説明

車両用灯具

【課題】 プリズムレンズの大型化を伴うことなく線状光源のLEDの増加による照度向上が可能で、灯具全体のコンパクト化および軽量化を可能にすること。
【解決手段】 線状光源2とプリズムレンズ3とを備えた車両用灯具10である。プリズムレンズ3は、一側端面を入射面7とし他側端面を出射面6とする本体部8と、入射面7の長さ方向に沿って形成される受光部11と、受光部11の底面の長さ方向に沿って形成される直射光入射部12と、出射面6の中央部の長さ方向に沿って形成される直射光出射部13と、出射面6の直射光出射部13の上側および下側にそれぞれ形成される第1反射光出射部14および第2反射光出射部15とを有して構成される。線状光源2は、複数個のLED1を、その発光部1aを受光部11に嵌入させて組み付けることによって構成される。複数個のLED1は相互の間隔を可及的に小さくして組み付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドランプ、テールランプ、ストップランプなど車両用灯具に関するものであり、詳細にはLED(発光ダイオード)を光源とする車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
図12および図13は、この種の車両用灯具100を示す(例えば、特許文献1参照)。この車両用灯具100は、複数個のLED1を線状に整列してなる線状光源2と、該線状光源2の光を導入して前方へ出射するプリズムレンズ3と、ハウジング4と、LED基板5とを備えて大略構成されている。この車両用灯具100は、車両の後部に取り付けられてバックランプを構成している。図12中、符号Xで示す矢印は車両の後方向を示す。
【0003】
ハウジング4は、正面および背面に開口部を有する筒状体に形成されている。線状光源2は、4個のLED1を左右方向に延びる同一直線状に整列させてLED基板5上に取り付けることによって構成されており、LED基板5をハウジング4の背面開口部を閉塞するように取り付けることによって、ハウジング4の背面開口部側に取り付けられている。
【0004】
また、プリズムレンズ3は、透明なアクリル樹脂により射出成形され、両端面がそれぞれ出射面6および入射面7として形成されている厚肉板部材からなる本体部8と、入射面7に一体に突設されている4個のリフレクタ部9と、各リフレクタ部9の先端に凹状に形成されている受光部11とを有して構成されている。このとき各リフレクタ部9は、その背面側に回転放物面からなる外周面9aを有して構成されている。
【0005】
そして、プリズムレンズ3は、その出射面6を正面開口部に位置させると共に、各リフレクタ部9の受光部11に、線状光源2の各LED1の発光部1aを嵌入させることによってハウジング4に組み付けられている。
【0006】
このように構成された車両用灯具100によれば、各LED1の光は受光部11からリフレクタ部9の内部に導入された後、外周面9aによる反射光となって、あるいは直射光のまま本体部8の内部を導光されて出射面6から外方へ出射される。図12中、LED1の光は矢印で示している。
【0007】
また、線状光源としては、他に線状に形成された面発光素子からなる線状光源がある(例えば、特許文献2,3参照)。この線状光源は、有機EL素子、有機エレクトロルミネセンス、有機電界発光素子、有機LED素子等と称される有機材料のエレクトロルミネセンス現象を利用した有機エレクトロルミネセンス素子で、少なくとも面状の有機材料からなる発光層を線状に形成した自発光素子を有して構成されている。
【特許文献1】特開2004−103503公報
【特許文献2】特開2002−156633公報
【特許文献3】特開2003−31007公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、車両用灯具100は、各リフレクタ部9が回転放物面からなる外周面9aを有して個々に設けられるものであるから、その形成には各リフレクタ部9、9間に金型の嵌入代が必要となり、そのため各リフレクタ部9、9の設置間隔は複数のLED1の直線上整列に必要な各LED1、1間の間隔以上となり、これにより照度向上のためにLED1の個数を増加させることは即プリズムレンズ3およびLED基板5の大型化を招き、ひいては灯具全体の大型化および重量増を招く、という課題を有している。
【0009】
さらに、車両用灯具100は、受光部11が各LED1毎に区画されて形成されているので、LED1を線状に整列してなる線状光源2の適用は可能であるが、線状に形成された面発光素子からなる線状光源は適用できない等、設計自由度が狭い、という課題をも有している。
【0010】
