説明

車両用ドアミラー装置

【課題】ミラーハウジングを展開姿勢から略垂直軸周りに回動してコンパクトな格納姿勢に折畳む車両用ドアミラー装置において、洗車機による自動洗車時には格納姿勢におけるドアミラー周りの遮蔽領域を減少させる退避姿勢へ移動させる機能を付加し、格納時と機械洗車時の各姿勢を最適化した車両用ドアミラー装置を提供する。
【解決手段】車両のドア外面に固定された支持基台部1に対してミラーハウジング2が略垂直方向の主回動軸3を介して結合され、使用時の展開姿勢Aと駐車時にはドア側にコンパクトに折畳んだ格納姿勢Bとに回動する車両用ドアミラー装置において、前記支持基台部1が車両ドア側面に略並行な傾斜面で支持基台部固定側1aと支持基台部回動側1bとに二分割され、かつ当該傾斜分割面4に垂直な副回動軸5を介してこれら支持基台部固定側1aと支持基台部回動側1bが結合された構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時の展開姿勢から駐車時にはミラーハウジングを略垂直軸周りにドア側へコンパクトに折畳んで格納姿勢とする車両用ドアミラー装置において、洗車機による自動洗車時には、前記格納姿勢でのドアミラー周りの遮蔽領域を解消するための退避姿勢への姿勢変更を可能とする車両用ドアミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドア外面に装着され後方を視認するドアミラー装置は、使用時の展開姿勢から駐車時にはドア側へコンパクトに折畳んだ格納姿勢へミラーハウジングを略垂直軸周りに電動や手動で回動させる方式が一般的である。
【0003】
洗車機による自動洗車時には、回転する洗車ブラシに巻き込まれてドアミラーが損傷することを避けるため、展開姿勢から格納姿勢に折畳むが、ミラー面とこれに対向する部分のドアガラス面等が遮蔽されて洗浄が不十分となり、手作業による追加洗浄が必要になることがある。
【0004】
このため、ミラーハウジングが略倒立姿勢でミラー面がドアガラス面に対して前方上方向に開いた角度を成し、遮蔽領域を減少させた姿勢が格納時の姿勢になるように、展開姿勢との切替用の回動軸を垂直方向から大きく傾斜させた方式もある。
しかしながら、この方式では駐車時の格納姿勢での突出部分が大きくなってコンパクト性が低下し、通行者等との干渉の可能性も増える他、上方に開いたミラー面が汚れ易くなるため、機械洗車時以外の通常の駐車時の格納姿勢としては不利な点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開 2009−298374
【特許文献2】特開 2001−277943
【特許文献3】特表 平9−501883
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ミラーハウジングが使用時の展開姿勢から駐車時には略垂直軸周りにドア側に回動してコンパクトな格納姿勢に折畳まれる車両用ドアミラー装置において、洗車機による自動洗車時には前記格納姿勢におけるドアミラー周りの遮蔽領域を減少させ、かつ回転する洗車ブラシによる巻き込み損傷も回避する退避姿勢へミラーハウジングをさらに移動させる機能を付加することにより、駐車時のコンパクトな格納姿勢は変えることなく、機械洗車時専用のミラーハウジングの最適姿勢が設定でき、洗車死角部分を解消できる車両用ドアミラー装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
車両のドア外面に固定された支持基台部に対してミラーハウジングが略垂直方向の主回動軸を介して結合され、使用時の展開姿勢と駐車時にはドア側にコンパクトに折畳んだ格納姿勢とに回動する車両用ドアミラー装置において、前記支持基台部が車両ドア側面に略並行な傾斜面で支持基台部固定側と支持基台部回動側とに二分割され、かつ当該傾斜分割面に垂直な副回動軸を介してこれら支持基台部固定側と支持基台部回動側が結合された構成とした。
機械洗車時には、支持基台部回動側に結合されたミラーハウジングを前記の格納姿勢から当該副回動軸周りに車両上方前方向に回動させ、略倒立姿勢においてミラー面が前方上方向に一定角度開いた姿勢を取ることにより、回転する洗車ブラシ先端部がミラーハウジングを巻き込んで損傷しない程度にミラー面側にも侵入でき、かつミラーハウジング周りの遮蔽領域が減少した退避姿勢で保持させる。
このために、退避姿勢におけるミラー面の前方開き角度に対応した水平方向のバイアス角とこれにより派生するミラーハウジング先端の車両側面外方向への倒れを補正する垂直方向のバイアス角を各々車両ドア並行面に対して設けて前記の傾斜分割面と副回動軸を形成した。
