説明

車両用空調装置

【課題】空調の快適性を損なうことなく、車両側の発電効率も損なうことがない車両用空調装置を実現する。
【解決手段】発電機37により充電される高電圧バッテリ38、温水と車室内へ送風する空気とを熱交換するヒータコア2、温水を加熱する電気ヒータ22、ヒータコア2と電気ヒータ22へ温水を循環させるポンプ31、電気ヒータ22を制御する空調制御装置40、発電機37を制御する車両側制御装置50とを備える車両用空調装置において、空調制御装置40は、温水が目標水温TWOとなる電気ヒータ22の必要電力WOを求めるとともに、その必要電力WOから必要電圧VOを求め、その必要電圧VOが高電圧バッテリ38の電源電圧よりも小さいときに、必要電圧VOで、車両側制御装置50に発電要求を行う。これにより、空調の快適性を損なうことなく、車両側の発電効率も損なうことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機により充電される車両用バッテリを有する車両に搭載される車両用空調装置に関するものであり、特に、加熱手段に供給する電源の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用空調装置として、例えば、特許文献1に示すものが知られている。すなわち、この装置では、熱媒体である温水と車室内へ送風する空気とを熱交換する温水式熱交換手段と、この温水式熱交換手段へ供給する温水を加熱する温水生成装置と、温水を温水式熱交換手段と温水生成装置へ循環させる温水循環手段とを備えている。
【0003】
そして、温水生成装置には、車両用バッテリの電源電圧によって発熱する抵抗式の発熱体からなる電気ヒータ等の加熱手段によって、水を加熱するように構成されている。温水式熱交換手段は、ヒータコアであって、温水生成装置によって生成された温水にて室内に吹き出す空気を加熱する熱交換器である。
【特許文献1】特開2004−106634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、ニクロム線等からなる抵抗式の電気ヒータ等の加熱手段は、電気ヒータの出力Wと電源電圧Vとの関係が、図6に示す特性となっている。この特性により、出力Wは電源電圧Vの2乗に比例しているため、電気ヒータの出力Wが車両用バッテリの電源電圧Vによって左右される。つまり、電源電圧Vが大きいほど電気ヒータの出力W、即ち加熱能力Wが大きくなるようになっている。
【0005】
言い換えると、冬季に加熱能力Wが多く必要な場合において、車両用バッテリの電源電圧Vが低下すると、充分な加熱能力Wを出力することができないため、ヒータコアの暖房能力不足に陥ってしまうという問題がある。
【0006】
また、高電圧(50V〜300V程度)の車両用バッテリを充電する発電機を有する、例えば電気自動車の車両においては、無駄な発電をしないような間欠制御により効率的に発電を行っているため、車両用バッテリの電源電圧Vが比較的大きく変動する。そのため、電気ヒータの加熱能力Wが電源電圧Vに左右されるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、空調の快適性を損なうことなく、車両側の発電効率を損なうことがない車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、発電機(37)によって充電される車両用バッテリ(38)と、熱媒体である温水と車室内へ送風する空気とを熱交換する温水式熱交換手段(2)と、車両用バッテリ(38)から電源が供給され、温水式熱交換手段(2)へ供給する温水を加熱する加熱手段(22)と、温水を温水式熱交換手段(2)と加熱手段(22)へ循環させる温水循環手段(31)と、温水の目標水温(TWO)に基づいて、加熱手段(22)を制御する空調制御手段(40)と、車両用バッテリ(38)の電源電圧に基づいて、発電機(37)を制御する車両側制御手段(50)とを備える車両用空調装置において、
空調制御手段(40)及び車両側制御手段(50)は、通信線(55)を介して電気的に接続されており、空調制御手段(40)は、加熱手段(22)の電源電圧が不足したときに、車両側制御手段(50)に発電要求を行うことを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、発電機(37)を駆動して発電を行い、車両用バッテリ(38)の電源電圧を上昇させることができる。その結果、加熱手段(22)の加熱能力を大とすることができる。これにより、空調の快適性を損なうことなく、かつ車両側の発電効率を損なうことがない。
【0010】
