説明

車両用ブレーキホース保持構造。

【課題】従来型のゴム製ブレーキホースはブレーキペタルからの入力をブレーキホース内の液体(ブレーキオイル)を通してホイールシリンダーに伝え制動力として出力されるが、ブレーキホースの剛性が不足していると、その効率が悪くなりブレーキフィーリングを悪化させる。そこで、剛性の高いブレーキホースを使いブレーキ時のフィーリングを向上させようとすると従来例ではホース金具の固定に専用のカシメ型を使用していた為ホースを新設するとホースの固定が出来ないという問題があった。
【解決手段】本発明は、製造が容易でかつブレーキホースのストラットへの保持をブレーキホースの新設時でも前述した組立て式の中間金具を使用した車両用ブレーキホース保持構造で、該ブレーキホース保持構造によりブレーキホースに固定する事によりサスペンションの上下動に起因したブレーキホースの動きによる車体や車輪等との接触を防止しホースの損傷を防ぐことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキホース保持構造に関し、特にストラット式サスペンションのストラットにブレーキホースの途中部分を保持させる車両用ブレーキホース保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の車両においてブレーキ用マスターシリンダから車輪側ブレーキ装置、例えばドラム式ブレーキのホイールシリンダに油圧を供給するブレーキ管路は、タイヤハウス内にて可撓性を有するブレーキホース1により車両に固定されたマスターシリンダ側の管路とホイールシリンダ側の管路との間が連結されている。
【0003】
図8は、従来の車両用ブレーキホース保持構造を示す斜視説明図で図9は、図8の組立て状態における要部を拡大した拡大説明図である。
ブレーキホースは、サスペンションの動きや車輪の操舵による動きを考慮して若干の弛みを持たせ、かつ車体や車輪等と接触しないようにその途中部分がホース金具30によってサスペンションのストラット20に保持されている。
【0004】
従来型のゴム製ブレーキホースはブレーキペタルからの入力をホース内の液体(ブレーキオイル)を通してホイールシリンダーに伝え制動力として出力されるが,ブレーキホースの剛性が不足していると、ブレーキホース内の液体の圧力によりブレーキースが膨張し、その内容積が増加する。
その結果、ブレーキ時のブレーキペダルの行程の増加や弾力感の発生などブレーキフィーリングを悪化させている。
【特許文献1】特開2000−108885
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、剛性の高いブレーキホースを使いブレーキ時のフィーリングを向上させようとすると従来例は、製造工程に於いて、ホース金具30の固定に専用のカシメ型を使用し、両端の金具2及び50の装着前の装着を必要としていた。
【0006】
このため、製造されたブレーキホースはホース金具の位置がカシメで固定されているため、保持位置が固定化されて汎用性が損なわれ、更に製造作業が煩雑で製造コストの増加を招来していた。
なお、この中間のホース金具を持たないブレーキホースは、使用期間がその製造者が定めた耐用年数に満たない場合でも、サスペンションの上下移動等に起因したブレーキホースの動きによる車体や車輪等との接触を防止するための機構を設けることが困難なため安全上車両での使用が出来ない。
【0007】
本発明は、上述した不具合を解決すべくなされたものであり、その目的は、製造容易でかつブレーキホース1のストラット20への保持を両端に金具が装着されたブレーキホースの製造後でも個々の車両に対応した適切な位置への設置を可能にするブレーキホース保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記不具合を解決するために、本発明の車両用ブレーキホース保持構造は、ストラットに突設された平板部を有し、平板部に穿設した係止孔及び係止孔と平板部の外縁部との間にブレーキホースの通過を許容するスリットを備えたブラケットと弾性係止手段により嵌合状態に保持されブレーキホースの中間部の外周を囲んでブレーキホースと圧接結合され、半径方向に略二等分割された略円筒形状の胴体部を有じ該胴体部に形成された前記係止孔に嵌合する回転止め部、及び回転止め部が係止孔に嵌入された際にブラケットの平板部に面接するフランジ部を備えたホース金具と、係止孔に組立て式ホース金具の回転止め部を嵌合し、かつフランジ部が平板部に圧接した嵌合状態に保持するホース金具保持手段を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の実施の形態について図1〜6、第2の実施形態について図7に基づいて説明する。
