説明

車両用暗視装置

【課題】従来の車両用暗視装置では、ヘッドアップディスプレイ装置の表示画像や画面がドライバーのハイビームによる遠方の目視視認を妨げることがある点である。
【解決手段】車両用前照灯1からハイビームが照射されと、ヘッドランプスイッチ2からのON検知信号が制御装置5に入力され、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6および赤外光投光装置3がOFFの状態となる。この結果、ドライバーDがハイビームにより遠方を目視で視認する場合、ドライバーDの前方で結像されていた画像が消えるので、ドライバーDのハイビームによる遠方の目視視認がヘッドアップディスプレイ装置6、7の画像により妨げられることがなく、確実に確保され、交通安全に貢献することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、目視では視認できない情報を赤外光暗視カメラ装置で撮像して、その情報を目視で視認できる画像としてヘッドアップディスプレイ装置で表示する車両用暗視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用暗視装置(車両用暗視システム、いわゆる、ナイトビジョンシステム)は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用暗視装置について説明する。なお、括弧つきの符号は、特許文献1に対応する。この従来の車両用暗視装置は、車両の前部に近赤外線カメラ(10)と赤外光投光装置とを搭載し、一方、車両の運転席にヘッドアップディスプレイ装置(30)を配置し、近赤外線カメラ(10)とヘッドアップディスプレイ装置(30)とを車両搭載のコンピュータの制御部(20)に接続してなるものである。
【0003】
つぎに、この従来の車両用暗視装置の作用について説明する。まず、赤外光投光装置から赤外光を車両の前方に投光し、目視では視認できない情報を近赤外線カメラ(10)で撮像する。その撮像された情報を制御部(20)を経て目視で視認できる画像としてヘッドアップディスプレイ装置(30)によりドライバーの前方のフロントガラスの画面に投影する。ドライバーが画面に投影された画像を見ることにより、目視では視認できない情報を視認することができる。また、この従来の車両用暗視装置は、車両の前方の障害物と画面に投影された画像とが重畳視認されると制御部(20)が判定すると、画像を画面に投影するのを停止させるので、ドライバーの視認を確保することができる。このように、この従来の車両用暗視装置は、夜間のために遠方の照度が低く目視では視認できない場合に有効に利用することができる。すなわち、この従来の車両用暗視装置は、夜間の走行を支援するものであって、通常の車両用前照灯の補助手段として使用されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−200755号公報
【0005】
ところが、前記の従来の車両用暗視装置は、障害物と画像とが重畳視認されると判定されると画像を画面に投影するのを停止させるものであるが、車両用前照灯のハイビームが照射されている場合でもヘッドアップディスプレイ装置(30)が作動したままでドライバーの前方のフロントガラスの画面に画像が投影される。このために、前記の従来の車両用暗視装置は、車両用前照灯のハイビームが照射されていて遠方の照度が比較的高く目視でも視認できる場合においても、ドライバーの前方のフロントガラスの画面に画像が投影表示されているので、この画像や画面がドライバーのハイビームによる遠方の目視視認を妨げることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする問題点は、前記の従来の車両用暗視装置では、車両用前照灯のハイビームが照射されている場合において、ヘッドアップディスプレイ装置の表示画像や画面がドライバーのハイビームによる遠方の目視視認を妨げることがある点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車両用前照灯のハイビームの照射のONを検知してON検知信号を出力するハイビーム検知手段と、このハイビーム検知手段からのON検知信号に基づいて、ヘッドアップディスプレイ装置の画像や画面をドライバーのハイビームによる遠方の目視視認から回避させる制御装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の車両用暗視装置は、車両用前照灯のハイビームが照射されると、ハイビーム検知手段がハイビームの照射のONを検知してそのON検知信号を制御装置に出力し、この制御装置がハイビーム検知手段から入力されたON検知信号に基づいてヘッドアップディスプレイ装置の画像や画面をドライバーのハイビームによる遠方の目視視認から回避させる。