請求項2に記載の発明では、空調制御手段(40)は、温水が目標水温(TWO)となる加熱手段(22)の必要電力(WO)を求めるとともに、その必要電力(WO)から必要電圧(VO)を求め、その必要電圧(VO)が車両用バッテリ(38)の電源電圧よりも小さいときに、要求フラグによって、車両側制御手段(50)に発電要求を行うことを特徴としている。この発明によれば、加熱手段(22)の電源電圧が不足したときに、発電機(37)を駆動して発電を行い、車両用バッテリ(38)の電源電圧を上昇させることができる。これにより、温水式熱交換手段(2)の暖房能力を確保することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、空調制御手段(40)は、温水が目標水温(TWO)となる加熱手段(22)の必要電力(WO)を求めるとともに、その必要電力(WO)から必要電圧(VO)を求め、その必要電圧(VO)が車両用バッテリ(38)の電源電圧よりも小さいときに、必要電圧(VO)によって、車両側制御手段(50)に発電要求を行うことを特徴としている。この発明によれば、発電機(37)を駆動させて、車両用バッテリ(38)の電源電圧を必要電圧(VO)に上昇させることができる。これにより、温水式熱交換手段(2)の暖房能力を確保することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、発電機(37)によって充電される車両用バッテリ(38)と、この車両用バッテリ(38)から電源が供給され、車室内へ送風する空気を加熱する加熱手段(27)と、車室内に送風する空気を目標吹出空気温度(TAO)に基づいて、加熱手段(27)を制御する空調制御手段(40)と、車両用バッテリ(38)の電源電圧に基づいて、発電機(37)を制御する車両側制御手段(50)とを備える車両用空調装置において、
空調制御手段(40)及び車両側制御手段(50)は、通信線(55)を介して電気的に接続されており、空調制御手段(40)は、加熱手段(27)の電源電圧が不足したときに、車両側制御手段(50)に発電要求を行うことを特徴としている。
【0013】
この発明によれば、空気を加熱する加熱手段(27)においても、上記請求項1と同じように、発電機(37)を駆動して発電を行い、車両用バッテリ(38)の電源電圧を上昇させることができる。その結果、加熱手段(22)の加熱能力を大とすることができる。これにより、空調の快適性を損なうことなく、かつ車両側の発電効率を損なうことがない。
【0014】
請求項5に記載の発明では、空調制御手段(40)は、車室内に送風する空気が目標吹出空気温度(TAO)となる加熱手段(27)の必要電力(WO)を求めるとともに、その必要電力(WO)から必要電圧(VO)を求め、必要電圧(VO)が車両用バッテリ(38)の電源電圧よりも小さいときに、要求フラグによって、車両側制御手段(50)に発電要求を行うことを特徴としている。この発明によれば、加熱手段(27)の電源電圧が不足したときに、発電機(37)を駆動して発電を行い、車両用バッテリ(38)の電源電圧を上昇させることができる。これにより、加熱手段(27)の暖房能力を確保することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明では、空調制御手段(40)は、車室内に送風する空気が目標吹出空気温度(TAO)となる加熱手段(27)の必要電力(WO)を求めるとともに、その必要電力(WO)から必要電圧(VO)を求め、必要電圧(VO)が車両用バッテリ(38)の電源電圧よりも小さいときに、必要電圧(VO)によって、車両側制御手段(50)に発電要求を行うことを特徴としている。この発明によれば、発電機(37)を駆動させて、車両用バッテリ(38)の電源電圧を必要電圧(VO)に上昇させることができる。これにより、加熱手段(27)の暖房能力を確保することができる。
【0016】
請求項7に記載の発明では、車両側制御手段(50)は、空調制御手段(40)からの発電要求を受けたときに、その発電要求に応じて発電機(37)を制御することを特徴としている。この発明によれば、暖房熱負荷に応じて、必要なときに、必要な温水の加熱能力を確保することができる。これにより、温水式熱交換手段(2)もしくは加熱手段(27)の暖房能力を確実に確保することができる。
【0017】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態における車両用空調装置を図1乃至図3に基づいて説明する。図1は、車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。図2は、空調制御装置における発電要求の制御を示すフローチャートである。図3は、空調制御装置における電気ヒータの制御を示すフローチャートである。
【0019】
