説明

車両用シートのフレーム構造

【課題】製造誤差によりワイヤーとフレーム本体との間で長さ関係にずれが生じても、これらの組み付け性を良好に保てるようにする。
【解決手段】車両用シートのフレーム構造であって、枠状に形成されたシートバックフレーム2Aと、シートバックフレーム2Aの縦枠辺部2A1,2A2間と横枠辺部2A3,2A4間とにそれぞれ各端部が一体的に結合された状態で架設されたワイヤー11〜14と、を有する。各ワイヤー11〜14の各端部は、その各縦枠辺部2A1,2A2や横枠辺部2A3,2A4の外側に越えて張り出す部位が、これら枠辺部の外周面に沿って巻かれる方向に曲げられて各枠辺部に当てられて結合される外側曲げ部位11A〜14Aとして形成されている。これら外側曲げ部位11A〜14Aは、その結合される各縦枠辺部2A1,2A2や横枠辺部2A3,2A4の外周面の曲がり具合よりも緩やかな曲率で曲げられて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートのシートバックのフレーム構造として、枠状のフレーム本体に、クッションパッドを支持するための複数のワイヤーが架設された構成が知られている(特許文献1)。上記ワイヤーは、そのフレーム本体の各枠辺部に結合される各端部が、各枠辺部の形状に沿った形に曲げられた構成とされており、各枠辺部に対して広くあてがわれた状態で溶着されることで強固に固定された状態とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−82340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の従来技術では、製造誤差によりワイヤーとフレーム本体との間で長さ関係にずれが生じると、ワイヤーを各枠辺部に組み付けられなかったり、ワイヤーと各枠辺部との当接面積を十分に確保できなかったりするため問題である。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、製造誤差によりワイヤーとフレーム本体との間で長さ関係にずれが生じても、これらの組み付け性を良好に保てるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートのフレーム構造は次の手段をとる。
第1の発明は、車両用シートのフレーム構造であって、枠状に形成されたフレーム本体と、フレーム本体を構成する2つの枠辺部間に各端部が一体的に結合された状態で架設されたワイヤーと、を有する。ワイヤーの各端部は、その各枠辺部の外側に越えて張り出す部位が、各枠辺部の外周面に沿って巻かれる方向に曲げられて各枠辺部に当てられて結合される曲げ部位として形成されている。上記ワイヤーの少なくとも一方側の端部の曲げ部位は、その結合される枠辺部の外周面の曲がり具合よりも緩やかな曲率で曲げられて形成されている。
【0006】
この第1の発明によれば、ワイヤーの少なくとも一方側の端部の曲げ部位を、枠辺部の外周面の曲がり具合よりも緩やかに曲げた形状にすることにより、この曲げ部位が傾斜面となって、曲げ部位を枠辺部の外周面に当てた状態を、ワイヤーを長さ方向にずらした種々の位置でとれるようになる。したがって、製造誤差によりワイヤーとフレーム本体との間で長さ関係にずれが生じても、これらの組み付け性を良好に保つことができる。
【0007】
第2の発明は、上述した第1の発明において、枠辺部が、円管状のパイプ部材により形成され、この枠辺部に結合される曲げ部位が、枠辺部の湾曲した外周面よりも緩やかな曲率で湾曲した形状とされているものである。
【0008】
この第2の発明によれば、ワイヤーと枠辺部との当接が曲面同士の当接となるため、両者の当接面積を広く確保することができ、溶接等による結合強度を高めることができる。また、ワイヤーの曲げ部位が角をもたない曲げ形状となることから、ワイヤーに角を立てないように曲げ部位を形成することができる。
【0009】
