントスライダ50を、さらに前方にスライドさせる。このため、リフトガイド溝54及び引き込み溝101は前方へ移動する。フロントパネル支持ステー90のリフトピン93は、リフトガイド溝54に案内されて下降する。フロントパネル支持ステー90は、スイングピン91をスイング基端として、後端部が下方にスイングする。フロントパネル32の後端は下方にスイングする(チルトダウンする)。この結果を図6に示す。
【0057】
図6(a)に示すように、リフトピン93がリフトガイド溝54に案内されて最下端まで下降した時点で、フロントパネル支持ステー90のスイングは停止する。この結果、フロントパネル32は元の全閉状態に戻る。その後に、電動モータ35(図1参照)は停止する。
【0058】
次に、左の側部フレーム部材22及び左のリヤパネル駆動機構39(図2参照)について説明する。なお、右の側部フレーム部材22及び右のリヤパネル駆動機構39については、左と同様の構成(左右対称の構成)なので、説明を省略する。
【0059】
図9は、図2に示された左のリヤパネル駆動機構39を分解して示している。図10は、図2に示されたリヤパネル駆動機構39におけるリヤスライダ110前部周りの組立構成を示している。なお、図10では、説明の理解を容易にするために、リヤスライダ110周りの構成を(a)と(b)と(c)とに分けて示している。
【0060】
図9に示すように、左のリヤパネル駆動機構39は、リヤスライダ110とスイング部材120と固定部材130と付勢部材141とスライダ連結部150とリヤパネル支持ステー170とストッパ部材180とから成る。
【0061】
図2及び図10に示すように、リヤスライダ110は、ルーフ11に対して前後スライド可能な部材であって、フロントスライダ50よりも後方に配置されている。このリヤスライダ110は、リヤパネル支持ステー170をルーフ11に対して前後スライド及び上下スイング駆動するものである。リヤパネル支持ステー170は、リヤパネル33を支持する部材である。このリヤパネル支持ステー170の詳細については後述する。
【0062】
リヤスライダ110は、図9に示すように前後一対の横板状のスライド板111,111と左右一対の縦板状のリフトガイド板112,112とからなる。
前後のスライド板111,111は、ガイド溝22aに前後スライド可能に案内される部材である。左右のリフトガイド板112,112は、スライド板111,111から起立した、前後に細長い平板であり、前後一対のピン113,114を有している。リフトガイド板112,112の前部に配置された前部ピン113と、リフトガイド板112,112の後部に配置された後部ピン114は、車幅方向へ延びるように水平に配置されている。左右のリフトガイド板112,112のいずれか一方は、フロントスライダ50へ向かって延びる延長部115を有している。延長部115は、側面から側方へ延びたバネ掛け部116と、延長先端部に形成された長孔117とを有している。この長孔117は、側方に貫通し上下に細長く形成されている。
【0063】
図9及び図10に示すように、スイング部材120は、リヤスライダ110からフロントスライダ50へ向かって(特に、リフトガイド板52の後端へ向かって)延びるように、リヤスライダ110の前部ピン113に上下スイング可能に取り付けられた細長い縦板材である。スイング部材120の質量は、フロントスライダ50の質量及びリヤスライダ110の質量よりも小さく設定されている。
【0064】
このスイング部材120は、スイング先端部分にピン121(スイングピン121)を有している。このスイングピン121は、前部ピン113に対して平行に配置され、スイング部材120を貫通して左右両方へ延びるとともに、一方へ延びた部分が緩衝部材122によって覆われている。緩衝部材122は、例えばラバー等の弾性を有したパイプから成る。スイングピン121は、緩衝部材122を介してリヤスライダ110の長孔117に嵌合される。この結果、スイング部材120は、長孔117の範囲内を上下スイング可能である。以下、スイングピン121のことを適宜「スイング先端部121」と言い換えて説明する。
【0065】
図2、図9及び図10に示すように、固定部材130は、全閉位置FSc(図2参照)に位置したときのフロントスライダ50よりも後方に配置され、且つ、リヤスライダ110よりも前方に配置されて、右のフランジ22bに取り付けられている。この結果、固定部材130は、左の側部フレーム部材22を介してルーフ11に固定される。この固定部材130は、縦板状の部材であり、ガイド溝22aに臨む側面にロック用溝131を有している。
【0066】
ロック用溝131の全体形状は、側方(車幅方向)から見たときに概ね弓形状である。つまり、ロック用溝131は、一端132(後端132)がスイング先端部121に臨むように開放された略円弧状の溝である。詳しく述べると、ロック用溝131の一端132は、スイング先端部121が出入り可能に開放されている。ロック用溝131の他端133(上端133)は開放された構成、または、閉鎖された構成であり、一端132よりも上位に配置されている。ロック用溝131は、開放された一端132に連通した略水平な横溝部134と、この横溝部134に連通して上方へ湾曲しつつ延びた円弧状のコーナ溝部135と、このコーナ溝部135に連通して他端133まで延びた略縦長の縦溝部136とから成る。スイング部材120は、スイング先端部121をロック用溝131に掛けることが可能である。
