説明

車両用電源装置

【課題】組電池の電池セルの容量にばらつきが生じた状態で上記装置によって組電池を充電する場合、電池セルの全てを満充電状態とすることが困難となる。
【解決手段】高電圧バッテリ10を構成する各モジュールM1〜Mmは、モジュール間マトリックスコンバータMMCを介してモジュール間コンデンサCmに接続されている。モジュール間コンデンサCmは、スイッチング素子Sp,Sn,PFC回路12を介して商用電源14に接続されている。商用電源14の電気エネルギは、モジュール間コンデンサCmを介してモジュールM1〜Mmへ個別に充電される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルの直列接続体である車載組電池を搭載した車両に適用される車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用電源装置としては、外部電源に接続される車両内の充電器を用いて組電池を充電するものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−44930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、組電池の各電池セルの充電率(SOC)にはばらつきが生じうる。一方、上記装置は、組電池を構成する全電池セルに一括して充電するものである。このため、組電池の電池セルの端子電圧にばらつきが生じた状態で上記装置によって組電池を充電する場合、電池セルの全てを満充電状態とすることが困難となる。ここで、組電池の充電処理時において、端子電圧の高い電池セルを放電させることで電池セル同士の端子電圧の調節を併せ行なうことも考えられるが、この場合、端子電圧の高い電池セルの電力が捨てられることから、充電効率が低下する。
【0005】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、複数の電池セルの直列接続体である車載組電池を搭載した車両に適用される新たな車両用電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、複数の電池セルの直列接続体である車載組電池を搭載した車両に適用され、車両内において電力供給源として利用可能な前記組電池とは別の電源、および前記組電池の電気エネルギが入力される手段であって且つ該組電池の監視装置を構成しない入力手段のいずれかである車載充放電装置との間の電気エネルギの授受対象を、前記組電池のうちの一部の電池セルである部分電池に限定する限定手段を備え、前記部分電池は、単一の電池セルまたは前記組電池を構成する一部且つ互いに隣接する複数の電池セルであることを特徴とする。
【0008】
車両内において組電池の端子電圧は、車載充放電装置の電源としては過度に大きいことがある。また、充放電装置からの電気エネルギを組電池に充電する場合には、組電池を構成する電池セルに一括して充電することで不都合が生じうることについては上述したとおりである。この点、上記発明では、限定手段を備えることで、こうした問題に適切に対処することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記限定手段は、前記部分電池と前記車載充放電装置とが接続される電気経路を開閉する開閉手段を備えることを特徴とする。
【0010】
上記発明では、開閉手段を備えることで、部分電池と充放電装置との間の電気エネルギの授受を開閉手段の操作によって制御したり、部分電池と充放電装置との電位差に起因した電圧が部分電池や充放電装置に印加されることを回避したりすることが可能となる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、蓄電手段を備え、前記開閉手段は、前記部分電池と前記蓄電手段との間を開閉する電池側開閉手段と、前記蓄電手段と前記充放電装置との間を電気的に開閉する装置側開閉手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
上記発明では、部分電池と充放電装置との間の電気エネルギの授受に際し、蓄電手段を用いることで、部分電池と充放電装置とが直接電気的に接続されることを回避することができる。このため、部分電池と充放電装置との間の電位差が大きい場合であっても、部分電池や充放電装置に要求される耐圧が上昇することを回避することが可能となる。また、部分電池の端子電圧と充放電装置の出力電圧とに大きな差がある場合であっても、過度に大きな電流が流れる事態を回避することも可能となる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記充放電装置は、前記別の電源であり、前記別の電源は、車両の外部から電気エネルギを供給される電力変換回路であることを特徴とする。
【0014】
上記発明では、車両の外部から供給される電気エネルギを部分電池に限って充電することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記開閉手段は、前記組電池を構成する複数の部分電池のそれぞれと前記別の電源との間を選択的に開閉する機能を有し、前記複数の部分電池を構成する電池セルは、前記組電池を構成する全電池セルであり、前記開閉手段の操作によって、前記別の電源の電気エネルギの充電対象となる前記部分電池を切り替えることで、前記組電池に前記別の電源からの電気エネルギを充電する組電池充電手段を備えることを特徴とする。
【0016】
上記発明では、外部からの電気エネルギを組電池に充電するに際し、部分電池毎に充電を行なうことができる。このため、部分電池の充電量を個別に調整することができる。これにより、外部の電源からの電気エネルギによる組電池の充電量を最大化することが容易となり、また、充電効率を向上させることもできる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、蓄電手段を備え、前記開閉手段は、前記部分電池と前記蓄電手段との間を開閉する電池側開閉手段と、前記蓄電手段と前記充放電装置との間を電気的に開閉する装置側開閉手段とを備え、前記電池側開閉手段は、前記蓄電手段と前記組電池を構成する複数の部分電池のそれぞれとの間を選択的に開閉する機能を有し、前記組電池充電手段は、前記装置側開閉手段の操作によって前記別の電源からの電気エネルギを前記蓄電手段に充電する蓄電側充電処理と、前記電池側開閉手段の操作によって前記蓄電手段の電気エネルギを前記部分電池に充電する電池側充電処理とを行なうことで、前記組電池に前記別の電源からの電気エネルギを充電することを特徴とする。
【0018】
上記発明では、別の電源の電気エネルギを部分電池に充電するに際し、蓄電手段を用いることで、部分電池と別の電源とが直接電気的に接続されることを回避することができる。このため、部分電池と別の電源との間の電位差が大きい場合であっても、部分電池や別の電源に要求される耐圧が上昇することを回避することが可能となる。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項5または6記載の発明において、前記別の電源の電気エネルギを前記組電池の全電池セルに一括して充電する全セル充電手段をさらに備え、前記組電池充電手段は、前記全セル充電手段による充電処理の後に前記組電池を構成する前記部分電池への個別の充電処理を行なうことを特徴とする。
【0020】
上記発明では、全セル充電手段による充電処理の後に部分電池への個別の充電処理を行なうことで、部分電池に許容最大量の電気エネルギを容易に充電することができる。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記充放電装置は、前記入力手段であり、前記入力手段は、車載補機バッテリであることを特徴とする。
【0022】
補機バッテリは、組電池と比較して端子電圧が低い傾向にある。このため、組電池から補機バッテリに電気エネルギを供給するに際しては、通常、電力変換回路が用いられる。しかし、この場合、電気エネルギを供給するに際して電力変換回路の変換効率に応じた損失が生じる。この点、上記発明では、部分電池と補機バッテリとの電位差を小さくすることで、電力変換回路を用いることなく電気エネルギを供給することができる。