そこで、本発明は、灯具全体の大型化を伴うことなく線状光源の照度向上が可能であると共に、灯具全体のコンパクト化および軽量化を可能にし、かつ面発光素子からなる線状光源も適用可能で設計自由度の拡大をも図ることができる車両用灯具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した目的を達成するため、請求項1記載の発明は、直線状に長い線状光源と、該線状光源の光を導入して前方へ出射するプリズムレンズとを備えた車両用灯具であって、
前記プリズムレンズは、放物線形状の外周を備えた断面扇形状の柱体として形成されると共に前記放物線の焦点位置の付近から頂部側部分を前記断面に直交する長さ方向に切除して形成され切除側の一側端面を入射面とし前記入射面と反対側の他側端面を出射面とし長さ方向を横軸としてセッティングされる本体部と、前記入射面の幅方向の中央部に長さ方向に沿って略コ字形断面の凹条に形成される受光部と、前記受光部の底面の長さ方向に沿って断面凸曲形状の先端面を有する凸条として形成される直射光入射部と、前記出射面の中央部の長さ方向に沿って断面凸曲形状の先端面を有する凸条として形成される直射光出射部と、前記出射面の前記直射光出射部の上側および下側にそれぞれ形成される第1反射光出射部および第2反射光出射部とを有して構成されており、
前記線状光源は、その発光部を前記受光部に嵌入させることによって組み付けられていることを特徴とする。
【0012】
このため、請求項1記載の発明では、線状光源の光は、受光部の両側面および受光部の底面に凸条として形成される直射光入射部を介して本体部に導入される。受光部の両側面から本体部に導入された光は、主に、それぞれ本体部の上下両側面を構成する放物面状の外周面に達し、この外周面で全反射されてそれぞれ第1反射光出射部および第2反射光出射部から外方へ出射される。このとき出射される反射光は、第1反射光出射部および第2反射光出射部からのものを総合して本体部の長さ方向に長い横長の帯状の配光パターンとなる。
【0013】
また、直射光入射部から本体部に導入された光は、主に、本体部の中央部分を導光されて凸条に形成される直射光出射部に達し、その先端面から外方へ出射される。このとき出射される直射光は、直射光入射部および直射光出射部の各先端面の凸面形状により直射光出射部の上下両側に広がる拡散が抑制されて、直射光出射部の長さ方向に長い横長の帯状の配光パターンとなる。
【0014】
そして、これら出射される反射光および直射光による各配光パターンを重合させて所望の配光パターンが得られる。
【0015】
このようにプリズムレンズは、外周面の全反射による反射光制御と、直射光入射部および直射光出射部による直射光制御により、線状光源の光束を効率よく前方へ照射することができる。
【0016】
また、受光部は、本体部の長さ方向に沿って略コ字形断面の凹条に形成され、線状光源の構成要素毎に区分けされること無く連続して形成されているので、線状光源としては、複数個のLEDを線状に整列してなる線状光源、および線状に形成された面発光素子からなる線状光源を共に適用することができると共に、線状光源を受光部の長さ方向に沿って密に設置することができる。例えば、複数個のLEDからなる場合には、LED同士の相互の間隔を可及的に小さくして組み付けることができる。
【0017】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の車両用灯具であって、
前記直射光入射部および前記直射光出射部の各先端面は、前記本体部の光軸の下側に曲率中心を有して形成されると共に、前記直射光入射部の先端面は、前記直射光出射部の先端面よりも小さな曲率半径を有して形成されていることを特徴とする。
【0018】
このため、請求項2記載の発明では、直射光は、曲率中心を本体部の光軸の下側に設定した直射光入射部および直射光出射部の各先端面を介して下向きに制御され、かつ直射光出射部の上下両側に広がる拡散が曲率半径の相違に基づいて抑制されて前方へ出射する。
【0019】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の車両用灯具であって、
前記第1反射光出射部は、前記本体部の光軸に略直交する平坦面に形成されていると共に、前記第2反射光出射部は、前記直射光出射部側を前記入射面側に漸近させた傾斜凸面に形成されていることを特徴とする。
【0020】
このため、請求項3記載の発明では、第1反射光出射部から出射する反射光は、本体部の光軸と略平行に出射すると共に、第2反射光出射部から出射する反射光は、本体部の光軸に対し下向きに出射する。
【0021】
また、請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用灯具であって、
前記線状光源は、その発光部の発光中心を、前記本体部の断面扇形状の焦点位置よりも前記出射面側へオフセットした位置にセッティングして、組み付けられていることを特徴とする。
