説明

車両用ドアロック装置

【課題】部材構造の大きな変更や部材の追加を行うことなく、解除操作不能状態に陥ることを回避した車両用ドアロック装置を提供する。
【解決手段】車両のボディーに設けられた被掛止手段(ストライカ81)を掛止するドアに設けられた掛止手段(ラッチ82及びポール83)を、押圧されて解除可能とするリフトレバー2と、リフトレバー2に当接して押圧するオープンリンク3と、ドアに設けられたハンドルの操作により作動し、オープンリンク3を駆動してオープンリンク3によりリフトレバー2を押圧させるオープンレバー4と、オープンリンク3によるリフトレバー2の押圧を不能とするレバー駆動不能位置にオープンリンク3を駆動するアクティブレバー5と、を備えた車両用ドアロック装置1において、アクティブレバー5は、オープンリンク3をレバー駆動不能位置の方向にのみ駆動し、逆方向には不駆動とする一方向駆動部(ガイド孔6)をもつようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック装置に関し、より詳細には解除操作不能を回避した車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアをボディーにロックする装置として、例えば特許文献1に開示される自動車用ドアロック装置がある。特許文献1のドアロック装置は、ボディーに設けられた被掛止手段をドアに設けられた掛止手段で掛止することにより、ドアを閉状態に保つようにしている。このドア側の掛止手段を解除可能とするためにリフトレバーが設けられ、リフトレバーを押圧する部材としてオープンリンクが設けられている。さらに、オープンリンクまでドアのハンドル操作を伝達するためにオープン部材が介装されている。そして、アクティブレバーによりオープンリンクの位置を切り替えることにより、リフトレバーの押圧が可能なアンロック状態と、押圧できないロック状態とを選択できるようになっている。アクティブレバーは、ドア内側に設けられたロックノブの操作やドア外側からの鍵を用いた解錠操作により作動するのが一般的であり、モータなどのアクチュエータでも作動するように構成される場合がある。
【0003】
近年、ドアロック装置のロック操作及びアンロック操作を遠隔で行えるようにしたスマートエントリーあるいはスマートキーと呼ばれる機能が普及しつつある。このスマートエントリーには無線送信機能を具備する鍵が用いられ、鍵を所有する運転者が車両に接近した場合や車両に設けられたボタンが押された場合に、無線でアンロック指令が送信されるようになっている。一方、無線受信機能を具備する車両側では、アンロック指令を受信するとアクチュエータが起動されてアクティブレバーがロック状態をアンロック状態に切り替えるようになっている。そして、運転者が車両に到達したときにはハンドル操作のみでドアを開けることができ、鍵を用いた解錠操作の手間が省かれるようになっている。
【特許文献1】特開2007−100318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば特許文献1の自動車用ドアロック装置にスマートエントリーの機能を具備させた場合、まれに解除操作不能に陥るおそれがあった。この解除操作不能は、運転者の鍵によりスマートエントリーが機能してアクチュエータがロック状態をアンロック状態に切り替えるアンロック操作の途中で、同乗者または運転者がドアのハンドルを操作した場合に生じ得る。つまり、オープンリンクがロック状態からアンロック状態に移行する途中で駆動されてしまうために、アンロック状態への移行がリフトレバーによって阻まれてしまうことが生じ得る。すると、アクチュエータが停止し同乗者がハンドルから手を離してもアンロック状態に切り替えられず、解除操作不能状態いわゆるパニック状態に陥る。
【0005】
この解除操作不能状態を元に戻すには、再度ロック操作またはアンロック操作を行ってアクティブレバーを駆動させることで抜け出すことができる。しかしながら、操作は煩雑化してしまう。また、解除操作不能に陥らない構造とするために、オープンリンクあるいはアクティブレバーを複数の部材に分割しさらにスプリング等で結合する方策が考えられるが、部材点数が増加して装置が複雑化するとともに製作コストがアップする。