【0067】
付勢部材141は、ロック用溝131に対してスイング部材120を掛ける方向Up(上方)に付勢する部材であり、例えば、リヤスライダ110のバネ掛け部116に掛けられた「ねじりコイルばね」から成る。
図9に示すように、これらのスイング部材120と固定部材130と付勢部材141の組合せ構造は、リヤ全閉ロック部161を成す。リヤ全閉ロック部161は、リヤスライダ110を所定のリヤパネル全閉位置RSc(図10(b)参照)において停止状態に保つようにロックするものである。
【0068】
図9及び図10に示すように、スライダ連結部150は、フロントスライダ50におけるリフトガイド板52の後端部に設けられた連結溝から成る。以下、スライダ連結部150のことを適宜「連結溝150」と言い換えて説明する。
【0069】
連結溝150の全体形状は、側方(車幅方向)から見たときに概ね弓形状であり、しかも、ロック用溝131に対して概ね上下反転した形状である。つまり、連結溝150は、一端151(後端151)がスイング先端部121に臨むように開放された略円弧状の溝である。詳しく述べると、連結溝150の一端151は、スイング先端部121が出入り可能に開放されている。連結溝150の他端152(下端152)は閉鎖された構成であり、一端151よりも下位に配置されるとともに、ロック用溝131の一端132及び横溝部134と同じ高さに設定されている。連結溝150は、開放された一端151に連通した略水平な横溝部153と、この横溝部153に連通して下方へ湾曲しつつ延びた円弧状のコーナ溝部154と、このコーナ溝部154に連通して他端152まで延びた略縦長の縦溝部155とから成る。
【0070】
次に、フロントスライダ50とリヤスライダ110の連動関係について、図2〜図4を参照しながら、図10〜図12に基づき説明する。なお、図11及び図12では、説明の理解を容易にするために、図10と同様にリヤスライダ110周りの構成を(a)と(b)と(c)とに分けて示している。
【0071】
図2及び図10は、リヤパネル33が所定の全閉位置RPcに位置しているときにおける、リヤスライダ110の位置RScを示している。なお、図2(b)に対して図10(b)が対応している。
この状態において、スイング部材120が付勢部材141に付勢されているので、スイング先端部121はロック用溝131の縦溝部136に嵌合している。つまり、スイング先端部121はロック用溝131に掛けられた状態(ロック状態)にある。このため、リヤ全閉ロック部161(図9参照)は、リヤスライダ110を所定のリヤパネル全閉位置RScにおいて停止状態に保つようにロックしている。スイング部材120は前後方向へ移動できない。しかも、スイング先端部121は長孔117の上端に接することによって、上方へのスイングが規制されている。以下、スイング先端部121がロック用溝131の縦溝部136に掛けられてロックした位置Sroのことを「ロック位置Sro」と言う。
【0072】
その後、フロントスライダ50は全閉位置FScから開方向(矢印Pr方向)にスライドすることによって、図10(c)に示す想像線で示される位置、つまり、ロック位置Sroへ到達する。この結果、連結溝150の一端151に、スイング先端部121が入り込む。その後にフロントスライダ50が更に開方向にスライドした状態を図3及び図11に示す。
【0073】
図3及び図11は、フロントスライダ50が全閉位置FScから開方向にスライドして所定の半開位置FShへ到達した状態を示している。なお、図3(b)に対して図11(b)が対応し、図3(c)に対して図11(c)が対応している。
フロントスライダ50が半開位置FShへ達したときに、フロントパネル32も所定の半開位置FPhへ達する。フロントスライダ50が全閉位置FScから半開位置FShまでスライドしたときに、連結溝150は、スイング先端部121をロック用溝131から離脱させるように案内するとともに、案内したスイング先端部121を掛け止める。つまり、スイング部材120は、付勢部材141の付勢力に抗して、長孔117の下端近くまで下方にスイングする。
【0074】
言い換えると、フロントスライダ50が矢印Pr方向へ移動することによって、連結溝150における円弧状のコーナ溝部154は、スイング先端部121を下方へ案内する。つまり、スイング部材120は下方にスイングする。この結果、スイング先端部121は、連結溝150における横溝部153から縦溝部155まで変位する。同時に、スイング先端部121は、ロック用溝131における縦溝部136から横溝部134まで変位することになる。従って、リヤ全閉ロック部161のロック状態が解除されるとともに、フロントスライダ50にリヤスライダ110が連結される。この状態において、図11(c)に示すように、スイング先端部121は水平よりも若干下がった状態にある。以下、スイング先端部121がロック用溝131の横溝部134に嵌合されてアンロックした位置Sunのことを「アンロック位置Sun」と言う。
【0075】
