説明

車両用ドアラッチ装置

【課題】より簡単な構成でオープンレバー及びポールを一体的に回動させることができるものであり、ひいては安価で動作信頼性の優れたドアラッチ装置を提供する。
【解決手段】ストライカに係脱するラッチと、ラッチに係脱するポールと、ドアに配設されたオープンレバー40を備えるドアラッチ装置100において、ベースプレート10に固定されたボディ20に回動自在に支持され、ボディ20内側の端部に該ポールが固着され、ボディ20外側の端部に該オープンレバー40が該ポールと一体的に回動するように固着された軸部50を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアに配置され、車両ドアを車両ボディに対して閉状態に保持する車両用ドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用ドアラッチ装置は、ボディ内に収納され車両に配設されたストライカと係脱自在なラッチと、ボディ内に収納されラッチと係脱自在に配設されたラチェットと、ボディ内に収容されインナー開扉用透孔を介して車両に配設されたインナー開扉ハンドルに連係されたインナー開扉レバーとを有している。ラチェットとインナー開扉レバーとはボディに同軸上で回動可能に支持されており、インナー開扉ハンドルの一部に表側方向に切り起こされた突起が形成されている。そして、この突起がラチェットに形成された解除片を押し上げることによりインナー開扉ハンドルがラチェットと一体的に回動するように構成している。
【特許文献1】特開平6−73936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1の車両用ドアラッチ装置であると、インナー開扉ハンドルとラチェットを一体的に回動させるためにはラチェットの解除片に係合するインナー開扉ハンドルに突起を形成する必要がある。そしてこれらをボディ内に収納する必要がある。このため、インナー開扉ハンドルを製造するにあたり、曲げ加工等の工程や加工の精度が必要となる。また、ハウジングをオープンレバーが収納できるように形成する必要もある。したがって、工数増加によるコスト増加や工程追加による品質低下及び収納スペースの拡大によるハウジングの大型化をも招く恐れがある。
【0004】
故に、本発明は、より簡単な構成でオープンレバー及びポールを一体的に回動させることができるものであり、ひいては安価で動作信頼性の優れた車両用ドアラッチ装置を提供することをその技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した技術的課題を解決するために講じた第1の技術的手段は、車両ドアに取付けられたハウジングに回動自在に支持され車両ボディに取付けられたストライカに係脱するラッチと、前記ハウジングに回動自在に支持され前記ラッチと係脱するポールと、前記車両ドアに配設されたハンドルに一端側が連係され前記ポールに他端側が連係されたオープンレバーとを有する車両ドアラッチ装置において、前記ハウジングに回動自在に支持され前記ハウジング内の一端側に前記ポールが固着され前記ハウジング外の他端部に前記オープンレバーが前記ポールと一体に回動するように固着された軸部を有することである。
【0006】
好ましくは前記ハウジングは前記ポールと前記オープンレバーのうちいずれか一方の一方向への回動を規制する被当接部を有すると良い。
【0007】
更に好ましくは、前記オープンレバーの一端部に配設された前記ハンドルと連係する連係部と、前記オープンレバーの他端部に配設された前記被当接部と当接する当接部とを有し、前記連係部と前記当接部との中間部に前記軸部を配設すると良い。
【0008】
更に好ましくは、前記オープンレバーは前記ハンドルの操作力を前記オープンレバーに伝達または非伝達する施解錠機構に連係されていると良い。
【0009】
更に好ましくは、前記連係部と前記施解錠機構とはケーブルを介して連結されていると良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハウジングに回動自在に支持されハウジング内の一端側にポールが固着されハウジング外の他端部にオープンレバーがポールと一体に回動するように固着された軸部を有するように構成したので、ハウジング内に配設されたポールとハウジング外に配設されたオープンレバーを軸部と共に一体に回動させることができる。これにより、軸部を介して無駄なくオープンレバーの回動をポールに伝達させることができる。したがって、従来に比べて操作効率を向上させた車両ドアラッチ装置を提供できる。この構造では、従来の如きオープンレバーにポールに係合する突起等を新たに形成する必要もなく、シンプルな構造とすることができる。
【0011】