本実施形態の車両用空調装置は、例えば、電気自動車等の高電圧(50V〜300V程度)の車両用バッテリを充電する発電機を有する車両に適用される。車両用空調装置は、図1に示すように、温水式熱交換手段であるヒータコア2を収納する空調ユニット1、温水を加熱する温水生成装置20、温水をヒータコア2と温水生成装置20へ循環させる循環回路30、温水生成装置20に電源を供給する電源供給装置35、空調制御手段である空調制御装置(ECU)40及び車両側制御手段である車両側制御装置50から構成されている。
【0020】
空調ユニット1は、自動車の車室内前部の計器盤下方において、車両左右方向の略中央部から助手席側にわたって配置されている。本実施形態の空調ユニット1の通風系は、大別すると、送風機8と空調ダクト3との2つの部分に分かれている。
【0021】
送風機8は、空調ダクト3の空気流れの上流側に配置されて、ブロワ8aとブロワモータ8bとから構成されている。送風機8は、空調ダクト3内において、車室内に向かう空気流を発生させる送風手段である。ブロワモータ8bは、空調制御装置40により制御される。送風機8の吸入側には、送風機8に導く車室内空気(内気)及び車室外空気(外気)のいずれか一方の空気を切り替える内外気切替箱9が設けられている。
【0022】
内外気切替箱9には、内外気切替ドア9aが配設されており、この内外気切替ドア9aは、サーボモータ等のアクチュエータにより駆動されて、内気導入口と外気導入口の開度を変更する吸込口切替手段である。
【0023】
空調ダクト3は、車室内に吹き出す空気の通路を構成するダクト手段であって、この空調ダクト3の空気流れの上流側には、車室内に吹き出す空気を冷却する蒸発器4が配置されている。蒸発器4は、低温側の熱を高温側に移動させる蒸気圧縮式冷凍機の低圧側熱交換器である。蒸気圧縮式冷凍機は、圧縮機5、この圧縮機5から吐出した高温高圧の冷媒を冷却する放熱器6、放熱器6にて冷却された高圧冷媒を減圧膨張させる減圧器7等からなるもので、本実施形態では、圧縮機5を電動モータにて駆動している。
【0024】
蒸発器4の空気流れの下流側には、ヒータコア2が設けられている。ヒータコア2は、蒸発器4を通過した空気を温水と熱交換して加熱する加熱用熱交換器である。本実施形態のヒータコア2には、温水生成装置20で加熱された温水を循環するようになっている。
【0025】
また、ヒータコア2の空気流れの上流側には、ヒータコア2を迂回して冷風が流れる冷風と、ヒータコア2を通過して温風が流れる温風との混合割合を調整するエアミックスドア10が回動自在に配設されている。エアミックスドア10は、サーボモータ等のアクチュエータにより駆動されて、車室内に吹き出す空調風の吹出温度を調整する吹出温度調節手段である。
【0026】
次に、温水生成装置20について述べる。温水生成装置20は、加熱手段である電気ヒータ22と内部を温水が流れるパイプ21とから構成されている。温水が流れるパイプ21のうち、上側が凸となるように略U字状に屈曲した部位には、シーズヒータ等の電気ヒータ22が外壁面に接触した状態で配置されている。パイプ21と電気ヒータ22とは、アルミニウム等の熱伝導率の高い金属内に埋設された状態で一体化されている。
【0027】
保護ケーシング23は、電気ヒータ22部分を覆って電気ヒータ22及びパイプ10を保護するカバーである。保護ケーシング23の内壁側には、樹脂やグラスウール等の断熱材が設けられている。
【0028】
循環回路30は、上記パイプ21を延出させて、温水生成装置20とヒータコア2との間を接続するように形成されている。循環回路30には、温水循環手段であるポンプ31及びリザーブタンク32が配設されている。ポンプ31は、温水を循環させる電気式のポンプであり、パイプ21内を流れる温水を温水生成装置20からヒータコア2へと循環させる。リザーブタンク32は、循環回路30内を循環する温水量の変動を吸収するものであり、ポンプ31とヒータコア2との間に配置されている。
【0029】
循環回路30には、加熱保護温度センサ24と水温センサ25とが設けられている。加熱保護温度センサ24は、パイプ21のうち、電気ヒータ22によって加熱される部位の温水出口21a側にてパイプ21の壁面温度を検出することにより、間接的に温水出口21a側における温水温度、即ち電気ヒータ22の発熱温度上昇に応じて上昇変化する温度を検出する温度検出手段を成すものである。
【0030】
水温センサ25は、加熱保護温度センサ24と同じように、パイプ21のうち、ヒータコア2の温水入口2aにてパイプ21の壁面温度を検出することにより、間接的に温水の温度を検出する。水温センサ25は、加熱保護温度センサ24より温水流れ下流側の温水の温度を検出する。
【0031】
電源供給装置35は、パワーアンプ36、発電機37及び車両用バッテリである高電圧バッテリ38から構成されており、パワーアンプ36と高電圧バッテリ38及び高電圧バッテリ38と発電機37は、それぞれ電源供給線54により電気的に接続されている。パワーアンプ36は、電圧増幅器であり、電気ヒータ22に電力を供給するように接続されるとともに、空調制御装置40により制御されるように接続されている。