【0006】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、部材構造の大きな変更や部材の追加を行うことなく、解除操作不能状態に陥ることを回避した車両用ドアロック装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用ドアロック装置は、車両のボディーに設けられた被掛止手段を掛止するドアに設けられた掛止手段を、押圧されて解除可能とするリフトレバーと、該リフトレバーに当接して押圧するオープンリンクと、前記ドアに設けられたハンドルの操作により作動し、前記オープンリンクを駆動して該オープンリンクにより前記リフトレバーを押圧させるオープンレバーと、前記オープンリンクによる前記リフトレバーの押圧を不能とするレバー駆動不能位置に前記オープンリンクを駆動するアクティブレバーと、を備えた車両用ドアロック装置において、前記アクティブレバーは、前記オープンリンクを前記レバー駆動不能位置の方向にのみ駆動し、逆方向には不駆動とする一方向駆動部をもつ、ことを特徴とする。
【0008】
さらに、前記一方向駆動部は、前記アクティブレバーに形成されるとともに前記オープンリンクに設けられたガイドピンが遊動可能に嵌入されるガイド孔であることが好ましい。
【0009】
さらに、前記ガイド孔は、前記オープンリンクが前記リフトレバーを押圧するときに前記ガイドピンが摺動する摺動縁部を前記レバー駆動不能位置の方向の反対側に有することが好ましい。
【0010】
次に、上述の本発明を応用した態様について説明する。前記オープンリンクの一側面を押圧することにより前記ガイドピンを前記ガイド孔の前記摺動縁部に摺接させる押圧手段を備えることが好ましい。さらに、前記押圧手段は、前記ドアに揺動可能に枢支される押圧部材と、該押圧部材の一端を前記オープンリンクの前記一側面に向けて付勢する付勢手段と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明した本発明の車両用ドアロック装置では、アクティブレバーに遊動範囲をもつガイド孔などの一方向駆動部を設けるようにしたので、アンロック操作時にオープンリンクがアンロック状態へ移行できなくなって解除操作不能状態に陥ることがなくなる。また、ガイド孔は従来の長孔を拡げるだけで形成することができ、部材構造の大きな変更や部材の追加を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図6を参考にして説明する。図1は、車両のドアに内蔵される本発明の実施例の車両用ドアロック装置を説明する側面図である。実施例の車両用ドアロック装置1は、ハウシング80に支持されたリフトレバー2、オープンリンク3、オープンレバー4、アクティブレバー5、キャンセルレバー7、により構成されている。図1には、ロック状態からアンロック状態へのアンロック操作の途中でオープンリンク3がオープンレバー4により駆動されたときのドア内側からみた状態が示されている。また、図2は、図1の車両用ドアロック装置1を右方からみた図であり、リフトレバー2及び本発明の被掛止手段及び掛止手段が示されている。
【0013】
図2に示されるようにリフトレバー2は、ハウジング80に揺動動可能に保持され、掛止手段であるポール83に連結されている。ポール83は、被掛止手段である棒状のストライカ81に掛合しているラッチ82を掛止するものである。リフトレバー2は、図略の付勢手段により図中反時計回りに付勢されて初期位置に保たれている。そして、リフトレバー2は、オープンリンク3に押圧されるとポール83を時計回りに揺動させてラッチ82の掛止を解除するように構成されている。掛止を解かれたラッチ82は、図中時計回りに揺動して二点鎖線で示される解除姿勢82Aとなり、ストライカ81Aは図中左方へ離脱可能となる。
【0014】