これにより、機械洗車時に最適な退避姿勢と駐車時の最もコンパクトな格納姿勢を独立に設定できるようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用ドアミラー装置によれば、ミラーハウジングを使用時の展開姿勢から駐車時は略垂直軸周りにドア側へ回動させることでコンパクトに格納できる折畳み式ドアミラーの格納姿勢の利点と基本的機能及び構造を活かしたままで、機械洗車時専用の退避姿勢へのミラーハウジングの移動機能が追加設定されることにより、駐車時の最もコンパクトな格納姿勢と機械洗車時に最適な退避姿勢の各々を独立に最適化することができる。
機械洗車時には、回転する洗車ブラシによるミラーハウジングの巻き込み損傷を回避しつつ、格納姿勢でのミラーハウジング周りの洗浄できない遮蔽領域を減少させる退避姿勢を取ることができるため、手作業での追加洗浄も不要となる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による車両用ドアミラー装置の基本構成と作動形態を示す。
【図2】本発明による車両用ドアミラー支持基台部機構の実施例(手動式)を示す。
【図3】本発明による車両用ドアミラー装置の電動系統の実施例(電動式)を示す。
【図4】本発明による車両用ドアミラー装置の電動切替方式の実施例(電動式)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による車両用ドアミラー装置の基本構成と車両上方から視た作動形態を図1に示す。
車両のドア外面に固定された支持基台部1に対してミラーハウジング2が略垂直方向の主回動軸3を介して結合され、使用時の展開姿勢Aと駐車時にはドア側にコンパクトに折畳んだ格納姿勢Bとに回動する車両用ドアミラー装置において、前記支持基台部1が車両ドア側面に略並行な傾斜面で支持基台部固定側1aと支持基台部回動側1bとに二分割され、かつ当該傾斜分割面4に垂直な副回動軸5を介してこれら支持基台部固定側1aと支持基台部回動側1bが結合された構成とした。
機械洗車時には、支持基台部回動側1bに結合されたミラーハウジングを前記の格納姿勢Bから当該副回動軸5周りに車両上方前方向に回動させ、略倒立姿勢においてミラー面6が前方上方向に一定角度開いた姿勢を取ることにより、回転する洗車ブラシ先端部がミラーハウジングを巻き込んで損傷しない程度にミラー面側にも侵入でき、かつミラーハウジング周りの遮蔽領域が減少した退避姿勢Cで保持させる。
このために、退避姿勢Cにおけるミラー面の前方開き角度に対応した水平方向バイアス角hとこれにより派生するミラーハウジング先端の車両側面外方向への倒れを補正する垂直方向バイアス角vを各々車両ドア並行面に対して設けて前記の傾斜分割面4と副回動軸5を形成した。
【実施例】
【0012】
本発明の実施例として、機械洗車時にミラーハウジング2を格納姿勢Bから略倒立の退避姿勢Cに手動で回動させる方式における支持基台部1の機構例を図2に示す。
副回動軸5を支持基台部回動側1bに形成し、支持基台部固定側1aの傾斜分割面側の端面壁部110には、副回動軸5を通す貫通孔111とそれを中心として周囲に複数のラッチボール130を配置保持するための複数の貫通孔112を設ける。
支持基台部回動側1bの傾斜分割面側の端面120には、ミラーハウジング2の格納姿勢Bと略倒立の退避姿勢Cに各々対応する各ラッチボール130の接触位置において各ラッチボールの先端部が貫入する陥没穴121を設ける。
副回動軸5を支持基台部固定側1aの貫通孔111に通し、各ラッチボール130を各々の配置位置の貫通孔112に収める。
その上から副回動軸5を通す貫通孔を各々その中心に有するラッチボール押さえ板140とバネ押さえ底板150をその間に押さえバネ160を挟んで副回動軸5に重ね通した後、該副回動軸端部に形成したねじ部5aにナット5bを嵌め、バネ押さえ底板150を介して圧縮力を掛けて締め付ける。
これにより、ミラーハウジング2を格納姿勢Bと退避姿勢Cにおいて保持できるラッチボール方式の弾性移動止め機構を構成した。
【0013】
本発明の他の実施例として、ミラーハウジングを格納姿勢と略倒立の退避姿勢との間で副回動軸周りに電動で往復回動させるため、展開姿勢と格納姿勢とを切替える既存の電動システムに加えて副回動軸に対応する電動モーターと減速機構及び姿勢検出・駆動回路を設置した車両用ドアミラー装置における電動系統の一例を図3に示す。
【0014】