このために、この発明の車両用暗視装置は、車両用前照灯のハイビームが照射されていて遠方の照度が比較的高く目視でも視認できる場合においては、ヘッドアップディスプレイ装置の画像や画面がドライバーのハイビームによる遠方の目視視認から回避されるので、この画像や画面がドライバーのハイビームによる遠方の目視視認を妨げることがない。すなわち、この発明の車両用暗視装置は、ドライバーのハイビームによる遠方の目視視認が確実に確保され、交通安全に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、この発明にかかる車両用暗視装置の実施例の1例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0010】
図3において、符号1は、車両(自動車)Cの前部の左右に装備される車両用前照灯(ヘッドランプ)である。前記車両用前照灯1は、走行用のハイビーム(図示せず)と、すれ違い用のロービーム(図示せず)とを車両Cの前方に照射するものである。前記ハイビームは、遠方を比較的高い照度で照明するものであり、対向車や先行車が少ない道路を高速走行する場合に適している。また、前記ロービームは、近方を所定の照度で照明すると共に、対向車や先行車にグレアを与えないものであり、市街地を走行する場合に適している。前記ハイビームと前記ロービームとの切替は、ヘッドランプスイッチ2により手動もしくは自動により行われる。なお、前記車両用前照灯1においては、前記ハイビームおよび前記ロービーム以外に、高速走行用(モータウエイ用)のミドルビームを照射するものもある。前記ミドルビームは、比較的遠方を所定の高い照度で照明すると共に、対向車や先行車にグレアを与えないものであり、対向車や先行車が多い道路を高速走行する場合に適している。
【0011】
近年、夜間を安全に走行するために、車両Cにおいては、前記車両用前照灯1の他に車両用暗視装置が装備されているものがある。以下、この実施例における車両用暗視装置の構成について説明する。
【0012】
この実施例における車両用暗視装置は、赤外光投光装置(近赤外光投光装置)3と、赤外光暗視カメラ装置(近赤外光暗視カメラ装置)4と、ヘッドアップディスプレイ装置(HUD)と、ハイビーム検知手段と、制御装置(ECU)5とを備えるものである。
【0013】
前記赤外光投光装置3は、前記車両Cの前部に装備されており、赤外光(赤外線、近赤外光、近赤外線)を車両Cの前方に照射するものである。前記赤外光暗視カメラ装置4は、たとえば、CCDカメラなどであって、前記車両Cの前方であって、前記赤外光投光装置3から照射される赤外光の領域で目視では視認できない情報を撮像するものである。前記赤外光暗視カメラ装置4で撮像された目視では視認できない情報は、前記制御装置5において目視で視認できる画像として画像処理される。
【0014】
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、表示器6と、画面7とから構成されている。前記表示器6は、例えば、FEディスプレイ、蛍光表示管、ELディスプレイ、バックライトつきの液晶ディスプレイなどからなり、前記制御装置5において画像処理された目視で視認できる画像を前記画面7に投影するものである。前記画面7は、前記車両Cのフロントガラスの一部がコンバイナ(反射部材)処理されたものであって、前記表示器6から投影された画像を反射させてドライバーDの前方において結像させて表示させるものである。
【0015】
前記ハイビーム検知手段は、この例では、前記ヘッドランプスイッチ2であって、前記ヘッドランプスイッチ2をハイビーム照射に操作すると、前記車両用前照灯1からハイビームを照射させると同時に、前記車両用前照灯1のハイビームの照射のONを検知してON検知信号(たとえば、ハイレベルの信号。図1(B)を参照)を出力するものである。また、前記ハイビーム検知手段は、前記ヘッドランプスイッチ2をハイビーム照射停止に操作すると、前記車両用前照灯1からのハイビームの照射を停止させると同時に、前記車両用前照灯1のハイビームの照射のOFFを検知してOFF検知信号(たとえば、ローレベルの信号。図1(B)を参照)を出力するものである。
【0016】
前記制御装置5は、前記車両用前照灯1と前記ヘッドアップディスプレイ装置6、7および前記赤外光投光装置3とを同期作動させるものである。すなわち、前記制御装置5は、前記ヘッドランプスイッチ2(ハイビーム検知手段)からのON検知信号に基づいて、前記ヘッドアップディスプレイ装置の画像や画面7をドライバーのハイビームによる遠方の黙示視認から回避させる、たとえば、この例では、前記表示器6をOFF(たとえば、ローベルの信号。第1(C)を参照)して前記表示器6から前記画面7への画像の投影を停止させるものである。一方、前記制御装置5は、前記ヘッドランプスイッチ2からのOFF検知信号に基づいて、前記表示器6をON(たとえば、ハイベルの信号。第1(C)を参照)して前記表示器6から前記画面7に画像を投影させるものである。