その後、フロントスライダ50が更に開方向にスライドすることによって、フロントスライダ50はスイング部材120と前部ピン113を介してリヤスライダ110を後方にスライド駆動する。フロントスライダ50が更に開方向へ移動した結果を図12に示す。
【0076】
図12は、フロントスライダ50が半開位置FSh(図3参照)から開方向へ更にスライドした状態を示している。スイング先端部121は、ロック用溝131の一端132から抜け出る。その後、図4に示すように、フロントスライダ50が全開位置FSoまでスライドすることによって、リヤスライダ110も全開位置RSoまでスライドする。
フロントスライダ50が全開位置FSoで停止することによって、リヤスライダ110も全開位置RSoで停止する。スイング先端部121は連結溝150に連結された状態を維持する。
【0077】
その後、図4に示すように、フロントスライダ50が全開位置FPoから閉方向(矢印Pf方向)へ戻ったときには、図12に示すように、リヤスライダ110はフロントスライダ50に引かれて前方にスライドする。この結果、スイング先端部121は、ロック用溝131の一端132に入り込む。このように、連結溝150は、スイング先端部121をロック用溝131へ入り込むように案内する。この結果を図3及び図11に示す。
【0078】
図3及び図11に示すように、その後、フロントスライダ50が更に閉方向にスライドすることによって、リヤスライダ110も閉方向にスライドする。このため、連結溝150は、ロック用溝131に入り込んだスイング先端部121を更に前方へ案内する。スイング先端部121は、横溝部134を移動してコーナ溝部135まで前進する。コーナ溝部135に到達したスイング先端部121は、連結溝150によって更に前方へ案内される。このときに、スイング先端部121は、コーナ溝部135に案内されながら、付勢部材141の付勢力によって上昇する。つまり、スイング部材120は上方にスイングする。スイング部材120が一定のスイング角だけスイングしたときに、スイング先端部121は、連結溝150の一端151に位置するとともに、ロック用溝131における縦溝部136に入り込む。この結果を図3及び図10に示す。
【0079】
図3及び図10に示すように、スイング先端部121は、連結溝150から外れるとともに、ロック用溝131によって前後移動が規制される(ロックされる。)。つまり、ロック用溝131は、ロック用溝131に入り込んだスイング先端部121を連結溝150から離脱させてロック状態に移行させるように案内する。
このように、フロントスライダ50が全開位置FSoから閉方向へ移動して半開位置FShへ戻ったときに、フロントスライダ50からリヤスライダ110が離脱するとともに、リヤ全閉ロック部161は元のロック状態に復帰する。その後には、フロントスライダ50だけが全閉位置FSc(図2参照)まで戻り、フロントパネル32を全閉状態に復帰させる。
【0080】
図9に示すように、ロック用溝131と連結溝150の組合せ構造は、スライダ離脱部162を成す。つまり、スライダ離脱部162は、ロック用溝131と連結溝150によって兼ねた構成である。このスライダ離脱部162は、フロントスライダ50が全開位置FSo(図4参照)から閉方向へ移動して半開位置FSh(図3参照)へ戻ったときに、フロントスライダ50からリヤスライダ110を離脱させるとともに、リヤ全閉ロック部161を元のロック状態に復帰させる。
【0081】
以上の説明をまとめると、次の通りである(図2〜図4、図9、図10参照)。
フロントスライダ50が全閉位置FSc(図2参照)から半開位置FSh(図3参照)へ後退したときに、スライダ連結部150(連結溝150)は、リヤ全閉ロック部161のロック状態を解除させるとともに、フロントスライダ50にリヤスライダ110を連結させる。この結果、フロントスライダ50とリヤスライダ110は直接に連動して、全開位置FSo,RSo(図4参照)まで後退することができる。このため、半開状態のフロントパネル32と全閉状態のリヤパネル33を直接に連動させて、全開位置FPo,RPoまで開くことができる。
【0082】
その後、フロントスライダ50が全開位置FSo(図4参照)から半開位置FSh(図3参照)へ前進したときに、スライダ離脱部162は、フロントスライダ50からリヤスライダ110を離脱させるとともに、リヤ全閉ロック部161を元のロック状態に復帰させる。この結果、フロントスライダ50に対してリヤスライダ110は離脱して停止する。その後には、フロントスライダ50だけが更に全閉位置FSc(図2参照)まで前進する。このため、全閉状態のリヤパネル33を停止させた状態で、フロントパネル32だけを全閉位置FPcまで閉じることができる。
【0083】
このように、車両用サンルーフ装置30に、スライダ連結部150とスライダ離脱部162を設けたので、フロントスライダ50の動作に対してリヤスライダ110を直接にタイミング良く連動させるとともに、タイミング良く解除させることができる。この結果、フロントパネル32とリヤパネル33を直接にタイミング良く連動させるとともに、タイミング良く解除させることができる。さらには、ワイヤケーブル37(図1参照)の状態にかかわらず、フロントパネル32とリヤパネル33との連動状態を、より適切な状態で長期にわたって維持することができる。しかも、スライダ連結部150とスライダ離脱部162を設けただけの簡単な構成によって、達成することができる。
