説明

車両用シート装置

【課題】作動時の振動の少ない減速機構を有する車両用シート装置を実現する。
【解決手段】電動モータ24と、該電動モータから入力される回転をウォームギヤ22で減速して、スクリュシャフト51が連結されたホイールギヤ23に出力することにより位置を可変とする車両用シート装置において、前記ウォームギアと前記ホイールギアを収納する減速機構2のハウジング30内部において、前記ウォームギヤの一端軸部22bを該ハウジングに設けた小径部33aで支持するとともに、前記電動モータと連結される他端側において内輪41bが軸部22cに抜け止め固定されたベアリング部材41の外輪41aを前記ハウジングの段差部33dに支持させるとともに前記電動モータ端部材244に設けた突起部244aで挟み固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機構を介して伝達される電動モータの駆動力により駆動する車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用シート装置としては、特開平8−318767号公報(特許文献1)に示される減速機構を備えたものが知られている。これは、ハウジング内に相互に噛合って回転するウォームギヤとホィールギヤを収納し、ハウジングの外に取付けられるモータによってウォームギヤを回転駆動し、ホィールギヤに連結されたスクリュシャフトに回転を減速して伝達する減速装置において、ウォームギヤはそのギヤ部の両側の軸部分で軸受けされ、モータ側とは離れた方の軸受けは、ハウジングとは別体の軸受け部材を使用してウォームギヤの径方向と軸方向の移動を阻止するようにウォームギヤを支持し、モータ側と近い方の軸受けはハウジングの一部分で直接支持する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−318767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来構造であると、ハウジングで直接軸受する部分は、樹脂材で構成されるハウジングの成形によっては十分な軸受けとしての内径精度を確保することが難しく、その上モータの駆動力伝達部に近いため軸を径方向側へ振れさせる荷重も大きく、作動時の振動発生の原因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために本発明において講じた技術的手段は、電動モータと、該電動モータから入力される回転を減速して出力する減速機構とを備え、該減速機構の出力により位置を可変とする車両用シート装置であって、前記電動モータの前記減速機構と当接する端部材に、該電動モータの出力軸を囲う4箇所のネジ穴を有するとともに、前記減速機構の前記電動モータと当接する部位に、該4箇所のネジ穴のうちの一方の対角線上に位置する2つの前記ネジ穴と他方の対角線上に位置する2つのネジ穴とに選択的に合致する2つの取付穴を有し、前記電動モータの側面における前記ネジ穴の一辺と対応する箇所に該電動モータへの電力供給用のコネクタを有することである。
【0006】
また、前記減速機構は、ハウジング内に収納され、相互に噛合って回転するウォームギヤとホィールギヤを有し、該ウォームギヤのギヤ部の両側の軸部で該ウォームギヤを前記ハウジング内に回転自在に支持し、かつ前記ウォームギヤの前記軸の一方側をモータに連結して駆動するよう構成されていてもよい。
【0007】
また、前記ウォームギヤと前記電動モータは、少なくとも一方の端部が先端にいくほど小さい矩形の断面に徐変する連結索で結合されていてもよい。
【0008】
また、前記ウォームギヤと前記電動モータは、少なくとも一方の端部に捩じれた軸方向の延びる矩形の断面を有する連結索で結合されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るシートスライド装置の側面図。
【図2】同実施形態のロック機構部分での平面図。
【図3】同実施形態の駆動装置の分解斜視図。
【図4】同実施形態の駆動装置の断面図。
【図5】本発明に係る駆動装置の連結索の第1実施例の平面図。
【図6】本発明に係る駆動装置の連結索の第2実施例の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。先ず、本発明が適用される駆動機構2を用いたシートスライド機構5について図1、2を用いて説明する。シートスライド装置5は、車両フロア1に固定されたロアレール56に対して、シートクッション11に固定され且つロアレール56に摺動自在に支持されたアッパレール58をシート10の前後方向に移動させて位置を調整するものであって、アッパレール58に回転自在に且つ軸方向に移動不能に支持されたスクリュシャフト51と,ロアレール56に固定され且つスクリュシャフト51に螺合されたナット部材52と、後で詳細に述べるスクリュシャフト51に連結された駆動機構2よりなるものである。