【0017】
また同時に、前記制御装置5は、前記ヘッドランプスイッチ2からのON検知信号に基づいて、前記赤外光投光装置3をOFF(たとえば、ローベルの信号。第1(D)を参照)して前記赤外光投光装置3からの赤外光の照射を停止させるものである。一方同時に、前記制御装置5は、前記ヘッドランプスイッチ2からのOFF検知信号に基づいて、前記赤外光投光装置3をON(たとえば、ハイベルの信号。第1(D)を参照)して前記赤外光投光装置3から赤外光を照射させるものである。
【0018】
さらに、前記制御装置5は、前記車両用前照灯1と前記ヘッドアップディスプレイ装置6、7および前記赤外光投光装置3との同期作動において、前記ヘッドランプスイッチ2からの短期のON/OFF検知信号が入力された場合には、前記ヘッドアップディスプレイ装置6、7および前記赤外光投光装置3の現状を維持するものである。
【0019】
すなわち、前記制御装置5は、前記ヘッドランプスイッチ2からのON検知信号が入力されてから一定時間T経過した場合には、図1中のAの部分および図2(A)に示すように、前記ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6をOFFし、同時に、前記赤外光投光装置3をOFFさせるものである。また、前記制御装置5は、前記ヘッドランプスイッチ2からのOFF検知信号が入力されてから一定時間T経過した場合には、図1中のBの部分および図2(B)に示すように、前記ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6をONし、同時に、前記赤外光投光装置3をONさせるものである。なお、前記の一定時間Tは、たとえば、0.5〜3秒程度とする。また、図2(A)および(B)において、点線は、前記ヘッドランプスイッチ2からのON/OFF検知信号を示し、実線は、前記ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6および前記赤外光投光装置3のON/OFFの状態を示す。
【0020】
一方、前記制御装置5は、前記ヘッドランプスイッチ2からのON検知信号が入力されてから一定時間T経過しない場合には、前記ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6のON状態および前記赤外光投光装置3のON状態を維持するものである。また、前記制御装置5は、前記ヘッドランプスイッチ2からのOFF検知信号が入力されてから一定時間T経過しない場合には、前記ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6のOFF状態および前記赤外光投光装置3のOFF状態を維持するものである。
【0021】
図4は、この実施例における車両用暗視装置を示す構成ブロック図である。この実施例における車両用暗視装置は、システムスイッチ8と、車速センサー9と、照度センサー10と、ヘッドランプスイッチ2と、ECU(前記制御装置)5と、システム11と、HUD(前記ヘッドアップディスプレイ装置)6、7と、赤外投光器(前記赤外光投光装置)3と、カメラ(前記赤外光暗視カメラ装置)4と、ハイビーム(前記車両用前照灯)1と、を備えるものである。前記システムスイッチ8、前記車速センサー9、前記照度センサー10、前記ヘッドランプスイッチ2、前記システム11と、前記HUD6、7と、前記赤外投光器3と、前記カメラ4と、前記ハイビーム1は、前記ECU5にそれぞれ接続されている。
【0022】
前記システムスイッチ8は、手動もしくは自動により、ON/OFFして、前記システム11、すなわち、この実施例における車両用暗視装置であって、前記ヘッドアップディスプレイ装置6、7および前記赤外光投光装置3および前記赤外光暗視カメラ装置4を同時にON/OFFするものである。前記車速センサー9は、車速を検出して車速信号として前記ECU5に出力するものである。前記照度センサー10は、車両Cの周囲の明るさを検知して、車両Cの周囲の明るさがある値以上のときにハイレベルの信号を、また、ある値未満のときにローレベルの信号を前記ECU5に出力するものである。前記車速センサー9および前記照度センサー10は、前記システム11を自動的にON/OFFするものである。
【0023】
