説明

車両用シート装置

【課題】車両用シートのスライドレールへのボルトによる締結点がスライドレールの縦壁部のセンターよりオフセットした位置となっている。このため、シートに作用した外力がアッパレールに曲げや捩れ力として作用し、アッパレールを変形させる。
【解決手段】アッパレール(10)の前後端面に段部(13,13)を形成し、この段部(13,13)にナット部材(14)を着座させ、このナット部材(14)をアッパレール(10)に溶接する。ナット部材(14)のネジ孔(15)の中心はアッパレール(10)の縦壁部(11,11)間の中心に向けられる。ナット部材(14)のフィン部(17,17)がアッパレール(10)の外側面をはさむ。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レールの前後端に溶接されたナット部材を有する車両用シート装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用のシートは、フロアに固定されたロアレールに対し、前後方向に摺動自在に配されたアッパレールの前後端部のフランジ部にボルト止めされるか、或いはフロアに固定されたレールにボルト止めされる。
車両の前後方向に延在するアッパレールの前後端部のフランジ部に、完成されたシートを搭載し、ボルト止めするには、スペースの関係からシートの前後の斜め上方よりインパクトレンチにてボルトを締め付けるのが一般的である。
【0003】
このように限られたスペースを利用してのシートのアッパレールへの固定のため、特開平11−1189号公報は、アッパレールの前後端部にフランジ部を設けることを提案する。その例を図4に示す。アッパレール1は、2枚のプレートを断面略逆T字状に成形しかつ車両の前後方向に延在する形状を有す。ロアレール2は、断面略U字状をなす本体部と、アッパレール1のシュー部3を受けるガイド部4とを有す。ロアレール2はフロア5にボルト止めされる。
【0004】
アッパレール1の向かい合う縦壁部6,6は、その前後端部を一方に曲げ成形した曲げ部7,7を有し、両曲げ部を重ね合わせてフランジ部8としている。フランジ部8の中央部にボルトを受けるネジ孔9を設ける。
シート(図示なし)をアッパレール1に固定させるには、シートのブラケットをフランジ部8に合わせ、ボルトをネジ孔9に螺合させる手段を用いる。
【0005】
これとは別に、特開平11−99855号公報は、アッパレール1の縦壁部6,6の頂部を水平に折り曲げてフランジ部8とし、水平なフランジ部にネジ孔9を穿けることを提案する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来例では、フランジ部に穿設したネジ孔が、アッパレールの中心を通る縦壁部からオフセットした位置に存在する。
このため、シートに外力が作用したとき、この外力によりフランジ部及び縦壁部に曲げや捩れが生じ、フランジ部の変形を招きシートの姿勢を変化させることになりかねない。
【0007】
それ故に、本発明は、前述した従来技術の不具合を解消させることを解決すべき課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述した課題を解決するために、基本的には、レールの縦壁部の中心と一致するようナット部材のネジ孔の中心を配し、該ナット部材をレールの端面部の段部に溶接する技術的手段を採用する。好ましくは、レール部材はアッパレール即ちスライドレールである。
【0009】
このような基本的手段の採用は、シートに外力が作用し、この外力がナット部材に伝達されても、ナット部材のネジ孔中心が縦壁部の中心に一致していることから、この外力は縦壁部の座屈荷重として受け、ナット部材に曲げや捩れが生じない。よって、シートの強度を高く維持できる。
【0010】
本発明によれば、車両用シートをレールにボルト止めする車両用シート装置において、レールの向かい合う対の縦壁部の端面に形成された段部と、該段部に着座しかつレールに溶接されるナット部材とを有し、ナット部材のネジ孔中心がレールの縦壁部間の中心に向けられている車両用シート装置が提供される。
【0011】
好ましくは、レールがフロアに固定されたロアレールに対し摺動自在なアッパレールであり、ナット部材がアッパレールの前後端面に配される。
【0012】