【0084】
さらに、図9に示すように、スライダ連結部150は、フロントスライダ50に設けられた連結溝150だけから成る簡単な構成である。また、スライダ離脱部162は、スライダ連結部150の連結溝150とリヤ全閉ロック部161のロック用溝131によって兼ねた、簡単な構成である。このため、部品数が少なく極めて簡単な構成によって、フロントパネル32とリヤパネル33との連動状態を、より適切な状態で長期にわたって維持することができる。
【0085】
さらに、図10に示すように、リヤスライダ110からフロントスライダ50へ向かって延びたスイング部材120と、一端132がスイング先端部121に臨むように開放された略円弧状のロック用溝131と、一端151がスイング先端部121に臨むように開放された略円弧状の連結溝150とを、組み合わせただけの極めて簡単な構成によって、フロントパネル32とリヤパネル33との連動状態を、より適切な状態で長期にわたって維持することができる。
【0086】
さらに、図10に示すように、スイング部材120の質量は、フロントスライダ50の質量及びリヤスライダ110の質量よりも小さく設定されている。このため、フロントスライダ50が全閉位置FSc(図2参照)から後退したときには、先ず、連結溝150が停止中のスイング部材120に当たり、その直後に、連結溝150によってスイング部材120をスイングさせながら、リヤスライダ110を後退させる。スイング部材120の質量が小さいので、連結溝150がスイング部材120に当たったときの衝撃は小さくてすむ。このため、衝突音の発生を抑制することができる。
【0087】
次に、左のリヤパネル駆動機構39におけるリヤスライダ110とリヤパネル支持ステー170とストッパ部材180の関係について説明する。
図13(a)は、リヤパネル33が全閉状態のときの左のリヤパネル駆動機構39を示している。図13(b)は、リヤパネル33が開放する過程を示している。図13(c)は、リヤパネル33が下降完了したときの左のリヤパネル駆動機構39を示している。図14は、リヤパネル支持ステー170及びストッパ部材180周りの要部を示している。
【0088】
図13に示すように、リヤパネル駆動機構39は、全閉状態のリヤパネル33を開くときに、リヤパネル33の前端部33aよりも先の時点に、リヤパネル33の後端部33bをルーフ11の内面11bまで下降させる、つまり、リヤパネル33の後端部33bを下降させつつルーフ11の内面11bに沿って後退させるものである。
【0089】
図9、図13(a)及び図14に示すように、リヤパネル支持ステー170は前後に細長い縦板状の平板から成り、前端部170aの側面及び後端部170bの側面に前後一対のカム溝171,172を有している。前後のカム溝171,172は前後に細長い長孔から成り、リヤパネル支持ステー170を左右貫通している。これらの長孔171,172における長手方向の両端は閉鎖されている。
前端部170aに形成された第1カム溝171は、リヤスライダ110の前部ピン113に嵌合されている。第1カム溝171は、前部ピン113(ガイドピン113)に案内される。後端部170bに形成された第2カム溝172は、リヤスライダ110の後部ピン114に嵌合されている。第2カム溝172は、後部ピン114(ガイドピン114)に案内される。
【0090】
図14に示すように、第1カム溝171は、概ね水平な前側の第1横溝部171aと、第1横溝部171aの後端から後上方へ湾曲しつつ延びた第1傾斜溝部171bと、第1傾斜溝部171bの後端から上方へ湾曲しつつ延びた第1縦溝部171cとから成り、連続している。
第2カム溝172は、概ね水平な前側の第2横溝部172aと、第2横溝部172aの後端から後上方へ湾曲しつつ延びた第2傾斜溝部172bと、第2傾斜溝部172bの後端から上方へ湾曲しつつ延びた第2縦溝部172cとから成り、連続している。
【0091】
第1カム溝171と第2カム溝172の全体形状及び各寸法は、互いに概ね同じであるが、次の点で大きく異なる。第1傾斜溝部171bの傾斜角θ1は、第2傾斜溝部172bの傾斜角θ2よりも小さく設定されている。また、第1カム溝171において、第1傾斜溝部171bの後端と第1縦溝部171cの下端との間の、湾曲したコーナ部分は、半径rcで大きく湾曲している。これに対し、第2カム溝172には、コーナ部分が小さく湾曲している。
【0092】
さらに、図9、図13(a)及び図14に示すように、リヤパネル支持ステー170は、前端部170aからフロントパネル32へ向かって(特に、フロントスライダ50におけるリフトガイド板52の後端へ向かって)延びたステー延長部173を有している。このステー延長部173は、先端部分にピン174を有している。このピン174は、前部ピン113に対して平行に配置されている。以下、ピン174のことを適宜「ステー延長部173の先端部174」と言い換えて説明する。
【0093】
ストッパ部材180は、全閉状態にあるときのリヤパネル33よりも前の位置(フロントパネル32寄りの位置)に配置されて、左のフランジ22bに取り付けられている。この結果、ストッパ部材180は、左の側部フレーム部材22を介してルーフ11に固定される。つまり、ストッパ部材180は、ルーフ11に対し移動が規制されて設けられる。このストッパ部材180は板状の部材であり、ガイド溝22aに臨む側面にガイド溝181を有している。ガイド溝181は、ステー延長部173の先端部174を掛けて案内するための溝である。