この実施例における車両用暗視装置は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について添付図面、特に、図1を参照して説明する。図1(A)は、システムスイッチ8のON/OFF操作、車速センサー9および照度センサー10のON/OFFの出力信号、システム11のON/OFFの状態示すタイムチャートである。図1(B)は、車両用前照灯1のハイビームの照射(ON)/停止(OFF)の状態、ヘッドランプスイッチ2のON/OFF操作およびON/OFFの出力信号示すタイムチャートである。図1(C)は、ヘッドアップディスプレイ装置(HUD)6、7のON/OFFの状態を示すタイムチャートである。図1(D)は、赤外光投光装置(赤外投光器)3の赤外光の照射(ON)/停止(OFF)の状態を示すタイムチャートである。
【0024】
まず、システム11がOFFの状態において、ヘッドランプスイッチ2をON/OFFすると、ヘッドランプスイッチ2からON/OFF検知信号が制御装置5に出力され、車両用前照灯1からハイビームが照射されたり停止されたりする(ON/OFFする)。たとえば、対向車や先行車が少ない道路で高速走行する場合には、車両用前照灯1からハイビームを照射し、また、対向車や先行車が多い道路で高速走行する場合や市街地を走行する場合には、ハイビームの照射を停止させて車両用前照灯1からミドルビームやロービームを照射する。
【0025】
つぎに、車両用前照灯1からのハイビームの照射が停止(OFF)されているときに、システム11がONの状態になると、ヘッドアップディスプレイ装置6、7および赤外光投光装置3および赤外光暗視カメラ装置4がONの状態となる。すると、赤外光暗視カメラ装置4が車両Cの前方であって赤外光投光装置3から照射される赤外光の領域で目視では視認できない情報を撮像する。この赤外光暗視カメラ装置4で撮像された目視では視認できない情報は、制御装置5において目視で視認できる画像として画像処理され、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6から画面7に投影されて、ドライバーDの前方で結像される。ドライバーDが結像された画像を目視で視認することにより、夜間において遠方の照度が低く目視では視認できない情報を視認することができ、夜間走行における交通安全に貢献することができる。すなわち、この例では、対向車や先行車が多い道路で高速走行する場合や市街地を走行する場合において、車両用前照灯1からのハイビームの照射を停止させて車両用前照灯1からミドルビームやロービームを照射しているときに、システム11をONすることにより、遠方の目視では視認できない情報をも視認することができる。
【0026】
システム11がONの状態において、ヘッドランプスイッチ2をONすると、ヘッドランプスイッチ2からON検知信号が制御装置5に出力され、車両用前照灯1からハイビームが照射される。また、ヘッドランプスイッチ2からのON検知信号が制御装置5に入力されてから一定時間Tが経過すると、図1中のAの部分および図2(A)に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置6、7および赤外光投光装置3がOFFの状態となる。この結果、ドライバーDがハイビームにより遠方を目視で視認する場合において、ドライバーDの前方で結像されていた画像が消えるので、ドライバーDのハイビームによる遠方の目視視認がヘッドアップディスプレイ装置6、7の画像により妨げられることがなく、確実に確保される。これにより、対向車や先行車が多い道路で高速走行する場合や市街地を走行する場合から、対向車や先行車が少ない道路で高速走行する場合において、前記のように、ドライバーDのハイビームによる遠方の目視視認が確実に確保される。
【0027】
それから、システム11がONの状態で、また、車両用前照灯1からハイビームが照射されている状態で、さらに、ヘッドアップディスプレイ装置6、7および赤外光投光装置3がOFFの状態のときにおいて、ヘッドランプスイッチ2をOFFする。すると、ヘッドランプスイッチ2からOFF検知信号が制御装置5に出力され、車両用前照灯1からのハイビームの照射が停止される。また、ヘッドランプスイッチ2からのOFF検知信号が制御装置5に入力されてから一定時間Tが経過すると、図1中のBの部分および図2(B)に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置6、7および赤外光投光装置3がONする。この結果、対向車や先行車が少ない道路で高速走行する場合から、対向車や先行車が多い道路で高速走行する場合や市街地を走行する場合において、前記のように、目視では視認できない夜間の遠方の情報が目視で視認できる画像としてドライバーDに視認される。
【0028】