【0023】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記電池側開閉手段は、前記組電池を構成する複数の部分電池のそれぞれと前記蓄電手段との間を選択的に開閉する機能を有し、前記電池側開閉手段の操作によって前記部分電池の電気エネルギを前記蓄電手段に充電する処理と、前記装置側開閉手段の操作によって前記蓄電手段の電気エネルギを前記補機バッテリに充電する処理とを行なうことで、前記組電池の電気エネルギを前記補機バッテリに充電する補機バッテリ充電手段をさらに備えることを特徴とする。
【0024】
上記発明では、補機バッテリに電気エネルギを供給する部分電池を選択することができる。
【0025】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記補機バッテリ充電手段は、前記蓄電手段に電気エネルギを供給する部分電池を周期的に変更することを特徴とする。
【0026】
上記発明では、電気エネルギを供給する部分電池を周期的に変更することで、特定の部分電池の蓄電エネルギ量が過度に小さくなる事態を回避することができる。
【0027】
請求項11記載の発明は、請求項8〜10のいずれか1項に記載の発明において、前記電池側開閉手段は、前記蓄電手段に接続される部分電池の電池セル数を可変とする機能をさらに備え、前記電池側開閉手段を操作して前記蓄電手段に接続される部分電池の電池セル数を可変とする可変手段を備えることを特徴とする。
【0028】
補機バッテリの端子電圧は、通常、変動しうる。このため、蓄電手段に接続される部分電池の電池セル数を固定する場合、蓄電手段の充電電圧が補機バッテリの端子電圧以下となる事態も生じうる。こうした事態を回避すべく、部分電池の電池セル数を多くすると、補機バッテリの端子電圧が低い場合に、蓄電手段の充電電圧が補機バッテリの端子電圧を過度に上回ることが懸念される。さらに、補機バッテリの充電電力は状況に応じて可変とすることが望ましい。この点、上記発明では、蓄電手段に接続される部分電池の電池セル数を可変とすることで、蓄電手段の充電電圧を補機バッテリの端子電圧や補機バッテリの充電要求電力に応じた適切な値にすることができる。
【0029】
請求項12記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記充放電装置は、前記入力手段であり、前記入力手段の基準電位は、前記限定手段による電気エネルギの授受対象となる部分電池の正極電位または負極電位であることを特徴とする。
【0030】
上記発明では、特定の部分電池の正極電位または負極電位を充放電装置の基準電位とすることで、組電池から入力手段への電気エネルギの供給が容易になる。
【0031】
請求項13記載の発明は、請求項1〜3,12のいずれか1項に記載の発明において、前記組電池を構成する部分電池のうち前記授受対象となる部分電池以外の部分電池と、前記授受対象となる部分電池との電気エネルギの授受を行なう電力授受手段をさらに備えることを特徴とする。
【0032】
限定手段によって充放電装置との電力の授受対象となる電池セルを組電池を構成する一部の電池セルに限定する場合、一部の電池セルと他の電池セルとの間の充電率や端子電圧等のばらつきが顕在化しやすい。上記発明では、この点に鑑み、電力授受手段を備えることで、充電率や端子電圧の高いものの電気エネルギを浪費することなく、充電率や端子電圧等のばらつきを抑制することができる。
【0033】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の発明において、前記限定手段は、前記車載充放電装置としての前記入力手段と前記部分電池とが接続される電気経路を開閉する開閉手段を備え、前記電力授受手段は、蓄電手段と、前記組電池を構成する部分電池のうち、前記開閉手段を介して前記入力手段に接続される部分電池とそれ以外の部分電池とのそれぞれを、前記蓄電手段に接続する選択接続手段と、
を備えることを特徴とする。
【0034】
上記発明では、選択接続手段によって、上記それ以外の部分電池の電気エネルギを蓄電手段に充電し、蓄電手段の蓄電エネルギを、開閉手段を介して前記入力手段に接続される部分電池に充電することができる。
【0035】
請求項15記載の発明は、請求項14記載の発明において、前記開閉手段を介して前記入力手段に接続される部分電池と前記入力手段とが接続される状況下、前記開閉手段を介して前記入力手段に接続される部分電池と前記蓄電手段とを接続すべく、前記選択接続手段を操作する操作手段をさらに備えることを特徴とする。
【0036】
上記発明では、上記それ以外の部分電池の電気エネルギについても、開閉手段を介して前記入力手段に接続される部分電池を介すことなく入力手段に充電することができる。このため、充電速度が、開閉手段を介して前記入力手段に接続される部分電池の端子電圧に応じて一義的に定まらないため、充電制御の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるモジュール内調整ユニットの構成を示す回路図。
【図3】同実施形態にかかる高電圧バッテリの充電処理の手順を示す流れ図。
【図4】同実施形態の効果を示すタイムチャート。
【図5】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図6】同実施形態にかかる補機バッテリの充電処理の手順を示す流れ図。
【図7】同実施形態の効果を示すタイムチャート。
【図8】第3の実施形態にかかるシステム構成図。
【図9】第4の実施形態にかかるモジュール内調整ユニットの構成を示す回路図。
【図10】第5の実施形態にかかるモジュール内調整ユニットの構成を示す回路図。
【図11】同実施形態にかかる補機バッテリの充電処理の手順を示す流れ図。
【図12】同実施形態の効果を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる車両用電源装置を車載2次電池を備えるシステムに適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0039】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0040】
図示される高電圧バッテリ10は、電池セルC11〜Cmnの直列接続体としての組電池であり、その端子電圧がたとえば百V以上となるものである。高電圧バッテリ10の正極および負極は、車載主機に接続される電力変換回路の入力端子に接続される。電池セルCij(i=1〜m,j=1〜n)は、リチウムイオン等の2次電池である。電池セルC11〜Cmnは、個体差を除き、互いに等しい構成である。すなわち、充電率(SOC:満充電量に対する実際の充電量の比率)に対する開放端電圧の関係や、満充電量、内部抵抗値等が互いに等しいものである。
【0041】
高電圧バッテリ10の負極電位は、車体電位とは相違する電位に設定されている。詳しくは、本実施形態では、高電圧バッテリ10の正極電位と負極電位との中央値が車体電位となるように設定されている。これは、高電圧バッテリ10の正極および負極間に一対のコンデンサの直列接続体や一対の抵抗体の直列接続体を接続するとともに、上記コンデンサ同士または抵抗体同士の接続点を車体に接続することで行なうことができる。
【0042】
電池セルC11〜Cmnは、互いに隣接するn(>2)個ずつが同一グループとされモジュール化されている。ここで、第iモジュールMiは、電池セルCi1〜Cinからなる。
【0043】
モジュールM1〜Mmのそれぞれは、モジュール間マトリックスコンバータMMCを介してモジュール間コンデンサCmに電気的に接続可能とされている。ここで、モジュール間マトリックスコンバータMMCは、単位電源(モジュール)のそれぞれと、組電池外電源(モジュール間コンデンサCm)との間を開閉する双方向のスイッチング素子QMp1〜QMpm,QMn1〜QMnmを備えて構成される。そしてこれにより、組電池外電源との間で双方向の電気エネルギの授受を行なう単一の単位電源または隣接する複数個の単位電源を選択可能な機能を有する。
【0044】