【0094】
図14に示すように、ガイド溝181の全体形状は、側方(車幅方向)から見たときに概ね弓形状である。つまり、ガイド溝181は、一端182(後端182)が先端部174に臨むように開放された略円弧状の溝である。詳しく述べると、ガイド溝181の一端182は、リヤパネル33の前端部33aが下降した状態のときに、先端部174が出入り可能に開放されている。ガイド溝181の他端183(上端183)は、ガイド溝181の一端182よりも上位に配置され、リヤパネル33(図2参照)が全閉状態のときに、先端部174が上昇することを規制するように閉鎖されている。
【0095】
ガイド溝181は、開放された一端182に連通した略水平な横溝部184と、この横溝部184に連通して上方へ湾曲しつつ延びた円弧状のコーナ溝部185と、このコーナ溝部185に連通して他端183まで延びた略縦長の縦溝部186とから成る。コーナ溝部185は、横溝部184に連なる下半分の半径r1が大きく、縦溝部186に連なる下半分の半径r2が小さく設定されている。
【0096】
図13及び図14に示すように、前部ピン113と第1カム溝171との組合せ構造は、第1のリヤステー連動部191を成す。また、後部ピン114と第2カム溝172との組合せ構造は、第2のリヤステー連動部192を成す。第1及び第2のリヤステー連動部191,192は、リヤスライダ110の後退に応じて、リヤパネル支持ステー170を下降させつつ後退させるように連動させるものである。
【0097】
ステー延長部173とストッパ部材180との組合せ構造は、規制部193を成す。規制部193は、リヤパネル支持ステー170の後端部170bが下降しつつ後退するときに、リヤパネル支持ステー170の後端部170bよりも遅れて、リヤパネル支持ステー170の前端部170aが下降しつつ後退するように規制するものである。さらに、規制部193は、ステー延長部173のスイング上限を規制するものである。
【0098】
次に、リヤスライダ110とリヤパネル支持ステー170とストッパ部材180の作動関係について説明する(図13、図14参照)。
図13(a)及び図14に示すように、リヤパネル33が全閉状態のときは、リヤスライダ110の前部ピン113は第1カム溝171の第1横溝部171aに嵌合している。また、リヤスライダ110の後部ピン114は第2カム溝172の第2横溝部172aに嵌合している。また、リヤパネル支持ステー170の先端部174は、ガイド溝181の縦溝部186に嵌合するとともに、閉鎖された他端183(閉鎖端183)によって、上方へのスイングが規制されている。
【0099】
その後、リヤスライダ110を後方へ移動させることによって、前部ピン113と後部ピン114も後方へ移動する。第1傾斜溝部171bの傾斜角θ1は、第2傾斜溝部172bの傾斜角θ2よりも小さく設定されている。このため、リヤスライダ110が後方へ移動するにつれて、リヤパネル支持ステー170は前部・後部ピン113,114に案内されて、後端部170bが前端部170aよりも先に下降しつつ後退しようとする。しかも、規制部193は、前端部170aを後端部170bよりも遅れて下降させつつ後退させるように規制する。
【0100】
このため、リヤスライダ110が後方へ移動することにより、後端部170bは、前端部170aよりも先にルーフ11の下方まで下降しながら後退する。従って、図13(b)に示すように、全閉状態のリヤパネル33を開くときに、リヤパネル33の前端部33aよりも先に、リヤパネル33の後端部33bが下降する。
さらには、リヤパネル支持ステー170の先端部174が規制部193によって、上方へのスイングが規制されているので、リヤパネル33の後端部33bが下降するときに、リヤパネル33の前端部33aが上昇することはない。
そして、図13(c)に示すように、リヤパネル33はルーフ11の内面11bまで下降する。このときに、リヤパネル33の後端部33bは、ルーフ開口12の後縁よりも後方へ入り込んだ状態になる。
【0101】
下降が完了した状態において、リヤスライダ110の前部・後部ピン113,114は第1・第2カム溝171,172の縦溝部171c、172c(図14参照)に嵌合する。また、リヤパネル支持ステー170の先端部174は、ガイド溝181の一端182から抜け出る。
【0102】
リヤスライダ110が更に後方へ移動することにより、リヤパネル支持ステー170も後方へ移動する。この結果、リヤパネル33は、ルーフ11の内面11bに沿って後方へ移動して開放する。
【0103】
その後、リヤスライダ110を前方へ移動させることにより、リヤパネル支持ステー170も前方へ移動する。この結果、リヤパネル33は、ルーフ11の内面11bに沿って前方へ移動して、図13(c)に示す状態に戻る。つまり、リヤパネル33は後端部33bだけが、ルーフ開口12の後縁よりも後方へ入り込んだ状態になる。このときに、リヤパネル支持ステー170の先端部174は、ガイド溝181の一端182へ入り込む。
【0104】