図1は、組立て式の中間金具を使用した車両用ブレーキホース保持構造を説明するための斜視説明図で、図2は、図1の組立て状態における要部を拡大して示した側面説明図である。
【0010】
ブレーキホース1のマスターシリンダー側の端部には、図1に示されるねじ込み式金具2が設けられており、このねじ込み式金具2はマスターシリンダーからのブレーキ管路の所定箇所に設けられた連結部分にねじ入れられ、所定のトルクで締め付けられることによりマスターシリンダーと管路を介して連結される。
【0011】
ブレーキホース1のホイールシリンダ側の端部には、内部をブレーキオイルが流れる管状金具50が設けられており、この管状金具50はホイールシリンダの所定箇所に設けられた連結部分に専用ボルトで固定され、ホイールシリンダと連結される。
【0012】
ストラット20は、車体取り付け状態にて上下方向に所定長さで伸縮する略円筒形状を有しており、その下端より所定高さ上方位置にはブレーキホース1ホース金具30が保持されるブラケット40が設けられている。
【0013】
従来の形態同様、ブレーキホース1のマスターシリンダー側金具2がねじ込み式金具であるため、ブレーキホース1をホイールシリンダに連結させる際にはブレーキホース1自体を回転させる必要があり,予めブレーキホース1をブラケットに保持させておくことはできない。
【0014】
ホース金具90は、金属材料により構成され、図1と図2に示したように、二個のホース金具90でブレーキホース1の外周を囲む様にE型止め輪60により一体的に嵌合固定される。一体的に嵌合固定された後に略円筒形状を成す形状を備えている。ホース金具90は中心軸対称形状に2個が互いに嵌合するための嵌合穴100と嵌合突起99を備え、E型止め輪60によりホース金具90とホース金具90を一体的に保持し、ホース金具90はブレーキホース1を一体的に略全周で保持しホース金具90をブレーキホース1に一体的に固定している。ホース金具90は、ガイド部91と回転止め部93と円筒部94を備えている。
【0015】
回転止め部93は、ガイド部91の上部に連続して設けられ、ホース金具90の軸芯を中心とする正6角形をなし、6つの壁面が周状に連続形成されたボルトヘッド形状をなす。回転止め部93の下部には、前記正6角形の対角と同じ、又は大きい直径部分を持つフランジ部92があり、該フランジ部92は回転止め部93と共通する面と回転止め部93に垂直な面92aを備えている。円筒部94は、回転止め部93の上面に連続して設けられ、ホース金具90の中心軸と同軸心を有し、回転止め部93のボルトヘッド部分の平行な壁面間の距離と同じ、若しくは壁面間の距離よりも小さい径を有する。
そして、円筒部94の外周面には、周方向に連続して凹設された周溝95と周溝98が設けられている。円筒部94の内周部にはホース固定突起102が備えられる。ガイド部91の外周面には、周方向に連続して凹設された周溝97と周溝96が設けられている。円筒部91の内周部にはホース固定突起101が備えられる。
【0016】
E型止め輪60は周溝98、97、96いずれも挿入が可能で、中間金具90の嵌合には、車両の使用される条件の苛酷さやブレーキホース1の材質などの条件によりいずれか1つの周溝を選択して挿入、あるいは複数挿入する。
【0017】
上記構成を有する車両用ブレーキホース保持構造におけるブレーキホース1のストラット20への保持は、図1の様にまず最初に、ブレーキホース1の最適な位置にホース金具90を2個、軸対象の位置にブレーキホース1をはさみこむ位置で図2の様に嵌合させる。その後図3の様にE型止め輪60を周溝97又は/及び96又は/及び98に挿入させ、ブレーキホース1に一体的に固定する。次に、ブレーキホース1のホース金具90よりも車輪側部分(図中下側部分)をスリット44を通過させて貫通孔43内に挿通させ、ホース金具90の回転止め部93がブラケット平板部41の下面46の突起部の間に係合されるように、円筒部94を貫通孔43内に挿入させる。
【0018】
これにより、円筒部94は、図4に示したように、上部が貫通孔43内に配置され、円筒部94に設けられた周溝95はブラケット平板部41の上面45から上方に突出した状態で配置される。
【0019】
また、回転止め部93は、互いに平行な壁面が突起部47、47の平面部48、48とそれぞれ対向して当接し、ホース金具90は、その軸心を中心とした回転が防止される。
【0020】
そして、クリップ70を、図5、図6に示したように、差込片71の中央部分が上方に凸する状態で周溝95とブラケット平板部41との間に弾装する。したがって、ホース金具90は差込片71の弾性力によりブラケット平板部41の下面46に向かって押圧され、回転止め部93に垂直なフランジ面92aは、ブラケット平板部41に圧接されることとなる。これにより、ホース金具90をブラケット40に保持させている。
【0021】