【0011】
次に駆動機構2について説明する。図3、4に示されるように、駆動機構2は、ハウジング30と,ハウジング30内に配設されたウォームギヤ22と、ハウジング30内に配設されると共にウォームギヤ22に噛合され且つスクリュシャフト51に連係されたホイールギヤ23及びハウジング30内に配設されウォームギヤ22に連係されたモータ24から構成されている。ハウジング30は、本体31及びカバー38より構成されており、本体31には、直交し且つ交差付近で互いに接続される2つの穴32,33が形成されている。そして穴32は、本体31を貫通し、また穴33は底部を有する穴である。貫通穴32内にホイールギヤ23が配設されと共に、他方の穴33内にはウォームギヤ22が配設される。
【0012】
図4に詳細されるように、穴33内に配設されるウォームギヤ22は、そのギヤ部22aの両側に同軸上で形成された軸部22b,22cを備えている。モータ24に連結される側の軸部22cの端部には径がわずか小さい小径軸部221が形成され、小径軸部221上には、内輪41bと外輪41aを有するベアリング部材41が、内輪41bで嵌合され、小径軸部221の端部222がつぶしカシメ加工されて、抜け止めされて取付けられている。さらに軸部22cの軸心部分には軸心に沿って延びる矩形断面形を有する穴223が形成され、後で詳細に説明するモータ24からの駆動力を伝達する連結索61が挿入されている。
【0013】
さらに、図4に詳細されるように、ハウジング30の本体31はモータ24の端部材244にネジ71で組み付けされている。本体31の穴33は端部材244側に開口して、また底部側の部分は最も小い内径の小径部33aに、中間部分は中間径部33bに、開口部近くは大径部33cの3つの異なる径に成形され、ベアリング部材41の外輪41aは大径部33cに挿入され、中間径部33bと大径部33cとの段差部33dに側面で当接し、さらにモータ24の端部材244の突起部244aが大径部33cに挿入されて、外輪41aを突起部244aの先端部とで挟むように保持している。このように組み付けられたウォームギヤ22は、ハウジング30に対して回転自在に且つその軸心方向には強固に固定されて保持される。なお突起部244aの外径部と大径部33cの内径部とは精度の良い嵌合関係に設定されモータ24とウォームギヤ22の回転軸心のズレを最小にするように構成されている。
【0014】
モータ24は出力軸241を有し、出力軸241はその軸心に沿って延びる断面矩形の穴242を有している。断面矩形の穴242はハウジング30側に開口し、穴242には図5に詳細されるような連結索61の一方端が挿入されている。連結索61の他端は前述のようにウォームギヤ22の穴223に挿入されている。連結索61はばね作用を有する複数の鋼線を撚り合わせて作製されていて、その端部61aはツブシ加工によって断面が矩形で、端に行くほど徐変して小さくなるように成形された端部61a、61bを有している。従って出力軸241の矩形の穴242、およびウォームギヤ22の矩形の穴223の寸法バラツキが大きくても、連結索61の端部形状の強く挿入することで、相互に遊びがないように連結することが可能となる。図6には、さらに連結索61とは異なる形態の端部形状を有する連結索611の実施例を示す。即ち、軸方向で断面の矩形形状がわずかづつ捩じれるように成形された端部611a、611bを有し、この場合は穴242および穴223へ嵌め合わせたとき、連結索611のツブシ端部611a、611bの捩じれのばね効果で、穴242、223側の寸法バラツキが大きくても遊びを無く嵌合させることができる。
【0015】
図1乃至4に示されるように、モータ24の端部材244はハウジング30の本体31と当接する部分に長方形のフランジ部244bを有し、長方形のフランジ部244bの4隅部にはそれぞれネジ穴244cが設けられている。またモータ24の側面には突起するように電力供給用のコネクタ245が取付けられている。一方、アッパレール58にブラケット59(図2)を介して取付られているハウジング30には、フランジ部31aが設けられている。フランジ部31aには水平に配置される2つの取付穴31bを有している。例えば運転席側と助手席側とにモータで駆動するシートスライドが左右対称になるように装着が設定されている場合でも、モータ24の電力供給線8はシート10の一定の方向から取付けられるように、コネクタ245がシート10に対して一定の方向を向くように設定されていると良い。