更に、ハウジングはポールとオープンレバーのうちいずれか一方の一方向への回動を規制する被当接部を有するように形成するようにすれば、ポールとオープンレバーのうちいずれか一方の一方向への回動を規制するだけで両部材の一方向への回動を規制することができる。したがって、部品点数を従来に比べて部品点数を削減させた車両ドアラッチ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本実施例に係るドアラッチ装置100を車両ボディ1の側面に摺動自在に支持された車両ドア3に取付けた実施形態を図面に基づいて以下に説明する。
【0013】
図1,2に示される本実施例のドアラッチ装置100は、車両ドア3の後端部に取付けたハウジング4にて車両ボディ1に取付けられている。ドアラッチ装置100のハウジング4は、車両ドア3に取付けられたベースプレート10と、ベースプレート10に固定されたボディ20と、ベースプレート10に固定されたサブベース30とを備えている。また、ドアラッチ装置100は、ラッチ21と、ラッチ21に係脱自在に支持されたポール22と、ポール22と一体に回動するオープンレバー40とを備えている。
【0014】
図3に示すようにラッチ21は、ラッチ軸213を中心として回動可能にベースプレート10へ軸支され、車両ボディ1に設けられたストライカ2と係合するU字形状の溝部211を有している。また、ラッチ21はその回動中心であるラッチ軸213回りに設けられたスプリング(図示せず)によりストライカ2との係合を解除すべく図3示時計方向に常時付勢されている。
【0015】
ポール22は、後述詳しく説明する軸部50を中心として回動自在にベースプレート10へ軸支され、ラッチ21に係合する爪部221を有している。また、ポール22は、軸部50回りに巻回されたスプリング(図示せず)により爪部221がラッチ21と係合すべく図3示反時計方向に常時付勢されている。
【0016】
オープンレバー40は、後述詳しく説明する軸部50を中心として回動自在にベースプレート10へ軸支され、その一端部には、円弧形状の長穴部42(連係部)が形成されており、他端部には、当接部41が曲げ加工により形成されている。
【0017】
ボディ20は、ストライカ2が通過できるように切り欠かれた切欠部20aと切欠部20aから連続的に形成された収容凹部20bとを備えている。収容凹部20bは、ラッチ21とポール22とを収容している。
【0018】
ハウジング4について詳しく説明する。
【0019】
図1及び図2に示されるように、ベースプレート10は、車両ドア3に取付けられる水平部11と、水平部12から一体的に略垂直方向に曲げられて形成される垂直部12とを有している。また、サブベース30は、図4に示すようにベースプレート10に固定するために上方にバーリング加工が施された取付穴311(本実施例では3つ)を有した取付部31と、取付部31から曲げ加工により形成され内部にボディ20を収容するカバー部32とを備えている。そして、サブベース30は、ベースプレート10との間にボディ20を挟持しつつ、取付部31を取付穴311を介して水平部11にネジにより直接固定することによりベースプレート10に取付けられる。これにより、例えば、ベースプレート10と取付部31との間に樹脂製のボディ20を挟むことがないのでネジ締付時に発生するクリープでの変形によるガタを抑制させることができる。更に、ベースプレート10とサブベース30との間にガタ防止のための金属製カラー等の別部品を介在させる必要がなくなるので部品点数を低減することができる。
【0020】
図4に示されるように、サブベース30のカバー部32は、その中央部がコの字状に切り欠かれて形成され、ラッチ軸213が回転自在に挿通される穴部321aを有する第1カバー部321と、軸部50が回動自在に挿通される穴部322aを有する第2カバー部322とを備えている。また、第2カバー部322には、ストッパ部322b(被当接部)が一部を切立たせることによって形成されている。このストッパ部322bは、弾性を有したゴムキャップ323によって覆われており、オープンレバー40の当接部41と当接可能に配置されている。
【0021】
軸部50について詳しく説明する。
【0022】
図1乃至図3に示されるように、軸部50は、ボディ20及びサブベース30の穴部322aを貫通するようにベースプレート10に回転自在に立設されている。ボディ20の収容凹部20b内に位置する軸部50の一端には、ポール22が一体回動するように固着されており、ハウジング4外に位置する軸部50の他端には、オープンレバー40が一体回動するように固着されている。これにより、ポール22とオープンレバー40とは軸部50を介して一体回動することとなる。
【0023】
ケーブル60は、可撓性を有するように形成されており車両ドア3内を通って一端が後述する施解錠機構200に接続されている。また、他端はオープンレバー40の長穴部42に挿通する曲げ部61が形成されている。曲げ部61には長穴部42の径方向の幅よりも径が大きい樹脂製のスナップ62が取付けられている。
【0024】