図7は、第2の組み立て式中間金具を使用した車両用ブレーキホース保持構造を示す斜視説明図である。尚、第1の組み立て式中間金具を使用した例と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。本例は、ブラケット80の構造のみが上述の第1の例と異なっている。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係るブレーキ保持構造によれば、あらかじめカシメによって設置されたブレーキホース中間金具の代わりに中間金具を組み式にして設置することにより、中間金具を持たない構造のブレーキホースでも組み立て式中間金具を用いることによりブレーキホース1をストラット20に保持させ、サスペンション(図示せず)の上下移動等に起因したブレーキホース1の動きによる車体や車輪等との接触を防止することが出来る。また、従来のようにあらかじめ、各々の自動車の形状に従って各々の異なる位置にブレーキホース中間金具をかしめて設置する必要がないため、ブレーキホースに汎用性が発生し、大量在庫を削減し、簡素化することによってブレーキホースの保存が容易となり、製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の本発明のホース金具を使用した保持構造を示す斜視説明図
【図2】図1の組立状態における要部を拡大した側面説明図
【図3】本発明によるホース金具のブレーキホースへの固定方法の説明図
【図4】本発明によるホース金具のストラットへの固定方法の説明図
【図5】本発明によるホース金具のストラットへの固定方法のクリップ装着前の説明図
【図6】本発明によるホース金具のストラットへの固定方法のクリップ装着後の説明図
【図7】本発明によるホース金具を使用したブレーキホース保持構造を示す斜視説明図
【図8】従来車両のブレーキホース取付けレイアウト図
【図9】従来車両のブレーキホースのストラットへの固定方法の説明図
【符号の説明】
【0024】
1 ブレーキホース
20 ストラット
30 従来のホース金具
60 E型止め輪
90 本発明のホース金具
99 嵌合突起
100 嵌合穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションのストラットにブレーキホースの中間部を保持する車両用ブレーキホース保持構造において、前記ストラットに突設された平板部を有し、該平板部に穿設した係止孔、及び該係止孔と前記平板部の外縁との間に前記ブレーキホースの通過を許容するスリットを備えたブラケットと、前記ブレーキホースの中間部に該中間部の外周を囲んで圧接結合される、半径方向に略二等分割の略円筒形状の胴体部を有し、該胴体部に形成された対向する分割面及び該分割面に沿う方向の移動を拘束する拘束手段、及び前記胴体部の外周壁面に周方向に凹設された周溝、及び前記係止孔に嵌合する回転止め部及び該回転止め部が前記係止孔に嵌合された際に前記ブラケットの平板部に面接するフランジ部を備えたホース金具と、前記周溝に嵌入し略二等分割の前記胴体部を外周部から前記分割面方向に対向して加圧し前記胴体部の内周部を前記ブレーキホースの外周に圧接させる環状の一部分に開放部を持つ弾性係止手段と、前記係止孔に前記ホース金具の回転止め部を嵌合し、かつ前記フランジ部が前記平板部に圧接した嵌合状態に保持するホース金具保持手段と、を有することを特徴とする車両用ブレーキホース保持構造。
【請求項2】
前記拘束手段は、前記対向する一方の分割面に前記胴体部の中心軸を挟む対称位置の一方の側に形成の略円筒状の突起物、もう一方の側に形成の前記突起物が嵌合可能な穴とを備えることを特徴とする請求事項1に記載の車両用ブレーキホース保持構造。
【請求項3】
前記周溝は、前記胴体部の中心軸方向に所定距離はなれて前記胴体部外周壁面に周方向に連続して凹設された周溝であることを特徴とする請求事項1に記載の車両用ブレーキホースの保持構造。
【請求項4】
請求項3の周溝の中心軸方向の中間に形成され、前記胴体部の内周壁面に周方向に連続して凸設された、前記ブレーキホースの外周を圧接する略半円形断面の突起物を備えることを特徴とする請求事項1に記載の車両用ブレーキホース保持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−168880(P2008−168880A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26132(P2007−26132)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(301017329)矢島工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】