第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、ワイヤーは、その両端側の曲げ部位が、その結合される枠辺部の外周面の曲がり具合よりも緩やかな曲率で曲げられて形成されているものである。
【0010】
この第3の発明によれば、ワイヤーの端部の曲げ部位を緩やかに曲げる構成を両端側で採用することにより、ワイヤーとフレーム本体との間に生じる長さ関係のずれを、ワイヤーの両端側に少しずつに分散させて吸収させるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両用シートのフレーム構造の概略を示した斜視図である。
【図2】車両用シートのフレーム構造の正面図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
始めに、実施例1の車両用シートのフレーム構造の構成について、図1〜図3を用いて説明する。本実施例の車両用シート1は、図1に示すように、車両の最後列目に配された3人掛け用の座席用シートとして構成されている。この車両用シート1は、着座乗員の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭部の支えとなるヘッドレスト4,4と、を備える。上記シートバック2、シートクッション3、及びヘッドレスト4,4は、それぞれ、それらの内部に設けられたフレーム構造に、ウレタン樹脂を発泡成形したクッションパッドが組み付けられ、更にその外表面全体を覆うように布製の表皮材が被せ付けられた構成となっている。
【0014】
このうち、シートバック2は、その内部のフレーム構造が、鋼管材(丸パイプ)を枠状に形作ったシートバックフレーム2Aにより構成されている。ここで、シートバックフレーム2Aが本発明の「フレーム本体」に相当する。詳しくは、上記シートバックフレーム2Aは、鋼管材を逆U字状に曲げて形成したフレーム材の両下端部間に、ストレートな鋼管材を架け渡して一体的に結合した構成となっている。これにより、シートバックフレーム2Aは、その左右両サイド部において、互いにシート幅方向に対向する縦枠辺部2A1,2A2と、両縦枠辺部2A1,2A2の上端部間と下端部間とをそれぞれ繋いで、互いにシート高さ方向に対向する横枠辺部2A3,2A4と、を有する四角枠形状に形成されている。上記上側の横枠辺部2A3の前面部には、シートバック2の上部に設置される2つのヘッドレスト4,4の図示しないステーを装着するためのサポート部材を固定する角筒状のホルダー2B,2Bが、それぞれ左右に2個ずつ、計4個溶着されて固定されている。
【0015】
上記シートバックフレーム2Aの枠内部には、シートバックフレーム2Aの前面側に配される図示しないクッションパッドをシート後方側から支持するための部材として、縦横2本ずつ、計4本の鋼線のワイヤー11〜14が架設されている。このうち、横2本の各ワイヤー11,12は、シートバックフレーム2Aの左右の両縦枠辺部2A1,2A2の間にそれぞれシート幅方向に架け渡されてその両端部が一体的に結合された状態で設けられており、縦2本の各ワイヤー13,14は、シートバックフレーム2Aの上下の両横枠辺部2A3,2A4の間にそれぞれシート高さ方向に架け渡されてその両端部が一体的に結合された状態で設けられている。
【0016】
詳しくは、上記横2本の各ワイヤー11,12は、そのシート幅方向の各端部が、それぞれ、各縦枠辺部2A1,2A2の外周面にシート前面側から当てられて、互いの当接面がアーク溶接により一体的に結合されて設けられている。また、縦2本の各ワイヤー13,14も、そのシート高さ方向の各端部が、それぞれ、各横枠辺部2A3,2A4の外周面にシート前面側から当てられて、互いの当接面がアーク溶接により一体的に結合されて設けられている。
【0017】