【0022】
このため、請求項4記載の発明では、本体部の上側放物面状の外周面に達した線状光源の光は、本体部の光軸に対し下向きの反射光となって第1反射光出射部から前方へ出射する。
【0023】
また、請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用灯具であって、
前記受光部は、その両側面に、幅方向に沿って形成される断面凸曲形状の先端面を有する小凸条を長さ方向に複数併設してなる上部プリズムおよび下部プリズムをそれぞれ形成することにより構成されていることを特徴とする。
【0024】
このため、請求項5記載の発明では、本体部に導入される光の内、受光部の両側面から導入される光は、両側面にそれぞれ形成される上部プリズムおよび下部プリズムにより、本体部の長さ方向の拡散角が抑制された状態で導入される。
【0025】
また、請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用灯具であって、
前記直射光入射部は、前記受光部の底面に形成される凸条に、幅方向に沿って形成される断面凸曲形状の先端面を有する小凸条を長さ方向に複数併設してなる中部プリズムを形成することにより構成されていることを特徴とする。
【0026】
このため、請求項6記載の発明では、直射光入射部は、本体部の長さ方向に形成される凸条(横凸条)に、幅方向の小凸条(縦凸条)を重ねて形成したので、魚眼状に形成される。そして本体部に導入される光の内、受光部の底面から導入される光は、底面の凸条に形成される中部プリズムにより、本体部の長さ方向の拡散角が抑制された状態で導入される。
【0027】
また、請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用灯具であって、
前記直射光出射部は、その断面凸曲形状の先端面が、上側部分よりも下側部分の曲率半径が大きくなる複合R面で形成されていることを特徴とする。
【0028】
このため、請求項7記載の発明では、直射光出射部から外方へ出射する光の内、複合R面の上側部分からの出射光は、上下幅の広い第1配光パターンを奏することができると共に、下側部分からの出射光は、前記第1配光パターンよりも上下幅の狭い第2配光パターンを奏することができ、総じて第2配光パターンをスクリーン上のH軸に寄せて第1配光パターンに重ねた直射光配光パターンを奏することができる。
【0029】
このときの複合R面は、それを構成する上側部分および下側部分の各曲率半径を変更することにより、各種形状に形成することができるので、これにより直射光配光パターンの上下幅および直射光配光パターン中の集光ゾーン(第2配光パターンの重なる部分)の位置付けを制御することができる。
【発明の効果】
【0030】
請求項1記載の発明によれば、受光部は、本体部の長さ方向に沿って略コ字形断面の凹条に形成され、線状光源の構成要素毎に区分けされること無く連続して形成されているので、線状光源を受光部の長さ方向に沿って密に設置することができ、これによりプリズムレンズの大型化を伴うことなく照度向上が可能で、ひいては灯具全体のコンパクト化および軽量化を可能にした車両用灯具を提供することができる。
【0031】
また、線状光源としては、複数個のLEDを線状に整列してなる線状光源、および線状に形成された面発光素子からなる線状光源を共に適用することができ、これにより設計自由度の拡大をも図ることができる。
【0032】
その上、プリズムレンズは、外周面の全反射による反射光制御と、直射光入射部および直射光出射部による直射光制御により、LEDの光束を効率よく前方へ照射することができるので、この点でも灯具の照度向上に寄与することができ、ひいては灯具全体のコンパクト化および軽量化が可能になる。
【0033】
また、請求項2記載の発明によれば、直射光は、直射光入射部および直射光出射部の各先端面を介して本体部の光軸に対して下向きに制御され、かつ直射光出射部の上下両側に広がる拡散が抑制されて前方へ出射することになるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、プリズムレンズの光軸に沿う中央部分の厚みを薄くできると共に、グレア光を極力抑制した出射光を奏することができる。
【0034】
また、請求項3記載の発明によれば、第1反射光出射部からの反射光は、本体部の光軸と平行に出射すると共に、第2反射光出射部からの反射光は、本体部の光軸に対し下向きに出射するので、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、上下に幅広の配光パターンを奏することができる。
【0035】