図1に示されるようにオープンリンク3は、縦長のほぼ棒状に形成された部材であり、リフトレバー2の下方に配置されて、オープンレバー4とアクティブレバー5とにより支持されている。オープンリンク3の下端には中央がくびれた縦長の係合孔31が形成されている。係合孔31には、オープンレバー4の係合レバー44が嵌入されている。オープンリンク3の上端の図中左側には、紙面奥側に突出するガイドピン32が設けられている。ガイドピン32は、アクティブレバー5のガイド孔6に嵌入している。また、オープンリンク3の上端右側には、上方に向かう押圧部33が設けられている。
【0015】
オープンレバー4は、ドアの厚み方向(紙面の表裏方向)に延設されて揺動可能に枢支された部材である。詳述すると、オープンレバー4は略中央に枢支孔41を有し、枢支孔41はハウジング80に揺動可能に枢支されている。また、オープンレバー4は、略中央から紙面奥側のドア外壁方向に延設された外向きアームと、略中央から紙面手前側の内壁方向に延設された内向きアームとを有している。図示されるように、外向きアームの端部の上側は略水平に折り曲げられて連結孔42が形成されている。連結孔42は連結部材を介して図略のアウトサイドハンドルに連結されている。そして、アウトサイドハンドルが操作されると、連結孔42は押し下げられるようになっている。
【0016】
オープンレバー4の内向きアームは端部で上下二股に分かれ、下側は略水平に折り曲げられて被押圧部43が形成され、上側は係合レバー44になっている。係合レバー44は、図1に示されるように、オープンリンク3の下側の係合孔31に紙面奥側から嵌入している。したがって、係合レバー44は、オープンリンク3を上方に駆動可能で、かつオープンリンク3が直立状態と傾斜状態との間で揺動するときの支点になっている。被押圧部43は、連結部材を介して図略のインサイドハンドルに連結されている。そして、インサイドハンドルが操作されると、被押圧部43が押し上げられるようになっている。また、オープンレバー4は、図略の付勢手段により係合レバー44が下降する揺動方向に付勢されて初期位置に保たれている。つまり、アウトサイドハンドルまたはインサイドハンドルが操作されたときにのみ、係合レバー44が上昇してオープンリンク3を上方に駆動するようになっている。
【0017】
アクティブレバー5は、ハウジング80に揺動可能に枢支され、オープンリンク3をアンロック状態からロック状態にロック操作する部材である。なお、オープンリンク3がリフトレバー2を押圧可能な状態がアンロック状態である。また、オープンリンク3がリフトレバー2を押圧できない状態、つまりレバー駆動不能位置にあるときがロック状態である。図3は、アクティブレバー5の形状を説明する図であり、図3も参考にして詳説する。アクティブレバー5は、中央下寄りに枢支孔51を有し、枢支孔51はハウジング80に揺動可能に枢支されている。アクティブレバー5は、図中左下方に延設される第1アーム52、図中右下方に延設される第2アーム54、上方に略扇形に広がる第3アーム56を有している。第1アーム52の先端に形成された連結孔53は、連結部材を介してドア内側のロックノブに連結されている。第2アーム54の先端に形成された当接部55は、ドア外側の錠装置に連結されている。また、第3アーム56の図中左上方に形成された係合溝部57は、モータにより駆動される図略の駆動機構に係合されている。モータは、例えばスマートエントリー機能により、遠隔で作動されるように構成されている。アクティブレバー5は、ロックノブ、錠装置、モータのいずれからも操作可能とされている。そして、アクティブレバー5は、アンロック操作では枢支孔51を中心にして時計回りに揺動し、ロック操作では反時計回りに揺動するようになっている。また、アクティブレバー5は、図略の付勢手段により、ロック状態の位置及びアンロック状態の位置に保持されるように付勢されている。
【0018】
アクティブレバー5の第3アーム56の図中右方には、図3に示されるように、本発明の一方向駆動部に相当するガイド孔6が形成されている。ガイド孔6の周縁は、図中右側の上下に延びる摺動縁部61と、摺動縁部61の上端に連なり上方にふくらんだ押圧縁部62と、押圧縁部62に連なり図中左方に拡がった後左上方から右下方に傾斜下降して摺動縁部61の下端に戻る復帰縁部63と、により形成されている。ガイド孔6には、オープンリンク3のガイドピン32が嵌入されている。ガイド孔6の内側はガイドピン32の径よりも拡げられて形成されており、その中央は遊動範囲64となっている。