より詳しくは、上記横2本の各ワイヤー11,12の各端部は、そのシートバックフレーム2Aの各縦枠辺部2A1,2A2のシート幅方向の外側に越えて張り出す各部位が、各縦枠辺部2A1,2A2の外周面の形に沿うようにシート後方側に湾曲して曲げられた外側曲げ部位11A,12Aとして形成されている。また、各ワイヤー11,12の各縦枠辺部2A1,2A2のシート幅方向の内側に位置する各部位も、上記外側曲げ部位11A,12Aと同様に、各縦枠辺部2A1,2A2の外周面の形に沿うようにシート後方側に湾曲して曲げられた内側曲げ部位11B,12Bとして形成されている。ここで、各外側曲げ部位11A,12Aが、それぞれ本発明の「曲げ部位」に相当する。
【0018】
また、縦2本の各ワイヤー13,14の各端部も、そのシートバックフレーム2Aの各横枠辺部2A3,2A4のシート高さ方向の外側(上側又は下側)に越えて張り出す各部位が、各横枠辺部2A3,2A4の外周面の形に沿うようにシート後方側に湾曲して曲げられた外側曲げ部位13A,14Aとして形成されている。また、各ワイヤー13,14の各横枠辺部2A3,2A4のシート高さ方向の内側(下側又は上側)に位置する各部位も、上記外側曲げ部位13A,14Aと同様に、各横枠辺部2A3,2A4の外周面の形に沿うようにシート後方側に湾曲して曲げられた内側曲げ部位13B,14Bとして形成されている。ここで、各外側曲げ部位13A,14Aが、それぞれ本発明の「曲げ部位」に相当する。
【0019】
上記横2本の各ワイヤー11,12の各外側曲げ部位11A,12A及び各内側曲げ部位11B,12Bは、それぞれ、各縦枠辺部2A1,2A2の外周面の曲がり具合(曲率)よりも緩やかな曲率で曲げられた形に形成されている(図3参照)。これにより、各外側曲げ部位11A,12A及び内側曲げ部位11B,12Bを傾斜面として、これらを各縦枠辺部2A1,2A2の外周面に当てた状態を、各ワイヤー11,12を長さ方向(シート幅方向)にずらした種々の位置でとれるようになっている。したがって、製造誤差により各ワイヤー11,12と各縦枠辺部2A1,2A2間との間でシート幅方向の長さ関係にずれが生じて、各ワイヤー11,12が各縦枠辺部2A1,2A2に当てられる箇所がずらされても、上記各外側曲げ部位11A,12A或いは内側曲げ部位11B,12Bを各縦枠辺部2A1,2A2に当てた状態とすることができることで、これらを一体的に溶着するための溶接面積を一定状態に確保して、これらの組み付け性を良好に保つことができる。なお、上記各ワイヤー11,12の各内側曲げ部位11B,12Bの屈曲した形状は、各ワイヤー11,12が着座乗員の背凭れ荷重を受け止める際に、各ワイヤー11,12をシート後方側へ撓ませやすくする屈曲部として機能するようになっている。
【0020】
また、同様に、上記縦2本の各ワイヤー13,14の各外側曲げ部位13A,14A及び各内側曲げ部位13B,14Bも、それぞれ、各横枠辺部2A3,2A4の外周面の曲がり具合(曲率)よりも緩やかな曲率で曲げられた形に形成されている(図3参照)。これにより、各外側曲げ部位13A,14A及び内側曲げ部位13B,14Bを傾斜面として、これらを各横枠辺部2A3,2A4の外周面に当てた状態を、各ワイヤー13,14を長さ方向(シート高さ方向)にずらした種々の位置でとれるようになっている。したがって、製造誤差により各ワイヤー13,14と各横枠辺部2A3,2A4間との間でシート高さ方向の長さ関係にずれが生じて、各ワイヤー13,14が各横枠辺部2A3,2A4に当てられる箇所がずらされても、上記各外側曲げ部位13A,14A或いは内側曲げ部位13B,14Bを各横枠辺部2A3,2A4に当てた状態とすることができることで、これらを一体的に溶着するための溶接面積を一定状態に確保して、これらの組み付け性を良好に保つことができる。なお、上記各ワイヤー13,14の各内側曲げ部位13B,14Bの屈曲した形状は、各ワイヤー13,14が着座乗員の背凭れ荷重を受け止める際に、各ワイヤー13,14をシート後方側へ撓ませやすくする屈曲部として機能するようになっている。
【0021】