また、請求項4記載の発明によれば、本体部の上側放物面状の外周面に達した線状光源の光は、本体部の光軸に対し下向きの反射光となって第1反射光出射部から前方へ出射するので、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、全体の配光パターンの水平ラインをスクリーン上のH軸以下に制御することができる。
【0036】
また、請求項5記載の発明によれば、受光部の両側面から導入される光は、両側面にそれぞれ形成される上部プリズムおよび下部プリズムにより、本体部の長さ方向の拡散角が抑制された状態で導入されるので、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、本体部の長さ方向に拡散気味であった反射光の配光パターンを同方向に狭める方向で配光することができ、これにより配光パターン全体の照度が向上し、ひいてはドライバーの視認性の向上を図ることができる。
【0037】
また、請求項6記載の発明によれば、受光部の底面から導入される光は、底面の凸条に形成される中部プリズムにより、本体部の長さ方向の拡散角が抑制された状態で導入されるので、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、本体部の長さ方向に拡散気味であった直射光の配光パターンを同方向に狭める方向で配光することができ、これにより配光パターン全体の照度が向上し、ひいてはドライバーの視認性の向上を図ることができる。
【0038】
また、請求項7記載の発明によれば、直射光配光パターンの上下幅を広くすると共に、直射光配光パターン中の集光ゾーンをスクリーン上のH軸寄りに形成することができるので、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、ドライバーの視認性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、図12および図13に開示したものと同一機能を奏する構成要素は、同一符号を付して説明する。
【0040】
図1は、本発明の第1実施形態としての車両用灯具10を示す。この車両用灯具10は、前照灯として適用されるもので、複数個のLED1、1、…を線状に整列してなる線状光源2と、該線状光源2の光を導入して前方へ出射するプリズムレンズ3とを備えて大略構成されている。
【0041】
このときのLED1は、LEDのパッケージとして構成されており、かつ線状光源2は、5個のLED1で構成されている。
【0042】
また、プリズムレンズ3は、図1および図2に示すように、入射面7と出射面6とを備えた本体部8と、入射面7に設けた受光部11と、受光部11に設けた直射光入射部12と、出射面6に設けた直射光出射部13と、出射面6に設けた第1反射光出射部14および第2反射光出射部15とを有して構成されており、例えば透明なアクリル樹脂により一体的に射出成形される。
【0043】
本体部8は、放物線形状(図2中、破線部分を含む)の外周を備えた断面扇形状の柱体として形成されると共に前記放物線の焦点位置Fから頂部側部分(図2中の破線部分)を前記断面に直交する長さ方向(図2の紙面に直交する方向)に切除して形成され切除側の一側端面を入射面7とし入射面7と反対側の他側端面を出射面6として形成されるものであって、長さ方向を横軸としてセッティングされる。
【0044】
また、受光部11は、入射面7の幅方向の中央部に長さ方向に沿って略コ字形断面の凹条に形成される。この受光部11では、両側面11a、11bも共に光の入射部を構成している。
【0045】
また、直射光入射部12は、受光部11の底面の長さ方向に沿って断面凸曲形状の先端面を有する凸条として形成されている。これにより受光部11は、いずれも本体部8の長さ方向に連続して形成される両側面11a、11b、および直射光入射部12からなる入射部を備えて構成されている。
【0046】
また、直射光出射部13は、出射面6の中央部の長さ方向に沿って断面凸曲形状の先端面を有する凸条として形成されており、第1反射光出射部14および第2反射光出射部15は、出射面6の直射光出射部13の上側および下側にそれぞれ形成されている。
【0047】
さらに、線状光源2は、5個のLED1を、その発光部1aを受光部11に嵌入させて組み付けることによって構成されている。すなわち、5個のLED1は、その基端側を基板5に固着すると共に、その発光部1aを、基板5に入射面7を対向させて長さ方向を横軸としてセッティングされた本体部8の受光部11に嵌入させて組み付けられている。このとき各LED1は、その発光部1aの発光中心Oを、本体部8の外周形状である放物線の略焦点位置Fに略合致させて取り付けられている。
【0048】