そして、システム11がONの状態で、また、車両用前照灯1からのハイビームの照射が停止されている状態で、さらに、ヘッドアップディスプレイ装置6、7および赤外光投光装置3がONの状態のときにおいて、ヘッドランプスイッチ2を短期にON/OFFして、車両用前照灯1をパッシング作動させる。すると、図1中のCの部分に示すように、ヘッドランプスイッチ2から短期のON/OFF検知信号が制御装置5に出力される。この結果、ヘッドランプスイッチ2からのON検知信号が制御装置5に入力されてから一定時間T経過しないうちに、つづいて、ヘッドランプスイッチ2からOFF検知信号が制御装置5に入力されるので、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6および赤外光投光装置3は、ON状態を維持する。このように、車両用前照灯1をパッシング作動させる際に、ヘッドランプスイッチ2を短期にON/OFFしても、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6および赤外光投光装置3がON状態を維持するので、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6および赤外光投光装置3の不要なON/OFFを避けることができ、その分、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6および赤外光投光装置3の耐久性が向上される。
【0029】
なお、システム11がONの状態で、また、車両用前照灯1からのハイビームを照射している状態で、さらに、ヘッドアップディスプレイ装置6、7および赤外光投光装置3がOFFの状態のときにおいて、ヘッドランプスイッチ2を短期にON/OFFして、車両用前照灯1をパッシング作動させる場合でも同様に、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6および赤外光投光装置3の現状のOFF状態が維持される。すなわち、ヘッドランプスイッチ2から短期のON/OFF検知信号が制御装置5に出力される。この結果、ヘッドランプスイッチ2からのOFF検知信号が制御装置5に入力されてから一定時間T経過しないうちに、つづいて、ヘッドランプスイッチ2からON検知信号が制御装置5に入力されるので、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6および赤外光投光装置3は、OFF状態を維持する。
【0030】
最後に、車両用前照灯1からのハイビームの照射が停止(OFF)されているときに、システム11がOFFの状態になると、ヘッドアップディスプレイ装置6、7および赤外光投光装置3および赤外光暗視カメラ装置4がOFFの状態となる。
【0031】
この実施例における車両用暗視装置は、以上のごとき構成からなり、以下、その効果について説明する。
【0032】
この実施例における車両用暗視装置は、システム11がONの状態において、ヘッドランプスイッチ2をONして車両用前照灯1からハイビームが照射されと、ヘッドランプスイッチ2からのON検知信号が制御装置5に入力され、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6および赤外光投光装置3がOFFの状態となる。この結果、この実施例における車両用暗視装置は、ドライバーDがハイビームにより遠方を目視で視認する場合において、ドライバーDの前方で結像されていた画像が消えるので、ドライバーDのハイビームによる遠方の目視視認がヘッドアップディスプレイ装置6、7の画像により妨げられることがなく、確実に確保される。これにより、この実施例における車両用暗視装置は、ドライバーDのハイビームによる遠方の目視視認が確実に確保され、交通安全に貢献することができる。
【0033】
特に、この実施例における車両用暗視装置は、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6のOFFと同時に赤外投光装置3がOFFするので、消費電力を軽減することができ、省エネルギーに貢献することができる。
【0034】
また、この実施例における車両用暗視装置は、ヘッドランプスイッチ2を短期にON/OFFしても、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6および赤外光投光装置3がON状態を維持するので、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6および赤外光投光装置3の不要なON/OFFを避けることができ、その分、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6および赤外光投光装置3の耐久性が向上される。
【0035】