前記の電動方式の車両用ドアミラー装置において、ミラーハウジングの格納姿勢と略倒立の退避姿勢との切替え操作方式として、展開姿勢を含めた三姿勢に各々対応する3点切替スイッチによる方法の他、展開姿勢において格納姿勢への切替用ワンプッシュスイッチを一定時間以上長押しすることにより、ミラーハウジングが格納姿勢で停止することなく退避姿勢に移行し、また、退避姿勢において当該切替用スイッチを押すと格納姿勢に戻るロジックシーケンスを組込むことにより、展開姿勢と格納姿勢との切替用スイッチと同一のワンプッシュスイッチで退避姿勢への切替え操作も可能とした実施例の作動シーケンスのパターンを図4に示す。
【産業上の利用可能性】
【0015】
車両のドア外面に装着され後方を視認するドアミラー装置に一般的な使用時の展開姿勢と駐車時にはドア側にコンパクトに折畳んだ格納姿勢とに略垂直軸周りに電動や手動で回動させる方式のドアミラー装置を装着し、洗車機による自動洗車に供する車両において効果的に利用できる。
【符号の説明】
【0016】
1 支持基台部
1a 支持基台部固定側
1b 支持基台部回動側
2 ミラーハウジング
3 主回動軸
4 傾斜分割面
5 副回動軸
5a 副回動軸端部ねじ部
5b 副回動軸端部用ナット
6 ミラー面
110 支持基台部固定側端面壁部
111 副回動軸用貫通孔
112 ラッチボール用貫通孔
120 支持基台部回動側端面
121 ラッチボール用陥没穴
130 ラッチボール
140 ラッチボール押さえ板
150 バネ押さえ底板
160 押さえバネ
A 展開姿勢
B 格納姿勢
C 退避姿勢
h 水平方向バイアス角
v 垂直方向バイアス角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドア外面に固定された支持基台部に対してミラーハウジングが略垂直方向の主回動軸を介して結合され、該ミラーハウジングが使用時の展開姿勢と駐車時にはドア側にコンパクトに折畳んだ格納姿勢とに回動する車両用ドアミラー装置において、
前記支持基台部が車両ドア側面に略並行な傾斜面で支持基台部固定側と支持基台部回動側とに二分割され、かつ当該傾斜分割面に垂直な副回動軸を介してこれら支持基台部固定側と支持基台部回動側が結合された構成からなり、
機械洗車時には、支持基台部回動側に結合されたミラーハウジングを前記の格納姿勢から当該副回動軸周りに上方前方向に回動させ、略倒立姿勢においてミラー面が前方上方向に一定角度開いた姿勢を取ることにより、回転する洗車ブラシ先端部がミラーハウジングを巻き込んで損傷しない程度にミラー面側にも侵入でき、かつミラーハウジング周りの遮蔽領域が減少した退避姿勢で保持させる。
このために、当該退避姿勢におけるミラー面の前方開き角度に対応した水平方向バイアス角と、これにより派生するミラーハウジング先端の車両側面外方向への倒れを補正する垂直方向バイアス角を各々車両ドア並行面に対して設けて前記の傾斜分割面と副回動軸を形成することにより、機械洗車時専用の最適なミラーハウジング退避姿勢と駐車時の最もコンパクトな格納姿勢とを独立に設定できる機構を設けたことを特徴とする車両用ドアミラー装置。
【請求項2】
前記の格納姿勢と略倒立の退避姿勢において、ミラーハウジング側を保持するための弾性移動止め機構ないしラッチ機構を前記支持基台部の固定側と回動側との間に設け、機械洗車時には手動で格納姿勢から退避姿勢へ往復回動させる請求項1の車両用ドアミラー装置。
【請求項3】
ミラーハウジングを展開姿勢と格納姿勢との間で主回動軸周りに電動モーターで回動させる方式において、格納姿勢と前記の退避姿勢との間で副回動軸周りに電動で往復回動させるための独立の電動モーターと減速機構及び姿勢検出・駆動回路を設け、前記の三姿勢への切替えを各姿勢に対応する3点切替スイッチによって操作する請求項1の車両用ドアミラー装置。
【請求項4】
ミラーハウジングを展開姿勢と格納姿勢及び退避姿勢へ切り替えるために、主回動軸及び副回動軸周りに各々個別の電動モーターで回動させる方式において、展開姿勢において格納姿勢への切替用ワンプッシュスイッチを一定時間以上長押しした場合は、ミラーハウジングが格納姿勢で停止することなく退避姿勢に移行し、また、退避姿勢において当該切替用スイッチを押すと格納姿勢に戻るロジックシーケンスを組込むことにより、展開姿勢と格納姿勢との切替用スイッチと同一のワンプッシュスイッチで退避姿勢への切替えも可能とした請求項1の車両用ドアミラー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−107429(P2013−107429A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252117(P2011−252117)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(711006979)
【Fターム(参考)】