ここで、スイッチング素子QMpiは、第iモジュールMiの正極とモジュール間コンデンサCmの一方の端子との間を開閉するものであり、スイッチング素子QMniは、第iモジュールMiの負極とモジュール間コンデンサCmの他方の端子との間を開閉するものである。本実施形態では、スイッチング素子QMpi,QMniのそれぞれを、一対のNチャネルMOS電界効果トランジスタにて構成する。ここで、一対のトランジスタを用いるのは、それらのボディーダイオード同士の順方向が互いに逆となるように接続することで、トランジスタのオン操作指令がなされていないときにボディーダイオードを介して電流が流れることを阻止するための設定である。詳しくは、本実施形態では、一対のトランジスタのソース同士を互いに接続する。これは、トランジスタがソースに対するゲートの電位差に応じて駆動されることに鑑み、1つの信号で一対のトランジスタを容易に駆動するための設定である。
【0045】
上記一対のトランジスタのソース同士、ゲート同士は互いに短絡され、ソースおよびゲートのそれぞれは、フォトカプラPMp1〜PMpm,PMn1〜PMnmの2次側の一対の端子のそれぞれに接続されている。本実施形態では、フォトカプラPMpi,PMniとして、電圧を出力するタイプのものを採用している。これは、フォトカプラPMpi,PMniの2次側にスイッチング素子QMpi,QMniを駆動するための電源を設けないための設定である。
【0046】
上記フォトカプラPMpi,PMniの1次側には、電子制御装置(ECU20)が接続されている。ECU20は、高電圧バッテリ10よりも端子電圧の低い補機バッテリ30を電源とするものであり、その動作の基準電位を、高電圧バッテリ10の負極電位とは相違する電位とする。詳しくは、車体電位を基準電位とする。
【0047】
上記モジュール間コンデンサCmの静電容量は、モジュール間コンデンサCmの充電電圧が高電圧バッテリ10の正常時の端子電圧に一致する際、高電圧バッテリ10よりも充電エネルギ量が小さくなるように設定されている。詳しくは、本実施形態では、モジュール間コンデンサCmの充電電圧が高電圧バッテリ10の正常時の端子電圧に一致する際、充電エネルギ量が高電圧バッテリ10の「1/10万」以下、望ましくは、「1/百万」以下となるように設定されている(また、「1/3億」以上とすることが望ましい)。なお、ここでの高電圧バッテリ10の充電エネルギ量は、正常時の端子電圧において想定される最小値とする。
【0048】
また、モジュール間コンデンサCmは、スイッチング素子Sp,Snを介して、車両外部の商用電源14の交流電力を直流電力に変換するPFC回路12に接続されている。これらスイッチング素子Sp,Snは、スイッチング素子QMpi,QMniと同一構成のものであり、上記フォトカプラPMpi,PMniと同一構成のフォトカプラPp,Pnを介してECU20に接続されている。
【0049】
ECU20は、インターフェース22を介してモジュール内調整ユニットU1〜Umのそれぞれから出力される信号を受信し、これに基づき、モジュール間マトリックスコンバータMMCやスイッチング素子Sp,Snを操作する。また、ECU20は、インターフェース22を介して、モジュール内調整ユニットU1〜Umに、充電状態を調整する旨の指令信号を出力する。なお、インターフェース22は、フォトカプラ等によって構成すればよい。
【0050】
図2に、モジュール内調整ユニットU1〜Umの構成を示す。
【0051】
図示されるように、モジュール内調整ユニットUiは、モジュール内コンデンサCcとモジュール内マトリックスコンバータMCCとを備えている。ここで、モジュール内コンデンサCcの静電容量は、モジュール内コンデンサCcの充電電圧が単一のモジュールMiの正常時の端子電圧に一致する際、単一のモジュールMiよりも充電エネルギ量が小さくなるように設定されている。詳しくは、本実施形態では、モジュール内コンデンサCcの充電電圧が単一のモジュールMiの正常時の端子電圧に一致する際、充電エネルギ量が単一のモジュールMiの「1/10万」以下、望ましくは、「1/100万」以下となるように設定されている(また、「1/3億」以上とすることが望ましい)。なお、ここでの単一のモジュールMiの充電エネルギ量は、正常時の端子電圧において想定される最小値とする。
【0052】
一方、モジュール内マトリックスコンバータMCCは、単位電源(電池セルCi1〜Cin)のそれぞれと、組電池外電源(モジュール内コンデンサCc)との間を開閉する双方向のスイッチング素子QCp1〜QCpn,QCn1〜QCnnを備えて構成される。そしてこれにより、組電池外電源との間で双方向の電気エネルギの授受を行なう単一の単位電源または隣接する複数個の単位電源を選択可能な機能を有する。
【0053】
ここで、スイッチング素子QCpjは、電池セルCijの正極とモジュール内コンデンサCcの一方の端子との間を開閉するものであり、スイッチング素子QCnjは、電池セルCijの負極とモジュール内コンデンサCcの他方の端子との間を開閉するものである。本実施形態では、スイッチング素子QCpj,QCnjのそれぞれを、上記スイッチング素子QMpi,QMniと同様、一対のNチャネルMOS電界効果トランジスタにて構成する。そして、それらのソースおよびゲート間に、フォトカプラPCp1〜PCpn,PCn1〜PCnnの2次側を接続する。これらフォトカプラPCpj,PCnjも、上記フォトカプラPMpi,PMni同様、電圧を出力するタイプのものである。
【0054】
ここで、モジュール内マトリックスコンバータMCCを構成するスイッチング素子QCpj,QCnjは、モジュール間マトリックスコンバータMMCを構成するスイッチング素子QMpi,QMniよりも低耐圧のものを使用している。また、上記フォトカプラPCpj,PCnjは、上記フォトカプラPMpi,PMniよりも低耐圧のものを用いている。
【0055】
上記フォトカプラPCpj,PCnjの1次側には、マイクロコンピュータ(マイコン40)が接続されている。マイコン40は、中央処理装置(CPU46)を備えるソフトウェア処理手段である。マイコン40は、電池セルCi1〜Cinの端子電圧のそれぞれを検出すべく、それらの正極および負極のそれぞれと接続されている。すなわち、電池セルCi1〜Cinのそれぞれの正極は、抵抗体R1〜Rnのそれぞれを介してマイコン40に接続され、電池セルCinの負極は、抵抗体を介すことなくマイコン40に接続されている。また、電池セルCi1〜Cinのそれぞれには、抵抗体R1〜Rnのそれぞれを介してコンデンサC1〜Cnのそれぞれが接続されている。これら、抵抗体RjおよびコンデンサCjは、ローパスフィルタの機能を有するRC回路(図中、LPF)を構成する。
【0056】
ここで、RC回路は、抵抗体RjおよびコンデンサCjからなるものと、抵抗体R1およびコンデンサC1〜Cnからなるものとがある。そして、抵抗体RjおよびコンデンサCjからなるRC回路は、電池セルCijの端子電圧を出力する手段となり、その出力電圧は、マイコン40内のアナログデジタル変換器42によってデジタルデータに変換され、CPU46に取り込まれる。一方、抵抗体R1およびコンデンサC1〜CnからなるRC回路は、モジュールMiの端子電圧を出力する手段となり、その出力電圧は、マイコン40内のアナログデジタル変換器44によってデジタルデータに変換され、CPU46に取り込まれる。CPU46では、電池セルCi1〜Cinのそれぞれの端子電圧やモジュールMiの端子電圧(デジタル信号)を、先の図1に示したインターフェース22を介してECU20に出力する。
【0057】
なお、アナログデジタル変換器42の耐圧は、モジュールMiの端子電圧の最大値よりも低くなっている。そこで、アナログデジタル変換器42を過度に高い電圧から保護すべく、コンデンサC1〜CnのそれぞれにツェナーダイオードZD1〜ZDnのそれぞれが並列接続されている。ツェナーダイオードZD1〜ZDnのブレークダウン電圧は、電池セルCijの端子電圧の想定される最大値よりも大きくて且つ、アナログデジタル変換器42の耐圧よりも低い値に設定されている。
【0058】
図3に、商用電源14を用いた高電圧バッテリ10の充電処理の手順を示す。この処理は、ECU20によって、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
【0059】
この一連の処理では、まずステップS10において、モジュール内の電池セルCi1〜Cinの端子電圧のばらつきを低減する処理(均等化処理)と、モジュール毎の充電処理とを行なう。