【0019】
キャンセルレバー7は、本発明の押圧手段に相当するものであり、オープンリンク3の左側面を図中右方向に押圧する部材である。キャンセルレバー7は、略中央に枢支孔71を有する「く」の字状に折れ曲がった部材であり、枢支孔71はハウジング80に揺動可能に枢支されている。キャンセルレバー7の下端右方には押圧部72が形成されており、押圧部72は図略の付勢手段に付勢されて常時オープンリンク3の左側面を右方に押圧するようになっている。キャンセルレバー7は、ロック状態でドアを閉じたときにリフトレバー2から駆動されてロック状態をアンロック状態にするものであり、本実施例では押圧手段として兼用されている。なお、キャンセルレバー7を付勢する付勢手段の付勢力は、アクティブレバー5を付勢する付勢手段の付勢力よりも小さく設定されている。
【0020】
次に、実施例のドアロック装置1の作用を説明する前段として、従来のドアロック装置の構成及び、解除操作不能状態について説明する。従来のドアロック装置9は、実施例の装置1とはアクティブレバー5の構造が異なり、その他の部材は共通に用いられている。図4は、従来のアクティブレバー95を説明する図であり、本発明の拡げられたガイド孔6の代わりに長孔96が設けられている。長孔96は、上下方向に形成され、図中の右側の縁部は実施例のガイド孔6の摺動縁部61と同じ位置になっている。実際を言えば、実施例のガイド孔6は、長孔96を左方に拡げて形成したものである。また、長孔96の左右方向の幅はガイドピン32の径に略一致している。つまり、ガイドピン32は長孔96内を上下方向のみに案内されるようになっている。また、アクティブレバー95が揺動して長孔96が図中左右に揺動すると、ガイドピン32は左右双方向に駆動されるようになっている。
【0021】
図5は、従来のドアロック装置9の作用を説明する図であり、(1)はアンロック状態、(2)はロック状態、(3)はロック状態からアンロック状態へのアンロック操作の途中でハンドルによる解除操作が重畳された状態、(4)は解除操作不能状態を示している。図5(1)のアンロック状態では、アクティブレバー95が時計回りに揺動して、長孔96によりガイドピン32が右方に駆動され、オープンリンク3は直立状態にある。この直立状態で解除操作が行われると、オープンレバー4に駆動されてオープンリンク3は上昇する。このとき、ガイドピン32が長孔96により真上に案内されるので、オープンリンク3本体も図中矢印Aで示されるように真上に上昇して、押圧部33がリフトレバー2を押し上げ、ポール83によるラッチ82の掛止が解除される。
【0022】
(2)のロック状態では、アクティブレバー95が反時計回りに揺動して、長孔96によりガイドピン32が左方に駆動され、オープンリンク3は傾斜状態となっている。また、長孔96も傾斜している。この状態で解除操作が行われると、オープンレバー4に駆動されてオープンリンク3は上昇する。このとき、ガイドピン32が長孔96により左上方向かって案内されるので、オープンリンク3本体も図中矢印Bで示されるように斜め上方に作動し、リフトレバー2には当接しない。つまり、ポール83によるラッチ82の掛止が保持される。なお、アクティブレバー95にはオープンリンク3のガイドピン32を介してキャンセルレバー7により時計回りの付勢力が作用しているが、キャンセルレバー7の付勢手段の付勢力のほうがアクティブレバー95の付勢手段の付勢力よりも小さいため、アクティブレバー95はロック状態の位置に保持される。
【0023】