このようにして構成された車両用灯具10においては、図3に示すように、5個のLED1の光は、受光部11の両側面11a、11bおよび受光部11の底面に凸条として形成される直射光入射部12を介して本体部8に導入される。受光部11の両側面11a、11bから本体部8に導入された光は、主に、それぞれ本体部8の上下両側面を構成する放物面状の外周面8a、8bに達し、この外周面8a、8bで全反射されてそれぞれ第1反射光出射部14および第2反射光出射部15から外方へ出射される。すなわち、第1反射光出射部14から反射光L1が、第2反射光出射部15から反射光L2がそれぞれ出射し、これら反射光L1およびL2が総合して本体部8の長さ方向に長い横長の帯状の配光パターンとなる。
【0049】
また、直射光入射部12から本体部8に導入された光は、主に、本体部8の中央部分を導光されて凸条に形成される直射光出射部13に達し、その先端面から外方へ出射される。このとき出射される直射光L3は、直射光入射部12および直射光出射部13の各先端面の凸面形状により直射光出射部13の上下両側に広がる拡散が抑制されて、直射光出射部13の長さ方向に長い横長の帯状の配光パターンとなる。
【0050】
そして、これら出射される反射光L1、L2および直射光L3による各配光パターンを重合させて、図4に示すような所望の配光パターンLPが得られる。
【0051】
このようにプリズムレンズ3は、その外周面8a、8bの全反射による反射光制御と、直射光入射部12および直射光出射部13による直射光制御により、LED1の光束を効率よく前方へ照射することができる。シュミレーションによれば、本実施形態のLED1の光束の利用効率は、70〜80%となる。
【0052】
また、受光部11は、本体部8の長さ方向に沿って略コ字形断面の凹条に形成され、各LED1毎に区分けされること無く連続して形成されているので、そこに発光部1aを嵌入させて線状光源2を構成する5個のLED1は相互の間隔を可及的に小さくして組み付けることができる。本実施形態では、各LED1のパッケージは、相互に接触させた状態で線列状に組み付けられている。
【0053】
したがって、車両用灯具10は、プリズムレンズ3の大型化を伴うことなく、線状光源2を構成するLED1の個数の増加による照度向上が可能で、ひいては灯具全体のコンパクト化および軽量化をも可能である。
【0054】
その上、プリズムレンズ3はLED1の光束の利用効率を向上させる構造となっているので、灯具として必要な照度を少ない個数のLED1で達成することができ、この点でも灯具全体のコンパクト化および軽量化が可能になる。
【0055】
また、好ましくは、本実施形態のように、直射光入射部12および直射光出射部13の各先端面は、本体部8の光軸Zの下側に曲率中心を有して形成されると共に、直射光入射部12の先端面は、直射光出射部13の先端面よりも小さな曲率半径を有して形成される。
【0056】
すなわち、図2に示すように、直射光入射部12の先端面は、曲率中心C1、曲率半径r1を有して形成されており、直射光出射部13の先端面は、曲率中心C2、曲率半径r2を有して形成されている。曲率半径r1およびr2は、例えば、r1=5mmおよびr2=10mmに設定される。
【0057】
この構成では、直射光L3は、直射光入射部12および直射光出射部13の各先端面を介して下向きに制御され、かつ直射光出射部13の上下両側に広がる拡散が直射光入射部12と直射光出射部13の曲率半径の相違に基づいて抑制されて前方へ出射することになるので、プリズムレンズ3の光軸Zに沿う中央部分の厚みTを薄くできると共に、グレア光を極力抑制した出射光を奏することができる。プリズムレンズ3の厚みTは、例えば、T=22mmに設定される。
【0058】
さらに好ましくは、本実施形態のように、第1反射光出射部14は、本体部8の光軸Zに略直交する平坦面に形成されていると共に、第2反射光出射部15は、直射光出射部13側を入射面7側に漸近させた傾斜凸面に形成される。
【0059】
すなわち、第1反射光出射部14は、光軸Zに直交する平坦面に対し傾斜角度0〜5°(直射光出射部13側を入射面7側に漸近させる)の平坦面を有して形成されている。また、第2反射光出射部15は、図2に示すように、光軸Zに直交する平坦面に対する傾斜角度θ、曲率半径r3を有して形成されている。傾斜角度θは、反射光L2を下向きにできる角度で、例えばθ=13°に設定され、曲率半径r3は、例えば、r3=300mmに設定される。
【0060】
この構成では、第1反射光出射部14から出射する反射光L1は、本体部8の光軸Zと略平行に出射すると共に、第2反射光出射部15から出射する反射光L2は、本体部8の光軸Zに対し下向きに出射するので、図4に示すように、上下に幅広の配光パターンLP1(図4中、上下幅を符号dで示す)を奏することができる。
【0061】