【0032】
発電機37は、高電圧バッテリ38を高電圧(例えば、50V〜300V程度)に充電するための発電手段であり、車両側制御装置50より制御される。高電圧バッテリ38は、車両に搭載された各種電気部品に電源を供給するための上記高電圧の電源電圧Vを有する蓄電池である。
【0033】
また、電源供給装置35には、高電圧バッテリ38の電源電圧Vを検出するための電圧センサ39が設けられている。電圧センサ39で検出された電圧情報が車両側制御装置50に入力するように電気的に接続されている。そして、車両側制御装置50は、電圧センサ39で検出された電圧情報に応じて、発電機37の駆動を制御している。
【0034】
空調制御装置40は、加熱保護温度センサ24及び水温センサ25で検出された温度情報を入力するとともに、パワーアンプ36及びポンプ31等の空調用電気機器を制御している。空調制御装置40と車両側制御装置50とは、通信線55により電気的に接続されている。この通信線55を介して、例えば、電圧センサ39で検出された高電圧バッテリ38の電圧情報が車両側制御装置50から空調制御装置40に発信され、更に、空調制御装置40から車両側制御装置50に発電要求を指令するようになっている。
【0035】
ところで、本実施形態の空調制御装置40では、電気ヒータ22を駆動させるときにおいて、高電圧バッテリ38の電源電圧Vを監視し、その電源電圧Vが不足している場合に、電源電圧Vを高めるように制御している。そのため、図2に示す発電要求の制御プログラムを設けている。本実施形態の特徴的作動を図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0036】
空調装置の始動(または暖房)スイッチが投入されると、ステップS110にて、入力処理が行われる。ここでは、電圧センサ39で検出された高電圧バッテリ38の電圧情報が読み込まれる。具体的には、車両側制御装置50から空調制御装置40に発信された高電圧バッテリ38の電圧情報、即ち電源電圧Vを読み込む。
【0037】
そして、ステップS120にて、電気ヒータ22の必要電力WOを算出する。具体的には、水温センサ25で検出された水温が目標温度TWOとなる必要電力(目標加熱能力)WOを算出する。そして、ステップS130にて、電気ヒータ22の必要電圧VOを算出する。例えば、ニクロム線等の抵抗式のこの種の電気ヒータ22は、電気ヒータ22の出力Wと電源電圧Vとの関係が、W=V/Rとなっている(図6参照)。この式において、Rはニクロム線の抵抗である。
【0038】
このため、W=V/Rから必要電圧VO=√WO×Rを算出する。そして、ステップS140にて、ステップS110で読み込まれた高電圧バッテリ38の電源電圧Vと必要電力WOから算出した必要電圧VOとを比較する。ここで、電源電圧Vが必要電圧VOよりも同等もしくは大きければ、ステップS150を迂回してステップS110に戻る。
【0039】
ここで、電源電圧Vが必要電圧VOよりも小さければ、即ち、電源電圧Vが不足していれば、ステップS150の制御処理を実行する。ステップS150は、車両側制御装置50に必要電圧VOで発電要求を行う制御である。発電要求を受けた車両側制御装置50では、発電機37を駆動して、高電圧バッテリ38の電源電圧Vを必要電圧VOとなるように発電を行う。
【0040】
これにより、高電圧バッテリ38の電源電圧Vが必要電圧VOに上昇し、結果として電気ヒータ22の加熱能力を確保することが可能となる。つまり、暖房機能確保を優先することができる。従って、車両側の発電効率も損なわなくすることができる。
【0041】
ここで、電気ヒータ22の特徴的作動を図3に示すフローチャートに基づいて説明する。まず、空調装置の始動(または暖房)スイッチが投入されると、電気ヒータ22の作動の制御処理が開始されるとともに、ポンプ31が駆動される。ポンプ31が駆動されることにより、循環回路30内の水が、ヒータコア2と温水生成装置20との間で循環される。
【0042】
ステップS210にて、入力処理が行われる。ここでは、水温センサ25で検出された温水の温度TWを読み込む。そして、ステップS220にて、目標水温TWOを算出する。目標水温TWOは、ヒータコア2に流入する温水の温度であって、別途ヒータコア2の必要暖房能力に基づいて算出される。
【0043】
また、ヒータコア2の必要暖房能力は、空調ダクト3から吹き出される目標吹出空気温度TAOに基づいて算出される。更に、目標吹出空気温度TAOは、車両の空調熱負荷(または暖房熱負荷)に基づいて算出されている。
【0044】