このように、本実施例の車両用シートのフレーム構造によれば、シートバックフレーム2Aの各枠辺部2A1〜2A4(縦枠辺部2A1,2A2及び横枠辺部2A3,2A4)が、円管状のパイプ部材により形成され、これら枠辺部2A1〜2A4に結合される各ワイヤー11〜14の各曲げ部位(外側曲げ部位11A〜14A)が、各枠辺部2A1〜2A4の湾曲した外周面よりも緩やかな曲率で湾曲した形状とされていることにより、各ワイヤー11〜14と各枠辺部2A1〜2A4との当接が曲面同士の当接となるため、両者の当接面積(溶接面積)を広く確保することができ、両者の溶接による結合強度を高めることができる。また、各ワイヤー11〜14の各曲げ部位(外側曲げ部位11A〜14A)がそれぞれ角をもたない曲げ形状となっているため、各ワイヤー11〜14に角を立てないように曲げ部位を形成することができる。また、各ワイヤー11〜14の両端側で端部を緩やかに曲げる構成を採用することにより、各ワイヤー11〜14とシートバックフレーム2Aとの間で生じる長さ関係のずれを、各ワイヤー11〜14の両端側に少しずつに分散させて吸収させるようにすることができる。
【0022】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、上記実施例では、本発明の車両用シートのフレーム構造が、車両用シート1のシートバック2のフレーム構造に適用されたものを例示したが、このフレーム構造は、シートクッションやヘッドレスト等、車両用シートを構成する各部のフレーム構造に適用することができるものである。
【0023】
また、ワイヤーは、その少なくとも一方側の端部の曲げ部位が、フレーム本体の枠辺部の湾曲した外周面よりも緩やかな曲率で湾曲した形状とされていればよく、ワイヤーとフレーム本体との間で生じる長さ関係のずれを好適に吸収することができる。また、上記ワイヤーの端部に形成される曲げ部位は、折り曲げにより角をもって形成されるものであっても構わない。また、上記曲げ部位が当てられるフレーム本体の枠辺部も、角筒状の断面をもつ形に形成されたものであっても構わない。また、ワイヤーは、フレーム本体を構成する2つの枠辺部間に架設されるものが対象となるものであり、互いにシート幅方向や高さ方向に対向する枠辺部間に架設される態様のものの他、互いに隣接する枠辺部間に架設される態様のものであってもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 車両用シート
2 シートバック
2A シートバックフレーム(フレーム本体)
2A1 縦枠辺部
2A2 縦枠辺部
2A3 横枠辺部
2A4 横枠辺部
2B ホルダー
3 シートクッション
4 ヘッドレスト
11〜14 ワイヤー
11A〜14A 外側曲げ部位(曲げ部位)
11B〜14B 内側曲げ部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのフレーム構造であって、
枠状に形成されたフレーム本体と、
該フレーム本体を構成する2つの枠辺部間に各端部が一体的に結合された状態で架設されたワイヤーと、を有し、
前記ワイヤーの前記各端部は、その前記各枠辺部の外側に越えて張り出す部位が、前記各枠辺部の外周面に沿って巻かれる方向に曲げられて前記各枠辺部に当てられて結合される曲げ部位として形成され、
前記ワイヤーの少なくとも一方側の端部の前記曲げ部位は、その結合される前記枠辺部の外周面の曲がり具合よりも緩やかな曲率で曲げられて形成されていることを特徴とする車両用シートのフレーム構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートのフレーム構造であって、
前記枠辺部は、円管状のパイプ部材により形成され、この前記枠辺部に結合される前記曲げ部位は、前記枠辺部の湾曲した外周面よりも緩やかな曲率で湾曲した形状とされていることを特徴とする車両用シートのフレーム構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートのフレーム構造であって、
前記ワイヤーは、その両端側の前記曲げ部位が、その結合される前記枠辺部の外周面の曲がり具合よりも緩やかな曲率で曲げられて形成されていることを特徴とする車両用シートのフレーム構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate