説明

車両用灯具

【課題】アウターカバー13の外縁部の内面にも水曇りが発生しにくい車両用灯具を提供する
【解決手段】前方側が開口したランプボディ12と、前記開口を覆うように前記ランプボディ12に取り付けられるアウターカバー13と、前記ランプボディと前記アウターカバー13により形成される灯室14内に配される光源31と、前記灯室14内に前記アウターカバー13と対向するように設けられ、前記灯室14内に配置された部品の少なくとも一部を前方側から遮蔽するエクステンション15と、を備え、前記エクステンション15は、前記アウターカバー13の外縁部との対向位置の少なくとも一部に、前後方向に貫通する複数の貫通孔16が設けられていることを特徴とする車両用灯具を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関し、特に、ランプボディとアウターカバーにより形成される灯室内にアウターカバーと対向するようにエクステンションが設けられた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用前照灯などの車両用灯具は、アウターカバーの内面などに水曇りが生じることがあり、これを防ぐために様々な対策が提案されている。例えば特許文献1には、灯具内に配置されたランプユニット近傍に整流板を設けることで灯具内の対流方向及び流速を変化させたヘッドランプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−119198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用灯具は、正面から見て灯室の中央部に光源が配されている構造のものが多く、アウターカバーの外縁部まで光源から発生する熱が伝わりにくい。また、アウターカバーの外縁部の内側は、灯室内でも特に空気の流れが滞り易い。したがって、アウターカバーの外縁部の内面にはとりわけ水曇りが発生し易く、その対策が課題であった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、アウターカバーの外縁部の内面にも水曇りが発生しにくい車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、本発明に係る下記の(1)〜(6)の特徴を有する車両用灯具により達成される。
(1)
前方側が開口したランプボディと、
前記開口を覆うように前記ランプボディに取り付けられるアウターカバーと、
前記ランプボディと前記アウターカバーにより形成される灯室内に配される光源と、
前記灯室内に前記アウターカバーと対向するように設けられ、前記灯室内に配置された部品の少なくとも一部を前方側から遮蔽するエクステンションと、を備え、
前記エクステンションは、前記アウターカバーの外縁部との対向位置の少なくとも一部に、前後方向に貫通する複数の貫通孔が設けられていることを特徴とする車両用灯具。
【0006】
このように、アウターカバーの外縁部と対向するエクステンションに前後方向に貫通する複数の貫通孔が設けられていることにより、灯室内における当該外縁部の内側などで空気が滞留しにくくなり、結果としてアウターカバーの外縁部の内面に水曇りが発生しにくい。
【0007】
(2)
(1)の車両用灯具において、複数の前記貫通孔は、いずれも孔径が1mm以下であることが好ましい。
【0008】
これにより、アウターカバーの外縁部の内面に水曇りが発生した場合でも、アウターカバーの外側から見たときに水曇りの水滴が微細な複数の貫通孔に紛れて視認されにくい。
【0009】
(3)
(1)または(2)の車両用灯具において、複数の前記貫通孔は、前記エクステンションにおける前記少なくとも一部に均等に設けられていることが好ましい。
【0010】
これにより、アウターカバーの外縁部の内面に水曇りが発生した場合でも、水曇りが外側から視認されにくい。また、前方から見たときの車両用灯具としての意匠性にも優れる。
【0011】
(4)
(1)から(3)のいずれかの車両用灯具において、前記エクステンションにおける前記少なくとも一部における複数の前記貫通孔による開口率は25%以上であることが好ましい。
【0012】
これにより、エクステンションに貫通孔が上記開口率で設けられていることにより、灯室内におけるアウターカバーの外縁部の内側で空気が滞留しにくくなる。ゆえに、アウターカバーの内面に水曇りが発生しにくい。
【0013】
(5)
(1)から(4)のいずれかの車両用灯具において、複数の前記貫通孔は、前記エクステンションにおける前記光源から最も離れた前記外縁部との対向位置に設けられていることが好ましい。
【0014】
これにより、アウターカバーの外縁部の中でも特に光源から発生する熱が伝わりにくい部分の内面に水曇りがより発生し易いが、エクステンションに設けた貫通孔によって灯室内の空気がこの部分で滞留しにくくなるのでアウターカバーの外縁部の内面に水曇りが発生しにくい。
【0015】
(6)
(1)から(5)のいずれかの車両用灯具において、前記エクステンションにおける複数の前記貫通孔が設けられている部分は、他の部分と別個の部品であることが好ましい。
【0016】
これにより、エクステンション本体に成形性やコスト面で優位な樹脂成形部材を用いた場合でも、エクステンションにおける貫通孔を形成する部分には板金加工や放電加工などの加工方法により貫通孔を形成した金属板などを用いることができる。したがって、エクステンションのデザインや加工方法の自由度が増す。
【0017】
なお、本発明の上記概要は、本発明に必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具の斜視図である。
【図2】車両用灯具が備える一方の灯具ユニットの光軸を通る縦断面図である。
【図3】エクステンションを前方側から見た斜視図である。
【図4】エクステンションの変形例を前方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態の一例に係る車両用前照灯1の斜視図である。本実施形態に係る車両用前照灯1は、すれ違いビームを点灯可能なヘッドランプであって、例えば車両の前端部分に取り付けられる。本例の車両用前照灯1は、図1に示すように、前方側が開口したランプボディ12と、上記開口を覆うようにランプボディ12に取り付けられる素通し状のアウターカバー13と、ランプボディ12およびアウターカバー13により形成される灯室14内に配される灯具ユニット5,6と、灯室14内にアウターカバー13と対向するように設けられたエクステンション15とを備える。
【0021】
図2は、車両用灯具1が備える一方の灯具ユニット5の光軸Axを通る縦断面図である。灯具ユニット5は、例えば車両の走路上にロービーム配光パターンを照射するためのプロジェクタ型の灯具ユニットであり、図2に示すように、投影レンズ21、レンズホルダー22、およびリフレクタ33、および光源ユニット30などで構成される。なお、灯具ユニット6は、灯具ユニット5と同様の構成を有するプロジェクタ型の灯具ユニットであるので、図示および詳細な説明を省略する。また、灯具ユニット5は、ロービーム配光パターンを形成するための灯具ユニットであるが、ロービーム配光パターンを照射するロービームモードだけでなく、ハイビーム配光パターンを照射するハイビームモードにおいても灯具ユニット6とともに点灯する。
【0022】
ブラケット17は、その面方向が灯具前後方向に対して略直交するように配された板状部材であって、その上部中央には灯具前後方向に貫通する貫通穴17aが設けられている。また、ブラケット17の前方側の面にはレンズホルダー22が取り付けられており、後方側の面には光源ユニット30が取り付けられている。また、ブラケット17は、エイミング機構41およびレベリング機構43を介してランプボディ12に取り付けられている。
【0023】
また、本例の車両用灯具1では、ランプボディ12の後方側に開口18が設けられている。この開口18は、通常は蓋19によって塞がれているが、灯室14内の部品の交換作業などの際には、この蓋19を開口18から取り外して作業することができる。
【0024】
光源ユニット30は、車両用前照灯1の光源であって光軸Ax上に配置される半導体発光素子31と、半導体発光素子31の点灯状態を制御するための制御回路が設けられた回路基板32と、半導体発光素子31からの出射光を前方へと反射するリフレクタ33と、回路基板32の下方に配されて回路基板32およびリフレクタ33を保持固定するヒートシンク34とを有する。
【0025】
半導体発光素子31は、本例では上面が発光面であるLED素子であり、必要とされる光量に応じて一または複数のチップがパッケージ化されたものが好ましく用いられる。ヒートシンク34は、例えばアルミニウム合金などの熱伝導性に優れた金属材料によって形成されており、半導体発光素子31および回路基板32から発生する熱を効率良く放熱するために複数の放熱フィンが設けられている。なお、ヒートシンク34には、放熱フィンから放出された熱を拡散させる放熱ファンが設けられてもよい。
【0026】
リフレクタ33は、図2に示すように、鉛直方向の断面形状が略楕円となるドーム状の部材である。本例では、リフレクタ33の反射面である内面の形状は、図2に「Fa」で示す位置(半導体発光素子31の取付位置)に第1焦点を有し、図2に「Fb」に示す位置に第2焦点を有する楕円を光軸Ax周りに回転させた回転楕円体の一部と略同じ形状である。ゆえに、リフレクタ33は、反射面である内面に入射する半導体発光素子31からの光を前方へと反射する
【0027】
投影レンズ21は、灯具前方側の表面が楕円形状の凸面であり後方側表面が平面である平凸レンズであり、レンズ中心軸が光軸Axと略一致するようにレンズホルダー22に支持されている。また、投影レンズ21は、その後方側焦点が図2に「Fb」で示すリフレクタ33の内面の第2焦点と略一致し、リフレクタ33の内面で反射された光源像のうちこの後方側焦点を含む焦点面上を通る像を反転像として水平方向へ拡大しながら前方へ投影する。
【0028】
エイミング機構41は、エイミングナット42による締め付けを調整することでブラケット17およびブラケット17に取り付けられている後述の光学ユニット20および光源ユニット30の取付位置及び取付角度を微調整するための機構であり、エイミング調整した段階では、灯具光軸Axは、車両前後方向に対して略平行となっている。レベリング機構43は、乗車人数又は車載される貨物等の重量の変化に応じてレベリングモータ44を駆動することで、光源光の照射方向を自動調整するための機構である。
【0029】
図3は、エクステンション15を前方側から見た斜視図である。図3に示すように、本例の車両用灯具1が備えるエクステンション15は、灯室14内に配置された灯具ユニット5,6の構成部品などを前方側から視認できないように遮蔽するために設けられているが、アウターカバー13の外縁部との対向位置の一部に前後方向に貫通する複数の貫通孔16が設けられている。より具体的には、前方側から見たときに光源である半導体発光素子31から最も離れたアウターカバー13の外縁部と対向するエクステンション15の左上端15eおよび右下端15dの各端部に近い一定範囲15g,15f内に均等に貫通孔16が設けられている。
【0030】
この貫通孔16は、前後方向と直交する断面形状が円形であり、本例ではその孔径が約1mmである。また、エクステンション15における貫通孔16の形成部位15g,15fの開口率は、本例では25%である。なお、上記孔径および上記開口率は本例に限られない。上記孔径は1mm以下であることが好ましく、上記開口率は25%以上であることが好ましい。
【0031】
このように、本例の車両用灯具1では、エクステンション15におけるアウターカバー13の外縁部と対向する部位15g,15fに前後方向に貫通する複数の貫通孔16が設けられているので、灯室14内における当該外縁部の内側などで空気が滞留しにくくなり、結果としてアウターカバー13の外縁部の内面に水曇りが発生しにくい。とりわけ本例の車両用灯具1では、灯室14の幅がエクステンション15の上記部位15f近傍で狭くなっているので、この部分において特に灯室内の空気が滞留し易いので、かかる構造上の特徴は特に有効である。
【0032】
また、エクステンション15に設けられている貫通孔16の孔径が約1mmと小さいので、貫通孔16が設けられた部位15g,15fと対向するアウターカバー13の内面に水曇りが発生した場合でも、外側から見たときに水曇りの水滴が微細な複数の貫通孔16に紛れて視認されにくい。
【0033】
また、エクステンション15における貫通孔16の形成部位15g,15fの開口率が上記のように25%であるので、アウターカバー13の外縁部の内側の空気は滞留することなくエクステンション15の後方側にスムーズに移動することができる。ゆえに、アウターカバー13の内面に水曇りが発生しにくい。また、本例では、エクステンション15における上記形成部位15g,15fに貫通孔16が均等かつ孔径と同程度のピッチで設けられているので、当該形成部位15g,15fと対向するアウターカバー13の内面に水曇りが発生した場合でも水曇りが外側から視認されにくく、前方から見たときの意匠性にも優れる。
【0034】
また、本例では、アウターカバー13の外縁部における光源から発生する熱が最も伝わりにくい部位、すなわち光源から最も離れた部位と対向するエクステンション15の端部に貫通孔16が設けられているので、アウターカバー13の上記部位の内側の空気の流れを促し、当該部位の内面に水曇りが発生するのを防ぐことができる。とりわけ本例の車両用灯具1は、バルブ光源などと比べて発熱量の少ない半導体発光素子31を光源としているので、かかる構造上の特徴は特に有効である。
【0035】
図4は、エクステンション15の変形例を前方側から見た斜視図である。本例では、図3を参照して説明したエクステンション15とほぼ同じ構成であるが、エクステンション15における貫通孔16の形成部位15g,15fがエクステンション15の他の部分(本体部分)と別個の部品となっている。したがって、例えば、エクステンション15の本体部分を樹脂の射出成形により形成し、貫通孔16の形成部位15g,15fには金属板などを用いることができる。したがって、貫通孔16を板金加工や放電加工などの加工方法により形成することも可能であり、エクステンション15のデザインや加工方法の自由度が増す。
【0036】
以上、本発明について好適な実施形態およびその変形例を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態およびその変形例に記載の範囲には限定されるものではなく、本発明の技術的特徴を損なわない範囲において、上記実施形態およびその変形例に様々な変更または改良を加えることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0037】
1 車両用前照灯
5,6 灯具ユニット
12 ランプボディ
13 アウターカバー
14 灯室
15 エクステンション
16 貫通孔
17 ブラケット
18 開口
19 蓋
21 投影レンズ
22 レンズホルダー
30 光源ユニット
31 半導体発光素子
32 回路基板
33 リフレクタ
34 ヒートシンク
41 エイミング機構
42 エイミングナット
43 レベリング機構
44 レベリングモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方側が開口したランプボディと、
前記開口を覆うように前記ランプボディに取り付けられるアウターカバーと、
前記ランプボディと前記アウターカバーにより形成される灯室内に配される光源と、
前記灯室内に前記アウターカバーと対向するように設けられ、前記灯室内に配置された部品の少なくとも一部を前方側から遮蔽するエクステンションと、を備え、
前記エクステンションは、前記アウターカバーの外縁部との対向位置の少なくとも一部に、前後方向に貫通する複数の貫通孔が設けられていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
複数の前記貫通孔は、いずれも孔径が1mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
複数の前記貫通孔は、前記エクステンションにおける前記少なくとも一部に均等に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記エクステンションにおける前記少なくとも一部における複数の前記貫通孔による開口率は25%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
複数の前記貫通孔は、前記エクステンションにおける前記光源から最も離れた前記外縁部との対向位置に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記エクステンションにおける複数の前記貫通孔が設けられている部分は、他の部分と別個の部品であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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