さらに好ましくは、ナット部材がアッパレールの両外側面をはさむ対のフィン部を有する。ナット部材を水平面に対して傾斜して配することもでき、又、アッパレールの頂壁部の一部をナット部材の上面に延出させることもできる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1に示すように、スライドレール即ちアッパレール10はスチール板をプレス成形したもので、向かい合う縦壁部11,11と、縦壁部11,11の下部に一体に設けた断面略U字状の摺動部12,12を有し、摺動部12,12はシュー又はベアリングを保持し、ロアレールのガイド部に嵌合される(図4参照)。
アッパレール10の縦壁部11,11の前後端部に段部13,13を形成する。この段部13,13にナット部材14を着座させ、ナット部材14をアッパレール10に溶接する。
【0014】
ナット部材14は、ネジ孔15を有する方形の本体部16と、本体部16の両側から縦壁部11,11の外側面に沿うように延在する対の離間したフィン部17,17とからなる。ネジ孔15は本体部16の中央部に形成される。
ナット部材14は、本体部16の下面と後面とが段部13,13に着座し、フィン部17,17が縦壁部11,11の両外側面をはさむようにしてアッパレール10の前後端面部に取り付ける。次いで、ナット部材14をアッパレール10に溶接させる。
【0015】
ナット部材14のネジ孔15の中心は、対の縦壁部11,11の中心に一致し、縦壁部11,11の間隔がボルトのネジ部を受けるに充分な大きさであれば、本体部16のネジ孔15からシートを取り付けるボルトのネジ部が延出してもよい。もし、この間隔が小さければ、本体部16をボルトのネジ部を受けるに充分な大きさとする。
シートに作用する外力は、縦壁部11,11間の中心に向けられかつ段部13,13で受けるため、ナット部材14のアッパレール10に対する曲げや捩れが無く、強度上きわめて有利である。
【0016】
図1に示す例では、段部13,13をアッパレール10の長手方向にフロアに対して水平な面とこの面に直角な面とで形成したが、水平な面を図2に示すように傾けてテーパ面としてもよい。この例では、ナット部材14がアッパレール10に対して傾いた形で溶接され、ボルトの斜め上方からのナット部材14への螺合を可能にする。
【0017】
図3に示す例は、ナット部材14の本体部16の上面にアッパレール10の頂壁部の一部18を延出させているものである。この例では、本体部16を上下ではさむ形となり、ナット部材14とアッパレール10との溶接面をより多く確保できる。
【0018】
図2と図3の例においても、ナット部材14のネジ孔15の中心は、アッパレール10の縦壁部11,11間の中心に向けられ、シートを介して外力が作用しても、ナット部材14やアッパレールに曲げや捩れが生じない。又、ナット部材14は多くの面を介してアッパレール10に接しているので、局部的応力の発生は無い。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の例の部分斜視図である。
【図2】図2は、ナット部材を斜めにアッパレールに取り付けた例を示す正面図である。
【図3】図3は、アッパレールの頂壁部の一部をナット部材の上面に延出させた例を示す部分斜視図である。
【図4】図4は、従来例を示す側面図である。
【符号の説明】
10  アッパレール
11  縦壁部
13  段部
14  ナット部材
15  ネジ孔
16  本体部
17  フィン部
18  頂壁部の一部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートをレールにボルト止めする車両用シート装置において、レールの向かい合う対の縦壁部の端面に形成された段部と、該段部に着座しかつレールに溶接されるナット部材とを有し、ナット部材のネジ孔中心がレールの縦壁部間の中心に向けられている車両用シート装置。
【請求項2】
レールがフロアに固定されたロアレールに対し摺動自在なアッパレールであり、ナット部材がアッパレールの前後端面に配される請求項1記載の車両用シート装置。
【請求項3】
ナット部材がアッパレールの両外側面をはさむ対のフィン部を有する請求項2記載の車両用シート装置。
【請求項4】
ナット部材が水平面に対して傾斜して配されている請求項3記載の車両用シート装置。
【請求項5】
アッパレールの頂壁部の一部がナット部材の上面に延出する請求項1記載の車両用シート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2004−90765(P2004−90765A)
【公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−254022(P2002−254022)
【出願日】平成14年8月30日(2002.8.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】