図5は、この配光パターンLP1を構成する各配光パターンP1、P2、およびP3を示す。すなわち、図5(a)は、反射光L1による配光パターンP1であり、該配光パターンP1は、シャープなカットラインを有する上下幅の狭いパターンとなっている。図5(b)は、直射光L3による配光パターンP2であり、該配光パターンP2は、カットラインを特に持たない上下幅の広い(大略10度程度)パターンとなっている。図5(c)は、反射光L2による配光パターンP3であり、該配光パターンP3は、配光パターンP1よりも緩やかなカットラインを有すると共に、配光パターンP1と配光パターンP2の中間の上下幅を有するパターンとなっている。
【0062】
図6は、本発明の第2実施形態としての車両用灯具20を示す。この車両用灯具20は、LED1のセッティング位置が異なるだけで、他の構成は前述した車両用灯具10と同様に構成されている。
【0063】
すなわち、車両用灯具20では、5個のLED1は、その全ての発光部1aの発光中心Oを、本体部8の断面扇形状の焦点位置Fよりも出射面6側へオフセットした位置にセッティングして、組み付けられている。
【0064】
具体的には、本体部8は、放物線形状の外周を備えた断面扇形状の柱体として形成されると共に前記放物線の焦点位置Fを含む頂部側部分を前記断面に直交する長さ方向に切除して形成され切除側の一側端面を入射面7とし入射面7と反対側の他側端面を出射面6として形成されている。
【0065】
すなわち、第2実施形態にあっては、本体部8の断面扇形状の焦点位置Fは、受光部11の開口部に対向するように入射面7の外側に位置しており、本体部8の内側には位置していない。このため、LED1は、その発光部1aを、前述した車両用灯具10と同様にして、受光部11に嵌入させることにより、その発光部1aの発光中心Oを、本体部8の断面扇形状の焦点位置Fよりも出射面6側へオフセットした位置にセッティングして組み付けることができる。
【0066】
このように構成された車両用灯具20では、本体部8の上側放物面状の外周面8aに達したLED1の光は、本体部8の光軸Zに対し下向きの反射光L1となって第1反射光出射部14から前方へ出射する。図6中、符号Z1は光軸Zの平行線を示している。
【0067】
このため車両用灯具20は、全体の配光パターンLP1(図4参照)の水平ラインをスクリーン上のH軸以下に制御することができる。
【0068】
図7は、本発明の第3実施形態としての車両用灯具に適用されるプリズムレンズ30を示す。この第3実施形態としての車両用灯具は、前述した車両用灯具10と同様に前照灯として適用されるもので、複数個のLED1、1、…を線状に整列してなる線状光源2(図1参照)と、該線状光源2の光を導入して前方へ出射するプリズムレンズ30とを備えて大略構成されている。
【0069】
また、プリズムレンズ30は、前述した車両用灯具10のプリズムレンズ3と同様に、入射面7と出射面6とを備えた本体部8と、入射面7に設けた受光部11と、受光部11に設けた直射光入射部12と、出射面6に設けた直射光出射部13と、出射面6に設けた第1反射光出射部14および第2反射光出射部15とを有して構成されており、例えば透明なアクリル樹脂により一体的に射出成形される。
【0070】
そしてプリズムレンズ30では、受光部11は、図7および図8に示すように、その両側面11a、11bに、幅方向に沿って形成される断面凸曲形状の先端面を有する小凸条31a、31a、…および32a、32a、…を長さ方向に複数併設してなる上部プリズム31および下部プリズム32をそれぞれ形成することにより構成されている。本実施形態では、上部プリズム31は、5個の小凸条31aを併設して構成されており、下部プリズム32は、5個の小凸条32aを併設して構成されており、かつ小凸条31a、32aは、例えば曲率半径r4がr4=15mmで形成される。
【0071】
このプリズムレンズ30を適用した第3実施形態では、本体部8に導入される光の内、受光部11の両側面11a、11bから導入される光は、両側面11a、11bにそれぞれ形成される上部プリズム31および下部プリズム32により、本体部8の長さ方向の拡散角が抑制された状態で導入される。このため本体部8の長さ方向(スクリーン上のH軸方向)に拡散気味であった反射光の配光パターン(図5(a)の配光パターンP1、および図5(c)の配光パターンP3参照)を同方向に狭める方向で配光することができ、これにより配光パターン全体の照度が向上し、ひいてはドライバーの視認性の向上を図ることができる。
【0072】
また、プリズムレンズ30では、直射光入射部12は、好ましくは本実施形態(図7および図8参照)のように、受光部11の底面に形成される凸条に、幅方向に沿って形成される断面凸曲形状の先端面を有する小凸条33aを長さ方向に複数併設してなる中部プリズム33を形成することにより構成されている。本実施形態では、中部プリズム33は、前述した小凸条31aおよび32aと同一間隔で形成される5個の小凸条33aを併設して構成されており、かつ小凸条33aは、例えば曲率半径r5がr5=50mmで形成される。