なお、この実施例においては、ヘッドランプスイッチ2からのON検知信号に基づいて、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6および赤外光投光装置3をOFFして、ヘッドアップディスプレイ装置の画像や画面をドライバーDのハイビームによる遠方の目視視認から回避させるものである。ところが、この発明においては、ヘッドランプ2からのON検知信号に基づくヘッドアップディスプレイ装置6、7の回避制御として、画面7を小型化したり、画面7の画像の輝度を低くしたり、画像の位置をドライバーDの視線から遠ざけたりしても良い。
【0036】
また、この実施例においては、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6と赤外光投光装置3とを同時にOFFするものである。ところが、この発明においては、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6をOFFして赤外光投光装置3をONの状態のままでも良い。
【0037】
さらに、この実施例においては、ヘッドランプスイッチ2からのON/OFF検知信号が入力されてから一定時間経過した場合に、ヘッドアップディスプレイ装置の表示器6および赤外光投光装置3をOFF/ONするものである。ところが、この発明においては、時間差を設定せずに、ヘッドランプスイッチ2からのON/OFF検知信号が入力されたら直ちにヘッドアップディスプレイ装置の表示器6および赤外光投光装置3をOFF/ONするものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明にかかる車両用暗視装置の実施例を示す要部の構成部品のON/OFFのタイムチャートである。
【図2】同じく、一定時間経過後の要部の構成部品のON/OFFを示すタイムチャートである。
【図3】同じく、車両に装備した状態を示す説明図である。
【図4】同じく、要部の構成部品を示す構成ブロック図である。
【符号の説明】
【0039】
C 車両
D ドライバー
1 車両用前照灯(ハイビーム)
2 ヘッドランプスイッチ(ハイビーム検知手段)
3 赤外光投光装置(赤外投光器)
4 赤外光暗視カメラ装置(カメラ)
5 制御装置(ECU)
6 表示器(ヘッドアップディスプレイ装置)
7 画面(ヘッドアップディスプレイ装置)
8 システムスイッチ
9 車速センサー
10 照度センサー
11 システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目視では視認できない情報を赤外光暗視カメラ装置で撮像して、その情報を目視で視認できる画像としてヘッドアップディスプレイ装置で表示する車両用暗視装置において、
目視では視認できない情報を撮像する前記赤外光暗視カメラ装置と、
前記赤外光暗視カメラ装置で撮像した情報を目視で視認できる画像としてドライバーの前方の画面に投影する前記ヘッドアップディスプレイ装置と、
車両用前照灯のハイビームの照射のONを検知してON検知信号を出力するハイビーム検知手段と、
前記ハイビーム検知手段からのON検知信号に基づいて、前記ヘッドアップディスプレイ装置の画像や画面をドライバーのハイビームによる遠方の目視視認から回避させる制御装置と、
を備えることを特徴とする車両用暗視装置。
【請求項2】
前記赤外光暗視カメラ装置の撮像範囲に赤外光を照射する赤外光投光装置を備え、
前記制御装置は、前記ハイビーム検知手段からのON検知信号に基づいて、前記ヘッドアップディスプレイ装置の回避制御と同時に、前記赤外光投光装置の赤外光の照射をOFFさせる、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用暗視装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記ハイビーム検知手段からのON検知信号が入力されてから一定時間経過した場合には、前記ヘッドアップディスプレイ装置の回避制御、前記赤外光投光装置のOFF制御を行い、一定時間経過しない場合には、前記ヘッドアップディスプレイ装置、前記赤外光投光装置の現状を維持する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用暗視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−182041(P2006−182041A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374449(P2004−374449)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】