次に、図5(2)のロック状態において、スマートエントリー機能によりアンロック状態へのアンロック操作が指令された場合を考える。通常はモータが作動してアクティブレバー95が時計回りに揺動し、(1)のアンロック状態に移行する。ところが、(2)から(1)に移行する途中で、ドアのハンドルが操作されると(3)の状態となる。このとき、矢印Cで示されるアクティブレバー95の時計回りの揺動と、矢印Dで示されるオープンレバー4からの駆動とが重畳してオープンリンク3に作用する。すると、駆動されて斜め上方に作動したオープンリンク3が、アクティブレバー95により右方へ駆動される。この結果、オープンリンク3はリフトレバー2に側方から当接して、(4)の解除操作不能状態に陥る。(4)において、オープンリンク3はオープンレバー4の付勢手段により矢印Eで示される方向に付勢される。しかし、この状態でモータが停止されるのでアクティブレバー95はロック状態のままで停止する。ここで、ハンドルを操作して解除操作を行ってもオープンリンク3はリフトレバー2に当接することができない。
【0024】
次に、本発明の実施例のドアロック装置1の作用を説明する。まず、実施例のドアロック装置1がアンロック状態及びロック状態のときに、解除操作が行われた場合を考える。実施例のドアロック装置1では、キャンセルレバー7は常時オープンリンク3を図中右方に押圧しているので、ガイドピン32はガイド孔6の右側の摺動縁部61に押圧されている。したがって、オープンリンク3が押圧されると、ガイドピン32は摺動縁部61に摺接しながら上昇し、オープンリンク3は、従来装置9の図5(1)及び(2)と同様に作動する。次に、アンロック状態からロック状態へのロック操作を考える。このロック操作も、従来と同様に行われる。なぜなら、ガイド孔6の右側の摺動縁部61がガイドピン32を押圧して反時計回りに駆動するからである。つまり、一方向駆動部であるガイド孔6は反時計回りの駆動を従来と同様に行う。
【0025】
三番目に、ロック状態からアンロック状態へのアンロック操作を考える。アンロック操作では、実施例のドアロック装置1は従来と異なる作用をする。アクティブレバー5が時計回りに揺動して、オープンリンク3がロック状態からアンロック状態へ駆動されるとき、摺動縁部61はガイドピン32に対して先行作動する。したがって、ガイドピン32はガイド孔6には駆動されない。オープンリンク3に他の部材からの力が作用しなければ、ガイドピン32は遊動範囲64を遊動する。ここで、オープンレバー4を初期位置に戻す付勢手段の付勢力と、キャンセルレバー7の押圧力とがオープンリンク3に作用している。したがって、オープンリンク3は下方と右方に押圧され、ガイドピン32は摺動縁部61の下方に留まった状態で、アンロック状態へと駆動される。
【0026】
最後に、ロック状態からアンロック状態へのアンロック操作の途中で解除操作が重畳された場合を考える。図6は、実施例のドアロック装置1が解除操作不能状態を回避する作用を説明する図であり、(1)はアンロック操作の途中でハンドルによる解除操作が重畳された状態、(2)は解除操作不能状態を回避した後のアンロック状態、を示している。実施例のドアロック装置1において、オープンレバー4により上方へ駆動され次にアクティブレバー5により右方へ駆動されたオープンリンク3が、リフトレバー2に側方から当接するところまでは従来と同様に作用する。ところが、ガイド孔6が拡げられているため、オープンリンク3のガイドピン32はガイド孔6には拘束されず内側の遊動範囲64で遊動する。したがって、図6(1)で矢印Fに示されるように、アクティブレバー5は時計回りの最終位置まで作動する。つまり、アクティブレバー5は、ロック状態の位置からアンロック状態の位置に移行する。
【0027】
図6(1)の状態においてハンドルが解放されると、オープンリンク3を上方へ駆動するオープンレバー4の押圧力はなくなり、代わりに下方の初期位置に向かう図中矢印Gの付勢力が作用する。また、キャンセルレバー7の押圧部72に押圧されて右方に向かう図中矢印Hの押圧力が作用する。この2つの力に駆動されて、ガイドピン32は遊動範囲64を遊動しながら、あるいは復帰縁部63に摺接しながら下降し、オープンリンク3は下方の初期位置に戻る。そして、図6(2)示されるように、最終的にキャンセルレバー7の押圧部72に押圧されてガイドピン32が摺動縁部61に摺接する。すると、オープンリンク3はリフトレバー2の下方で直立状態となり、アンロック状態に復帰する。つまり、解除操作不能状態が回避される。