そして、ステップS230及びS240にて、水温センサ25で検出された温水の温度TWが目標水温TWOとなる必要能力(目標加熱能力)WOを算出する。そして、電気ヒータ22の出力値(VO(n))として、前述したように、W=V/Rから必要電圧VO=√WO×Rを算出する。より具体的には、ステップS230にて、E(n)=TW−TWOを算出するとともに、ステップS240にて、電気ヒータ22への出力値『VO(n)=VO(n−1)+K(E(n)−E(n−1)+Θ/T×E(n))』を算出する。
【0045】
この算出式において、VO(n−1)は先回の電気ヒータへの出力値、Kは比例定数、E(n−1)は前回のE(n)値、Tは積分定数、Θはサンプリング周期である。これにより、電気ヒータ22は、フィードバック制御によって制御できる。
【0046】
そして、ステップS250にて、パワーアンプ36に出力値(VO(n))を送信する。パワーアンプ36では、出力値(VO(n))が電気ヒータ22に印加される。このようなフィードバック制御を行うことにより、必要電圧VOを電気ヒータ22に印加させることができる。つまり、暖房熱負荷に応じて、必要なときに、必要な温水の加熱能力を確保することができる。これにより、空調装置の暖房の快適性を損なうことはない。
【0047】
(第2実施形態)
以上の第1実施形態では、ステップS150にて、必要電圧VOで車両側制御装置50に発電要求を行う制御処理を実行したが、要求フラグにより車両側制御装置50に発電要求を行う制御処理を実行させても良い。図4は、本実施形態における空調制御装置の発電要求の制御を示すフローチャートである。
【0048】
本実施形態のステップS150aでは、車両側制御装置50に要求フラグで発電要求を行う制御である。発電要求を受けた車両側制御装置50では、発電要求を受信し続けている間は、発電機37の発電を続ける。そして、充分な電源電圧が得られると、発電要求は取り下げられて通常の発電を行う。
【0049】
これにより、高電圧バッテリ38の電源電圧Vが必要電圧VOに上昇し、結果として電気ヒータ22の加熱能力を確保することが可能となる。つまり、暖房機能確保を優先することができる。従って、車両側の発電効率も損なわなくすることができる。
【0050】
(第3実施形態)
以上の実施形態では、加熱手段である電気ヒータ22を用いてヒータコア2に流入する温水を加熱するように構成したが、加熱手段である電気ヒータ27を用いて空調ダクト3内に送風される空気を加熱するように構成しても良い。
【0051】
図5は、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。本実施形態の車両用空調装置では、図5に示すように、ヒータコア2の代わりに電気ヒータ27を配置している。これにより、電気ヒータ27を通過した空気が加熱されるように構成される。
【0052】
例えば、電気ヒータ22は、電気ヒータ本体27aと熱交換部27bとから構成されている。電気ヒータ本体27aは、シーズヒータ等の抵抗式の発熱部から構成されている。そして、発熱部の外郭には、複数の板状のフィンからなる熱交換部27bが一体的に設けられている。加熱された熱交換部27bに空調ダクト3内に送風される空気が加熱される。
【0053】
また、電気ヒータ27は、以上の実施形態と同じように、パワーアンプ36を介して高電圧バッテリ38に接続されている。ここで、本実施形態の電気ヒータ27の必要暖房能力は、空調ダクト3から吹き出される目標吹出空気温度TAOに基づいて算出される。従って、必要電力VOは、必要暖房能力から求めるようになっている。つまり、必要暖房能力=必要電力VOとなっている。
【0054】
以上の構成による車両用空調装置によれば、温水生成装置20及び循環回路30等を設けることがないため、温水式熱交換手段を設けるよりも製造コストの安い暖房装置を形成することができる。
【0055】
(他の実施形態)
以上の実施形態では、空調ダクト3内に蒸発器4とヒータコア2とを配置させた空調装置に適用させたが、ヒータコア2のみを空調ダクト3内に配置させる暖房装置に適用させても良い。
【0056】
また、以上の実施形態では、本発明の車両用空調装置を電気自動車等の高電圧(例えば、50V〜300V)程度の車両用バッテリを充電する発電機を有する車両に適用させたが、これに限らず、空冷式のエンジンを搭載する車両に適用させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】第1実施形態における空調制御装置の発電要求の制御を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態における電気ヒータの制御を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態における空調制御装置の発電要求の制御を示すフローチャートである。
【図5】第3実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図6】電気ヒータの出力Wと電源電圧Vとの関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0058】