図5に示されるように施解錠機構200には、車両ドア3に取付けられたハンドル300と車両ドア3の前端に配置されたフロントロック機構210と本実施例のドアラッチ装置100と車両ドア3の前端下部に配置された全開ロック機構220とがそれぞれ連結されている。施解錠機構200は、各ロック100,210,220へのハンドル300の操作力を伝達または遮断するように構成されている。なお、フロントロック機構210は車両ドア3を閉状態に保持するために車両ドア3の前端と車両ボディ1とを閉鎖状態にするものであり、その構造についてはドアラッチ装置100と略同等である。
【0025】
続いて、車両ドア3を開閉するときの作動について以下に説明する。
【0026】
最初に、車両ドア3を開状態から閉状態にする場合の作動について説明する。
【0027】
開状態の車両ドア3は、全開ロック機構220により全開状態に保持されている。この状態でハンドル300を操作するとその操作力が施解錠機構200を介して全開ロック機構220へ伝達される。これにより全開ロック機構220は車両ドア3の全開状態の保持を解除する。よって、車両ドア3は前後方向に摺動可能な状態となる。
【0028】
車両ドア3を前方へ摺動させていき車両ドア3を閉状態にすると、フロントロック機構210により車両ドア3はその前方から閉状態を保持されることとなる。
【0029】
これに伴って、車両ドア3に取付けられたドアラッチ装置100のラッチ21は車両ボディ1に取付けられたストライカ2と係合することにより車両ドア3はその後方から閉状態を保持される。
【0030】
以上より、車両ドア3はフロントロック機構210及びドアロック装置100により車両ドア3は車両ボディ1に対して閉状態に保持される。
【0031】
次に、車両ドア3を閉状態から開状態にするときについての説明をする。
【0032】
車両ドア3は、車両ドア3の前方をフロントロック機構210、車両ドア3の後方をドアロック装置100とストライカ2との係合により閉状態に保持されている。この状態でハンドル300を操作するとその操作力が施解錠機構200を介してフロントロック機構210及びドアロック装置100へ伝達される。これによりフロントロック機構210及びドアロック装置100は全閉状態の車両ドア3の全閉状態の保持を解除する。よって、車両ドア3は後方向に摺動可能な状態となる。
【0033】
車両ドア3を後方へ摺動させていき車両ドア3を全開状態にすると、車両ドア3の全開ロック機構220により車両ドア3はその後方から全開状態を保持される。
【0034】
続いて、本実施例のドアラッチ装置100の作動について説明する。
【0035】
まず、車両ドア3を開状態から閉状態にするときの説明をする。
【0036】
車両ドア3を前方へ摺動させると車両ボディ1のストライカ2は、ラッチ21の溝部211を通過し溝部211の壁に当接する。更に車両ドア3の摺動が進むとラッチ21はストライカ2によりスプリングの付勢力に抗して図3示反時計方向に回動する。ポール22はラッチ21の回動によりスプリングの付勢力に抗して時計方向に回動させられる。更に回動が進むとポール22の爪部221がラッチ21の被係合部に係合することによりラッチ22の時計方向の回動が規制されて車両ドア3を閉状態に保持する状態となる。
【0037】
一方、ポール22の回動軸である軸部50と一体的に回動するオープンレバー40もポール22の回動に伴い一体的に図3示反時計方向に回動する。この時ケーブル60の曲げ部61はオープンレバー40の長穴部42内に挿通されているので曲げ部61は相対的に長穴部42内を移動するのみでケーブル60へは操作力は伝達されない。つまり、オープンレバー40はケーブル60に対して空振りする。
【0038】
次に、車両ドア3を車両ボディ1に対して閉状態から開状態にするときの説明をする。
【0039】
車両ドア3が車両ボディ1に対して閉状態にてハンドル300を操作する。ハンドル300の操作により施解錠機構200を介してドアロック装置100のケーブル60が図1において左方向に引かれる。これにより、図2に示されるように、ケーブル60の曲げ部61を介してオープンレバー40は軸部50を回動中心として反時計方向に回動させられる。
【0040】
オープンレバー40の回動により軸部50に一体的に固着されたポール22も図3において時計方向に回動させられる。これにより、ポール22の爪部221とラッチ21の被係合部212との係合は解除される。
【0041】
ラッチ21とポール22の係合が解除されることにより、ラッチ21はスプリングの付勢力によって時計方向に回動する。
【0042】
ラッチ21の回動により、ストライカ2は溝部211との係合を解除される。これにより、車両ドア3は車両ボディ1に対する閉状態の保持が解除され後方に摺動可能な状態となる。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態の車両ドアラッチ装置100によれば、ボディ20に回動自在に支持されボディ20内側の端部にポール22が固着されボディ20外側の端部にオープンレバー40がポール22と一体的に回動するように固着された軸部50を有するように構成したので、ボディ20内側に配設されたポール22とボディ20外側に配設されたオープンレバー40を軸部50と共に一体的に回動させることができる。これにより、軸部50を介して無駄なくオープンレバー40の回動をポール22に伝達させることができる。したがって、従来に比べて操作効率を向上させたドアラッチ装置100を提供できる。この構造では、従来の如きポールに係合する突起等を新たにオープンレバーに形成する必要もなく、シンプルな構造とすることができる。