リヤスライダ110が更に前方へ移動することにより、リヤパネル支持ステー170の先端部174は、ガイド溝181に案内されて前上方へ移動する。このときに、リヤパネル支持ステー170は前部・後部ピン113,114に案内されて、前端部170aが後端部170bよりも先に上昇しつつ前進する。従って、図13(b)に示すように、リヤパネル33を閉じるときに、前端部33aは後端部33bよりも先に上昇する。リヤパネル33は上昇が完了した結果、図13(a)の全閉状態に戻る。
【0105】
以上の説明をまとめると、次の通りである。
図13に示すように、全閉状態のリヤパネル33を開くときに、リヤパネル駆動機構39によって、リヤパネル33の前端部33aよりも先に、リヤパネル33の後端部33bをルーフ11の内面11bまで下降させることができる。このため、リヤパネル33の後端部33bを下降させつつルーフ11の内面11bに沿って後退させることができる。この結果、リヤパネル33が後退するタイミングを早めることができる。従って、従来のような、リヤパネル33全体を一旦下降させた後に後退させる場合に比べて、リヤパネル33の後端部33bをルーフ11の内面11bに短時間で入り込ませることができる。さらには、リヤパネル33の後端部33bが下降するときに、リヤパネル33の前端部33aが上昇しないように、規制部193によって規制することができる。
【0106】
このように、リヤパネル33の後端部33bをルーフ11の内面11bに短時間で入り込ませるとともに、リヤパネル33の前端部33aが上昇しないように規制することによって、フロントパネル32とリヤパネル33とが互いに干渉することなく、ルーフ開口12を速やかに大きく開閉できる。
【0107】
言い換えると、全閉状態のリヤパネル33がルーフ11の内面11bに沿うように後退するときに、リヤパネル33の前端部33aが上昇しないように規制部193(パネル前端上昇規制部193)で規制しながら、リヤパネル33の後端部33bを下降させることができる。後端部33bが下降するときに前端部33aが上昇しないので、その分だけ、フロントパネル32を後退させてもリヤパネル33に当たる心配はない。後退してきたフロントパネル32が、リヤパネル33の前端部33aの間近まで近づいた時点に、リヤパネル33を開き始めればよい。つまり、リヤパネル33の前端部33aが上昇しない分だけ、リヤパネル33が開き始めるタイミングを遅らせることができる。開き始めタイミングを遅らせることによって、フロントパネル32とリヤパネル33を、全開位置へ同時に到達させることができる。フロントパネル32とリヤパネル33の両方を全開にすることができるので、大きいルーフ開口12を大きく開けることができる。この結果、サンルーフパネル31の全開時における開口量が増大する。
【0108】
さらに、リヤパネル33を支持するリヤパネル支持ステー170に設けられたステー延長部173と、ステー延長部173のスイング上限を規制するストッパ部材180との、組み合わせから成る簡単な構成の規制部193によって、リヤパネル33の前端部33aが上昇しないように確実に規制することができる。
【0109】
しかも、ストッパ部材180が、全閉状態にあるときのリヤパネル33よりも前の位置に、ルーフ11に対し移動が規制されて設けられているので、リヤパネル33の前端部33aが上昇することを、より一層確実に規制することができる。
【0110】
さらには、ストッパ部材180は、リヤパネル33が全閉状態にあるときには、ステー延長部173のスイング上限を規制する他にステー延長部173の前後スライドをも規制し、リヤパネル33の前端部33aが下降した状態のときには、ステー延長部173の前後スライドを許容するように構成されている。
【0111】
従って、リヤパネル33が全閉状態にあるときには、ステー延長部173はストッパ部材180によってスイング上限及び前後スライドが規制される。このため、リヤパネル33の前端部33aを全閉状態に確実に維持させることができる。
一方、リヤパネル33の前端部33aが下降した状態のときには、ステー延長部173は自由に前後スライドできる。このため、リヤパネル33を前後スライドさせることによって、ルーフ開口12を円滑に開閉することができる。
【0112】
さらに、ストッパ部材180は、ステー延長部173の先端部174を案内するための、略円弧状のガイド溝181を有している。略円弧状のガイド溝181は、開放された一端182(開放端182)に対して、閉鎖された他端183(閉鎖端183)が上位に配置されている。このため、リヤパネル33が全閉状態のときには、先端部174は閉鎖端183によって上昇及び前後スライドが規制される。リヤパネル33の前端部33aが下降した状態のときには、先端部174は開放端182から自由に出入りできる。開放端182から出たリヤパネル33を、ルーフ11の内面11bに沿って前後にスライドさせることができる。さらには、略円弧状のガイド溝181によって、先端部174を上限位置の閉鎖端183から下限位置の開放端182の間で極めて円滑に移動させることができる。
【0113】
このように、上端が閉鎖された略円弧状のガイド溝181でステー延長部173の先端部174を案内するようにした、極めて簡単な構成だけで、リヤパネル33の前端部33aの開閉動作を円滑に行わせることができる。
【0114】