【0073】
この構成では、直射光入射部12は、本体部8の長さ方向に形成される凸条(横凸条)に、幅方向の小凸条33a(縦凸条)を重ねて形成したので、魚眼状に形成される。そして本体部8に導入される光の内、受光部11の底面から導入される光は、底面の凸条に形成される中部プリズム33により、本体部8の長さ方向の拡散角が抑制された状態で導入される。このため本体部8の長さ方向(スクリーン上のH軸方向)に拡散気味であった直射光の配光パターン(図5(b)の配光パターンP2参照)を同方向に狭める方向で配光することができ、これにより照度が向上し、ひいてはドライバーの視認性の向上を図ることができる。
【0074】
図9は、上部プリズム31、下部プリズム32、および中部プリズム33の備わったプリズムレンズ30を適用することにより得られる配光パターンLP2を示しており、該配光パターンLP2は、スクリーン上のH軸方向の幅D2を有しており、前述したプリズムレンズ3を適用した配光パターンLP1(図4参照)の同方向の幅D1に比べて充分狭くなっており(D1>D2)、その分配光パターンLP2全体の照度が向上し、ひいてはドライバーの視認性の向上を図ることができる。
【0075】
さらに、プリズムレンズ30では、好ましくは本実施形態(図7および図10参照)のように、直射光出射部13は、その断面凸曲形状の先端面が、上側部分34aよりも下側部分34bの曲率半径が大きくなる複合R面34で形成されている。
【0076】
すなわち、複合R面34は、曲率中心C3、曲率半径r6の上側部分34aと、曲率中心C4、曲率半径r7の下側部分34bとを有して形成されている。曲率半径r6およびr7は、r6<r7の関係にあり、例えば、r6=9mmおよびr7=11mmに設定される。このとき直射光入射部12の先端面は、プリズムレンズ3と同様に、曲率中心C1、曲率半径r1(=5mm)を有して形成されており、かつ曲率中心C1、C3、C4は、光軸Zよりも下位に設定される。この曲率中心C1、C3、C4を光軸Zよりも下位に設定することにより、配光パターンLP2の上端をスクリーン上のH軸よりも下方にすることができる(図9参照)。
【0077】
この構成では、図11に示すように、直射光出射部13から外方へ出射する光の内、複合R面34の上側部分34aからの出射光は、上下幅(V軸方向の幅)dの広い第1配光パターンP4aを奏することができると共に、下側部分34bからの出射光は、第1配光パターンP4aよりも上下幅の狭い第2配光パターンP4bを奏することができ、総じて第2配光パターンP4bをスクリーン上のH軸に寄せて第1配光パターンP4aに重ねた直射光配光パターンP4を奏することができる。第2配光パターンP4bの重なる部分(図11中、斜線を付して示す)は、直射光配光パターンP4中の集光ゾーンを構成することになる。
【0078】
このときの複合R面34は、それを構成する上側部分34aおよび下側部分34bの各曲率半径r6、r7を変更することにより、各種形状に形成することができるので、これにより直射光配光パターンP4の上下幅dおよび直射光配光パターン4中の集光ゾーンの位置付けを制御することができる。そして直射光配光パターンP4の上下幅dを広くすると共に、直射光配光パターンP4中の集光ゾーンをスクリーン上のH軸寄りに形成することにより、ドライバーの視認性の向上を図ることができる。
【0079】
なお、線状光源としては、前述した実施形態では、複数個のLED1を線状に整列してなる線状光源2を用いたが、本発明はこれに限定されるものでなく、線状に形成された面発光素子からなる線状光源(図示せず)をも光源として用いることができ、その場合、線状光源2と同等の作用効果を奏することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1実施形態としての車両用灯具の概略斜視図である。
【図2】図1の車両用灯具に適用されるプリズムレンズの横断面図である。
【図3】図1の車両用灯具の光路説明図である。
【図4】図1の車両用灯具の奏する配光パターンを示すグラフである。
【図5】図4の配光パターンを構成する各配光パターンの模式図で、(a)は第1反射光出射部からの反射光による配光パターン、(b)は直射光出射部の直射光による配光パターン、(c)は第1反射光出射部からの反射光による配光パターンをそれぞれ示す。
【図6】本発明の第2実施形態としての車両用灯具の光路説明図である。
【図7】本発明の第3実施形態としての車両用灯具に適用されるプリズムレンズの背面側からの斜視図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態としての車両用灯具の奏する配光パターンを示すグラフである。