【0044】
更に、サブベース30はポール22とオープンレバー40のうちいずれか一方の一方向への回動を規制するストッパ部材321を有するように形成したので、ポール22とオープンレバー40のうちいずれか一方の一方向への回動を規制するだけで両方の一方向への回動を規制することができる。したがって、部品点数を従来に比べて部品点数を削減させたドアラッチ装置100を提供することができる。
【0045】
また、他の実施例として図6に示すようにケーブル60を車両ドア3の適切な場所に取付けたベルクランク500により車両ドア3内に配策することによりハンドル300の操作力を良好に施解錠機構200へ伝達でき、更に自由度の高いケーブル60の配策を実現することができる。
【0046】
また、本実施例ではオープンレバー40に直接ケーブル60を連結する構成としたので部品点数を最低限に抑えることができる。
【0047】
なお、本実施例ではハンドル300の操作によりラッチ21とストライカ2との係合を解除する例を挙げたが本発明はこれに限らず例えば図6に示すようにハンドル300にリリースアクチュエータ400を接続することによりモータ駆動によりラッチとストライカとの係合を解除するように構成しても良い。
【0048】
また、本実施例ではポール22とオープンレバー40と軸部50を別体に形成した例を挙げて説明したが本発明はこれに限らず例えばポール22と一体的に軸部50を形成しても良いし、オープンレバー40と一体的に軸部を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施例のドアラッチ装置の斜視図である。
【図2】本実施例の車両ドアを閉状態から開状態に操作した時のドアラッチ装置の態様を示した斜視図である。
【図3】本実施例のドアラッチ装置のボディ内部の正面図である。
【図4】本実施例のドアラッチ装置のサブベースの斜視図である。
【図5】本実施例のドアラッチ装置をドアに取付けた時の模式図である。
【図6】図5におけるその他の実施例である。
【符号の説明】
【0050】
車両ボディ 1
ストライカ 2
車両ドア 3
ハウジング 4
ラッチ 21
ポール 22
ストッパ部(被当接部) 322b
オープンレバー 40
長穴部(連係部) 42
軸部 50
ケーブル 60
ドアラッチ装置 100
施解錠機構 200
ハンドル 300

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアに取付けられたハウジングに回動自在に支持され車両ボディに取付けられたストライカに係脱するラッチと、前記ハウジングに回動自在に支持され前記ラッチと係脱するポールと、前記車両ドアに配設されたハンドルに一端側が連係され前記ポールに他端側が連係されたオープンレバーとを有する車両ドアラッチ装置において、前記ハウジングに回動自在に支持され前記ハウジング内の一端側に前記ポールが固着され前記ハウジング外の他端部に前記オープンレバーが前記ポールと一体に回動するように固着された軸部を有することを特徴とする車両ドアラッチ装置。
【請求項2】
前記ハウジングは前記ポールと前記オープンレバーのうちいずれか一方の一方向への回動を規制する被当接部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両ドアラッチ装置。
【請求項3】
前記オープンレバーの一端部に配設された前記ハンドルと連係する連係部と、前記オープンレバーの他端部に配設された前記被当接部と当接する当接部とを有し、前記連係部と前記当接部との中間部に前記軸部を配設したことを特徴とする請求項2に記載の車両ドアラッチ装置。
【請求項4】
前記オープンレバーは前記ハンドルの操作力を前記オープンレバーに伝達または非伝達する施解錠機構に連係されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の車両ドアラッチ装置。
【請求項5】
前記連係部と前記施解錠機構とはケーブルを介して連結されていることを特徴とする請求項4に記載の車両ドアラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−127210(P2009−127210A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300654(P2007−300654)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)
【Fターム(参考)】