さらには、上述のように、全閉状態のリヤパネル33を開くときに、前端部33aよりも先に後端部33bを下降させつつルーフ11の内面11bに沿って後退させる。このため、図13(b)に示すように、全閉状態のリヤパネル33の後端部33bが、下降を開始した降下開始時点Tsから、ルーフ11の内面11bに入り込んだ降下完了時点Teまでの、後端下降時間Tmdを短縮することができる。つまり、従来のような、リヤパネル33全体を一旦下降させた後に後退させる場合に比べて、リヤパネル33の後端部33bをルーフ11の内面11bに、短時間で入り込ませることができる。
【0115】
電動モータ35の負担を軽減するために、リヤパネル33の下降速度を減少させた場合には、リヤパネル33の下降時間が長くなるが、後端下降時間Tmdが短縮されることによって、補うことができる。つまり、降下完了時点Teを基準に考えたときに、後端下降時間Tmdが短縮された分、降下開始時点Tsを遅らせることができる。従って、リヤパネル33の下降開始タイミングを早めなくても、後退中のフロントパネル32が下降中のリヤパネル33に当たる心配はない。
【0116】
また、リヤパネル33の下降開始タイミングを早めないので、リヤパネル33が全開位置RPoへ到達するタイミングが早まることはない。リヤパネル33が全開位置RPoへ到達した時点に、フロントパネル32も全開位置FPoへ到達する。フロントパネル32とリヤパネル33の両方を全開にすることができるので、大きいルーフ開口12であっても大きく開けることができる。この結果、サンルーフパネル31の全開時における開口量が増大するので、乗員にとって開放感や爽快感が増す。
【0117】
しかも、大きいルーフ開口12であるにもかかわらず、全開状態と全閉状態とに速やかに確実に開閉することができる。さらには、リヤパネル33の下降速度及び上昇速度を減少させることができるので、電動モータ35の負担を抑制することができる。
【0118】
さらには、リヤスライダ110とリヤパネル支持ステー170とリヤステー連動部191,192と規制部193の組み合わせから成る、簡単な構成のリヤパネル駆動機構39によって、リヤパネル33を速やかに且つ確実に、下降させつつ後退させることができる。
さらには、ガイドピン113,114とカム溝171,172とから成る、極めて簡単な構成のリヤステー連動部191,192により、リヤスライダ110の後退に応じて、リヤパネル支持ステー170を下降させつつ後退させるように連動させることができる。
さらには、ストッパ部材180のガイド溝181と延長部173とから成る、極めて簡単な構成の規制部193によって、リヤパネル支持ステー170の前端部170aを後端部170bよりも遅れて下降させつつ後退させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の車両用サンルーフ装置30は、小型車を含む各種の乗用車に設けるのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明に係る車両用サンルーフ装置を備えた車両の平面図である。
【図2】図1に示すフロントパネルとリヤパネルが全閉状態にあるときの車両用サンルーフ装置の断面図である。
【図3】図2に示すフロントパネルだけが半開状態にあるときの車両用サンルーフ装置の断面図である。
【図4】図2に示すフロントパネルとリヤパネルが全開状態にあるときの車両用サンルーフ装置の断面図である。
【図5】図2に示された左のフロントパネル駆動機構の分解図である。
【図6】図5に示されたフロントパネル駆動機構の組立図である。
【図7】図5に示されたフロントパネル駆動機構の作用図(その1)である。
【図8】図5に示されたフロントパネル駆動機構の作用図(その2)である。
【図9】図2に示された左のリヤパネル駆動機構の分解図である。
【図10】図9に示されたリヤスライダの前部周りの組立図である。
【図11】図10に示されたリヤスライダの前部周りの作用図(その1)である。
【図12】図10に示されたリヤスライダの前部周りの作用図(その2)である。
【図13】図9に示された左のリヤパネル駆動機構の組立図である。
【図14】図13に示されたリヤパネル支持ステー及びストッパ部材周りの要部構成図である。
【符号の説明】
【0121】
10…車両、11…ルーフ、11a…外面、11b…内面、12…ルーフ開口、30…車両用サンルーフ装置、31…サンルーフパネル、32…フロントパネル、33…リヤパネル、35…電動モータ、37…ワイヤケーブル、39…リヤパネル駆動機構、50…フロントスライダ、110…リヤスライダ、113…ガイドピン(前部ピン)、114…ガイドピン(後部ピン)、170…リヤパネル支持ステー、170a…前端部、170b…後端部、171…カム溝(第1カム溝)、172…カム溝(第2カム溝)、180…ストッパ部材、191…リヤステー連動部(第1のリヤステー連動部)、192…リヤステー連動部(第2のリヤステー連動部)、FPc…フロントパネルの全閉位置、FPh…フロントパネルの半開位置、FPo…フロントパネルの全開位置、FSc…フロントスライダの全閉位置、FSh…フロントスライダの半開位置、FSo…フロントスライダの全開位置、L1…ルーフ開口の開口長さ、RPc…リヤパネルの全閉位置、RPo…リヤパネルの全開位置、RSc…リヤスライダのリヤパネル全閉位置、RSo…リヤスライダのリヤパネル全開位置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフに開けられたルーフ開口を開閉するためのサンルーフパネルが、フロントパネルとリヤパネルの前後2つのパネルから成り、