【0060】
ここで、モジュール内の均等化処理は、次に示す蓄電側充電処理および電池側充電処理を有した処理とすればよい。すなわち、蓄電側充電処理は、モジュール内マトリックスコンバータMCCを操作して端子電圧の高い電池セルとこれに隣接する電池セルとをモジュール内コンデンサCcに接続することで、これを充電する処理である。また、電池側充電処理は、モジュール内マトリックスコンバータMCCを操作して端子電圧の低い電池セルをモジュール内コンデンサCcに接続することで、端子電圧の低い電池セルを充電する処理である。これら一対の処理と、電池セルの電圧を新たに検出し、端子電圧の低い電池セルと端子電圧の高い電池セルとを特定する処理とを繰り返すことで、端子電圧の高い電池セルと端子電圧の低い電池セルとの電圧差を低減することができる。
【0061】
上記蓄電側充電処理時においてモジュール内コンデンサCcに流入する電流量は、電池セルの内部抵抗やスイッチング素子QCpj,QCnjの導通抵抗、モジュール内コンデンサCcの充電電圧によって制限される。ここで、流入する電流量が過度に大きくならないのは、モジュール内コンデンサCcの上述した静電容量の設定のためである。すなわち、モジュール内コンデンサCcに接続される複数の電池セルの端子電圧と等しい充電電圧となるときのモジュール内コンデンサCcの蓄電エネルギ量を接続される複数の電池セルの蓄電エネルギ量よりも十分に小さくすることで、モジュール内コンデンサCcの充電電圧の変化速度を大きくすることができる。そしてこれにより、モジュール内コンデンサCcの充電経路の抵抗値が小さい場合であっても、流入する電流量が過度に大きくなることを回避することができる。ちなみに、本実施形態では、損失を低減すべく、スイッチング素子QCpj,QCnjを、流せる最大電流よりも実際の電流が小さくなる領域で使用している。
【0062】
一方、モジュール毎の充電処理は、商用電源14を用いたモジュール間コンデンサCmの充電処理である蓄電側充電処理と、モジュールMiの充電処理である電池側充電処理とを有した処理とすればよい。すなわち、蓄電側充電処理は、先の図1に示したスイッチング素子Sp,Snをオン操作することで、商用電源14(正確にはPFC回路12)とモジュール間コンデンサCmとを接続し、商用電源14の電力をモジュール間コンデンサCmに充電する処理となる。一方、電池側充電処理は、スイッチング素子Sp,Snをオフ操作した状態で、マトリックスコンバータMMCを操作することで、モジュールM1〜Mmのうちの1つとモジュール間コンデンサCmとを接続し、接続されたモジュールMiにモジュール間コンデンサCmの蓄電エネルギを充電する処理である。
【0063】
なお、図3のステップS10におけるモジュール毎の充電処理と、モジュール間の均等化処理とは、同時平行で行ってもよく、また、時分割で行ってもよい。
【0064】
続くステップS12においては、高電圧バッテリ10を構成する電池セルC11〜Cmnの全てに一括して商用電源14の電気エネルギを充電する。この処理は、商用電源14を用いたモジュール間コンデンサCmの充電処理である蓄電側充電処理と、モジュール間コンデンサCmの充電エネルギを高電圧バッテリ10に充電する電池側充電処理とを有した処理とすればよい。ここで、電池側充電処理は、スイッチング素子QMp1,QMnmをオン操作することで行なうことができる。このステップS12の処理は、高電圧バッテリ10の充電電圧が上限電圧近傍となるまで実行される。
【0065】
続くステップS14では、モジュール内の電池セルCi1〜Cinの端子電圧の均等化処理と、モジュール毎の充電処理とを行なう。この処理は、高電圧バッテリ10に充電される商用電源14からの電気エネルギ量を最大化するためのものである。すなわち、ステップS12の処理によって電池セルC11〜Cmnの少なくとも1つの端子電圧が上限電圧に達するまで高電圧バッテリ10を充電し、上限電圧に達することで充電処理を終了する場合、電池セルC11〜Cmnのうち端子電圧が上限電圧に達していないものについては、充電が可能であるにもかかわらず充電が停止されることとなる。これに対し本実施形態では、ステップS14においてモジュール毎に商用電源14からの電気エネルギを充電することで、端子電圧の低いモジュールについて極力電気エネルギを充電することができる。さらに、モジュール内で電池セルを均等化する処理を併せ行なうことで、電池セルのうち端子電圧の高いものと低いものとの差を低減することができ、ひいては全電池セルC11〜Cmnの端子電圧が上限電圧に近い状態まで充電処理を行なうことができる。
【0066】
なお、ステップS14の処理が完了する場合、この一連の処理を一旦終了する。
【0067】
図4は、上記処理の技術的意義を示す実験データである。ここでは、図8(a)に、6個の電池セルの直列接続体を組電池として、電池セル毎に個別に充電を行った場合を示し、図8(b)に、6個の電池セルを一括充電する場合を示す。図示されるように、6個の電池セルを一括充電する場合、端子電圧が最も高い電池セルの端子電圧が上限電圧となることで充電を停止することとなり、6個の電池セルの充電エネルギ総量が図8(a)の場合と比較して小さくなる。
【0068】
一方、図4(b)は、始めに端子電圧の高い電池セルを放電させることで端子電圧を均等化した後、6個の電池セルに一括充電した場合を示す。この場合、充電に要する時間が伸長する。また、均等化処理によって電気エネルギが浪費されるため、充電効率が低下する。
【0069】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0070】
(1)商用電源14の電気エネルギをモジュール間コンデンサCmに充電し、モジュール間マトリックスコンバータMMCを操作することで、モジュール間コンデンサCmの充電エネルギをモジュールM1〜Mmに各別に充電した。これにより、高電圧バッテリ10への商用電源14の充電エネルギ総量を大きくすることが容易となる。
【0071】
(2)高電圧バッテリ10への一括充電の後、モジュールMi毎の充電を行なうことで、充電エネルギ総量を大きくしつつも、充電処理を簡素化することができる。
【0072】
(3)商用電源14の電気エネルギの充電対象をモジュールMiとすることで、個々の電池セルCijとする場合と比較して、充電に要する時間を低減することが容易となる。
【0073】
(4)モジュールMi毎の充電処理に加えて、モジュール内の電池セルCi1〜Cinの端子電圧の均等化処理を行った。これにより、充電エネルギ総量をよりいっそう大きくすることができる。
【0074】
(5)スイッチング素子Sp,Snを備えることで、PFC回路12とモジュールM1〜Mmとの電位差に起因した電圧がPFC回路12に印加されることを回避することができる。
【0075】
(6)モジュール内調整ユニットUiを備えることで、電気エネルギのロスを極力低減しつつ電池セルCi1〜Cinの端子電圧のばらつきを低減することができる。
【0076】
(7)モジュール間マトリックスコンバータMMCとモジュール内マトリックスコンバータMCCとを各別に設けることで、高耐圧部品(スイッチング素子QMpi,QMni)の数を低減することができる。
【0077】
(8)スイッチング素子QMpi,QMniのソース同士(スイッチング素子QCpj,QCnjのソース同士)を短絡した。これにより、単一の操作信号によって一対のスイッチング素子QMpi,QMni(スイッチング素子QCpj,QCnj)を容易に操作することができる。
【0078】
(9)スイッチング素子QMpi,QMni(スイッチング素子QCpj,QCnj)に操作信号を出力する絶縁通信手段として、電圧を出力するタイプのものを用いた。これにより、2次側に電源を備えることなく、スイッチング素子QMpi,QMni(スイッチング素子QCpj,QCnj)をオン・オフ操作することができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0079】
図5に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図5において、先の図1に示す部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0080】