【0028】
以上説明したように、本実施例では、オープンリンク3のガイドピン32が嵌入するアクティブレバー5の従来の長孔96を拡げてガイド孔6としたことにより、解除操作不能状態を回避できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例の車両用ドアロック装置を説明する側面図である。
【図2】図1の実施例の車両用ドアロック装置を右方からみた図である。
【図3】図1の実施例におけるアクティブレバーの形状を説明する図である。
【図4】従来のアクティブレバーの形状を説明する図である。
【図5】従来のドアロック装置の作用を説明する図であり、(1)はアンロック状態、(2)はロック状態、(3)はロック状態からアンロック状態へのアンロック操作の途中でハンドルによる解除操作が重畳された状態、(4)は解除操作不能状態を示している。
【図6】実施例のドアロック装置が解除操作不能状態を回避する作用を説明する図であり、(1)はアンロック操作の途中でハンドルによる解除操作が重畳された状態、(2)は解除操作不能状態を回避した後のアンロック状態、を示している。
【符号の説明】
【0030】
1:車両用ドアロック装置
2:リフトレバー
3:オープンリンク
31:係合孔 32:ガイドピン 33:押圧部
4:オープンレバー 44:係合レバー
5:アクティブレバー
6:ガイド孔(一方向駆動部)
61:摺動縁部 62:復帰縁部 64:遊動範囲
7:キャンセルレバー(押圧手段) 72:押圧部
80:ハウジング
81:ストライカ(被掛止手段)
82:ラッチ(掛止手段) 83:ポール(掛止手段)
9:従来の車両用ドアロック装置
95:従来のアクティブレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディーに設けられた被掛止手段を掛止するドアに設けられた掛止手段を、押圧されて解除可能とするリフトレバーと、
該リフトレバーに当接して押圧するオープンリンクと、
前記ドアに設けられたハンドルの操作により作動し、前記オープンリンクを駆動して該オープンリンクにより前記リフトレバーを押圧させるオープンレバーと、
前記オープンリンクによる前記リフトレバーの押圧を不能とするレバー駆動不能位置に前記オープンリンクを駆動するアクティブレバーと、
を備えた車両用ドアロック装置において、
前記アクティブレバーは、前記オープンリンクを前記レバー駆動不能位置の方向にのみ駆動し、逆方向には不駆動とする一方向駆動部をもつ、ことを特徴とする車両用ドアロック装置。
【請求項2】
前記一方向駆動部は、前記アクティブレバーに形成されるとともに前記オープンリンクに設けられたガイドピンが遊動可能に嵌入されるガイド孔である、請求項1に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項3】
前記ガイド孔は、前記オープンリンクが前記リフトレバーを押圧するときに前記ガイドピンが摺動する摺動縁部を前記レバー駆動不能位置の方向の反対側に有する、請求項2に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項4】
前記オープンリンクの一側面を押圧することにより前記ガイドピンを前記ガイド孔の前記摺動縁部に摺接させる押圧手段を備える、請求項3に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項5】
前記押圧手段は、前記ドアに揺動可能に枢支される押圧部材と、該押圧部材の一端を前記オープンリンクの前記一側面に向けて付勢する付勢手段と、を有する請求項4に記載の車両用ドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−127278(P2009−127278A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302963(P2007−302963)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)
【Fターム(参考)】