前記フロントパネルと前記リヤパネルが全閉状態にあるときに、電動モータの駆動力に応じて、前記フロントパネルの後端が上方へ傾いた後に、前記フロントパネルが前記ルーフの外面に沿うように後退して半開状態になり、次に、前記リヤパネルが前記ルーフの内面に沿うように後退するとともに前記フロントパネルが前記ルーフの外面に沿うように後退することによって、全開状態になるようにした車両用サンルーフ装置であって、
全閉状態の前記リヤパネルを開くときに、前記リヤパネルの前端部よりも先に、前記リヤパネルの後端部を下降させつつ前記ルーフの内面に沿って後退させる、リヤパネル駆動機構を備えたことを特徴とする車両用サンルーフ装置。
【請求項2】
前記リヤパネル駆動機構は、
前記ルーフに対して前後スライド可能なリヤスライダと、
前記リヤパネルを支持するリヤパネル支持ステーと、
前記リヤスライダの後退に応じて、前記リヤパネル支持ステーを下降させつつ後退させるように連動させるリヤステー連動部と、
前記リヤパネル支持ステーの後端部が下降しつつ後退するときに、前記リヤパネル支持ステーの後端部よりも遅れて、前記リヤパネル支持ステーの前端部が下降しつつ後退するように規制する規制部と、
から成ることを特徴とした請求項1記載の車両用サンルーフ装置。
【請求項3】
前記リヤステー連動部は、
前記リヤスライダに有したガイドピンと、
前記ガイドピンに案内されるように前記リヤパネル支持ステーに有したカム溝と、
から成ることを特徴とした請求項2記載の車両用サンルーフ装置。
【請求項4】
前記規制部は、
前記リヤパネル支持ステーから前記フロントパネルへ向かって延びたステー延長部と、
前記リヤパネルよりも前の位置で前記ルーフに設けられ、前記ステー延長部の先端部を案内するためのガイド溝を有したストッパ部材と、
から成ることを特徴とした請求項2又は請求項3記載の車両用サンルーフ装置。
【請求項1】
車両のルーフに開けられたルーフ開口を開閉するためのサンルーフパネルが、フロントパネルとリヤパネルの前後2つのパネルから成り、
前記フロントパネルと前記リヤパネルが全閉状態にあるときに、電動モータの駆動力に応じて、前記フロントパネルの後端が上方へ傾いた後に、前記フロントパネルが前記ルーフの外面に沿うように後退して半開状態になり、次に、前記リヤパネルが前記ルーフの内面に沿うように後退するとともに前記フロントパネルが前記ルーフの外面に沿うように後退することによって、全開状態になるようにした車両用サンルーフ装置であって、
全閉状態の前記リヤパネルを開くときに、前記リヤパネルの前端部よりも先に、前記リヤパネルの後端部を下降させつつ前記ルーフの内面に沿って後退させる、リヤパネル駆動機構を備えたことを特徴とする車両用サンルーフ装置。
【請求項2】
前記リヤパネル駆動機構は、
前記ルーフに対して前後スライド可能なリヤスライダと、
前記リヤパネルを支持するリヤパネル支持ステーと、
前記リヤスライダの後退に応じて、前記リヤパネル支持ステーを下降させつつ後退させるように連動させるリヤステー連動部と、
前記リヤパネル支持ステーの後端部が下降しつつ後退するときに、前記リヤパネル支持ステーの後端部よりも遅れて、前記リヤパネル支持ステーの前端部が下降しつつ後退するように規制する規制部と、
から成ることを特徴とした請求項1記載の車両用サンルーフ装置。
【請求項3】
前記リヤステー連動部は、
前記リヤスライダに有したガイドピンと、
前記ガイドピンに案内されるように前記リヤパネル支持ステーに有したカム溝と、
から成ることを特徴とした請求項2記載の車両用サンルーフ装置。
【請求項4】
前記規制部は、
前記リヤパネル支持ステーから前記フロントパネルへ向かって延びたステー延長部と、
前記リヤパネルよりも前の位置で前記ルーフに設けられ、前記ステー延長部の先端部を案内するためのガイド溝を有したストッパ部材と、
から成ることを特徴とした請求項2又は請求項3記載の車両用サンルーフ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図4】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−40343(P2009−40343A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209928(P2007−209928)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(390023917)八千代工業株式会社 (186)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(390023917)八千代工業株式会社 (186)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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