図示されるように、本実施形態では、高電圧バッテリの負極電位を車体電位とする。そして、補機バッテリ30と、第mモジュールMmとの間を開閉するスイッチング素子Sbp,Sbnを備える。すなわち、スイッチング素子Sbpは、補機バッテリ30の正極と第mモジュールMmの正極(電池セルCm1の正極)との間を開閉するものであり、スイッチング素子Sbnは、補機バッテリ30の負極と第mモジュールMmの負極(電池セルCmnの負極)との間を開閉するものである。これらスイッチング素子Sbp,Sbnは、フォトカプラPbp,Pbnを介してECU20によってオン・オフ操作される。ここで、スイッチング素子Sbp,Sbnは、スイッチング素子QMpi,QMni(i=1〜m)と同一構成であり、フォトカプラPbp,Pbnは、フォトカプラPMpi,PMniと同一構成である。
【0081】
また、本実施形態では、モジュールM1〜Mmの端子電圧が補機バッテリ30の正常時の端子電圧の最大値以上となるように、モジュールM1〜Mmの電池セルの数(「n」個)を設定する。
【0082】
図6に、本実施形態にかかる補機バッテリ30の充電処理の手順を示す。この処理は、所定周期で繰り返し実行される。
【0083】
この一連の処理では、まずステップS20において、補機バッテリ30の充電要求があるか否かを判断する。そして、充電要求があると判断される場合、ステップS22において、通常の充電要求であるか否かを判断する。この判断は、補機バッテリ30に第mモジュールMmの端子電圧を印加することによって実現される充電速度の充電でよいか、それ以上の急速充電が要求されるのかを特定するためのものである。そして、上記ステップS22において肯定判断される場合、第mモジュールの端子電圧を印加することによる充電によって要求が満たされるとして、ステップS24において、スイッチング素子Sbp,Sbnをオン操作する。これにより、補機バッテリ30には、第mモジュールMmの端子電圧が印加され、第mモジュールMmの電気エネルギが充電される。
【0084】
一方、ステップS22において否定判断される場合、ステップS26〜S36の処理を行なう。ステップS26〜S36の処理は、モジュール間コンデンサCmの利用により補機バッテリ30を充電するための処理である。すなわち、まずステップS26では、モジュール間コンデンサCmの充電に用いるモジュールの数(利用数Nc(>2))を選択する。ここでは、要求される充電速度が大きいほど利用数Ncを大きくする。続くステップS28では、マトリックスコンバータMMCを操作することで、利用数Nc個のモジュールとモジュール間コンデンサCmとを接続する。これは、スイッチング素子QMpk,QMn(k+Nc−1)をオン操作することで実現できる(ただし、「1≦k≦m−Nc−1」)。なお、ここで充電に用いられるモジュールMk〜M(k+Nc−1)は、たとえば、利用数Nc個の隣接するモジュールのうち、平均端子電圧が最も大きくなるものとすればよい。
【0085】
ここで、モジュール間コンデンサCmに流れる電流は、モジュールMk〜M(k+Nc−1)の内部抵抗や、スイッチング素子QMpk,QMn(k+Nc−1)の導通抵抗によって制限される。この際、モジュール間コンデンサCmの充電電流が過度に大きくならないのは、上述した静電容量の設定のためである。すなわち、モジュール間コンデンサCmの充電電圧がモジュールMk〜M(k+Nc−1)の端子電圧に等しい場合、その蓄電エネルギ量がモジュールMk〜M(k+Nc−1)よりも十分に小さくなるようにすることで、モジュール間コンデンサCmの充電電圧の変化速度を大きくすることができる。そしてこれにより、充電電流が過度に大きくなることを回避することができる。ちなみに、本実施形態では、損失を低減すべく、スイッチング素子QMpk,QMn(k+Nc−1)を、流せる最大電流よりも実際の電流が小さくなる領域で使用している。
【0086】
上記ステップS28の処理は、所定時間Taの間行われる(ステップS30)。ここで、所定時間Taは、利用数Nc個のモジュールによるモジュール間コンデンサCmの充電処理が完了すると想定される時間に設定される。そして、所定時間Taが経過すると、ステップS32において、スイッチング素子QMpk,QMn(k+Nc−1)をオフ操作して且つ、スイッチング素子Sbp,Sbnをオン操作する。これにより、モジュール間コンデンサCmの充電電圧が第mモジュールMmの端子電圧よりも高いために、モジュール間コンデンサCmの充電エネルギが補機バッテリ30に充電される。しかも、この際の充電電流は、ステップS24の処理のものと比較して大きくなる。ステップS32の処理は、所定時間Tbに渡って行われる(ステップS34)。ここで、所定時間Tbは、モジュール間コンデンサCmによる補機バッテリ30の充電処理が完了すると想定される時間に設定される。そして、所定時間Tbが経過すると、ステップS36において、スイッチング素子Sbp,Sbnをオフ操作する。
【0087】
一方、ステップS20において否定判断される場合、ステップS38において、スイッチング素子Sbp,Sbnをオフ操作する。
【0088】
なお、ステップS24、S36,S38の処理が完了する場合、この一連の処理を一旦終了する。
【0089】
こうした構成によれば、高電圧バッテリ10から補機バッテリ30への充電を、スイッチング素子Sbp,Sbnのオン操作によって行なうことができ、降圧コンバータ等を用いる必要が生じない。このため、コンバータによる電力変換効率に応じた損失が生じないため、高効率で補機バッテリ30を充電することができる。また、充電時には、スイッチング素子Sbn,Sbnは常時オンとなり、急速充電時にモジュール間マトリックスコンバータMMCのスイッチング状態の切り替えがなされるのみであるため、スイッチング周波数をコンバータのチョッパ制御の場合と比較して低くすることもできる。
【0090】
さらに、補機バッテリ30の給電手段を、基本的には第mモジュールMmとすることで、各モジュールで要求電力が相違する設定となるものの、モジュール間マトリックスコンバータMMCを用いて第1モジュールM1から第m−1モジュールMm−1の電気エネルギを第mモジュールMmに充電することができ、端子電圧や充電率のばらつきを低減することができる。
【0091】
図7(a)に、上記通常充電とモジュール間の均等化処理とを行いつつ、車載主機によって高電圧バッテリ10の電気エネルギを消費させた場合について、第1モジュールM1の電池セルC11の端子電圧と第mモジュールMmの電池セルCm1の端子電圧との推移を示す。図示されるように、電池セルC11と電池セルCm1とで端子電圧のばらつきは十分に抑制されている。これに対し、図7(b)は、モジュール間マトリックスコンバータMMCによるモジュール間均等化処理を用いない場合を示す。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0092】
図8に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図8において、先の図5に示す部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0093】
図示されるように、本実施形態では、補機バッテリ30と第mモジュールMmとの間を開閉するスイッチング素子Sbp1,Sbn1に加えて、補機バッテリ30とPFC回路12との間を開閉するスイッチング素子Sbp2,Sbn2を備えている。ここで、スイッチング素子Sbp1,Sbn1は、先の第2の実施形態(図5)のスイッチング素子Sbp,Sbnと同一であり、スイッチング素子Sbp2,Sbn2は、スイッチング素子Sbp1,Sbn1と同一構成である。なお、図8では、スイッチング素子Sbp2,Sbn2とECU20との信号の伝達経路を省略しているが、これについても、スイッチング素子Sbp1,Sbn1とECU20との信号の伝達経路と同様である。
【0094】
こうした構成によれば、補機バッテリ30を商用電源14によって直接充電することも可能である。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0095】
図9に、本実施形態にかかるモジュール内調整ユニットUk(1≦k≦m:kは特定の数)の構成を示す。なお、図9において、先の図2に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0096】