【図10】図7のX−X線に沿う断面図である。
【図11】図7のプリズムレンズの直射光出射部の複合R面からの出射光の配光パターンを示すグラフである。
【図12】従来の車両用灯具の光路説明図である。
【図13】図12の車両用灯具に適用されるプリズムレンズで、(a)はその上面視斜視図、(b)はその下面視斜視図である。
【符号の説明】
【0081】
1 LED
1a 発光部(LEDの)
2 線状光源
3、30 プリズムレンズ
6 出射面
7 入射面
8 本体部
10、20 車両用灯具
11 受光部
11a、11b 側面(受光部の)
12 直射光入射部
13 直射光出射部
14 第1反射光出射部
15 第2反射光出射部
31 上部プリズム
31a 小凸条(上部プリズムの)
32 下部プリズム
32a 小凸条(下部プリズムの)
33 中部プリズム
33a 小凸条(中部プリズムの)
34 複合R面
34a 上側部分(複合R面の)
34b 下側部分(複合R面の)
C1、C2、C3、C4 曲率中心
F 焦点位置
O 発光中心
r1、r2、r3、r6、r7 曲率半径
Z 光軸(本体部の)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に長い線状光源と、該線状光源の光を導入して前方へ出射するプリズムレンズとを備えた車両用灯具であって、
前記プリズムレンズは、放物線形状の外周を備えた断面扇形状の柱体として形成されると共に前記放物線の焦点位置の付近から頂部側部分を前記断面に直交する長さ方向に切除して形成され切除側の一側端面を入射面とし前記入射面と反対側の他側端面を出射面とし長さ方向を横軸としてセッティングされる本体部と、前記入射面の幅方向の中央部に長さ方向に沿って略コ字形断面の凹条に形成される受光部と、前記受光部の底面の長さ方向に沿って断面凸曲形状の先端面を有する凸条として形成される直射光入射部と、前記出射面の中央部の長さ方向に沿って断面凸曲形状の先端面を有する凸条として形成される直射光出射部と、前記出射面の前記直射光出射部の上側および下側にそれぞれ形成される第1反射光出射部および第2反射光出射部とを有して構成されており、
前記線状光源は、その発光部を前記受光部に嵌入させることによって組み付けられていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用灯具であって、
前記直射光入射部および前記直射光出射部の各先端面は、前記本体部の光軸の下側に曲率中心を有して形成されると共に、前記直射光入射部の先端面は、前記直射光出射部の先端面よりも小さな曲率半径を有して形成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用灯具であって、
前記第1反射光出射部は、前記本体部の光軸に略直交する平坦面に形成されていると共に、前記第2反射光出射部は、前記直射光出射部側を前記入射面側に漸近させた傾斜凸面に形成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用灯具であって、
前記線状光源は、その発光部の発光中心を、前記本体部の断面扇形状の焦点位置よりも前記出射面側へオフセットした位置にセッティングして、組み付けられていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用灯具であって、
前記受光部は、その両側面に、幅方向に沿って形成される断面凸曲形状の先端面を有する小凸条を長さ方向に複数併設してなる上部プリズムおよび下部プリズムをそれぞれ形成することにより構成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用灯具であって、
前記直射光入射部は、前記受光部の底面に形成される凸条に、幅方向に沿って形成される断面凸曲形状の先端面を有する小凸条を長さ方向に複数併設してなる中部プリズムを形成することにより構成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用灯具であって、
前記直射光出射部は、その断面凸曲形状の先端面が、上側部分よりも下側部分の曲率半径が大きくなる複合R面で形成されていることを特徴とする車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−164923(P2006−164923A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371383(P2004−371383)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】