2…ヒータコア(温水式熱交換手段)
22…電気ヒータ(加熱手段)
27…電気ヒータ(加熱手段)
31…ポンプ(温水循環手段)
37…発電機
38…高電圧バッテリ(車両用バッテリ)
40…空調制御装置(空調制御手段)
50…車両側制御装置(車両側制御手段)
55…通信線
TAO…目標吹出空気温度
TWO…目標水温
VO…必要電圧
WO…必要電力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機(37)によって充電される車両用バッテリ(38)と、
熱媒体である温水と車室内へ送風する空気とを熱交換する温水式熱交換手段(2)と、
前記車両用バッテリ(38)から電源が供給され、前記温水式熱交換手段(2)へ供給する温水を加熱する加熱手段(22)と、
前記温水を前記温水式熱交換手段(2)と前記加熱手段(22)へ循環させる温水循環手段(31)と、
前記温水の目標水温(TWO)に基づいて、前記加熱手段(22)を制御する空調制御手段(40)と、
前記車両用バッテリ(38)の電源電圧に基づいて、前記発電機(37)を制御する車両側制御手段(50)とを備える車両用空調装置において、
前記空調制御手段(40)及び前記車両側制御手段(50)は、通信線(55)を介して電気的に接続されており、
前記空調制御手段(40)は、前記加熱手段(22)の電源電圧が不足したときに、前記車両側制御手段(50)に発電要求を行うことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記空調制御手段(40)は、前記温水が目標水温(TWO)となる前記加熱手段(22)の必要電力(WO)を求めるとともに、その必要電力(WO)から必要電圧(VO)を求め、前記必要電圧(VO)が前記車両用バッテリ(38)の電源電圧よりも小さいときに、要求フラグによって、前記車両側制御手段(50)に発電要求を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空調制御手段(40)は、前記温水が目標水温(TWO)となる前記加熱手段(22)の必要電力(WO)を求めるとともに、その必要電力(WO)から必要電圧(VO)を求め、前記必要電圧(VO)が前記車両用バッテリ(38)の電源電圧よりも小さいときに、前記必要電圧(VO)によって、前記車両側制御手段(50)に発電要求を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
発電機(37)によって充電される車両用バッテリ(38)と、
前記車両用バッテリ(38)から電源が供給され、車室内へ送風する空気を加熱する加熱手段(27)と、
車室内に送風する空気を目標吹出空気温度(TAO)に基づいて、前記加熱手段(27)を制御する空調制御手段(40)と、
前記車両用バッテリ(38)の電源電圧に基づいて、前記発電機(37)を制御する車両側制御手段(50)とを備える車両用空調装置において、
前記空調制御手段(40)及び前記車両側制御手段(50)は、通信線(55)を介して電気的に接続されており、
前記空調制御手段(40)は、前記加熱手段(27)の電源電圧が不足したときに、前記車両側制御手段(50)に発電要求を行うことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
前記空調制御手段(40)は、前記車室内に送風する空気が前記目標吹出空気温度(TAO)となる前記加熱手段(27)の必要電力(WO)を求めるとともに、その必要電力(WO)から必要電圧(VO)を求め、前記必要電圧(VO)が前記車両用バッテリ(38)の電源電圧よりも小さいときに、要求フラグによって、前記車両側制御手段(50)に発電要求を行うことを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記空調制御手段(40)は、前記車室内に送風する空気が前記目標吹出空気温度(TAO)となる前記加熱手段(27)の必要電力(WO)を求めるとともに、その必要電力(WO)から必要電圧(VO)を求め、前記必要電圧(VO)が前記車両用バッテリ(38)の電源電圧よりも小さいときに、前記必要電圧(VO)によって、前記車両側制御手段(50)に発電要求を行うことを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記車両側制御手段(50)は、前記空調制御手段(40)からの発電要求を受けたときに、その発電要求に応じて前記発電機(37)を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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