本実施形態では、第kモジュールMkの単一の電池セルCknと補機バッテリ50との間を開閉するスイッチング素子Sbp3,Sbn3を備える。そして、スイッチング素子Sbp3,Sbn3は、フォトカプラPbp3,Pbn3を介してマイコン40に接続されている。上記スイッチング素子Sbp3、Sbn3は、スイッチング素子QCpj,QCnjと同一構成であり、フォトカプラPbp3,Pbn3は、フォトカプラPCpj,PCnjと同一構成である。
【0097】
ここで、補機バッテリ50は、端子電圧が電池セルCijの端子電圧以下となるものである。補機バッテリ50は、たとえば車両内の時計や、盗難防止装置等に内蔵される2次電池である。
【0098】
こうした構成によれば、スイッチング素子Sbp3,Sbn3のオン操作によって電池セルCknから補機バッテリ50への充電処理を行なうことができる。また、急速充電を行いたい場合には、上記第2の実施形態の要領で、モジュール内コンデンサCcを用いて行なうこともできる。
【0099】
また、補機バッテリ50の給電手段を、基本的には単一の電池セルCknとすることで、電池セルCkmとそれ以外とで要求電力が相違する設定となるものの、モジュール内マトリックスコンバータMCCを用いて電池セルCk1〜Ck(n−1)の電気エネルギを電池セルCknに充電することができ、端子電圧や充電率のばらつきを低減することができる。
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態について、先の第4の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0100】
図10に、本実施形態にかかるモジュール内調整ユニットUk(1≦k≦m:kは特定の数)の構成を示す。なお、図10において、先の図9に示した部材に対応するものについては、便宜上同一の符号を付している。
【0101】
図示されるように、本実施形態では、スイッチング素子Sbp4,Sbn4を介してモジュール内コンデンサCcと補機バッテリ50とを接続する。そして、スイッチング素子Sbp4,Sbn4は、フォトカプラPbp4,Pbn4を介してマイコン40に接続されている。ここで、スイッチング素子Sbp4、Sbn4は、スイッチング素子QCpj,QCnjと同一構成であり、フォトカプラPbp4,Pbn4は、フォトカプラPCpj,PCnjと同一構成である。
【0102】
図11に、本実施形態にかかる補機バッテリ50の充電処理の手順を示す。この処理は、マイコン40によって、補機バッテリ50の充電要求が生じる都度くり返し実行される。
【0103】
この一連の処理では、まずステップS40において、要求充電電力を算出する。続くステップS42においては、モジュール内コンデンサCcの充電に用いる電池セルの利用数ncを設定する。続くステップS44では、スイッチング素子QCpj,QCn(j+nc−1)をオン操作する。これにより、電池セルCkj,…Ck(j+nc−1)とモジュール内コンデンサCcとが接続される。続くステップS46では、電池セルCkj,…Ck(j+nc−1)とモジュール内コンデンサCcとが接続されてから所定時間T1が経過したか否かを判断する。この処理は、電池セルCkj,…Ck(j+nc−1)によるモジュール内コンデンサCcの充電が完了したか否かを判断するためのものである。そして、所定時間T1が経過したと判断される場合、モジュール内コンデンサCcの充電が完了したとして、ステップS48に移行する。
【0104】
ステップS48では、スイッチング素子QCpj,QCn(j+nc−1)をオフ操作するとともに、スイッチング素子Sbp4,Sbn4をオン操作する。これにより、モジュール内コンデンサCcと補機バッテリ50とが接続される。続くステップS50では、モジュール内コンデンサCcと補機バッテリ50とが接続されてから所定時間T2が経過したか否かを判断する。この処理は、モジュール内コンデンサCcによる補機バッテリ50の充電が完了したか否かを判断するためのものである。そして、所定時間T2が経過したと判断される場合、補機バッテリ50の充電が完了したとして、ステップS52において、補機バッテリ50の充電要求に変更があるか否かを判断する。ここで、充電要求の変更とは、充電要求の解消や、充電速度の変更がある。そして、ステップS52において否定判断される場合、ステップS54において、変数jを変更し、ステップS44に戻る。これに対し、ステップS52において肯定判断される場合、この一連の処理を一旦終了する。
【0105】
上記ステップS54の処理は、モジュール内コンデンサCcの充電に用いる電池セルを変更するためのものである。本実施形態では、モジュール内の電池セル数が6であって且つ利用数ncが4である場合について図12(a)に例示するように、端部となる電池セルを1つずつずらすパターンによって、電池セルを変更する。すなわち、パターンの第1番目には、電池セルCk1〜Ck4を用い、第2番目には、電池セルCk2〜Ck5を用い、第3番目には、電池セルCk3〜Ck6を用いる。こうしたパターンに従うことで、電池セルCk1〜Ckn間で電気エネルギの消費量に生じる差を抑制することができる。
【0106】
図12(b)に、補機バッテリ50と電池セルCk1〜Cknとの端子電圧の推移を示す。図示されるように、電池セルCk1〜Cknによって補機バッテリ50を充電することで、補機バッテリ50の端子電圧を維持することができる。また、電池セルCk1〜Cknの端子電圧のばらつきも好適に抑制される。
【0107】
なお、図12において、電池セルCk1〜Cknの端子電圧が補機バッテリ50の端子電圧よりも低下した後も、補機バッテリ50の端子電圧が変化しないのは、電池セルCk1〜Cknのうちの複数を用いてモジュール内コンデンサCcを一旦充電することで、電池セルCk1〜Cknの電気エネルギを補機バッテリ30に充電しているからである。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0108】
「マトリックスコンバータのスイッチング素子について」
モジュール間マトリックスコンバータMMCのスイッチング素子QMpi,QMniや、モジュール内マトリックスコンバータMCCのスイッチング素子QCpj,QCnjとしては、一対のNチャネルMOS電界効果トランジスタの直列接続体に限らない。たとえば一対のPチャネルMOS電界効果トランジスタの直列接続体であってもよい。この場合であっても、ソース同士をショートさせるようにして直列接続することが望ましい。もっとも、スイッチング素子のオン・オフに際しての開閉制御端子(ゲート)の電位の基準を定める端子(ソース)同士をショートさせるものに限らず、ドレイン同士をショートさせるものであってもよい。この場合、一対のスイッチング素子を駆動する駆動回路を共通とすることが困難となるものの、ボディーダイオードを介して貫通電流が流れることを回避することはできる。
【0109】
さらに、電界効果トランジスタにも限らず、たとえば一対の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)とそれらのそれぞれに逆並列接続されたダイオードとからなるものであってもよい。ちなみに、この場合のダイオードは、マトリックスコンバータにおいて電流を双方向に流すことができるようにするための手段となる。
【0110】
「モジュール内及びモジュール間のマトリックスコンバータについて」
モジュール間マトリックスコンバータMMCのスイッチング素子QMpi,QMniの耐圧を、モジュール内マトリックスコンバータMCCのスイッチング素子QCpj,QCnjの耐圧よりも高くする設定に限らない。これらの耐圧が同一であったとしても、モジュール毎の管理とモジュール内の管理とを行なうことによるメリットを享受できる。このメリットとしては、たとえば外部の商用電源の電気エネルギの充電対象をモジュール単位の電池とすることが容易となることがある。すなわち、充電対象の電池の容量があまりに小さい場合等にあっては、充電速度に制約が生じやすい等のデメリットがあるため、モジュールを充電対象とすることが有効である。
【0111】
「マトリックスコンバータのスイッチング素子の駆動手段について」