上記したような形状を有するフランジ部244bを持つように構成されたモータ24では、一方のシートスライド5には、フランジ部244b上の一対の対角線上にある取付穴244cを使ってハウジング30側の水平に配置される取付穴31bに取付け、他方のシートスライド5には、フランジ部244b上の別の対角線上の取付穴244cでとりつけることによって、左右両方のシートスライド5に対しても、同一形状のモータ24で、コネクタ245の向きを一定の方向に統一することができる。これによって、モータ24の種類を一つで良く部品の種類が少なく出来、組み付けの作業性も向上できるようになる。
【0016】
以上のように構成された、シートスライド装置5は、乗員がシート前後位置調整用のスイッチ(図示せず)を操作することによってモータ24を駆動し、前後方向へ移動する。そして、シートスライド装置5に取付けられた駆動装置2は、ウォームギヤ22をモータ24との連結部に近い側の軸部22c上にベアリング部材41をカシメ固定し、精度良く最小の部品点数でハウジング30側に回転支持する構成をとったことによりウォームギヤ22の軸部の振れが押さえられ、作動時の振動を大きく低減させられ、またベアリング部材41はウォームギヤ22の軸方向の移動を強固に保持する構造になっていて、シート10が最後方、または最前方の調整位置でシートスライド装置5のストッパ(図示せず)が当接して停止する場合に、停止時の反力で発生するウォームギヤ22の軸方向への荷重に対しても十分な強度をもって対応できているため、静粛な作動と耐久性が得られる。さらにウォームギヤ22の軸部22c上にベアリング部材41をカシメ固定する際に、軸部22cの軸心部に形成されている矩形穴223にわずかな形状の歪みが生じても、連結部で遊びが生じないように徐変する矩形状の端部61aを有する連結索61か、または捩じれる矩形状の端部611aを有する連結索611を使用することで静粛な作動を保証できる構成となっている。
【符号の説明】
【0017】
2 減速機構
22 ウォームギヤ
22a ギヤ部
22b 軸部
22c 軸部
23 ホィールギヤ
24 モータ
30 ハウジング
41 ベアリング部材
41a 外輪
41b 内輪
61 連結索
61a 端部
611 連結索
611a 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、該電動モータから入力される回転を減速して出力する減速機構とを備え、該減速機構の出力により位置を可変とする車両用シート装置であって、
前記電動モータの前記減速機構と当接する端部材に、該電動モータの出力軸を囲う4箇所のネジ穴を有するとともに、
前記減速機構の前記電動モータと当接する部位に、該4箇所のネジ穴のうちの一方の対角線上に位置する2つの前記ネジ穴と他方の対角線上に位置する2つのネジ穴とに選択的に合致する2つの取付穴を有し、
前記電動モータの側面における前記ネジ穴の一辺と対応する箇所に該電動モータへの電力供給用のコネクタを有することを特徴とする車両用シート装置。
【請求項2】
前記減速機構は、ハウジング内に収納され、相互に噛合って回転するウォームギヤとホィールギヤを有し、該ウォームギヤのギヤ部の両側の軸部で該ウォームギヤを前記ハウジング内に回転自在に支持し、かつ前記ウォームギヤの前記軸の一方側をモータに連結して駆動するよう構成されている、請求項1に記載の車両用シート装置。
【請求項3】
前記ウォームギヤと前記電動モータは、少なくとも一方の端部が先端にいくほど小さい矩形の断面に徐変する連結索で結合されている、請求項2に記載の車両用シート装置。
【請求項4】
前記ウォームギヤと前記電動モータは、少なくとも一方の端部に捩じれた軸方向の延びる矩形の断面を有する連結索で結合されている、請求項2に記載の車両用シート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−246120(P2011−246120A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158017(P2011−158017)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【分割の表示】特願2000−353195(P2000−353195)の分割
【原出願日】平成12年11月20日(2000.11.20)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】