1次側と2次側とを絶縁しつつ1次側の電圧信号を2次側に電圧信号として出力する絶縁通信手段(電圧を出力するタイプの絶縁通信手段)としては、特定のフォトカプラに限らない。たとえばトランスであってもよい。この場合であっても、スイッチング素子のオン状態またはオフ状態のうちトランスの2次側電圧が要求される方の時間が長くならない制御設計をするなら、駆動手段の回路規模が上記実施形態と比較して過度に大きくなることはない。
【0112】
また、電圧を出力するタイプの絶縁通信手段にも限らない。
【0113】
「電池側開閉手段、選択接続手段(マトリックスコンバータ)について」
モジュール間マトリックスコンバータMMCとモジュール内マトリックスコンバータMCCとの双方を備えるものに限らない。たとえば、高電圧バッテリ10を構成する電池セルC11〜Cmnのそれぞれとコンデンサとの間を開閉する単一のマトリックスコンバータを備えてもよい。また、これに代えて、1のモジュールを構成する各電池セルおよびこのモジュールに隣接する電池セルのそれぞれと、モジュール内コンデンサCcとの間を開閉するモジュール毎のマトリックスコンバータを備えるものであってもよい。ここで、各マトリックスコンバータが対応するモジュールに隣接する電池セルに接続されるのは、高電圧バッテリ10を構成する電池セルC11〜Cmnの全ての端子電圧や充電率、充電量を等しくする等、高電圧バッテリ10の充電状態の調整を可能とするための設定である。
【0114】
また、組電池と充放電装置との間で双方向に電流が流れることが可能なものに限らない。たとえば上記第1の実施形態において、PFC回路12から高電圧バッテリ10への電気エネルギの供給のみを実現する上では、蓄電手段(モジュール間コンデンサCm)から高電圧バッテリ10への充電電流を許容して且つ逆方向の電流を阻止する構成であってもよい。またたとえば、上記第2の実施形態(図5)において、蓄電手段(モジュール間コンデンサCm)から第mモジュールMmへの充電電流を許容して且つ逆方向の電流を阻止するものであってもよい。
【0115】
「装置側開閉手段およびその駆動手段について」
スイッチング素子Sp,Sn,Sbp,SbnやフォトカプラPp,Pn,Pbp,Pbnに限らないことについては、電源側開閉手段やその駆動手段と同様である。なお、充放電装置側の耐圧が十分に高い場合には、高電位側のスイッチング素子Sp,Sbpと低電位側のスイッチング素子Sn,Sbnとのいずれか一方のみを備えることも可能である。
【0116】
「車両の外部からの電気エネルギの充電に際しての蓄電手段との接続対象について」
高電圧バッテリ10を構成するモジュールの全てと蓄電手段とが接続可能とされるものに限らない。たとえば、上記第2の実施形態において、第kモジュールのみをPFC回路12に接続可能としてもよい。これにより、補機バッテリ30による電力消費を好適に補うことができる。なお、PFC回路12の電気エネルギを電池セルC11〜Cmnの全てに供給する場合には、第kモジュールMkの電池セルCk1〜Cknの電気エネルギをモジュール間コンデンサCmを介して他のモジュールに供給すればよい。また、これに代えて、PFC回路12の出力端子と高電圧バッテリ10の正極および負極とを接続可能とすることで、全電池セルC11〜Cmnの一括充電処理を行ってもよい。
【0117】
「別の電源について」
車両の外部の電源に限らない。たとえば補機バッテリ30であってもよい。この場合、マトリックスコンバータや蓄電手段を備えることで、特定のモジュールや特定の電池セルに補機バッテリ30の電気エネルギを充電することができる。
【0118】
「入力手段について」
補機バッテリ30や、盗難防止装置、時計に内蔵される補機バッテリ50に限らない。たとえば、内部にバッテリを備えない負荷(電子機器)であってもよい。
【0119】
「組電池充電手段について」
モジュール間コンデンサCmを介して1度に1つのモジュールにPFC回路12からの電気エネルギを供給するものに限らない。たとえば、モジュールを備えることなく、高電圧バッテリ10を構成する電池セルC11〜Cmnのそれぞれと蓄電手段(コンデンサ)との間を開閉するマトリックスコンバータを備えるものである場合、PFC回路12からの電気エネルギをコンデンサに蓄えた後、適宜の数の電池セルの直列接続体にコンデンサを接続し、それらに電気エネルギを充電してもよい。この際、直列接続体(部分電池)を構成する電池セル数は可変としてもよい。
【0120】
また、蓄電手段を介して電気エネルギを充電するものに限らない。たとえば、商用電源14に接続される絶縁コンバータの2次側をフローティング電位とし、この2次側をモジュール間マトリックスコンバータMMCを介して各モジュールMiに接続可能とするなら、モジュール間マトリックスコンバータMMCの操作によって、充電対象とするモジュールと上記2次側とを選択的に接続する手段とすることもできる。
【0121】
「全セル充電手段について」
モジュール間コンデンサCmに充電されたエネルギを高電圧バッテリ10を構成する電池セルC11〜Cmnの全てに一括して充電するものに限らない。たとえば、高電圧バッテリ10の正極および負極と電力変換回路(PFC回路12)とによって形成されるループ経路と、これを開閉する開閉手段とを備えるものであってもよい。
【0122】
「補機バッテリ充電手段について」
上記第5の実施形態(図10)では、モジュール内コンデンサCcに電気エネルギを充電する電池セルの組み合わせについての上記利用数ncから定まる全てを順次実行するパターンを採用したがこれに限らない。モジュール内コンデンサCcに電気エネルギを充電する処理を1度行なう毎に、利用数ncを変更してもよい。
【0123】
たとえば、モジュール間コンデンサCmと補機バッテリ30との間を開閉するスイッチング素子を備え、モジュールM1〜Mmの電気エネルギを補機バッテリ30に充電するようにしてもよい。この際、モジュール間コンデンサCmへの電気エネルギの供給源は、組電池を構成するモジュールM1〜Mmのすべてに限らない。たとえば特定のモジュールに限って負荷が接続される構成の場合、これについては補機バッテリへの電気エネルギの供給を行なわない設定としてもよい。
【0124】
「電位設定について」
上記第2の実施形態において、高電圧バッテリ10の負極電位と正極電位との中央値を車体電位とし、車体電位に対応するモジュールに補機バッテリ30を接続してもよい。
【0125】
「電力授受手段について」
選択接続手段に限らない。たとえば特開平11−176483号公報に記載されているように、電池セル毎にトランスの各別の2次側コイルを接続し、これと磁気結合した単一の1次側コイルに組電池の端子電圧を印加することで、組電池を構成する電池セル同士で電気エネルギを授受するものであってもよい。
【0126】
「限定手段について」
限定手段にとって、マトリックスコンバータが必須ではないことについては、「電力授受手段について」の欄や、「組電池充電手段について」の欄に記載したとおりである。ちなみに、「電力授受手段について」の欄の記載では、たとえば上記第2の実施形態のように、入力手段(補機バッテリ30)との電力の授受対象を特定の部分電池(第mモジュールMm)に限定する限定手段にとって、マトリックスコンバータが必須でないことを指摘している。
【0127】
「開閉手段について」
上記第2の実施形態(図5)においてスイッチング素子Sbp,Sbnのいずれか一方を削除してもよく、また双方とも設けなくてもよい。同様に、上記第4の実施形態(図9)において、スイッチング素子Sbp3,Sbn3を設けなくてもよい。ただし、この場合、補機バッテリ50と電池セルCijとを同一仕様のものとすることが望ましい。
【0128】
「均等化処理について」
蓄電手段に電気エネルギを放電する電池セル数(モジュール数)が2個で、蓄電手段の蓄電エネルギが充電される電池セル数(モジュール数)が1個となるものに限らない。
【0129】
端子電圧のばらつきを低減するものに限らず、充電率や充電量のばらつきを低減するものであってもよい。
【0130】
また、均等化処理としては、マトリックスコンバータを用いるものに限らず、たとえば特開平11−176483号公報に記載された上記電力授受手段を用いてもよい。
【0131】
さらに、たとえば充電率や端子電圧が高いものの蓄電エネルギを放電抵抗によって熱エネルギとして捨てる手段であってもよい。
【0132】
「充電処理の完了について」
上記各実施形態では、所定時間の経過を充電の完了としたが、これに限らず、端子電圧の検出値に基づき充電の完了の有無を判断してもよい。
【0133】
「蓄電手段の静電容量の設定について」
上記実施形態で例示したものに限らない。たとえば、モジュールMiとモジュール内コンデンサCcとを接続することでモジュールMiの電気エネルギをモジュール内コンデンサCcに放電する場合に放電電流が過度に大きくなるおそれがあるなら、モジュール内コンデンサCcに接続する電池セル数を制限してもよい。また、これに代えて、スイッチング素子QCp1,QCnnを継続してオン状態とする代わりに、PWM処理することで放電電流が過度に大きくなることを回避してもよい。さらに、スイッチング素子QCp1,QCnnを流れることのできる電流と放電電流とが一致する領域でスイッチング素子QCp1,QCnnをオン操作すべく、開閉制御端子(ゲート)の電位を調整することで、放電電流を制限してもよい。
【0134】
「そのほか」
組電池を構成する電池セルC11〜Cmnは、個体差を除き、互いに等しい構成のものに限らない。たとえば、上記第2の実施形態において、第mモジュールMmを構成する電池セルCm1〜Cmnの満充電量が他と比較して大きいものであってもよい。
【0135】
たとえば、上記第4の実施形態(図9)において、電池セルを2次電池とする代わりに燃料電池等としてもよい。ただし、この場合、電池セルCknの蓄電量が他よりも多くなるようにすることが望ましい。
【0136】
組電池としては、電力変換回路を介して車載主機に接続されるものに限らない。
【0137】
たとえば、アナログデジタル変換器の耐圧が十分なら、ツェナーダイオードZDを省いてもよい。また、たとえば、ノイズの影響が無視できるなら、フィルタ回路LPFを省いてもよい。
【符号の説明】
【0138】
10…高電圧バッテリ(組電池の一実施形態)、Cm…モジュール間コンデンサ、MMC…モジュール間マトリックスコンバータ、Cc…モジュール内コンデンサ、MCC…モジュール内マトリックスコンバータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルの直列接続体である車載組電池を搭載した車両に適用され、
車両内において電力供給源として利用可能な前記組電池とは別の電源、および前記組電池の電気エネルギが入力される手段であって且つ該組電池の監視装置を構成しない入力手段のいずれかである車載充放電装置との間の電気エネルギの授受対象を、前記組電池のうちの一部の電池セルである部分電池に限定する限定手段を備え、
前記部分電池は、単一の電池セルまたは前記組電池を構成する一部且つ互いに隣接する複数の電池セルであることを特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
前記限定手段は、前記部分電池と前記車載充放電装置とが接続される電気経路を開閉する開閉手段を備えることを特徴とする請求項1記載の車両用電源装置。
【請求項3】
蓄電手段を備え、
前記開閉手段は、前記部分電池と前記蓄電手段との間を開閉する電池側開閉手段と、前記蓄電手段と前記充放電装置との間を電気的に開閉する装置側開閉手段とを備えることを特徴とする請求項2記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記充放電装置は、前記別の電源であり、
前記別の電源は、車両の外部から電気エネルギを供給される電力変換回路であることを特徴とする請求項2記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記開閉手段は、前記組電池を構成する複数の部分電池のそれぞれと前記別の電源との間を選択的に開閉する機能を有し、
前記複数の部分電池を構成する電池セルは、前記組電池を構成する全電池セルであり、
前記開閉手段の操作によって、前記別の電源の電気エネルギの充電対象となる前記部分電池を切り替えることで、前記組電池に前記別の電源からの電気エネルギを充電する組電池充電手段を備えることを特徴とする請求項4記載の車両用電源装置。
【請求項6】
蓄電手段を備え、
前記開閉手段は、前記部分電池と前記蓄電手段との間を開閉する電池側開閉手段と、前記蓄電手段と前記充放電装置との間を電気的に開閉する装置側開閉手段とを備え、
前記電池側開閉手段は、前記蓄電手段と前記組電池を構成する複数の部分電池のそれぞれとの間を選択的に開閉する機能を有し、
前記組電池充電手段は、前記装置側開閉手段の操作によって前記別の電源からの電気エネルギを前記蓄電手段に充電する蓄電側充電処理と、前記電池側開閉手段の操作によって前記蓄電手段の電気エネルギを前記部分電池に充電する電池側充電処理とを行なうことで、前記組電池に前記別の電源からの電気エネルギを充電することを特徴とする請求項5記載の車両用電源装置。
【請求項7】
前記別の電源の電気エネルギを前記組電池の全電池セルに一括して充電する全セル充電手段をさらに備え、
前記組電池充電手段は、前記全セル充電手段による充電処理の後に前記組電池を構成する前記部分電池への個別の充電処理を行なうことを特徴とする請求項5または6記載の車両用電源装置。
【請求項8】
前記充放電装置は、前記入力手段であり、
前記入力手段は、車載補機バッテリであることを特徴とする請求項3記載の車両用電源装置。
【請求項9】
前記電池側開閉手段は、前記組電池を構成する複数の部分電池のそれぞれと前記蓄電手段との間を選択的に開閉する機能を有し、
前記電池側開閉手段の操作によって前記部分電池の電気エネルギを前記蓄電手段に充電する処理と、前記装置側開閉手段の操作によって前記蓄電手段の電気エネルギを前記補機バッテリに充電する処理とを行なうことで、前記組電池の電気エネルギを前記補機バッテリに充電する補機バッテリ充電手段をさらに備えることを特徴とする請求項8記載の車両用電源装置。
【請求項10】
前記補機バッテリ充電手段は、前記蓄電手段に電気エネルギを供給する部分電池を周期的に変更することを特徴とする請求項9記載の車両用電源装置。
【請求項11】
前記電池側開閉手段は、前記蓄電手段に接続される部分電池の電池セル数を可変とする機能をさらに備え、
前記電池側開閉手段を操作して前記蓄電手段に接続される部分電池の電池セル数を可変とする可変手段を備えることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の車両用電源装置。
【請求項12】
前記充放電装置は、前記入力手段であり、
前記入力手段の基準電位は、前記限定手段による電気エネルギの授受対象となる部分電池の正極電位または負極電位であることを特徴とする請求項1または2記載の車両用電源装置。
【請求項13】
前記組電池を構成する部分電池のうち前記授受対象となる部分電池以外の部分電池と、前記授受対象となる部分電池との電気エネルギの授受を行なう電力授受手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3,12のいずれか1項に記載の車両用電源装置。
【請求項14】
前記限定手段は、前記車載充放電装置としての前記入力手段と前記部分電池とが接続される電気経路を開閉する開閉手段を備え、
前記電力授受手段は、
蓄電手段と、
前記組電池を構成する部分電池のうち、前記開閉手段を介して前記入力手段に接続される部分電池とそれ以外の部分電池とのそれぞれを、前記蓄電手段に接続する選択接続手段と、
を備えることを特徴とする請求項13記載の車両用電源装置。
【請求項15】
前記開閉手段を介して前記入力手段に接続される部分電池と前記入力手段とが接続される状況下、前記開閉手段を介して前記入力手段に接続される部分電池と前記蓄電手段とを接続すべく、前記選択接続手段を操作する操作手段をさらに備えることを特徴とする請求項14記載の車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−90354(P2013−90354A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225638(P2011−225638)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】